1.背景及び課題

1.背景

(制度転換後の取組)

 平成18年6月に学校教育法等の改正が行われ,障害のある幼児児童生徒の教育の充実を図るため,従来,障害種別ごとに設置されていた盲・聾・養護学校の制度を,複数の障害種別を教育の対象とすることのできる「特別支援学校」の制度に転換することなどが法律上明確に規定された。この制度は,平成19年4月からスタートし,4年近くが経過しようとしている。
 この間,特別支援学校においては,障害のある幼児児童生徒の自立と社会参加に向けて,一人一人の教育的ニーズに応じた適切な教育を行うための体制づくりや,学校間の連携などの取組が進められるとともに,地域における特別支援教育のセンターとしての機能の充実が図られてきている。
 施設面においてもこれらの取組に伴い,必要となる整備が進められてきているところであるが,特別支援教育の更なる推進のため,施設面の新たな課題に対応するとともに,更なる質的向上を図っていく必要がある。

(特別支援学校の学習指導要領等の改訂)

平成21年3月,子どもたちの「生きる力」をより一層はぐくむことを目指し,特別支援学校の学習指導要領等が改訂された。
 今回の改訂は,幼稚園,小学校,中学校及び高等学校の教育課程の改善に準じた改善を図るとともに,障害の重度・重複化,多様化に対応し,一人一人に応じた指導の一層の充実,自立と社会参加を推進するため,職業教育等の充実を図るといった3つの基本的な考え方に基づき行われた。

 制度転換後の取組や,特別支援学校の学習指導要領等の改訂(特に幼稚園,小学校,中学校及び高等学校の教育課程の改善に準じた改善)への対応,さらに特別支援学校に在籍する幼児児童生徒の増加や,地球温暖化等の環境問題など社会環境の変化への対応を踏まえ,平成22年9月から,現行の特別支援学校施設整備指針の改訂や特別支援学校施設整備の推進方策について検討を実施し,今般,検討結果を報告書としてまとめた。
 今後,この報告書を踏まえて,特別支援学校の質的な整備が進められることを期待するものである。

2.課題

(1)制度転換後の取組への対応

 特別支援教育の更なる推進のためには,例えば,以下のような施設環境の充実が求められる。
 特別支援教育は,幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し,その持てる力を高め,生活や学習上の困難を改善又は克服するため,適切な指導及び必要な支援を行うものであり,その推進のためには,個別又は多様な集団編成等による指導・支援に柔軟に対応することはもとより,指導・支援が円滑に実施できる施設環境が求められる。
 また,特別支援学校においては,約半数の児童生徒が重複障害学級に在籍するなど,障害の重度・重複化,多様化が進んでおり,一人一人の実態に応じた,より適切な対応を行っていくためには,外部の専門家との連携が求められていることから,施設面においても連携のための空間の充実を図っていく必要がある。

(2)学習指導要領等の改訂への対応

 新学習指導要領等を円滑に実施するため,例えば,以下のような施設環境の充実が求められる。
 幼稚園,小学校,中学校及び高等学校の教育課程の改善に準じた改善として,理数教育の充実のため,知識・技能を活用する学習を充実させる観点から,観察,実験等の学習活動が十分行えるよう施設環境の充実が求められている。
 また,社会の情報化が進展しており,情報教育環境の充実を図る必要がある。そのため,コンピュータ等の情報機器や情報ネットワークを適切かつ実践的,主体的に活用できるよう施設環境の充実が求められる。

(3)社会環境の変化への対応

 (1),(2)以外の特別支援学校を取り巻く課題等に対応するため,例えば,以下のような施設環境の充実が求められる。
 近年,特別支援学校に在籍する幼児児童生徒の数が増加し,特別支援学校の教室が不足の状況にある。この状況への対応として,小・中学校及び高等学校等の統廃合により学校施設を特別支援学校に転用するなど,教室不足解消に向けた施設整備の推進が求められる。
 また,地球環境問題は緊急かつ重要な課題であり,環境負荷の低減とともに環境教育への活用を考慮した施設環境の整備が求められる。

お問合せ先

大臣官房文教施設企画部施設企画課

課長 長坂 潤一(内線2286) 課長補佐 瀬戸 信太郎(内線3181) (特別支援学校)指導第一係長 野口 公伸(内線2291) (高等学校)環境施設企画係長 小林 和弘(内線2288)
電話番号:03-5253-4111(内線2291)

(大臣官房文教施設企画部施設企画課)