1.背景及び課題

1.背景

(高等学校教育改革の現状について)
 新制高等学校発足当初(昭和23年)約42パーセントであった高等学校進学率は,現在では約98パーセントに達しており,高等学校は国民的な教育機関となっている。高等学校進学率の上昇に伴い,生徒の能力・適性,興味・関心,進路などが多様化しており,生徒一人一人の個性を伸ばす高等学校教育が求められている。
 このため,生徒一人一人の個性を伸ばす特色ある高等学校づくりが可能となるよう,中高一貫教育校,総合学科や単位制高等学校の設置,また,特色ある学科・コースの設置などを推進するとともに,自校以外での学修成果の単位認定の幅の拡大などを通じて,多様なカリキュラムづくりが可能となるよう,高等学校教育改革を推進している。

(高等学校学習指導要領の改訂について)
 平成21年3月,子どもたちの「生きる力」をより一層はぐくむことを目指し,高等学校学習指導要領が改訂された。
 今回の改訂は,約60年ぶりに改正された教育基本法等において明確となった教育の理念を踏まえ,「生きる力」を育成すること,知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力等の育成のバランスを重視すること,道徳教育や体育などの充実により,豊かな心や健やかな体を育成すること,の3つの基本的な考え方に基づき行われた。
 具体的には,言語活動や理数教育の充実などの教育内容の改善が図られている。

 高等学校教育改革の現状,高等学校学習指導要領の改訂,さらにキャリア教育・職業教育の推進や地球温暖化等の環境問題など社会環境の変化等への対応を踏まえ,平成22年6月から,現行の高等学校施設整備指針の改訂や高等学校施設整備の推進方策について検討を実施し,今般,検討結果を報告書としてまとめた。
 今後,この報告書を踏まえて,高等学校教育の質を高めるための施設整備が進められることを期待するものである。

2.課題

(1)生徒の個性化・多様化等への対応

 生徒一人一人の個性を伸ばす特色ある高等学校づくりにおいて,例えば,以下のような施設環境の充実が求められる。
 高等学校教育は,義務教育として行われる普通教育の成果を更に発展拡充させて,豊かな人間性,創造性及び健やかな身体を養い,国家及び社会の形成者として必要な資質を養うこと等を目標としている(学校教育法第五十一条)。
 この目標を踏まえ,生徒一人一人の学習ニーズが多様化する中でも共通する課題である主体性を養うための施設環境の充実が求められる。
 また,高等学校進学率が約98パーセントに達している状況で,多様な生徒の能力・適性,興味・関心,進路に対応した高等学校教育を支えるための施設整備が求められており,その際,教育内容に十分配慮した上で,複数の教科等での共用も考慮し,室・空間を計画するなど効果的・効率的な整備への観点が重要である。

(2)学習指導要領改訂への対応

 確かな学力をはぐくむ観点等から,新学習指導要領を円滑に実施するため,例えば,以下のような施設環境の充実が求められる。
 今日,次代を担う科学技術系人材の育成が重要な課題となっているため,理数教育の充実に向け,知識・技能を活用する学習を充実させる観点から,観察,実験等の学習活動がより一層推進されるよう施設環境の充実が求められている。
 また,社会の情報化が進展しており,情報教育環境の充実を図る必要がある。そのため,コンピュータ,プロジェクタ等の情報機器を適切かつ実践的,主体的に活用できるよう施設環境の充実が求められる。
 さらに,言語に対する関心や理解を深め,言語に関する能力の育成を図るため,各教科等で発表,討議,レポート作成等の言語活動が十分に行えるよう施設環境の充実が求められる。
 加えて,生徒が自ら進んで運動に親しむ資質や能力を身につけられるよう,日常的に運動に親しむことができ,また,地域の実情を踏まえ運動部活動等が十分に行えるよう施設環境の充実が求められる。

(3)社会環境の変化等への対応

 (1),(2)以外の高等学校を取り巻く課題等に対応するため,例えば,以下のような施設環境の充実が求められる。
 学校から社会・職業への移行や社会人・職業人としての自立をめぐる問題は,現在の子ども・若者が直面している喫緊の課題であり,高等学校においてもキャリア教育・職業教育の充実を図るための施設環境の充実が求められる。
 また,地球環境問題は緊急かつ重要な課題であり,環境負荷の低減とともに実践的な環境教育に取り組めるよう施設環境の充実が求められる。

(4)耐震化・老朽化対策の推進

 耐震化率(※1)は現在約7割であり,いまだに約3割の耐震性が確保されていない。引き続き,非構造部材も含めた耐震化の推進が重要である。
 また,多くの建物では建築後25年以上経過(※2)しており,日常の安全を確保する観点等から,計画的な老朽化対策の推進が重要である。
 加えて,耐震化や老朽化対策の際には,(1)~(3)の観点も踏まえ,教育環境としての質の向上を併せて図ることが求められる。

※1 平成22年4月1日現在で公立高等学校は72.9%,私立高等学校は67.4%
※2 平成22年5月1日現在で公立高等学校は70.2%

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大臣官房文教施設企画部施設企画課

課長 長坂 潤一(内線2286) 課長補佐 瀬戸 信太郎(内線3181) (特別支援学校)指導第一係長 野口 公伸(内線2291) (高等学校)環境施設企画係長 小林 和弘(内線2288)
電話番号:03-5253-4111(内線2291)

(大臣官房文教施設企画部施設企画課)