学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議(第15回) 議事要旨

1.日時

平成26年2月27日(木曜日)13時30分~15時30分

2.場所

中央合同庁舎第4号館共用108会議室

3.議題

  1. 災害に強い学校施設づくり検討部会 報告書(案)について
  2. 小中一貫教育推進のための学校施設部会の検討状況について
  3. その他

4.出席者

委員

【委員】天笠茂,稲葉秀哉,岩井雄一,上野淳,衞藤隆,杉山武彦,髙際伊都子,谷明彦,長澤悟,中澤正人,成田幸夫,御手洗康,柳澤要,山重慎二,山西潤一(敬称略)
【特別協力者】齋藤福栄,屋敷和佳(敬称略)

文部科学省

【文教施設企画部】関文教施設企画部長,新保文教施設企画部技術参事官,山下施設企画課長,奈良施設助成課長,小林施設企画課課長補佐,近藤施設助成課課長補佐,木村施設助成課課長補佐,富田施設企画課防災推進室長,廣田施設企画課防災推進室室長補佐
【スポーツ・青少年局】佐藤学校健康教育課安全教育調査官

5.議事要旨

(○:委員の発言,●:事務局の発言)

・副主査より,資料1-1に沿って,災害に強い学校施設づくり検討部会の検討状況について説明。
・事務局より,資料1-2,資料1-3に沿って,災害に強い学校施設づくり検討部会の検討状況について説明。

○ 今後,どの程度取組を進めていかなければならないのか。
● 資料1-3のp.17の高知県黒潮町立南郷小学校や,p.18の徳島県美波町立日和佐小学校では,実際に南海トラフ巨大地震のことを想定して,あらかじめ高台への避難のための避難路の整備又は学校の屋上等への避難階段の整備を行っている。また,資料1-3のp.25の「コラム 津波災害を想定した学校施設整備の参考事例」において,愛知県名古屋市でも同様に,南海トラフ大地震による津波浸水を想定して,建物の4階以上の部分又は3階建てで屋上を持つビルを津波避難ビルとして指定する取組を進めている。
● これらの事例は,かなり積極的に取り組んでいる例である。実際,現状の取組度合いについては,かなり地域差があると考えている。南海トラフ関係の特別措置法なども成立し,学校の移転事業に対しては,新しい補助制度の創設なども始めている。今回,いろいろ基本的な考え方,あるいは留意事項を取りまとめた。
○ 津波対策に関して,耐震化が進んだ理由の一つは見える化され,基準との整合性に基づいて評価が行われ,進捗状況が数値化され,公表されたために,進んだのではないかと考えている。したがって,A,B,C,D評価ぐらいで客観的にそれぞれの自治体が評価し,それを公表し,数値として見られるような,そういう仕組みがあると非常にいい取組事例にどんどん近づいていけるのではないか。
○ 報告書の公表後,全国的に取組が展開されていくと考えている。また,災害復旧の中で先行事例が形になってきており,それを水平展開して全国に広めていかなければならないと考えている。
○ 東京において,高潮と水害の被害が想定される地域等で,新たに学校建設が行われる場合には,報告書の内容と同様の形で計画が進められていると感じている。一方で,それ以外の学校について,総合的な対策をとろうとしたときに,施設が最低限どうあるべきかについても,併せて考えていかなければ難しい。
○ 「はじめに」において,自助,共助,公助という表現があるが,このような言い方は一般的なものなのか。公が助けると書くと,行政としての責任を放棄しているようにも見えるので,確認してほしい。
● 本報告書案においては,施設の整備などにより災害の予防をするという観点で,「公助」と記載している。なお,この書き方は,防災白書も参考にして作成したところである。
○ 平時においてできるだけの準備・対策は公が進めるけれども,いったん災害が起きた際には公の手がすぐには届かない場合もあり,公に頼り切ることはできないので自助,共助がしやすい条件を整える必要があるという意味である。
● 大川小学校の事案について,国も関わって第三者検証委員会を開催し,2月23日に報告をしたところであるので,その点御紹介させていただく。
○ 校舎等の屋上への避難を可能としている場合,津波避難ビルとして,住民の受入れについても行うべきではないか。
● 地域住民が容易に避難できるよう,分かりやすい案内看板の設置などにより緊急避難場所であることを示すことや,地域住民の避難経路についても整備しておくことが望ましいことを記載している。
○ このようなことは比較的簡単にできることだと思うので,早めに対応をお願いできれば良いと考える。
○ 学校施設のいろいろな場所に,床面の標高を示しておくことが重要である。
○ 学校というのは,とにかく学校に行けば何とかなると認識されている存在であるため,学校に向かおうとしたとき,あるいは学校に着いたときに適切な情報がすぐ分かるような表示を行うことは重要である。

・事務局より,資料1-2,資料1-3に沿って,報告書案のうち第2部,第3部について説明。

○ 耐震化は進んでいるが,非構造部材の耐震化はまだ進んでいないと認識している。国としてどのように対策を進めていくのか。また,避難所としての学校施設利用計画は防災担当部局が作ることと記載しているが,防災担当部局にもこの報告書は送付されるのか。
● 非構造部材の耐震化は,耐震化に比べて非常に送れている状況であると認識しており,非構造部材の耐震化に特化した委員会を設けて,推進方策を検討しているところ。国庫補助制度については本報告書案のp.95に掲載している。
● 避難所運営を円滑に行うためには,防災担当部局が中心となって,学校設置者,学校,地域住民等との間で協力関係を構築した上で,運営体制,運営方法などを具体的に定めた避難所運営マニュアルを作成しておくことが重要である。なお,実際の運営については学校現場の先生にも協力していただくこともあると考える。このため,市町村の防災担当部局にも本報告書を配布する。
● 災害に強い学校施設づくり検討部会においては,消防庁防災課や内閣府防災担当などにもオブザーバーとして入っていただきながら作成したところである。
○ 板橋区の事例を情報提供する。避難所の運営は地区の町会長,校長は施設の管理者という明確な役割分担としている。また,地域住民に開放する部分とそれ以外の部分の区分や,部屋の開放の順番も定めている。ただし,避難者の安全確保が第一という理解であり,実際に災害が起きた場合は柔軟に対応しようと考えている。
○ 施設についてはよくまとまっていると思うが,実際に使う人がどのように動いたか,情報のやりとりの方法などをどうすべきかが重要と考える。また,実際に震災が起きた場合にはその場にいる一人一人の判断が重要になることを記載できないか。
● 運営の始まりという観点では,p.49において,緊急避難場所又は避難所への進入のところに,学校に教職員がいない時間帯に災害が発生した場合にも対応するための施設面の配慮について記載している。
○ この報告書を英語化するなどして,地震が多く発生する東南アジアの国々に対して知的な支援を行うことができるのではないか。
● 国際的な発信もできればと考えている。
● 報告書の英語訳を作成し,国際会議等の機会を利用して,発信していきたい。
○ 防災機能と防災教育の連携は大変重要である。防災教育のカリキュラムを作成する立場の人がこのことをより認識できるよう,メッセージ性を高めていくことができないか。
○ 避難所においては,寒い中で暖が取れることが重要であると考える。
● p.53からp.54にかけて,暑さ対策と寒さ対策について記載し,対応している。
○ 避難所における運営について,どのようにしたら校長先生や教頭先生が当面の間運営できるのか。
● 一日のうち,先生がいない時間帯の方が圧倒的に長い。その中で,誰が運営すべきかを考えると,避難所として使う地域住民が主体的に開設・運営するのが現実的ではないかと考える。そのため,マニュアルにおいては,学校は避難所運営に協力するという立場としている。
● 内閣府防災担当において,「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」というものを示している。その中で避難所の運営の役割分担の在り方も示されている。
○ 現地調査を踏まえ,学校施設の防災対策について盲点だったと思われる点は何か。
○ 被害が広域に及んだことにより,周辺の地域から迅速にサポートすることが困難であり,サポートを受け始めるまでの期間が極めて長かったことである。また,歴史的に多くの津波被害を受けている三陸地域にあっても,備えが手薄だったことも印象的である。災害の記憶は薄れやすいため,本報告書が学校や自治体の現場に受け継がれていくことが重要と感じた。
○ 阪神・淡路大震災の際には,トイレの対応が大変だったと聞いている。標高20m以下,海岸から2 km以下の場合は,何らかの対策をするようなことになるかと考えるが,かなり膨大な数になるのではないかと考える。どのくらいの数があるのか把握しているのか。
● そのような学校数は把握していない。国土交通省が所管する津波防災地域づくりに関する法律において,都道府県が津波浸水想定を作成することになっている。浸水想定をもとに対策を検討していくこととなると考える。
○ 災害時にインターネット通信が有効であった事例もあるため,p.58の図に,救命避難期や生命確保期のインターネット通信についても書くべきではないか。また,避難所において避難生活が始まったときに,無線ルーターを使って個々人が発信しすぎると,混乱した状況が起こると考えられる。また,学校にあるICT機器を有効に使って広報活動や遠隔地との双方向学習を行うこともできると考える。
○ 実態把握をしっかりすることが重要である。津波に対する安全対策の選定について,いずれかの方法が選定されているかどうかなどを把握しておく必要がある。避難所としての施設利用計画の策定状況についても把握すべきである。実態把握を行い,その情報を基に新たな施策を進めていくことが重要である。

・報告書の最終取りまとめについては,主査に一任ということで出席委員了承。

・副主査より,資料2に沿って,小中一貫教育推進のための学校施設部会の検討状況について説明。
・事務局より,資料2に沿って,小中一貫教育推進のための学校施設部会の検討内容について説明。

○ 資料2のp.5の問7-1の下図において,小中一貫教育の定義として,ステージが4,3,2と区切ってある学校が小中連携校の中に入れられている。しかし,4,3,2という区切り方をすること自体が一体的な教育課程を編成していることになり,小中一貫教育校と考えることもできる。このように,小中連携校でありながら4,3,2と回答のあった学校を,分析の中に含めるのか外すのかというところについては,検討した方がよいのではないか。
○ そのとおりだと考える。今後,分析,考察を進めていく中で,含める方が適切かどうかについて,検討していきたい。
○ 異学年交流といった場合,例えば,通常の小学校でも1年生から6年生までの異学年交流は行われていると考えられるが,そういった場合とこの小中一貫教育校では,施設的に差異があるのか。
○ その指摘は,今回アンケートを分析する上で重要な視点と考えている。例えば,施設一体型小中一貫教育校では,施設をうまく共用化し利用効率を高めることで計画面積を少なくしたり,逆に小中が一緒にあることのメリットを生かす意味で,交流スペースを充実させたりしている。小中連携,一貫教育の施設一体型であることの意義を生かすために,どのような施設が新たに必要となるかについては,今後の検討における一つの大事なポイントになると考えている。現在,取りまとめの作業を行っている最中であり,今後,追って報告させていただきたい。
 アンケート調査では,特に小中連携,一貫教育を進める上で,施設一体型校舎が可能性を持っているという観点から対象校を選んで調査している。一方で,実際に学校の計画等に関わっていると,特に1学年1クラス,あるいはクラスの人数が少ない規模の学校が,例えば過疎地や,東日本大震災の被災地の復興学校等で見られるが,小中連携,一貫教育は異存ないものとして,施設一体型の学校施設については,地域の方々や現場の先生方から不安な意見が出されることがある。例えば,人間関係が変わらないまま9年間を過ごさせて良いか,中学校において,運動や様々な活動を行う際には一定の集団規模が必要となるため,これらを経験する機会が失われるのではないかといった意見である。
 また,学校の適正規模について,例えば中学校がその規模を確保するため統合すると,それに伴って小学校も統合されることになり,その結果,地域から学校そのものがなくなってしまうというケースもある。したがって,教育論として小中連携,一貫教育の意義をきちんと捉えるということと,学校を核とした地域の復興ということも含めて,地域における学校の役割や在り方について,学校論から小中連携,一貫教育の施設一体型施設を捉えるときと,違う問題があることをきちんと意識しながら取りまとめていく必要があると感じている。今後,部会の議論では,小中連携,一貫教育の施設一体型の在り方を一つのメインテーマとしながら,課題面についても議論し進めていこうと考えている。

・事務局より,資料3に沿って,「学校施設の長寿命化改修の手引き~学校のリニューアルで子供と地域を元気に!~」の公表について説明。
・事務局より,資料4-1に沿って,「学校施設の防災力強化プロジェクト」について説明。
・事務局より,資料4-2に沿って,「学校施設における非構造部材の耐震対策の推進に関する調査研究報告書(案)」について説明。
・文教施設研究センターより,資料5に沿って,「学校施設における再生可能エネルギー活用事例集~熱利用分野~」について説明。
・事務局より,資料6に沿って,今後のスケジュールについて説明。

――――了――――

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