災害に強い学校施設づくり検討部会(第4回) 議事要旨

1.日時

平成25年9月18日(水曜日) 15時30分~17時30分

2.場所

文部科学省旧庁舎4階 文教施設企画部会議室

3.議題

  1. 現地視察報告(津波避難関係)
  2. 津波災害を想定した学校施設づくりの在り方について
  3. その他

4.出席者

委員

【委員】淺川賢次、上野淳、及川康、長澤悟、山田あすか(敬称略)
【特別協力者】齋藤福栄(敬称略)

文部科学省

【文教施設企画部】関文教施設企画部長、長坂文教施設企画部技術参事官、新保施設企画課長、小林課長補佐

オブザーバー

(総務省消防庁)中道国民保護・防災部防災課震災対策専門官
(文部科学省)
【文教施設企画部】
(施設企画課防災推進室)廣田室長補佐
(施設助成課)奈良課長、近藤課長補佐
【スポーツ・青少年局】(学校健康教育課)佐藤安全教育調査官
【高等教育局】(私学部私学助成課)後藤専門官

5.議事要旨

(○:委員の発言、●:事務局の発言)

・事務局より、資料1及び机上資料に沿って、現地視察報告について説明。

○ 先日(9月16日)の台風では、改めて緊急避難場所としての学校施設の役割について考えさせられた。自治体では、誰がどのタイミングで避難の指示を出すのか、またそれをどのように住民が受けとめ避難行動を起こすかということは、なかなか判断が難しい場合がある。例えば江戸川区ではどのようにされているか。
○ 防災の場合、主に市町村長に防災の責任があるため、気象庁の特別警報を受けて、首長がどう指示を出すかということが問われる。そのため、気象庁による迅速かつ的確な予報があると良いと考えている。
○ 今回の視察先について、特に新しく立派な建物が多かった。他の自治体がこれらを参考にしようとしても、予算制約があり実行できないところが多いと考えられるため、予算制約がある中でも事業を行っている事例をもっと紹介する必要がある。
○ 高齢化が進んでいる町で、市街地の一番奥に裏山と避難経路がある場合、児童だけでなく、地域住民の避難も考える必要がある。
  南海トラフ巨大地震の被害が想定される地域では、地震発生から津波が押し寄せるまでの時間が極めて短いため、学校の児童をどこか1か所に一度集めてから裏山に誘導するのではなく、一気に裏山まで逃げるよう防災教育を行っている。災害時には、自分がいる場所における津波の到達する時間や高さの想定に応じて、どのような行動をとるべきかというノウハウやマニュアルが、大変大事になると考えられる。
○ 人口規模が小さい自治体では、単費負担による学校施設整備は難しいことから、国または都道府県、市町村による財政的な支援メニューや仕組みについて、報告書に一言付言しておくことが考えられる。
○ 東日本大震災の教訓を踏まえると、緊急避難場所に、一夜を過ごせるだけの備蓄をしておくことは、命を守る一つの重要な要素である。
○ 備蓄庫の配置に関して、災害の種類に応じて、避難場所との関係や日常の訓練などを含めて総合的に考えることが大事である。
● 日和佐小学校や南郷小学校、竹島小学校では、児童だけでなく地域住民の安全も守るという役割が想定されている。日和佐小学校と南郷小学校は、校舎の背後が高台になっており、一度高台まで避難し、その後、別の地域に下りる避難経路が整備されている。
○ 特別支援学級のある学校では、どのような対処をされているのか。
また、放課後や登校中に地震があった場合にはどのような行動をとるように指導しているのか。
● 南郷小学校における避難路では、スロープの部分では少しでも車椅子の方々が上れるようにして、それ以降は共助という観点で健常者が連れていくことを想定している。また、松江小学校では、要援護者については一旦受け入れを行った上で、2次避難を前提として近くの介護施設など設備の整った施設へ移動してもらうことを想定している。
● 放課後と登校中災害があった場合について、日和佐小学校では、授業中、休み時間中など様々な想定の下、避難訓練を実施している。自助という観点で、津波対策の避難訓練の場合は校庭への一時集合は行わず、高台の一時集合場所まで直接避難している。また、竹島小学校では、防災教育の一環として登下校中などの緊急避難の方法を児童に指導している。

・事務局より、資料2、3に沿って、本部会の取りまとめの方向性(案)及び津波災害を想定した学校施設づくりの在り方(案)について説明。

○ 「(1)基本的な考え方」について、屋上などの緊急避難場所の設置についても記載した方が良いと考える。
対応の事例を複数掲載し,対応策の選択肢をそれぞれの条件や考え方に応じて選べるようにする考え方に賛同する。対応方法だけでなく、その理由も併せて記載すれば、仮に実施方法が変わった場合にも、その理由となっている部分を担保することができるため、理由も記載すべきである。例えば以下のような点についての説明箇所である。
○ 「(2)安全な高台への避難路の整備」の2項目目について、避難経路については、ユニバーサルデザインの観点から、緩いスロープ、次に急なスロープを検討し、どうしても地形の勾配に合わない場合には、階段という形で段階を踏んだ方が良いと考える。
○ 「(2)安全な高台への避難路の整備」の4項目目について、“避難経路の整備は、普段使わないところだと、気がつかないうちに壊れていたりして、万一のときに使えないという可能性がある。そのため、通常時にも散歩等に利用されるよう避難路の舗装や東屋の整備を行う”というのは、大事な視点であると考える。
○ 「(3)屋上等への避難のための施設整備」の1項目目について、介助スペースのある階段や入り口の整備の理由として、避難者が殺到したときの対応であることを示しておくと良いと考える。また、避難路のどの箇所にどのような照明(停電時でも非常用バッテリーで動くなど)を設置すべきかについても記載すると良いと考える。
○ “夜間や休日の発災に備えた対応のため”、避難階段の入り口に蹴破れるドアを設置するアイディアは良いと考える。同様に対策の選択肢の提示の観点から、パニックオープンの仕組みや、キーボックスの設置などのアイディアも報告書にあると対策の選択肢が広がると考えられる。
○ 「(3)屋上等への避難のための施設整備」の6項目目について、直接取水ではなく一度タンクに水を貯める仕組みにしておくことで、当面の水の確保が可能になるという話も盛り込めると良いと考える。
○ 本部会の取りまとめの方向性について(目次案)について、津波から避難した後の命を守る情報の問題や、生命維持、電源の問題、防火の問題などの観点の記述は、1部と2部でどのように書き分けるのか。特に1部と2部の間で、避難後の安全な環境を保つための記載を工夫する必要があると考えており、障害者、お年寄り、発達障害も含めた避難行動要支援者である方への配慮が、必ず各パラグラフの節目、節目に出てくるまとめ方が良いと考えている。
  地域住民が日常生活の中で津波到達の浸水高さが分かるよう、工夫をすることは、非常に大事なことであると考える。また、学校の中にも海抜が認識できる表示があると良いと考える。
○ 「(3)屋上等への避難のための施設整備」について、防災の観点からすると、学校のフェンスや塀はない方が良いが、一方で、防犯の観点からすると、あった方が良いと思われる。こうした判断について、どのように記述するつもりなのか。
● 敷地境界のフェンスがある場合も、非常時には入れるような門扉を整備するといった記載に修正したい。
○ 「(1)基本的な考え方」について、ハザードマップの内外で対応が分かれるような書き方ではなく、その施設に危険性があると認識された場合は、様々な対策を検討してもらえるようにした方が良いと考える。
この報告書の基本的なスタンスとしては、各自治体に対して、対策にベストを尽くしてもらうことが第一であり、記載していないことでも工夫次第で一層取り組んでもらえる表現にすると良いと考える。
  「(4)ソフトとの連携」について、整備された施設について、避難訓練に活用するだけでなく、防災教育の材料としても積極的に活用し、なぜこのような施設を整備したのかを伝えることが必要であると考える。
○ 津波災害を検討する際には、津波と併せて、他の災害の状況をどのように想定するかを、もう少しはっきり示すことが必要ではないか。
○ 津波と、高潮や洪水では、来襲するスピードが全く違うので、今後、対応を整理する際には、その違いを明らかにした方が良いと考える。
● 今回、津波災害を対象としているが、比較的検討が進んでいる水害対策も議論の参考にするということで進めてきた経緯もあるので、台風に伴う高潮の場合の記述も分かるように切り分けて表現していこうかと考えている。
○ 全体的な話であるが、児童生徒の安全を守るためと、地域の防災拠点、避難拠点としての役割を果たすためというのを一旦整理し、分かりやすいようにまとめ方を検討する必要があるのではないか。また、避難する人についても、自立的に動ける人と介助が必要な人の両面から記述を整理して示すようにしたい。
○ 文科省や他省で出されている防災関係の様々なマニュアルや指針などがあると思うが、これらの主要なものについて、整合性を確認する必要があると考えている。少なくとも資料編にレファレンスができるような仕組みを作っておく必要があると考えている。
● 学校健康教育課では、被災3県の全ての学校が震災直後にどういう対応をしたか、子供たちがどういう状況であったか、学校が避難所となってからどのような対応をしたか、また、学校が避難所になってうまくいった例、あるいは避難所になったことでの課題について、調査研究として取りまとめている。この調査研究を基に有識者会議を立ち上げ、報告書も出している。また、全国の学校には学校防災マニュアル作成の手引きを配布している。さらに、学校防災のための参考資料を全国の学校に配布している。
  また、「(4)ソフトとの連携」について、子供たちだけではなく、地域住民も緊急避難場所を使う場合は、地域住民に対するソフト対策も必要になると考えられる。
さらに、避難場所の設定や避難経路について、建物の中で垂直避難した場合の火災リスクなど、他の災害との齟齬や考えられるリスクも併せて記載する必要があると考える。
● 第1回の資料として取りまとめた緊急提言後の防災関連の動きなどを、さらにリバイスして後日お示しできればと考えている。
○ 法制全体の動きや、施設整備に対する補助等が、一覧できるようにするとよいのではないか。
○ 学校の管理時間を離れた途端に子供たちが無防備な状態で地域に放り出されているということに1人の親として大きな危機感を持っており、親や、地域の方の意識の向上などにもつなげていくことができれば良いと考える。そのため、通学路や主要な遊び場になるところなどに、海抜や避難経路の分かりやすい標識が設置されるなど、地域も含めた対策について記載すると良いと考える。
○ 登下校時、放課後等、子供のおかれている状況に応じてトータルにどう見ていくかということを、報告書の中できちんと整理しておく必要があると考える。例えば制度的な部分でいえば、放課後子ども教室や放課後児童クラブ・学童保育の施設は学校施設と一体に作られているケースが多い。その時間帯に災害が起きた際にどう避難し、どう保護者との受け渡しをするかなど、様々な状況に応じた対応方法を、学校と家庭と地域の連携を含めて考えておく必要がある。
○ 災害時も学校を頼らないニュージーランドと比較して、日本は、地域社会のために学校が様々な役割を果たす国であると考える。
○ 確かに、ニュージーランド政府の方と意見交換をした際に、日本と諸外国で学校の防災拠点としての位置づけは随分違うと感じた。
緊急提言の中では津波を想定した学校施設づくりとしては幾つかのパターンが示されており、建物自体の高層化など、建物自体の工夫のような話もあったが、今回はより現実的な避難経路の確保というところに意識的に焦点を絞っているのか。
  また、津波に対する安全性の議論の中で、建物の堅牢性のような話は触れなくてよいのか。
  「(2)安全な高台への避難路の整備」の3項目目について、学校が緊急避難場所になった場合の話をしているのか、学校以外の緊急避難場所の話をしているのか教えてほしい。
● 1点目については、緊急提言の知見も当然活用していこうと考えている。
2点目、堅牢性の部分については、耐震化又は非構造部材の耐震化については別の協力者会議でまとめている。また、災害対策基本法が一部改正された流れも踏まえてこの報告書に入れていければと考えている。
○ 幼稚園や学校の高台への立地については、避難場所として地域から遠くなることや、インクルーシブな社会を形成する上で、避難行動要支援者の方々の利便性が低下するといったことが検討課題となる。
○ 江戸川区では、津波に対応した幼稚園や保育所の整備まではまだ考えていない。小中学校は建替を計画的に始めたため、取組が先行している。
○ Q&Aの項目についてもご意見があれば伺いたい。
○ 一般の方が見るときに分かりやすいよう、例えばQ&Aを冒頭に持ってきて、詳細は第3章の何ページ参照というように、読み手のガイドラインになる機能を加えることが大切ではないかと考える。
○ Q&Aの質問自体が、なぜその質問となるか意識できない人もいると考えるので、東日本大震災時の体験を紹介し、困ったことなどを認識していただいた方が良いのではないか。

・事務局より、資料4に沿って、今後のスケジュールの説明。

―― 了 ――

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