「学校施設老朽化対策ビジョン(仮称)」中間まとめ 骨子案

第1章 学校施設を取り巻く現状と課題

1.学校施設の役割

(1)子どもたちの学習・生活の場

  • 学校施設は子どもたちの学習・生活の場であり、学校教育活動を行うための基本的な教育条件。
  • このため、充実した教育活動を存分に展開できる、高機能かつ多機能な施設環境を整えるとともに、豊かな人間性を育むのにふさわしい、快適で十分な安全性、防災性、防犯性や衛生的な環境を備えた安全・安心なものであることが必要。

(2)地域コミュニティや防災の拠点

  • 学校施設は地域住民にとって最も身近で、生涯にわたる学習、文化、スポーツなどの活動の場として利用される地域の防災拠点としても重要な役割。

(3)公共施設の約4割を占める施設

  • 学校施設は、市区町村が所有管理している公共施設の約4割。他の公共施設への波及効果も期待。 

2.学校施設の現状

(1)学校を取り巻く状況

  • 小中学校の児童生徒数は、第2次ベビーブーム世代が在籍した昭和50年~60年代頃を境に減少。学校数もこの20年間で約10%減少しているが、1校あたりの児童生徒数は、ピーク期には500人を超えていたが近年は300人程度で推移。
  • 戦後、児童生徒の増加や、学校施設の高機能化・多機能化による基準面積の改訂に伴い、保有面積は増加してきたが、近年は横ばいからやや減少傾向。平成22年時点の公立小中学校施設の保有面積は、約1億6322万m2

(2)耐震化の進捗

  • 公立小中学校の耐震化率は平成23年4月現在で80.3%。平成24年度予算により、約90%まで進捗する見込み。耐震化率100%を達成した自治体数は約3割であり、24年度以降も増加する見込み。
  • 平成27年度までのできるだけ早い時期に耐震化を完了させることとしており、今後も引き続き、最優先で取り組むことが必要。

(3)様々な課題への対応

  • 天井材等の非構造部材の耐震対策の実施率は29.7%。また、省エネ化などの推進によるエコスクール化や、教育内容の多様化に伴う施設の高機能化・多機能化、バリアフリー化などを図ることも必要。

(4)老朽施設の増加

  • 老朽化が進行している経年25年以上の要改修建物は9,934万m2であり、全体の約7割を占める。また老朽化が深刻な築30年以上の施設は10年前の2.5倍を超えており、今後更に増加する見込み。
  • また、約半数の自治体において、保有している公立小中学校施設の平均築年数が30年を上回っている。東京や大阪、愛知などの大都市圏は築30年以上の施設の保有割合が高い傾向にあるが、自治体の規模別にみると町村から政令指定都市までそれほど大きな傾向の違いはみられず、多くの自治体においてその対策は課題。
  • 一方、老朽した施設が増加する中で、近年自治体が施設の維持管理にかけた費用はやや減少傾向にあり、十分な対策が取られているとは言えない。今後は改修・改築のための費用や維持管理経費が大幅に増加することが見込まれる。

(5)国、地方の厳しい財政状況

  • 国、地方ともに厳しい財政状況の中、今後更に増加する老朽化した学校施設を効果的かつ効率的に整備していくことが必要。

3.老朽化対策の必要性

(1)安全面

  • 施設の経年劣化により、外壁・窓わく等の落下や鉄筋の腐食・コンクリートの劣化による構造体としての強度の低下等、安全性に問題のある老朽施設が存在。また、ガスや水道、電気など設備配管等の劣化により機能面だけでなく、安全性も脅かされることもある。公立小中学校の約9割が地域の避難場所となっており、児童生徒等の安全はもちろん、地域の防災機能向上の観点からも早急な対策が必要。

(2)機能面

  • 施設の経年劣化により、雨漏りや設備機器の破損などの機能面でも課題が生じている。また、少人数学習やICT教育など現在の教育内容・方法に適応しない施設などもある。さらに、老朽化したトイレ等は衛生面でも課題があるとともに、バリアフリー化などへの対応も必要。

(3)環境面

  • 従来の建物は、断熱化などの省エネ化が図られていないものが多く、エネルギー消費の面で無駄が生じやすい。地球温暖化対策や東日本大震災による電力需給対策が求められる中、公共施設の中でも4割を占める公立学校施設について、エコ改修や再生可能エネルギー設備の導入を積極的に行うことにより、エネルギー使用量やCO2排出量の削減を図ることが必要。

(4)財政面

  • 老朽化した施設を放置すれば隠れ借金となってゆく。今後、国・地方とも厳しい財政状況の中で、老朽化対策ができない施設が大幅に増加するおそれがあることから、適時適切に対策を講じていくことが重要。 

第2章 老朽化対策の基本的考え方

1.めざすべき姿

(1)安全・安心な施設の確保

  • 学校施設は子どもたちの学習・生活の場であるとともに、地域コミュニティの中心、防災拠点の役割も果たす施設であるため、安全かつ安心な施設環境を確保することが必要。

(2)教育環境の質的向上

  • 近年の教育内容・方法の多様化に伴い、時代に即した多機能かつ高機能な教育環境を確保することが必要。また、環境に配慮した施設とするとともに、バリアフリー化を図ることも重要。 

2.施策の方向性

(1)計画的整備

  • 学校施設の状況を適切に把握し、適時適切な整備ができるよう中長期的な計画を策定し、計画的な整備を行うことが必要。その際には、従来の「事後保全」型の管理から、「予防保全」型の管理へと転換を目指すことも重要。

(2)長寿命化

  • 現状では、鉄筋コンクリート造校舎の改築までの年数は概ね40年程度。法定耐用年数も60年又は47年となっているが、当該年数は減価償却のための年数であり、物理的な耐用年数はこれより長く、更なる長寿命化も技術的には可能。改築より低コストで低廃棄物となる学校施設の長寿命化を進めることが必要。

(3)重点化

  • 関係者や地域住民からの理解をより得るようにするため、総合的かつ客観的な評価を行い、優先順位を設けることにより必要性の高い施設から順次整備を実施することが重要。
  • 今後、児童生徒が更に減少することが予想される中で、既存ストックを適切な規模に見直すことも必要。その際、地域の実情に応じ、他施設との複合化や減築などを行っていくことも考えられる。 

第3章 再生整備の具体的進め方

1.PDCAサイクルによる施設整備

(1)現状の適確な把握

  • 建物の償却年限やこれまでの改修履歴だけではなく、建物の劣化状況や、教育内容・方法に応じた施設の対応など、現状を適確に把握するとともに可視化を図ることが重要。その際、対象施設がどの程度の状態であるか客観的かつ総合的に把握することが重要。またこれらの取組は、定期的かつ継続的に行うことが必要。
  • 地域における他の公共施設の劣化状況や利用状況等も含めて、総合的に把握することも有効。

(2)計画の検討・策定

  • 改修、改築を行うにあたっては、目標耐用年数を設定するなど、各自治体において個々の施設について整備時期を明確化することが重要。
  • 建物の建設管理に係る経費のうち、運用管理段階に発生する保全費、修繕費、改善費や運用費(光熱水費等)は初期の建設費の4~5倍に達する例もある。
  • 現状の把握によって整理した優先順位を踏まえ、整備対象の重点化を図るとともに、目標耐用年数やライフサイクルコストの算定も考慮に入れた実施計画を策定することが重要。
  • 計画の策定にあたっては、将来の財政収支状況等も踏まえ事業の平準化を図るなど、中長期的な整備計画を策定することが重要。

(3)改修の実施

日常の維持管理を行いやすいよう配慮した計画とすることが重要。
 

  • 将来の需要の変化に備え、間仕切りや配管の変更を容易にするため柔軟性を備えた計画とすることが有効。
  • エネルギー消費量等を減少させるために断熱化や高効率照明・空調の導入などライフサイクルコストの低減に向けた取組を行うことも重要。

(4)継続的な評価の実施

  • 整備による効果の検証を行うとともに、より効果的な整備手法など改善すべき点について実施計画に反映する。 

2.組織体制の充実

  • 今後、増加する老朽化施設の状況を適確に把握するとともに、適時・適切な計画の策定、改修の実施等を行うに当たっては、組織体制の充実を図ることが重要。 

第4章 推進方策

1.計画的整備の推進

2.長寿命化の推進

3.重点化の推進

第5章 今後の検討課題

第4章及び第5章については、これまでの本部会における議論や第3回部会での検討等も踏まえ、今後追記。

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