今後の国立大学法人等施設の整備充実に関する調査研究協力者会議(第10回) 議事要旨

1.日時

平成22年5月25日(火曜日)14時30分~16時30分

2.場所

文部科学省 東館16階特別会議室

3.議題

  1. 第2次国立大学等施設緊急整備5か年計画の成果・効果の検証結果
  2. 諸外国における高等教育機関の施設整備方策に関する調査結果
  3. 新たな整備計画策定に向けた検討
  4. その他

4.出席者

委員

勝方委員、木村委員(主査)、小林委員、小松委員、鈴木委員、豊田委員、中西委員、深見委員、山重委員、山本委員、吉田委員

文部科学省

西阪文教施設企画部長、岡技術参事官、菱山計画課長、山﨑計画課整備計画室長、齋藤参事官(技術担当)、藤原会計課長、坪井政策課長 他

オブザーバー

新保国立教育政策研究所文教施設研究センター長

5.議事要旨

(1)第2次国立大学等施設緊急整備5か年計画の成果・効果の検証結果について

○事務局より、資料1について説明。

<主な意見等>(○:協力者、●:事務局)

○別添1の8ページ、施設整備による教育研究等への効果について、創造的・独創的で自立した研究者の育成や先端的技術を取得した技術者の育成について「あまり効果がない」が多く、18ページの保有面積についても同様に優れた最先端施設が少ないという回答が多い。実際に整備した施設への不満が多いというのはミスマッチがあるのではないか。

●いくつかの大学に聞いたところ人材の育成に時間がかかったり、施設以外の様々な要因が絡むため、このような結果になっている。また、18ページの設問は整備した施設以外の施設の満足度について聞いている。

○大学にいても、自分が利用しない施設の状況をよく把握しないまま通説的な内容を回答している可能性もあるのではないか。

○全体的には、整備したところはある程度満足しているが、全体としてはまだまだ足りないということだと思う。

 (2)諸外国における高等教育機関の施設整備方策に関する調査結果について

○事務局より、資料2について説明。

<主な意見等>(○:協力者、●:事務局)

○マッチング・ファンドを取り入れている国があるようだが、日本では可能なのか。

●日本の国立大学は基本的には施設整備費補助金により整備をしているが、大学にも寄付金などの財源があり、それと合わせて整備することはある。制度的に明示してはいないが、工夫しながら整備されている。

○諸外国は寄付への税制優遇などのメリットを国が用意して寄付しやすくしている。マッチング・ファンドも寄付をたくさん集めるほど多額の財源がもらえるという仕組みになっている。日本はそのような制度が不足しているので自助努力で資金を集めるのは難しい。

○米国では大学がそれぞれ多額の基金を保有し、それを活用して施設や設備を整備している。英国ではデアリングレポートの結果、無償だった授業料を徴収し、増えた収入については大学が施設整備に活用するなどしている。

○中国は研究に重点をおいて国際的な人材を集めている。また、中国、韓国は国土全体を再編していく経済特区を打ち出しており、その中で大学が国家戦略により研究教育を進めている。日本も大学と文部科学省だけでなくそれを超えた枠組みで議論することも必要ではないか。

○諸外国はトップクラスの大学を更に引き上げることや、大学を国家戦略にどう活かすかを考えている。シンガポールは人的資源しかないから大学で人を育てることを国家戦略として位置づけている。日本でも国家戦略としての位置づけを考えていかなければならないのではないか。

○日本の基礎研究はドイツなどヨーロッパから入ってきており、総合科学技術会議等が検討中の科学技術基本政策においても、基礎研究をきちんとやっていくということを挙げている。ヨーロッパは最先端の研究への重点化という方向性は割合落ち着いているように感じていたが、ドイツがこれほど資金を投入していることについて、具体的にはどのように重点的な整備をしているのか。

●ノルトライン=ヴェストファーレン州の例では、1960年代から70年代に大学が多く新設され、膨大な老朽施設を抱えており、そのため莫大な投資をしている。一方で連邦政府はその中でも大規模な研究施設や研究装置については国策にも関わるということで一定の支援をしたり、先端的な研究をしているところにも一部支援している。

○教育と研究を分けて考えてはどうか。諸外国は研究に関しては施設よりも実験設備に資金を投入しており、施設は教育のほうが手厚い。日本の大学は研究施設についてはよいところまで行ったが、教育施設の整備は非常に遅れているように思う。日本の大学も学生のための教育施設の充実という観点を強く打ち出してはどうか。

○研究は10年単位ぐらいでテーマが変わることが多いが、教育はそうではない。学生の環境というのは30年、40年使っていくものだから、諸外国がお金をかけるのは当然のことだと思う。研究を重視する大学には研究用の予算を配分し、その他の大学には教育用の予算として校舎や福利厚生施設の整備を配分するなど使い分けがあってもよいのではないか。

○日本はすでに重点化がされており、上位4~5大学が研究費全体の半分を占めるなど、米国よりも予算配分の傾斜は厳しい。すでに日本は重点化がなされている状況で、その傾斜をどのくらいにすれば国際競争力が最高になるのかが問題であり、もう少し中堅大学を伸ばしていくように重点化するなど、しっかり検討することが必要ではないか。

○諸外国と比較する場合には制度的な内容とバランスシート等とを慎重に判断しなければならないが、各大学がどのような財務運営をしているのか、それを分析して戦略の考え方に生かしてはどうか。

 (3)新たな整備計画策定に向けた検討について

○事務局より、資料3及び資料4について説明。

 <主な意見等>(○:協力者、●:事務局)

○研究に特化するか教育に特化するかという点は大学にとっては大きな選択だと思う。まずは、大学全体の中で国立大学はどうあるべきか、その上で教育重視型、研究重視型、その研究の中でもどれを重点的にやるのかという戦略があって、それに応じた施設整備をするということが必要ではないか。

○大学院教育のように教育と研究が一体のものもあり、教育と研究を区別するのは難しい面もある。地方私立大学は研究面が苦しく、地方国立大学には、教育だけでなく、その地方での産学連携などによる地域の活性化に繋がる研究が求められている。研究を重視する大学とは違った面で地方の成長に活かせるような戦略が反映されるとよいのではないか。

○機能別分化を促進させると、それぞれの分野でトータルとして目指すべき目標が明確になってくると思う。現在は、個々の大学の目標や評価は出ているが、国全体として国立大学に何を求めるのか、トータルとしての目標・計画が欠けていると思う。可能な限り成果目標を設定していくというのは重要なことではないか。

○大学のミッションは、まずは教育であり、例えば、企業にとっては産学連携で共同研究をするより、大学が優秀な学生を育てどんどん社会へ送り出す方がプラスになる。大学のミッションは教育だということを念頭に置いた上で国の方針があるべきではないか。

○大学間の共同利用だけでなく、大学内での共同利用施設がもっとあるべき。現状は各実験室に同じ機器を持っている場合もあるので、大きな分析センターがあって技官がいれば、みんなそこへ行って研究や教育ができる。そうすることで異分野の研究者等の交流が進むこともある。その他にも、ワークショップのように、地域の技術者が来て学生に教えてもらえるような施設があれば、教育面にもよいし、地域との連携にもよい。このような共通的な場、融合的なところがあれば良いのではないか。

○幾つかのカテゴリ別に互いに競い合い切磋琢磨するというのは、よいことだとは思うが、このカテゴリに該当しないところは重要ではないという見方をされないよう注意が必要である。重点化や公平な競争の導入によってよい面もあるが、競争の行き過ぎがもたらす弊害を意識することが必要ではないか。

○日本の大学は政策として上位を引き上げるプルトップ方式が中心となっているが、ボトムアップをどうするかというのも重要。耐震化だけではなく、基本的に学生の教育環境をどうするのかという視点も出してよいのではないか。

●大学の規模や特性とは関係なく同じ物差しで測るのは適切ではないため、幾つかの大学から意見を聞いた上で、特性のある教育や地方の産学連携なども該当するようカテゴリを設定した。大学からも、国際的に卓越した拠点や国際化ばかりでは困るという意見が出ている。

 (4)その他

○事務局より、資料5に基づき今後のスケジュールについて説明。

お問合せ先

大臣官房文教施設企画部計画課整備計画室

(大臣官房文教施設企画部計画課整備計画室)