今後の国立大学法人等施設の整備充実に関する調査研究協力者会議(第2回) 議事要旨

1.日時

平成21年3月2日(月曜日)10時から12時まで

2.場所

東京大学本郷キャンパス 総合図書館3階大会議室

3.議題

  1. 東京大学からのヒアリング
  2. 今後の国立大学法人等施設の整備充実について(論点整理)
  3. その他

4.出席者

委員

木村委員(主査)、杉山委員(副主査)、小松委員、鈴木委員、豊田委員、中西委員、山重委員

文部科学省

布村文教施設企画部長、岡技術参事官、小川計画課長、山﨑整備計画室長、平井参事官、藤原会計課長 他

オブザーバー

磯部東京大学総長特任補佐、丹沢東京大学本部統括長

5.議事要旨

※事務局より、配布資料及び議事要旨(案)について確認。

(1)東京大学からのヒアリング

※東京大学の施設を取り巻く現状と課題について、東京大学より資料2に基づき説明があり、意見交換。

<主な意見等>

(○:協力者、オブザーバー、●:事務局)

○国際化により、非常勤の特任教員等を呼ぶ機会が増えているが、資金が十分ある場合、その資金で建物を建ててもいいのか。教員1人あたりの面積の上限等制約があるか。

●自助努力ということで国費以外の整備として新たな整備手法を推進しており、間接経費や共同研究経費、寄附金を使った整備が行われているところ。自助努力で建てた建物は基準面積には含めず、上限等の制約はない。

○やはり財源が一番気になるところで、ほかの大学に関してもこの点が一番大きなポイントになっているのではないか。大学では、運営費交付金も含めて収入として入ってくる部分と、寄附で賄う部分、他に例えば産学連携などを通じた事業収入などの財源が考えられると思うが、これまでの取り組み、また、これから毎年100億円ほど必要だというような試算もされているが、どれくらいの割合で財源を調達するというような見込みを持っているのか。

○財源の見込みと言われるとなかなか難しいところであるが、やはり第一は、施設整備費や運営費交付金が大きい。寄附も努力をしており、競争的外部資金の間接経費で建物を建てるということも実際にやっているが、5年間をかけて20億円といったような建物がやっと建つかというような状況。寄附についても、10億円、20億円というようなオーダーのものであれば、頑張って年間1つぐらいプロジェクトを立ち上げていけるか、いけないかというのが、今のところの現実。今後もそれを大きくするのは希望であるが、現実的にはそう大きなシェアにはなり得ない。年間数十億円から100億円に近いような施設整備全体の予算というものが、シェアで言うと圧倒的に大きく、そこの部分をきちっとしていくことが大事だと思っている。

○施設についてはインフラ、特に情報関係等が必要だと思う。それについてどのようにお考えか。

○インフラ関係というのは、特に新たにキャンパスを整備するときに、キャンパスの中で共同溝をつくり、そこに電気、ガス、あるいはインターネットも含めた情報インフラを整えるなど、きちんとやっていかないと、その後のキャンパスの開発計画にものすごく大きく影響することがある。建物については、現状では建物内のインフラというと余り新しいこともできないが、最低限、インターネットを引く等はやっている。できていないのは、どう省エネ化を図っていくかというところ。省エネはもっとできるし、それは投資として回収できる投資のはずである。

○国際化対応のための施設整備は大きな問題である。研究者宿舎の整備計画の見込みというのが示されているが、整備目標はどんな考え方で置いているのか。研究者は2週間以上の滞在者を対象に整備ということだが、より短期の人はどのように考えているのか。

○宿舎の役割として短期と長期というのは施設毎に分けている。必要数については、学生数から、宿舎の入居希望者の割合を実績に基づき、仮定して算出している。留学生、外国人の場合は民間を借りるといっても、なかなか貸していただけないという事情があり、苦戦している。

○寄附金等のオーバーへッドはどれくらいか。また、使途は限定しているのか。

○全学として30%としている。使途は限定されていないので施設整備にも使える。

○東京大学において、いわゆる保存建物といった歴史的な建物と新しい建物とのマッチングが非常に難しいと思うが、どのような工夫をしているのか。

○キャンパス計画委員会において全学の意思決定を行い、事務的な部分や個別・具体的な部分をキャンパス計画室で担っている。そこでは、建物の設計や色も決めている。文化財になるようなものについては、候補をあらかじめ挙げておき、キャンパス計画室に報告して了承を得た上で改築をするというルールとしている。

課題として、外部資金や寄附等で建物を建てるケースは、設計者も含め寄附者の意向が反映される場合があり、学内全体を統一するというのが難しくなっている。

○建物を建てるときに、近隣住民の方からの意見は出てくるか。

○建物を建てる際に、説明会開催や直接説明に伺うなどして声を聞いている。それによって建物の高さが変わることもある。

 

 

(2)今後の国立大学法人等施設の整備充実について(論点整理)

※事務局より資料3から5に基づき説明。

<主な意見等>

○学生寄宿舎の充実がこれからの大事なポイントになるだろう。海外の学生寄宿舎の状況はどうなっているのか。例えば、学生1人当たり、あるいは、教員1人当たりの面積といったものの比較等ができればいいと思う。

○耐震性は進んでいるが、耐火性についてはどのようにお考えか。

●消防法や建築基準法で規制されており、それに基づき建物をつくっている。消防的な意味での問題はあまり考えられないと思っている。

○施設整備にかかる財源の改善というところで、「国立大学法人の施設整備は国が措置するという原則を堅持し、必要な経費を確保する等の改善を強く希望」とあるが、今までそれがどういうところまでを意味していたのか。大学が何となく理解しているところは、今後の財政状況等から言って、施設整備は直接、国がやってくれるということは、もうほとんどのものについてはあり得ないのか。だから、自助努力で整備をしていくと、理解している面が非常に強い。今後の整備のあり方についての論点の中で、国と国立大学法人との役割分担とあるが、国が原則的に整備をするというものについて、どういうことを意味しているのか。

●論点メモにあるとおり、国が責任を持って整備していくものと、そうでないものについての考え方を、ある程度、明確に示していかなければならないのではないかと考えている。

●施設整備費については、「独立行政法人の施設費等にかかる経費であって、国の予算においては公債発行対象経費であるものについては運営費交付金とは別に措置する。」とされており、「新しい『国立大学法人』像について」においては、「国立大学の施設整備は、国家的な資産を形成するものであり、毎年度国から措置される施設費をもって基本的な財源とするが、長期借入金や土地の処分収入その他の自己収入をもって整備することを可能とする。」というのが、法人化のときの施設整備費の整理となっている。

●基本的に、土地や建物は国で用意するというのが、独立行政法人と国立大学法人の考え方であり、国立大学法人の会計では、建物についての減価償却はバランスさせて見ていないという状況。国が用意するから減価償却費は見ないという形になっている。

 

○前総理が言われたということもあって、高等教育のセクターが、やや期待しているのが留学生の30万人計画である。英国などを見ていると、すごい勢いで教育予算を増やしている。

○基本的に日本の場合は、建物に対して幾らかかっているのかという話がはっきりしていない。イギリス等では、施設のマネジメント専門の副学長クラスの方がいて、施設整備にいくらかかるという数字がきちんと出てくる。費用を明らかにし、ものすごく財源が要るのだということをアピールする必要がある。

○次の計画では、エネルギー問題、省エネ、これらをキーワードとしていくべきなのではないか

○附属病院の施設整備について、アメリカのように、医療費が高額のところ、あるいは、医療保険がそれほど整備していないところでは患者からの受診料での返済が可能かもしれないが、日本においては健康保険制度で診療報酬が公的に決められているため、高額の建物代をカバーできる診療報酬になっているかというと、必ずしもなっていない。誤解を与えないためにも、他国の例もぜひ調べてほしい。

○ニューヨーク州の事例で、5億7,300万ドル、州からの予算が学生寮の整備に出されている。これに対して、原則学生からの寮費で返済ということは、寮費を大学が集めて、それを州からの借り入れに対して返済するというような意味か。各大学で借り入れるのではなくて、州が貸し付けを行って、それに対して寮費を集めて返済するというようなスキームなのか。それとも、これは純粋な補助であり、寮の運営等に関しては寮費で賄っていくという意味なのか。

○アメリカのアーバナ・シャンペーンでは、原則として寮はセルフ・サステイン。頭金はユニバーシティ・ボンドで調達し、利子や人件費を学生から徴収する。ユニバーシティ・ボンドは税制の優遇があるため企業が率先して買う。大学債を実にうまく利用しており、返すのにすごく長期の時間で、しかも利子も安く、税制のシステムがうまくできている。

○アメリカとイギリスの大学の財務担当の方にヒアリングをしたところ、「ファンドレージング」という言葉が盛んに出てきた。何か足りなくなったらファンドを立ち上げる。結局、お金をどうやって集めるのかという仕組みが、寮に限らず、いろいろなところでうまくできているようだ。だが、日本の場合はそうではなくて、国からのお金しかないという原則だったため、税制とか社会の仕組みが大分違うと感じた。日本でそういうファンドレージングのようなことが可能になるのか。特に、施設は非常にお金がかかる部分であり、今の仕組みの中で全部やろうとするとやはり相当難しいが、それ以外の様々な財務的な手法を開発せざるを得ないと思う。

○東大の場合、ざっくり試算すると、施設整備のために年間150億くらい必要となる。また、17年度以降は毎年60億円から70億円くらいずつ建物の固定資産が減っており、サステナブルにはなっていない。このような状況のため、外部資金を入れやすい環境を全体でつくっていただくというのも大きいと思う。例えば、税制の問題があるが、寄附をした場合に税制で優遇措置が得られるとか、国というレベルで顕彰をするとか、外部からの寄附が入りやすい環境ができれば、少なくともポジティブな方向には行くと思う。

○日本の企業が国内にしている寄付の4倍ぐらいの額がアメリカに行ってしまっている。企業の方に伺うと、アメリカに寄付したほうがメリットが高いということもない。国内への寄附の推進について考える必要がある。

 

 

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