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   国立大学(短期大学,高等専門学校,大学共同利用機関を含む。以下同じ。)の施設は,教育研究を支え,また,大学における理念や目標を具現化するための基盤として,極めて重要である。さらに,国立大学法人として,法人化の趣旨を踏まえ,自らの資産として自主性・自律性を持って施設を管理運営していく必要がある。
   一方,国立大学施設の現状は,2,400万平方メートルを超える面積を有しているものの老朽化・狭隘化が指摘されており,その早急な解消を図るために,現在,「国立大学等施設緊急整備5か年計画」が進められている。
   また,施設の維持管理,運営についても立ち遅れが指摘されているところであり,平成14年5月,「今後の国立大学等の施設管理に関する調査研究協力者会議」において,法人化後の国立大学の施設管理の基本的考え方を示した報告書「「知の拠点」を目指した大学の施設マネジメント−国立大学法人(仮称)における施設マネジメントの在り方について−」が取りまとめられている。この報告書において,施設マネジメントをトップマネジメントの一環として位置付け,経営的視点を踏まえて施設を整備するとともに,所有する施設を効率的に管理し,有効活用を図る必要があることなどが提言されたところである。さらに,この報告書では,国立大学は,個々の大学が掲げる理念及び教育研究に係る目標に基づき,教育研究を行う上で,これにふさわしい施設を整備し,大学の経営資産として管理運営していく必要があるとしている。
   しかし,この報告書で提言された「施設マネジメント」は新たな概念とも言えるものであり,その導入の推進を図るためには,施設マネジメントの目標としての施設水準に関する基本的考え方や具体的な実施方策等を国立大学に示すことが強く求められていた。
   このような状況を踏まえ,「今後の国立大学等施設の整備充実に関する調査研究協力者会議」において,今後の施設整備及び管理運営に関する検討に当たって,法人化後の国立大学の役割として施設マネジメントに係る取組が重要であるとして,専門的観点から検討することを目的とする「施設の管理運営に関する専門部会」を設置した。
   法人化後の施設の整備や管理運営に係る新たな枠組み※1が検討されている中で,この専門部会では,大学経営,経済学,建築学など様々な分野の学識経験者をはじめ,国立大学の研究者,民間の総合デベロッパーや設計コンサルタント会社の専門家が参画し,知の拠点にふさわしいこれからの国立大学の教育研究環境の充実を図るために必要な施設マネジメントの実施方策等について専門的な観点から調査研究を行った。
   今後,国立大学は教育研究の個性化を図りつつ,産学官連携や地域との共生等の視点も踏まえ,様々な教育研究活動を展開していくことになると思われるが,本報告書では,大学の基本的機能である教育と研究を中心に,施設マネジメントを導入する際の基本的視点,目標としての施設水準に関する基本的な考え方及び具体的な実施方策等について提示している。
   法人化する国立大学においては,理念や教育研究の目標の達成に向けて大学経営が益々重みを増していくと考えられる。本報告書が大学経営の重要な要素の一つとなる施設マネジメントに取り組む際の一助となれば幸いである。


※1    施設の整備や管理運営に係る新たな枠組み:平成15年7月16日に公布された国立大学法人法においては,施設の整備や管理運営については,1土地・建物は基本的には国から各法人に出資し,各法人が保有する資産の根幹となること,2施設整備費は,国からの補助金を基本的な財源としつつ,長期借入金や自己収入の活用が可能となることとされている。また,施設の維持管理費については,運営費交付金に算定すること,その執行は各法人の裁量に委ねることが検討されている。

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