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3   施設マネジメントの目標としての施設水準

   既存施設に係る課題に対し,教育研究活動等を踏まえて,施設マネジメントの目標としての施設水準を適切に設定する必要がある。
   国は,国立大学が適切な施設水準を設定できるよう基礎的な情報を提供することが必要である。


1    施設マネジメントの目標としての施設水準
   既存施設に係る取り組むべき課題に対し,教育研究活動,与条件及び利用者の要望等を踏まえて適切な目標を設定することが重要である。その際,安全・衛生や環境等を基本的事項とした上で,クオリティマネジメント,スペースマネジメント及びコストマネジメントを総合的に判断し,例えば,建物の機能,スペース配分の考え方,各実験室等の必要機能,コストに関する数値目標などの施設水準を定めることが必要である。

2    基本的事項
 (安全・衛生の確保)
   施設に係る安全・衛生などの関係法令を遵守するとともに,施設に係る事故の未然防止及び事後の対応に関する考え方を明確ににする必要がある。
   実験室の安全・衛生環境を確保するためには,実験室の運用方針や化学物質の管理体制と整合した実験室の機能並びに化学物質等の管理や廃棄物の処理に係る機能を確保する必要がある。
   研究エリアには,適切なセキュリティ対策を施すとともに,場所や内容に応じて段階的なセキュリティ機能を定める必要がある。

 (環境への配慮)
   国立大学は,環境への負荷の低減について,省エネルギー機器の採用,再生材料の使用などに関して目標を定めることが必要である。

3    クオリティマネジメント
   1)教育施設として機能の確保
     
   教育学習内容や教育方法の変化に対応するために,目的に応じて情報機能等の充実などの高機能化が重要である。また,学生が自己を研鑽するために主体的に行う学習やディスカッション,制作・創作等の多様な活動ができる機能を確保するためには,図書館だけでなく活動内容に則した学習の場※9を提供できるように配慮することが重要である。

   2)研究施設として機能の確保
     
   研究施設は,利用者の利便性,実験材料や機材等の流れ,情報環境及びエネルギー供給の観点から,その内容に応じた適切な機能を確保することが重要である。
   外部の研究者や異分野の研究者のディスカッションや交流活動等を推進するためには,様々な形態の意見交換ができるように,情報機能などの高機能化を図った場を設ける必要がある。

 (研究の変化への対応)
   研究の変化に対応できるように,例えば,機材の入替えの対応を重視するなど施設機能の向上を図る必要がある。なお,費用対効果の観点から,化学系,生物系など研究形態に応じて施設機能を細分化して設定するなどの配慮が大切である。
   電気設備や情報通信設備,給排水設備等は,安定性のあるシステムとするとともに,研究内容の変化を見据えた柔軟性や拡張性について,その考え方を定めることが重要である。

   3)生活機能の向上
       (ユニバーサルデザイン)
   大学施設は,教育研究活動を支えるだけでなく,学生や研究者等施設利用者の行動を支援するなど施設利用者の要望を踏まえた機能の設定が重要である。例えば,バリアフリー対策,外国人研究者や留学生への配慮,社会人学生など広範な年齢層の施設利用及び男女共同参画の観点からの配慮が必要である。これらについて,大学キャンパスのユニバーサルデザイン※10として,計画的かつ段階的に導入する目標を定める必要がある。

 (生活関係施設の機能)
   大学の諸活動等を充実するためには,生活等に係る機能の向上が必要である。例えば,学生が通常使用する食堂等だけでなく招聘した外国人研究者との交流の場など用途に応じた機能を設定するなどの配慮が必要である。

4    スペースマネジメント
   1)教育の場のマネジメント
     
   教育関係施設は,少人数教育や一斉授業など利用人数や利用形態に応じて柔軟かつ全学的に施設を運用し,稼働率の向上を図り,空いた講義室を研究室に転用するなどスペースの有効活用を図ることが重要である。
   学生の自主的な学習等の諸活動に活用するためには,高機能化された講義室の夜間活用など教育スペースの多様な運用方法の検討も重要である。

   2)研究の場のマネジメント
     
   研究内容の変化に速やかに対応するため,既存施設の範囲内で,学部等の枠を超えて利用できる共用スペースについて,その他の施設との構成比率を検討することも有効である。
   施設を有効に活用するため,利用回数が少なく共同でも問題の少ない研究のために,全学で共同使用する研究スペースの配分面積などについて検討するとともに,実験装置や書籍類の集約化等についての検討が重要である。

   3)生活の場のマネジメント
     
   既存施設の配分に当たっては,学生や研究者等がキャンパスに長時間滞在することを考慮し,その生活を支援するためのスペースを考慮することが重要である。例えば,学生食堂のスペース,休憩・リフレッシュスペース,談話・交流スペース,アメニティスペース等について利用状況に応じて配分を行うことが望ましい。

5    コストマネジメント
   既存施設の要修繕箇所(負の資産)の解消に係る目標を設定する必要がある。
   建物の用途毎に維持管理費等の目標を定める必要がある。
   特定の年度に必要な改修・修繕が集中しないように,中長期的な観点から毎年の改修・修繕費を平準化する必要がある。
   コスト縮減の観点から,光熱水量等の削減に関する目標を定める必要がある。

6    国の行う情報提供等
 (施設マネジメントに係る基礎的情報の提供)
   国は,各国立大学が多様な用途や目的に応じて自主的に施設水準を設定できるよう基礎資料の提供を行う必要がある。

 (教育研究機能の充実に対応する施設のモデル等の提供)
   国は,教育研究環境について,実験スペースと居住スペース及び附室の構成と装備内容,面積など安全性や機能面に関するモデル等を示すことが必要である。




※9    無線LANの装備,インターネットカフェ形式のラウンジ等の検討も有効である。
※10    バリアフリーは,障害によりもたらされるバリア(障壁)との考え方であるのに対し,ユニバーサルデザインはあらかじめ,障害の有無,年齢,性別,人種等に関わらず多様な人々が利用し安いよう都市や生活環境をデザインする考え方(「障害者基本計画」より抜粋)


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