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はじめに

  地震発生時に児童生徒等の安全を確保するとともに、地域住民の応急避難場所としての役割も果たすため、学校施設の耐震性能の向上を積極的に図っていくことは重要な課題である。
  兵庫県南部地震においても、学校施設その他の文教施設は大きな被害を被ったものの、発生時刻が早朝であったため、幸いにも人命が失われるような事態には至らなかった。しかし、耐震性能が不足している学校施設は全国に多数存在しており、これらの耐震化が緊急の課題であることは明らかである。
  これまで、学校施設の耐震化に関する様々な調査研究が日本建築学会等においてなされ、その報告を基に、重要度係数を採用すること、設計地震力を割り増すこと、新耐震基準施行(昭和56年)以前に建築された学校施設について早急に耐震化を推進することなどについて、文部科学省から地方公共団体等の設置者に対し要請がなされてきた。
  一方、消防庁や内閣府が平成13年度に実施した調査において、学校施設を含む公共施設の耐震化がそれほど進んでいないとの結果が出され、また、文部科学省が、平成14年5月に全国の公立学校施設の耐震改修状況について緊急に調査した結果においても、「昭和56年以前の基準で建築された建物のうち耐震診断を行ったものは、わずか3割に過ぎず、公立学校施設全体では耐震性に問題がある建物は約4割と推計される。」等の報告がなされた。
  耐震化が進まない理由としては、多くの地方公共団体等においては、数多くの学校施設を保有しており、一気に全ての学校施設の耐震化を図ることが困難であるという事情とともに、所管する学校施設に係る耐震化優先度の判定などを含む耐震化推進計画の策定手法が確立されていないことなども大きな要因として挙げられる。
  このような状況に鑑み、本調査研究協力者会議が平成14年10月に設置され、それまでの学校施設の耐震化に関する調査研究等の成果を踏まえた上で、地方公共団体等の設置者が、所管する学校施設全体の耐震化を早急に図るための方策などについて更に検討を行った結果を、今般、報告書として取りまとめるに至ったものである。
  第1章において、学校施設の耐震化に係る基本的な考え方を述べ、第2章において、耐震化優先度調査や耐震診断等の結果による耐震化事業の緊急度の判定方法など耐震化推進計画の策定手法及び留意点を提示した。また、第3章において、学校施設の耐震化に関する今後の推進方策を述べ、全体として学校施設の耐震化の推進について総合的に提言した内容となっている。
  学校施設の耐震化を推進するためには、その重要性や緊急性について地方公共団体等の設置者はもとより、保護者や地域住民等の関係者の間で共通に理解した上で、具体的な対策を講じていくことが重要である。これらの取り組みの際に、本報告書が有効に活用され、それぞれの設置者において実情に応じた耐震化推進計画の策定が進み、全国の学校施設の耐震化が着実かつ迅速に進められることを、本協力者会議としては切に期待するものである。


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