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第1章 学校施設の耐震化に関する基本的な考え方

1  学校施設の耐震化の現状
(1)  近年の地震による学校施設の被害
     我が国は世界有数の地震発生地域にあり、古くから、住宅、庁舎等の施設と同様に、学校施設も地震による被害を受けてきた。
  近年の地震による特徴的な被害としては、昭和43年に発生した十勝沖地震や昭和53年に発生した宮城県沖地震において、学校施設の桁行方向の柱がせん断破壊*1する損傷などが数多く見られた。このような被害を防止するため、建築基準法施行令について、昭和46年には柱の帯筋*2の間隔を狭くするなどの改正、昭和56年には新耐震設計法*3を導入する改正が行われた。
  また、平成7年に発生した兵庫県南部地震では、3千8百余りの学校施設が被害を受けたが、被災した建物を調査した結果、新耐震基準施行(昭和56年)以前に建築された建物の被害が大きく、とりわけ昭和46年の建築基準法施行令改正以前に建築された学校施設では、倒壊又は崩壊した例が見られた外、屋内運動場の軽量プレキャストコンクリート造屋根の落下など極めて深刻な被害も見られた。逆に、新耐震基準施行後に建築された建物については、それほど大きな被害を受けていないことが明らかになり、新耐震基準施行以前に建築された建物の耐震化を推進していくことの必要性が強く指摘された。
  さらに、平成13年に発生した芸予地震では、一部の学校施設において構造体の被害が発生した外、屋内運動場の壁が落下する被害が発生しており、構造体とともに、壁や天井などの非構造部材等*4の耐震性を確保することの重要性が改めて認識された。

(2)  学校施設の耐震化に関するこれまでの取組み
     学校施設の耐震性が確保されるよう、従来から、学校施設の構造等に関する調査研究や学校関係者を対象とした研修会などが、文部科学省等により実施されてきたところである。特に、兵庫県南部地震における学校施設の被災状況等を踏まえ、個々の学校施設自体の耐震化に関する調査研究が実施され、その成果は、「文教施設の耐震性の向上について(平成7年5月19日付け及び平成8年9月30日付け通知)」*5、「『屋内運動場等の耐震性能診断基準』の策定について(平成8年6月27日付け通知)」、「『文教施設の耐震性能等に関する調査研究』の報告書の送付について(平成9年12月10日付け通知)」*6、「文教施設の非構造部材等の耐震性能確保について(平成14年5月31日付け依頼)」及び「学校施設の耐震改修の推進について(平成14年5月31日付け依頼)」等により、学校関係者に提示されてきたところである。
  また、学校の設置者が、学校施設の耐震化を円滑に進められるよう、耐震化事業に係る経費に対する助成も行われてきている。
  公立学校については、「大規模地震対策特別措置法(昭和53年)」及び「地震防災対策強化地域における地震対策緊急整備事業に係る国の財政上の特別支援に関する法律(昭和55年)」の制定により、地震防災対策強化地域(想定される東海地震によって大きな被害を受ける可能性がある地域:静岡県の全域と神奈川県、山梨県、長野県、岐阜県、愛知県の一部)における小中学校の地震防災対策としての改築及び補強事業に対する補助率の嵩上げ措置(補助率1/3→1/2)が講じられてきている。また、平成14年4月には、東海地震の震源域の見直しに伴う地震防災対策強化地域の見直しが行われ、対象地域が8都県に拡大されたところである。
  さらに、兵庫県南部地震を踏まえて制定された「地震防災対策特別措置法(平成7年)」において、公立小中学校及び盲・ろう・養護学校の改築及び補強事業等*7が地震防災緊急事業五箇年計画の内容として盛り込まれ、小中学校の非木造校舎の補強事業については、補助率の嵩上げ措置(補助率1/3→1/2)が講じられている。平成13年3月に、同法の一部改正法が成立し、嵩上げ措置は平成17年度末まで延長され、現在、平成13年度から平成17年度をその期間とする第二次地震防災緊急事業五箇年計画により、公立学校施設の耐震化事業が進められている。なお、平成7年度から、事業の実施に伴う耐震診断費、耐力度調査費についても国庫補助の対象とする等の充実も図られてきている。
  私立学校についても、大規模災害における児童生徒の安全確保を図る観点から、防災機能の強化のための施設整備事業が進められてきている。
  具体的には、大学、短期大学及び高等専門学校については、私立大学・大学院等教育研究装置施設整備費の中で私立大学等防災機能強化施設整備事業(補助率1/2以内)として、また、高等学校、中等教育学校、中学校、小学校及び特殊教育諸学校については、私立高等学校等施設高機能化整備費の中で防災機能強化施設整備事業(補助率1/3以内)として、さらに、幼稚園については、私立幼稚園施設整備費の中で耐震補強事業(補助率1/3以内)として、新耐震基準施行(昭和56年)以前に建築された私立学校施設の耐震補強に要する工事費及び耐震診断費に対する国庫補助が行なわれてきている。この他、日本私立学校振興・共済事業団において、改修・補強事業に対する融資制度なども整備されている。
  国立学校については、従来より、改築や耐震補強などにより建物の耐震化が順次進められてきており、現在は、平成13年3月に閣議決定された第二期科学技術基本計画を踏まえて同年4月に策定された「国立大学等施設緊急整備5か年計画」等に基づき、計画的に耐震化事業が実施されている。

(3)  学校施設の耐震化に関する調査結果
     このように、兵庫県南部地震以降、学校施設の耐震化に関する様々な施策が講じられてきたものの、一方、最近実施された各種調査結果によると、一部の地域を除いては、学校施設の耐震化は必ずしも順調に進んできているとは言えない。
  消防庁の検討委員会が平成14年2月に作成した「防災拠点となる公共施設等の耐震化推進検討報告書」においては、平成13年4月現在、昭和56年以前に建築された一定規模以上の文教施設で、耐震診断を既に実施した棟の割合は31%、平成13年度末時点で耐震性能を有する棟の割合は46%等の調査結果が報告された。*8
  平成15年1月の内閣府(防災担当)による「地震防災施設の現状に関する全国調査/最終報告」においては、平成14年3月現在、小中学校等約5万1千施設(約15万2千棟)における耐震化率は46%等の調査結果が報告された。*9
  文部科学省においても、公立小中学校の平成14年4月現在の耐震改修状況について調査を実施し、その結果を平成14年7月に取りまとめたが、昭和56年以前に建築された一定規模以上の施設約8万8千棟における耐震診断実施率は31%、耐震性があると推定される棟の割合は57%(推定耐震化率)等の調査結果が報告された。*10
  国立学校施設については、平成14年5月現在、昭和56年以前に建築された施設約1千4百万m2のうち耐震診断を実施したものは56%、全保有面積約2千4百万m2のうち耐震性があると推計される施設の割合は58%(推定耐震化率)となっている。
  私立学校施設や幼稚園施設については、平成14年度に調査が行われており、近々その結果が取りまとめられる予定となっている。

2  学校施設の耐震化の必要性
(1)  児童生徒等の安全確保及び教育活動等の早期再開

     学校施設は、多くの児童生徒等が一日の大半を過ごす学習、生活等の場であることから、安全で豊かな環境を確保することが必要不可欠である。従って、地震発生時においては、児童生徒等の人命を守るとともに、被災後の教育活動等の早期再開を可能とするため、施設や設備の損傷を最小限にとどめることなど、十分な耐震性能を持たせて学校施設を整備することが重要である。

(2)  非常災害発生時の地域住民の応急的な避難場所
     学校施設は、地域住民にとって最も身近な公共施設であり、また、児童生徒等のみならず地域住民の学習や交流の場ともなり、さらに、地震等の災害発生時には地域住民の応急的な避難場所としての役割も果たすことが求められる。このため、地震や余震発生時に、児童生徒、避難住民等の避難場所として必要となる機能も十分に果たすよう整備することが重要である。

(3)  学校施設としてふさわしい耐震性能目標の設定
     学校施設については、地震発生時の児童生徒等の安全確保、被災直後の応急避難場所としての機能等を考慮し、新増築、改築、耐震補強といったすべての整備に共通して、重要度係数の採用や設計地震力の割増など、十分な耐震性能を確保する設計を行うことが重要である。
  また、その際、内陸直下の地震を発生させる活断層*11や、広範囲に大きな影響を及ぼす海溝型地震*12により当該地域に予測される地震動の大きさを考慮することも大切である。
  なお、予測される地震動については、地震調査研究推進本部*13等が作成する「全国を概観した地震動予測地図(平成16年度末を目途に作成される予定)」*14や、発生可能性が高いとされている地震に注目して最新の知見に基づき作成されている「シナリオ地震動予測地図」*15等を活用することが考えられる。

3  既存学校施設の耐震化推進に係る基本方針
(1)  倒壊又は大破する恐れのある学校施設の優先的な耐震化対策
     文部省(当時)が、平成6,7年度に(社)日本建築学会に委嘱した「文教施設の耐震性能等に関する調査研究」において報告された兵庫県南部地震による文教施設の被災度調査結果(参考資料2参照)によると、地震による被害は、新耐震基準施行(昭和56年)以前に建築された文教施設に集中しているものの、その損傷割合は建築年にかかわらず個々の建物の耐震性能によって、倒壊、大破から小破、軽微まで千差万別の状況となっている。従って、全国の各地域においても、一部の学校施設については、極めて耐震性能が低く、大地震時には倒壊や大破といった被害を生じる可能性があることを想定する必要がある。
  我が国においては、内陸直下の地震を発生させる活断層や、広範囲に大きな影響を及ぼす海溝型地震の発生領域は、全国的に分布していることなどから、大きな被害をもたらす地震が起こらないと言い切れる地域はない。昭和23年の福井地震から平成7年の兵庫県南部地震までの約50年間は、死者・行方不明者50人以上を出すような大きな内陸地震は発生しておらず、この時期は、地震活動の静穏期であったとも言われているが、歴史的にみると、過去200年間において、大きな被害を出した地震は、統計上、内陸では、活断層を中心に10年に一回程度、海域では、海溝型地震を中心に20年に一回程度の頻度で発生している。
  また、地震を直前に予知することは、現在の科学技術水準では一般に困難であるとされている。従って、大きな被害をもたらす地震動は全国のどの場所でも発生する可能性があり、とりわけ主要な活断層や海溝型地震の影響を受けやすい場所ではその発生の可能性が特に高いと考えておく必要がある。
  このような状況を踏まえ、地震発生時における児童生徒等の人的被害を防止するためには、第2章で説明する耐震化優先度調査及びそれに基づく耐震診断又は耐力度調査を早急に実施することにより、個々の学校施設の耐震性能を的確に把握した上で、当該地域に予測される地震動の大きさも考慮し、倒壊又は大破する恐れのある危険度の大きいものから優先的に改築や耐震補強といった耐震化事業を実施していくことが重要である。

(2)  学校施設の特性に適合する耐震診断の早期実施
     学校施設のうち、校舎については、鉄筋コンクリート造で柱や梁で構成されるラーメン構造のものが多いことから、耐震診断の基準としては、一般的に、「2001年改訂版既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準・同解説」((財)日本建築防災協会)における第2次診断によることが適切である。 ただし、明らかに梁降伏型や基礎回転などが支配的な崩壊機構になる建物などでは、第3次診断も併用して総合的に耐震性能を判定することが望ましい。一方、鉄筋コンクリート造で主として強度抵抗型となる壁式構造、又は、比較的耐震壁が多く配置されたフレーム構造の建物等で、耐震性能を簡略的に評価する場合は、第1次診断によることも考えられる。また、屋内運動場に係る耐震診断の基準としては、「屋内運動場等の耐震性能診断基準(平成8年版)」(文部科学省大臣官房文教施設部)によることが適切である。
  さらに、地方公共団体等の設置者は、学校施設の耐震診断を効果的に進めるため、耐震診断の外部への委嘱に際しては、学校施設の耐震診断に関する知識や経験の豊富な建築構造設計事務所を選定するとともに、建築構造を専門とする学識経験者、各都道府県の建築士事務所協会等に設置されている判定・評価委員会や耐震診断等に関する全国ネットワーク委員会*16等と連携することが望ましい。

(3)  耐震診断結果や耐震化推進計画の公表
     学校施設の耐震化を計画的に推進していくためには、その重要性及び緊急性について、地方公共団体等の首長をはじめとして、教育委員会、財政部局、建設部局、防災部局等の行政関係者(学校法人の場合は事務部局関係者。以下同じ。)、教職員、保護者、地域住民等の関係者間で理解を促進していくことが重要である。
 このためには、地方公共団体等の設置者は、所管する学校施設の耐震化優先度調査や耐震診断の結果、並びに、耐震化推進計画を策定した場合はその内容及び検討経緯等について、学校関係者に対し公表した上で、耐震化事業の緊急度等について幅広い合意を形成していくことが重要である。

(4)  学校施設の非構造部材等の耐震点検や耐震化対策の実施
     地震発生時に学校施設の柱、梁等の構造体が致命的な被害に至らない場合においても、屋内運動場や校舎等における天井材、体育器具、照明器具、音響器具等の落下、また、外壁や内壁等の剥落・落下、窓ガラスの飛散、さらに、電気・機械設備機器、家具、重量物等の脱落・転倒等、いわゆる非構造部材等の損傷によって、児童生徒や避難住民等に人的被害を及ぼすことが十分に考えられる。
  従って、地方公共団体等の設置者は、学識経験者や専門技術者とも連携の上、(社)日本建築学会が平成14年3月に文部科学省からの委託調査研究報告として取りまとめた「学校施設の非構造部材等の耐震点検に関する調査研究報告書」等を参考として、これらの非構造部材等についても早急に耐震点検を行い十分な耐震化対策を講じることが重要である。

(5)  学校施設の質的向上と耐震化の推進
     現在、学校施設については、耐震化の推進の外にも、文部科学省が策定した学校施設整備指針*17に示されているように、個別学習やグループ学習に対応するための多目的スペースや新世代型学習空間の設置、コンピュータやLAN等を導入した情報環境の整備、児童生徒等が一日の大半を過ごす生活の場としてのゆとりと潤いのある施設づくり、児童生徒等の安全を確保するための防犯対策、省エネや省資源など環境に配慮した施設づくり、地域住民も利用しやすい施設計画等、様々な課題を抱えている。
  地方公共団体等の設置者は、所管する学校施設の耐震化を推進する場合、これらの学校施設の質的向上に係る課題についても併せて十分に検討し、必要な対策を講じていくことが望ましい。このため、改築や耐震補強といった耐震化事業を検討する場合、学校施設整備指針を踏まえ、単に建築構造を専門とする設計者のみならず建築計画を専門とする設計者とも十分に連携し、学校施設として総合的な整備計画を企画・立案することが望ましい。

(6)  耐震化推進計画の早期策定
     これまで述べた既存学校施設の耐震化推進に係る基本方針の下に、地方公共団体等の各設置者は、所管するとりわけ新耐震基準施行(昭和56年)以前に建築された学校施設について、耐震化優先度調査、耐震診断、改築、耐震補強その他の耐震化に係る施策を順次推進していく必要がある。
  また、地方公共団体等の設置者は、これらの耐震化に係る施策を効果的かつ合理的に実施することが要請され、このためには、第2章で述べる既存学校施設の耐震化推進計画策定上の留意事項を十分に検討した上で、耐震化に関する個別事業の緊急度や年次計画等を内容とした耐震化推進計画を早急に策定するなど、計画的に学校施設の耐震化を推進していくことが重要である。



用語説明
*1 柱等のコンクリート部材の地震時に見られる破壊形式の一つであり、極めてもろく破壊し、急激に部材の耐力が失われる。
*2 柱のせん断破壊を防止する目的で、鉄筋コンクリート造の柱の上下方向に配置された鉄筋(主筋)を拘束するように取り巻かれる鉄筋。
*3 十勝沖地震や宮城県沖地震などの大地震における建物の被害状況等を踏まえ、中程度の地震に対してほとんど被害を生じず機能を維持し、大地震に対して部分的被害は生じても人命に被害を生じないことを目標として、新たに開発された耐震設計法。従前の許容応力度設計(一次設計)に加えて、建築物のじん性を考慮し保有水平耐力の確認(二次設計)を行うなどの内容となっている。
*4 構造設計・構造計算の対象になる構造体(柱、梁、耐力壁等)以外の部材等で、建築非構造部材(外壁、天井材、内装材、床材、屋根材等)、電気・機械設備(照明器具、空調機器、各種水槽、配管等)、備品(家具、教材・教具等)等を指す。
*5 新築建築物及び既存建築物の耐震計画・設計上の留意点を示したものである。なお、両通知は、平成11年4月20日付け「文教施設の耐震性の向上の推進について」の通知に統合されている。
*6 大空間構造(屋内運動場)の屋根(軽量プレキャストコンクリート造)の耐震診断・改修方法について提示した報告書。
*7 地震防災上必要な建物の改築・補強事業の外に、避難住民等のための飲料水、電源等を確保するために必要な井戸、貯水槽、水泳プール、自家発電設備その他の施設及び設備も五箇年計画の対象となっている。
*8 消防庁が、地方公共団体が所有する公共施設等について、平成13年4月1日現在の耐震診断・改修の実施状況等について調査したもの。本調査は、建築基準法第20条第2号に定める構造計算による安全性の確認義務が課せられる、非木造の建築物で2以上の階数を有し、又は、延べ面積が200m2を超えるものを対象として実施された。また、「耐震性能を有するもの」とは、昭和57年以降建築の棟並びに昭和56年以前建築の棟のうち、耐震診断の結果改修の必要がない棟及び改修の必要がある棟で改修済み(平成13年度末見込み)の棟の合計を指す。
*9 内閣府(防災担当)が、全国47都道府県にある国立、公立、私立の小学校、中学校、高等学校、高等専門学校、大学、短期大学及び幼稚園を対象として、平成14年3月現在の耐震診断や耐震改修の状況等を調査し、回答のあったものを集計したものである。なお、対象となる建物の規模は、消防庁調査と同様であり、また、体育館並びに盲学校、ろう学校及び養護学校については、別に集計が行われている。
*10 文部科学省が、公立小中学校を対象として、2以上の階を有し、又は、延べ面積200m2超の非木造建物について、平成14年4月1日現在で耐震診断や耐震改修の実施状況を調査したもの。「耐震性があると推定される棟」とは、昭和57年以降建築の棟並びに昭和56年以前建築の棟のうち耐震診断の結果改修の必要がない棟及び改修の必要がある棟で改修済みの棟の合計に、昭和56年以前の建築で耐震診断未実施の棟のうち、耐震性ありと推計した棟数(耐震診断を実施した棟のうち改修の必要がないと診断された棟の割合を耐震診断未実施の棟数に乗じて得た棟数)を加えたものを指す。
*11 地層や地形にある上下や左右の食い違いを断層と呼び、この内、これまでに千年〜数万年の間隔で活動を繰り返し、今後も活動が予測される断層のことを「活断層」と呼ぶ。日本の内陸に活断層は、現在、約2000あることが確認されており、兵庫県南部地震(野島断層を含む六甲・淡路断層帯が活動したとされている)のように内陸直下の大きな地震を発生させる可能性がある。
*12 日本列島の太平洋側の海底には海溝が連なっており、これらの場所では、海のプレートが陸のプレートの下に沈み込んでいる。この場合、海のプレートが陸のプレートの先端部をひきずり込んでいるが、それによって歪んだ陸のプレートの先端部が数十年〜数百年の間隔で跳ね上がることによって地震が発生する。また、海溝付近のプレートの内部が破壊することにより地震が発生することもある。これらを総称して「海溝型地震」と呼ぶ。これらの地震は、広範囲に大きな揺れを発生させるほか、多くの場合震源域が海域にあり津波を伴うことが多い。
*13 地震に関する調査研究の成果が、国民や防災を担当する機関に十分に伝達され活用される体制になっていなかった兵庫県南部地震の際の教訓を踏まえ、平成7年7月、「地震防災対策特別措置法」に基づき設置された政府の特別の機関。文部科学大臣を本部長とし、関係府省の事務次官等を本部員としており、その下に、関係機関の職員及び学識経験者から構成される「政策委員会」と「地震調査委員会」が設置されている。
*14 ある一定の期間内に、ある地域が強い地震動に見舞われる可能性を確率を用いて予測した地図のこと。政府の地震調査研究推進本部の地震調査委員会において、平成16年度末を目途に「全国を概観した地震動予測地図」が作成される予定である。(震源断層を特定した地震だけではなく、震源断層を予め特定しにくい地震も含め日本において発生が予測されるすべての地震が考慮される。また、兵庫県南部地震のような活断層による内陸直下の地震を考慮したものとして、再現期間1000年(50年超過確率5%)の地図が作成される予定である。)
*15 震源断層を特定した地震による震度分布を示した地図のこと。地震調査研究推進本部の外、中央防災会議、地方公共団体等が防災計画を立案するため被害想定を行う際に作成されている。
*16 兵庫県南部地震の教訓を踏まえ、耐震診断や改修に関係する多くの団体・組織が情報を共有するとともに、関係行政機関と連携することを目的として、平成7年に発足した既存建築物耐震診断・改修等推進全国ネットワーク委員会のこと。平成14年12月現在、95団体が参加しており、財団法人日本建築防災協会に事務局が設けられている。
*17 文部科学省では、学校施設の計画・設計上の留意点を示した「学校施設整備指針」を学校種別に取りまとめ、地方公共団体等の設置者に対して提示している。




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