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学校施設の耐震化推進に関する調査研究協力者会議

2002/11/29 議事録
学校施設の耐震化推進に関する調査研究協力者会議(第2回)議事録

学校施設の耐震化推進に関する調査研究協力者会議(第2回)議事録

【日  時】平成14年11月29日(金)  10:00〜12:00
【場  所】文部科学省  分館2階  201特別会議室
【出席者】
[協力者]部勝征,石山祐二,大井謙一,岡田恒男,岡本哲美,壁谷沢寿海,木村秀雄,工藤和美,久保哲夫,佐野孝,高梨晃一,藤田正人,宮本文人,村上雅也
(敬称略)
[事務局]原文教施設部長,大島施設企画課長,中村防災推進室長,丹沢文教施設環境対策専門官,増川施設助成課課長補佐,前田地震調査管理官,前田地震調査研究課課長補佐  他

【資  料】
資料1 前回議事録(案)
資料2地震調査研究の成果の学校施設耐震化推進への活用の一部
資料3静岡県における学校施設の地震対策

参考1「学校施設の耐震化推進に関する調査研究」の主な検討項目(案)
参考2第155回国会 参・文教科学委員会(H14.11.7)会議録(抄)
参考3学校施設の耐震化推進に関するアンケート調査(公立学校)について
参考4学校施設の耐震化推進に関する現地調査(公立学校)について
参考5地震調査研究推進本部の概要及び活動状況
参考6日本における被害地震の発生頻度に関する統計的分析について  ほか

【会議概要】
(1)開会
(2)議事

【議  事】
(1)地震動予測に関する研究の進捗状況について
事務局より資料2,参考5〜6について説明。

  地震調査研究推進本部では,発生確率を含めて強震動評価を行っている。この発生確率は,地震の繰り返し間隔がどの程度で,一番最近起きた地震がいつであるか,そのいつということと繰り返し間隔とにどのくらいばらつきがあるかの3点から確率を計算している。

  活断層の地震発生確率は,人間のライフサイクルに近い30年以内という確率を使って表しており,糸魚川ー静岡構造線では14%と出ている。また,平均活動間隔(上段)と最新活動時期(下段)は,上段が約1,000年に1回起こる,下段が最近起きたのが今から約1,200年前ということを意味し,平均活動間隔から言えば,現在既に200年を超えており,地震がいつ起きてもおかしくない状況であることを示す。

  活断層については,1,000年単位の非常に長い繰り返し間隔を持っており,そこへ30年という人間のライフサイクルをもってくるので,30年以内に地震が発生する確率となると数値は小さくなる。一方,海の地震となると,100年に1回程度の頻度となり,最近話題になっている四国沖の南海地震,紀伊半島沖の東南海地震については,30年以内の確率となると発生確率は40〜50%と高くなる。

  地震調査研究推進本部では,あらかじめ震源を特定できない,どこで起こるか分からない,規模も分からないものを取り扱うこととしている。大きい地震ほど起こる回数が少ない,地震の規模は地域毎に異なるといったことを想定して,この場所でこの程度の地震が起こる確率を強震動予測として算出している。

  長野県の場合は,具体的に活断層を指定する,いわゆるシナリオ型地震というもので,これに基づいた震度分布が出てくる。また,別の活断層を指定すれば別の震度分布が出てくるわけで,それらを統合することについては,まだ行われていない。

  地震調査研究推進本部が進めているのは,どこでどの程度揺れるのか,それから一つの断層を決めるのではなくて,他でも起こる可能性がある地震を総合的に考慮したものを,最終的なアウトプットにすることになっている。全国的な地図が出来るのは平成16年末を目途にしているが,徐々に分かったところから発表していくことになると思う。

(2)自由討議

  地震がどのくらいの確率で起こりそうかということまでは分かるが,建物設計を震度6でやるのか震度7でやるのかについては,いつも悩むところである。また,耐震設計の中に,確率を含むことができるのかどうかが一番分かりにくい。

  近いうちに地震が起こるであろうという場合も,震源をあらかじめ特定できない地震の場合も,どこで起こってどの程度の規模のものが起こるということは比較的分かっている。その地震の大きさを設定し,構造計算をすればよいと思う。問題は,いつ起こるかという時間間隔の問題だと思う。長期評価の確率の値が建設工学の感覚とは違っているが,相対的にどの方向に施策を展開すべきか決める際には使えるのではないか。

  学校施設を全て震度6強以上で設計するかどうかというのは議論する必要がある。どういう順番でやるのか,どういう施策を行うのかという意味での確率評価ということであれば使えると思う。ただし,地震の発生が30年に10%だとすれば,施策を実行する根拠となり得るかどうかについては議論の余地がある。ただし,10%か30%か,もしくは0.1%かということであれば,優先順位を設定することはできると思う。

  確率そのものを使うのは難しい点もある。そういう意味では,その相対評価として,プライオリティをつける際には使い道があると思われる。

  優先度をつける際に,どの建物に予算をつぎ込んで補強するかということを考える必要がある。また,古い建物のみならず新しい建物の場合はどう考えるか検討することも重要である。

  設置者が地震動予測地図を踏まえ,学校建物についてどの程度の耐用年数を想定するかが重要である。これが決まれば,震度を出す前の速度とか加速度とかの物理量による情報によって,建物の設計者がどのくらいの強度を確保すべきか検討することになる。

  耐震化を図る順位付けに確率が使えるとのことだが,それは古い建物には使えるが,新しく作る建物とは分けて議論する必要がある。新しい建物の予算配分に使うことになると混乱が予想されるので分けて議論した方がいい。

  想定する地震の発生期間を100年,200年と長くすると,対応しなければならない震度がどんどん上がり,結局建物が設計できないということになる。このような議論を行い,関係者が納得して学校建物を設計することが重要である。

  地震調査研究推進本部や中央防災会議による地震評価レベルによれば,場合によっては現行基準で本当に安全かという懸念もある。

(3)事例研究(1)
佐野委員より資料3について説明。

  昭和51年に東海地震説が発表され,その翌年から静岡県は対策を立ててきている。また,阪神・淡路大震災を契機に,その見直しを行っている。

  阪神大震災以前は,東海地震の予知が可能だということを前提として対策を立ててきており,
  耐震性の目標については,倒壊しなければいいこととしていた。すなわち,地震予知されて警戒宣言が発令されれば,危険な建物からは逃げるということであり,人的な被害は受けないということを前提としていた。

  阪神大震災以降は,突発地震も考慮すべきだということになり,「300日アクションプログラム」を策定し,再度今までの対策を見直し総点検することとして,建築物の対策についても新たに耐震診断を行ってきている。

  静岡県では,地震対策が始まった当時から,静岡県独自の判定指標値を設け,この指標値に基づいて耐震化を進めており,Isoにあたるものを静岡県ではEtと称している。Etは,Es(耐震判定基本指標)にCi(重要度係数)をかけたり,地形の状況に応じて,割増をかけるということになっている。

  静岡県では,東海地震の震源域が当初から想定されていたので,その震源域からの距離に応じて,静岡県をA地域からE地域の5地域に区分した。震源域からの距離と,建物の階数・地盤の種別に応じて,それぞれのEs値を決定している。地盤種別は,1種から4種まであり,現行の基準法と違うところはあるが,静岡県の1種・2種が現行基準法の1種,3種が2種,4種が3種地盤となっている。

  平成8年に神奈川県西部地震の被害想定が発表され,静岡県の東部地域もかなり大きな揺れが生じることになるため,平成9年に地域図を変更した。静岡県の被害想定としては,1次から3次まで作成してある。

  診断結果の評価としては,AからEの5段階に分けて,その対策を講じている。Aが耐震性があるもの,Eが一番耐震性の低いものということで,表現としては建替えが望ましいものとしている。

  耐震診断については,阪神大震災前までの実績があり,学校については428棟,庁舎を含めて723棟の耐震診断を実施した。比較的耐震性のない,C,D,Eの3つのランクの合計は,全体の約65%となっており,これらについて何らかの対策が必要という結果が出ている。この時の診断の評価にあたっては,重要度係数は1.0としている。阪神・淡路大震災以降は,それまで対策を立ててこなかった建物全てについて再度耐震診断を行っている。

  県立高校の診断結果は,校舎については,330棟の診断結果のうち,対策が必要と判断されるC,D,Eのランクが75%となっている。県立の養護学校等については,階数が低いということもあり,高等学校と比べると比較的いい結果が出ている。

  耐震補強工事は昭和55年からスタートしており,鉄筋コンクリート建物については昭和63年でとりあえず終了している。69棟の建物を約90億円かけて補強し,その間に改築も同時に進めてきた。

  阪神・淡路大震災以降の対策としては,突発地震にも対応することとして,人命の安全確保と授業の再開ということを目標にしてきている。

  静岡県立の高校は100校あり,その中で鉄筋コンクリート造の建物が790棟,その内旧耐震の建物が490棟ある。この中で,平成6年までに対策が終わっているものを除いた421棟に対しての耐震診断を実施した。その421棟のうち,C,D,Eランクのものについて,今後対策を講じていくこととしている。Eランクのものについては,補強を行ったものが2棟,改築を行ったものが13棟である。また,Eランクの建物は建替えということで考えているので,あくまでも地震を受けた時に,倒壊しなければいいということで応急対策を実施した。従って,耐震性のレベルも,少し低めになっている。Dランクのものについては,平成16年に完了することを目標に対策を進めている。Cランクのものについては,体育館の補強が済み次第,対策を講じていく考えである。盲・聾・養護学校については,対策は完了している。

  鉄骨造の建物については,保有棟数が1,381棟,その内未対策の建物が342棟あり,今後対策を進めていくことにしている。その内避難所として指定されている学校の体育館の補強について,優先的に実施することを考えている。

  耐震診断の実施体制は,基本的には,建築事務所協会に依頼し,その結果に基づいて,営繕部局が,補強計画,実施設計等を行っている。

  市町村立学校については,学校数が全体で1,130校,建物数が7,598棟,その内旧耐震以前の建物が2,500棟となっており,この対策が課題である。また,約2,100棟については,耐震診断を実施済みであり,診断率は約85%となっている。さらに補強済みの建物が約950棟あり,耐震化率を見ると約75%という結果になっている。

  静岡県では独自の助成制度を持っており,特に防災拠点,避難所を中心に,診断から工事まで市町村に対して補助を行っている

(4)自由討議

  応急補強については,工事費が安くなるというメリットから外付けブレース工法を採用した。さらに,今年度,日本建築防災協会より,この工法に関するマニュアルが発行されたことから,市町村がこの工法で応急補強を行うものに対して助成する制度を作った。

  静岡県は地震に関する情報により地域図を作って地震対策を始めたが,新たな情報が出てくると変更せざるを得ない状況であった。地域図を変えた途端に,既に対策を行った学校をどうするかという課題が出てくるが,静岡県はそういうことを大胆に実施している県だと思う。

  静岡県の応急補強とは,建替えまでの応急的な補強という意味であるが,この応急補強という考え方については,この会議で議論の対象とするのか整理しておく必要がある。

  従来の補強方法のみでは限界もあり,応急補強ということなども含めて,少し幅広に御議論いただければありがたい。

  応急補強については,現場では結構困っていることであり,この会議でのテーマの一つとなると思われる。また,耐震化の優先順位については,改築と補強の2本立てになってしまい,気が付いてみたら改築が進んでおらず,一番悪いものが最後まで残ってしまったというようなことにもなりかねず,この点についても議論する必要がある。

  静岡県では,応急補強における補強レベルについて,専門家に相談して判断している。応急補強という名称よりも,倒壊防止対策といった方が理解されやすかったのかもしれない。応急補強というのは,倒壊防止のことであり,その対策を実施した建物については,地震がきても倒壊しない,従って人命を損傷することはないということで進めている。

  静岡県の応急補強の目標は,結構,高いレベルにおいていると思う。実際の建物を見て,どこに補強部材を入れるかなどを検討することで,建物の倒壊を防いでおり,補強設計においては,このような対応を行うことが望まれる。

(5)事務局より参考1〜4について説明。

(6)自由討議

  参考1の「1学校施設の耐震化を推進する際の基本的な考え方」の中での耐震化と,「2学校施設の耐震化推進計画の策定手法」の中での耐震化とは少し内容が異なる。「1」の中では,新築も含めた一般論も述べ,その中で一番効率的にやらなければならないこととして,「2」の中で既存施設の対策について整理していくとよい。

  今年度の検討は,時間も限られているので,参考1の「2」については,診断と改修に分け,耐震診断の優先度及び耐震改修の優先度について検討を行ったらどうか。事業手法の決定については,構造設計者が行う内容のものであり,方法の紹介程度でよいのではないか。

  報告書の目次立てを考えるとき,診断の優先度と補強の優先度の内容があり,その中に,地震動予測活用の考え方や事業手法の考え方を盛り込んでいくことも考えられる。

  耐震診断については,診断する側もその結果を判定する側もマンパワーが足りない状況にあり,耐震診断を3年間で全てやるというのではなく,もう少し長い目で見ることが必要である。こちらがプロセスを提案し,そのプロセスに沿って各自治体が耐震改修計画を策定するというような,少し長いレンジで支援していくような施策を考えることが望まれる。

  非構造部材については,建築基準法が変わった1981年以降の建物についても,その耐震対策はあまりうまくいっていないのではないか。

  学校施設の耐震化を検討する場合に,診断や補強に全体でどのくらいの費用が必要かがわかると,その全体像が見えて,総合的な判断ができるのではないか。

  学校施設の耐震化については,それぞれの学校の設置者が責任をもって実施する必要があり,国の方で,一方的に所要額を出すことは困難である。

  学校施設の耐震診断・耐震補強を進める上で,トイレや安全対策等,子どもたちが一日を過ごす場としての改修計画なども含め,総合的な視点を持つ必要がある。また,大規模改造を行うときに,耐震補強もやるというような逆の視点も必要である。


(大臣官房文教施設部施設企画課)

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