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第2編   エコスクールの計画   ―   エコスクールの設計コンセプト

1.   エコスクールの基本理念   −   地球環境問題関連の法律に則った学校施設の整備

第1節   地球環境問題と学枚施設の関わり

   地球温暖化、オゾン層の破壊、酸性雨、熱帯林減少、有害廃棄物拡散、海洋汚染、生物多様性の減少など、さまざまな地球環境問題が社会的に大きく取り上げられている。これらの地球環境問題と建築との関連は、非常に深いものである。

   例えば、地球温暖化の主原因とされている二酸化炭素排出量に関して、我が国は世界のCO2排出量の約5%を排出しているが、その内の1/3は建築関連であると推計されており、二酸化炭素排出量削減に対して建築分野が果たすべき役割は大きいと言えよう。

   現に、政府の「国の事業者・消費者としての環境保全に向けた取り組みのための行動計画(率先実行計画)」では、5項目の一つに「建築物の建設、管理等に当たっての環境保全への配慮」を挙げており、環境負荷削減に配慮した建築物等の整備、維持管理およびその周辺の自然環境の保全を求めている。

   ところで、学校施設は、これまで社会的要請に応じた量的整備が進められてきたことから、1993年度には全国における学校の建物面積は約3億平方メートルに達している。その内の約60%は小学校・中学校である。少子化に伴い小中学校の保有施設面積の著しい増加傾向は鈍化している反面、高等教育機関の保有施設面積が増大している。学校施設は住宅、工場、倉庫を除く業務用建築物の全延べ床面積の約24%を占めており、施設新築や増改築に当たっては、環境負荷低減に対する配慮が必要不可欠である。

   一方、学校施設で使用するエネルギー総量は住宅、工場、倉庫を除く業務用建築物におけるエネルギー消費量の10%を占めるに過ぎないのも事実である。しかし、今後は多様な学習活動を支援するための拠点として高機能化、快適性向上が求められていること、生涯学習活動での積極的活用等による使用時間の延長、使用日数の増加などから、使用エネルギー量の増加と、これに伴う環境負荷増大が十分予想される。

   以上のようなことから、今後の学校施設の建設、増改築、運用に当たっては、環境負荷低減に十分配慮しなければならないと言えよう。

第2節   地球環境問題に関わる法体系の整備状況

   ここ十数年間の間に、地球環境の悪化を抑制するため、建築分野に関連する国際的条約、法律などが矢継ぎ早に制定・締結され、若しくは施行され始めている。

   国際的な条約として、1985年3月採択の空調用冷媒、消火剤、断熱材発泡剤などの規制に関する「オゾン層保護のためのウィーン条約」、1994年3月発効の温室効果ガス濃度の安定化を達成するための「気侯変動枠組条約(気侯変動に関する国際連合枠組条約)」、1993年5月に締結した地球上の全ての生物と生態系のタイプを保全するための「生物多様性条約」などを始め、「ラムサール条約(特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約)、「世界遺産条約」、「人間環境宣言」などの自然生態系の保全に関連する条約がある。

   一方、国内法の整備も行われており、1988年5月に「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(オゾン層保護法)」が制定された。その後、モントリオール議定書の改定に併せて、1991年3月、1994年6月、1997年9月と改正されてきた。

   1993年11月には、我が国における環境政策の基本となる法律「環境基本法」が制定された。国の環境基本法の制定をきっかけに、各都道府県でも環境基本条例が制定され、さらに各市町村にまで広がりをみせている。環境基本法第15条を受けて、1994年12月に「環境基本計画」が閣議決定されており、これに基づき「国の事業者・消費者としての環境保全に向けた取り組みのための行動計画(率先実行計画)」が、1996年6月に閣議決定された。

   1998年6月には、京都議定書で合意した温室効果ガス削減目標(6%)を達成するために、内閣総理大臣を本部長とする地球温暖化対策推進本部により、地球温暖化対策推進大綱が策定された。さらに、気候変動枠組条約を受けて「地球温暖化対策の推進に関する法律(地球温暖化対策推進法)」が1998年10月に公布され、1999年4月から施行された。

   1979年6月に制定された「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)」が、1998年6月に閣議決定された地球温暖化対策推進大綱に従い、住宅の断熱基準と事務所、物販店舗、ホテル、学校、病院の年間熱負荷係数(PAL:Perimeter Annual Load)および空調エネルギー消費係数(CEC/AC:Coefficient of Energy Consumption for Air Conditioning)、換気(CEC/V)、照明(CEC/L)、給湯(CEC/HW)、昇降機(CEC/EV)のエネルギー消費係数の現行基準に比較してエネルギー消費量がおおむね10%低減されるよう、1999年3月には基準が強化されると共に、飲食店舗も加えられ、合計6用途が対象となった。同時に、「エネルギー等の使用の合理化及び再生資源の利用に関する事業活動の促進に関する臨時措置法(通称:省エネ・リサイクル支援法)」も制定され、「建築主の判断基準」よりもさらに厳しい「建築主の努力指針」が示された。

   1999年10月には、建築解体廃棄物の発生の抑制とリサイクルを促進するために、建築解体廃棄物リサイクルプログラムが策定され、2000年5月には「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)」が公布され、特定の建設資材廃棄物に関する分別解体と再資源化、解体工事業者登録制度に関する事項等が定められた。

   2000年5月には、「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)」が公布され、また、2000年6月には、循環型社会形成推進基本法が制定された。

第3節   建築物の環境負荷削減を目指した設計指針類

   上述のような法体系の整備に伴って、建築物の環境負荷削減を目指した設計指針類が策定されている。

   1993年4月には、国土交通省住宅局より「環境共生住宅・市街地ガイドラインについて」の通達が出されたが、これは省エネルギー、省資源、周辺生態環境との親和等地球環境への負荷を低減するモデル性の高い住宅団地の整備に対して補助を行う「環境共生住宅・市街地モデル事業」制度適用の判断条件となった。また、個人建築主に対しては住宅金融公庫の環境共生貸付け制度の拡充・強化が図られてきた。

   設計者・施工者に対する実務書なども出版され、1998年度からは、「環境共生住宅認定制度」がスタートするなど、環境共生住宅の普及努力が進められている。

   また、国土交通省大臣官房官庁営繕部は、1998年3月に環境配慮型官庁施設(グリーン庁舎)計画指針を策定した。この計画指針は、1周辺環境への配慮、2運用段階の省エネ・省資源(負荷の抑制、自然エネルギー利用、エネルギー有効利用)、3長寿命化、4エコマテリアルの使用、5適正使用・適正処理、などの5項目で横成されている。グリーン庁舎計画指針は、LCCO2で環境に与える影響を評価し、環境負荷の低減、特に地球温暖化対策の推進に資するものであり、京都議定書の主旨に合致し、効果が大きいことから、政府の率先実行策に位置付けられている。

   2000年12月には、既存官庁施設の新たな環境負荷低減手法である「官庁施設の環境配慮診断・改修計画指針(グリーン診断・改修計画指針)」が策定されている。この指針は、効果的に既存官庁施設の環境負荷低減化を行うための環境配慮診断・改修計画手法について記したものである。

第4節   エコスクール整備の目的

   以上のような背景から、今後の学校施設の整備、維持管理に際しては、行政的に地球環境問題に関わる法体系に則った施設建設、維持管理が要求されていると言えよう。

   また、教育学習施設としての特性を考慮して、環境負荷低減だけでなく、地球環境問題の重要な項目の一つである生物と生態系のタイプの保全に関する環境教育を行う場である学校ビオトープの整備も視野に入れておく必要があろう。

   学校ビオトープとは、児童生徒ならびに学生の環境教育の教材として、学校敷地内に創出された地域の野生の生きものが自立・循環してくらすことのできる空間をいう。児童生徒や学生が、計画段階から主体的に参加し、地域の自然の現況や、地域の野生生物のことを考え、まず身近な空間である学校を、試行錯誤を繰り返しながら、自然と共存するものに変革していこうというものである。一連の作業を通して、児童生徒、学生は、地域の自然を学び、自然の大切さについて考え、地域の自然を自らが守り育てることの必要性に気づくことになる。

   以上のようなことから、今後の学枚施設は、概ね以下の3つの視点から整備充実を図っていく必要があると考える。

   第一に、環境負荷の低減を目指して設計、建設がなされる施設であること

   第二に、環境負荷の低減の目的に沿った運営、維持管理がなされる施設であること

   第三に、環境教育にも活用されることが可能な施設であること


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