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2.   環境保全に向けた国内外の取り組み


2.1   国際的な取り組み
2.1.1   オゾン層保護のためのウィーン条約

   建築が地球環境問題に深く関わっていることを認識させる条約として、空調用冷媒、消火剤、断熱材発泡剤などの規制に関する「オゾン層保護のためのウィーン条約」が1985年3月に採択された。この条約では、オゾン層を保護するために、締約国が協力すべき分野と議定書を作る手続きが定められ、具体的な規制対象物質と削減スケジュールは、1987年9月に採択されたモントリオール議定書で定められた。その後の締約国会議で、規制対象物質とスケジュールが徐々に厳しくなってきている。先進締約国に対しては、消火用のハロン(ハロン-1301等)が1994年より、空調用冷媒や断熱材発泡剤等に使用されている特定フロン(CFC11、CFC12等)が1996年より生産と消費が全廃され、パッケージエアコン等の冷媒や断熱材発泡剤等に使われているHCFC(HCFC-22、HCFC-123、HCFC141b等)が、2020年より既存機器への補充用を除いて生産と消費の全廃が決定されている。また、発展途上国に対しても先進国よりやや遅い規制スケジュールが設定されている。



2.1.2   気候変動枠組条約

   気候変動枠組条約(気候変動に関する国際連合枠組条約)は、1992年6月にブラジルのリオデジャネイロで開催された地球サミットにおいて、署名が開始され、1994年3月に発効した。この条約の究極的な目的は、「気候系に危険な人為的影響を与えることを防止する水準において、大気中の温室効果ガス濃度の安定化を達成すること(第2条)」であり、この目的に向けて、1各締約国が所要の取り組みを実施し、その取り組みに対する情報を締約国会議に送付し、2締約国会議は送付された情報を検討し、必要があれば条約の約束の見直し等制度的枠組みの強化を行う仕組みとなっている(第4条、第7条)。
   条約の発効を受けて、第1回締約国会議が1995年3月にベルリンで開催された。第3回締約国会議(COP3[コップスリー、Conference of Parties 3])は、1997年12月に京都で開催された。採択された京都議定書の概要と建築との関連を整理して表1に示す。温室効果ガスの削減目標としては、2008〜2012年の5年間において1990年に比べて、先進国平均では5.2%削減するとし、日本は6%削減で合意した。日本のCO2排出量の1/3が建築関連によるものであるだけに、建築分野が果たすべき役割は大きい。
   第4回締約国会議(COP4、1998年11月にブエノスアイレスで開催)では、条約履行の強化、京都議定書を実効化するために、第6回締約国会議における決定を目的とした行動計画が採択されたが、発展途上国の参加問題は合意に至らなかった。第5回締約国会議(COP5、1999年11月にボンで開催)では大きな進展がなく、第6回締約国会議(COP6、2000年11月にハーグで開催)は、最終合意に至らないまま中断され、最終合意は2001年5月のCOP6再開会合に持ち越された。また、世界最大のCO2排出国であるアメリカは、主要な発展途上国(中国、インド)の意味ある参加が批准の条件としているが、その見通しが立っておらず、アメリカの批准は相当遅れるとの見方もある。

1    1997年12月に採択された京都議定書の概要
項  目
内  容
備  考(建築との関連等)
対象ガス
二酸化炭素
燃料消費、廃棄物焼却、セメント製造等
メタン
廃棄物埋立、下水処理、化石燃料採掘、不完全燃焼等
亜酸化窒素
燃料消費、廃棄物焼却等
ハイドロフルオロカーボン(HFC)
CFC、HCFC(冷媒、断熱材発泡剤)の代替フロンHFC-134aなど、塩素を含まずオゾン層破壊係数はゼロであるが地球温暖化係数は大きい。
パーフルオロカーボン(PFC)
電子部品等の洗浄等
六フッ化硫黄(SF6
変圧器、遮断器等の電気設備機器の絶縁用ガス
基準年
原則1990年
ただし、HFC、PFC、SF6は1995年も選択可能
目標期間
2008年〜2012年の5年間平均
日本の人口はこの頃をピークに減少(厚生省中位推計)、建築総延床面積もこの頃まで増大が予想される
削減目標
国地域別(日本6%、米国7%、EU8%)
条約に批准した34カ国とEU毎に削減目標設定(EUは加盟国全体で達成[ルクセンブルグ30%減〜ポルトガル40%増])、先進国全体としては5.2%、途上国は対象外
付帯事項
(詳細は継続審議)
吸収源の扱い
1990年以降の植林、再植林及び森林の減少に限る
共同達成
EU加盟国全体としての共同達成が可能
先進国間排出権取引
先進国間で温室効果ガス排出権の売買を認める
先進国間共同実施
先進国の複数国間の共同実施を認める
クリーン開発メカニズム
先進国と発展途上国間の共同実施を認める



2.1.3   生物多様性条約
   生物多様性条約は、地球上のすべての生物と生態系のタイプを保全することをうたった条約であり、1993年に発効し、わが国は1993年5月に18番目の締約国として条約を受託している。条約では、1生物多様性の保全、2その構成要素の持続的な利用、3遺伝資源の利用から生ずる利益が遺伝資源の保有国・利用国間で公正かつ公平に配分されること、の3つを目的として掲げている。
   条約にいう「生物多様性」とは、第2条で述べられているとおり、生態系の多様性、種レベルでの多様性、遺伝子レベルでの多様性を指す。

第2条
「全ての生物(陸上生態系、海洋その他の水界生態系、これらが複合した生態系、その他生息または生育の場の如何を問わない)の間の変異性をいうものとし、種内の多様性、種間の多様性及び生態系の多様性を含む。

   わが国では、生物多様性条約に基づき、1995年10月に遺伝子、生物種、生態系の3つのレベルで生物多様性を確保するという観点で、「生物多様性国家戦略」を制定している。
その他、自然生態系の保全に関連する条約や宣言としては下記のものなどがある。
・ラムサール条約(特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約)
・世界遺産条約
・日米渡り鳥条約、日ソ渡り鳥条約、日豪渡り鳥条約、日中渡り鳥条約
・人間環境宣言
・環境と開発に関するリオ宣言
・ナイロビ宣言



2.1.4   環境マネジメントに関する国際規格

   図6に示すように、環境マネジメントシステム、環境監査、環境ラベル、ライフサイクルアセスメント、環境パフォーマンスなどの環境マネジメントに関する国際規格が、国際標準化機構(ISO: The International Organization for Standardization)で次々に発行されている。ISO-14000シリーズとも呼ばれ、なかでも環境に配慮した組織活動を行う手法を構築する際の要件を定めたISO14001(環境マネジメントシステム)規格は1996年10月に発行され、設計事務所や建設会社にも着実に普及してきた。この規格で扱われる「環境」には、地球環境レベルのものから人体に直接影響する環境要素(建築関連では、アスベストや建材等に使われるホルムアルデヒド、揮発性有機化合物等も含まれる。)まで、各組織がマネジメントしえるあらゆる環境が含まれる。
   企業だけでなく、行政、大学でもISO14001規格に適合した環境マネジメントシステムの構築・運用を導入する組織が増えている。

環境マネジメントに関する国際規格




2.2   我が国の取り組み

2.2.1   環境基本法

   1992年にリオデジャネイロ(ブラジル)で国連環境開発会議(地球サミット)が開催され、地球環境の保全と持続可能な発展を実現するための具体的な対応策が検討された。この翌年1993年11月に、わが国の環境政策の基本となる法律「環境基本法」が制定された。環境基本法の構成は、環境保全に関する基本理念、国・自治体・事業者・国民それぞれの責務、国や地方自治体の環境保全に関する基本的事項等であるが、第4条では日本の経済社会のあるべき姿として「持続的な発展が可能な社会」が示されている。「持続的な発展が可能な社会」とは、持続可能な開発(Sustainab1e Deve1opment) の考え方を踏まえた概念である。持続可能な開発については、国際自然保護連合(IUCN)などは「新・世界環境保全戦略」のなかで「人々の生活の質的な改善を、その生活支持基盤となっている各生態系の収容能力限度内で生活しつつ、達成することである。」と定義されている。
   また、第2条では、環境への負荷(環境負荷)が次のように法律用語として定義された。

第2条第1項
この法律において「環境への負荷」とは、人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。

   さらに、生物多様性条約(1993)を受けた生物多様性の確保に関する規定も設けられ(第14条)、国および地方自治体が環境の保全に関する施策の策定や、実施の際には生物多様性を確保すべき旨が定められた。

第14条第1項第2号
   生態系の多様性の確保、野生生物の種の保存、その他の生物多様性の確保が図られるとともに、森林、農地、水辺地等における多様な自然環境が地域の自然的社会的条件に応じて、体系的に保全されること。

   国の環境基本法の制定をきっかけに、各都道府県でも環境基本条例が制定され、さらに各市町村にまで広がりをみせている。



2.2.2   環境基本計画

   「環境基本計画」は、環境基本法第15条を受けて、1994年12月に閣議決定されたものである。環境基本計画では表2に示すように、「循環」「共生」「参加」「国際的取組」という4つの長期目標が掲げられるとともに、政府の施策だけでなく、地方公共団体や事業者、国民、民間団体の各々に期待する役割と環境保全の取り組みの明示、さらに計画を効果的に進めていくための仕組みを定めている。
   環境基本計画で掲げられた長期目標を環境教育の分野で達成することが求められる。そのうえで学校ビオトープを通して、表3に示すような取り組みが教材となる。

2   環境基本計画に示された我が国の環境政策の長期目標
目      標
要   旨
循      環
   大気環境、水環境、土壌環境等への負荷が自然の物質循環を損なうことによる環境の悪化を防止するため、生産、流通、消費、廃棄等の社会経済活動の全段階を通じて、…環境への負荷をできる限り少なくし、循環を基調とする経済社会システムを実現する。
共      生
   かけがえのない貴重な自然の保全、二次的自然の維持管理、自然的環境の回復及び野生生物の保護管理など、保護あるいは整備等の形で環境に適切に働きかけ、そ   の賢明な利用を図るとともに・様々な自然とのふれあいの場や機会の確保を図るなど自然と人との間に豊かな交流を保つことによって、健全な生態系を維持・回復し、自然と人間との共生を確保する。
参      加
   「循環」、「共生」の実現のためには、…浪費的な使い捨ての生活様式を見直すなど、日常生活や事業活動における価値観と行動様式を変革し、あらゆる社会経済活動に環境への配慮を組み込んでいくことが必要である。このため、あらゆる主体が、…公平な役割分担の下に、相互に協カ・連携しながら、…環境保全に関する行動に参加する社会を実現する。
国際的取組
   今日の地球環境問題は、ひとり我が国のみでは解決ができない人類共通の課題であり、各国が協カして取り組むべき問題である。…我が国の国際社会に占める地位に応じて、地球環境を共有する各国との国際的協調の下に、地球環境を良好な状態に保持するため、国のみならず、あらゆる主体が積極的に行動し、国際的取り組みを推進する。

3   学校ビオトープを通した環境基本計画の実践例
目      標
要   旨
循      環
野生の生きものを身近に観察し、「自然と人」「生きものと生きもの」の共生を自らが環境管理作業に参加することを通して学ぶ。
共      生
春に芽生え、秋に枯れた草や木の実は再び土にかえる。腐葉土ではカブトムシの幼虫が育つといったように、学校ビオトープは自然の循環を学ぶ場にもなる。
参      加
児童生徒自身が学校ビオトープづくりに参加し、また地域住民や環境NGOなどとも連携を図り作業を進めることで、市民意識を育むことになる。学校ビオトープをより良くするために、地域の自然にも視点が広がる。
国際的取組
学校ビオトープに訪れる野生の生きもののなかには、ツバメやツグミなど遠く東南アジアやシベリアから訪れるものもいる。自らの取り組みが地球の生態系を支える取り組みにもつながることを学ぶ。



2.2.3   循環型社会形成推進基本法

   2000年6月には、循環型社会形成推進基本法が制定された。循環型社会形成の基本原則を定め、国・地方公共団体・事業者・国民の責務を明らかにするとともに、施策の基本事項が定められた。環境基本法、本法と循環型社会形成関連6法との関係を図7に示す。



2.2.4   オゾン層保護法

   1987年に採択されたモントリオール議定書を受けた国内法として、1988年5月に「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(オゾン層保護法)」が制定された。その後、モントリオール議定書の改定に併せて、1991年3月、1994年6月、1997年9月と改正されてきた。

循環型社会形成のための体系


2.2.5   地球温暖化対策推進法

   京都議定書で合意した温室効果ガス削減目標(6%)を達成するために、内閣総理大臣を本部長とする地球温暖化対策推進本部によって、1998年6月に地球温暖化対策推進大綱が策定された。この中で施策の体系が示されると共に、表4に示すような6%削減の内訳が示された。なお、この内訳の中で、わが国がもっとも大きな削減分として期待していた森林吸収分の3.7%については、2000年11月に開催された気候変動枠組条約第6回締約国会議(COP6)でも合意されず、2001年5月のCOP6再開会合での議論に持ち越された。
   さらに、気候変動枠組条約を受けて「地球温暖化対策の推進に関する法律(地球温暖化対策推進法)」が1998年10月に公布され、1999年4月から施行された。この法律は、地球温暖化対策に関し、国・地方公共団体・事業者・国民の責務を明らかにすると共に、地球温暖化対策に関する基本方針を定めるもので、現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与すると共に、人類の福祉に貢献することを目的としている。

4   我が国の温室効果ガス削減目標の内訳
1. CO2CH4、N2Oの排出分
エネルギー起源のCO2排出                     0.0%
CH4、N2Oの排出                               ‐0.5%
革新的技術開発・国民各層の更なる努力‐2.0%
2.  HFC、PFC、SF6の排出
3.森林のCO2吸収分
4.共同実施・クリーン開発メカニズム・排出権取引
 - 2.5
+2.0
‐3.7
‐1.8

‐6.0



2.2.6   率先実行計画

   「国の事業者・消費者としての環境保全に向けた取り組みのための行動計画(率先実行計画)」は、環境基本計画(1994年12 月閣議決定)に基づき、1995年6月に閣議決定された。
   国は、様々な政策や事業を行うという行政の主体としての役割のほか、民間企業等と同様に、各種の製品やサービスの購入・使用や、建築物の建築・維持管理など、事業者や消費者としての経済活動を行っている。特に、経済活動の主体として国の占める位置は極めて大きく、自らがその経済活動に際して環境保全に関する行動を実行することによる環境負荷の低減が大きく期待され、また、地方公共団体や事業者、国民の自主的積極的な行動を求めるためにも、国自らが率先して実行することの意義は高い。率先実行計画では、環境基本計画に定められた4つの分野について、数量を伴った11の目標を含む多くの取り組みや目標を定めており、各省庁はその達成に努めるべく、計画の目標とする2000 年度まで、自主的・積極的な環境保全活動を展開することとなっている。
   また、率先実行計画の閣議決定と併せて、この計画を実施していくための各省庁が行う取り組みの具体的細目的な例を、環境基本計画推進関係省庁会議において申し合わせ、関係省庁はそれぞれの実情に応じ可能な限り積極的にこれらの取り組みを実施・公表し、計画達成に最大限努力している。



2.2.7   省エネルギー法

   オイルショックを契機として、1979年6月には「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)」が制定され、住宅の断熱基準と事務所の年間熱負荷係数(PAL: Perimeter Annual Load)および空調エネルギー消費係数(CEC/AC: Coefficient of Energy Consumption for Air Conditioning)の基準が定められた。1985年の改正では物販店舗が、1991年の改正ではホテルも対象になった。また、1993年3月の改正では、さらに学校と病院も対象となって、PAL、CEC/ACの基準が強化されると共に、換気(CEC/V)、照明(CEC/L)、給湯(CEC/HW)、昇降機(CEC/EV)のエネルギー消費係数が新たに定められた。同時に、「エネルギー等の使用の合理化及び再生資源の利用に関する事業活動の促進に関する臨時措置法(通称:省エネ・リサイクル支援法)」も制定され、「建築主の判断基準」よりもさらに厳しい「建築主の努力指針」が示された。さらに1998年6月に閣議決定された地球温暖化対策推進大綱に従い、1999年3月には現行基準に比較してエネルギー消費量がおおむね10%低減されるよう、基準が強化されると共に、飲食店舗も加えられ、合計6用途が対象となった。



2.2.8   建設リサイクル法

   建設廃棄物は日本の産業廃棄物の21%を占め、その再利用・減量化率は51%と全産業平均の79%に比べて低く、さらには、産業廃棄物の不法投棄の約9割を占めている。このような状況を受けて1994年4月に、建設副産物対策行動計画(リサイクルプラン21)が策定された。また、建設廃棄物の約4割が建築系廃棄物であり、このうち6〜7割が建築解体廃棄物で占められ、さらには建設廃棄物の不法投棄量の中でも、主に戸建住宅の解体工事に伴い排出される木くずの占める割合が高い。このような背景から、建築解体廃棄物の発生の抑制とリサイクルを促進するために、建築解体廃棄物リサイクルプログラムが1999年10月に策定された。
   さらに、2000年5月には「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)」が公布され、特定の建設資材廃棄物に関する分別解体と再資源化、解体工事業者登録制度に関する事項等が定められた。



2.2.9   グリーン購入法

   「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)」が2000年5月に公布された。グリーン購入法は、国ならびに独立行政法人等による環境物品等の調達の推進、情報の提供その他の環境物品等への需要の転換を促進するために必要な事項を定め、環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築を図ることを目的とし、国、地方公共団体、事業者及び国民の基本的な責務を規定している。さらに、都道府県及び市町村は、毎年度、環境物品等の調達方針を作成し、当該方針に基づき物品等の調達を行うよう努めることとしている。
   2001年2月には、4月からの全面施行に先立ち、環境省より「環境物品等の調達の推進に関する基本方針」が公表され、紙、印刷物、文具類、OA機器、電子計算機、家電製品、照明器具、太陽光発電などの設備機器などの物品だけでなく、「省エネルギー診断」などのサービスも特定調達品目に指定された。公共工事に関しては、再生木質ボード(パーティクルボード、繊維板、木質系セメント板)、再生磁器質タイル、高炉セメント、フライアッシュセメント、再生加熱アスファルト混合物、再生骨材、間伐材などの資材と共に、排ガス対策型建設機械と低騒音型建設機械が指定されている。品目は今後さらに増える見込みであり、学校施設の整備・運営にあたって最新動向に、充分留意する必要がある。



2.2.10   生物多様性国家戦略

   生物多様性国家戦略は、生物多様性条約第6条に基づき、地球環境保全に関する閣僚会議において、1995年10月に制定された。生物多様性保全の観点から、各省庁の関連施策を整理・体系化した上で、政府として今後達成すべき長期目標、当面の政策目標、各分野における施策の展開方向、などを具体的に掲げたものである。このなかでは原生的自然地域だけではなく、都市、農村地域を含めたそれぞれの場面での遺伝子レベル、種レベル、生態系レベルにおける生物多様性保全のための施策の展開方向が示されている。生物多様性国家戦略に示された基本方向に沿って、各省庁、地方自治体、国民、環境NGO、そして事業者がそれぞれの行動をしていくことが必要とされている。



2.2.11   都市緑地保全法(緑の基本計画)

   都市緑地保全法は、1973年に都市における緑地の保全および緑化の推進を図るために制定された。1995年に一部改正され、新たに法定計画「緑の基本計画」が創設された。緑の基本計画は、市町村が中長期的な目標のもとに策定する、総合的な緑地の保全および緑化の推進に関する基本計画である。原則として都市計画区域を対象として策定されるもので、鳥公園の整備や緑地の保全、道路や学校等の公共公益施設や住宅地・工場等の民有地の緑地、さらには緑化意識の普及啓発等のソフト面を含めた都市の緑全般に関する総合的な計画であり、都市の緑のあり方とその実現方策を示す計画である。
緑地の配置方針に関しては、都市の自然の喪失が著しいなかで、動植物の生息地または生育地を維持し、さらにビオトープ・ネットワークの視点をもつことが必要とされている。



2.3   文部科学省における取り組み

2.3.1   地球環境問題に関する行動計画
   1989年11月に地域環境保全に関する関係閣僚会議が設置され,1990年には地球温暖化防止行動計画が決定された。さらに、1993年11月には、我が国の環境政策の理念と基本的な施策の方向を示し、総合的な環境政策を展開する上で大きな基礎となる「環境基本法」が制定され、1994年12月には、環境基本法の最も中心的な施策である「環境基本計画」が閣議決定された。
   文部科学省においても、地球環境問題の喫緊性及び重要性に鑑み、教育・学術・文化の分野における積極的な取り組みを行うこととし、1997年6月に「地球環境問題に関する行動計画」を取りまとめている。この中で、「1   人間と自然との調和のとれた環境教育の充実」「2   地球環境問題の解決を目指す学術研究の推進」「3   生物多様性の保全や人間と自然との共生のための『天然記念物』および『名勝』の保護」「4   国際的なパートナーシップとしての取り組み」「5   省エネ,省資源,新エネルギーへの対応」の5項目を掲げて取り組み方針を示した。

地球環境問題に関する行動計画(抜粋)

平成9年6月作成
平成10年2月改訂
平成11年9月更新
文      部      省

1    人間と自然との調和のとれた環境教育の充実(本文省略)
  (1)     体験的な学習を重視した学校における環境教育の充実
(2)     青少年の環境学習機会の充実
(3)     生涯にわたる環境学習の推進
(4)     大学等における環境教育
地球環境問題の解決を目指す学術研究の推進(本文省略)
  (1)     地球環境科学の研究組織体制の整備
(2)     環境に関する研究の推進及び研究組織・施設の整備
生物多様性の保全や人間と自然との共生のための「天然記念物」及び 「名勝」の保護(本文省略)
  (1)     生態系を視野に入れた天然記念物等の保護
(2)     天然記念物等の活用(共生の観点での保護の充実)
国際的なパートナーシップとしての取り組み(本文省略)
  (1)     国際機関等を通じた環境教育の協力
(2)     国際的な研究協力の推進
(3)     「環境のための地球規模の学習及び観測計画(GLOBE)」への参加
省エネ,省資源,新エネルギーへの対応
 
(1) 環境にやさしい文教施設の整備
  1環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備
   学校施設においても環境への負荷の低減方策に対応した施設づくりが求められている。そこで,太陽光発電・太陽熱利用,緑化推進,省エネルギー・省資源等環境を考慮した学校施設(エコスクール)の具体的な推進と実証的な検討を行うため,平成9年度から,パイロット・モデル事業を通商産業省と協力して実施しており,平成13年度まで引き続き行っていく。また,屋外教育環境整備事業による屋外運動場の緑化等を進める。さらに,これらの施設を生きた環境教育の教材として活用していく。
2施設整備に関する技術的基準の整備
   省資源・省エネルギーを推進するため,文教施設の整備に関する技術的基準類について,太陽光発電装置や蓄熱式空調システム等に関する事項を追加したところであり,今後さらに未利用エネルギー等に関する事項を技術的基準類に追加することを検討する。
3大学等における廃棄物処理問題及びその啓発(本文省略)

(2) 省エネ,省資源等の推進に向けた取組
  1事業者・消費者としての環境保全に向けた取組
   「国の事業者・消費者としての環境保全に向けた取組の率先実行のための行動計画」(1995年6月13日閣議決定)等に基づき,文部本省や文部省の施設等機関等において,省エネルギーや廃棄物削減等の環境保全活動に自ら率先して取り組み,環境への負荷の小さい社会の実現に努める。
2学校現場における省エネルギーの推進に関する点検
   省エネルギー対策を効果的に実施するために,学校現場における省エネルギーの推進に関する点検を実施し,その状況を踏まえてより一層省エネルギーの推進に努める。
(3) 学校におけるごみ処理に係わる環境衛生管理の充実(本文省略)



2.3.2  環境にやさしい学校施設(エコスクール)の整備推進

   1993年度より環境を考慮した学校施設(エコスクール)の在り方に関する調査研究を実施し,1996年3月に報告書「環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備について」8)をとりまとめた。また,1997年3月には,「環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備における技術的手法に関する調査研究報告書」9)を取りまとめ,各都道府県教育委員会等へ通知している。
   また、児童生徒などの環境教育に役立て、今後の学校施設の整備充実を推進するため、「環境を考慮した学校施設の整備推進に関するパイロット・モデル事業」や「私立学校エコスクール整備推進モデル事業」といったエコスクール整備に関わる補助制度を設けている。(「4.エコスクール整備に関わる補助制度」参照)



2.4   その他の取り組み

2.4.1   建築物の環境負荷削減設計指針類

   学校施設整備にも参考になる建築物の環境負荷削減に関する設計指針類を以下に概説する。



2.4.1.1   環境共生住宅・市街地ガイドライン

   国土交通省住宅局の主唱で1990年12月に環境共生研究会(現在の環境共生住宅推進協議会)が設置され、環境共生住宅の普及努力が続けられている。その間1993年4月には、建設省住宅局より「環境共生住宅・市街地ガイドラインについて」の通達が出され、省エネルギー、省資源、周辺生態環境との親和等地球環境への負荷を低減するモデル性の高い住宅団地の整備に対して補助を行う「環境共生住宅・市街地モデル事業」制度適用の判断条件となった。また、個人建築主に対しては住宅金融公庫の環境共生貸付け制度の拡充・強化が図られてきた。
   設計者・施工者に対する実務書5)、6)なども出版され、1998年度からは、「環境共生住宅認定制度」がスタートするなど、環境共生住宅の普及努力が進められている。



2.4.1.2   グリーン庁舎計画指針

   国土交通省大臣官房官庁営繕部は、1996〜1997年度に「環境負荷の少ない官庁施設の整備手法の検討委員会」(委員長:松尾陽   明治大学教授)を設置し、官庁施設における地球温暖化対策をはじめとする環境負荷低減対策を検討した。1997年10月の最終報告を受けて、翌1998年3月には、環境配慮型官庁施設(グリーン庁舎)計画指針が策定された。この計画指針は、1周辺環境への配慮、2運用段階の省エネ・省資源(負荷の抑制、自然エネルギー利用、エネルギー有効利用)、3長寿命化、4エコマテリアルの使用、5適正使用・適正処理、といった5項目で構成されている。グリーン庁舎計画指針は、LCCO2で環境に与える影響を評価し、環境負荷の低減、特に地球温暖化対策の推進に資するものであり、京都議定書の主旨に合致し、効果が大きいことから、政府の率先実行策に位置付けられている。また、計画指針を解説し、計画・設計実務ツールとしての「グリーン化技術選定シート」、「グリーン庁舎チェックシート」、「庁舎版LCCO2計算法」等を含む「グリーン庁舎計画指針及び同解説」7)が1999年4月に、計算ソフトが同年8月に公開され、国の庁舎のみならず、地方公共団体の庁舎、民間建築への普及が配慮されている。



2.4.1.3   グリーン診断・改修計画指針

   既存官庁施設の新たな環境負荷低減手法である「官庁施設の環境配慮診断・改修計画指針(グリーン診断・改修計画指針)」は、国土交通省大臣官房官庁営繕部が1998〜1999年度に設置した「既存官庁施設の総合的な環境負荷低減化手法の検討委員会(委員長:松尾陽   明治大学教授)」からの報告を基に2000年12月に策定された。この指針は、効果的に既存官庁施設の環境負荷低減化を行うための環境配慮診断・改修計画手法について記したもので、以下の3章で構成されている。
   第1章の「総則」は、「目的」や「用語の定義」等からなり、基本的な姿勢などについて定めている。
第2章では「グリーン診断」手法について定めており、新築の官庁施設を対象とした「グリーン庁舎計画指針」に準じ、その基本的考え方である「周辺環境への配慮」、「運用段階の省エネルギー・省資源」、「長寿命化」、「エコマテリアルの使用」及び「適正使用・適正処理」の観点から定性的に評価することに加え、施設のエネルギー使用量等を定量的に評価し、グリーン化の必要な部分、システムを診断することとしている。
   第3章では「グリーン改修」の計画・設計手法について定めており、前述の5つの観点からの対策を基本とし、改修時点を起点としたライフサイクル二酸化炭素排出量(LCCO2)による定量的判断に加え、老朽化による機器更新、耐震性能、スペースなどの既存施設ゆえの制約条件を総合的に判断し、採用すべき環境負荷低減技術(グリーン化技術)を選択することとしている。こうした手法により省エネルギー建築設計指針策定前の1975年頃に建設された官庁施設にグリーン改修を行った場合には、改修時点を起点としたLCCO2を最大で約15%削減することが可能であるとのシミュレーション結果が得られている。
   国土交通省として、この指針に基づいたグリーン改修を、費用対効果等を考慮した上で効率的かつ計画的に行い、完成後は環境負荷低減効果を検証し、以後の環境保全対策に反映させると共に、本指針を広く紹介することによって、官庁施設における環境対策を通じ、建築分野全体としてのCO2排出量削減などの環境負荷低減対策に役立てることとしている。



2.4.2   建築関連学協会の取り組み

   建築関連の学協会における主な取り組みを以下に示す。



2.4.2.1   日本建築学会

   日本建築学会は、1990年以来の建築と地球環境問題に関わる研究成果を基に、地球環境委員会が中心となって、1997年6月に「日本建築学会地球環境行動計画」を策定し、学会として取り組むべき7つの活動方針を掲げた。また、同年12月には気候変動枠組条約京都会議(COP3)の課題に呼応する形で下記を骨子とする「気候温暖化への建築研究分野での対応」と題する学会声明を公表している。

1 生涯CO2排出量(LCCO2)を新築では30%削減が可能であり、今後これを目標に建設活動の展開が必要。
2 我が国のCO2排出量削減のためには、建築物の耐用年数を3倍(100年)に延長することが必要不可欠であり、また可能。

   上記の声明を受けて、地球環境委員会の中の地球環境行動WGが、学会声明をフォローする研究報告書を1999年3月にとりまとめ、また、サステナブルビルディング小委員会が、「サステナブルビルディング普及のための提言」と題する研究報告書を1999年3月に公表している。また、LCA指針策定小委員会が「建物のLCA(ライフサイクルアセスメント)指針案」10)を1999年11年に公表している。
   さらに、2000年6月には、「地球環境・建築憲章」を建築関連5団体(日本建築学会、日本建築士会連合会、日本建築士事務所協会連合会、日本建築家協会、建築業協会)共同で制定している。



2.4.2.2   空気調和・衛生工学会

   空気調和・衛生工学会は、1993年度に地球環境に関する委員会(現在の地球環境委員会の前身)を設置し、1995年7月の中間報告を経て、1997年7月に「持続可能な社会を支える建築設備のために」を公表した。さらに、1999年3月に研究報告書をとりまとめ、それまでの研究成果を基に、2001年3月には、空気調和・衛生設備の環境負荷削減対策マニュアルを出版している。



2.4.2.3   日本建築家協会

   日本建築家協会は、1993年のUIA/AIA建築家世界会議「持続可能な未来の為の相互依存宣言」を受けた「行動指針」を策定した。また、「設計指針と設計手法の照合表」と共に、さまざな工夫を凝らした建物事例を詳細に紹介する「サステイナブル・デザイン・ガイド(1995、1996、1998年の通算3冊)」11)、「サステイナブル建築最前線(2000年5月)」を発行している。



2.4.2.4   建築業協会

   建築業協会は、1990年の地球環境問題専門委員会設置以来、建設業と地球環境問題との関わりを定量的に検討してきたが、それらの検討成果を踏まえて、1996年7月に、設計チェックリストとして利用できる「環境配慮設計ガイド」を発行している。


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