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第2章   環境を考慮した学校施設(エコスクール)の内容

第1節   基本的な考え方

   ここ数年来,文部省が展開している「21世紀に向けた新たな学習環境の創造」のための施策は,「学校環境への考慮 − 学習環境・教育環境の改善」という単体整備の施策から「社会・地域環境への考慮−インテリジェント・スクール」という周辺地域の中心となるべき文教施設の多機能化・高機能化等の施策へと変化してきており,対象空間の拡大に伴う核としての学校施設の在り方が模索されている。
   対象空間の拡大という施策の継続性及び近年の地球環境に対する国内外の取組を考慮すると,今後は,「地球・自然環境への配慮」を主たる目標とした環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備が求められている。
   ただし,従来から推進されている学校施設の室内環境の向上が,必ずしも目標に到達していないことを考慮すると,学習環境・教育環境についてもさらなる改善を図る必要がある。また,児童・生徒への教育の場である学校施設の本来の目的に留意するとき,学校施設自体が環境教育の教材として活用されることも望ましいといえよう。
   以上の点から,今後の学校施設としては,「環境を考慮して設計・建設され,環境を考慮して運営され,環境教育にも活かせるような学校施設」が望ましい。 すなわち,下図に示すように,環境を考慮した学校施設とは,施設面・運営面・教育面の3つの切り口で捉えることができるものである。1つの面だけが進んでいる学校施設もエコスクールと考えることが出来ようが,理想的なものとは言い難い。エコスクールの望ましい姿とは,施設自体の建築的要素と運営・教育という人的要素が,調和・機能する学校施設であると考える。
   本調査研究では,上述の3側面を施設づくりの観点から捉えて検討することとし,運営面に関しては,環境を考慮して運営するために必要な施設づくり上の工夫,学校施設を環境教育にも活かすために必要な施設づくり上の工夫等に関して言及することとする。
   考慮すべき環境としては,地球環境,地域環境,校舎内外の環境が,また,対象としては,地域の人々,児童・生徒を挙げることができ,それらを組み合わせてより簡明に言い換えれば,
   地球,地域,児童・生徒に,やさしく造る
   建物,資源,エネルギーを,賢く・永く使う
   施設,原理,仕組みを,学習に資する
となる。
   次節以降では,上記の3軸に沿って検討を行い具体的な工夫・手法等についても触れるが,これらを単に盛り込んで設計・建設しても,即「エコスクール」と定義できない。施設整備の観点からの「エコスクール」は,以下に述べる工夫や手法を適切に組み合わせることにより具現できると考えられるが,建設後の維持・管理,改造,解体までのライフサイクルを視野に入れた総合的な評価に基づいて組み合わせを決定することが大切である。

図ー1 環境を考慮した学校施設


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