幼稚園施設整備指針

平成14 年 3 月
文部科学省大臣官房文教施設部 幼稚園施設整備指針

目次


第1章 総則
第1節 幼稚園施設整備の基本的方針
第2節 幼稚園施設整備の課題への対応
  第1 幼児の主体的な活動を確保する施設整備
  第2 安全でゆとりと潤いのある施設整備
  第3 家庭や地域と連携した施設整備
第3節 幼稚園施設整備の基本的留意事項
第2章 施設計画  
第1節 園地計画
  第1 園地環境
  第2 通園環境
第2節 配置計画
  第1 園地利用
  第2 配置構成
第3章 園舎計画  
  第1 基本的事項
  第2 保育空間
  第3 共通空間
  第4 家庭・地域連携空間
  第5 管理空間
第4章 園庭計画  
  第1 基本的事項
  第2 運動スペース
  第3 砂遊び場,水遊び場その他の屋外教育施設
  第4 緑化スペース
  第5 門,囲障等
第5章 詳細設計  
  第1 基本的事項
  第2 内部仕上げ
  第3 開口部
  第4 外部仕上げ
  第5 家具
  第6 手すり・屋上
第6章 構造設計  
  第1 基本的事項
  第2 上部構造
  第3 基礎
  第4 その他
第7章 設備設計  
  第1 基本的事項
  第2 照明設備
  第3 電力設備
  第4 情報通信設備
  第5 給排水設備
  第6 空気調和設備
  第7 防犯・防災等設備
     
     
     

  
はじめに
  「幼稚園施設整備指針(平成5年3月)」は,幼稚園教育を進める上で必要な施設機能を確保するために,施設計画・設計上の具体的な留意事項を示すものとして,同年の「学校施設整備指針策定に関する調査研究協力者会議」の「学校施設整備指針策定について(幼稚園編)」の報告を基に制定したものである。
  その後,都市化や少子化の進展など社会状況の変化により,幼稚園に対しては,満3歳児入園の機会の確保,「預かり保育」,子育て支援活動等,多様なニーズに対応した地域の幼児教育のセンターとしての役割を果たすことが求められてきた。また,幼稚園教育要領の改訂(平成10年12月)や,幼児教育振興プログラムの策定(平成13年3月)がなされるとともに,幼稚園の施設面では,安全・防犯対策,バリアフリー,環境との共生等新たな課題への対応も求められてきている。
  このような状況を踏まえ,平成13年6月より「学校施設整備指針策定に関する調査研究協力者会議」において検討が続けられ,先般,「学校施設整備指針の改訂について(幼稚園編)」の報告書が取りまとめられた。
  この報告では,幼児期の発達は,幼児が身近な人やものなどの環境とのかかわりの中で,直接的,具体的な体験を通して促されるものであるとし,このため,幼児の主体的な活動としての遊びを促し,幼児期にふさわしい生活が展開されるようにするとともに,自然や人,ものとの触れ合いの中で生きる力や豊かな感性を育てる場として幼稚園施設を整備することが重要であるとの認識を示している。
  更に,このような認識に立って,幼児の主体的な活動を確保する施設整備,安全でゆとりと潤いのある施設整備,家庭や地域と連携した施設整備などの幼稚園施設整備の今日的な課題について言及するとともに,幼稚園の設置形態や地域性等も考慮しつつ,幼稚園設置者の創意工夫が生かされ,魅力ある施設の整備が進められるよう具体的な留意事項を提示している。
  本「幼稚園施設整備指針」は,この報告を基に平成5年3月策定の「幼稚園施設整備指針」を改訂したものであり,今後の既存施設の改修を含む幼稚園施設整備に際し,本「幼稚園施設整備指針」の趣旨を踏まえ,幼児の教育の場としてふさわしい豊かな環境が全国で形成されていくことを期待するものである。

第1章  総  則



第1節  幼稚園施設整備の基本的方針
1  自然や人,ものとの触れ合いの中で遊びを通した柔軟な指導が展開できる環境の整備

  幼稚園は幼児の主体的な生活が展開される場であることを踏まえ,家庭的な雰囲気の中で,幼児同士や教職員との交流を促すとともに,自然や人,ものとの触れ合いの中で幼児の好奇心を満たし,幼児の自発的な活動としての遊びを引き出すような環境づくりを行うことが重要である。
2  健康で安全に過ごせる豊かな施設環境の確保
  発達の著しい幼児期の健康と安全を重視し,良好な日照,採光,通風等の環境条件を確保するとともに,幼児期の特性に応じて,また,障害のある幼児にも配慮しつつ,十分な安全性,防災性,防犯性を備えた施設環境を形成することや,自然や文化性を生かして快適で豊かな施設環境を確保すること,さらには,環境に配慮して施設づくりを行うことも重要である。
3  地域との連携や周辺環境との調和に配慮した施設の整備
  幼稚園は,地域の幼児教育のセンターとしての役割を果たすことが重要であり,このためには,親子の交流や子育て相談等を通じて家庭や地域と連携したり,可能な限り周辺の施設と有機的に連携すること,また,近隣の町並みや景観との調和に配慮して整備することや施設のバリアフリー対策を図ることが重要である。


第2節  幼稚園施設整備の課題への対応
第1  幼児の主体的な活動を確保する施設整備
1  自発的で創造的な活動を促す計画

(1) 幼児の主体的な活動を確保し,幼児期にふさわしい発達を促すことのできる施設として計画することが重要である。その際,幼児の遊びの場を十分に確保すること,小グループや一人一人の特性に応じた活動を可能にする多目的な空間を計画すること,保育室と遊戯室や図書スペース等の連携に配慮することも有効である。また,各種視聴覚機器等の教材を必要に応じて活用できる計画も有効である。
(2) 幼児の多様な活動に即して,幼児の豊かな創造性を発揮したり,幼児期にふさわしい生活を展開することのできる施設として計画することが重要である。その際,様々なコーナーを設定したり,家具の配置を工夫できる弾力的で多目的な変化のある空間を計画することも有効である。
2  多様な自然体験や生活体験が可能となる環境
(1) 幼児の身体的発達を促すため,自然の中で伸び伸びと体を動かして遊ぶなど幼児の興味や関心が戸外にも向くよう,幼児の動線に配慮した園庭や遊具の配置を工夫することが重要である。
(2) 豊かな感性を育てる環境として,自然に触れることのできる空間を充実することが重要である。その際,自然の地形などを有効に活用した屋外環境及び半屋外空間を充実することも有効である。
    ※半屋外空間・・・バルコニー,テラス,庇の下等,保育室等の内部空間と密接に関係した屋外空間
3  人とのかかわりを促す工夫
幼児が教師や他の幼児などと集団生活をおくる中で,信頼感や思いやりの気持ちを育て,また,地域住民や高齢者など様々な人々と親しみ,自立心を育て人とかかわる力を養うことに配慮した施設として計画することが重要である。その際,様々な人々との交流に使われる多目的な空間を配置したり,アルコーブ,デン等を計画し,幼児と人との多様なかかわり方が可能となる施設面での工夫を行うことも有効である。
    ※アルコーブ・・・・廊下やホール等に面した小スペースで休憩,談話,読書等ができ,人とのコミュニケーションや多様な活動が展開できる場
    ※デン・・・・・・・手を伸ばせば壁や天井に触れることができる幼児の人体寸法に合った家庭的な雰囲気の穴ぐら的な小空間
4  多様な保育ニーズへの対応
(1) 幼稚園全体の協力体制を高めるとともに,幼児に対しきめ細かな指導を行うため,ティーム保育を導入し実践することが要請されてきており,施設計画においてもこれに対応することは重要である。その際,多様な保育形態に対応できる多目的な空間を配置することも有効である。
(2) 幼稚園における3歳児(満3歳児入園の園児を含む。以下同じ。)の入園についてのニーズが高まってきており,施設計画においてもこれに対応することが重要である。その際,幼児の人体寸法や活動内容に留意した専用の落ち着いた空間を計画することも有効である。
第2  安全でゆとりと潤いのある施設整備
1  生活の場としての施設

(1) 幼稚園は,幼児にとって人間形成の基礎を培う大切な場であり,遊びや生活の場として,ゆとりと潤いのある施設づくりを行うことが重要である。
(2) 幼児等の行動範囲,人体寸法,心理的な影響も含めて施設を計画することが重要である。
(3) 多様な教育内容・保育形態に対応するとともに,豊かな生活の場を構成することのできる机・いす・収納棚等の家具を施設計画と一体的に計画することが重要である。
2  健康に配慮した施設
(1) 幼児の健康に配慮し,園内の快適性を確保するため,採光,通風,換気等に十分配慮した計画とすることが望ましい。
(2) 幼児の心と体の健康を支えるため,保健衛生に配慮した施設計画とすることが重要である。
(3) 使用する建材等に十分配慮し,快適性を高めることのできる材料で,室内空気を汚染する化学物質の発生がない,若しくは少ない建材を採用することが重要である。
3  安全・防犯への対応
(1) 幼稚園内にあるすべての施設・設備について,幼児の多様な行動に対し十分な安全性を確保した計画とすることが重要である。
(2) 不審者の侵入防止や犯罪防止のために,門,囲障,外灯,窓・出入口,錠等の整備,防犯監視システムの導入等について,人的警備との役割分担も踏まえた上で計画することが重要である。また,これらの破損箇所の補修を迅速に行うことも重要である。 (3) 安全・防犯上の観点から,死角の原因となる立木等の剪定,自転車等駐車場,駐車場や隣接建物からの侵入防止対策を実施することが重要である。
(4) 職員室等については,アプローチ部分や園庭を見通すことができ,緊急時にも即応できる位置に配置することが望ましい。
(5) 保育室等の避難経路を複数確保するとともに,扉等については避難を考慮した施錠システムとすることが望ましい。
4  施設のバリアフリー対応
障害のある幼児や教職員,保護者及び園舎や園庭の開放時の高齢者,身体障害者等の多様な利用者に支障のない計画とすることが重要である。その際,スロープ,手すり,便所,出入口等の計画に配慮することが重要である。
5  環境との共生 (1) 幼児が自然環境と触れ合いながら様々な体験をすることができるように配慮するとともに,施設自体が環境教育の教材として活用されるよう計画することが望ましい。
(2) 資源の再利用を図る計画や,自然環境等に配慮した施設づくりを行うことが重要である。
6  特色を生かした計画
幼稚園における教育理念を施設計画に反映させることによって,特色ある計画とすることが重要である。その際,モニュメント,シンボルツリーを設けたり,色彩や曲線を生かしたデザイン手法を活用することや,地域の文化的特性や伝統を取り入れ,風土,景観等の特色を生かした計画とすることも有効である。
第3    家庭や地域と連携した施設整備
1    幼稚園・家庭・地域の連携
(1) 幼稚園施設の計画に当たっては,家庭等とも連携した地域の学習環境の基盤整備ととらえ,教職員・保護者・地域住民等の関係者の参画により,総合的に検討を進めることが重要である。
(2) 専門的知識・技術を持つ社会人をはじめ,地域の様々な人材を受け入れ,教育活動への地域の活力の導入・活用を促すための諸室についても計画することが重要である。
(3) 他の文教施設等の整備状況を勘案しつつ,必要に応じ,これらの施設との有機的な連携について計画することが望ましい。とりわけ,保育所や小学校との連携を視野に入れた施設計画が重要である。さらに,他の文教施設との情報ネットワークを構築することも有効である。
2    「預かり保育」への対応
近年「預かり保育」に対するニーズが高まってきており,地域の状況や保護者の要望に応じた「預かり保育」に対応する施設計画が重要である。その際,活動日数や活動時間帯等の運営方法,午睡やおやつ等の「預かり保育」独自の活動に留意するとともに,幼児が長時間園内に滞在することに配慮した家庭的な雰囲気のある保育室として計画することが望ましい。
    ※「預かり保育」・・子育て支援等の観点から,通常の教育時間の前後や長期休業期間中などに,地域の状況や保護者の要望に応じて希望する者を対象に行う教育活動    3  子育て支援活動への対応   地域の幼児教育のセンターとしての子育て支援機能や「親と子の育ちの場」としての役割や機能を一層充実させるための施設計画が重要である。その際,子育てに関する情報交換や相談のための専用の子育て支援室やPTA室等を計画すること,インターネットを活用した子育て支援ネットワークを構築すること,乳幼児を伴う保護者の利用に配慮すること等も有効である。
4  幼稚園開放のための施設・環境
(1) 地域に開かれた幼稚園として,園舎や園庭の開放が求められており,幼児や地域住民が有効に活用できる施設計画とすることが重要である。また,必要に応じ,地域住民の利用の促進を図るため,地域住民との共同利用のできる施設計画も有効である。
(2) 多様な利用者に配慮した,快適,健康,安全で利用しやすい施設であるとともに,幼稚園開放の運営と維持管理が容易な施設として計画することが重要である。
5  保育所と連携した施設計画
(1) 幼稚園と保育所の施設の共用化など,両施設の有機的な連携について計画することも有効である。その際,遊戯室,調理室,管理諸室,屋外環境等について共用の空間を計画することが望ましい。
(2) 幼稚園と保育所の施設の共用化を図る際には,施設相互の関連に配慮するとともに,合同の活動や行事など幼児が様々な触れ合いをもつ空間として計画し,幼児の教育・保育の場として十分機能させることが望ましい。また,教員と保育士の交流の促進や子育て相談等における連携・協力を図る計画も望ましい。
6  複合化への対応
(1) 幼稚園と保育所,小学校,社会教育施設,高齢者福祉施設等との複合化について計画する場合は,幼稚園における幼児の教育と生活に支障のないことはもちろん,施設間の相互利用,共同利用等による教育環境の高機能化及び多機能化に寄与する計画とすることが重要である。
(2) 多様な利用者を考慮し,安全面やバリアフリーに配慮した計画とすることが重要である。 (3) 幼稚園の教育環境に障害又は悪影響を及ぼす施設との合築は避けることが重要である。また,教育環境の高機能化及び多機能化に寄与しない施設との合築についても慎重に対処することが重要である。

第3節  幼稚園施設整備の基本的留意事項
1  総合的・長期的な視点からの計画の策定
(1) 多様な教育活動の実施,安全性への配慮,地域との連携を考慮するとともに,当該地域の幼児数や保育ニーズの将来動向,幼稚園教育の今後の方向等を考慮しつつ,総合的かつ長期的な視点から施設の運営面も含めた施設計画を策定することが重要である。
(2) 当該地域における文教施設の整備計画や幼児教育施設等の整備状況を勘案して幼稚園施設の規模,立地を計画することが望ましい。
(3) 増築,一部改築,改修,補強等の場合も,幼稚園施設整備の基本方針,新たな課題への対応を踏まえ,総合的かつ中・長期的な視点から計画することが重要である。
2  的確で弾力的な施設機能の設定
(1) 幼児期の特性に応じ,また,障害のある幼児にも配慮しつつ,多様な保育形態による活動規模を考慮した施設機能を設定することが重要である。また,その際,教育の内容や方法,設備,園具,遊具等の利用方法を把握するとともに,地域の気候,風土やその季節的な変化,周辺環境の活用の可能性等も考慮して,必要な施設機能を弾力的に設定することが重要である。
(2) 教務,事務の内容や方法,事務機器,家具等の利用方法等を把握し,必要な施設機能を設定することも重要である。
(3) 幼児の人体寸法,動作寸法,行動特性に適合した家具の導入を考慮し,施設機能を設定することが重要である。
(4) 親子の交流や子育て相談等における施設・設備の利用方法等を把握し,必要な施設機能を設定することが重要である。
3  計画的な整備の実施
(1) 施設機能を的確に設定するため,企画から基本設計までの期間を十分確保するとともに,企画から施工に至る各段階の内容的な連続性,整合性に十分留意しつつ,計画的に整備を進めることが重要である。
(2) 施設計画と園具,遊具等の導入計画との一体性に留意しつつ,総合的に整備を進めることが重要である。
(3) 完成後には施設に係る評価を定期的に行い,将来の改修・改築等の計画に生かしていくことが重要である。
(4) 施設の整備を段階的に行う場合は,最終的な施設計画を想定した上で,計画を策定することが重要である。
4  長期間有効に使うための施設整備の実施
(1) 幼稚園施設を常に教育の場として好ましい状態に維持するためには,日常の点検・補修及び定期的な維持管理が必要であるとともに,これらを行い易い計画とすることが重要である。
(2) 建物構造体を堅固につくり,室区画や室仕上げは将来の教育内容や指導方法の変化に応じて変更可能とすることや,設備の交換・補修を容易にすること等,長期間建物を有効に使える計画とすることが重要である。
(3) 情報技術の進展をはじめとする将来のニーズや機能の変化を見込んで,改修整備を行いやすい施設となるよう計画することも有効である。
5  関係者の参画と理解・合意の形成
(1) 特色ある教育内容や指導方法等を反映し,地域と連携した幼稚園運営が行われるよう,企画の段階から教職員・保護者・地域住民等の参画により,総合的に計画することが重要である。また,より効果的・効率的な施設運営を行うためには,施設の完成後においても継続的に施設使用者との情報交換を行うことが有効である。
(2) 開放施設の利用内容・方法や管理方法,幼児の通園方法,当該幼稚園施設が周辺地域に及ぼす騒音・交通・じんあい等の影響,災害時の対応などについて,事前に地域住民等と十分協議することが重要である。
6  地域の諸施設との有機的な連携
(1) 当該地方公共団体における全体的な中・長期の行政計画,文教施設整備計画との整合を図りつつ,これらの施設と有機的に連携した計画とすることが望ましい。
(2) 幼稚園と地域社会の連携を深めていく上で,社会教育施設や高齢者福祉施設等と複合化し,教育環境を高機能化・多機能化させることも有効である。その際,幼稚園における教育と生活に支障を生ずることのないよう計画することが重要である。
7  整備期間中の教育環境の確保
整備期間中においては,適切な事故防止策を講じるとともに,工事に伴う車両等の出入り,騒音,振動,ほこり等の発生により,幼児の健康,安全や教育環境に支障が生じないように十分留意することが重要である。また,必要に応じ適切な仮園舎を確保することも有効である。

第2章  施設計画



第1節  園地計画
第1  園地環境
1  安全な環境
(1) 地震,洪水,高潮,津波,雪崩,地滑り,がけ崩れ,陥没,泥流等の自然災害に対して安全であることが重要である。
(2) 良好な地質及び地盤であるとともに,危険な埋蔵物や汚染のない土壌であることが重要である。
(3) 危険な高低差,深い池などのない安全な地形であることが重要である。また,敷地を造成する場合は,できるだけ自然の地形を生かし,過大な造成を避けることが望ましい。
(4) 園地に接する道路の幅員,接する部分の長さ等を考慮し,緊急時の避難,緊急車両の進入等に支障のない敷地であることが望ましい。
(5) 保育に支障を及ぼし,幼児等の健康や安全を損なうような騒音,振動,臭気等を発生する事業所や車の出入りの頻繁な施設等が周辺に立地していないことが重要である。
(6) 不審者等の侵入に対し死角等が生じない,見通しの良い地形であることが望ましい。
2  健康で文化的な環境
(1) 良好な日照,空気及び水を得ることができ,排水の便が良好であることが重要である。
(2) 自然との触れ合いの中で,幼児が活発に活動できる地形の起伏,自然の樹木等があることが望ましい。
(3) 見晴らしや景観が良く,近隣に緑地,公園,文化的な施設等があることも有効である。
3  適正な面積及び形状
(1) 園舎,園庭に対する現在及び将来の施設需要に十分対応できる面積であることが望ましい。
(2) 園舎,園庭等を適切に配置し,有効に利用できるまとまりのある形状であることが望ましい。
4  教育上ふさわしい環境
(1) 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条に規定する風俗営業及び性風俗特殊営業の営業所が周辺に立地していないことが重要である。
(2) 興行場法第1条に規定する興行場のうち,業として経営される教育上ふさわしくない施設が周辺に立地していないことが重要である。
(3) 頻繁な車の出入りを伴う施設,騒音,臭気等を発生する工場,その他の教育上ふさわしくない施設が周辺に立地していないことが重要である。
(4) 保育所,小学校,社会教育施設,社会体育施設その他の地域施設とのネットワークを考慮して立地を計画することも有効である。
第2  通園環境
1  通園区域
幼児の居住分布,幼児期の心身の発達等を考慮し,幼児が疲労を感じない程度の通園距離,若しくは通園時間を設定できることが望ましい。
2  通園路
(1) 交通頻繁な道路,踏切,溜(た)め池,がけ地等危険な場所や,死角が多い場所,人通りの少ない場所等防犯上問題となる場所を避けるなど,安全な通園路を確保できることが重要である。
(2) 地域の実状に応じ,様々な体験の場としても意義のある通園路を設定することが有効である。

第2節  配置計画
第1  園地利用
(1) 園地を有効に利用し,各施設部分に必要な機能を最大限に充足できるように,園舎,園庭等を均衡のとれた構成で配置することが重要である。
(2) 将来の施設機能,施設需要等の変動にも対応可能な計画とすることが重要である。 (3) 教育上の利用や緊急時の避難,施設の維持管理等を考慮して,十分な空間を園舎周囲に確保することが重要である。
(4) 土質,地盤や造成状況等を把握し,災害時等の安全を確保できるように,各施設部分を配置することが重要である。
(5) 園地内における高低差等の地形や樹木等の自然を有効に活用することができるよう,園舎,園庭を配置することが望ましい。
(6) 幼児が潤いを感じて生活できるよう,保育室の前庭や保育室と連続した半屋外空間を園舎廻りに確保することが望ましい。
(7) 保育所や小学校等との併設の際には,相互の交流を考慮した連続的な施設計画とすることが重要である。
第2  配置構成
(1) 幼児の主体的な活動を促したり,安全でゆとりと潤いのある環境を整備するためには,園舎,園庭,半屋外空間等の各施設は,一体的に活用できる配置とすることが重要である。
(2) 当該地域の気候を考慮して,日照,通風等の良好な環境条件を確保するとともに,各施設部分に必要な機能,利用形態に応じ,園舎,園庭等を配置することや,特に冬季の保育時間における園庭への日照を確保できるように,園舎を配置することが重要である。
(3) 騒音,ほこり,振動,日影,プライバシー等について周辺との相互の影響を可能な限り避けることができるように,各施設部分を配置することが重要である。
(4) 日常の幼児,教職員,通園バス等の通行においてはもちろん災害時の避難や緊急車両等の進入も考慮しつつ,近接道路からの出入りの動線,園内の各動線を安全かつ合理的に確保できるように,園舎,園庭を配置することが重要である。
(5) 園舎,園庭,半屋外空間及び門,囲障などの付帯施設は,意匠面において相互に調和し,周辺の景観との調和等に配慮した配置構成とすることが望ましい。
(6) 防犯上の観点から,見通しがよく,建物等による死角が生じないよう園舎,園庭,半屋外空間等の各施設の配置を計画することが望ましい。
(7) 園舎の敷地は,盛土部分並びに異なる地質及び地盤条件の混在する部分にまたがらず,かつ,土砂の流出するおそれのある部分に近接していないことが望ましい。
(8) 幼児と地域との交流や幼稚園開放を実施する場合は,利用者の動線に留意し,交流部分や開放部分の配置を考慮して建物の位置を計画することが望ましい。
(9) 幼稚園と保育所,小学校,社会教育施設,高齢者福祉施設等との複合化を計画する場合は,双方の交流が円滑かつ効果的に展開できるよう利用動線や交流の場について考慮し,建物位置を計画することが重要である。
(10) 避難階以外の階を幼児が利用する場合には,緊急時の幼児の避難に十分配慮した計画とすることが重要である。
(11) 屋外倉庫その他の屋外の施設や設備は,利用しやすく,かつ,教育活動等に支障の生じない位置に配置することが重要である。

第3章  園舎計画


第1  基本的事項
1  高機能かつ柔軟な計画
(1) 多様な保育形態及び幼児の多様な活動内容に応じるため,各室や空間の必要性,関連性,利用頻度等を勘案した適切な空間構成とすることが重要である。
(2) 幼児の特性に応じて,自発的,自主的な活動が促されるように,保育室や遊戯室等の園舎内及び園舎と園庭や半屋外空間の空間的な連続性を確保するとともに,各室や空間の広さ,形,床レベル等に変化を持たせるように配慮することが望ましい。
(3) 幼児の多様な活動の展開に柔軟に対応するため,必要に応じて移動・可動間仕切等を用いて多様な空間を構成できる計画が望ましい。
(4) 園具,遊具等の設置及び将来の導入を考慮して各室や空間の面積,形状等を計画することが重要である。
(5) 多様な保育空間等を確保するために,中庭,屋上など園舎周りの屋外空間や半屋外空間を,安全管理面に十分留意しつつ積極的に取り入れた構成とすることが望ましい。
(6) 遊戯室,ホール,ラウンジなど奥行きの深い空間や仕切りのない広い空間などは,採光,換気,音響,暖房等に支障を生じないように,位置,空間の形状,天井高,開口部,仕上げ,設備等を計画することが重要である。
2  総合的,長期的な計画
(1) 将来の幼児数の変動や多様な活動内容や指導方法に柔軟に対応できるように,間仕切位置の変更,保育室等の増築等を行うことのできる計画とすることが望ましい。
(2) 必要な保育空間等を確保しつつ,地域における幼児教育のセンターとしての子育て支援機能を果たすことも考慮した空間構成とすることが望ましい。
(3) 地域の人々に親しまれ,幼児の将来の思い出にもつながり,かつ,教育の場としてふさわしい意匠とすることが望ましい。その際,幼稚園や地域の歴史,伝統等を考慮したシンボル性を有し,また,地域の景観と調和するように設計することが望ましい。
3  安全かつ円滑な動線に配慮した計画 (1) 幼児の幼稚園における一日の活動が円滑に継続できるよう,空間的な連続性を確保した動線を設定することが望ましい。
(2) 幼児,教職員,保護者,幼稚園開放時における利用者等が円滑に園内を移動することができるよう安全で明確な動線を設定することが重要である。
(3)園具,遊具の円滑な運搬や配食等のための動線に配慮した計画とすることが重要である。
(4) 可能な限り簡明で遠回りとならない動線を設定することが重要である。特に,遊戯室等多人数を同時に収容する空間を避難階以外の階に計画する場合は,その避難動線の設定に十分留意することが重要である。
(5) 3歳児や障害のある幼児の日常の動線や避難動線に十分配慮して計画することが重要である。
4  多様な教育内容・保育形態に対応する家具の計画
(1) 机・いす・収納棚・ワゴン類・ついたて類等の家具については,多様な保育形態に対応できるよう数量,材質,形状等を各室と一体的に計画するとともに,幼児の人体寸法に十分留意することが重要である。
(2) 造り付けの家具・遊具等の設置に当たっては,必要性を十分検討し,幼児が日常的に利用しやすい位置に計画することが望ましい。 (3) 幼児の通園鞄等の所持品を収納する適切な規模の家具を計画するとともに,幼児が主体的に片づけられる形状,配置とすることが望ましい。
第2  保育空間
1  保育室
(1) 空間構成,位置等
1  日照,採光,換気,通風,音響等の良好な環境条件の確保に十分留意して,位置,方位等を計画することが重要である。
2  幼児の活動の拠点となる空間であることを考慮し,遊戯室その他の保育空間及び園庭との連携を十分検討し,適切な空間構成とすることが重要である。 3  幼児の交流,教職員間の連携・協力を円滑に行うことができるように,保育室相互のつながりに留意して計画することが重要である。
4  3歳児が活動する保育室は,遊びの場や便所等との関連に留意するとともに,職員室から見通しが良い位置に配置することが望ましい。
5  テラス,バルコニー等の半屋外空間や中庭,芝生等の屋外空間に,直接出入りできるように計画することが望ましい。
(2) 面積,形状等
1  多様な教育内容や指導方法に対応できるとともに,園具,遊具等を弾力的に配置できる面積,形状とすることが重要である。
2  幼児が様々な体験を行うことができるように,活動の内容や方法等に応じて様々なコーナーを形成できる面積,形状とすることが望ましい。
3  作品や資料の掲示スペースや展示空間,持ち物の収納空間を確保できる面積,形状とすることが重要である。
4  衛生面に十分留意しつつ,水栓,流しその他の生活用設備,小動物や植物と親しむための設備などを設置する空間を確保できることが望ましい。
5  3歳児が活動する保育室は,シャワー設備,給湯設備などの利用を考慮した計画とすることが望ましい。
2  遊戯室
(1) 空間構成,位置等
1  保育室との連携や,特に降雨,降雪時の利用を十分検討し,規模,位置等を適切に計画することが重要である。その際,保護者や地域住民による利用も考慮して計画することが望ましい。
2  保育室やホールと連続して計画する場合は,一体的な利用も考慮しつつ,幼児の日常の動線となる空間を確保できるように計画することが望ましい。
3  運動に使う遊具,大型の遊具等を収納するための空間を,日常の出し入れに便利な位置に確保することが望ましい。
(2) 面積,形状等
1  幼児が安全にしかも伸び伸びと活動できる面積,形状とすることが重要である。
2  活動の内容や方法に応じて各種の園具,遊具等の配置を換えたり,様々なコーナーを形成できる面積,形状とすることが望ましい。
3  避難時や行事の際の利用者の動線も考慮しつつ,幼児等が円滑かつ安全に移動できる出入口の位置,幅等を計画することが重要である。
4  幼児の発表,保護者の交流,様々な行事等に必要な照明,音響,ステージ,暗幕等の設備を適切に設置できる空間を確保することが重要である。
3  図書スペース
(1) 空間構成,位置等 1  幼稚園の規模,教育内容や指導方法等に応じて,図書スペースとしての専用室又はコーナー・アルコーブ等を活用した読書のための小空間を計画することが重要である。
2  幼児が本を読みながらくつろぎ,楽しむことのできる計画とすることが重要である。また,情報化に対応する教育機器を導入することや,読み聞かせのための空間を確保することも有効である。
3  図書,視聴覚機器,教材等を利用できる専用室,又は分散して利用できる小空間を幼児等が利用しやすい位置に配置することも有効である。
4  図書スペースの家具を,幼児数等に留意し,利用しやすいように配置することが重要である。
5  資料の展示,掲示等のための設備を設けることのできる空間を確保することも有効である。
(2) 面積,形状等
1  図書スペースとして専用室を計画する場合は,図書,各種設備,機器,教材等を効果的に配置,収納し,利用できるように,面積,形状を計画することが重要である。
2  図書,視聴覚機器,情報機器,教材等のための小空間を各保育室やその周辺に分散して計画する場合は,設置方法やその規模に十分留意することが重要である。
4  教材・器具庫
(1) 空間構成,位置等
1  身近な様々な対象が幼児のための教材となり得ることから,教材・教具の種類,数量等に応じた必要な規模を確保するとともに,適切な運搬経路を確保できる位置に計画することが重要である。
2  教職員が教材等の複写,印刷,作成,整理,修理等を行うことができる空間として計画することも有効である。
(2) 面積,形状等
1  各種設備,機器,教材等を効果的に配置,収納し,利用できる面積,形状とすることが重要である。
2  教材等のための小空間を各保育室等に分散して計画する場合は,設置方法やその規模に十分留意することが重要である。
5  ホール,ラウンジ等
(1) 空間構成,位置等
1  幼児と教職員,幼児間の交流等を促し,また,保護者の交流の場としても活用できるように,まとまりのある空間を計画することも有効である。
2  ホール,ラウンジ等の空間は,保育室,遊戯室等から利用しやすい位置に計画するとともに,中庭,テラス等との空間的連続性を考慮して計画することが望ましい。
(2) 面積,形状等多様な活動内容に対応できるとともに,家具等を適切に配置できるゆとりのある面積,形状とすることが望ましい。
6  食事のための空間
(1) 空間構成,位置等 豊かな食習慣を身に付けさせる上で,保育室とは別に,食事のための空間を計画することも有効である。その際,手洗いの場を近接した位置に設けることが望ましい。
(2) 面積,形状等
1  食事の場所として落ち着いた空間とし,衛生面に十分配慮することが重要である。 2  ゆとりと潤いが感じられ,楽しい食事ができるような空間とし,食卓,いす等の家具を弾力的に配置できるゆとりのある面積,形状とすることが望ましい。
7  半屋外空間
(1) 空間構成,位置等
1  幼児の主体的な活動を促す空間として,園舎周りの半屋外空間を積極的に計画することが望ましい。その際,保育室等の園舎部分及び屋外空間との連続性に配慮することが重要である。
2  風,積雪等地域の気候的特性に留意し,日照,採光,通風等について良好な環境条件となるよう,半屋外空間の位置及び向き等に留意することが望ましい。
(2) 面積,形状等
ゆとりと潤いを感じ憩いの場として構成することのできる面積,形状とすることが望ましい。
第3  共通空間
1  昇降口,玄関等
(1) 空間構成,位置等 1  登降園時に利用する昇降口,玄関等は,保護者等が円滑に幼児を送り迎えすることができるよう,ホール,ラウンジや保育室から利用しやすく,幼児の登降園の状況を確認できる位置に計画することが重要である。なお,幼稚園規模等に応じて分散して計画することも有効である。
2  日常の園舎と園庭との出入りの際に利用する昇降口は,上履きと下履きの動線が交差することなく,園舎等の周囲を迂回せず園庭へ出やすい位置に計画することが重要である。
3  降雨,強風,積雪等の地域の気候的特性に留意して,昇降口の位置及び開口部の向き,庇を検討するとともに,必要に応じ,風除室,乾燥室等を設けることが望ましい。
(2) 面積,形状等
1  出入りの人数と頻度,下足箱,傘立て等の配置を考慮し,安全かつ円滑に出入りできる面積,形状とすることが重要である。
2  日常的に多数の保護者が送迎に訪れるため,降雨,強風,積雪等地域の気候的特性に配慮し,送迎時に効率的に使用できる面積,形状とすることが望ましい。
3  障害のある幼児等が支障なく出入りできるように,車椅子等を利用した移動に支障のない面積,形状とすることが望ましい。
2  廊下,階段等
(1) 空間構成,位置等
1  廊下,階段,スロープ等は,安全かつ円滑な動線としての機能を確保できる計画とすることが重要である。
2  安全性の確保に留意しつつ,幼児等が多様な活動,交流を展開する場としても活用できるように,廊下,階段等を計画することが望ましい。
3  階段の踊り場や廊下にゆとりを持たせることにより,例えば幼稚園を紹介するためのギャラリーや多様な情報を交換する場として計画することも有効である。
(2) 面積,形状等
1  車椅子を利用した移動等に支障のない適切な面積を確保し,段差がある箇所はスロープ等を設置することが望ましい。
2  廊下の曲がり角等の場所は,角をとり見通しを良くするなどの工夫をすることが望ましい。
3  便所
(1) 空間構成,位置等
1  幼児の利用する便所は,保育室の配置状況や園庭との位置関係を考慮して,利用しやすい位置に計画することが重要である。その際,清潔で使いやすい計画とするとともに,3歳児,障害のある幼児の利用する便所は,保育室に近接した位置に計画することが望ましい。
2  幼児の利用する便所とは別に,教職員,保護者,外来者等の便所を,管理空間の適切な位置に男女別に計画することが重要である。
3  地域の幼児教育のセンターとして整備する場合は,保護者,幼稚園開放時における利用者,外部からの訪問者等の動線に配慮した位置に便所を計画することが重要である。
(2) 面積,形状等

1  幼児の心身の発達を考慮して,幼児数,利用状況等に応じた種類及び数の便器,手洗い設備,シャワー等を設置できる面積,形状とすることが重要である。
2  便所にブースを設ける場合は,教職員が必要に応じてブース内の安全を確認でき,また,幼児が容易に操作できる扉の高さ,幅等とすることが望ましい。
4  水飲み,手洗い等
(1) 空間構成,位置等
1  水飲み場,手洗い場は,保育室,食事のための空間,運動スペースの付近など園内の必要な場所に分散して計画することが重要である。
2  足洗い場は,洗浄前後の動線の設定に十分留意して,昇降口その他の主要な出入口に近接した位置に計画することが望ましい。
3  シャワー等を設置する空間は,屋内外の保育空間や職員室から利用しやすい位置に計画することが望ましい。
(2) 面積,形状等
1  水飲み場,手洗い場,足洗い場は,幼児数,利用頻度等に応じた適当な数の水栓等を設置できる面積,形状とすることが重要である。
2  シャワー等を設置する空間は,利用状況に応じた面積,形状を確保することが重要である。
第4  家庭・地域連携空間
1  預かり保育室
(1) 空間構成,位置等
1  午睡やおやつ等の「預かり保育」独自の活動に対応した専用の室を計画することが望ましい。なお,保育室等と共用する場合は,「預かり保育」のための活動に適切に対応できる空間構成や雰囲気づくりをすることが望ましい。
2  家庭的な雰囲気のゆとりと潤いのある空間となるよう計画するとともに,職員室と近接した位置に配置することが望ましい。
3  明るさを抑えることが可能な午睡ための空間を計画することが望ましい。その際,布団等の収納や空調設備について留意することが望ましい。
4  衛生面に配慮しながら,おやつ等の軽食を食べるための空間を計画することが望ましい。
5  保護者が幼児を送り迎えするための玄関等については,保護者と幼児が円滑に出会えるよう配慮することが望ましい。
(2) 面積,形状等
1  幼稚園の規模や「預かり保育」の対象となる幼児数,及び活動日数や活動時間帯等の運営方法も考慮し,適切な規模の面積とすることが重要である。
2  必要に応じて,床に畳やカーペット等を採用することも有効である。
2  子育て支援室
(1) 空間構成,位置等
1  子育て相談や子育てサークル活動に対応したり,幼児の保護者同士及び保護者と教職員が交流することができる子育て支援専用の空間を計画することが望ましい。
2  インターネットを活用し,保護者や地域住民と子育てに関する情報交換や相談に対応できる「子育て情報ネットワーク」を構築することも有効である。
(2) 面積,形状等
1  乳幼児を伴う保護者の利用に配慮し,乳幼児用のベットや給湯設備などを備えた形状として計画することが望ましい。
2  乳幼児は床を這う,寝転ぶ,座る等の行動をとることに留意し,床材の選択やコンセントの仕様等については,安全性や衛生面に十分配慮することが望ましい。
3  PTA室
(1) 空間構成,位置等
1  PTA室は,保護者等が気軽に集まり交流や学習等ができ,教職員と相談しやすい雰囲気とし,その位置は職員室と近接させることが望ましい。
2  地域住民やボランティア等が交流できる場としてPTA室を計画することも有効である。
(2) 面積,形状等 保護者,地域の人々,ボランティア等が幼稚園において活動する上でその拠点となる室として,必要な家具等を適切に配置できる面積,形状とすることが望ましい。
第5  管理空間
1  職員室
(1) 空間構成,位置等
1  職員室は,園庭,アプローチ部分などの見通しがよく,園内各所への移動に便利な位置に計画することが重要である。
2  教務,事務等の執務内容に応じた規模の空間を確保するとともに,幼児の活動を常時見守ることができ,緊急時にも速やかに対応できる位置に計画することが重要である。
(2) 面積,形状等
1  必要な家具,事務機器,放送設備等を適切に配置できる面積,形状とすることが重要である。
2  打合せや教材の開発・研究のための作業を行うコーナー等の空間や教材等を保管するスペースを確保することも有効である。
3  休憩・休息,食事のための湯沸かし,流し等の設備を備えたラウンジやコーナー等の空間を確保することも有効である。
2  園長室・応接室
(1) 空間構成,位置等 園長室,応接室は,職員室と近接した位置に計画することが望ましい。
(2) 面積,形状等
1  園長室,応接室は,保護者の子育て相談等での利用にも対応できるよう配慮しつつ,必要な家具等を適切に配置できる面積,形状とすることが重要である。
2  幼稚園の歴史に関わる資料等を保管し,展示するための家具等を設置することのできる面積,形状とすることも有効である。
3  指導要録等の幼児の個人的な情報を適切に管理することのできる面積,形状とすることが望ましい。
3  会議室
(1) 空間構成,位置等
1  教職員や保護者,地域住民の間で情報交換や触れ合いの機会がもてる空間として計画することが望ましい。
2  会議室は,必要に応じ各種視聴覚メディアを効果的に活用したり,各種作業の場として計画することも有効である。
(2) 面積,形状等 会議室は,会議机等の家具を弾力的に配置することのできる面積,形状とすることが重要である。
4  保健室
(1) 空間構成,位置等 良好な日照,採光,通風等を確保でき,職員室や便所に近接した位置に計画することが重要である。また,相談室を併せて設けることも有効である。
(2) 面積,形状等
1  健康診断,応急処置,休養のための家具,機器を配置し,薬品等を安全に保管できる面積,形状とすることが重要である。
2  病気やけがの幼児を迅速に搬送できるよう,屋外に通じる専用の出入口を設け,洗浄設備を確保することも有効である。
5  更衣室・休憩室
(1) 空間構成,位置等
1  教職員用の更衣室は,職員室と近接した位置に配置し,窓,出入口等の防犯性に配慮した計画とすることが望ましい。
2  教職員用の休憩室は,職員室と近接した位置に配置し,ソファ等の家具や畳の導入を考慮し,ラウンジ的な空間として計画することが望ましい。
(2) 面積,形状等
更衣室は,男女別に計画し,ロッカー等の収納家具や,必要に応じてシャワー設備を設置できる面積,形状とすることが望ましい。
6  調理室
(1) 空間構成,位置等
1  安全かつ円滑な配膳経路の確保及び良好な環境衛生及び安全性の維持が可能となるよう計画することが重要である。
2  食堂・ランチルーム等の食事のための空間に近接させて計画することが重要である。
3  騒音,異臭等により教育活動に支障を及ぼすことなく,また,外部から車の進入しやすい位置に計画することが重要である。
4  休憩,着替え等のための空間を確保することが望ましい。
5  食品や食材の保管を適切に行うとともに,食中毒の原因となる雑菌等の発生を抑制し,衛生管理を行い易い施設として計画することが重要である。
6  調理室又は給食センター等から,食事のための空間へ配膳する間の保管場所については,異物混入を防ぐため,施錠等も含め計画することが重要である。
(2) 面積,形状等
1  効率的かつ安全・衛生的に作業を行うため,必要となる設備を利用しやすいよう設置し,安全・衛生管理を適切に行うことのできる面積,形状とすることが重要である。
2  床を乾いた状態で使用するドライシステムにより計画することが重要である。
7  その他の管理諸室
1  洗濯機,乾燥機等を設置する場合は,幼児が自由に近づけない位置に計画することが重要である。
2  倉庫を設ける場合は,物品等の種類,寸法,量に応じて必要な空間を確保するとともに,搬出入に便利な位置に計画することが望ましい。
3  機械室を設ける場合は,騒音や振動の影響,燃料などの搬入等を考慮して,幼児の保育空間から離れ,保守・点検を行いやすい位置に計画することが望ましい。
4  管理諸室の周辺に職員や外来者用の便所,手洗いを計画することが重要である。

第4章  園庭計画


第1  基本的事項
1  教育環境の向上
(1) 園庭を構成する各施設部分について,指導方法,幼児の多様な活動内容や利用頻度等を十分勘案した適切な空間構成,配置等を計画することが重要である。
(2) 幼児期の心身の発達,人体寸法,動作寸法,行動特性等を勘案して,幼児が自発的,自主的な活動を展開できるように,安全性の確保に十分留意しつつ,各施設部分を計画・設計することが重要である。
(3) 幼児の多様な活動内容に十分留意し,園舎周りの屋外空間や屋上等を含め,園地全体を活用して幼児が活動できるよう園庭全体の連続性に配慮することが望ましい。
(4) 3歳児や乳幼児の利用が想定される場合は,専用の屋外保育空間を保育室に近接した位置に設けることも有効である。
(5) 幼児の自然体験を豊かにするため,安全性の確保に十分留意しつつ,自然の傾斜,段差等を有効に活用して,各施設部分を計画・設計することが望ましい。
(6) 園地近傍の樹林,草原,小山,小川,池等を活用して園庭を計画することも有効である。
(7) 園舎の屋上,壁面,テラス,ベランダなどについて緑化することも有効である。
2  総合的かつ柔軟な計画
(1) 各施設部分・空間等は,相互の調和や全体的な景観に配慮し,園舎周りの屋外空間や屋上等を含め,園地全体を活用して幼児が活動できるように,園舎部分との連続性に配慮して計画・設計することが重要である。
(2) 幼児の多様な活動の展開に柔軟に対応するため,可動遊具の導入等により各施設部分の空間配分及び配置の再構成が可能な計画とすることが望ましい。
(3) 文化的な環境づくりのために,舗装面の装飾やモニュメントの設置等を計画することも有効である。
(4) 環境に配慮した取り組みとして,太陽光を利用したモニュメント,風力発電装置,雨水浸透トレンチ等の設置について総合的に計画することも有効である。
(5) 保護者と教職員,保護者間の交流の場としての機能を充実させるため,園庭にベンチ,庭等の空間を計画することも有効である。
(6) 保育所との連携を行う場合は,相互の園庭の共用化を考慮した計画とすることも有効である。
第2  運動スペース
(1) 敷地の形状を有効に活用し,変化に富み,遊びながら様々な活動を体験したり挑戦したりできる空間として計画・設計することが望ましい。
(2) 運動や遊びの種類,設置する遊具の利用形態等に応じて,必要な面積,形状等を確保できる計画・設計とすることが重要である。
(3) 平滑な表面と適度の弾力性を備え,良好な保水性,排水性,防塵(じん)性等を確保できるように,構造,材質等を計画・設計することが重要である。
(4) 固定遊具は,自然の樹木や地形の起伏等を遊具として活用することも考慮しつつ,幼児数や幼児期の発達段階,必要性,安全性,耐久性,利用頻度,衛生面等を十分勘案して,その数,種類,規模,設置位置等を計画することが重要である。
(5) 固定遊具,可動遊具ともに定期的に安全点検を行い,破損箇所の補修を行う等日常的な維持管理を行うことが重要である。とりわけ,揺れ,回転,滑降等を伴う遊具の設置については安全性確保の観点から慎重に対処することが望ましい。
(6) 固定遊具の支柱の基礎部分及び遊具の周りは,幼児の安全に配慮した仕上げ,構造等とすることが重要である。
(7) 幼児の興味や遊びの変化等に応じて,遊具を再配置できるように,可動遊具や組立遊具を安全性に留意して導入することも有効である。
(8) 芝生を用いる場合には,気候・土壌条件,維持管理方法等を考慮し計画することが重要である。
(9) 必要に応じ,東屋やパーゴラ等,日除けのための施設を適当な通風の得られる位置に設けることも有効である。
第3  砂遊び場,水遊び場その他の屋外教育施設
1  砂遊び場
(1) 安全面及び衛生面における維持管理に十分留意しつつ,適当な面積,形状,砂質等のものを確保することが重要である。
(2) 日当たりが良く安全かつ効果的に利用できる位置に計画することが重要である。
2  水遊び場
(1) 水質管理ができるプール等の水遊び場を計画することが望ましい。また,水質管理や利用形態に十分留意しつつ,幼児が楽しく遊べる小川や池,可動式の水遊び場を計画することも有効である。
(2) 日当たりが良く,安全かつ衛生的に管理できる位置に計画することが重要である。
3  その他の屋外教育施設
(1) 動植物の飼育,栽培のための施設を,安全面及び衛生面に留意しつつ,計画することも有効である。その際,幼児が活動しやすいよう配慮することが望ましい。
(2) 敷地内に地域の自然を活用したビオトープを計画することも有効である。
※ビオトープ・・・水生植物,水生動物等の観察ができる小川,池等をはじめとする生物の生息空間
(3) 敷地内に,幼児が登ったり駆け下りたりできる築山,通り抜けができるトンネル,泥遊びができる場所等を安全面及び衛生面に留意しつつ計画することも有効である。
(4) 憩い,食事,交流等の場として,ステージ,ベンチ等を設置することも有効である。
第4  緑化スペース
1  共通事項
(1) 植栽,草花などの自然を取り込んだ緑化スペースを園地全体に積極的かつ効果的に取り入れることが望ましい。
(2) 緑化に当たっては,維持管理の方法を十分検討しつつ,樹木の成長等の状況を十分予測し,長期的な展望の下に計画することが重要である。
(3) 土地的条件,気候的条件などを十分考慮するとともに,有毒,有害寄生虫の有無等に留意し,適切な種類の樹木や草花等を選定することが重要である。
(4) 四季折々に花を咲かせ,実をならせる樹種を選定するなど,植物やそこに飛来する野鳥,昆虫等の生態等を観察できるように計画することが望ましい。
(5) 明るい雰囲気を作り出し,幼稚園への愛着や思い出につながり,地域住民が誇りや愛着をもつことのできる緑化計画とすることが望ましい。
(6) 敷地内に十分な緑化の空間を確保することのできない場合などにおいては,安全性に十分留意しつつ,建物の外周部,屋上等を緑化に活用することも有効である。
2  樹木
(1) 樹高の高い樹木を園舎の周囲,園地周辺部等にまとまりを持たせて配植したり,1本又は数本の樹木をポイント的に配植することも有効である。
(2) 樹木の配植に当たっては,目的とする機能を有効に発揮することができるよう樹種,機能等に応じ間隔,配列等を設定するなど生育条件の確保に留意して計画することが重要である。
(3) 園舎等の建物周囲へ樹木を配植する場合は,室内の採光,通風等に支障を生じることのないよう計画することが重要である。
(4) 園地周辺部に樹木を配植する場合は,日影,落葉等によって周辺地域へ支障を及ぼすことのないよう配慮しつつ,周辺地域の景観と調和し,良好な景観の構成に貢献するよう計画することが望ましい。
(5) 安全性に留意しつつ,木登りなどの遊びができる樹種を選定することも有効である。
(6) 郷土産のものを中心に,四季の変化,生態等を観察することのできる樹種を選定することが望ましい。
3  植え込み
(1) 低木による植え込みを,前庭部,園舎周囲,沿道部,敷地境界部等にある程度の密度を持たせて計画することも有効である。
(2) 植え込みを計画する場合は,維持管理に十分留意しつつ,目的,場所等に応じた適切な樹種を選定し,ある程度の密度をもって配植することが望ましい。
(3) 樹高の高い樹木と組み合わせる場合には,植え込みに日照障害を生ずることのないよう留意して計画することが重要である。
4  芝生
(1) 芝生のもつ効用を,維持管理及び植栽場所に十分留意しつつ,効果的に活用することも有効である。
(2) 使用目的及び使用場所に適した種類の芝を選定することが重要である。 (3) 樹木等と併用する場合は,芝に日照障害を生じることのないよう留意して計画することが重要である。
(4) 前庭部,保育室の前面等に芝を配植することも有効である。
(5) 幼児が日常的に使用する部分は,感触,踏圧に対する耐性,維持管理のしやすさ等に留意して芝の種類を選定することが重要である。
(6) 芝の植付けに当たっては,生育条件の確保に留意しつつ,種類等に応じて植付けの方法,時期等を選定することが重要である。
5  花壇
(1) 幼児が自発的,自主的に世話ができ,また管理もしやすいように,位置,規模等を計画することが重要である。その際,栽培する草花,野菜等の種類は,開花や収穫の時期及び期間,手入れや収穫等の管理の難易を十分検討し,適切なものを選定することが望ましい。
(2) 設置位置は,日当りがよく,目につきやすく,かつ,管理に容易な場所とすることが望ましい。
(3) 形状等については,複雑な形状及び過度の広さとすることは避け,周囲をレンガ,ブロック等で縁どり,適当な規模に区画することが望ましい。
(4) 花壇とは別に,花壇面積に応じた十分な苗場を用意しておくことが望ましい。
6  生け垣
(1) 潤いのある親しみやすい環境を構成する上で,侵入防止,目かくし,防じん,防音等遮へいの必要な部分に生け垣を計画することも有効である。
(2) 生け垣を計画する場合は,場所及び目的に応じ,生け垣の種類や使用する樹木等を選定し,防犯上も考慮し計画することが重要である。また,景観構成上も有効となるよう配植することが望ましい。
(3) 園地周辺部に計画する場合は,目的とする機能の確保に留意しつつ,変化をもたせ,厚みを感じる計画とすることが望ましい。
(4) 園地内の施設の境界に計画する場合は,目的とする機能の確保に留意しつつ,区画する施設その他の背景と調和し,かつ,園地内の良好な景観を構成するよう樹種,配植等を計画することが望ましい。
第5  門,囲障等
1  門
(1) 幼児等の通行量が最大となる時間帯の通行密度,緊急車両の通行等を勘案して十分な幅の通行部分を確保することが重要である。
(2) 幼児の道路への飛び出しを避けることができるように,門及び門周りの囲障の仕様,配置等を計画することが望ましい。
(3) 門扉を設ける場合は,開閉方法,形状,重量等を十分検討して安全に開閉できるよう計画するとともに,心理的な圧迫感を与えることのないよう意匠に配慮することが重要である。
(4) 不審者の侵入防止や犯罪防止等の観点から,死角の少ない場所に配置することが重要である。なお,死角が生じる可能性のある場合は,防犯監視システム等を設置することが望ましい。
2  囲障
(1) 囲障は,地域状況に応じ防犯にも留意しつつ,周辺環境に調和し,開放的で親しみの感じられるよう設計することが望ましい。
(2) 生け垣とする場合には,維持管理や周辺への影響について十分検討し,適切に樹種を選択し,配列することが重要である。
(3) 運動スペース周辺の住宅,道路の状況等に応じて,防護ネット等を計画することが望ましい。
(4) 囲障・防護ネット等については,十分な耐用性を確保するよう設計することが重要である。
3  駐車場等 (1) 必要最小限の自動車や自転車等の駐車及び円滑かつ安全な出入りに必要な面積,形状等を計画することが重要である。
(2) 出入りに伴う騒音,排気ガス等が教育活動や周辺に影響を及ぼすことのないよう計画することが重要である。
(3) 不審者の侵入防止や犯罪防止等の観点から,死角の少ない場所に配置することが重要である。
(4) 必要に応じ,通園バスの駐車場や送迎の際の乗降場所,保護者,幼稚園開放における利用者,外部からの訪問者のための自転車等駐車場を計画することが重要である。

第5章  詳細設計


第1  基本的事項
1  安全性を重視した設計
(1) 教育の場として,地震,暴風,降雨,積雪,落雷等の災害や火災,事故等に対し,十分な安全性と防災・防犯性を確保するよう設計することが重要である。
(2) 幼児の活動や園具,遊具等の移動を考慮し,床,壁等は必要な強度と弾力性を備えた材質,工法とすることが重要である。
(3) 幼児の転落,転倒,衝突,切傷,火傷,挟まれ事故防止のために,柱や壁のコーナーの面取り,手すりや扉のストッパーの設置,突起物や足掛け部分の除去等の工夫を行うことが重要である。また,幼児の多様な行動に対し十分な安全性を確保するため,サイン等により注意喚起を行うことも有効である。
(4) 地震,暴風時等における家具の転倒,落下や経年,老朽化による仕上げ材の落下を防止するため,適切な仕様,工法とするとともに,必要に応じて家具等を配置する部分の補強,確実な固定措置を講じるよう設計することが重要である。
2  機能性に配慮した設計
(1) 幼児期の発達段階に留意しつつ,人体寸法,動作寸法,行動特性等に配慮して設計することが重要である。
(2) 3歳児や障害のある幼児のために特別な仕様とする場合は,これらの幼児が有している運動・動作,認知等の能力を最大限発揮させ,その発達を促すよう配慮することが望ましい。
(3) 障害のある幼児,教職員及び幼稚園開放時の高齢者,身体障害者等の利用を考慮し設計することが重要である。
(4) 各室や空間に求められる機能や環境条件に応じて,材質や色彩・形状等の意匠を,設備や家具の導入計画も併せて一体的に設計することが重要である。
3  快適性に配慮した設計
(1) 日照,採光,換気,通風,保温,音響等による良好な環境条件の確保に留意しつつ,ゆとりと潤いを感じられる設計とすることが重要である。
(2) 屋内の熱の損失,結露等外気の影響を低減し,居住性を高めるために,外壁,屋上,最下階の床等の各部を断熱化することも有効である。
(3) 色彩の視覚面や心理面での効果,材質や仕上げの感触面での効果を十分に検討し,設計することが重要である。
(4) 柔らかで温かみのある教育環境づくりを行うことが重要である。
4  耐用性に配慮した設計 (1) 当該地域の気候的条件を考慮し,必要な耐候性と耐久性を備えるよう設計することが重要である。
(2) 幼児の多様な行動,頻繁な使用に対し,十分な耐用性を確保するよう設計することが重要である。
(3) 十分な防汚性を備えるよう設計することが望ましい。
(4) 上階部の外部に面した窓拭き,換気扇の清掃等の日常的なメンテナンスの方法を考慮し計画することが重要である。
第2  内部仕上げ
1  共通事項
(1) 必要とされる環境,性能等を適確に実現することができるよう下地及び表面の仕上げを一体的に設計することが重要である。
(2) 設備及び家具の導入計画に留意しつつ,意匠,材質,色彩等を総合的に設計することが重要である。
(3) 幼児の活発な活動,家具,教育機器等の頻繁な移動を考慮し,十分な安全性,強度及び吸音性を持つ材質,工法とすることが重要である。
(4) 家具,設備等について,明確な配置計画を策定し,必要に応じ配置予定部分に確実に固定するための措置を講ずる設計とすることが重要である。
(5) 地域の特色ある意匠,材質等を活かした総合的な設計をすることが重要である。
2  材質
(1) 燃えにくい材質のものを使用することが望ましい。特に,火気使用室,暖房器具の周辺の天井,壁等の内装は,十分な防火性のある材質のものを使用することが重要である。
(2) 床には滑りやすい材質のものの使用を避けることが重要である。特に,水を使用する部分及び雨等が持ち込まれる部分の内装には,耐水性,耐湿性及び耐食性に優れ,かつ,濡れても滑りにくい材質のものを使用することが重要である。
(3) 調理室については,雑菌等の発生を抑制するドライ方式とすることが重要である。また,便所については,ドライ方式とすることも有効である。
(4) 適度に吸音性のある材質のものを使用し,適切に施工することが重要である。特に,面積の広い室・空間,大きな騒音の発生が予想される室・空間については,十分な吸音性をもつ材質のものを使用することが重要である。
(5) 汚れにくく,清掃がしやすい材質のものを使用することが望ましい。特に,食物を扱う室・空間,便所,洗面所,昇降口等の内装は,十分な耐汚性をもち,日常的に清掃がしやすい材質のものを使用することが重要である。
(6) 壁,床等には,適度の強度と弾力性をもち,十分な耐久性のある材質のものを使用することが重要である。特に,運動を行う空間の床は,不陸(ふりく)や表面の荒れなどを生じにくい材質のものを使用することが重要である。
(7) 幼児の心を和ませ,また,保育空間に家庭的な雰囲気を醸し出すため,柔らかな手触りや温かみの感じられる木質材料,畳等の素材を適宜使用することが望ましい。
(8) 再生資源を利用した材料等の使用についても検討することが望ましい。
(9) 幼児の健康と快適性を確保するため,有害な室内空気を汚染する化学物質の発生のない,若しくは少ない建材を採用し,施工手順・方法に配慮することが重要である。
3  天井,壁等
(1) 剥落するおそれのない工法を計画することが重要である。
(2) 壁には,幼児の日常の活動において危険を及ぼす突起物は設けないことが重要である。なお,掛け具を設ける場合には,危険防止に留意して設計することが重要である。
(3) 運動を行う空間の天井及び壁は,必要な強度と弾力を備え,危険な突起等のない形状とし,必要な設備・用具を取り付けることが可能な仕様とすることが重要である。
(4) 音の発生する室・空間及び一定の静寂さを必要とする室・空間の壁,天井等は,適度の遮音性をもつ仕様とすることが重要である。 (5) 建物の外気に面する壁,最上階の天井等を断熱化することも有効である。
(6) 幼児の作品の掲示等を行うことのできる仕様として計画することも有効である。その際,幼児の目の高さに留意して計画することが望ましい。
(7) 遊具の収納空間や,多様なコーナー,アルコーブ,デンを設けるなど,幼児の遊びを生み出す場として壁を活用することも有効である。
(8) 移動・可動間仕切等を導入する場合は,必要に応じ,防音性のある材質のものを使用することが望ましい。
4  床
(1) 幼児の通行する部分においては,幼児等が気が付かずにつまずくような危険な段差をつくらないことが重要である。
(2) 障害のある幼児,教職員及び幼稚園開放時の高齢者,身体障害者等が支障なく活動が出来るよう,床には障害となる段差等を設けないことが重要である。
(3) 床は,幼児が這う,寝転ぶ,座る等の行動に対して,安全な仕上げとすることが重要である。
(4) 必要に応じ,結露防止を考慮し最下階の床を断熱化することが望ましい。なお,居住性を高める上でも,最下階の床を断熱化することも有効である。
(5) 運動を行う空間の床は,必要な強度と弾力を備え,危険な突起のない形状とし,必要な設備・用具を取り付けることが可能な仕様とすることが重要である。
(6) 活発な活動を行う空間を上階に計画する場合は,振動及び騒音の伝播の防止を考慮した仕様とすることが重要である。
第3  開口部
1  共通事項 (1) 採光,通風,換気等を効果的に行うことのできる配置,大きさ,形式等とすることが重要である。
(2) 幼児の日常の活動において事故が発生することなく円滑に移動を行うことができ,また,地震,暴風等に対し破壊,脱落することのないよう十分安全でかつ利用しやすい構造,形式等とすることが重要である。
(3) 遮音,断熱等が必要な室・空間の開口部については,建具本体,建具本体と枠との取り合い部分に十分な気密性を確保した仕様とすることが重要である。なお,必要に応じ断熱仕様の建具とすることも有効である。
(4) 奥行きの深い空間や面積の広い空間は,採光,換気,保温等の環境条件の確保に特に留意し開口部の位置,面積,仕様等を設計することが重要である。
(5) ガラスは,人体及びボール等の衝撃や,地震,暴風等の災害に対し破損しにくく,又は破損しても事故につながらないよう,ガラスの安全性能を生かし,使用場所及び使用目的に適したものを選択することが重要である。また,錯覚して衝突しないように,ガラスが認識できる工夫をすることも重要である。
2  窓
(1) 利用内容等に応じ,適当な量及び質の光を確保することができるよう窓の位置,面積,形式等を適切に設定することが重要である。また,清掃等が容易に行える計画とすることが望ましい。
(2) 教育の場となる室・空間の窓は,必要かつ十分な面積を確保し,幼児の目の高さに留意した適切な位置に設計することが重要である。
(3) 日射の強さや方向,室内の活動の状況に応じ日照を調節することのできるよう庇の形状,ガラスの選定等について検討することが望ましい。
(4) 教育内容に応じ室内を暗くすることが必要な室・空間の窓には,外部からの光を適宜遮断することのできる設備等を設けることが望ましい。
(5) 窓による自然換気を計画する場合には,位置,開閉の方法等に留意し,有効な開口面積を確保することのできる形式とすることが重要である。
(6) 外部に面した窓は,幼児の目の高さに留意し,腰壁の高さを適切に設定することが重要である。また,窓下には足掛りとなるものを設置しないことを原則とし,幼児の転落防止等のために,必要に応じ,窓面への手すりの設置や開閉方式について検討することが重要である。
(7) 低層階の外部に面する窓は,防犯性能の高いものとすることが望ましい。
(8) 天窓については,夏季における温度の上昇,地震時の破損・落下等について留意して計画するとともに,その周囲に防護フェンス等を設置し,幼児が近づかない配慮を行うことが望ましい。
3  出入口
(1) 必要かつ十分な幅を確保し,扉等は操作しやすく安全な形式とすることが重要である。
(2) 出入口の建具は,引戸とすることが望ましい。なお,開き戸を設ける場合は,開閉時の安全性に配慮した形式とすることが重要である。
(3) 出入口の敷居は,出入りの支障となる段差を生じないよう設計することが重要である。
(4) 屋外への出入口は,上部からの落下物等による危険を防止することができる設計とすることが重要である。
(5) 障害のある幼児,教職員及び幼稚園開放時の高齢者,身体障害者等も支障なく活動ができるよう,出入口は幅及び高さを十分確保し,操作しやすい建具を使用することが重要である。
(6) 防火戸など重量のある扉等については,開閉時の安全性に配慮した形状とすることが重要である。特に,防火シャッターについては,注意喚起装置や危害防止機構等の危害防止対策を備えたものとすることも有効である。
4  換気口等
(1) 必要に応じ,換気口を各室・空間に適宜設けることが望ましい。なお,臭気,湿気等の発生しやすい室・空間や室内空気汚染の低減のためには,恒常的に自然換気が得られるよう換気口を設けることが重要である。
(2) 給気及び排気孔は,必要かつ十分な開口面積を確保し,適切な設置位置,開閉形式等とすることが重要である。
(3) 日常使用しない床下点検口等の扉は,簡単に開かない仕様とすることが重要である。
第4  外部仕上げ
1  共通事項
(1) 環境条件による影響に対し,十分な耐性のある設計とすることが重要である。
(2) 幼児の遊びや生活の場としてふさわしく,幼稚園や地域の歴史及び伝統,地域の景観,風土等と調和し,かつ,地域社会の核としての風格を備えるよう設計することが重要である。
  2  材質
(1) 気候的な条件や経年に対し,汚れにくく,変容しにくい材質のものを使用することが重要である。
(2) 幼稚園周辺の状況に応じ,燃えにくい材質のものを使用することが望ましい。
(3) 地域のそれぞれの環境条件に応じて,構造体を保護することができる材質を使用することも有効である。
(4) 再生資源を利用した材料等の使用についても検討することが望ましい。
3  屋根,外壁等
(1) 剥落するおそれのない工法とすることが重要である。
(2) 幼児の保育空間に面する部分は,幼児の活発な活動に対し十分安全な形状とすることが重要である。
(3) 建物全体の調和を保ちながら,芸術的,文化的な要素を取り入れた計画とすることも有効である。
(4) 屋内の熱の損失及び外気の影響等を低減し居住性を高める上で,外壁,屋上等の各部を必要に応じ断熱化することも有効である。
(5) 雨樋は,落葉等による詰まりや冬期の凍結に留意した計画とすることが望ましい。
第5  家具
(1) 書棚,可動式物入れ等が地震時や幼児の衝突による力で転倒や落下しないようにすることが重要である。
(2) 幼児の多様な行動,頻繁な使用に対し,十分な耐用性及び安全性が確保されるとともに,幼児の人体寸法にあった家具について計画することが重要である。
(3) 有害な室内空気を汚染する化学物質の発生のない,若しくは少ない材料を採用することが重要である。
(4) 各室や空間に求められる機能や環境条件に応じ,温かみのある材質や色彩・形状の家具を導入することが重要である。
(5) 地場産材等を生かした木製家具等について計画することも有効である。
第6  手すり・屋上
(1) 階段,バルコニー,屋上,吹抜け等には,円滑な移動と転落防止のために,適切な高さと十分な強度の手すりを設けることが重要である。また,障害のある幼児等の利用も考慮して,廊下,階段の両側,便所等に,手すりを設置することが望ましい。
(2) 手すりは,十分な強度を有し,幼児が握りやすい材質,形状とするとともに,足を掛けることのできる仕様は避ける等の幼児の乗り越え,通り抜け,滑り降り等を防止できる寸法,形状等とすることが重要である。
(3) 屋上を計画する場合は,保守点検を行いやすい計画とするとともに,地域特性や環境条件を考慮しつつ,必要に応じ太陽光パネルの設置や屋上緑化を計画することも有効である。

第6章  構造設計


第1  基本的事項
1  安全性能
(1) 幼児等が遊びや生活の場として一日の大半を過ごすだけでなく,幼稚園開放時や緊急の災害時に多数の地域住民等が利用することも考慮し,十分な安全性能を確保するよう計画し,設計することが重要である。
(2) 地震時に,人命の安全確保に加えて機能確保が図られるよう,設計地震力を割増して設計する等,耐力計算に余力をもたせた設計とすることが重要である。
(3) 多様な保育形態に対応する上で必要とされる幼稚園固有の空間の構築に対し,十分安全な構造を計画し,設計することが重要である。
(4) 必要となる空間,設備等の改造・改修に対し,構造上十分な余裕を確保した設計とすることが望ましい。
2  耐久性能
(1) 経年に対する十分な耐用性を確保することができるよう設計することが重要である。
(2) 気候的条件や地理的特性等の環境条件による影響に対し,十分な耐久性を確保することができるよう設計することが重要である。
(3) 将来の施設機能の変化に対応するため,構造体自体の耐久性を高めるとともに,内部区画・仕上げは構造体と分離する等,長期間有効に使用できる建物として計画することが望ましい。
第2  上部構造
1  建物形状
(1) 変形,ねじれ,力の集中等をできるだけ生じさせないよう構造的に均衡のとれた形状とすることが重要である。
(2) 将来の室機能及び設備の変動等に留意し,スパン割を適切に設定することが重要である。
(3) 不整形あるいは細長い形状の建物となる場合には,建物各部に不均衡な力が生じないよう構造的に適切に分割して設計することが重要である。
2  鉛直力に対する設計
(1) 建物自重及び積載荷重を実状に応じ設定し,当該建物に掛かる鉛直力を適切に算定して設計することが重要である。
(2) 構造形式を適切に設定し,当該構造形式に応じ,部材の必要な断面を確保することが重要である。
(3) たわみや振動などを生ずることがないよう横架材の配置及び床版の面積を適切に設定し,必要な部材断面を確保することが重要である。
3  水平力に対する設計
(1) 地盤条件や建物形状等に留意しつつ,地震・風等による当該建物にかかる水平力を適切に算定して設計することが重要である。
(2) 構造上支障となる変形,ねじれ,力の集中などを生じないよう構造形式を適切に設定し,構造種別に応じ,構造要素を釣合よく配置することが重要である。
(3) 二次壁を設ける場合には,それらの取り付く柱,梁等の剛性への影響に十分留意し,せん断破壊等を生じないよう設計することが重要である。
(4) 各階各方向には十分な耐震壁を配置することが重要である。なお,耐震壁を十分取ることができない場合においては,架構に余力をもたせた設計とすることが望ましい。
(5) 鉄骨造及び木造の建物は,接合部の設計に留意するとともに,変形が過大とならないよう設計することが重要である。
4  積雪に対する設計
(1) 当該建物にかかる積雪荷重を適切に算定して設計することが重要である。
(2) 多雪地域において屋根に雪の落下を抑制する措置を講じる場合には,屋根面の積雪荷重の設定に特に留意することが重要である。
5  その他
(1) 建物から突出する部分は,必要な耐震,耐風,耐寒冷性等を確保するよう設計することが重要である。
(2) 広い面積を有する屋根は,各構成部材に十分な強度を有するものを使用し,各部材相互を確実に緊結することが重要である。
第3  基礎
1  共通事項
(1) 直接基礎におけるスラブ形式又は杭基礎における杭の工法及び種類を適切に設定することが重要である。
(2) 構造的に一体となる建物は,基礎形式は一種類とし,良質かつ同一の地盤に支持させることが重要である。
(3) 施工に伴う周辺への影響等に十分留意し,適切な基礎工法を計画することが重要である。
2  鉛直力に対する設計
(1) 直接基礎の場合においては,支持させる地盤の土質,地耐力等に応じ,十分な接地面積を確保し,断面形状を適切に設計することが重要である。
(2) 杭基礎の場合においては,中間層の土質,支持層の地耐力等に応じ,支持方式を適切に設定し,杭の種類,断面形状等を適切に設計することが重要である。
(3) 地盤沈下を生じている地域及びその可能性がある地域において杭基礎を用いる場合には,必要に応じ,負の摩擦力の検討を行うことが重要である。
3  水平力に対する設計
(1) 直接基礎の場合においては,雨水等による洗掘,寒冷地における凍上等に留意しつつ,水平力に対する抵抗を考慮し,基礎の根入れ深さを適切に設定することが重要である。
(2) 杭基礎の場合においては,必要に応じ,負担する水平力に対する杭の安全性を検討することが重要である。
(3) 杭基礎の場合においては,地震等により建物にかかる水平力を確実に地盤に伝えることができるよう基礎スラブと杭頭との接合部に必要な強度を確保することが重要である。
第4  その他
1  園舎付設物
(1) 塔屋,高架水槽,屋外突出煙突等の園舎付設物は,設計震度を園舎より大きく設定して設計することが重要である。
(2) 園舎との接続部分は,十分な強度を確保するよう設計することが重要である。
(3) 園舎の屋外に避難階段を設ける場合には,基礎,園舎との接合部等に十分な耐力を確保することが重要である。
2  渡り廊下
(1) 渡り廊下を設ける場合には,基礎,架構等の各部材及び接合部には十分な耐力を確保することが重要である。
(2) 渡り廊下と園舎等との取合い部は,構造的に分割するなど地震時等に被害を受けないよう留意して設計することが重要である。 3  屋外施設
塀,門柱,固定遊具,大型ポール,小規模な構造物等を設ける場合は,基礎の根入れ深さを適切に設定し,基礎,台座,壁体,支柱等の各部材,接合部等に十分な耐力を確保することが重要である。

第7章  設備設計

第1  基本的事項
1  安全性
(1) 幼児等の諸活動においてその安全及び健康に支障を生じることのないよう計画し,設計することが重要である。
(2) 幼児が触れたり,遊具等に衝突しないように,安全性に配慮して,機器等の設置位置,高さ等を計画することが重要である。
(3) 機器等の設置及び配管は,地震時等においても事故の生ずることのないよう計画し,設計することが重要である。
2  信頼性
(1) 安定した確実な性能の機器を選定し,システムを計画し,設計することが重要である。
(2) 構造体の変形に柔軟に追従することができるよう配管,配線等を設計することが重要である。 3  機能性
(1) 幼児の遊びや生活等において要求される各室・空間の機能及び環境を確保し,維持することができるよう園舎計画と総合的に計画し,設計することが重要である。
(2) 将来の教育内容・保育形態等の変化に伴い必要とされる機能の変化,地域住民の利用の増加等に柔軟に対応することができるよう計画し,設計することが望ましい。
(3) 必要に応じ,地震災害時における飲料水,電源等を確保するため,貯水槽や自家発電設備等について計画することも有効である。
(4) 環境教育に直接寄与する設備・計測機器等の設置を計画することも有効である。
4  快適性
(1) 幼児の健康に配慮し,園内の快適性を確保するため,採光,通風,換気等に十分に配慮した計画とすることが望ましい。
(2) 各室・空間の利用内容,利用状況等に応じ,適切な環境が得られるように計画することが重要である。
5  利便性
(1) 各室・空間の利用状況等に応じ利用者が各設備を適宜運転し,停止し,又は調節することができるよう操作性の確保に留意して計画し,設計することが重要である。
(2) 室・空間を分割して利用することを計画する場合は,分割した各空間において必要となる設備を確保し,適宜操作することができる設計とすることが重要である。
(3) 構造体や内部区画及び仕上げの形式に関わらず設備機器の更新・増設等に柔軟に対応できるようにするとともに,必要とする維持管理を適切に行うことができるよう計画し,設計することが重要である。
6  効率性
(1) 各室・空間の利用内容,利用状況等に応じエネルギーを効率的かつ適切に供給することができるよう総合的に検討して計画し,設計することが重要である。
(2) 設備機器・システムは,省資源・省エネルギーに配慮するとともに,初期投資時に必要な費用,維持管理に必要な費用等を総合的に考慮した上で計画し,設計することが望ましい。
(3) 太陽熱給湯,太陽光発電などの太陽エネルギーや風力発電等を利用した設備の導入については,導入規模,維持管理方法,休暇期間中の対応等を十分考慮して計画することが望ましい。
(4) 水資源を無駄なく有効に利用するために,節水型機器の導入,雨水の便所洗浄水や園庭散水への利用,排水再利用など水資源を無駄なく有効に活用する工夫をすることが望ましい。
第2  照明設備
1  共通事項
(1) 照明器具は,当該空間の利用内容,利用時間帯等に応じ必要となる照度を確保し,見やすくまぶしさのない良質な光の得られるものを選定し,設計することが重要である。
(2) 照明器具の配列は,当該空間の面積,形状等に応じ,活動空間の各部における明るさの分布が均一となるよう,また,まぶしすぎないよう設定することが重要である。
(3) 照明器具の設置位置は,必要な維持管理の方法,他の活動空間,周辺地域等に与える影響等について十分検討し,適切に決定することが重要である。
(4) 照明の配線系統は,適宜各部の照明の点滅を行うことができるよう照明器具の配列等に応じ適切に計画し,設計することが重要である。
(5) 照明の点滅装置は,操作しやすい仕様のものを選定し,適切な位置に配置することが重要である。また,省エネルギーの観点からは,センサー等を利用した方式を選定することも有効である。
(6) 変化のある空間づくりのために,均一な照度を確保するための全体照明とは別に,照度に変化を持たせた雰囲気づくりのための照明計画を行うことも有効である。
2  室内照明設備
(1) 各室・空間の照明の方式,器具の種類,配列及び設置位置は,当該各室・空間の面積,形状等に応じ,適切に設定し,設計することが重要である。
(2) 幼児が注視する面及び視野に入る部分に設置する照明設備は,照明の光源が直接幼児等の目に入らないよう照明の方式を適切に設定し,向きに留意して適切な位置に配置することが重要である。
(3) 視聴覚教育メディアを活用する室・空間の照明設備は,必要に応じ適宜室内各部の照度を調節することができるよう設計することが望ましい。
(4) 保育空間の照明設備は,必要に応じ,破損・落下防止の措置を講じるとともに,活動の支障とならない位置に堅固に取り付けることが重要である。
3  屋外照明設備
(1) 外気に直接露出する機器等は,当該地域の気候的状況を勘案し,十分な耐候性を備えるよう計画し,設計することが重要である。
(2) 照明機器は,必要に応じ,破損防止の措置を講じるとともに,堅固に取り付けることが重要である。また,周辺環境への影響を考慮するとともに,必要に応じ,非拡散性の光源のもので計画することが重要である。
(3) 防犯を目的として園地周辺部,園舎周囲等を照明する常夜灯を設置することも有効である。
第3  電力設備
1  コンセント
(1) 各室・空間におけるコンセントの種類,規格,数等は,電力を使用する教育機器等の種類,数,使用電力量等を適切に把握し,また,将来における各室・空間の使用方法の変更にも対応できるよう設計することが重要である。
(2) 各室・空間におけるコンセントの設置は,使いやすい位置に,安全な仕様で設計することが重要である。
(3) フロアコンセントを設ける場合は,幼児に対する安全性や清掃等の維持管理に留意し,位置,設置方法等を十分検討して設計することが重要である。
(4) 電圧の高いコンセントには,その電圧,用法等を明記することが望ましい。
(5) 安全性を考慮し,できる限り漏電遮断器を設置することが望ましい。
2  受変電設備等
(1) 受変電設備の容量は,電気を必要とする教育機器,設備等を適切に把握し,電力の需要率を十分検討し,必要な数値を設定して設計することが重要である。
(2) 電力使用量を常に把握するため,電力値を計測できるよう設計することも有効である。
(3) 受変電設備の設置は,台風,豪雨等による出水時においても冠水することのない場所,高さ等を選定して行うことが重要である。
(4) 受変電設備の周囲は,必要な高さの施錠可能な防護柵を設けるなどの措置を講ずることが重要である。
(5) 配線の系統は,用途等に応じ,適切に区分して設計することが望ましい。
第4  情報通信設備
1  音声系設備
(1) 拡声器等は,利用目的に応じ,可聴範囲に留意しつつ,適切な位置に堅固に取り付けることが重要である。
(2) 受信側で音量を任意に調節することができるよう設計することが重要である。
(3) 屋外に設置する拡声器については,その音響が周辺へ支障を及ぼすことのないよう位置及び向きに十分留意して設計することが重要である。
2  映像系設備
(1) 共聴アンテナによりテレビ放送等の受信を行う場合には,電波の増幅,各室への配線経路等に十分留意することが重要である。
(2) 共聴アンテナを建物外構に設置する場合には,転倒防止,維持管理の方法等について十分留意して設置することが重要である。
(3) テレビ等の受像装置は,窓,照明等の位置を考慮して適切な位置を選定し,台,壁等に堅固に取り付けることが重要である。
(4) テレビ等の放送方式に係る技術の進展を,あらかじめ見込んで計画することも有効である。
3  情報系設備
(1) 電話,インターフォン,コンピュータ,インターネット等の設備は,利用の目的に応じ,必要とする回線網を適切に確保することのできるようあらかじめシステムを検討し,導入することが重要である。
(2) 各保育室や管理関係室から離れている室等には,必要に応じ,電話,インターフォン等の通信設備を設けることが望ましい。
(3) 室内,廊下等を含めた園内のあらゆる場所で,急速に変化する様々なメディアに対応できるよう床仕上げ,配線等に柔軟性を持たせた設計とすることが重要である。
第5  給排水設備
1  給水設備
(1) 受水槽,高架水槽等は,教育活動において利用する水の量を幼児数,教職員数等に応じ適切に算定し,同時使用率を考慮して適切な容量を設定し,適切な位置に設置することが重要である。
(2) 飲料水用の給水設備については,水質管理等衛生管理に十分配慮することが重要である。なお,水槽の設置については,衛生管理を行いやすいよう位置を適切に選定し,周囲に管理作業上必要な動作空間を確保することが重要である。
(3) 水栓の個数,配置及び配管の経路は,利用状況に応じ,効率的かつ支障なく水の供給を行うことができるよう適切に設計することが重要である。
(4) 屋外における教育活動の実施を考慮し,必要に応じ,保育室前のテラス等への水栓の設置について計画することも有効である。
(5) 飲料用の浄化装置等を備えた水道についても,必要に応じ設置を検討することが望ましい。
(6) 散水設備を設置する場合には,必要な散水能力を合理的に設定し,利用しやすく,幼児等の活動に支障を生じないよう適切に位置を選定し,設計することが重要である。
(7) 必要に応じ,雨水を中水として利用し,水資源を無駄なく有効に活用することも望ましい。
2  排水設備
(1) 当該地域における公共下水道施設の整備状況等を十分把握し,排出される汚水,雑排水等を適切に処理することのできる排水方式を計画し,設計することが重要である。
(2) 浄化槽等を設ける場合には,幼児数及び教職員数,地域からの利用者数等に応じた適切な処理能力を設定することが重要である。
(3) 浄化槽,配管経路等は,雨水が流入し,又は汚水が流出することのないよう適切な構造とすることが重要である。
(4) 浄化槽等の設置は,清掃車が駐車することのできる位置を選定し,周辺に管理作業上必要な空間を確保することが重要である。
(5) 屋外に設ける手洗い場,足洗い場等については,砂,落葉等の排水への流入を防止できる構造とするとともに,排水管が詰まることのない排水方式で計画することが重要である。
(6) 調理室においては,バスケットを備えたグリーストラップ等の設備を設置することが重要である。
第6  空気調和設備
1  共通事項
(1) 地域の気象条件,建物規模,設備を必要とする各室・空間の面積,形状,利用目的及び利用時間,幼児や教職員等の健康面への影響,維持管理等の諸条件を総合的に検討し,設計することが重要である。
(2) 配管系統は,各室・空間において適宜設備の運転,停止及び調節を行うことができるよう適切に区分して設定することが重要である。
(3) 操作・制御装置は,操作しやすい仕様とし,適切な位置に配置することが重要である。
2  換気設備
(1) 各室・空間の利用内容等に応じ,十分な換気量を確保するため,適切に換気設備の設置を計画することが望ましい。
(2) 火気を使用する室,じんあい,ガス,臭気等の発生を伴う室,冷暖房の行われている室,活動内容により密閉状態で利用する室においては,必ず換気設備を設置することが重要である。また,その他の室・空間にあっても室内空気汚染の低減のため,換気設備を設置することも有効である。
(3) 必要な換気量を適切に設定し,これに見合うよう種類,規格,数等を計画し,設計することが重要である。
(4) 設置位置は,当該各室・空間の形状等に応じ,適切な高さ,配置等とすることが重要である。
(5) 新鮮空気の取入れ口は,適切な面積を確保し,冬季において冷風が直接幼児等の体に当たることのないよう仕様及び位置を適切に設定し,設計することが重要である。
3  冷暖房設備
(1) 設置する各室・空間の壁,開口部などの断熱化,室形状,天井高,自然の通風条件等と併せ総合的に計画することが重要である。
(2) 設置する各室・空間の容量,形状,利用人数,教育内容等に応じ,冷暖房の負荷を適切に設定し,方式,規格,数等を計画し,設計することが重要である。この際,室・空間を分割し,効率的かつ効果的な計画とすることも有効である。
(3) 設置位置は,当該各室・空間の形状等に応じ,適切に決定することが重要である。
(4) 冷暖房の運転及び調節の方法,機器の安全性を十分検討し,適切に仕様を設計することが重要である。
(5) 遊戯室は,儀式的行事,学芸的行事,各種集会等に利用されることを踏まえ,地域の寒冷度,利用状況等を十分検討した上で,冷暖房設備の設置を計画することが望ましい。
(6) 保健室は,地域の寒冷度等に応じ,冷暖房設備の設置を計画することが重要である。
(7) 「預かり保育」等の子育て支援を行う空間は,利用状況等を考慮した上で,冷暖房設備を設置することが望ましい。
第7  防犯・防災等設備
1  防犯設備
(1) 防犯設備の設置は,不審者の侵入防止や犯罪防止等に有効であり,人的警備との役割分担を考慮し,警備を必要とする範囲を適切に設定し,幼稚園における安全確保の体制整備の中で総合的に計画することが重要である。
(2) 防犯監視システムの導入により,日常の園地,園舎等や幼稚園開放時の非開放部分への不審者の侵入防止,幼稚園開放時の開放部分における犯罪防止等を図ることも有効である。
(3) 園内における犯罪防止を図るため,警報ベル,ブザー等の警報装置,園内緊急通話システム,警察や警備会社との連絡システム等の通報機器その他の通信システムを整備することも有効である。
2  防災設備
(1) 自動火災報知設備,非常用押ボタン等の警報設備は,火災の発生を早期に感知し,幼児,消防機関等に迅速に通報することができるよう建物規模等に応じ適切に設計することが重要である。
(2) 屋内消火栓設備等の消火設備は,火災の発生時に早期に消火し,被害を最小限に抑えることができるよう建物規模等に応じ適切に設計することが重要である。
(3) 避難器具,避難設備は,火災時における幼児等の安全な避難を確保することができるよう建物規模,幼児の人数等に応じ適切に設計することが重要である。
(4) 消防用設備は,幼児の日常における教育活動に支障を生じることがないよう設置のために必要な空間を適切な位置に確保することが重要である。
(5) 防火シャッターは,幼児等に対する危害防止対策として,注意喚起装置や危害防止機構を設置することも有効である。
(6) ガス使用場所においては,ガス漏れ検知器を設置することが重要である。
3  廃棄物処理施設
(1) ごみの減量化,環境教育の教材として,生ごみの堆肥化のための施設を設置することも有効である。
(2) ごみのリサイクルの推進のため,ごみの保管場所や分別のための場所を明確に計画することも有効である。