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学校施設整備指針策定に関する調査研究協力者会議(第38回)議事録

【日時】 平成17年1月13日(木曜日) 10時〜13時
【場所】 文部科学省現庁舎10階 10F1、10F2会議室

【出席者】
[協力者] 衞藤 隆、小川 博久、長田 美紀子、加藤 幸次、佐古 順彦、定行 まり子、高際 伊都子、丹沢 広行、辻村 哲夫、長澤 悟、成田 幸夫、増谷 信一、松村和子、屋敷 和佳、山重 慎二、山本 恒夫(敬称略)
[特別協力者] 岡田 恒男、長倉 康彦、望月 伸一(敬称略)
[意見発表者]
森 民夫(新潟県長岡市長)(敬称略)
[事務局] 萩原文教施設企画部長、大島技術参事官、舌津施設企画課長、鬼澤施設助成課長、山崎企画調整官、笠原文教施設環境対策専門官、松元施設助成課長補佐、都外川指導第一係長 他

資料】
資料1   学校施設整備指針策定に関する調査研究協力者会議(第37回)議事録(案)
資料2   森長岡市長 説明資料
資料3   公立学校施設の状況等について
資料4   耐震化の推進など今後の学校施設整備の在り方について(素案)
資料5   耐震化の推進など今後の学校施設整備の在り方について 検討スケジュール(案)

会議概要】
 開会
 議事
(1) 耐震化の推進など今後の学校施設整備の在り方について
(2) その他
 閉会

【議事】
(1) 耐震化の推進など今後の学校施設整備の在り方について
地方公共団体から見た、耐震化の推進など今後の学校施設整備の在り方について>
森長岡市長より、資料2に沿って説明。

以下、協力者等から森長岡市長への質疑応答。

 
長岡市においては、何年間でどのように耐震化について取組むつもりか、お考えをお聞きしたい。

耐震化を推進する計画は作成しなければいけないと思っている。その際、耐震基準を確実に満たす耐震補強を実施するのではなく、特に弱い箇所のみを補強するなど局部的に耐震補強する手法が認められ、大地震に確実に対応できるのであれば、そのような手法による整備を実施してみたい。

学校施設は、耐震化だけでなく、老朽化も大きな課題である。老朽化した学校施設については、教育内容・教育方法等の多様化への対応、地域との連携など、学校施設整備指針に示されている様々な課題に対応するため、リニューアル等による質的整備が必要である。質的整備等についてのお考えをお聞きしたい。

長岡市には54校の市立学校があり、全て改築するには莫大な費用がかかる。何年もかけて基金を集めれば、優れた学校施設を1校は建設できるだろうが、長岡市のような規模の地方公共団体においては、公平性の観点からは問題である。そのため、改修整備が必要であるという考え方もある。しかし、一方で、メンテナンスが悪いためにコンクリートが著しく劣化した学校施設については、再利用できず、改築した方が良い場合もあると思う。

  また、技術的、計画的に優れた改修を実施できるのか、地方公共団体にとって判断することは難しい面がある。例えば、既存の学校施設において、教育内容等の多様化に対応するために、余裕教室の壁を壊してオープンスペース等を整備することは技術的に可能なのか、判断が難しい面がある。耐震補強だけでなく、このような質的整備も含めた改修について、ある程度低コストで実施するための手法を明確に示した指針等があれば、長岡市のような規模の地方公共団体においては、改修の取組みが一気に進む可能性があると思う。

学校施設の耐震化の推進は、改築が行われれば改善されると思うが、国と地方は合わせて約700兆円の長期債務残高を抱えているため、なかなか進まない。一人の親としては、子どものことを考えると大変心配である。そのため、計画を立てて耐震補強を実施することが良い方法だと考える。お考えをお聞ききしたい。

計画的、構造的に、コストの安い改修方法があれば、全国の市町村長は改修を積極的に行うと思う。しかし、古い構造体の学校施設において、教室の壁を全て壊して平面的に自由に計画することが、技術的、コスト的に可能なのか、地方公共団体には分からないのが実状である。

  そのような整備は、私は可能だと思う。ただ、このような調査研究は今まであまりなされておらず、普通の設計料で設計者に任せているのが現状である。一般的な学校に応用できる、安価で耐震性を確保するためのマニュアル等を作成するために、例えば、10ある教室のうち2つの教室について耐震補強を行うことにより、耐震性を確保するといった技術的手法等の研究開発も必要であると思う。

耐震補強を行う際は、質的整備を実施することも併せて検討して欲しい。

それは大事な視点であると思う。

中越地震により、幼稚園は被害がなかったか。また、幼稚園が避難所になることはあったか、教えて頂きたい。

幼稚園は、小中学校に比べて被害が小さかった。1階建てであるため、つぶれにくいためと考えられる。また、幼稚園は基本的に避難所ではないが、小学校が満員になった際、一時的に避難所として使用された。

国が地方に対してどういうことをして欲しいか、負担金・補助金の在り方も含めてお考えをお聞きしたい。

住民は、自宅近くの施設に避難したいと強く思っていることもあり、学校は、地震時に避難所の主力施設として使われている。このため、文部科学省において、学校は重要な避難所であるという姿勢を明確にすることを期待する。また、その整備に際しては、バリアフリー等の整備を行っていくべきであると考える。

  私の市の職員には、補助金に対して、手間隙がかかり、交付されるまでに時間がかかるなどの理由から、現在の補助金廃止論に結びついているように思う。

  一時に多大な資金の必要となる事業、及び、災害のように、緊急的に対応すべき事業の補助金については、少なくとも必要であると思う。但し、その場合でも事務の簡素化は必要である。


公立学校施設整備の現状等について>
事務局より、資料3に沿って説明。

 
  学校施設の耐震化率について100パーセントを達成するためには、経費は幾らかかるのか。

  耐震性がないとされる学校施設は約7,900万平方メートルあり、このうち、昭和46年以前に建築された施設は約2,700万平方メートル、昭和47年〜56年までに建築された施設は約5,200万平方メートルある。私は専門家の立場として、これらの施設全ての耐震性を確保するために要する経費を試算してみた。全ての施設を改築すると仮定した場合、工事単価を20万円毎平方メートルとすると、約16兆円かかることになる。また、耐震補強のみ行うと仮定した場合、工事単価を3万円毎平方メートルとすると、約3兆円かかることになる。現実的に適当な経費としては、3〜16兆円の間になると思う。

  私も専門家の立場として、老朽化した学校施設を改善するために要する経費を試算してみた。少子化等のため今後使用しない棟など、ある程度の面積は壊し、残りの面積については、質的整備も含めた改修を基本的に行い、耐力度の著しく低下した施設等についてのみ再生するための改築を行うと仮定すると、少なくとも約5兆円程度はかかることになると思う。

  10年前に、日本の全ての建物について最小限の耐震補強を実施すると仮定した場合、30〜40兆円かかるという試算がある。なお、当時の1年間の建築投資額は40兆円であった。

  現在行われている耐震補強は、柱等にひびは入るが、倒壊などにより人が死亡することはないレベルの補強である。

  学校をあずかる校長の立場としては、子どもの安全を守るのは最優先の課題である。このため、必要ならば法整備等の検討もすべきであると思う。

  少子化である現在においては、老人福祉施設や、新潟中越地震において被害の大きかった病院等の耐震化を推進しなければいけないと言われている。こうしたなか、学校は被害が相対的に大きくなかったので耐震化の推進が遅れるような事態になることを危惧している。社会資本の中でも小・中・高等学校は地域の中で重要視されているため、まず、社会基盤としての学校の重要性を唱えた上で学校施設の耐震化を進めて欲しい。

  小・中学校について、地域における災害時の拠点として使用することを明確に打ち出せるのであれば、報告書の中で、既存施設の有効活用の取組みの中にそのことを含めることは大事であると思う。

  学校施設の耐震化が遅れているこのような状況は、親の立場で考えると非常に驚くべきものである。もっと情報公開にしっかり取組むべきである。そうすれば、例えば道路を建設するより学校施設の耐震補強が促進されることにつながると思う。


耐震化の推進など今後の学校施設整備の在り方について>
事務局より、資料4に沿って説明。

 
  まず子どもの命は絶対に守らなければならない。そのためには、遅れている学校施設の耐震化について、改築による100点満点の整備でなくても、耐震補強を数多く推進しなければならない。このため、耐震補強について、教育内容・教育方法の多様化等へ対応するための改修に比べて重点を置くとすると、例えば、「第1章 3今日的課題に対応するための学校施設整備の視点」の「(3)教育内容・教育方法の多様化等への対応」と「(4)教育の機会均等・水準の確保」の順序は入れ替える方が良いだろうか。

  「はじめに」については、書きぶりが少し弱いと感じるとともに、具体的である箇所とそうでない箇所があると思う。また、「はじめに」に今後の学校施設整備の在り方についての表現を記載して欲しい。

  「第1章 3今日的課題に対応するための学校施設整備の視点」における(1)〜(4)の項目の順番は、現状のままの方が良いと思う。ただ、老朽化した学校施設について、この4つの項目全ての観点により整備を検討するよう、「はじめに」、あるいは第1章において触れて欲しい。

  学校施設をめぐる課題として、少子化により学校の統廃合が進んでいるために、改築、改修を控えている学校もあるのではないか。

  維持管理については、1校当たり、かなりの財政措置が地方交付税によりなされているが、実際の取組みは進んでいない。

  プライオリティについては、国民への説明、子どもの命を守る意味で耐震化を1位にして欲しい。また、「第1章 3今日的課題に対応するための学校施設整備の視点」は、耐震性の緊急確保、質的整備の推進の2本立てにするのはどうか。

  「第1章 3今日的課題に対応するための学校施設整備の視点 (1)耐震性の緊急確保」に書かれている「耐震化率は、進捗にかなり差が見られる」に関しては、現在、義務教育の在り方について議論されていることもあり、地域格差を表す経費データがあるのであれば示して欲しい。

  学校が多くある地方公共団体においては、個別の学校を単位と考えて整備する視点だけでなく、複数の学校を1つの単位と考えて、中高一貫教育等の一体化・一貫性、あるいは少子化等による学校数の減少等を考慮して整備する視点も必要である。

  学校施設の応急避難場所としての役割を果たす場合、学校が家の近くにあることが大事であることについて、「第2章 1基本的な考え方 (2)既存学校施設の有効活用の促進」の中で小見出しにより記載してはどうか。

  学校施設整備について、どういう整備手法があり、それに対してどの程度経費が必要であるかが分かるマニュアルがあると分かりやすいと思うため、「第2章 3推進方策 (4)具体的な整備手法等に関する事例集等の作成」において、記載して欲しい。

  中高一貫校、幼稚園と小学校、幼稚園と保育所の統合施設等については、避難所として、中学校は使用できるが高等学校は使用できない、あるいは、幼稚園は使用できるが保育所は使用できないことがある。このような場合、一括した耐震化が進まない可能性があるので、もっと広い意味で耐震化を推進することが大事である。

  学校施設の地震対策のための研究開発に対して、国が支援する視点も必要だと思う。

  学校施設の応急避難場所としての役割に焦点が当てられていることは分かるが、それは学校の本来の機能ではないと思う。このため、学校施設が応急避難場所として、どの程度の役割を果たし、機能を持つかについては議論が必要である。応急避難場所については、文教施設の範囲だけでなく国家レベルでの検討が必要だと思う。

  地域に開かれた学校施設の機能の1つとして、応急避難場所としての役割を捉える考え方があると思う。また、学校施設だけでなく、地域住民に活用されている他の文教施設も、それぞれ応急避難場所としての役割を果たさないと、実際に地震が起きたときに対応できない。

  学校が日頃、地域と連携していることにより、災害時における、学校と地域の良い連携につながると思う。

  地域と学校との連携は、ソフト面での取組みとあわせ、地域の人が学校施設の整備を進める視点も重要ではないか。

  保護者・地域の理解を得ることは、学校について、安全対策、社会資本としての位置づけ、応急避難場所としての役割等の向上に影響すると思う。

  既存学校施設の改修と新増築整備とでは、計画の方法が全く違う。新増築整備の場合、まず計画を行い、内容が固まってきた段階で構造について検討するのが一般的である。それに対し、改修の場合、計画・構造の担当者や他の立場の方が、どのようなプロセスで検討を進めるのかについては、地方公共団体にとって有益な情報となる。

  小さな子どもが多くいる学校において地震が起きた際、学校がどのような状態になるのかシミュレーションし、他の建物の場合と比べ、その被害の深刻さを示すことが有効であると思う。

  地方公共団体により、学校の数は多様であるため、それによる取組み方、検討体制について、具体的に書き分けることができると、より有効であると思う。

  実情を分かりやすく提示することが大事である。

  地域の人との連携や、様々な立場の専門家の協力により整備手法等を検討することが必要。

  既存学校施設ついて、耐震補強にシフトすることにより、質的整備がおろそかになることを危惧している。現場の学習環境はまだ貧困であると思っている。ここ20〜30年、行政主導型の構図は変わっておらず、私は、現場からの声を取り入れ、地域住民と連携することが今まで以上に重要になってくると思う。そのためにはシステム作りが重要であり、そのことが質的整備の向上につながると思う。

  WHOが主導しているセーフコミュニティ(Safe Community)運動に、安全なまちづくりという考え方があり、暮らしの安全をどう進めるか、住民参加も含めて総合的に検討されている。このような国際的に議論されている視点を参考にすることは有効だと思う。

  既存学校施設の耐震補強と質的整備について、どう折り合いをつけるかは難しい問題である。耐震化優先度調査を実施するときに、耐震補強と質的整備について、どのように重きを置くか、地方公共団体において、関係者間で十分に議論をして欲しい。また、「第2章 1基本的な考え方 (3)地域の実情に応じた計画的な学校施設整備の促進」に書かれている「学校、家庭・地域、行政(教育委員会、営繕部局、財政部局、防災部局)等の参画により、幅広く関係者の理解・合意を得ながら整備計画を立案することが必要」を報告書の中で強調して欲しい。

  学校に不審者が侵入する事件が起きているため、保護者は子どもの安全に敏感になっている。学校安全対策として、耐震補強を推進するなかで、防犯対策についても重要視して欲しい。

  「第2章 2整備手法」の冒頭に、今までの整備手法と何がどう変わるのかについて、その考え方を書くと分かりやすいと思う。


(2) 今後の進め方について
 次回会議については、平成17年2月21日に開催され、「耐震化の推進など今後の学校施設整備の在り方について」の報告書案について議論されることとなった。また、同報告書案は、平成17年3月上旬〜中旬に取りまとめられることとなった。

(文教施設企画部施設企画課)

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