学校施設整備指針策定に関する調査研究協力者会議学校施設整備指針策定に関する調査研究学校施設評価システム検討部会（第2回）議事録

上野部会長より、第1回部会に欠席した委員（浅野委員、佐古委員、檜山委員）の紹介
事務局より資料1及び資料2に沿って説明

　本日は、まず、学校評価又は学校建築の専門家にプレゼンテーションをいただき、後半に学校施設の評価について議論することとしたい。本日は、浅野先生、小松先生、私の順でプレゼンテーションをさせていただく。では、浅野委員からよろしくお願いしたい。
　本日、お話ししたいポイントは大きく3つ。1点目は、学校経営あるいは学校の組織マネジメントという観点から見た学校施設の位置づけ、2点目は、学校評価そのものの考え方、あるいは進め方、そして3点目は、学校評価の考え方を踏まえた学校施設の評価に関する自分の意見である。
　まず、1点目について説明させていただく。学校の組織マネジメントという観点から見た学校施設というのは、あくまで経営資源としての位置づけになる。よく「ヒト、モノ、カネ、情報」と言われるが、「ヒト」は当然教職員や管理職を指し、「モノ」が今回のテーマである施設設備にあたると考える。「カネ」もここでは「モノ」含めて考えている。「情報」に関しては、情報的資源として教育の活動、教育を支えるシステム、あるいは文化・風土面、こういったものが該当するとしている。
　経営資源という観点から見ると、学校施設は教育活動を推進し、教育成果を獲得・向上させるための1つの道具という位置づけになる。そして、経営資源という観点から見た場合、学校施設の評価は、どれだけ与えられた施設を活用しているか、有効度の評価ということとなる。また、要求機能を満たしているかという効率性の評価という観点もあると考えられる。
　2点目として、学校評価について説明させていただく。今、全国で実施されている学校評価は、幾つかのタイプに分けられるのではないかと考えている。1つは、「チェックリスト型」の学校評価と「重点テーマ型」の学校評価である。
　ここでいう「チェックリスト型」とは、学校教育の全分野にわたって総点検リストにより評価を行い、学校の問題点を探り出し、弱点の改善につなげていくものである。一方、「重点テーマ型」とは、学校の特色やその学校の年度の重点課題に絞って目標を設定し、その達成度を評価し、改善をしていこうというものである。ある程度共通する部分はチェックリストで点検し、我が校ならではの重点テーマを評価していくという、「総合型」がよいのではないかと考えている。
　また、「一覧表型」と「構造化型」という区分も考えられる。「一覧表型」では、学校評価の項目のお互いの関係性があまり見えてこない。一方、「構造化型」とは、目的・手段がツリーになったような形であり、このような評価もあるのではないかと考えている。
　学校評価のタイプの3点目としては、「発生型」として、問題を改善するタイプの学校評価と、「探索型」として、問題をうまくピックアップして改善するタイプの学校評価の2通りがあると考えている。「発生型」における問題とは基準から逸脱しているというものであり、一方、「探索型」における問題とは目標を立てたときに、現状の改善が見えてくるタイプのものである。
　「チェックリスト型」と「重点テーマ型」、「一覧表」と「構造化型」、あるいは「発生型」と「探索型」の3つの観点から見ると、「チェックリスト型」よりも「重点テーマ型」にウエートを置いたほうがよく、「一覧表型」ではなく、「構造化型」のほうが改善がうまくいくのではないか。あるいは「発生型」に加え、探索した問題を改善していくほうよいのではないかと考える。
　学校評価と学校施設評価を図示すると資料のようになる。まず、一番左に学校の教育目標があり、そのための活動として教育活動や取り組みがあり、その結果、子どもたちが獲得した教育成果が出てくる。それをバックアップするための資源の一つが学校施設だということになれば、一番右には学校施設というハードウエアそのものが位置することになる。ただ、ハードウエアそのものが教育活動の成果に結びついているわけではないと考えられるため、学校施設の持つ利点、あるいは学校施設の活用などが媒介になって教育成果に結びつくものと考えている。
　したがって、学校施設評価というものを単純に考えると、図表の右からのアプローチという印象が否めない。学校施設の評価は、学校施設を基準に適合しているかどうかという観点から見た、いわゆる学校施設の効率性の評価と、一方、それがどのように活用されているかという有効性の評価に区分されるのではないか。
　学校評価は児童生徒に対する教育成果を獲得・向上するために、まず学校の教育目標から出発すべきで、学校施設からだけのアプローチには疑問がある。ただ、教員評価を見ると、学校の教育目標と教員の双方からのアプローチをミックスした制度になっている。したがって、同様に、学校評価に学校施設評価を組み込む工夫は当然できるのではないかと考えている。
　そこで3点目について、どのように学校評価の中で学校施設評価を考えればよいかということを考えてみる。レジュメに重点事項から派生した目的・手段のツリーを領域別に整理している。改善のレベルを考えると、日常の校務、学校の中での改善で処理するもの、学校単位で改善に取り組むもの、あるいは教育委員会等が乗り出して改善をしていくものに区分される。
　施設整備については、効率性、すなわち要求機能を満たしているかどうかといったものの改善と、有効性の改善があると思うが、効率性に関する改善のうち、学校の中ですぐできるものは当然改善していかねばならない。ただ、学校の中では改善できないものについては、教育委員会等による改善が必要と考える。有効性、すなわちどれだけ活用しているかということについては、当然、学校単位で改善していくものと考えられる。
　したがって、学校の重点事項に対する評価を行うことで、児童生徒を起点とした学校評価を実施し、評価結果を総括することがまず必要と考える。そして、その評価結果の具体的な改善の取組においては、分掌等が中心になって行う。できない場合については学校単位でやる。あるいは教育委員会が出てくるという形が考えられる。
　浅野委員からのプレゼンテーションに関してご質問、コメント等あればいただきたい。
　学校が行うべき、学校が権限を持っている施設整備とそれ以外を明確に分けて、それぞれ評価していくことが大事だということがよくわかった。個人的には、「チェックリスト型」と「重点テーマ型」が一体的に行われる「総合型」という形で、学校施設の評価を考えればよいのではないかと考えている。
　効率性や有効性の評価に加え、サービスの受け手である生徒、教職員の学校満足度については、どのように測ることができるのか。
　ご指摘いただいたとおり、利用者の満足度については非常に希薄になる感じがする。ただ、参考に外部アンケートという項目があり、評価にあたっての参考に保護者や児童生徒からのアンケートとを行うことが考えられる。そのときに満足度というものが出てくると思うが、満足度は当然、人それぞれ受け取り方が異なる。満足しているかどうかは、施設整備が充実していけばバーが次第に高くなっていくことも考えられ、施設評価にはそぐわないのではないかという印象を受けている。したがって、アンケートによって得た満足度を参考に、自己評価するというイメージを持っている。
　それでは、次に小松先生からプレゼンテーションをいただきたい。
　現在、国立教育政策研究所が主体になって行っている学校の第三者評価の試行事業において、施設等の評価も一部行うので、それをどのように行うつもりかを説明させていただきたい。
　基本的には、各学校で自己評価を行ってもらい、それを踏まえて第三者評価を行っている。資料4のような評価シートに基づいて評価を行っており、自己評価シートには評価の指標と内容が示されている。さらに評価の視点を示しており、これが私どもの研究所の独自なものである。この評価の指標は全部で105程度あり、一つ一つの指標に、多いもので10近くの視点が示されている。さらにもう1つの特徴として、視点の中にア）、イ）といった形で成果指標を設けている。加えて、「根拠資料の例示」として、児童生徒アンケート、授業評価シートなどがあれば、それをもとにして評価するようにしてもらうこととしている。
　各教科等の授業の状況に関する評価シートでは、視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の活用に関する指標、コンピュータ等の活用に関する指標を設定している。
　特別支援教育の状況に関する評価シートでは、施設設備その他の点で満足できる適切な状況かどうかということをどこかで評価することを考えたほうがよいのではないかと考えている。
　進路指導の状況に関する評価シートでは、施設関連として、指標7に進路指導のための施設設備が整備されているかという指標を示している。
　保健管理の状況に関する評価シートにおいても全体的に保健管理にかかわる施設設備がどうなっているかということを、どこかで指標を追加するなど、施設的な評価をするのがよいのではないかと考えている。
　施設と最も関係があるのは安全管理の状況に関する評価シートである。指標1～5のうち、安全点検や教職員・児童生徒の安全対応能力の向上を図るための取組が適切になされているかといった指標、また、危機管理マニュアルが活用・作成されているかという指標が示されている。危機管理マニュアルなどについては、地域・学校の実情に合っているかどうかということも評価することが大事であると考えている。
　組織運営の状況に関する評価シートついては、指標6が施設設備、マネジメントに関連した部分であると考えている。指標6では、各種文書や個人情報等の学校が保有する情報が適切に管理されているか、また教職員に情報の取扱方針が周知されているかどうかということを指標としてしめしている。
　教育目標の設定と自己評価の実施状況に関する評価シートについても、指標1から9まで全体を通して、先ほど浅野先生の提案にあったような、バランスよく施設設備についても評価が位置付けられているかどうかということをチェックする必要があるだろうと考えている。
　設置者と学校の連携の状況に関する評価シートは、施設評価の中の1つのポイントになると考えられる。施設等の観点から、設置者と学校の連携がどのようになされているか、あるいは教育委員会はどのような対応をしているのかということも関係するのではないか。
　次の施設・設備の状況に関する評価シートは、ストレートに施設・設備の評価を考えたものである。文科省のガイドラインでは、施設に関する指標が3つしか用意されていないため、この辺をもう少し豊かにするのも、この委員会の仕事のひとつであると考えている。指標として、設置者と連携し、施設・設備の安全、維持管理のための点検を実施し、必要な改善が図られているかということを示している。私が見に行った小学校で一応耐震の診断はしたが、改善のめどが全く立っていないような教育委員会も見受けられた。
　成果指標として、点検が適切に行われ、これに基づく改善対策が実施されているかということを示しており、評価が改善にまでつながっているかということも、大事な視点であると考えている。
　指標2は、施設・設備が有効に活用されているかということを示すとともに、指標3として、設置者と連携して学習・生活環境改善のための取組が行われているかどうかということを示している。
　今、学校でこのような自己評価をしていただければということで、私たちが提示している17枚の自己評価シート、105の指標などについて説明させていただいた。ただ、我々が今後10月、11月に行う第三者評価は、この指標ごとの評価を特に求める予定はなく、最終的に17の評価シートについてそれぞれやってくれればよいと考えている。
　小松委員からのプレゼンテーションに関してご質問、コメント等あればいただきたい。
　評価はどのようなランクでやっているのか。
　A、B、C、Dの4段階で行っている。文科省で行っている第三者評価はAがあるので、実質5段階になっている。
　この評価は先ほどの浅野先生の説明にあった評価のタイプ分類ではどのようになるのか。
　私も評価項目を重点化するのは大賛成であるが、現状では、とにかくこれを今やりましょうという話なので、私たちはとりあえず一覧的にやってくださいという形にしており、この段階では構造化は特にしていない。
　構造化の問題、重点化の問題、それも将来的によいことであると思うが、浅野先生がご提案のようなところに日本の学校が到達するには、早くても3年、5年はかかるというのが私の見通しである。
　105項目の指標に加え、たくさんの視点も盛り込んでいるが、これをチェックする、あるいは根拠資料や理由を提出する主体は管理職なのか。
　基本的には校長が主体となっている。今回、私どもが第三者評価に伺うまでに校長が取りまとめて提出していただく。その後、事前にリーダーが学校に行って話を聞いて、場合によっては評価内容を重点化するということも考えている。つまり、学校がはっきりと特にここを見てほしいということであれば、最初から重点化した形で評価をしようと思っているが、そうでなければ一応全体的なチェックをしようと考えている。
　我々が選んだ25校の中には、浅野先生の提案のようなスタイルで各学校において評価ができているところもある。ここに対しては、浅野先生の提案に近い評価ができるかなと思っているが、そうではないところには学校評価とは何かというところから始めなければならない。このように現状では、25校の間でも濃淡があるが、それはそれでよいと考えている。教育目標、中期計画、年度の重点計画があるような学校に対しては、重点化した評価を行ったり、評価結果を踏まえてサイクルで改善・評価ができる教育委員会や学校もある。
　引き続き私から、小規模な小学校と教科教室型の中学校で行ったPOE調査について、お話をさせていただきたい。
　POEとは、Post Occupancy Evaluationの略称であり、ある仮説を持って建設した学校建築などが実際に使い始めて児童生徒・教員からどのように評価されているか評価するものである。本日は、学年単学級の小規模学校である提案性を持って設計、建設し、実際に使用が始まった後のPOEという事例について説明させていただく。
　説明するのは、従来、片廊下一文字型校舎であった学校をオープンスペース、あるいは小さな空間その他いろいろな多様な空間性を持った学校とした事例のPOEである。7月と10月に丸1日この学校で起こっていることを、一人一人の児童がいつどこで何をしているかということも含めた行動観察調査と、児童生徒・教師へのアンケート調査を行った。
　7月の調査では、クラススペースに閉じこもって一斉学習が終始行われており、その状況は10月になってもほぼ変わっていない状況が見受けられた。小規模学校でこのようなオープンな教育環境をつくることの意味は何なのかという観点からアンケート、ヒアリングを行ったところ、うるさいとか授業に集中できないなど、施設の評判が悪いという結果が見られた。
　また、明るさ、クラス、暖かさ、狭さ、寒さなどについてはかなり周到に設計がされていますので、評価は高く、したがって南側オープンスペース、北側クラススペースというのがあり得る、受けとめられているということだと考えている。
　クラススペースの身近なところに先生方にいつもいてほしいと思って設計した教師コーナーはほとんど使われていない。こういう場所は子どもたちには気に入られているようであるが、学習展開という意味ではまだ使い込まれていない状況にある。
　もう一つ、4つの中学校を束ねた豊北中学校におけるPOEについて説明させていただきたい。教科教室型の学校であるのでホームベースを設けており、全員が着座できるやや狭いクラスの専用の場所をつくった。これは半年目でもかなり教科のしつらいができて、教科の専用の教室を設けることがよいということが、確認できたのではないかと思っている。
　子どもたちのホームベースへの評価は、狭く設計したので当然であるが、「狭い」という評価であった。ホームベースでは授業を行わないため、6人掛けのテーブルを置いてあるが、それだとプリントのテストができないなどの意見がだされている。
　これはPost Occupancy Evaluationの実態であるが、私どもは児童生徒の言うことがすべて正しいかというと、そうでもない場合もある。また、事前に十分に説明しても教師の先生方の意識と設計の意図がかみ合わないということもあると考えている。
　ホームベースでは主にどんな活動を行っているのか。
　朝のホームルームと朝の読書を行い、ショートホームルームがあって出欠がとられて、子どもが1時間目の授業に行ってまた戻ってくる。そこで少し休んで教科書を取りかえて、また次の授業に行く。その他に昼食や帰りのショートホームルームも行っている。
　今、豊北中学校は何クラスぐらいあるのか。
　各学年3クラス。去年は1学年、2学年が3クラスで、3学年が4クラスであったが、今年行ったところ全部3クラスになって、1クラス減っていた。
　教科教室での授業は3クラス別々に行っているのか。
　別々に行っている。1年1組は数学、1年2組は社会、1年3組は体育をやっているというような形態となっている。
　学級への帰属意識のようなものはどうなっているのか。
　帰属意識は大変高いが、ただ、その反面、ちょっとクラスメンバーになじみにくい子や、精神的に弱い子などもいることから、ごくわずかにホームベースは嫌いな場所と答えている子もいる。
　ホームベースにおける生徒の座る場所は固定してあるのか。
　決まっている。
　教育が効果的にできるような施設整備、学校整備というのはどういうものかということを、自治体が問題意識を持って上野部会長に依頼されたのだと思うが、例えば自治体の首長や教育委員会などからどのような形で依頼が来て、さらに依頼した側が整備された施設をどのようにとらえているのか。
　また、何か問題、例えば狭いということがあったときに、これはどうしても使いづらいから、変えて欲しいというケースには、柔軟に対応できるような施設として設計上考えられるのか。評価してあまりうまくいってないということがわかったときに、何かアクションがとれるものなのか。
　九十九小学校の場合は公開のコンペティションで設計者が決まるというケースで、相当細かいスペックがその時点で決まっていて、それに対して提案をして、十数者の建築家の中から選ばれた形である。
　豊北中の場合は、まず町長と教育長が極めて熱心であり、長い間話し合いをして、PTA、地域住民とも話をしながら計画した。施設に関する評価への対応については、今年も継続して調査を行っているところである。来年もう1回調べて、それでもだめなら考える予定。
　それでは、次の議題に移ることとしたい。前回の部会のご意見を踏まえて、整理すべき論点を資料6にまとめてあるので、これを基にご議論いただきたい。まず、事務局から資料6について説明願いたい。

事務局から資料6に沿って説明

　論点は非常にうまく整理してあると思うが、個人的にはもっとシンプルな話ではないかと思っている。施設の評価の目的は何かというと、よりよい教育が安全に営めるようなインフラづくりを進めるということだと考えており、そのときに、整備と維持管理と運用・活用という3つのカテゴリーに分けて評価するという視点で評価すればよいと思っている。
　個人的には、まずは学校施設の評価と学校評価を切り離して考えるのがベストであり、学校評価はインフラの上で行われる活動に対して評価するものであると整理できるのではないかと考えている。学校施設の評価にもインフラの使い方の評価が含まれると思うが、基本的にはインフラをどうやって整備し、維持管理し、活用してもらうかということだと思うので、学校評価とは違う次元で問題を設定して評価体制を考えるほうがよいのではないかと思う。
　先ほど小松委員にお話しいただいたような一覧表のようなものを、施設の評価に関しても作成することが、この委員会の一つの使命であると感じている。だから、個人的には学校施設評価と学校評価は別のものとして考えて、最終的に関連する部分が出てくると思うので、そこについてどう評価することが効率的かという次元で考えてはどうかと思う。
　学校評価は、学校という組織の評価でありマネジメントを中心とした評価である。学校評価は基本的には校長を中心としたマネジメントをする人たちの評価だといえる。したがって、マネジメントだから、「ヒト、モノ、カネ」の話であると思う。
　「カネ」は公立学校の場合、今のところあまり裁量権がないが、あとは「ヒト」と「モノ」の形で、「ヒト」の部分は授業評価とか教員をどう使っていくかで、「モノ」に関しては、学校という組織の目的である教育活動にどの程度うまく有効に使っていくかということの評価でいうと、ある種独立的にやると同時に、学校評価という中の1つの大きな柱としてとらえるのがよいと思う。
　まず学校施設評価として、施設整備、維持管理、活用・運用ということを意識しながら評価項目をつくってみて、例えばその中の活用とか維持管理というところで、学校評価の中にその指標を採用できるようであれば、学校評価に採用するといったイメージでよろしいか。
　今の日本の教育の公立学校のシステムからいうと、「ヒト」と「モノ」はあてがいぶちである。だから、私は校長を中心としたマネジメント評価というのは、あてがいぶちのものをどのようにうまく使っているかということであると思っている。
　将来的には私立学校のように、場合によっては金を借りてまで施設をつくるとか、あるいは独自の人事をするとか、そのようになってくれば違ってくるかもしれないが、今のところは、数年単位で学校の責任者はかわっていくというシステムの中では、あまり彼らに施設とか、人とかに対して責任を負わせるのは困難だと思っている。
　基本的に、自己評価の項目は各学校や教育委員会で考えて決めるところあり、国として一律にこうしろということはないが、物の考え方として、国として例えばガイドラインなり示すときには、先ほどご提案があったような考え方でよいのではないかと思う。
　ガイドラインの中に施設設備に関する指標例として、効果的な活用と点検、あるいは充実のための取組など3項目挙がっているわけであるが、この維持管理と活用が学校評価と学校施設評価の整理のしにくいところかと思う。維持管理というのは設置者もやらなければいけないし、学校もやらなければいけない。学校ができないことを項目として挙げてしまうことは学校のマネジメントからいけばおかしいと思うので、維持管理、活用については、そこを整理できればうまく学校施設評価とつながっていくのではないか。
　学校評価システムが今試行段階で、おそらくこれからその体制が確立されていくプロセスにあろうと思う。これから確立されていくであろう学校評価システムの中に施設設備に関する項目が明確に位置づけられる必要がある。そのためには、この資料6の「このため、学校評価の枠組みに限らず」という文章だと、施設評価のための別のシステムをつくるように読めるので、そうではなく、学校評価システムの中に施設設備に関する項目を位置づけるというスタンスが適切ではないかと思う。
　仮に学校評価システムの中に施設設備に関する項目が入らなかった場合を考えると、おそらく評価の対象にならない項目については、皆さんがだんだん興味・関心を失っていくと思われることから、まずは学校評価の枠組みの中で施設評価をはっきりと位置付ける書きぶりとしたほうが目的にかなうのではないか。
　これは検討課題としたい。我々がこの学校施設評価の仕組みをつくった場合、これを学校評価にも使うよう申し入れるようなことが将来的にはあり得るのか。
　学校評価は、自己評価、学校関係者評価、第三者評価という形で整理している。第三者評価は具体的に日数が非常に限られており、全部は見ることができないため、学校からある程度詳細、全般的なものを出していただかないといけないという前提で自己評価の項目が示されているのだと思う。そういう意味で、第三者評価において施設の項目を入れるべきというご議論はもちろんあると思う。
　それとは別に自己評価について非常に細かな項目を設定して、毎年これを全部やれという話になると、これは非常に難しいということで、年度ごとに重点化した目標を設定していこうということも考えられる。また、それとは別に、もう少し学校全般を見ていくような評価も並行して実施することが大事だと考えている。
　いずれにしてもあまり細かな項目を設定すると、施設設備だけではなく、学校にはいろんな分野があるので、施設評価を取り入れることが事実上困難となるのではないかと思う。
　学校施設評価がそのまま学校評価に組み入れられるということはないが、学校評価の枠組みと全く別なことをやっているというわけにもいかないので、学校評価の枠組みシステムを意識しながら、場合によっては、我々がつくるもののうち、有用なものが学校評価に使っていただけるような仕組みをイメージしながら検討していくというまとめ方でよろしいか。
　学校評価という大きな円があって、学校施設評価という円と一部が重なるという形なのではないか。つまり、重なる部分は学校評価に取り入れ、学校評価の外側にまた別途、施設評価の部分が残っている部分があってもよいのではないか。
　それはほかの領域でもそうであり、例えば教育課程などについても、細かい授業のやり方について、学校評価の中で一人一人の教師が行う授業の評価をじっくりとやるなどということは、学校評価という大きな円の中から外れて、これは教員評価とセットになっていく。それと同じで、施設についても重なる部分については学校評価全体の中に取り入れてもらうと同時に、施設の細かい具体的なものについては、別に学校評価という円の中に入らない部分があって当然だと思う。
　165校小中学校を所管している立場からいうと、この間も高校で木毛セメントボードが落下して大騒ぎになって新聞に載ったということがあった。それで、その各学校には、皆さんで常日ごろ目視してくださいとお願いをしたが、団体からは、そんなことはお金で解決しろという意見を受ける。自分たちはプロではないので、そこまではわからないから、教育委員会が責任を持って維持管理をするという意見がある。しかし、地方自治の原点に戻って最小の経費で最大の効果を得るという考え方からも、施設点検などの動機づけという意味では学校の評価の一部に施設を入れていただきたいという希望がある。
　また、上野先生から紹介のあった下関の学校のように、意図的に狭く計画したホームベースが、授業ができないから狭いという論理が出てしまうと、教科教室型とは一体何なのかという話にもなる。そのベースの部分には設置者の大きな意味での教育目的があり、各学校はその目的を達成するための目標を考えた上で計画されたものである。ホームベース型の学校で教科教室型の運営をするという市の方針がある以上、そこを有効活用できるような学校運営を考えていただくということが筋ではないか。そういう意味でも学校評価が学校施設評価全体を包含することはないと考える。
　学校施設の評価とは、組織マネジメントの中で経営資源である施設をどううまく活用しているかという維持管理、また、自分の学校の教育をやっていくために施設がどうあればよいかということを設置者に意見としてどれだけ伝えているかという点がマネジメントの中で評価されるべき。
　また同時に、学校が主体ではない部分もあり、設置者である教育委員会が主体となる部分もある。それは教育委員会評価という形で行われていく部分であり、学校施設の評価が学校評価、教育委員会評価の中に含まれるような形になっていくのではないか。
　要するに学校評価と学校施設評価は互いに重なるところがあり、そこを学校評価でうまく使っていただけるようなことをイメージしながら仕事をするということは、大体コンセンサスが得られたのではないか。
　続いて、だれがどの範囲で、どのような項目を評価するかということについて議論したい。設置者が評価する項目と教職員、管理職が評価する項目、場合によっては児童生徒や保護者にさまざまな調査をかけて、その声をよく聞いてから行う評価もあるのではないか。また、それとは別に第三者評価、外部評価ということもあり得るが、この辺についてご指摘願いたい。
　評価の対象と評価の主体が混在している。評価の対象とは「だれがだれを評価する」といったときの「だれを」にあたる部分である。評価の対象は学校の責任者であり、学校における施設マネジメントに関しては学校の管理者が行うべき責任を持っているので、学校の管理者を評価の対象とすべきだと思う。そして、施設の整備、あるいは維持管理の部分に関しては教育委員会、あるいは市区町村が責任を持っていると思われるので、教育委員会等が評価の対象になるのだと思う。
　だれが評価をするかということについては、幾つか考えられるが、自己評価というときには、対象となる人がみずから主体となって評価をするということであり、外部評価に関しては、評価の対象になる人の外側から主体を選んで評価してもらうという形である。評価者と評価の対象を区別しておく必要があるのではないか。
　例えば、この校舎は例えば耐震性能上問題がないかということについては、設置者、教育委員会が対象になって、教育委員会の技術屋さんがそのことを評価するのであれば、それは自己評価にあたり、オープンスペースが活用されているかという項目が仮にあったとしたら、評価の対象は学校の管理者か教職員で、教職員が自分で評価するのであればそれは自己評価になるということでよろしいか。今後は、用語の使い方に注意して文章をまとめるようにしたい。
　3つ目の運用・活用は、現在の学校の弱い部分なのではないかと思う。京都市では、ほとんどの学校で、学校評価に施設に関する項目を入れてあるが、運用面の評価については評価項目に入っていない。教育委員会への要望項目、安全点検のようなものばかりなので、運用・活用面、学校のマネジメントのような項目が必要であると思う。
　ただ、現実、教職員による自己評価は定期的に年間を通じて行われているが、学校現場では、外から現場に次から次に仕事がおりてくるというイメージがある。主体的な取組であれば、意欲も高まり、その評価がまた自分のところへ戻ってくるということもあるが、どうしても受け身になってしまうので、この点について考えていかなければならないと思う。
　この会議では、評価項目や評価指標のスタンダードのようなものをこれから議論していくわけであるが、例えばそのほかに学校独自で項目や指標を設定するようこともあるのか。学校評価ではどのようになっているのか。
　学校独自で項目等を設定することは当然ある得るものと考える。施設設備については、教師が学校にどういうものがあるのかを知らなかったり、危険な箇所があるのに放置してあったり、資源の有効活用がなされていないケースもある。また、そもそもそのような視点が教職員の中にあるかどうかという問題もある。学校施設の実態を把握しているかということが、施設設備の評価の中で重要であると考える。現状さえわかっていれば、それを活用して授業をやろうといった意欲が湧いてくるのではないか。
　資料6の2ページ中の「総務省が推進する・・・監査によるなど、既存の別の評価・監査の枠組み」との記述について説明願いたい。
　評価という際に、例えば教育委員会が学校施設の地域全体の施設整備事業に関してどう評価するかというところは、行政評価という枠組みが既に別に存在しており、学校施設の評価は、そういった既存の枠組みに加えて二重に評価するような、設置者がみずからの活動を評価するための枠組みをつくるということではないと考えている。
　具体的にはどのような項目で二重になる可能性があるのか。
　既に行われている例としては、19年度は耐震補強を5例行うという目標に対して、予定どおり5例実施できたと評価するといった、目標管理の形での施設整備に関する評価は既に存在しているので、それと別に、設置者がどのように評価するかという評価の仕方自体をつくることは考えていないということである。
　先ほどの事例では、重点的かつ目標設定型の評価をしているが、むしろ私たちが関心のあるのはチェックリスト型的なものであって、これだけのことが各学校で確保されているかということ把握することを通じて、よりよい方向に進むことが期待されるので、この委員会では網羅的なチェックリストの作成について検討し、その後、重なった部分の取扱い等については検討したらよいのではないか。
　私も同感である。まず、チェックリスト型の評価を考えて、その後、重点型に移行したり、教育委員会や学校独自の項目などが付け加えられていくといった方向で検討していくのではないか。また、学校関係者評価、第三者評価についてご説明をいただきたい。
　基本的に自己評価をしっかり行い、学校関係者評価と呼んでいる保護者、地域などによる評価を行う。それに加えて第三者評価が入ってくる。ただ、第三者評価は学校の自己評価のきちんとしたデータがないとできない。第三者評価の目的は、それまでの評価の妥当性の確認や、自己評価と関係者評価だけではわからない点の評価を行うものである。
　第三者評価と自己評価の関係は、学校施設評価においても学校評価と同様に整理できるのではないか。
　次に、学校施設の評価方法について議論することとしたい。あるスタンダードに基づいて評価するのか、目標設定をして、その達成度を評価するのかなどについて、ご意見をいただきたい。耐震性などは、全国一律のスタンダードに基づいて評価されるものかもしれないが、そうではない項目もありそうなので、使い分けが必要になるのではないかと考えている。
　個々の学校はかなり個性があり、個別の事情がいろいろあるため一律に評価するのは難しい。そのため、網羅的に、あるいは包括的に最低限評価する項目はあるかもしれないが、個々の学校が備えている空間の個別の事情をどのように扱っていくかという点が最も重要な問題になるのではないか。
　評価結果を踏まえた支援・改善の在り方について、各学校は、評価結果を常に公表し、学校と教育委員会が情報を共有することが重要である。評価結果がオープンにされることにより、常にPlan、Do、Seeの機能が働くことが重要で、各学校・教育委員会は、評価結果を公表し、反省するという形になるのではないか。また、例えば、市町村内の学校施設評価の結果を都道府県が把握するかどうかについても議論になったが、今回、そこまでは踏み込まないという整理でよいのか。
　それも含めて議論いただくことを想定している。
　公立小中学校の設置者は市町村であるので、市町村が学校と連携して常に情報を共有し、公開し、Plan、Do、Seeのサイクルをきちんと回すということが第一であろう。資料6に示した論点については、共通理解ができ始めている部分もあるので、これをもう1度ブラッシュアップして、次回議論することとしたい。
　これから国立教育政策研究所の研究グループで学校施設評価の実態調査を行うが、その際の論点について事務局から説明願いたい。

事務局から資料7に沿って説明

　これから始める実態調査の具体的な調査のデザインや実施・集計等は、文教施設研究センターに別途設ける研究会で検討いただく予定であるが、この部会から指示・要望を出していただきたいと考えている。
　調査方法はアンケート方式で、一部の学校にはヒアリングを並行して行う。また、悉皆調査ではなくサンプル調査とし、資料にあるような具体的なイメージを提示している。
　この部会及びワーキングで調査の骨格を示していただき、それに基づいて文教施設研究センターに設置した検討会で具体的な調査を行いたいと思っている。難しいのは、調査を行う場合、ある程度その結果を予想して、学校施設評価システム検討部会のアウトプットにふさわしい調査項目を設定する必要がある点ではないかと思う。
　これについては、実施状況調査ワーキングにおいて精査していただく時間もあるので、その際にご意見をいただきたいと思う。また、現地調査を行い、学校施設の評価を行っている事例があるのか、学校現場ではどのような点を評価をすることが可能なのか、などについて現地で確かめつつ、少しずつ実態調査の内容を固めていきたい。
　学校施設の評価というときに2つ意味があり、学校施設の整備、維持管理、活用に関する取り組みに対してどう評価していくかという視点と、学校施設の状態の調査という視点があると思う。
　私は学校施設の評価というときに、学校施設を改善するための取組に対して評価することが、学校施設の評価で一番大事なポイントではないかと思っている。耐震化されているかどうかなど、学校施設の状態の調査といった次元での評価も確かにあるが、その一方で私が考えているのは、耐震化の計画の有無や、計画的な耐震化の取り組み状況など、取組に対する評価を充実させるのがよいと考えている。その辺は考え方が2つあり得ると思うが、どのようなイメージで考えたらよいのか整理しておいたほうがよいのではないか。
　耐震化がされているかという状態評価なのか、耐震化ということに注意を払って点検とか診断をしているかという取り組み評価になるのかということは、根本的なことであるので、次回、このテーマについて議論したい。
　その件については、対象と主体で切り分けられるのではないか。学校が主体になる評価項目と設置者が行うべき評価項目がある。主体者によって評価項目や対象も違ってくるので、そこはあまりこだわらなくてもよいのではないか。
　各学校における取組に対して評価するということで考えてよいのか。
　最終的に、教育委員会が学校施設・設備についてどのような計画性を持って取り組んでいるかという点に落とし込めるのではないか。
　実態調査はサンプル調査で行うとのことであるが、昭和40年、50年のころの校舎、あるいは学校の施設は、かまぼこ型の校舎が多いので、建設年代に応じたサンプルの採り方やアウトプットを意識しないといけない。
　先ほど山重先生のお話の件について、事実としてOFSTEDの評価においてもプロビジョンとマネジメントという両方の観点が入っており、物の状態ということと、それをどうマネジメントしているかというものをあわせて評価が行われている。現状、この議論の中でも施設に関して、物としてどうかということと、それをどう有効に使っているかということ、両方扱っていくと認識している。
　物の状態というのは、だれかがマネージしてある状態になっているので、本来、評価すべきはマネジメントのところであって、状態はある面で成果というか、状態、結果だと思う。だから、結果に関しては調査して、その調査に基づいてそれをある状態にしている対象を評価するほうがわかりやすいのではないか。
　評価の中でも、レイティングするという行為とデータを集める行為の両方があるが、そのことを意味しているのか。
　そうではなく、例えば耐震化されていない、危険な状態にあるという施設の状態に対して評価すると際には、状態に対して5点、0点と点数をつけるよりも、だれが責任を持って整備したり、維持管理したりするのかというところを評価すべきだと思う。だから、その状態に対する評価というのはあまり意味がなく、むしろそれは調査にあたるものである。
　取組に対する評価にもいろいろあり、例えばISOのようにある目標に向かって前進しますよといった、目標に対する積極性といった形で評価するのか、それとも小松先生から説明のあったように、学校の具体的な取組に対して評価するのかといったことを考えると、私はISO方式というよりは、具体的な学校が行っている対処方法に対する評価の方が望ましいと思う。
　その点は一致しており、望ましい状態に対して学校が行うべき望ましい取組というものがあり、一方、教育委員会が行うべき望ましい取組がある。それに対して評価するという方がよいと思っている。
　取組という姿勢を評価するのか、状況を評価するのかという大事な視点を指摘いただいたので、それを忘れないように具体的な評価項目を考えることとしたい。また、山口委員からご指摘があった無作為な抽出サンプルではなく、地域性、学校規模、年代などを十分考慮してサンプリングするということも大変重要なご指摘だと思う。
　資料8の具体的な調査内容、調査対象、調査対象国やメンバーについては、具体的には私と事務局に詳細はお任せいただきたい。引き続き、今後の現地調査のスケジュールなどについて、事務局から説明願いたい。

事務局より資料9に沿って説明

　私はコミュニティスクールの会長も努めているが、東山田中学校には、コミュニティハウスというものが隣接してあり、よく使われているので、ごらんいただきたい。
　それでは、逐次現地調査を始めつつ、実態調査についても案を練っていくということにさせていただきたい。最後に今後のスケジュールについて説明願いたい。

事務局より資料10に沿って説明

以上

学校施設整備指針策定に関する調査研究学校施設評価システム検討部会（第2回）議事録

1．日時

2．場所

3．出席者

［協力者］

［事務局］

（文教施設企画部）

（初等中等教育局）

4．資料

5．会議概要

6．議事