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通級指導とは、いつもは通常の学級で学び、週1日程度数時間、子どものニーズに合わせて指導をする場である。通常の学級と通級の両方の指導がうまく重なることで効果が上がる。通常の学級と通級指導では指導のスタンスが違い、個の特性に配慮していかに学びやすくしていくかが主眼になる。
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通級指導では、話し手を見る、話し手の方に体を向ける、聞き漏らしたり、わからなかったら周りの動きを見てみる、隣に聞く、手を挙げて質問するなど、集団生活を円滑にするためにはどんな力を培っていくかを考えるスキルを指導する。
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通級指導をしている子どもには、学習上の課題、行動上の課題、環境調整の課題の3つがあり、通級の指導の形態は個別の指導、小集団の指導、コンサルテーションである。
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1日の指導を通して、一番大切にしている事は、できた、わかった、楽しかったという充足感である。週に1度の通級の場で、在籍校の集団生活に向かうエネルギーとスキルを培いたいと考えている。ただ、通常の学級の指導も大切なので、文京区独自の取組で、在籍校の先生全員に通常の学級での個別指導計画づくりをお願いし、在籍校の先生と相談しながら、通常の学級、通級指導、両方の指導計画をマッチングしている。
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(施設設備面での配慮) |
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施設設備で優先的に配慮すべきことは安全だと感じている。今いる学校に異動した時は、まず、蛍光灯の防御網をお願いした。落ち着きのない子どもには、教室、廊下、他のいろいろな部屋の間もフラットにした。
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傷ついた経験の重なりで気持ちが荒れている子には、清潔、整然がわかるように清掃、片づけをして、環境を整えることも指導である。また、カーテン、引き戸で余計なものは見えないように設計した。
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指導面から必要な場を用意することも重要であり、先ほど話した軽度発達障害のある子どもの3つの課題に対する支援の場づくりである。
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学習上の課題から、目からも耳からも刺激の少ない環境で集中して学習できる小さな落ち着いた個別学習室が効果的である。どうしても無理ならば、つい立てで仕切る個別学習スペースは必須である。
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行動上の課題から行われるソーシャルトレーニングは、今後の特別支援教育の最たる課題である。先を見越すと、小集団学習ができるスペースや、体を使ったゲーム、競技ができるルームが必要になり、小集団学習室やプレイルームをつくった。
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環境調整の課題では、周りの理解の輪を築いていくためには、話が十分にできる場が必要である。面談室やグループ懇談室は通級指導が指導の一環として持つコンサルテーションに大きく寄与してくれた。通級以外の子を気にしないではいられない時期があるので、生理的な欲求を安心して行える専用トイレをつくってよかったと思っているが、これは健常の人が思いやらなければならないことである。
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悩みを深めている時や、受け手の対応がとても大切になる。取り次いでもらう状況は避け、受け手にとってもらえる安心感を持ってもらうための専用電話や、児童のそのときの様子を見ながら、すぐに個別教材を作成するためのコピー機、個人情報の保管、教材の整理のためのファイリングキャビネットは必要不可欠な備品である。
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(質疑応答) 時間の都合上、黒川先生の発表についてのみ質疑応答 |
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黒川先生の学校の総児童数は何人で、軽度発達障害のある児童は何人いて、この教室の対象の学年は何学年なのか。
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現在の児童は20名である。1年生から6年生までいて、それと軽度発達障害の子どもがすべてに在籍している。就学相談の中で、LD、ADHD、高機能自閉症や軽度の情緒障害の範疇に入る子どもが通っている。私が以前いた駒本小学校が30名になり、とても毎年この数では無理なので、昨年急遽つくった。小学校が文京区には20校あり、駒本小学校が30人、私どもの学校が20人なので50人の子どもが来ていて、1校当たり2.5名の通級になっている。ただ、まだまだ入級希望者がいるので、通常の学級にはニーズのある子どもはたくさんいると思っている。
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東京は大きいから十何校でということなのか。私は1つの大きな学校で通級の学級があるかと思ったのだが、違うのか。
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20校の小学校があり、いわゆる拠点校方式をとっている。小日向台町小学校では、20名のうち3名が自校通級で、そのほかの17名が他校通級になっている。
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私も今年3月まで小学校にいて、500人規模の学校で12、3人のアスペルガーを含む軽度発達障害の子どもを抱え、通級に入れていたので、今日、樋口調査官が言った全国調査の出現率の6パーセントは、おそらく高機能自閉症の6パーセントだろうと思う。
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黒川先生の学校で経験した中での相談室の必要性や切迫感について、もう少し触れていただきたい。
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環境調整の話の中で触れたが、この子どもの課題は、指導面ももちろんだが、人と人、場と場によって、すれ違い、誤解があることが大きな支援の妨げになっているように思う。
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高機能自閉症やアスペルガーという言葉も、やっと学校の中では共通言語になってきたが、やはりじっくり話が聞ける場があるということはとても大切なことだと思う。環境の中で大切にされている実感の話をしたが、話を聞いてもらっている実感を得てもらうには、環境をきちんと整えてあげるということが大事なことではないかと感じている。
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カウンセリングルームというような相談室のイメージだけではなくて、現場は本当にこうした相談室がほしいということか。
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校外から通級してくる児童のために昇降口、下駄箱、入口部分の配慮については、情緒障害だけではなくて、言語障害だとか、難聴学級で配慮されている部分がたくさんあるかと思うが、そこについて何か工夫をされているところや、困っていることがあれば聞きたい。
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パーテーションという形で隣のコーナーの音や指導の声が聞こえる部分のところは、果たして子どもたちによい環境なのだろうか。聴覚障害の場合に、逆に困る部分があるので、当然情緒障害の子どもでも音に対して敏感な子どもには配慮がいるだろうと思う。現実的には空き教室から起こしたという方法ではあるが、音に対する基本的な配慮の必要性を感じていれば教えていただきたい。
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駒本小学校では独自の門を用意している。これは先ほどのトイレと同様に、子どもの周りに対する気持ちというのはとても変化があり、堂々と正門を通れない時期にあわせる必要があると考え、専用門をつくった。ただ、これからの特別支援教室はある面少しオープンなところをつくる必要もあると思うので、今の小日向台町小学校については、専用門をつくっていない。
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個別学習室は、特別支援教室でも通級指導教室でもない。通常の学級で、もし考慮することができたらどうかというものなので、これがひとり歩きしたら困るなと私自身は思っている。ただ、先ほど言ったように、仮教室から始めたときはパーテーションだった。そのときの子どもの学習の仕方、集中度は、今の個別学習室をつくったときの学習の仕方とは全く違う。これはやはり刺激の取り入れ方の難しい子どもが特別に来る場所である。だから特別にその子に合わせて教室をつくることが必要だと感じている。
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場合によっては、少し通級や小中学校の特別支援学級の環境についての議論が白熱した段階で、また黒川先生に協力をお願いすることがあるかと思うのでよろしくお願いしたい。 |