高等学校施設部会(第2回) 議事要旨

1.日時

平成22年9月6日(月曜日) 13時30分~15時30分

2.場所

旧文部省庁舎4階 文教施設企画部会議室

3.議題

  1. 高等学校施設の現地調査報告
  2. 高等学校施設整備指針の改訂の主な方向性について
  3. その他

4.出席者

委員

【委員】尾池武、小野島惠次、小寺啓一、髙際伊都子、髙間專逸、長澤悟、古谷誠章、宮本文人、吉岡大介(敬称略)
【特別協力者】新保幸一(敬称略)

文部科学省

【文教施設企画部】辰野文教施設企画部長、岡技術参事官、長坂施設企画課長、瀬戸専門官

オブザーバー

【文教施設企画部】杉浦施設助成課長補佐
【初等中等教育局】
(高校教育改革PT)天野教育制度改革室専門官、沓澤産業教育振興室産業教育調査官
(教育課程課)梶山教育課程企画室長
(高等教育局私学部)真野私学助成課専門官
(スポーツ・青少年局)朝倉企画・体育課運動部活動推進専門官

5.議事要旨

(○:委員の発言、●:事務局の発言)

(1)高等学校施設の現地調査報告

・事務局より資料1に基づき、7月に実施した高等学校施設の現地調査の概要について説明。

(2)高等学校施設整備指針の改訂の主な方向性について

・事務局より資料2に基づき高等学校施設整備指針の改訂の方向性について説明。

○ 「主体性を養う空間の充実」の「日常的に生徒と教職員とのコミュニケーションが~」については、もう一歩踏み込み、異学年の生徒どうしが交流するための空間という観点を含めることができないか検討してみてはどうか。高校では、特に進路決定の際など、先生もさることながら、先輩から非常に多くの刺激やアドバイスを受けると思う。

○ 今日の学校教育では、現場の工夫により教育プログラムが変化しており、設計の際には教育プログラムの変化に対応できるような空間とすることが大きな課題となる。高等学校整備指針では、第1章 総則の第1節の第3項に「今後の学校教育の進展に長期にわたり対応できる柔軟な計画とすることが重要である」という記述はあるが、その具体的な方法についてはあまり示されていない。指針あるいはアイディア集のようなもので、具体策が示されると、現場にとって使いやすいのではと思う。

○ 空間と教育プログラムとの不整合の問題は、設計者選定のあり方や、ワークショップの開催などの設計プロセスの進め方によって、解決できるケースが多くある。このような内容について、指針やアイディア集などで盛り込めないか、検討してはどうか。

○ 高等学校においては、勉強や芸術活動など重視するものは学校により様々であり、例えば広い自習室を設けるために芸術のための空間を狭くせざるを得なかったり、芸術活動を重視する場合には図書室で自習室の機能を補ったりするなど、各校で工夫をしている。施設整備指針では総則的な大事な点を落とさず書き、そのかわりに事例集では、改修事例も含めて、普通科や総合学科などタイプごとに事例をまとめ、どのようなねらいを持ちどのような手順で設計が固まったかという点に重きを置いたものとすると、非常に参考になるのではないかと思う。

○ 指針の全体の構成の仕方、また、特に第1章 総則の「第1節 学校施設整備の基本的方針」や「第2節 学校施設整備の課題への対応」の内容についてきちんと整理していくことが必要だと感じている。

○ 「キャリア教育・職業教育の充実」とあるが、キャリア教育は、全ての高校生に求められているものだと考えている。特に、総合学科高校や普通科高校の進学校などでも、キャリア教育をどのように行っていくかが非常に重要と感じている。

○ キャリア教育・職業教育の内容については、文部科学省の中でどのような議論が進んでいるかを紹介いただきながら、施設としてどう対応していくかを検討していきたい。また逆に、施設的な状況を整えることにより活動が生まれたり活動のヒントになったりということもあるので、受身での対応だけではなく、施設を通して教育の内容の問題にも触れていくということも、あってもいいのではないかと思う。

○ 「学習・生活空間の充実」における「夏季、冬季においても快適に過ごせるように計画をする」について、生徒が健康で快適に過ごせるような施設の計画という観点は、今年の異常気象から今後も議論があるところだと思うので、非常に重要と感じている。

○ 「効率的な施設整備」について、公立の学校では、生徒数の変化により、県全体での再編整備が当然起こってくるため、既存の校舎を改修しながら使用していくことは不可避である。そのため、非常にユーティリティの高い、使い勝手の良い施設設備という観点が重要になってくる。
 例えば、高校における講堂は、キャリア教育の一環などで外部の方に講義をしてもらう機会もあるので、その存在意義は現在も非常に大きい。その場合に、体育館などの施設を、簡単に移動式の椅子を出し入れすることで講堂として使用できるようにするといった、ユーティリティの高い施設として整備することは非常に重要だと思う。

○ 「言語活動の充実」だけではなく全てに関係するが、図書館の充実についての観点も含めるべきではないか。読書活動や文献に当たる作業は高校生にとって非常に重要だと思う。また、情報教育の充実にあわせて図書館と連携を図ることが今後おそらく重要になってくると思う。

○ 図書館については検討課題になると考えている。小中学校の場合には司書が置かれていない場合もあるが、高校では基本的には置かれているため、図書館の位置づけや活用の可能性が小中学校とは違う点があるように思う。また、自習の場所として図書館を考えると、自習の場合には一人で取り組むというケースと、友達同士で少し相談をしながら勉強を進めるケースとがあるが、図書館の自習室では声を出せないため、少し声を出してもいいような自習スペースが欲しいという意見を聞いたことがある。自習の場、図書委員や本との触れ合い、生徒同士の交流など様々な観点で検討を進めていけたらと思う。

○ 大学で学生を見ていると、文献を引用する力、文章を書く力、物事を考える力などが不十分な学生が多いと感じる。中学、高校、大学と連携をもちながら訓練できると良いのではないか。施設のみの問題ではないが、施設面からの働きかけということで、何か少し盛り込めればと思う。

○ 「環境面への配慮」について、環境教育については、例えば発電量などを数字で示したり、講義で教えたりするだけではなく、環境に資する活動を生徒が実行するという方法もあるため、生徒が環境への取り組みを行うことができるような施設という観点も重要ではないかと思う。
  例えば、間仕切りをして教室を狭く使える事例があるが、これは単に教室の使い勝手が良いだけではない。広い教室に一人だけいる生徒が冷房に当たろうとする場合には、無駄を承知で室内全てを冷房しなければいけないが、もしも生徒が簡単に工夫して教室を間仕切りで区切ることができれば、その行動は、環境教育の一環としての活動となる。
  また、空調は一括制御の学校がほとんどだとは思うが、個別制御にすると、効率は悪くなるかもしれないけれども、生徒自身がスイッチを入れたり切ったりできる。

○ 環境教育については、「環境に配慮した学校施設づくり検討部会」において検討を進めているので、それを高校版として取り込みながら記述できると良いと思う。

○ 「特別支援教育の推進への配慮」に関して、特別支援教育は今後大きな課題になると思う。指針の中で記述するだけではなく、事例集の中では、特別な支援を必要とする生徒に対して施設面で具体的にどのような工夫が有効なのかを示すと、現場は非常に助かるのではないかと思う。

○ 「環境面への配慮」について、高校生にもなれば、ごみ問題など、自ら行動する環境教育のための施設面における工夫についてもう少し言及しても良いのではないかと感じている。

○ 現在の施設整備では、学校再編の有無に関わらず、新築が少なく改修が基本となっている。事例集の中では、今回提示された改訂の方向性の観点について、既存の施設を改修した事例としてどのようなものがあるか示されると参考になると思う。

○ 柔軟性のある施設計画という観点については、構造の部分は耐久性を高め、仕上げや間仕切りなどは適宜取りかえられるスケルトン・インフィルのような方法を積極的に考えるように促すことが有効ではないかと思う。一方、現行の指針では、構造体自体の耐久性を高めることについて触れているが、非耐力壁などインフィルに相当する部分の耐震安全性に関しては、既存施設の非構造部材等についてのみ言及している。新築の場合も非構造部材の耐震性を確保する必要があると思うので、記述を整合させてはどうか。

○ 高等学校の中でも、総合学科や単位制の学校は、建築の立場からすると設計がなかなか難しいと思う。そのような学校については運営方法をきちんと捉えてよく検討することが必要、というようなメッセージを、設計の立場の人たちに対して、押しつけではなく何か与えられると良いと思っている。

○ 現地調査では、普通教室の計画について、教室をただ並べているだけのように感じるところが多かった。学年別にまとまるという点では良いが、もう少し空間構成を工夫する計画もあり得るのではないかと思う。計画・設計の立場の人を拘束しない表現でメッセージを送れると良いのではないかと考えている。

● 基本的に施設整備指針は計画・設計上の留意事項なので、その性格上、設計者の決め方のようなところに話は及ばないかと思っている。ただし、現行の指針では11ページに「関係者の参画と理解・合意の形成」という項目があり、この部分を少し充実させるような記述にしていくのも一策かと考えている。
 指針だけではなかなか表現し切れないところもあるので、指針だけではなく事例集やアイディア集などを含めた全体を見た上で、指針の趣旨を徹底させていけたらと考えている。

○ 設計者の選定やプロセスについては、例えば、指針の中では11ページの「関係者の参画~」の項目の一歩前で、ふさわしい設計者を選ぶことが重要という旨のみ言及し、具体的な選び方に関しては、事例集やアイディア集のようなものに、空間的なアイディアだけではなく、こんなプロセスでこんな設計者を選定したケースがあるということや、その場合のうまくいった点及びうまくいかなかった点など、設計者選定やその後の設計プロセスに関する事例も示されていると役立つと思う。

● 設計者の選定方法の選択についてはある程度自治体の裁量に任されているため、国としては、こういう仕組みがあり、国ではこうしているというのを示すのは構わないが、事例集やアイディア集でも、踏み込める範囲には限界があることをご承知おきいただきたい。

● 「特別支援教育の推進への配慮」に関して、高等学校は一般的に入学の選抜をするという形になっているが、高等学校における特別支援教育に関する考え方は、小・中学校の義務教育段階とどのように違ってくるのか。現場での取組をお伺いできれば幸い。

○ 進学校や専門高校にかかわらず、かなりの割合で発達障害の生徒がいる。学校の中でも特別の支援が必要な生徒への対応のための体制をつくり、特別支援学校と連携し具体的な対応についてアドバイスをもらいながら、学校ごとに実践をしている。単位制高校にそのような生徒が多いため、そこを中心に実践をしながら実例を共有化し、普通科や専門学科の高校においても対応を始めたというところである。

○ (特別支援教育については)入学者選抜だけではなく、入学後、その学校できちんと授業が受けられて、望む力がつけられて、その後に希望する進路に結びつけられるかどうかが非常に重要だと考えている。選抜をするだけではなく、個々の障害のケースを十分に聞き、学校として配慮できる支援の範囲を入学前に十分に説明し、理解をいただいているのが実情である。一律にこうすれば良いという方策をつくることは難しいと思っている。

○ 本日のご意見を踏まえると、今回の整備指針改訂に関しては、多様な高校のあり方や位置づけ方に応じた書き方の工夫が必要であり、また、整備指針を補う別の形としてアイディア集などを作成し、それらとあわせて指針の役割が果たせるようにすることが必要となってくるだろうと考えている。

(3)その他

・事務局より資料3に基づき今後のスケジュール案について説明。

お問合せ先

大臣官房文教施設企画部施設企画課

指導第一係
電話番号:03-5253-4111(代表)(内線2291)、03-6734-2291(直通)

(大臣官房文教施設企画部施設企画課)