令和7年3月26日(水曜日)10時00分~11時11分
WEB会議
中釜主査、伊藤主査代理、岡田委員、川﨑委員、小崎委員、斉藤委員、櫻井委員、澤田委員、武林委員、玉腰委員、寺尾委員、二宮委員、桃沢委員、横野委員
東京大学大学院新領域創成科学研究科 鎌谷洋一郎教授
塩見研究振興局長、釜井ライフサイエンス課長、小野ゲノム研究企画調整官
【小野ゲノム研究企画調整官】 定刻になりましたので、ただいまより、次世代医療実現のための基盤形成に関する検討会議を開催いたします。
委員の皆様におかれましては、御多忙のところ、お集まりいただき、誠にありがとうございます。文科省ライフサイエンス課、ゲノム研究企画調整官の小野でございます。本日もよろしくお願いいたします。
本日は、Web会議システムによる開催とさせていただいております。委員の皆様、御発表者の皆様には、御配慮、御協力いただき、誠にありがとうございます。本検討会議の模様は、関係省庁、AMED及び一般の方にも傍聴いただいております。
本日は、武林委員が遅れて参加されるというふうに、御連絡をいただいております。現時点で総委員数14名のうち、過半数に達しておりますので、定足数を満たしていることを御報告いたします。
会議の円滑な運営のため、ZoomによるWeb会議システムで御参加いただいております皆様にお願いしたいことがございます。委員の先生方におかれましては、表示名は、本名、日本語表記、フルネームとしていただきますよう、お願いいたします。また、回線への負荷軽減のため、通常はマイクとビデオをオフにしていただき、御発言を御希望される場合はビデオをオンにしていただければと思います。また、発言される際のみマイクをオンにしていただきますよう、お願いいたします。その他、システムの不備などが発生いたしましたら、随時、お知らせいただきますよう、よろしくお願いいたします。Web会議システムの音声が切れてしまった場合には、事務局より事前にいただいておりますお電話番号に連絡をさせていただきます。表示名や音声・映像については、事務局により操作させていただく場合がありますことを御承知おきください。御不便をおかけすることがあるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
続きまして、文部科学省の出席者を御紹介いたします。研究振興局より局長の塩見、また、ライフサイエンス課長の釜井が出席しております。
1点、本検討会議について補足いたします。これまでの3回の作業部会は、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会にひもづく会議体として実施しておりました。今回は、当省における事務的な手続の処理上、研究振興局が設置する検討会という形で実施いたします。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、以降の進行は中釜主査によろしくお願いいたします。
【中釜主査】 中釜です。本日もよろしくお願いいたします。
時間が限られていますので、早速、本日の議題に入りたいと思います。
まず、本日の議事と配付資料について、事務局から確認をお願いします。
【小野ゲノム研究企画調整官】 議事次第を御覧ください。本日の議題は、2点でございます。
議題(1)は、今後のゲノム研究の在り方についてで、東京大学の鎌谷先生に御発表をいただきます。
議題(2)は、報告書案についてです。次世代医療実現のための基盤形成の今後の方向性について、これまでの作業部会での御議論や委員の皆様よりいただいた御意見を踏まえて作成した報告書案を事務局より御説明いたします。
各議題において、説明、御発表の後に質疑応答の時間を設けさせていただきます。
配付資料は、議事次第に記載されているとおりでございます。資料は、皆様に事前にメールにてお送りさせていただいております。不足等ございましたら、事務局にお声がけください。
事務局からの説明は、以上です。
【中釜主査】 ありがとうございました。
それでは、早速、本日の議事に入りたいと思います。議題(1)は、今後のゲノム研究の在り方であります。鎌谷先生から、御説明をお願いしたいと思います。その後で質疑応答としたいと思います。
鎌谷先生、よろしくお願いいたします。
【鎌谷教授】 よろしくお願いいたします。何分ぐらい話していいのでしたでしょうか。
【中釜主査】 大体15分ぐらいの予定です。
【鎌谷教授】 分かりました。頑張ります。
【中釜主査】 できるだけお願いいたします。
【鎌谷教授】 よろしくお願いします。今回、お話しさせていただく機会をいただきまして、ありがとうございます。小野さんからお話をいただいたときに、バイオバンク・ジャパンの立場としてはお話しできないという話をしたんですけれども、バイオバンク・ジャパンは松田先生がお話しするということで伺いました。個人としての意見をということで、今日はお話しさせていただきます。
そういったところで、私自身はバイオバンク・ジャパンの実務者委員ではありますけれども、バイオバンク・ジャパンにも意見は伺っておらず、バイオバンク・ジャパンの意見を反映したものでもありません。できるだけ客観的に自分の考えをここで発表させてください。
もしかするとこういったお話はもうされているかもしれないですけれども、現状の把握として、世界のバイオバンクはどうなっているかということについては、皆様も御把握のとおりと思いますけが、数は増えるばかりというところで、人数も増えるし、国も増えるという状況にあります。2025年ですから、今年、『Nature Reviews Genetics』でまたバイオバンクのレビューが出るというような状況で、こちらの情報と公開データから棒グラフを右に作ってみましたけれども、例えば、ここの列、50万人という規模のバイオバンクで見ても、中国、フィンランド、台湾といったところが50万人を達成するバイオバンクを出していて、アメリカは100万人という規模のバイオバンクが二つあって、さらにイギリスはどうやら500万人というのを始めたというような状況で、どんどん増えているという状況になります。また、以前はSNPアレイのゲノムデータ、ここで言う青の数字のものがほとんどでしたけれども、全ゲノムシークエンス、オレンジのところを取り始めていて、UK Biobankは既に50万全例、All of Usもその数に近くなっているという状況で把握しております。私たちの近くの国で言うと、韓国のKorea Biobank Projectが34万例の全ゲノムシークエンスというのを最近発表していました。その中において、日本のバイオバンク・ジャパンと東北メディカル・メガバンクだけ人数をここに出させていただくと、この図を見るとワン・オブ・ゼムのような数になってしまっているという状況にはあると思います。ですが、この二つを足して、あと、ナショセンさんを足すと50万人に近い数にはなるのかなというような人数感だと把握しております。
各バイオバンクですとかコホートはどういうデータを備えているのかというのをもうちょっと詳細に見てみますと、世界を代表するバイオバンク、UK Biobankということですけれども、50万のSNPアレイのほか、50万の全ゲノムシークエンスも収集済みのほか、50万のメタボロームを実施済みで、2年ぐらい前に5万人のプロテオームも出したということですが、これについて、残り45万人もOlinkでプロテオームを実施するということが最近アナウンスされていました。また、さらに5万人追加で、Somascanの新しいほうの技術もやるということでした。それに加えて、5万人のロングリード・シークエンスというのが大きく報道されていたと思います。興味深いのは、5万人のロングリード・シークエンスは何のためにやるのかというところで、割と日本では、構造体多型を見るとか、T2Tのこれまで読めてなかったところを見る、リピート見るという言い方が多いと思うんですけれども、UK Biobankはロングリードを取ることによってエピジェネティックマップを作るというようなプロジェクトとして発表していたということです。そのほかに、UK Biobankは画像もたくさん撮っていて、頭と心臓とおなかのMRIをたくさん撮っている。あと、リピートスキャン、同じ人について2回取るということもやっているというのがありました。
そのほか、もう一つは、Our Future Healthというのが始まっているということで、これは、Aliさんという方が率いている、ちょっとよく分からないプロジェクトなんですが、500万人を目標にリクルート中で、ポッドキャストがあったので先日聴いてみたんですけれども、220万人、リクルート済み、120万人、血液検体取得済みというような段階で、現在、リクルート中というようなプログラムだそうです。
UK Biobankの特に象徴的な点は、このデータを全世界に向けて共有しているということで、イギリス、アメリカだけでなくて、日本、中国、どこからでも、このUK Biobankのデータをみんなが使っているという状況になります。
アメリカについて見てみますと、All of Usが、40万人の全ゲノムシークエンス、それから、公開情報によると2,800人のロングリード、あと、ちょっと特徴的なのは5万9,000人がFitbitをつけているというのがありますけれども、All of Usも世界に向けてデータを公開しているという状況です。
アメリカにはほかにTOPMedというのもあって、こちらはマルチオミックスを取っているということで、人数感はAll of Usより少ないですけれども、RNA、メチル化、メタボローム、プロテオームと、各種のマルチオミックスデータをそろえるようなプロジェクトがあったり、アメリカのもう一つの、退役軍人の100万人のコホートもやはり、SNPアレイ、全ゲノムシークエンス、メチル化を取って、それぞれ独自性を出そうとしているということ。アメリカはさらに、製薬企業のRegeneron社が250万人の全エクソームシークエンスをやって、これは創薬の目的で、製薬企業と共同でやっているようなものがあるそうです。
こういったように世界的にバイオバンクはどんどん増えているということで、日本の立ち位置としては、当初、リードしていたところもあったかもしれないですけれども、現在はワン・オブ・ゼムになっているところで、これからを考えるという状況だと感じています。
バイオバンクデータがあるとどういうことができるかということについて具体例として示させていただくと、私たちは胃・十二指腸潰瘍のゲノムワイド関連解析というのをやらせていただいたんですけれども、バイオバンク・ジャパンとToMMoとUk BiobankとFinnGenのメタ解析をやったということです。こういった日本のバイオバンクをスタートとして世界の公開データをさらに加えて強化するというのは岡田随象先生が最初に開拓された手法ですけれども、この解析では、東北メディカル・メガバンクさん、岩手メディカル・メガバンクを介して御協力をいただけました。胃・十二指腸潰瘍はアジアで多い疾患であるというところがありますので、このBBJ+ToMMoで検出力がこれまでと比べて大幅に上がったというところがあり、25か所の新たな感受性遺伝子を発見できたというところが面白みであったというふうに考えています。こういうふうに日本のバイオバンクは役に立つというところです。
この十二指腸潰瘍のGWASではSAIGEという方法を使いました。GWASの解析手法というのもどんどん開発されてきましたが、最初の頃、私がGWAS研究に関わり始めた頃はArmitageの傾向検定という非常にシンプルな検定をRでやったりしていました。ただ、GWASには非常に有名な交絡因子というのがあって偽陽性につながるんですけれども、そこについてアメリカで主成分分析による集団構造化の補正という手法が発見されまして、これが非常に大きくGWASを進めるということがありました。
さらに、2010年頃からは、全ゲノムデータを変量効果とした高速な混合線形回帰モデルというのが開発されまして、これを使うと、集団構造化だけではなくて、隠れた近縁関係も補正できるということで、これが現在の標準手法となっています。興味深いことに、これはほとんどアメリカで開発されたんですけれども、Microsoft社の研究者なども参加して開発が進んでいたということがありました。2010年頃の手法というのは現在のバイオバンクレベルの解析をするにはとても遅くてできなかったんですけれども、それをどうやって解決するかというと、新しいアルゴリズムをつくって解決するということがあって、2015年頃になると、無限遺伝子座モデルに基づいて、少し推定を制限した形で高速化する形のBOLT-LMMという手法が開発されて、やはりアメリカということです。
2018年頃からは、バイオバンクというやり方をするとケースとコントロールを上手に疫学的に集めるということをしなくなりますので、ケースコントロールのインバランスというのが起きて、それでバイアスが起きているということが発見されて、それを補正する、鞍点近似法、saddlepoint approximationを使ったSAIGEという手法、これは先ほど使ったものです。もしくは、リッジ回帰とFirth法の2ステップによる高速な解析のREGENIE、これはRegeneron社が開発したもので、こういったものでGWASの手法が発展してきた。ほぼアメリカによってここは発展してきており、現在、バイオバンクでシークエンスをしようとするとIlluminaを使うしかなくて、どんどんアメリカの企業にお金が行ってしまうというような問題が時々聞かれますけれども、計測手法だけではなくて、解析手法についてもほとんどアメリカ主体で進んでいるという状況です。そのほかにも、現在、全ゲノムシークエンスが大量になってくるとレアバリアント解析が行われてくると思いますけれども、SKAT、SAIGE-GENE、STARRなどといった方法、これらもほぼアメリカで開発されています。
という状況なんですけれども、よく見てみると、アメリカで開発されていますが、その開発者は割と、中国人だったり、韓国人だったりして、さらに、この中で言うと、Jian Yang先生ですとかLee先生は中国や韓国に帰っているという状況がありますので、ほぼアメリカ主体でやっていると言っても、そこから各国に帰っている研究者もいるので、そういった研究者が各国での研究をさらに広げていくのではないかというふうに考えられるかと思いました。
GWASでたくさんの遺伝子が分かると何がいいかというと、メカニズムのいろいろな推定ができるようになるということで、特にメンデルランダム化が注目されているということです。以前、疫学研究では、胃潰瘍は胃がん発症を増やすけれども、十二指腸潰瘍は胃がん発症を減らすという、よく分からない関係性が知られていて、もちろんメカニズムも考察されているんですが、ゲノムデータがあるとメンデルランダム化ができる。実は私たちの研究では結論は出なかったんですけれども、推定量だけ見ると、恐らく、十二指腸潰瘍、胃潰瘍、どちらも胃がん発症を減らすということを私たちの論文としては結論としており、右側にも書いていますが、例えば、EFNA1という遺伝子のバリアントを持つと、十二指腸潰瘍にはなりにくくなるんですけれども、胃がんになりやすくなる。もしくは、PTGER4だと、十二指腸潰瘍にはなりやすくなるんですけれども、胃がんにはなりにくくなるという、逆の関連を示すものがあって、そうすると、左側の疫学解析のうち、十二指腸潰瘍を減らすというほうについてはやや支持する結果を得たというところになります。こういったメカニズムが推定できるというのがいいところです。
さらに、ゲノムデータ以外の発現とかプロテオームがあると何がいいかというと、ゲノムデータだけだと配列情報だけなので、なかなかバイオロジーに持っていくのが難しいんですけれども、既存のバリアントと遺伝子発現の関係であるeQTLですとか、ゲノムとタンパク質の関係であるpQTLといった情報を組み込んでGWASを解釈しますと、バイオロジーにつなげることができる。このバリアントはある遺伝子の発現を変化させるものだということがeQTL解析からは定性的に分かりますし、さらに、今、pQTL解析が面白がられているのは、タンパク質を増やすとどうなる、減らすとどうなるという、方向性に関わる情報も得られやすくて、これは創薬に結びつく情報なんじゃないかと考えられているということです。この解析をするときに連鎖平衡構造が一致している必要がございまして、私たちのところはいろいろ無理してやったんですけれども、本当はeQTLやpQTLの日本人のデータがあると日本人のGWASの解釈が進むという状況になります。
最後ですけれども、シングルセルの解析もGWASと組み合わせることができて、GWASで見つけた感受性バリアントが実際にどの細胞集団で高く発現している遺伝子かというのを見るという方法をすると、遺伝的感受性がどの組織を主座としているかという推定ができると言われており、上のaの図は、GTExというアメリカの全組織の発現とゲノムの関係を見たものと私たちの十二指腸潰瘍GWASを比較すると、胃で発現する遺伝子だということです。当たり前なんですけれども、ちゃんと結果が出るということです。
さらに、胃・十二指腸シングルセルのデータというのも公開してくれている研究者の方々がいらっしゃって、この公開データを取得してシングルセルデータに遺伝子を投影しますと、胃や十二指腸のECセルやDセルという細胞で個人間の胃・十二指腸潰瘍の感受性を決める遺伝子が発現しているということが分かりました。胃酸を出す壁細胞とか、あるいはガストリンを出すG細胞といった直接的なものではなくて、それより上流の、それらを制御するD細胞やEC細胞、こういった内分泌的な胃酸の制御機構における違いが胃・十二指腸潰瘍の起こりやすさの個人差に関係しているということが、大きなバイオバンクなどのデータを使って分かる可能性があるのではないかと考えております。
それで、現在はゲノドラの支援をいただいてBRAIN-HEDGEという研究をさせていただいているということなんですけれども、こちらのポイントは、左に示させていただいているように、九州大学の久山町研究、京都大学のながはま0次予防コホート、東北メディカル・メガバンク、ナショナルセンターバンクの国立循環器病医療センターバイオバンク、さらに、バイオバンク・ジャパンの先生方の御協力をいただいて、これらのゲノムデータとMRIの画像を統合すると2万例のMRI画像とゲノムデータの解析ができるというところです。こういった御協力をいただくことで、脳血管障害への影響といったところの解析をしていくという計画をさせていただいています。
この研究、時間もあれなので簡単に説明させていただきたいですけれども、脳卒中を対象としてやっていますが、それに当たって、MRAを2万例解析するということです。こういった超々大量のデータを解析していくという方向性に当たっては新たな手法の開発が必要で、脳血管、血流解析の専門家の先生方に、そういった高速アルゴリズムを開発していただく。それをするとGWASができて、それをすると、先ほどの潰瘍もそうですけれども、メカニズムの推論ができて、また、いろいろな発症スコアの解析ができる。さらに、共同研究者の方々の御協力で、創薬ターゲットですとか、空間トランスクリプトーム解析ができる。そういったことが提案できる。こういった提案ができるのも、国内で様々な先生方がバイオバンクを既に整備していただいているという状況にあって、そのデータを使わせていただくことができるという状況でこういった研究計画を提案できるということだと考えられます。
全体として今日の話はそんなに面白い話はないと思っているんですけれども、1個だけ夢を語らせていただくなら、20世紀というのは分子生物学が発展した時代で、DNAや、そこから先の分子生物が解明されて、21世紀になって、情報学、遺伝学、統計学などが統合されて、生物学と情報学が統合されたゲノムワイド解析、もしくはシングルセルなども高度な解析が進んでいます。こちらの道はもちろんこれからどんどん進んでいくと思うんですが、さらにその先に何があるだろうかと考えたときに、物理学が統合されるんじゃないだろうかと何となく思っているところでして、今回のゲノドラの計画、そこに至る提案としてはそんなに大きなものではないですけれども、私の頭としては、分子生物学と遺伝学と統計学が流体力学と統合することによって、何か新しい、生物学、次世代へのつながりにならないかというような目的意識を持っております。皆さんもよく御存じとは思うんですけれども、そんなことはシュレーディンガーさんが100年も前に言っておりましたが、こういう方向性は面白いんじゃないかなと考えております。
今後の方向性について。ここまで様々な先生方との共同研究を発表させていただきましたけれども、これは、それらの先生方とは関係なくて、完全に私個人の意見でして、責任も私が負うものであります。
まず、データ解析の標準的なものはほとんどアメリカから出ているという状況に関して、日本から何とかできないかというところですけれども、遺伝統計学は学閥的なところが非常に強くて、誰々先生のところの誰々研究者というのがどうしても強いです。ですので、これに関しては恐らく、日本から向こうに行って学んできてくれる研究者を増やす。あるいは、向こうに行って育った研究者に帰ってきてもらう。そういった帰ってきてもらう先生方に魅力的なポストが用意されているということが必要ではないかと思います。あるいは、日本でも岡田先生のところみたいにすごい研究室がありますので、そういったところにもっと情報系の先生が訓練を受けに行くといったことも、それを支援していく、それを進めていくという方向性が必要かと思っています。そうは言っても、生物情報科学の人材が少ない。増やしていくといいなということ。
あるいは、プログラムをつくるということを考えると、創造的な、クリエーティブな研究だけではなくて、エンジニアリング要素がありますので、そういったエンジニア人材を研究室に補助するといったところも、より一層考える必要があるのではないかということです。
最後に、ここが最も主張したいところですけれども、こういった枠組みを進めるに当たり、そういった情報系の研究者を育てるためには、大事なデータを、今よりももっと自由に、もっと障壁が低く利活用できる環境が存在する必要があると考えています。UK Biobankなどは使いやすいインターフェースでそれを実現しており、そういった模範を取るところですとか、あるいは、品質管理した生体データを準備しておいて、それを情報系の人に活用していただく。また、利活用対応ですね。利活用の対応のところでいろいろと問題が、日本では解決できていないところがございまして、ここをできるだけシステム的に、AIなども活用して客観的に、様々な先生方が早く使えるということ。この先生と仲がいいから早く使えるという、実は私はそんなメリットを受けがちなところなんですけれども、そういったことではなくて、もっとシステム的に対応したほうがいいのではないかということ。これらの対応をするということは大変なことである上に、こういった対応は論文にそのまま直結するものではございませんけれども、こういったバイオバンク整備に対応される先生方をもっとリスペクトできていけばいいなというふうに考えています。
単純に、何ができるか。バイオバンク・ジャパンと東北メディカル・メガバンク、1か所でいいんじゃないかと思っています。これは私が発言に責任を全部負うという意味ですけれども、バイオバンク・ジャパンと東北メディカル・メガバンクが1か所にあって、ある研究者が使いたいといったら、その1か所で使える。そういった利活用の障壁の低さがあると、もっと進むところがあるのではないかと考えています。
【中釜主査】 すみません。残りは、あと3分ほどでお願いしたいと思います。
【鎌谷教授】 すみません。急ぎます。
新しい実験技術ですね。海外の標準の技術による計測で、全ゲノムシークエンス、プロテオーム、シングルセルなど、ほぼバイオバンクが進んでいます。これは重要だということをお伝えしたいと思います。というのは、それに対応して解析するのは、各国固有の遺伝因子・環境因子ですので、日本で行うということから、新たな生物学的な知はもっと出てきます。ただ、その上で新たな技術をつくることができないかなと。例えば、現在、世界中で使われている技術も、Nightingale社はフィンランド、Olink社はスウェーデンの会社でして、こういった世界中で使われる技術を日本発でできないかというふうに思っています。
新技術にはどういうものがあり得るか? やっぱり、iPSなんじゃないかなと思うわけです。日本が頑張るということで言えば、iPSをバイオバンクともっと結びつけていく、もっと支援していく、もっとバイオバンクから、iPS細胞、オルガノイドを作っていくということ、これは日本のプライドとして進めていく分野ではないかと思います。それ以外にもいろいろと、日本からできることはあるような気がしています。ここは飛ばしますが、最後の環境DNAを計測するとかは、ちょっと面白いのかなとは思っております。
それから、社会実装としてですけれども、がんと難病は、全ゲノム等実行計画が既に始まっている、解析実行計画が進められているところで、GWASを基にするPRSをどうするかというところですが、これも世界の状況を見てみますと、例えば、層別化がんスクリーニングの予防効果を評価する臨床試験というのは既に複数実施されています。あるいは、そういったPRSの効果を実証する。こういったようにPRSというのはできているわけですけれども、これは、本当に価値があるものか、社会にとって価値があるものか、そういったことを検証する介入研究を進めていく必要があるというふうに思っています。現在、それをやるためにどうすればいいのかというのが分からないという状況があるのかなと思いますので、これをみんなで議論していく。どういうふうにしていけばいいだろうかということを議論する。その目標も決めなければいけないです。私個人的には、医療経済的コスト削減という方向だと思っているということです。また、介入試験を行うということで、この主体はどこになるか。恐らく、学会なのかなと。各学会がこういった方向性で進めるというプロジェクトをつくっていっていただくということが重要なのかなと思っているところになります。
まとめますと、一番言いたいところは、もっと障壁の低いバイオバンクデータへのアクセスというところになります。さらに、国際標準的な計測を十分備えた上で、新技術の創出を支援する。最後に、PRSについては臨床介入試験を行うようにしたほうがいいと、個人的には考えますというところになります。
長くなくなりまして、すみませんでした。
【中釜主査】 ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明内容について、御意見、御質問がありましたら、お願いいたします。挙手ボタンを上げていただけると。
私から、二、三、よろしいですかね。先生、最初のデータでUK Biobank等の説明がありましたが、例えば、UK Biobankに付随する臨床情報や健康情報の充実度というのは実際どの程度なのか、その点における日本のバイオバンク事業の優位性というのはあるのかどうか、いかがですかね。
【鎌谷教授】 御質問、ありがとうございます。そんなに詳しくはないところですけれども、UK Biobankは臨床情報についてはちょっと甘いと言われているところはあると、認識しております。ただ、それと併せて、現在、UK BiobankでGPなどの医療情報の統合というのを進めているというふうに伺っています。なかなかイングランドが同意してくれないとか言っていましたけれども、そういった情報で、今ある医療情報で十分だとは考えていなくて、もっと精密な情報、もっとしっかりとした情報を集めていくということは、今後の方向性に含まれると思います。
【中釜主査】 なるほど。2点目は、最後のPRSの社会実装の件に関して、全てのPRSをどういうふうに優先順位をつけるかということで、先生は今、医療経済的な視点が一つとおっしゃっていて、具体的な手法として、医療経済を結びつけるというのは、技術的になかなか難しいことは分かるのですが、どういう技術が可能で、その中でPRSの優先順位というのは決められ得るものなのか、その辺はどのようにお考えですか。
【鎌谷教授】 ありがとうございます。医療経済の先生方に質問したことをお伝えするしか私にはないんですけれども、医療経済、基本的な手法はシミュレーションということで、シミュレーションによるPRSの研究というのは既に出ていますが、そういったことを日本でもできたら。あと、先生が言った、リアルワールドデータをもっと活用すべきだというふうにおっしゃっていました。
【中釜主査】 なるほど。最後に、人材に関して、先生は、どういうプラットフォームがあると人材育成がより効率的に進むとお考えですか。
【鎌谷教授】 情報の先生方に参加していただいて、情報の先生方は恐らく、論文を書けるとか、これをやることで自分の今後のキャリアが描けるということがあって自分の身を投じるというところになると思うんです。そのときに必要なのは、本当に魅力的なデータ、これをやることで新しい知見が出るというふうなことが必要だと思っていまして、現状、バイオバンク・ジャパンも、東北メディカル・メガバンクも、ナショセンも、がん、難病のデータも、それぞれ非常に魅力的なデータが日本でどんどん出てきていますけれども、やはり解析系の。私から、単純に、本当にシンプルに、何も考えずに言いますと、全部一緒だったら何て魅力的なんだろうと。恐らく、そこに人を惹けるんじゃないかというふうに感じるところになります。
【中釜主査】 分かりました。できれば、拠点化というのも重要ですけど、そういうことを例えばプラットフォームで情報共有できるような仕組みがあると、バーチャルでもそれは成立するかもしれないという可能性については。
【鎌谷教授】 もちろん、バーチャルで成立するかと思います。
【中釜主査】 ありがとうございます。
ほかに、御質問ございますか。
川﨑委員、お願いいたします。
【川﨑委員】 川﨑でございます。非常に分かりやすい御発表、ありがとうございました。私から、2点、質問させていただきます。
バイオバンクのデータを使って御研究を展開されているという具体例、非常によく分かりました。とはいえ、現在もバイオバンクにまだ障壁があって、障壁の少ないバイオバンクの利活用をもっとシステム的にというコメントがございました。バイオバンクの利活用を進めるために荻島先生をはじめとした大きなプロジェクトでいろんな取組がされているところではあるんですけれども、先生が障壁をもっと少なくすべきとおっしゃっている、そこのポイントについて、少し詳しく教えていただきたいなというのが1点目です。
2点目は、先生のご研究への直接的な質問ではないんですが、今後の展開として、環境DNAについても、データベース化してリンクさせるというお話がございました。その意図や展開についてお聞かせいただけたらと思います。
2点です。ありがとうございます。
【鎌谷教授】 ありがとうございます。私、荻島先生ともとても仲がいいのですけれども、その前提で、ちょっと使いづらいといいますか、そこからアプローチするのが難しいというふうに感じているのは確かです。今回、このコホートのお願いも、結局、個人的に全てお願いして、個人的に許可をいただいたということで、やらせていただいています。
各コホート、データの使い方やポリシーもそれぞれ違いまして、それぞれのポリシーを尊重して使わせていただいている状況です。もちろん、それは大事なことだと思っているんですけれども、この努力に結構なエフォートを使っているところもございますが、そこが準備されている状況で情報解析の先生が使えるというのがあると、恐らく進むといいますか、恐らく情報生命系の専門の先生方は、ここを何とかする努力は取りたくないのではないかなと。データが使える状態であるということにおいて、非常に多くの情報系の先生方の参加が進むのではないかなというところになります。私個人としては、こういう計画を組めましたと言えるという意味ではありますけれども、そんなことがあまり売りになってほしくないと。そういったデータが使える状態にあるといいかなというふうに思っております。
【川﨑委員】 分かりました。
2点目の質問は、環境DNAについてです。ヒトのDNA、ホールゲノム、プロテオーム、それらに加えて、最後に環境DNA計測について。
【鎌谷教授】 日本のバイオバンクの新技術、このスライド、最初はなかったスライドでして、文科省の方から具体的にもうちょっと書いてくださいと言われまして、iPSかなと思ったということです。iPS、オルガノイドかなと思ったので武部先生に少しこの辺りの御相談をしたら、お話ししていて、いろいろほかも出てきたところをここに書きました。環境DNAも計測できるようになっているということです。いろいろ、水とか、空気とか、海とかから、ゲノムをシークエンスができると。とにかく、どのような生物学の研究においても、シークエンスは確実なデータという強みがあって、そこから環境因子とゲノム因子との統合というのが分かるのではないかと。特に、環境DNA計測は新しい技術ですので、これまで分からなかったことが分かってくる。それを、バイオバンクとして、新しい方向性としてやるという提案になります。これは、こうやったらうまくいくと言っているわけではございません。こういった新しい、ちょっとクリエーティビティーを働かせたようなものをバイオバンクレベルでやっていけるといいなという提案になります。
【川﨑委員】 ありがとうございました。
【中釜主査】 よろしいでしょうか。
事務局から手が挙がっていますか。
【釜井ライフサイエンス課長】 中釜先生、ありがとうございます。ライフサイエンス課長の釜井でございます。1点だけなんですけども、鎌谷先生から御指摘ありました、分野融合、それから、生物学、情報学、物理学・統計力学と重ね合わせなんですが、昨年、宮園主査の下で取りまとめた、ライフサイエンス委員会の報告書のほうにこの辺りはしっかりまとめておりまして、鎌谷先生も委員でございますので、発表のほうをいただきまして、ありがとうございました。
こういう新技術を組み合わせるとか、分野融合的な視点でやっていくということはまさに潮流だと思いますので、ぜひ、ライフサイエンス政策全般としても、今期のライフサイエンス委員会のほうでしっかり検討のほうを深化していければと思います。
事務局からは、以上でございます。
【中釜主査】 ありがとうございました。
寺尾委員、お願いいたします。
【寺尾委員】 委員の寺尾でございます。鎌谷先生、非常に示唆に富んだ御発表、ありがとうございます。
質問ではなくて、少しコメントということになるんですが、数点、共有させていただきます。
まず、人材についてなんですけれども、御存じのように製薬産業界においてもこの分野の重要性が非常に高まっている中で、人材不足、特に、生物情報系、化学、エンジニアリング、そういったところの人材の育成と確保ということが非常に課題になっております。本日、先生にお示しいただいた方向性というのは非常に納得がいくものでして、こういったループ、育成のフィールドの中からおのずと産業界との接点と交流点というのも生まれてくるのではないかということを非常に期待しておりますし、また、協力できる分野があれば、ぜひ協力させていただきたいというふうに、改めて思いました。
2点目です。PRSについてなんですけれども、非常にクリアな形で問題提起していただいて、非常に私も考えるところがございました。ここに出てくるプレーヤーというところに関しましては、先生の御発表の中では、あえてということだと思うんですが、製薬産業というところには触れられていなかったかと思います。ただし、PRSについての研究というのは、本質的な病態解明につながる、そこから創薬へのフローが生まれるという点においては、我々がやっている創薬研究とも地続きになっているかと思っておりますので、こちらについても注目を続けたいと思っております。本当にPRSの概念がインプリされた際には、必要な医薬品の価値というところもより適切に評価されるというふうに考えておりますので、我々にとっても、当然、ウィン・ウィンな状況になるというふうに思っております。議論は学会中心に始められるのが最適だとは思うんですが、ぜひ、今後も議論に巻き込んでいただきたいというふうに思っております。
以上になります。
【中釜主査】 ありがとうございます。
続きまして、二宮委員、お願いできますか。
【二宮委員】 九州大学の二宮です。鎌谷先生、いつも大変お世話になっております。
先生のお考えには賛同させていただいてはいるんですけど、一方で、データベースを統合するというときに、データベースの維持費というのを海外ではどうされているのでしょうか。オリジナリティーがないと競争的資金は取れないということになりますが、各コホートがデータを全てオープンにすると、オリジナリティーがなくなり、データベースを維持するための資金を獲得できないというジレンマにいつも陥ってしまいます。この点について、海外のバイオバンクではどうされているのでしょうか。
それと、人材育成を行っても、ポジションがなければ、人材活用が進まないというジレンマが大学等ではあるんですが、この辺はどんのようにお考えでしょうか。
【鎌谷教授】 ありがとうございます。ちょっとこれはエピソード的な話になりますが、多分、1年か2年前、最近の話ですけど、アメリカでも、ゲノムデータは各コホートにあって、プライバシーの法律、日本とはちょっと違うと思いますが、アメリカでもプライバシーの法律による利活用の障壁というのはもちろんあるという状況で伺っています。ですので、これは海外だと解決されているという話ではないと思っています。海外のポイントは、UK Biobankみたいにいきなりでかいのがどかんとあるというところの違いですので、日本としての日本なりの解決策を探していかなければならないということだと感じて……。
【二宮委員】 費用はどうされているんでしょうか。国が出している? 全面的に国が出すという感じですか。
【鎌谷教授】 どれの話でしょうか。
【二宮委員】 UK Biobankや海外では。例えば日本だと、競争的資金を取ってこないと維持できません。そこではオリジナリティーが必要なので、なかなかオープンにしずらいという問題は結構大きいと思いますが。
【鎌谷教授】 これまたエピソードの話になりますが、昨年4月にUK Biobankのシンポジウムをお手伝いさせていただいた縁で、実は私もそこは疑問に思ってRory Collins先生に伺ったんですけれども、Welcome Trustの全面的な支援だということです。つまり、国ではなくて、寄附金ベースで、Welcome Trustが最初から、これは全員に公開するバイオバンクなんだということで、それができるCEOを選んだという状況だそうです。そこから考えますと、この方向性に進むために何が必要かというと、やはり、国レベルですとか、そういった大きな、高いレベルでの判断があり、それに従って私たちが動いていると、私たちも資金的援助が得られるといったことが必要であると考えていまして、先生がおっしゃるように、出してしまったらどうなるんだろうという不安がある状態では当然出せないというところがどうしてもありますので、高レベルでの判断が必要なのかもしれないなと感じております。
【二宮委員】 ありがとうございます。
【中釜主査】 ほかに、御意見ありますか。
最後に、私から1点だけ。最後のPRSに関して、その臨床的な妥当性に関してはシミュレーションレベルで優先順位を決めると思うのですが、健康・医療的な戦略をする場合には臨床的妥当性をそれなりの規模感の臨床試験で行うということが求められます。それを全て公的資金で行うのはなかなか難しいと思うのですが、今日御参加の委員の先生方で、日本としては、どういうステークホルダーを巻き込んだ、PRSの有効性、臨床的な有用性の検証というところを健康・医療戦略として進めていく際に、可能性があるのかどうか。なかなかそこは日本の現状ではハードルがあるというところだと思いますが、委員の先生方、いろんな立場の方から、もし御意見あればいただきたいと思います。
よろしいですかね。なかなか難しい質問だと思うのですけど。
【鎌谷教授】 一つだけ。先ほどお話いただいて、私もきちんと話ができてなかったと思いました。アメリカで言うと、FOURIER研究はたしか製薬企業さんの応援だったと思いますけど、あれがさらにゲノムを取っていて、そのゲノムデータの2次解析のような形でPRSの効果なども見ていたりしましたので、製薬企業さんの参加というのはいいと思っています。
もう一つ重要なのは、この目的でPRSでゲノムデータを取得したら、そのデータをさらにゲノム解析に使う。サイクルとなる利活用していけるという方向性で、長期的な目で見ての援助というのも考えていただければと思っています。
【中釜主査】 そうですね。そういった意味でのエコシステムを組めるかどうかは、非常に大事な感じがしますね。
桃沢先生、お願いいたします。
【桃沢委員】 桃沢です。お世話になっております。分かりやすく、ありがとうございます。今の話で、誰がPRSの社会実装をリードするかは、それまでの研究の延長でゲノムの研究者がそのままという感じがありますが、本来はそうではないのではと思っております。計算の式を立てて、各個人の数値に変換するところは、確かにゲノムの研究者が関わるところです。しかし、数値になった後は、ゲノムの研究者はあまり貢献できないと思いますが、どういった方が海外ではリードされているのでしょうか。
【鎌谷教授】 海外はちょっと分からないので、海外は置いておいて、それに関しては恐らく先生の懸念を共有していると考えておりまして、先ほどの製薬企業さんを十分入れてお話できなかったところとも関連しますが、医療経済学をされている先生方、そして、ガイドラインを整備する学会、そういったところが恐らくこの研究の主導部分の先生方になるのではないかと。つまり、この目的は、患者さんの診療のため、患者さんの診療を向上するためという方向での研究をデザインする方々が進めていくべきではないか。あるいは、医療経済、国の経済負荷などをどうするかという観点の先生方が主導する分野になるのだろうというふうに感じております。
海外はどうなんでしょうかね。がん予防のところは臨床試験が結構進んでいるので、こういった臨床試験できませんかって何人かの先生方に伺うと、そこは私ではないみたいなことも言われていまして、日本で誰がやるのだろうというのは、私も確かに分からないなと思いました。
【桃沢委員】 PRSを使う方向性として、リスクが高く治療を優先する方を見つけるという方向だけではなくて、リスクが低い方のサーベイランスを減らす、この人たちは一定年齢までリスクが低いから遅く始めてもいいとか、そういった逆の方向性でもやられている感じですよね。
【鎌谷教授】 そうでしたね。WISDOM、今年だったと思いますけれども、受診勧奨を遅らせるということも言っていましたが、日本の文化でそれが受け入れられるかはちょっと分からないなとも感じます。
【桃沢委員】 その通りに思います。ありがとうございます。
【中釜主査】 ありがとうございます。
よろしいでしょうか。想定時間より少し長く議論いただきましたが、本当に有意義な議論ができたと思います。
では、続きまして、議題の2番目に移りたいと思います。議題2は、次世代医療実現のための基盤形成の今後の方向性についての審議となります。文部科学省、小野調整監から御説明をお願いしたいと思います。その上で、併せて質疑としたいと思います。
では、小野調整官、お願いいたします。
【小野ゲノム研究企画調整官】 ありがとうございます。それでは、資料2―2を御覧いただければと思います。次世代医療実現のための基盤形成の今後の方向性についてまとめた、報告書案について御説明をいたします。第3回の作業部会以降、個別に委員の皆様の御意見を伺ってまいりまして、本日お示しする資料2―1及び2―2は、いただいた御意見を反映させたものになっております。
それでは、御説明をさしあげたいと思います。3ページを御覧ください。
まず、1ポツ、「はじめに」ですけれども、冒頭では海外の状況を記載しております。一つ目のパラは、世界各国でゲノム情報を扱う大規模なバイオバンクの構築が進んでおります。具体例を記載しております。
二つ目のパラでは、欧米のみならず、アジアにおいても、シンガポールや台湾などの台頭があるというふうに記載をしております。
三つ目のパラでは、ゲノム情報を利用した創薬研究ということで、上市事例が登場し始めていること。また、特にバイオバンクの利活用という意味で、UK Biobankで発見された治療標的に対する研究がかなり進んでいるというような状況かと思っております。
「更に」のパラですけれども、バイオバンクでデータの蓄積が進んでいたりですとか、新しい解析技術、AIなどの情報解析技術の進展も背景にして、ゲノム情報にとどまらない、様々なデータを活用した研究というのが加速している状況かと思っております。
その下のパラですけれども、国際的な潮流として、世界医師会のヘルシンキ宣言の改訂のことを記載させていただいております。かなり大きなポイントとして、今まで、被験者(subject)というふうに呼ばれていた方たちがparticipantに変更されたというところが非常に大きな変更点というふうに認識しておりまして、今まで、ゲノム,このかいわいの研究というのは当然ながら参加される方々が非常に重要な役割を果たしていただくわけですけれども、そういう方たちが、保護されるだけということではなくて、能動的に研究に参加されて、また、成果も受け取られる方々であるということが、改めて議論されているというような状況かと思っております。
その下は、日本の状況を記載しております。政府全体の取組としては、「健康・医療戦略」のような、いろいろな国家戦略では、当然ながら、重要であるというような記載がございますし、また、令和5年に「ゲノム医療推進法」が成立いたしまして、政府全体としてこの分野の取組を推進するということになっているところです。
そのような中で、次のパラ、「文部科学省文科省においても」のところに我々の取組を記載しておりますけれども、東日本大震災を契機として開始した東北メディカル・メガバンクやバイオバンク・ジャパンをはじめとするバイオバンクを整備して、全国の皆様に使っていただいていると。その基盤としての役割を果たすとともに、データを用いた様々な研究開発が進められてきております。これらのものは令和3年度に「ゲノム医療実現バイオバンク利活用プログラム(B-cure)」として進められておりますけれども、今回、この検討会議では、このB-cure全体として、今後の5年間の方向性について議論をしていただいているものというふうになっております。
次、5ページからは、これまでの取組を記載させていただいております。改めて御説明をさしあげるものではないんですけれども、BBJ、ToMMo、ともに大規模なバイオバンクの構築が進んでおりますし、利活用も飛躍的に伸びている状況というふうに思っております。
2ページ飛んでいただいて、7ページの二つ目のパラ、「加えて」のところですけれども、バイオバンクなどのデータを使った研究というのも非常にいろいろな成果が出ておりまして、今、こちらの報告書には東大の小室先生と山内先生の成果を事例として書かせていただいておりますが、アジア人の特性を踏まえた重症化マーカーの同定と、それの治療への反映といった成果がどんどん出ているようなところというふうに認識しております。
そのような中、7ページの下ですけども、3ポツに課題を記載させていただいております。バイオバンクにとっての課題というのは、海外で大規模化が進んでいる中で日本はどのように強みを生かしていくのかというところが、イの一番に来るというふうに思っております。また、二つ目のポツですけれども、利用される方が多様化しているということもあろうかと思います。先ほど鎌谷先生からのお話でも、情報系の方、また、物理系の方との融合が重要というようなお話ありましたが、どんどん、今までのゲノム医療の専門家以外の方々にも使っていただくということがあろうかと思います。
8ページ、バイオバンクの試料・情報を活用した研究という意味での課題は、やはり創薬などの医療実装へどういうふうにつなげていくかということ。また、これも、今、鎌谷先生からの御説明にもございましたけれども、解析機器やいろいろな技術は多くを海外に頼っている状況であって、国際競争が激しい中で日本がどうリードしていくかということが、非常に大きな課題というふうに認識しております。
これらを踏まえて、4ポツ、今後の方向性についての提言です。全体像をまず記載しておりますけれども、世界が大規模化する中で、日本が限られた資源の中でプレゼンスを発揮していくためには、やはり日本の強みを生かしていく。それは多層かつ高品質なバイオバンクのネットワークを維持・発展させることが必要であるというふうに記載しております。同時に、バイオバンクなどのデータを使った研究、ゲノムのみならず、オミックス、画像、臨床情報といった、複合的なデータの研究を加速させる。
あと、ここで少し加筆させていただいているんですけれども、バイオバンクのデータを利用した研究の成果を、検証としてコホートやバイオバンクに戻す。それをまた利用することで、研究をさらに進化させて、医療実装を推進する。こちらは、実は中釜先生にコメントをいただいたところですけれども、そういった記載を入れております。
併せて、こういったものが、国際共同研究への参加ですとか、国際ガイドラインの策定に対する貢献、そういったことを通じて、革新的な成果を出すというのももちろんですけれども、国際的なプレゼンスを高めていくことが重要であるというふうな記載をしております。
9ページからは、少しだけ具体の記載をしております。バイオバンクの在り方、イの一番に来るのは、やはり利活用促進というふうに考えております。国内、たくさんのバイオバンクがありますけれども、それらの連携をより一層強化して、一つの大きなバイオバンクかのように運用できるようにするというところを記載させていただいております。具体的には、試料・情報を一元的に申請・利用できる枠組みですとか、いろいろな情報の標準化、解析方法の統一化も含めですけれども、そういったところというのは進めていくべきであろうというふうに記載をしております。また、繰り返しになりますけれども、利用者の方がどんどん増え、多様化しています。医学系の方のみならず、ほかの分野の研究者の方々はもちろん、また、企業という意味でも、製薬企業の方はもちろんですが、それだけではなくて、ベンチャーやスタートアップの方たちにも使っていただきやすいように、例えば、モデルケースの共有ですとか、コンサルテーション機能の充実といったことも必要であろうというふうに記載をしております。
その下、コホート調査ですけれども、我が国が独自性を有する、特色あるコホート調査を継続していくことが重要であると。委員の方々から御意見もいただいておりますが、経年的にきちんと情報を押さえていくということが非常に重要であるというコメントをいただいていて、そこの記載をしております。その下、「加えて」ですけれども、研究参加者へのリコンタクトを可能とするようなコホートというのも検討すべきであろうというふうに記載をしております。
10ページ、「特に」からですけれども、疾患コホートであるBBJのところを少し記載させていただいております。BBJは、多数の疾患の情報をお持ちですけれども、一つの疾患だけではなくて、ライフコースを俯瞰したときに、様々な病気に人間は当然なるわけですが、そういったところ疾患横断的に経時的に追っていく、そういう解析ができるようにするコホート基盤の整備・充実が重要であるというような記載をしております。
その下、試料・情報の整備ですけれども、ニーズに応じた情報の充実が必要であるというふうに記載をしております。その下、特に、質の高い臨床情報をひもづけていくことが重要であると。部会の中で東北大学の山本先生からのプレゼンもございましたけれども、TMM計画において精緻な臨床情報の付加・充実を検討すべきであるといった記載を入れております。また、そういった情報を付加するときに、AIや機械学習といったものの活用も考慮すべきであるというふうな記載をしております。
その下、その他ですけれども、バイオバンクの利用者が多様化して、もちろん参加者の方というのも増えているような状態では、ELSIの課題について十分に配慮しつつ、円滑に研究が実施できる体制を整備することが求められるという記載をしております。
次、11ページ、遺伝情報等回付の話ですとか、人材育成の話も、もちろん非常に重要なことだと思っておりますので、記載をしております。
11ページの下のほう、国際連携のところですけれども、こちらは少し両論併記のような形をさせていただいております。海外へのシェアリングについては、日本が国際的なプレゼンスを発揮する、また、成果を出す、それが結果的に国益に資するという観点では、積極的に行うべきという意見もある一方で、海外のバイオバンクで必ずしもオープンにしていないところもあるということからすると、慎重に検討すべきという意見もあるというふうに、両方を記載しております。そんな中では、現行の法令や指針を守るというのはもちろんですけれども、研究の目的や範囲、また、意義といったことを個々の研究の計画ごとに判断すべきであるというふうな記載をしております。とはいえ、国際共同研究ですとか将来的なシェアリングを想定したときには、バイオバンクの試料・情報は国際標準に沿って整備される必要がある。国際的なコンソーシアム、幾つもありますけれども、そういったところに積極的に関与することが必要であるというような記載をしております。また、制度的な課題の抽出・検討は当然ながら必要であるというふうに記載をしております。
最後、バイオバンクの研究の在り方ですけれども、医療実装に向けては、ゲノムと疾患の関係の間の詳細なメカニズム解明が重要であると。それを解明するためには、ゲノムのみならず、ゲノム、オミックス、画像、臨床情報といった、様々なデータを使った研究を加速していくことが必要であると記載をしております。また、二つ下のパラですけれども、「加えて」のところで、日本がこの分野で優位性を得るためには、日本発の革新的な試料や情報の解析技術に関する研究開発を進めていくことが重要であるというような記載をしております。
5ポツ、「終わりに」ですが、二つ目のパラ、改めてまとめてですけれども、日本の強みを生かしたバイオバンク・ネットワークが、コホートの基盤も含め、より一層、充実・発展させる。多様なユーザーとの協働、これも実は中釜先生からコメントをいただいたところなんですけれども、ユーザーが利用するだけではなくて、一緒に、フィードバックも含め、協働と利活用の推進によって日本発のイノベーションが創出され、それが医療の成果につながっていく、そういったところを期待するというような文章にさせていただいております。
事務局からの説明は、以上でございます。
【中釜主査】 丁寧な説明、ありがとうございました。
それでは、質疑に入りたいと思います。ただいまの説明に関して、御意見、御質問がありましたら、挙手をお願いいたします。
最初に私から質問です。12ページにGA4GHに関する記述がありましたけど、これまで具体的には、どういう参画のされ方をされていたのでしょうか。参加したメンバーは、ある程度は知っていますが、どういうふうに把握されているか、その点を簡単に説明していただけますか。
【小野ゲノム研究企画調整官】 これ、実は小崎先生にコメントをいただきました。小崎先生をはじめとして、研究者の方々が個別に参加されている状況というふうに認識をしております。我々の問題意識としては、研究者の先生方が御参加いただくというのももちろんなんですけれども、バイオバンクの国際的なプレゼンスとか、そういったことを考えると、研究者個人の方が参加していただくだけではなくて、もう少し組織として、それは、国なのか、AMEDなのか、バイオバンクの方なのかというのもあるんですが、そういった関わり方というのもあるのではないかなというふうに考えております。
【中釜主査】 承知しました。組織として関わって、それを広く日本中の研究者に共有するというような仕組みということですかね。
【小野ゲノム研究企画調整官】 はい。
【中釜主査】 理解いたしました。
この今後の方向性に関する取りまとめですが、ほかに、委員の先生方から、御質問、御意見はございますか。
まず、横野委員、お願いいたします。
【横野委員】 取りまとめ、ありがとうございます。内容に関しては、基本的に賛同いたします。
ちょっとコメントなんですけれども、患者・市民参画等について盛り込んでいただいて、ありがとうございます。私、これは非常に重要だというふうに考えておりまして、社会的にそれが求められているということもあるんですが、特にゲノムデータの取扱い等については、ともすれば、非常にセンシティブなデータであるということが強調されたりですとか、あるいは個人情報保護法上も個人識別情報というふうな位置づけになっていることもあって、研究者や医療者の立場から見れば、必要以上にという言い方が適切かどうかは分からないんですけれども、取扱いに不安があり、慎重になりがちというところがあったりするのかなというふうに思っております。そういったことの積み重ねの結果、患者・市民に対して研究についての十分な情報提供や意見交換の機会というものはこれまでかなり限られてきたというふうに思っております。また、こういったテーマですと、非常に強い反対とか、感情的な反発というものが出てくるんじゃないかというふうな不安もあったりして、そういったことでさらに慎重な立場を取りやすいというところがあって、結果的に議論の深まりということにつながってこなかったんじゃないかなというふうに思っております。PPI等を通じて、漠然とした抽象的な不安ではなくて、患者・市民が研究に対してどの部分に期待であるとか不安を持っているのかということをより具体的な形で把握していくということが必要かなというふうに思っております。そうすることによって、そういった論争に対する不安や恐怖ということから必要以上に慎重になることを避けて、建設的な意見交換とか、研究に関する前向きな情報提供ということを行っていくきっかけになるというふうに思いますし、そういったことの積み重ねによって研究の透明性や信頼性の確保といったところにもつながっていくというふうに思いますので、先ほど、より障壁の低いバイオバンクのデータへのアクセスが必要であるというふうな、鎌谷先生からの御意見もありましたけれども、そうした環境を整える上でも重要な取組だというふうに考えております。コメントです。
【中釜主査】 ありがとうございます。
私から横野委員に御質問なんですけど、3ページの記載で、participant(参加者)、この変更は非常に重要だと思います。一方で、私の理解不足もありますし、コンテクストが違うかもしれませんけど、研究対象者というような使い方をするケースがあるように思います。この場合にはparticipantが適切だと思うのですが、どういう場合に研究対象者という表現を使うのか、もし何か御意見ありましたら、教えていただければと思います。
【横野委員】 厳格な基準があるわけではないと思うんですけれども、日本の倫理指針等では、倫理指針上の文言として、これまで研究対象者という表現が用いられてきました。
【中釜主査】 分かりました。特に使い分けをしているわけではないということですか。
【横野委員】 participantという表現を使うケースが国際的には増えきていると思います。
【中釜主査】 分かりました。ありがとうございます。
それでは、寺尾委員、お願いいたします。
【寺尾委員】 ありがとうございます。我々のコメントも非常によく取り込んでいただき、グレードの高い報告書の案を御準備いただいたかなと思っております。
1点、本日の鎌谷先生の御発表等も併せて、少しコメントだけさせていただきたい部分というのがございます。
計測・解析技術の国産化・標準化みたいなところを今回の報告書でも触れられていると思うんですが、これは言わずもがなになるんですけれども、特に国際的な標準化ということになりますと、文科省単独でのリードというところでは難しいところが多々あるのではないかと思っております。具体的には、経済産業省の専門家がいますので、本当に実質的な省庁横断的な連携が必須だというふうに考えておりますし、これまで「健康・医療戦略」等に関わりが少なかった部局の関与というところも、もう少し参入というところも欠かせないのかなというふうに思っております。
加えて、ここでの市場というところは、既存のプレーヤーだけではなくなってくるということも予想されますので、実用化段階でそこに参入して、ここはいい市場になると思って目をつけて参入してくる企業というのも少なくないと思いますので、あらかじめの市場形成というところも必要なのではないかというふうに思っております。
少し抽象的ですので、切り口は異なるんですけれども、過去の私が存じ上げている例ということで申しますと、iPS細胞の発見に伴って再生医療等製品の日本からの創出というところが非常に盛り上がった十数年前のことなんですが、当時、御存じのように、薬機法の改正に合わせて、経産省による、例えば、大量培養や品質管理等の関連分野の製品化、国産技術、国際化、デファクト化というところに向けた、大きなうねり、活動というのが主導されたと思います。そちらについての結果が出ているかどうかという議論は別の議論になるかと思うんですが、実際にそういった各省庁横断的な一体的な支援というのが、ここを実装・実現していく上での非常に大きな成功要因になるかと思っておりますので、ぜひ、今後、AMEDの研究開発課題に落とし込むという対応だけではなくて、それを超えた横断的なイノベーション政策の立案と実行というところを強くお願いしたいというふうに思っております。
以上です。
【中釜主査】 ありがとうございました。
よろしいでしょうか。
続きまして、斉藤委員、お願いいたします。
【斉藤委員】 おまとめいただきまして、ありがとうございます。
ゲノムデータの社会実装で(聴取不能)を埋めるのは医療実装というところで、そういった基盤をつくるために、研究者のソサエティーを少し超えて、まずは、アドミニストレーションというか、本当にされる方、エンジニアの方なども巻き込みつつ、それから、個人情報を取り扱う、あるいは倫理問題を扱うというところで、法律家だとか、あるいは倫理を語る法律の方なども含まれた、そういった体制を整えられることというのも、一つ可能なのかなと感じました。
以上です。
【中釜主査】 ありがとうございます、御意見。
よろしいでしょうか。
続きまして、玉腰委員、お願いいたします。
【玉腰委員】 おまとめいただき、ありがとうございました。
一つは、先ほどの鎌谷先生のお話もにあったんですが、実務者にいかに報いるかというか、いかにリスペクトするかということについて、もちろん書き込むことは難しいかもしれないんですけれども、やはり必要な点であり、それがその方たちのさらなる次のキャリアアップにつながるようにというようなところの配慮がここの分野をきちんと育てていくためにも重要ではないかと思っておりますというのが一つです。
もう一つは、コホートの追跡データのことなんですけれども、今回、「追跡調査の精度向上」というような言葉で書いていただいているんですが、もう一つ重要なのは、既に存在している公的データといかに容易にリンケージできるようにするかということで、このことは多分、一つの省庁だけでは済まない、本当に横断的にいろんなところが関わって働きかけていく必要があると思うんですけれども、そのことについての重要性というのは一言書き込んでおくほうがいいのではないかと思いましたので、発言させていただきました。
以上になります。
【中釜主査】 ありがとうございます。
今の御指摘は重要だと思いますが、事務局、それに対してコメントはございますでしょうか。
【小野ゲノム研究企画調整官】 御指摘いただいて、ありがとうございます。そう言われれば、大変申し訳ありませんが、公的データとのリンケージというのは、申し訳ありませんが、どうやら読み込めるところが記載していないようなので、加筆させていただきたいというふうに思います。
【中釜主査】 よろしいでしょうか、ぜひお願いいたします。
【小野ゲノム研究企画調整官】 はい。
【中釜主査】 川﨑委員、お願いいたします。
【川﨑委員】 取りまとめ内容に異論はございません。この作業部会に参加させていただいて、バイオバンクの情報・試料等がすごく使われていること、今後も期待されていることを非常に強く感じたところです。一方で、課題があることもこの報告書の中に書かれています。その課題を解決する一つとして、この取組や成果に協力していただいている国民の方々に対して、本取組を分かりやすく伝えることがすごく重要だと思っています。この作業部会では、事業の方向や、研究の進め方について議論して参りました。加えて、是非国民の方々に対して、バイオバンクの試料・情報が、次世代医療の実現のためにこういうふうに使われている、研究が進んでいるということを広報することにより、正確にご理解いただくという取組も併せてやっていただくことが、国際的な情報開示に関する課題や、バイオバンクの試料・情報の利活用の障壁を低くする方向に繋がるのではないかと思います。
【中釜主査】 貴重な御意見、ありがとうございます。
ほかに、御意見ございますでしょうか。
よろしいでしょうか。
ありがとうございました。それでは、本日、多くの委員からいただきました御指摘や御議論のあった点につきましては、主査一任とさせていただき、文言を主査と事務局で調整した上で報告書案としたいと思いますが、その方向でよろしいでしょうか。
特に御異議ございませんので、その方向で進めさせていただきます。どうもありがとうございました。
では、続きまして、議題の三つ目、その他に移ります。
本日予定しておりました議事は以上ですが、事務局から何か、追加での連絡事項等、ございますでしょうか。
【小野ゲノム研究企画調整官】 ありがとうございます。
本日も大変有益な御議論をいただいて、本当にありがとうございます。報告書案についても、最後、先生方からいただいたコメントを加えさせていただいて、中釜先生と御相談をさせていただいて、セットというふうにさせていただければというふうに考えております。こちらの報告書を踏まえまして、我々の来年度(令和8年度)の概算要求につなげてまいる所存でございます。本当にありがとうございます。
本日の議事録につきましては、事務局にて案を作成して、委員の皆様にお諮りし、主査の御確認を得た後に、弊社ホームページで公開いたします。
この報告書のセットなんですけれども、我々の事務手続の関係で大変申し訳ないのですが、次回は研究計画・評価分科会の下の作業部会という形式で、4月以降にメールにて持ち回り開催をさせていただければというふうに考えております。本日御議論いただいた報告書をその場で正式にセットというふうにさせていただければと思います。
以上でございます。
【中釜主査】 ありがとうございます。
委員の先生方、その方向でよろしいでしょうか。
ありがとうございます。
それでは、本日の次世代医療実現のための基盤形成に関する検討会議はこれにて閉会させていただきます。
本日も、大変有意義なご議論、それから、時間厳守で御協力いただき、ありがとうございました。
―― 了 ――
研究振興局ライフサイエンス課