令和6年7月19日(金曜日)10時00分~11時30分
オンライン開催
永江座長、小関委員、成木委員、野中委員、日髙委員、藤井委員、前田委員、三原委員、三輪委員、吉田委員
塩見研究振興局長、中澤基礎・基盤研究課長、村松素粒子・原子核研究推進室長、細野加速器科学専門官、北野科学官
東京大学・郡司准教授
【永江座長】 定刻になりましたので、ただいまから第3回のEIC計画及びこれに関連する原子核物理学の新たな展開に関する有識者会議を開催いたします。
事務局より、オンライン会議開催に当たって、留意事項を説明願います。
【細野専門官】 本日はオンラインとのハイブリッド形式で会議を開催しておりますので、最初に、オンライン会議の留意事項について御説明をさせていただきます。
通信を安定させるため、御発言されるとき以外はカメラ、マイクをオフにしていただくようお願いします。御発言される際は、挙手ボタンを押していただき、座長に指名されてからカメラ、マイクをオンにして御発言をお願いいたします。議事録作成のため、速記者を入れておりますので、お名前を言っていただいた後に御発言をお願いいたします。なお、本日の会議は公開で行われ、報道関係者や一般傍聴者による傍聴を認めておりますので、御承知おきください。以上です。
【永江座長】 どうもありがとうございました。
続きまして、事務局より本日の配付資料と委員の出欠の確認をお願いいたします。
【細野専門官】 それでは、配付資料の確認をいたします。画面に投映しておりますとおり、配付資料は資料1-1から1-3、参考資料1から6を御用意しております。なお、本日の資料、議事録は後日ホームページで公開いたします。
委員の出欠状況につきましては、本日は全委員に御出席いただいております。また、本日は、有識者としてEIC日本代表の東京大学、郡司先生に御出席いただいております。以上です。
【永江座長】 ありがとうございます。それでは、議事に入りたいと思います。まず、議題の1として、中間報告書の案について、事務局のほうから説明をお願いいたします。
【村松室長】 素粒子・原子核研究推進室長の村松です。よろしくお願いいたします。
資料1-1と1-2と1-3をお配りしています。資料1-1につきましては、御説明はいたしませんけれども、前回、事務局からお出ししたディスカッションペーパーに対して、先生方からいただいた御意見をまとめています。ここでいただいた意見を踏まえて、事務局で報告書に反映をさせていただいております。かなりの分量をいただいており、重複した部分もありましたので、事務局で適宜要約させていただく形で、資料1-3の中間報告(案)に反映させていただきました。資料1-3に沿って中間報告(案)を御説明させていただきますが、もし重要なポイント等、漏れている意見がございましたら、後の意見交換で御指摘いただければと思います。資料1-2については、後ほど資料1-3を説明した後に簡単に御説明させていただきますが、この中間報告本体は有識者会議のクレジットで作るものですけれども、文書で十数ページあるものですと、なかなか一般の方が概要を理解するのが難しいと思われますので、今後いろいろな方にこの有識者会議の中間報告がどのようなものかを事務局で説明していく際に、簡単な資料があったほうが説明しやすいものですから、事務局でこの中間報告案をベースに作らせていただいたのが概要です。こちらも後ほど御意見をいただければと思っております。
それでは、資料1-3に沿って概要を説明させていただきます。「はじめに」では、今般の検討に至った経緯を簡単にまとめています。量子技術を幅広く応用するためには、量子に関する未解明な学理に対する理解を深めて、量子系の能動的制御を可能にすることが必要ではないかという認識の下、原子核物理学をはじめとした幅広い分野の研究コミュニティーが連携して取り組むことが求められると考えております。政府でも、量子産業の創出・発展に向けた推進方策、統合イノベーション戦略2024などにおいて、量子科学技術の基礎学理を探求する大学・研究機関等の研究体制を抜本的に強化するとともに、人材育成を進めることが重要と位置づけたところです。それと並行いたしまして、EIC計画、米国エネルギー省が進めている、核子のスピンと質量の起源の解明を通じて量子とエネルギーに関わる根源的な理解を目指す原子核物理学分野の国際共同プロジェクトですが、米国のブルックヘブン国立研究所(BNL)で整備が進んでおりまして、2026年の建設開始、2034年の本格運転に向けて今準備が進められている段階で、我が国を含む25の国や地域から850名以上の研究者等が参画している状況です。本年2月に、DOE、米国エネルギー省から文部科学省に対しまして、このEIC計画に参加している我が国の大学・研究機関へ支援をしてほしいと要請がありました。そのようなことを受けまして、EIC計画への我が国の大学・研究機関の参加、これに関連する原子核物理学の新たな展開について検討いただくために本会議を5月に設置いたしまして、5月から3回議論してきたところです。本資料は、その議論を中間報告としてまとめたものです。
2ポツは、我が国の原子核物理学の現状認識と課題です。まず、原子核物理学はどういう学問かということを記載しています。物質の創成と進化の解明を目指して、量子色力学(QCD)を基礎理論として、素粒子を基本単位として、核子、これは大体10のマイナス15乗メートルぐらい、そして、中性子星、こちらは10の4乗メートルぐらいと、非常に幅広い階層の量子ダイナミクスを研究する学問と位置づけています。科学的価値に加えまして、イノベーションの創出やエネルギーの安定供給、人材育成に貢献することが期待されています。詳しい中身は飛ばさせていただいて、2ページ目、そのため、我が国においても、RIBFやJ-PARCのような大型実験施設を整備してまいりました。また、米国BNLでのRHIC加速器でのPHENIX実験、欧州CERNでのLHC加速器におけるALICE実験等、国際共同実験に参加をして、113番元素に代表されるような不安定核やハイパー核の発見、クォーク・グルーオン・プラズマ(QGP)の発見等といった優れた成果を創出してきています。今挙げたのは実験ですが、理論研究においても、我が国の有するスーパーコンピュータ、大変高性能なものがありまして、それを活用して、量子色力学の数値計算というところでも優れた成果を出してきているところです。また、我が国の若手研究者がLHCのALICE実験などで国際共同研究を主導するポストを獲得して活躍しているということもありますし、最近ですけれども、この分野を志す大学院生の数も増加傾向に転じたということがあります。一方で、この分野の我が国の研究者数というのは減少傾向であり、また、TOP10%論文数、これだけで研究力を評価するのがどうかという是非はありますけれども、一つの参考になる指標として考えたときに、そのような指標も減少傾向にある。なので、このままの傾向が続けば、研究体制の脆弱化、あるいは研究力の衰退ということにつながるのではないかということが考えられます。このように重要な分野ですので、この分野の振興を引き続きして、科学的発見のみならず、応用、波及効果ということもしっかりしていく必要があるのではないかと考えています。EIC計画への参加を一つの契機といたしまして、多くの学生や若手研究者を惹き付けて、この分野の発展を促す必要があり、具体の検討を進めたということが書いてあります。
3ポツは、主に前回、中間取りまとめに向けたディスカッションペーパーのところで御審議いただいた内容です。これまで3名の先生方からヒアリングを行いましたけれども、その内容を事務局で整理をさせていただいております。今後の我が国の原子核物理学が目指す方向性として、原子核物理学を起点とした、日本発、日本が主導する新たな学問領域を創設していくということを掲げております。単独の階層の理解だけでは解決できないような問題に対して、複数の階層にわたる理解をすることで解決していく。そのような方向性ではないかということを述べております。2ページ目に移りまして、原子核物理学、先ほど申し上げましたとおり、非常に広い階層を対象としている学問ですので、原子核物理学を起点として、理論、実験、計算科学を融合して、様々な階層を超える量子ダイナミクスの研究をする。それをマルチスケール量子ダイナミクスと名づけていますけれども、そういう研究を創出していくことを目指してはどうかという提案がございました。表がありますが、原子核物理学の概念とか理論とか、そういったものが、他の様々な階層の量子多体系にも適用できるのではないかというようなことが書かれています。マルチスケール量子ダイナミクスは、科学的意義に加えて、社会的な影響、医療、イノベーション、エネルギーの安定供給、人材育成にも貢献するということが書かれています。続いて、エネルギー分野のイノベーションへの貢献ですけれども、エネルギー変換そのものの根源的理解への貢献というのがあるであろうと。核子・原子核の質量の99%ぐらいはクォークとグルーオンの量子色力学的な相互作用と、相対性理論の質量とエネルギーの等価性からできています。そういうことを考えれば、核子や原子核の3次元の内部構造を、理論と実験を通じてクォークとグルーオンのダイナミクスから明らかにすることができれば、核子や原子核の質量の起源というのを解明できる。宇宙に存在する重元素というのは、超新星爆発とか連星の中性子合体などで生成されたというふうに考えられておりますけれども、この中間物質を生成することで、次のページ、4ページ目ですね、原子核反応の理論を検証して、多様な原子核反応におけるエネルギー変換過程というものの理解につながるのではないかということを考えています。クォーク・グルーオン・プラズマとか、高密度クォーク物質とか、カラーグラス凝縮とか、こういった極限的な物質の状態変化を調べることで、エネルギー変換の機構の解明につながるのではないかと考えています。エネルギー分野との連携・波及では、核融合プラズマとクォーク・グルーオン・プラズマが、基礎方程式の数学的構造や、その解法において共通するという部分があります。クォーク・グルーオン・プラズマ研究で使われている統合シミュレーションが、核融合プラズマでも活用できるのではないかというようなことが書いてあります。あと、核融合炉開発と原子核実験も、要素技術や分析手法が共通で、相乗効果による発展が期待できるということが書いてあります。量子分野のイノベーションへの貢献として、量子ダイナミクスの根源的理解に原子核物理学がどう貢献するかという観点で、原子核物理学では、環境との相互作用を通じて量子系の根源的理解を目指す研究というのが進んでおりますので、それは物質科学とか、量子コンピューターの開発というところで概念的に密接に関係しているのではないか、階層を超えた普遍的な量子コヒーレンスやデコヒーレンス機構の解明に貢献できるのではないかと考えております。原子核物質からQGPへの相変化といった現象も、物性物理での相転移の現象と共通性・普遍性があるので、量子現象の理解という意味では共通の部分があるのではないかと考えています。QCDも、トポロジカルな励起、あるいはトポロジカルな現象というのがありまして、それに関連する量子効果が物性物理学でもあり、トポロジカル物質の研究と密接に関係しているのではないかと考えております。5ページ目に移りまして、量子分野との連携・波及ですが、スーパーコンピュータの発展とQCDの計算が共に歩んできたような形で、量子計算を原子核の問題を解くことに活用して、共に発展していくことが期待できるのではないか、量子アドバンテージの実証などの形で貢献できるのではないかと考えております。原子核物理学の研究者が量子コンピューターの開発にも即戦力として貢献できる可能性が高いということ、量子コンピューターの実用化に重要な誤り訂正機能についても、量子ゲージ理論の知見が役に立つということから、原子核物理学と親和性が高いのではないかと考えております。原子核実験で大量のデータ処理が必要になっていまして、量子コンピューターの活用が進む可能性がある分野で、非常に親和性が高いと考えております。原子核物理の実験で極めて高い精度のセンシング技術が必要とされており、新たなセンサー技術の開発等でも協力できる部分があると考えています。
次に、原子核物理学の新たな展開におけるEIC計画の位置づけですけれども、EIC計画の概要そのものについては何度か説明しているので飛ばしまして、EICで期待される科学的成果ですが、EICは非常に解像度の高い、時間分解能の高い、かつ強度もある、人類が手にする究極のフェムトスケール電子顕微鏡であり、今まで1次元的にしか見られなかった核子とか原子核内部の3次元構造が分かる。それが大きな特徴であると考えています。6ページ目に移りまして、それによって、陽子の質量とスピンの起源を解明する。また、QCDの非線形性に由来する創発的な量子現象、例えば、QCDの真空の構造ですとか、カラーグラス凝縮といったような現象の解明につながると理解をしております。EICの科学的成果の波及ですけれども、計算科学、これは古典・量子にかかわらず、先ほど申し上げたように、大規模計算のツールとして、また、量子古典ハイブリッド計算を実現していくための技術として、相互に協力できる部分があるのではないかなと考えています。核融合科学に対しましても、階層は違いますけれども、共通の物理的背景を持つ現象というものがありますので、これも共に進められるのではないかと考えています。物質科学への波及についても、例えば、カラーグラス凝縮は物性物理における新奇な物質状態の研究にも貢献できるのではないかと考えています。宇宙物理学についても、宇宙初期のクォーク・グルーオン・プラズマが冷却して核子や原子核ができてきたわけですけれども、そういう機構であるとか、中性子星内部でクォーク物質が生成される機構といった、宇宙における原子核の生成と終焉といったことも理解できる、相互に研究ができる部分と思っております。マルチスケール量子ダイナミクス研究へのEICの貢献ですけれども、1つ目は量子強靱性で、核子、陽子が非常に安定な状態で、クォークとグルーオンからできている。その構造、その起源の解明というのは、安定した量子性を持つ物質の探索等で活用できるのではないか。2つ目は、量子多体系の創発ダイナミクスとして、クォークとグルーオンから核子の階層ができ、原子核の階層ができ、さらには中性子星の階層ができる、こういう階層ができていく、巨視的スケールの階層構造をどう作るのかについての理解にもつながるのではないか。3つ目は、量子開放系の非平衡現象として、EICは非常に高エネルギーのところで重たいクォークが伝搬していく現象を観察するわけですけれども、これは非平衡開放現象と捉えることができて、この研究は環境との相互作用に伴う量子デコヒーレンスの機構解明にも貢献するのではないかと考えています。我が国の戦略ですが、日本グループは、国際共同実験、ePIC実験という測定器の実験に参加をして、我が国の強みである半導体技術とデータ収集技術を生かして、以下の測定器とシステムを担当することにしております。1つ目がTime of flightで、粒子を同定する高時間分解能のセンサーです。2つ目がZero Degree Calorimeterで、事象を判別する、どういう反応が起こったのかというのを判別する高空間分解能の半導体センサーです。3番目がData Acquisition Systemで、スケーラビリティーのあるデータ収集、リアルタイム高度解析システム、この3つを担当することになっておりまして、計画の成否に関わる非常に重要な3つを担当します。それによって、データ解析と物理成果の創出を主導していくことを目指しております。我が国が持つ技術基盤を国際標準化していくということも目指すこととしております。一方、加速器本体につきましては、KEKの持つ非常に高い加速器技術に対して、米国側から大変強い期待が、金銭面での貢献ではなく、技術面でアドバイスしてほしいという要望もありますので、可能な協力の在り方については、研究者間で引き続きコミュニケーションを継続していくことにしています。6番目に、我が国の強みのさらなる強化として、RIBF、J-PARCという大型の実験装置を我々は既に持っていて、EICは、低エネルギーから高エネルギーまでの階層を超えた解析が期待できる装置ですので、EIC計画への参加を契機として、低エネルギーから中エネルギーまでの、例えばRIBFとかJ-PARCとかでの研究と併せて進めることによって、国内の研究コミュニティーが一丸となって、クォークとグルーオンの第一原理に基づいて、クォーク、核子、ハドロン、原子核に現れるマルチスケールの量子ダイナミクスを理解することを目指した取組を進めていくということが、J-PARC、RIBFを有する我が国にとっても強みをさらに強化していくことにつながるのではないかと考えております。8ページ目ですが、産業への波及として、加速器は新たな技術を生み出すという役割と、技術実証の場という役割があり、ここで使う技術というのは将来いろいろなところに波及していく前のテストとしても使えると考えております。ePIC実験で使う、クォークとグルーオンの3次元構造を再構成する、こういう可視化ツールというのは、直接目に見えないものを可視化する技術ですから、ナノスケールの構造解析などでも幅広く利用できるのではないか、サイエンスの研究方法の革新にもつながるのではないかと期待をしております。自動運転をはじめとした、Society5.0の実現、サイバー空間とフィジカル空間が融合した、そういう社会の実現にも大きく貢献するのではないかと考えております。仮にですけれども、EIC実験を通じて、核子や原子核を能動的に直接制御することが可能になれば、核融合発電の実現とか、新素材や医療用アイソトープの製造、革新的な量子計算技術の開発にも貢献することが期待できます。
EIC計画の実施体制ですが、理研はBNLに既にRBRCというセンターを持っていますけれども、それに加えてEICの拠点を整備することにより、測定器の建設、データ収集システムの実装、日本人研究者の受入れ支援を行うこととしております。将来の応用可能性も見据えて、新たな視点で量子物理学を基礎に立ち返って見直すFundamental Quantum Science Program、仮称ですけれども、そういうものを既に立ち上げておりまして、原子核物理学は非常に重要な役割をこの中で果たすため、このプログラムの一部にEIC計画を位置づけて推進することにしております。大学はアカデミアの知の結集と、新しい学生さんがたくさん毎年入ってきますので、その中から優秀な人材を確保して、BNLに派遣をするということ、技術の国際標準化を主導するということを予定しております。既に東大にはクォーク・核物理研究機構を設置していただいていますし、大阪大学の核物理研究センターも、これは国際共同利用・共同研究拠点になっていますけれども、この東大と阪大の連携を中心にして、オールジャパンで大型国際共同研究を推進する体制、国際量子物理ネットワーク拠点の構築を今進めていただいているところです。いろいろな大学・研究機関の参加を促していくということと、目的に応じて柔軟に参加できるようなSPADI Allianceというような組織も今つくっていただいています。機関とか、研究室とか、そういう単位でなくても、関心を持った研究者が、特に若手の研究者がEIC計画に柔軟に関われるように、既にBelleⅡ実験で実現しているNPCという仕組みも参考にして、参加しやすい仕組みをつくるとともに、ほかのプロジェクトとの間で双方向の人材交流が行われるような仕組みをつくっていくことにしています。次のページ、関連人材の育成として、量子や核融合分野は、人材不足と言われていますので、原子核物理で学んだ方々がそういう分野で活躍できるように、既に研究コミュニティーレベルでは、ワークショップの開催などの取組を進めていただいております。
所要経費ですが、ここは前回ちょっと飛ばしたところですが、今回、郡司先生の提案を基に文科省でも精査をさせていただいて、この金額を書かせていただいております。理研と、東京大学と大阪大学で、以下の経費を役割に応じて分担してEIC計画に参加していくことしています。ただ、ここに書いてあるのは運営費交付金のみならず、競争的資金とか外部財源とかも活用して賄っていくということで、全てが運営費交付金で賄うものではありません。建設期の6年間、2025年度から2030年までの間については、総額約92億円を見込んでおりまして、特に建設費、先ほどの測定器とかデータ分析の装置等に対して約42億円を予定しています。内訳は下の括弧内に書いてあるとおりです。この期間の運用費ですけれども、年間約8億円を予定しています。主には人件費です。運用期に入りますと、仮に20年間、2050年まで装置が稼働したとして、総額約192億円、年間約10億円で、これも大半が人件費ということで予定をしています。
DOEに聞いたところ、現時点の建設費の総額、17~28億ドルという、非常に幅がありますが、これはまだ概念設計の段階のためで幅があるもので、今後、詳細設計を進めていく中で具体化していくものであるという回答を得ております。この17~28億ドルという金額には、加速器だけではなく、測定器、人件費などが全部入っているということで聞いております。将来、EICも測定器をリプレースするときが来るわけですけれども、そのときに向けた測定器の高度化のための技術開発も当然行っていかなければいけないんですけれども、その費用をここに含めると、やや混乱をすると思いましたので、その費用は外して計上しています。
最後、まとめです。ここが先生方からいただいた意見を中心に書かせていただいたところです。
(1)はEIC計画とこれを受けた新たな展開についての見解です。目指す方向については、おおむね原子核物理学が現代物理の基本概念が集約された学問であって、重要な役割を果たす、原子核物理学の研究成果は非常に応用分野が多岐にわたる、原子核物理の分野で学位を取得した方がいろいろな分野で活躍している、マルチスケール量子ダイナミクス研究の創出を目指すという方向は適切であるなど、おおむねこの提案を肯定的に評価していただいております。エネルギー分野への波及についても、核子の質量の理解というのは、核融合でエネルギーを生み出す仕組みの根本的理解につながる、原子核物理と核融合分野での数学的構造とか実験技術の共通性に注目すれば、共創的に発展していくことが期待できるなどの意見をいただいております。量子技術への波及については、原子核物理学の研究による基礎学理の解明、実験技術の確立が、広い意味で量子技術に波及すると考えられるという意見をいただいております。実際、既に原子核物理の研究者は、量子技術・量子情報分野の人材の供給源になっているとのことです。原子核物理は非常に難しい有限量子多体系ですので、ここで確立された技術等はいろいろな分野にも波及するであろうという意見もありました。EIC計画についての評価については、いろいろな階層の物理をつなげていく意味で重要なものではないか、新しい計画に動機づけられた研究が行われるのではないかなどの意見がありました。EIC計画の活用については、我が国の技術の国際標準化にも資するであろうということと、我が国の強みが十分に生かされたもので、かつ産業の育成にも貢献するというものだという意見をいただいております。加速器への期待については、積極的な貢献ができるよう、引き続き研究者間でコミュニケーションを継続してほしいという意見がありました。EIC計画への参加体制については、中心となって推進する研究者の組織基盤の形成がまず大事ではないか、人材の育成確保が必須である、理研と大学という研究機関と教育組織との強力な連携が必要ではないかという意見をいただいています。理研と、東大・阪大が中心になる国際量子物理ネットワーク拠点が強力に連携することで、幅広い分野への波及が期待できるのではないか、個人や小規模な体制でも実験に参加できる体制の検討が進められている点も評価しているという意見がございました。人材育成については、分野を越えた知と人材の共有とそのための人材育成は重要である、若手研究者や学生を惹きつける原子核物理学の促進や、将来的に様々な分野・国で活躍できる多様な選択肢を示すことも必要なのではないかという意見がありました。大学院生がEIC計画に参加できると、若手研究者が国際的に活躍する土台ができるという人材育成面での意見もございました。経費についてですが、先ほど説明した経費につきまして、上記に述べたように、我が国が得られる科学的成果とか人材育成の効果を考えれば、非常に費用対効果の高い計画であると考えられるという所見にしております。総合的所見といたしましては、以上、総合的に勘案しまして、EIC計画への我が国の大学・研究機関の参画及びこれに関連する原子核物理学の新たな展開を積極的に進めていくため、国内の関連する既存の大型実験施設や大型実験計画等も踏まえつつ、文部科学省が理化学研究所、東京大学、大阪大学の関連する機関や研究者の取組を積極的に支援していくことが必要であるという総合的な見解をまとめています。
(2)が今後の留意点です。先ほどはどちらかというと評価した点を述べたのですけれども、今後、議論を進めないといけない点もあるという意見もいただいております。例えば、他分野との連携ですが、それを具体化していく、複数分野に共通する根本的課題に協創的に取り組む体制を構築していかなければいけないのではないかという意見をいただいております。他分野との融合的研究を促す仕組みも必要ではないかという意見もいただいています。研究推進体制について、EIC計画に参加している我が国の研究者をもっと増やしていくために、EIC計画の科学的意義をもっと広く周知をして、多くの人に参加してもらって、結果として我が国の貢献が高まり、計画におけるプレゼンスが高めることが必要ではないかという意見もありました。理論と実験が連携した研究体制が必須であり、理論研究を担う若手の育成が必要であるという意見もありました。特に応用分野の計画を進めていく、応用を意識して進めていくためには、低エネルギー領域との連携が重要なので、人材と情報が活発に交流できる仕組みを構築することが必要ではないかとの意見もありました。大学院生、若手研究者がBNLで研究できるような方策も検討してほしいという意見もありました。人材育成につきましては、物理学全体にどう人材を巻き込んでいくかということも考えなければいけないのではないか、学生さんがいろいろな実験に参加することで、徐々にスキルアップしていって、最終的に大型研究実験に参加できる体制をつくっていく必要があるのではないか、ダイバーシティーの確保などの意見もありました。最後に、社会や国民からの支持について、将来、非常に期待できる計画ではあるが、金額、費用の負担が大きいものですから、社会・国民からの理解・支持を得るためのコミュニケーションをしっかり行う必要があるということと、適切な評価を実施していく必要があるとの意見をいただきました。
資料1-2に、中間報告(案)をもとに事務局で簡単に概要を作成させていただきました。この説明自体はいたしませんが、全ての要素を盛り込めないものですから、事務局で重要と思われるところを中心に書かせていただきました。もし、こちらについては大事なポイントが落ちているので、この点を盛り込んだほうがいいというような意見がございましたら、議論の最後でおっしゃっていただければと思います。事務局からは以上です。
【永江座長】 どうもありがとうございました。非常に広い分野にわたった議論をうまくまとめていただきまして、どうもありがとうございます。
本日は、この有識者会議の中間結論としての中間報告書(案)というのを、この時点での我々の報告書として作り上げるというのが一つの大きな目標になっておりますので、できるだけ皆さんの意見が反映できるように、中間報告書(案)というものを仕上げていっていただきたいというところであります。では、それぞれについて少し御意見を、もしまだ言い足りなかったとかいうようなことがございましたら、各委員の皆さんから質問なり御意見なりお願いしたいと思います。できるだけ今日は皆さんからの御意見で議論ができるように、時間はたっぷり取ってあるつもりですので、よろしくお願いいたします。予算案については、今回、具体的な数字が出てきているわけですけれども、何か御意見ございますでしょうか。小関さん、何か御意見がございますか。
【小関委員】 予算案を拝見して、相当大きな金額だなと思います。もちろんそれに十分値するプロジェクトだと思いますし、恐らく積み上げた数字の妥当性もおおむね良いのではないかと推測します。ただ、予算規模が大きいので、国内のそれ以外のプロジェクト、特に日本でホストしている大規模な国際共同実験を運用する予算にしわ寄せが行かないよう、ぜひお願いしたいと思います。そのように考えられていると認識しておりますけれども、よろしくお願いします。
【永江座長】 どうも。郡司さん、何かありますか。
【郡司准教授】 確かに大きな額になっていますが、例えば、ここで挙げられている人件費はEICの推進を通してマルチスケールの基礎量子科学を支える幅広い研究を展開することを想定しています。EICを使って幅広い研究を展開すると同時に、EICを通じて構築した国際循環を日本の加速器施設を使った研究にフィードバックして日本の加速器施設を使った実験を国際的に促進していきます。また、日本が担当するTime of flight検出器、Zero Degree Calorimeter検出器、データ収集系DAQは、ePIC実験に建設するものですが、例えば、データ収集系のために製作する信号処理モジュールはSPADI Alliance等を通じて国内の加速器実験にも応用することも可能です。Time of flight検出器で使用されるAC-LGADセンサーも同様です。運用費の中の設備費に挙げているものはコンピューティングシステムです。アメリカからほぼリアルタイムに送られてくるデータを高速に処理するコンピューティングファームです。このコンピューティングシステムを使って考えていることは、例えば、EIC、J-PARC、RIBF、RCNP等のデータ収集系の最終部、コンピューティング部分を統一することです。各実験施設とコンピューティングシステムを高速ネットワークで結び、ネットワークに繋げたらデータがコンピューティングシステムに流れてリアルタイムで処理をします。各実験ごとに大量のサーバーを用意する必要はなく、どの実験でも共通して使えるようにします。全予算がEICのためだけとは思っていなくて、国内の実験にも資するような構想を持っております。
【永江座長】 ありがとうございました。ほかに何か御意見、御質問ありませんか。三原さん、どうぞ。
【三原委員】 報告書ドラフト、ありがとうございます。非常によくまとまっていると思います。特にこの中で、EIC計画を進める上で、EIC計画そのものの重要性というのもあるんですけれども、他分野との連携というか、そこへの波及効果というのが強調されている点はすごくいいなと思いました。加えて、人材育成についてもかなり詳しく記述されていて、EIC計画で将来いろいろな分野で活躍できる人材を育てていくということを目指すべきという記述についても、非常によく記述されているなというふうに思いました。一方で、もう少し力を入れてほしいなと思うのが、最後に少し出てきたんですけども、この分野におけるダイバーシティーの観点というのが、もう少し具体的にEIC計画の中にも考えられてもいいのかなと思いました。特にジェンダーバランスを考慮した若手人材をこの分野に引きつけるというような、そういう試みも、なるようになるではなくて、やっぱりプロジェクト全体としてそういうのを考えた上で進めていくというのが必要かなと思いましたし、前回、多分、少し議論になったかもしれません。この分野に入ってきた若手研究者がEIC計画で成長していくというのは、これはもちろん大事なことなんですけれども、この分野自体をやはり魅力的に見せて、この原子核分野で研究したいと思えるような若い学生、大学院に入る前の学生たちを引きつけられるような試みというのもぜひ目指してほしいなと思いました。以上です。
【永江座長】 ありがとうございます。
【郡司准教授】 ダイバーシティーに関しては、私自身、どういう具体的な取組があるのか、海外の実験を参考にしながら学んでいこうかなと思います。先々週にALICE実験のコラボレーションミーティングがあって、その集合写真を見ました。海外では女性が多くて本当に驚きました。 このようなところから色々と学び、海外の取り組み等を取り入れ、できることはやっていきたいと思っております。若い人を引きつける試みに関しては、東大でクォーク・核物理研究機構QNSIが立ち上がり、東大QNSIと大阪大学RCNPが中核となって国際量子物理ネットワーク拠点の形成を目指します。QNSIや国際量子物理ネットワーク拠点は、EICだけでなく低エネルギーから高エネルギーの原子核物理、さらに核物理の応用として核融合や量子分野と連携をしていくような体制を整えることを考えています。一方で、理化学研究所でFundamental Quantum Scienceという、まさにクォークから物性、生命をつなぐようなマルチスケールの量子科学を推進する研究プログラムが立ち上がりつつあります。東大QNSIや国際量子物理ネットワーク拠点と理研のFundamental Quantum Scienceがうまくタイアップをすることで、マルチスケールの物理を推進する新しい学術分野と若手にとっても非常に多様なキャリアパスを提示したいと思っています。 東大でも、理研のFQSの受皿になるような新しい大学院プログラム等を考えていきたいと思っております。また、もう一つ考えているのは、国際量子物理ネットワーク拠点IQPNの海外拠点をブルックヘブンにつくることです。RBRCとの関係等は今後の議論で整理していく必要はありますが、海外拠点に大学生を派遣して、EICも含む非常に広い意味での量子科学を研究してもらうことも考えていく予定です。このEIC計画を使って、学生たちを惹きつけられるような試みを拡大していきたいと思っております。
【三原委員】 ありがとうございます。
【永江座長】 ほかにございませんか。吉田さん、どうぞ。
【吉田委員】 今、ちょうどここの画面に出ておりますけれども、人材と情報が活発に交流できる仕組みということですよね。これはどの分野にも共通の課題だと思いますが、一つ有効な方法は、産業界とつながっていくということだと思います。これは核融合の分野でも課題なんですけれども、キャリアパスがアカデミアに閉じていると、どうしても固有の分野の先鋭的な研究で分断化が進む。産業界とつながっていくと、例えば、先ほどの例としてあったDAQであるとか、そういった技術から、スタートアップのようなものができていくとか、そういうふうな形になっていくと、活発にいろいろな分野をつなぐチャネルができてくると思います。ですから、この計画も、一方において産業界といかに連携していくかが課題だと思います。産業界のチャネルを通じて、いろいろな形で情報と人材の交流が生まれるというような形を目指すのが、科学技術に幅広く貢献していくという観点からも、重要なやり方ではないかと思います。
【永江座長】 どうもありがとうございます。
【郡司准教授】 ありがとうございます。産業界の人とも一度、このEIC計画に関しては議論したこともあります。EIC実験に対する科学技術の意義に関してご賛同を得たと思っております。特に、EIC実験の検出器の高度化に関しては産業界が持っている強みを生かしていくことが非常に重要だと思います。例えば、高精細な半導体センサー、高次元の積層技術、オールフォトニクス、AIチップ等のアクセラレーションです。産業界も含めて一緒に協働できるように大学と理研と枠組みを一緒に考えていきたいと思います。加速器実験は新しい技術の大規模展開、大規模実証をする非常にいいテストベッドだと思いますので、一つの例として、オールフォトニクスの試験を加速器実験の高速データ転送に用いる等、お互いウィン・ウィンになるような体制を考えていきたいと思います。非常に重要な視点だと思います。ありがとうございます。
【永江座長】 ほかにございませんでしょうか。前田先生、どうぞ。
【前田委員】 前田です。ありがとうございます。今回のまとめ自体は、非常にスケーラビリティーを意識されて、いろいろな人的な育成だけでなく、技術とか科学成果の創出という面でも広い視野で書かれていて、非常によくまとめていただいたなと思っています。先ほどありました予算についても、確かにトータルとしては大きいんですけれども、やはり必要な額とか、あと、特に運用に関して必要な額というのはやはり乗せていかないといけないというところではあるので、それも内容を見ても、概算ではありますけど、妥当だなという印象を持っています。一方で、やはり額が大きいという点に関して、今回、我が国としてこの計画に参加するにあたり、広く国民の皆様にもその意義を感じていただくという意味ではせっかく広く活用するという視点を持っている計画ですので、今オープンデータの推進を国としてまさに進めているところなので、この研究計画で得られるデータをオープン化できると良いと思います。複数の資料にもあるように、いろいろな大学の人がここに参画できるようにしていくというのをもう少し広めに捉えて。実際には中高生がいきなりデータ解析するみたいなのは難しいですけれども、ちょっと例として適切かどうか分からないんですけれども、オープンキャンパスみたいな、サイエンス体験講座みたいな、そういうまさに研究者のいるところとかで、本当に若い人、大学生よりももう少し若い人まで視野を広げて、何か感じられるみたいな、そういうところを将来的に目指して整備していくみたいなビジョンがあるとまさにEICが走る頃、10年後に本当に若い人がこういう最先端の科学に触れられるというスキームができているとすごくいいなと私個人的に思っています。新しく始まるプロジェクトだからこそ、設計段階からちょっと考えていただけるといいんじゃないかなというふうに思いました。
【永江座長】 どうもありがとうございます。そうですね。最初のうちはこういう話がよく出てくるけど、だんだん尻すぼみになったりしかねないので、ぜひ取り入れていきたいと思います。
【郡司准教授】 今、EICではグローバルストラテジーという取り組みを始めようとしています。アウトリーチの一環で、データを使って衝突イベントを可視化する等、若い人たちにEICをはじめ加速器科学を認知してもらう、若い人たちに実際にデータに触れてもらうというような取組に関する提案がこの前のリサーチリソースボードでなされましいた。CERNでも同じような取り組みが始まっています。日本もここに乗っかり、フレームワークを習得し活用していくのが大事だと思います。来週、EICユーザーズグループのミーティングがあり、この件に関する議論もあるのでしっかり聞いて反映させたいと思います。
【前田委員】 ありがとうございます。
【永江座長】 次に、三輪さん。
【三輪委員】 どうもありがとうございます。私自身もかなり勉強になったんですけれども、今回、原子核をフェムトスケールのものを理解するということと、さらにフェムトスケールのものを制御して、ほかの分野へと波及させることですかね、その両方と、いろいろな階層を超えてやっていくという、ここがEICを起点としてされていくということが書かれていて、確かに非常に魅力的で、非常によいプログラムになっているのかなというふうに思いました。先ほど原子核分野で、今後さらに若い人材を増やしていくという観点でいうと、これ、郡司さんというよりかは、原子核全体、コミュニティーとして考えないといけないことかもしれませんけれども、今回、EICの計画を説明していただいて、かなり広いスケールにまたがるような、本当にクォーク・グルーオンのダイナミクスから、ハドロン、原子核、あと、中性子星ですかね、その辺りの非常に広いスケールにまたがっているサイエンスで、それを制御しているところの根幹になっているのが原子核物理の分野というか、そういうフィールドであるなということを改めて認識したんですけれども、それで、広いスケールを支配するというか、そういうところを記述する分野であるということをより一層鮮明にしていくためにも、今回のEICで行う、非常にミクロな分野から、核子多体系というか、原子核のいろいろな分野との連携をして、その形がより一層外からも見える形になると、非常によいのかなというふうに思います。EICで様々なトピックスが、国内外の研究施設との研究で密接に関係するような、例えば、中性子星でクォークに溶けていく過程であるとか、ストレンジクォークがどう出てくるかであるとか、あと、ショートレンジコリレーションがEICでという話をしていましたけれども、そういうところは通常原子核の中のショートレンジコリレーションとか、そういうところとも密接に関係してくると思うので、なので、EICを契機として、もう一度原子核全体でより我々のコミュニティーがどういうふうに広く自然科学に貢献できるかということを考えつつ、さらにほかの分野への波及効果というか、そういうものを今後より一層一緒に考えていけるといいのかなというふうに個人的に思いました。ちょっと感想みたいになってしまいましたけれども、以上になります。
【永江座長】 ありがとうございます。
【郡司准教授】 2012年の日本の核物理の将来レポートで、学術会議で作成した「科学・夢ロードマップ 原子核物理学」というのが紹介されています。1枚の絵にいろいろなテーマが書かれていて、それらがどう互いに影響し合って一つの原子核物理として纏まるのかが描かれています。10年以上前になるので、最新版を改めて考えるいい機会かなと思います。私も今年度から核物理委員会のメンバーになったのでしっかり考えていきたいと思います。一緒に考えていけたらと思います。
【三輪委員】 すみません。よろしくお願いします。
【永江座長】 ほかに御意見ありませんでしょうか。野中さん、どうぞ。
【野中委員】 すみません。私もこちらの資料を拝見しまして、本当にすごく勉強になりました。実現すれば、原子核の分野を起点にして、様々な産業も含めた波及効果がすごく見込まれて、楽しみな計画になるんじゃないかなと思いました。ちょっと私で質問なんですけれども、私、理論なので実験のことはよく分からないんですが、予算のところですよね。額としては非常に大きな額であるなというのは私も分かるんですよね。なんですけど、ここに、DOEによれば、現時点で建設費の総額が2,700億円とか、あるんですよね。その中で日本が貢献できそうな額というのが、10%ぐらいなんだなということをちょっと思ったんですよね。いつかどこかでそういうところの貢献も大きいのかなと思ったんですけど、その辺り、どうなんでしょうか。額として非常に大きいし、とても妥当な額だと思うんですけれども、ちょっとその辺り、お聞きしたいと思います。
【郡司准教授】 ここで書かれている建設費の総額2,700億円は、加速器がほとんどになります。ePIC検出器の総額は大体300億円となっております。そのうちの70%はDOEがサポートします。DOEが定めたプロジェクトが決まっております。日本が担当する検出器は、日本にエクスパティーズがあり、そのことをアメリカ側も知っているので、その検出器は日本でお願いしたいとなっています。同様に、例えば、別の検出器はイタリアに強みがあることを知っているので、その検出器はイタリアが担当するような形で役割分担が形成されつつあります。DOE以外の部分が大体100億円ぐらいで、海外からのインカインドで集めたいというのが今の設計になっております。日本が担当するTime of Flight検出器とZero Degre検出器とストリーミング型データ収集系の総額が大体42億円で、インカインドの中でも多くを占めることになります。これぐらい占めることができますと、EICやePIC実験の中で発言権やマネジメント等、計画のコアに関わることができるので重要だと思います。様々な先端的な検出器を開発する、大型化し、量産して建設する、検出器の性能をもとに物理成果を出す、ということをしっかりと一貫してやることが、今はEICに向けてやっていますがそれがJ-PARCやRIBF等の国内施設での検出器開発や実装に生きてきます。また、そのような施設に最先端の検出器技術が導入されれば、世界の研究者から一緒に研究したいという方向になっていきます。先端的な検出器やシステムの開発や実装が呼び水になって、国際頭脳循環がより発展していくと思います。EICだけでなく、国内の実験施設の発展にも繋がると思いますので、確かに金額は高いですが、相応なリターンがあると思っております。
【野中委員】 ありがとうございます。
【永江座長】 ほかにございませんでしょうか。日髙さん、どうぞ。
【日髙委員】 大変よい中間報告をまとめていただいて、どうもありがとうございました。コメントしたところとかが全部取り入れられて、非常によいものになっていると思います。1つコメントなんですけど、留意点に挙げられている点というのは本当に書かれているとおりだと思うんですけれども、そこの点はやはり他分野との連携というのもかなり意識して何か具体的にアクションしないと、ダイバーシティーに関してもそうですけれども、なかなか難しいと思うので、本当にこの辺を具体的に進めていけるようになるといいかなと思いました。ここがコメントです。
【永江座長】 ありがとうございます。
【郡司准教授】 ありがとうございます。個人的に考えていることは、新しい大学院プログラム等を、例えば東大の中で分野の壁を越える形で実現し、学生にマルチスケール量子科学の魅力をアピールしていきたいと思っています。このようなプログラムが始まれば、各大学等の参画や連携を通して、より広く展開できるのではないかと思います。異分野との連携という点では、量子計算分野をはじめ、まずスタートアップで研究会を行う等、既に準備を始めていますので、研究会等を通じてできるだけ早く共通のテーマに関して一緒に実働し、コラボレーションできるということをなるべく早く実証したいと思っております。そういったところから積み上げで頑張っていきたいと思います。
【永江座長】 成木さん、どうぞ。
【成木委員】 まとめをどうもありがとうございます。皆さんがおっしゃる通りかなと思います。特に波及効果、周辺分野との連携をという辺り、非常に具体的に書いていただいて、より広いコミュニティーを取り込むことができるような計画になっているという意味でよいかなと思うんですけれども、一方、やっぱり若い人、これから特にこの原子核分野での人材育成をしていくという点で、コアのところの物理として3本柱、スピン、質量、分布関数のところを今後、これまでと同様により一層具体化して、何をどこまでできるかというところを皆さんで議論していけるような取組も必要かなと思いました。
それから、体制のところなんですけれども、東大で機構が立ち上がるということ、理研、それからBNLのセンター、これはRBRCに加えて新しいセンターをという話、これは今日初めて伺ったんですけれども、研究者あるいは学生、若い方が参加できるような仕組みとして非常に有用かなと思うんですけれども、複数の研究拠点みたいなことができてきたときに、そういう拠点が有機的につながって、お互いに独自にやっていくということじゃなくて、有機的、相補的に進めていけるような設計というのも必要かなと思います。以上です。
【永江座長】 ありがとうございます。
【郡司准教授】 RBRCに加えて新しいEICセンターを作るかどうか、ここは理研との議論が必要だと思います。理研にせよ、大学側にせよ、いずれにしてもBNLにEICのための拠点を整備することが必要で、そのようになると思います。その際には、拠点間のきちんとした連携を取るということも大事だと思いますので、引き続き理研と大学側と議論をしていきたいと思います。
【成木委員】 ありがとうございます。
【永江座長】 ほかに何かありますでしょうか。三輪さん、何かありますか。
【三輪委員】 最後の留意点のところで、原子核物理分野への波及効果を大きくしていくために、EICを起点として、ハドロン、原子核の各階層の研究も併せて推進して計画していくことということで、我々原子核では、国内の大きなプロジェクトでいうとJ-PARCとかRIBFを進めていますけれども、EICで海外のほうをやっていくとともに、EICで大きなサイエンスが展開されていくというのと同様に、国内でもそれにタイアップできるようなプログラムが正しく展開されていくということが、国内と海外の研究のバランスという意味でも、今後ますます重要になってくるんじゃないかというふうに思います。ですので、J-PARCであるとか、RIBFであるとか、そういうところのこれまでどおりの運転を維持しつつ、やはり今後のそちらの施設のほうのアップグレードというのも一緒に今後考えていけるといいかなというふうに個人的に思います。それで、さらに国内や海外の研究施設というのがより有機的に、人材も技術でもサイエンスの面でも有機的にお互いに関連、発展し合っていけるような関係になっていくと、非常に健全な望ましい関係であるかなというふうに思いました。以上になります。
【永江座長】 どうもありがとうございます。
【郡司准教授】 ありがとうございました。国内に加速器を持っている国、これだけ大きな加速器を持っている国は非常に珍しいし、そこが日本の強みでもあるので、日本国内のプロジェクトも国外の国際プロジェクトも有機的につながりながら、大事にしていきたいと思います。ぜひ一緒にやっていきましょう。
【三輪委員】 よろしくお願いします。
【郡司准教授】 お願いします。
【永江座長】 ほかにはどうでしょうか。よろしいですか。まだ時間的には大丈夫ですけど。中間報告の概要案というのが、事務局で作っていただいたものがあって、いろいろなイラストを使って、うまくEICの計画及びそれにまつわる連携等々のことが示されていますけれども、こちらに何か意見のある方はいらっしゃいますでしょうか。ここはある程度、一般の方々も含めて理解できる程度に事務局で作っていただいたものなんで、逆にサイエンティフィックに見ると、ちょっと説明不十分というところがあるかもしれませんが、いかがでしょうか。よろしいですか。特にございませんか。
三輪さん、よろしくどうぞ。
【三輪委員】 P1の右下の絵ですけれども、これ、波及効果のことを絵で描いていらっしゃると思うんですけれども、何となく原子核物理がこの方向性だけしかないようなことをイメージする方もいるんじゃないかと思うので、何となくファンダメンタルなサイエンスとしての重要性みたいなのも右の絵の中に入れていただけるといいのかなと思いました。多分、周りが波及効果だと思うのですけれども、真ん中のところが原子核物理の革新的なというか、今までやってきたことが入っているんだと思うんですけど、青い丸の中に、基礎物理としての物質の進化の解明ですかね、そういう辺りをやっている学問なんだけれども、それがほかの分野にも今、波及しようとしているという大本のところの情報も含んでいただいたほうが、原子核物理はエネルギーと量子をやるだけの分野ではないかというふうに誤解されないかなというのがちょっと心配で、ちょっとコメントさせていただきました。
【永江座長】 分かりました。少し事務局で検討していただこうと思います。
ほかに何かコメント等はありませんか。よろしいですかね。ほかにこの中間報告に関して御意見のある方はいらっしゃいませんでしょうか。藤井先生、今日御発言がないようですけれども、何か全体を通じてでも御意見ありましたら、よろしくお願いします。
【藤井委員】 特に意見はこれといってはないんですけれども、EIC計画、世界のトップサイエンスプロジェクトに参加するというのは、非常に基礎科学の進展において重要かなと思います。この中間報告取りまとめに当たっていろいろ議論させていただきまして、大変勉強になりました。あと、コメントとしましては、先ほど吉田先生がおっしゃられていたように、産業界との連携というのは非常に重要かなと思っていまして、こういった基礎科学を進めていく上で、広い観点では非常に波及効果が大きいと思いますので、例えば、核融合ベンチャーというのが日本からも複数立ち上がっていたりとか、話によると、そういったところでもかなり人材不足というのが問題になっているという話を聞きますし、量子技術分野でも、原子核で実験されておられた方が制御装置メーカーに参画されていたりとか、あと、海外で共同研究者では、CERNで実験をやっておられた方が高速なデータ処理を行うスタートアップを立ち上げておられていたりとか、そういったスタートアップというのも一つ、もちろん原子核ど真ん中の分野でスタートアップというのは難しいかもしれませんが、技術的なところの波及効果であったり、広い視点ではいろいろそういったスタートアップが関わってくる技術的な要素もあると思いますので、そういう意味で、狭い意味での原子核にとどまらずに、原子核という分野の定義を再定義し直すぐらいの勢いで、広く波及していただけるといいんじゃないかなと思っております。
【永江座長】 どうもありがとうございます。ほかに何かございますでしょうか。小関さん、どうぞ。
【小関委員】 加速器の状況をお伝えしておきますと、ごく最近も、EICの加速器の責任者クラスの方々から依頼があって、意見交換を続けております。従来から、クラブ空洞とかコライダーの機器に関しては問合せや協力の依頼が幾つかあったのですが、加速器コンプレックスのそれ以外の機器に関しても開発テーマの提案が出されており、コミュケーションは継続しようと思っています。この中間まとめでの加速器に関する記載はこれでいいと思いますが、非常に熱心な協力要請を受けている状況であるということはお伝えしておきます。以上です。
【永江座長】 どうもありがとうございます。ほか、何かございますでしょうか。よろしいですかね。全体を通じて何かございませんか。よろしいでしょうか。
それでは、本日の会議をもって、中間報告を取りまとめたということにしたいと思います。よろしいでしょうか。
それでは、本日の議事は終了となります。本日は、先ほど申したように、中間報告の取りまとめの回ということで、局長のほうから一言御挨拶があるとのことですので、お願いいたします。
【塩見局長】 失礼いたします。研究振興局長の塩見です。先生方には大変お忙しい中、精力的に御審議をいただきまして、中間報告の取りまとめをいただきまして、誠にありがとうございました。今回、EIC計画への我が国の大学・研究機関の参画及びこれに関連する原子核物理学の新たな展開を積極的に進めていくために、国としても積極的に支援していくことが必要という結論をいただいたものと考えております。文部科学省といたしましては、取りまとめていただきました中間報告を踏まえまして、今後、必要な予算の確保に向けての概算要求について検討を進めてまいります。あわせまして、若手研究者を引きつけるような環境整備など、今後、取組を推進するに当たっての留意点につきましても、本日も種々御意見をいただきましたけれども、中間報告において御指摘をいただいております。これらの点につきましても、検討を進めていきたいと考えております。なお、今回、中間報告ということです。会議の最終の取りまとめに向けまして、先生方にはまたぜひよろしくお願い申し上げます。本日はありがとうございました。
【永江座長】 どうもありがとうございました。ほかに事務局から連絡事項があれば、お願いします。
【細野専門官】 次回の会議につきましては、日程調整の上、追って御連絡をさせていただきます。本日の資料は、会議冒頭に申し上げましたとおり、後日、文部科学省のウェブサイトに公開いたします。また、本日の会議の議事録につきましても、委員の先生に御確認いただいた上で、文部科学省のウェブサイトに掲載させていただきます。以上です。
【永江座長】 ありがとうございました。それでは、本日の会議を終了いたします。どうもありがとうございました。
―― 了 ――