ILCに関する有識者会議(第2期 第6回)議事録

1.日時

令和4年1月20日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

オンライン開催

3.出席者

委員

観山座長、横溝座長代理、伊地知委員、大町委員、岡村委員、京藤委員、熊谷委員、小磯委員、神余委員、東嶋委員、徳宿委員、中野委員、横山委員

文部科学省

池田研究振興局長、坂本大臣官房審議官(研究振興局担当)、渡邉基礎・基盤研究課長、石川素粒子・原子核研究推進室長、林加速器科学専門官、磯科学官

 

4.議事録

【観山座長】  それでは、時間となりましたので、ただいまより国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議(第2期第6回)を開催いたします。
 本日は新型コロナウイルス感染症拡大防止のために、オンライン会議として開催しております。それでは、まず事務局より、委員の出欠と配付資料の確認をお願いします。
 
【林加速器科学専門官】  本日は森委員が御欠席でございます。
 続きまして、配付資料の確認をいたします。本日の資料は、議事次第にございますとおり、資料の1から2、それから、参考資料1から3を配付してございます。
 資料の不足等ございましたらお知らせいただければと思います。
 続きまして、本日のオンライン会議を円滑に行う観点からのお願いでございます。まず、御発言をいただく際は挙手とお名前を発言いただきますようにお願いいたします。御発言なさらないときはマイクをミュートにしていただきますようにお願いをいたします。
 資料を参照して御発言される際は、ページ番号、通しの番号をつけてございますので、そちらをお示しいただければと思います。
 また、本日もこれまでと同様、ユーチューブでライブ配信されてございまして、傍聴は、事前の申込みがございました150名の方が傍聴されてございます。
 本日の資料、議事録につきましては、後日ホームページで公開されます。
 以上でございます。
 
【観山座長】  ありがとうございます。
 前回の会議では、委員からの追加質問に対して、提案研究者側から回答の説明がありましたが、一部回答の修正がありましたので、事務局から説明をお願いいたします。
 
【林加速器科学専門官】  前回の会議におきまして、一般向けの説明につきまして、アンケートを取っていないというようなやり取りがございましたけれども、その際の回答に誤りがあったということで、回答の修正が事務局のほうに寄せられましたので、御紹介させていただきます。
 提案研究者の先生方で改めて確認したところ、大規模なシンポジウム、それから、講演会及び全ての出前授業ではアンケートを取っており、公開可能なアンケート結果は、ウェブサイトで公開しているということで、回答を修正したいとのことですので、追加で御報告をさせていただきます。
 今、申し上げました内容につきましては、参考資料の3、通しのページでは22になりますけれども、そちらを資料として配付してございますので、御参照いただければと思います。
 以上でございます。
 
【観山座長】  ありがとうございます。
 それでは、議題に入ります。まず議題1、議論のまとめ(案)についてです。本日は、これまでの会議での議論を踏まえまして、この有識者会議として議論のまとめに向けて、御議論をいただきたいと思います。前回の会議において議論のまとめ(骨子案)について、委員の先生方から貴重な御意見をいただいておりますが、その御意見を踏まえまして、議論のまとめ(案)を資料として提出しております。
 まずは資料について事務局より説明をお願いします。
 
【石川素粒子・原子核研究推進室長】  それでは、資料1につきまして、事務局から説明させていただきたいと思います。
 国際リニアコライダー(ILC)計画の諸課題に関する議論のまとめ(案)でございます。ページをおめくりいただきまして、目次でございますけれども、目次につきましては、前回の骨子案の項目と同様となってございます。
 中身につきまして、まず1番目として、検討経緯と本取りまとめの位置づけでございますが、こちらにつきましては、(1)として、第1期有識者会議までのILC計画をめぐる背景・経緯を記載させていただき、(2)として、第1期有識者会議の取りまとめ以降の動きを記載させていただいております。
 ページをおめくりいただきまして、最後に(3)といたしまして、本取りまとめの位置づけということで、今回の第2期有識者会議を再開したことと、今回取りまとめるということを記載させていただいております。
 2番目といたしまして、通し番号の6ページでございますが、ILC計画について指摘されている諸課題ということで、第1期有識者会議の取りまとめや日本学術会議の所見を踏まえて、ILC計画に関する主要課題を以下のとおり整理したということで、これまで先生方に御議論いただきました課題、項目につきまして、改めてここで整理させていただいております。
 続きまして、3番、3ポツになりますけれども、通しページの8ページでございます。3ポツのところがILC計画に関する諸課題の現状についてということで、第1期有識者会議の取りまとめ以降の約3年間の進捗状況や国内外の動き等について、提案研究者が公表した報告書等の内容や提案研究者との意見交換、文部科学省から得た国際動向等の情報を踏まえ、ILC計画に関する諸課題の現状を整理すれば以下のとおりとなるということで、これまで骨子案でもお示しさせていただいた各項目についてまとめさせていただいております。
 まず(1)ILC計画に関してこれまで議論されてきた論点について、①として、国際的な研究協力及び費用分担の見通しについてでございます。他の項目でも、構成としては同じような構成にしてございますが、まず、これまでの第2期有識者会議で、提案研究者ですとか、我々事務局から御説明、御紹介させていただいたことに触れて、そういった状況を受けて、第2期有識者会議で以下のような意見が出されたとして、幾つか主な意見を記載させていただいております。そういった議論を踏まえて、「以上のことから」として、それぞれの項目についての現状の認識、見解を記載するという構成を取らせていただいております。
 この①の国際的な研究協力及び費用分担の見通しにつきましては、まず2019年以降、文部科学省において、関係国政府との意見交換などで入手した情報などを基に、最新の各国の動向などを報告させていただいておりますが、そういった内容について改めて記載させていただき、このような関係国政府の状況に関する文部科学省の報告を受けて、第2期有識者会議では、以下のような意見が出されたとして、6点ほど意見を記載させていただいております。
 前回、骨子案の際にも幾つか意見を記載させていただいておりまして、それと前回の会議(骨子案)の議論の際に出た意見も追記するような形で、それぞれの項目、主な意見として記載させていただいております。
 ①につきましては、通し番号8ページの一番下からになりますが、「以上のことから、各国の政府レベルにおいては、ILC計画について、国内ロードマップや予算上の公式な位置づけは示されておらず、第1期有識者会議で指摘された、各国政府による具体的な参画及び経費分担についての見通しが立たない状況には変わりはないと言える」とさせていただいております。
 ページを進んでいただきまして、次の通し番号9ページでございますが、こうした現状に関して論点といったようなところを記載させていただいております。「ILC計画については、国内外の提案研究者コミュニティが日本への誘致を前提として議論を始めて約10年が経過している。これまで素粒子物理学や高エネルギー物理学分野の研究者コミュニティが運営してきた学術的な国際プロジェクトの中には、特定の国が自ら主体的に建設・運営を行う、いわゆる「ホスト国」となり、ホスト国が費用の主要部分を負担して進められている例もあるが、これまでの学術的な国際プロジェクトと比較してもILC計画は異例の規模の大きさであり、核融合エネルギー分野のITER計画等の大規模国際共同プロジェクトに匹敵する規模である。こうした巨額の費用を要する計画であることを踏まえれば、様々な技術実証、合意形成プロセス等の前に、費用分担の議論に直接大きな影響を与える立地問題が、既にILC計画の議論に含まれてしまっていることが、国際費用分担を含めた国際協力枠組みの議論を硬直化させている大きな要因の一つとなっているのではないか。
 加えて、欧州の将来衝突型加速器計画であるFCCについては、フィージビリティスタディ(FS)が開始されるなど、ILC計画も含めて複数のヒッグスファクトリーが世界で検討されている状況にある。これらの提案は、参加国がそれぞれ相当程度費用を負担して共同で進めることなくしては、実現困難な予算規模であり、複数の提案を個別に検討するのではなく、まずは世界で一つどこかにヒッグスファクトリーを実現できるかどうかの可能性について検討することが必要となっているのではないか。なお、仏国高等教育・研究イノベーション省が文部科学省に示した見解でも同様の趣旨が述べられているものと理解される。
 大規模国際共同プロジェクトは、第1期有識者会議でも指摘しているとおり、関係国の相当な資金負担が必要であることから、各国における政府、議会等の承認や賛同、幅広い国民の理解を得ることが必須である。各国内でこうした機運や環境が醸成されるとともに、実現を目指した各国の歩み寄りがあって初めて、各国政府は前向きな姿勢で費用分担を含めた議論を行うことが可能となるものと考えられる。」
 これまでの会議での御議論を踏まえて以上のように記載させていただいております。
 続きまして、②の学術的意義や国民及び科学コミュニティの理解でございます。通し番号9ページから通し番号10ページにかけて、先ほどの①と同じように、これまで御説明いただいたことと、そういったことを踏まえて、第2期有識者会議で意見が出されたことを記載させていただいております。
 その上で、通し番号10ページの中段からになりますが、「こうした議論を踏まえれば、学術的意義についてはその基本的な重要性に変わりはないものの、その成果が巨額の投資に見合うだけの相当な学術的意義を持つものであるかという点を含めて、国民や他分野も含めた幅広い科学コミュニティの理解が十分得られている状況にはないと言わざるを得ない。また、世界が新型コロナウイルス感染症や気候変動影響への対応などの喫緊の課題に直面している現状においては、国家戦略として高い優先度があるものと考えることは難しい。
 ILC計画は、完成後の運用費を含めれば少なくとも東京オリンピック・パラリンピック大会と同規模の巨額の経費を要すると見込まれることから、国民の幅広い理解・支持が不可欠である。ILC計画には、立地地域の発展への一定の効果や様々な社会的・文化的意義等も付随するものと想定されるが、まずはそのような巨額の投資を行うことによって得られる科学的な成果、学術的意義を国民に対しより具体的に示していくための更なる工夫や取組が必要と考えられる。その際、国民へのアンケートやクラウドファンディング等の活用により、国民の理解度の推移を把握・評価していく取組も重要である。
 また、国民の理解の増進には、特定の地域に偏らない情報提供が重要であり、学術的意義、想定される技術面、環境・安全面の課題を含めた丁寧な説明を基本として、双方向的なコミュニケーションの実施に努めていくことが肝要である」とさせていただいております。
 続きまして、通し番号11ページの③技術的成立性の明確化及びコスト見積りの妥当性でございます。こちらについても、前段につきましては、これまで説明いただいたことと、それを踏まえて、意見交換をなされた主な意見について記載させていただいております。
 その上で、11ページの後段になりますけれども、「こうした議論と、①、②の論点に関わる状況を踏まえれば、技術的成立性等に関しては、様々な技術課題について進展は認められるものの、今後の進め方として今回提案されたILC準備研究所というプロセスにまで踏み込むことは適当とは言えない。
 技術的成立性やコスト見積りの精度を上げるためにプロトタイプ開発や工学実証試験が必要となっていくことについての理解は共有されているものの、(2)にも示されるように、ILC誘致に関する日本政府の関心表明を前提とするILC準備研究所という形態により研究開発を進めることは現時点において困難と言わざるを得ない。提案されたILC準備研究所のプロセスとは異なる方法による研究開発、国際研究協力の進め方(学術的に深く関わる実験面の性能目標の明確化を含む。)について、提案研究者コミュニティによる再検討が必要になっていると考えられる。
 なお、既に同種の超伝導加速空洞が実装されている欧州XFELが運用を開始しているところであり、条件が異なるものの、欧州XFELの運用状況・実績について詳細に分析し、より精緻に技術面、コスト面のリスク評価していくことも重要である」とさせていただいております。
 続きまして、④のその他でございますが、ここも同様に、これまでの報告発表についてと主な意見を記載させていただきまして、最後、3行になりますけれども、「人材の育成・確保の見通しは、その前提となる計画全体の具体的な進め方と大きく関係し、計画の見通しがない中では不確定要素が大きいため、他の重要課題と合わせて検討される必要がある」とさせていただいております。
 続きまして、(2)ILC準備研究所の提案に対する考え方でございます。こちらにつきましても、前段において、提案研究者からの発表ですとか、そうした説明を踏まえて、第2期有識者会議で出された意見を記載させていただいております。
 次の通し番号13ページのところに、「これらの議論を踏まえれば」ということで記載させていただいております。「これらの議論を踏まえれば、既に議論されたようにILC本体に関する国際費用分担等の見通しは立っておらず、また、国民及び科学コミュニティの理解も十分と言える状況にはない中において、ILC準備研究所のプロセスに進むことについて、国民の理解を得ることは困難と考えられる。文部科学大臣の国会答弁に示されたILC準備研究所に関する見解も踏まえれば、提案書に示された個々の内容の是非に関わらず、現状では、ILC本体の日本誘致を前提としたILC準備研究所のプロセスに移行することは困難であると言わざるを得ない。
 これまで議論されたように、各国の研究機関が共同で必要な技術開発を、各研究機関の状況を踏まえて、より現実的な規模から進めていくなど、今回提案されたILC準備研究所のプロセスと異なる方法による研究開発、国際研究協力の進め方について、提案研究者コミュニティによる再検討が必要となっていると考えられる」とさせていただいております。
 これらの現状についての認識を受けて、最後、4番目として、「まとめ」として記載させていただいております。「以上の議論をまとめると、結論は以下のように整理される」として、「これまでの議論から、ILC計画については、第1期有識者会議の取りまとめ以降約3年がたった現時点において、一定の技術的な進展とは認められるものの、ILC計画の今後の見通しを明確にするような大きな進展は見られない。また、こうした状況と併せて、2021(令和3)年2月の文部科学大臣の国会答弁におけるILC準備研究所に関する見解も踏まえれば、現時点において、提案研究者コミュニティが希望するILC準備研究所段階への移行を支持することは困難であると言わざるを得ない」としております。
 こうした結論に加えて、ここから「ILC計画を巡る諸課題の現状は上述のとおりであるが、今後の本分野の継続的な発展を願う観点から、第2期有識者会議として以下のように付言したい」ということで、これまでの委員の意見、会議での意見などをまとめて、第2期有識者会議として以下のように付言したいということで記載させていただいております。「素粒子物理学、また、その基盤となる加速器科学の分野において、日本はこれまで多くの日本人ノーベル賞受賞者を輩出するなど、世界的に高いプレゼンスを有し、今後とも世界をリードする研究成果を創出していくことが期待されるという点は、第2期有識者会議においても理解が共有された。世界の素粒子物理学の将来を展望すれば、ヒッグス粒子の精密測定やその先にある「標準理論を超えた物理」の開拓が持つ学術的意義の大きさそのものに変わりはない。一方で、昨今の各国の厳しい財政事情等も踏まえれば、ILC計画の進め方について、提案研究者コミュニティを中心に再検討する時期に来ていると言える。
 この再検討に当たっては、ILC計画のみに閉じた議論ではなく、現在進められているFCCのFSの検討状況等も視野に入れながら、どのように素粒子物理学、加速器科学の分野の将来像を描き、サイエンスを継続的に発展させていくのか、ILC、FCCを含めてヒッグスファクトリーに関する国際的な研究開発戦略を中長期な時間軸でどのように再構築していくのか、その戦略の核心をなす技術課題は何かといったことと合わせて検討・整理していくことが必要となっているものと考えられる。
 それまでの間、ILC計画については、今回提案されたILC準備研究所にこだわるのではなく、国際的な費用分担の議論に直接影響を及ぼすサイト問題を一旦切り離し、最新の技術動向も踏まえつつ次世代加速器の開発に向けて戦略上重要となる技術課題等を、関係国の研究機関による適切な分担の下で、まずは着実に実施するというアプローチを模索し、様々な状況を踏まえながら段階的に研究開発を展開していくべきではないか。
 なお、このような巨額のプロジェクトを実現させるためには、ITER計画等の過去の大規模国際共同プロジェクトの合意形成プロセスも参考としつつ、関係国の政府関係者が各国内で適正な手続きを経つつ、また、それぞれの事情を共有しながら議論できる環境が醸成されることが重要である。また、国内外の様々なステークホルダーの幅広い理解・支持の拡大に向け、関係者間の信頼関係を保ちながら、研究者コミュニティが地道な努力を積み上げていくことも重要である。この点については、本年、新たに設立されたILCジャパンの今後の活動に期待する。」
 最後、通し番号の15ページになりますが、「改めて世界の素粒子物理学、加速器科学の研究者コミュニティにより、将来の発展に向けてより現実的な検討が行われることを期待したい」と、付言の部分をまとめてございます。
 資料1については以上でございます。
 併せて資料2につきましては、前回、第5回の有識者会議の主な意見も加えまして、有識者会議でのこれまでの主な意見をまとめさせていただいておりますので、議論の際に参照いただければと思います。
 事務局からの説明は以上でございます。
 
【観山座長】  ありがとうございました。それでは、質疑に入りますけれども、今、説明のあった取りまとめ(案)の項目ごとに質疑を行いたいと思います。
 まずは資料全体の1ページ、検討経緯と本取りまとめの位置づけについてです。
 第1期有識者会議から、検討経緯やILC計画について記されています諸課題の進捗状況を確認して、第2期有識者会議として取りまとめた旨、記載されておりますが、ここはいかがでしょうか。
 前段の部分でありますので、御意見はよろしいですか。徳宿先生。
 
【徳宿委員】  ちょっとマイナーなところではあるのですが、この後も何個かありますので、最初に言っておくと、結論については非常に、みんなで議論して決めるものだとは思いますけれども、結論に至るためのファクト的なところを、ちょっと書き方で変なところがある場合に指摘しておきたいと思います。というのは、我々がこういう結論をしたという理由の前提が、我々が誤解しているように取られると、有識者としてやっぱり成り立たないと思いますので。ということを言っておいた上で、通しページで5ページ目の2番目のパラグラフですね。欧州の物理戦略が策定されたというところですが、ここの「同戦略」からですが、「同戦略では、電子-陽電子ヒッグスファクトリーが『最も優先度が高い次の衝突型加速器である』とされ」と書いてあって、その次のように、「ILC計画に関しては」としていますが、我々はもう何度も議論しているから分かりますけれども、普通の人が読んだ場合に、この電子-陽電子ヒッグスファクトリーの一つがILC計画であるということが、このままでは読み取れないと思うのですね。だから、「その一つであるILC計画についてはこういう具合にする」とか、あるいは、「したがって、ILC計画についてもこういう具合に記載された」というような書き方をするのがよいのではないかと思います。
 すみません。マイナーなところではあります。
 
【観山座長】  「その一つであるILC計画」というほうが続きがいいかと思いますけども。はい。ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。
 また後で振り返ることもあろうかと思いますので、それでは、次の6ページに、ILC計画について指摘されている諸課題について、これは、第1期有識者会議や日本学術会議の所見を踏まえたILC計画に関する主要課題を整理しておりますが、これはこれでよろしいでしょうかね。よろしいですか。
 これは課題ですので、前回の有識者会議、日本学術会議から指摘された課題は取り上げているということでございます。
 
【神余委員】  すみません。神余です。
 
【観山座長】  どうぞ。神余さん。
 
【神余委員】  いや、マイナーなところ、文章のところなんですけど、これはこの時点で指摘したほうがいいんでしょうか。それとも後で指摘したほうがいいんでしょうか。中身というよりは表現の部分です。
 
【観山座長】  今、言ってください。
 
【神余委員】  ちょっとマイナーなので、どうかと思いますけども、では、申し上げますと、6ページの(5)の一番下のほうですけども、ア、イ、ウとありますね。「供給可能な人材の量や時期を踏まえた国際分担」とありますけども、この「時期」というのは、タイミングと言うんでしょうか。「具体的な時期」という意味じゃなくて、「時宜」じゃないでしょうか。便宜の「宜」。「時」と、それから、便宜の「宜」ですね。「時宜」、すなわち適当な時期。ちょうどよい時期と、こういう意味じゃないかと思いますので、この「時期」は、時期ではないんじゃないかなと思います。すみません。この時点ではマイナーな指摘ですが、どこかでしなくちゃいけないなと思ったので。最後にやるというのであれば、最後でも結構です。もう1点ありますから。あんまりこういうことばかり言ってもしようがないので、今回これにとどめておきます。
 
【観山座長】  はい。以前の学術会議では、第1期の有識者会議でどういう文章になっていたかというのもちょっと関係しますけど、適切な指摘だと思います。ありがとうございました。
 大町先生。
 
【大町委員】  6ページで、もっとマイナー点なんですけれども、(3)のマル2のところに、「抗口周辺や掘削残土」と書いてありますが、最初の「こうぐち」というのは土へんのほうがよろしいと思います。
 
【観山座長】  そうですね。
 
【大町委員】  非常にマイナーで恐縮ですが、それだけお願いします。
 
【観山座長】  ありがとうございます。正式なまとめになりますので。ありがとうございました。
 それでは、次、8ページの3、ILC計画に関する諸課題の現状についてです。ここはさらに分かれて項目ごとに質疑を行いたいと思います。
 まずは(1)、①の国際的な研究協力及び業務分担の見通しについてです。各国政府による具体的な参画及び経費の分担についての見通しが立たない状況は変わりがないとか、各国内で機運や環境が醸成されている歩み寄りがあって初めて費用負担を含めた議論を行うことが可能になると考えられるとの記載ですが、御意見、御質問はございますでしょうか。どうぞよろしくお願いいたします。
 徳宿先生。
 
【徳宿委員】  度々すみません。まず最初のパラグラフで2点あるのですが、一番最後のところ、ESFRIについて書いてありますけれども、これは会議の中で中田さんがおっしゃったように、ILC計画は、現時点ではESFRIで議論するべきものではないので、そこに位置づけられていないのが当たり前だということだったと思います。だから、ここのESFRIについては削ってよいのではないかと思います。「各国のロードマップについても、位置づけられる見通しが立っていない。」というところは、多分そうなんだろうと思いますので、残すとしても、ここは削ったほうがよいのではないかと思いました。
 
【観山座長】  どこからどこまでですかね。
 
【徳宿委員】  「ロードマップを改訂中であるが」で、最後に来て、「各国のロードマップにおいてもILC計画が位置付けられる見通しは立っていない」で十分意味が通じるのではないかと思います。
 中田さんがおっしゃっていたように、ESFRI、高エネルギーの将来計画については、CERNのヨーロピアンストラテジーで議論するということになって、そこで決まった計画についてESFRIで書くという形になっているはずですので、今の時点でESFRIで議論するということはないと思います。
 
【観山座長】  坂本大臣官房審議官、お願いします。
 
【坂本大臣官房審議官】  ありがとうございます。ESFRIについては、国際的な10月に行われた5か国会議におきましても、フランスからも明確に言及がございます。そして、実際、ESFRIのロードマップ2021を見ましても、PARTICLE & NUCLEAR PHYSICSという項がきちっと立てられていて、このランドマークプロジェクトには該当しないですけれども、GAPS, CHALLENGES AND FUTURE NEEDSというところで、FCC、それから、ILCが書かれてあるということで、関連は十分にあると我々考えております。
 このESFRIは、御存じのとおり、各国政府がヨーロッパで代表を派遣して、閣僚会議に諮問するという、非常に行政的には重要な会議でございますので、フランス政府から言及したこともあり、我々はこれを今後の国際協力のベースになるものというふうに文科省としては認識しておりますので、書いていただくほうがよいと考えております。
 
【観山座長】  よろしいですか。どうぞ。
 
【徳宿委員】  ありがとうございます。ただ、やっぱり確認してほしいのですが、高エネルギーの将来計画については、CERNの理事会、ここも各国政府からの代表が来ている人たちで成り立っているところでして、そこで議論して、そこが終わった後で必要ならばESFRIに出すという形になっていて、そのためにESFRIに対してCERNのディレクタージェネラルが多分オブザーバーという形で入るという形でできていると思います。だから、高エネルギーの将来計画については、2レベルあるので、最終的に、あるプロジェクトが高エネルギーの中でアプルーブされて議論したときには、ESFRIのプロジェクト・ランドマークに位置づけられる可能性はありますが、その前に位置づけられないのは、ある意味で当たり前なので、あえて書く必要はないのではないかというのが私の結論です。
 
【観山座長】  坂本さん。
 
【坂本大臣官房審議官】  ありがとうございます。確かに徳宿委員が言われたような考え方もあるかもしれませんが、ESFRIのランドマークには、E-XFEL、あるいはドイツのFAIR、あるいはCERNのハイルミノシティーLHCというものが列挙されております。したがって、そういったものの将来計画をどう位置づけていくのかということも、このESFRIには議論されておりますので、そして、これは各国政府の研究インフラ政策にこれから大きな影響をもたらす。これはフランスの見解でございますので、ここは、我々は事実関係として書かせていただくほうが適切だと考えております。
 
【観山座長】  どうしましょうね。徳宿さん。
 
【徳宿委員】  そうですね。一応もう一度言いますと、私は、高エネルギー分野の計画について言っているという点が一つで、それで、そういう意味ではXFELとGSIのFAIRは高エネルギー分野ではないので、ESFRIで議論しているんだと思います。HL-LHCに関して載っているというのも確かですが、それも最初からすぐに議論しているのではなくて、ヨーロピアンストラテジーのほうで議論して、その上で、プロジェクトとして確立された上でESFRIで載ったという具合に、高エネルギーではその2段のステップの下にやっていたというのもあります。ですので、私にはちょっと違和感は感じますが、そこは、その辺も踏まえた形で書いていただけるならば構わないと思います。
 
【観山座長】  間違っていることではないんだけれども、あえて、2段階あるので、1段階でまた議論されて、結論は出されていないので、2段階目のESFRIでこれが位置づけられていないのは当然のことではないかという意見ですね。分かりました。
 
【徳宿委員】  そのとおりですね。
 
【観山座長】  ここはあずからせていただいて、文章を考えたいと思います。この章で重要なのは、1つは、ILC、FCC、つまり、巨大なプロジェクトが進まないと、ヒッグスファクトリーというものになかなか研究が進められないということは分かるものの、そういう巨大なものを世界に数台作るのかということが一つ議論になったと思いますよね。やっぱりそういうものは素粒子物理及び加速器の将来像としてどういう形がいいのか。多分、多額の経費がかかるので世界に一つで研究を進めていくというレベルにもう至っているのではないかということが一つ御意見でもありました。その際、ニワトリが先か卵が先かという問題があって、ほかの分野に比べて、これが極めて巨大な経費がかかる計画であるということが関係しています。それはどこから来ているかというと、高エネルギーグループの一つの慣習として、天文とかそこの分野ではありませんけれども、ホスト国というか、立地した国が非常に大きな額を出してきたというのがあって、それが、日本の経費負担が大きくなって、ニワトリか卵かという感じになって、なかなか事業が進んでないという状況があるのでないかという論調につながります。そして、やっぱりヒッグスファクトリー実現には、各国が、一つは将来像をまとめるということと、大きな計画をするためにはそれ相応の歩み寄りがないと物事が進んでいかないのではないかという議論になっているということでございます。
 いかがでしょうか。それでは、また後でも……。徳宿先生。
 
【徳宿委員】  私も観山座長のおっしゃることはそのとおりだと思いますので、そういう形で書くというのに関して反対しているわけではありません。ただ、それのためのファクトがちょっとゆがんでいるところがあるのでというので指摘したいと思います。言う必要がないのがあるのではないか。
 あと、何点も指摘ですみませんが、もう一つだけ言っておくと、同じようなところで9ページの真ん中のFCCのところからの最後に、フランスの高等教育・研究イノベーション省の見解にも同様に書いてあると書いてありますが、これもちょっとミスリーディングなので、削除したほうがよいのではないかと思います。これは別添6を私のほうでも読みましたが、何が書いてあるかというと、まずフランスはILCのことを言っているのではないんですね。FCCについて言っていて、FCCには慎重でなくちゃいけないと。慎重でなくちゃいけないのは、やっぱりいろいろな計画があって、そのうちの一つなんだから議論しなくちゃいけないというのがフランスのメッセージだと別添6では読めます。それを、ILCもその一つだからフランスはILCのこともそう言っているのだと解釈するのは拡大解釈になりますので、どうしても書くのであれば、同様の趣旨をFCCについて述べられていると書くならば話は分かると。
 以上です。
 
【観山座長】  坂本さん、どうぞ。
 
【坂本大臣官房審議官】  ありがとうございます。これは交渉当事者として明確に申し上げますけれども、先ほど言及がございました、各国が合意された5か国会議のサマリーの中で、フランスが複数提案のあるヒッグスファクトリーについて国際的な議論が必要ということは、FCCとILCは明確に入っております。これは実際の議論がそういう形で出ましたので、ここは表現を調整するということはあるかと思いますけれども、複数の提案を個別に検討するのではなくて、国際的な議論を複数まとめてすることが必要ということは、この部分は、交渉で出てきた事実、意見交換で出てきた事実として、ここはしっかりと書かせていただく必要があると考えております。
 
【観山座長】  では、これも私のほうでもう1回読ませていただいて、「同様の趣旨が述べられている」という御意見、でよいような気もしますけども、坂本さんによれば、両方書いてあるということでありますが、確認して、後でもあるんですけども、最終的にまとめたものはもう1回皆さんに回覧いたしますので、その点でもう1回やり取りはできると思いますので、この点も、事実関係の部分ですので、関係者によってこれは違うよと言われると信頼感も失いますので、注意してやりたいと思います。
 それでは、次、②の9ページの下から、学術的意義や国民及び科学コミュニティの理解についてということで、学術的意義の基本的な重要性には変わりはないが、巨額な投資に見合うだけの学術的意義を持つかどうかという点を含めて、国民や他分野の科学コミュニティの理解が十分得られている状況ではないなどの記載がありますけども、この点について、御意見いかがでしょうか。
 岡村先生、どうぞ。
 
【岡村委員】  10ページの上のほうにある、いわゆるここでやった議論の中身についてです。中ほどに「マルチパーパス」という言葉が出てきていいますけれども、これはこのままの書き方では議論した中身とは違い、この言葉が誤解されるような気がしています。その一つ上にある「他分野にも波及できるようにするなど」となっているのと対にして書かれると、あたかも他分野に波及できるようにするというのは、もう本来の目的を変えてマルチパーパスにするというような議論があったのかと読まれるかもしれません。実は、これはそうではなくて、他分野での応用につながるような技術開発も幾つもあるし、それから、本来の目的を損なわないビームラインもできるのではないかという提案がたしか提案者のほうからあったので、そういうことを指しています。「完全に素粒子物理に閉じた計画で、ほかの分野は一切関係ないというスタンスでは、国民やほかの科学コミュニティに説得力がないと思う」と、そういう議論が展開されたと思っています。それがここの「マルチパーパス」という言葉と、その一つ上の中黒のようにまとめられるとちょっと誤解されて伝わるのではないかというふうにおそれがありますので、書き方を工夫するとよいというのが提案です。
 以上です。
 
【観山座長】  どういうふうにしたらいいですか。
 
【岡村委員】  このマルチパーパスという言葉をちょっと改善できればと思います。あとで具体的な提案を提出しますので、それを皆さんが次に検討する機会に見ていただければと思います。
 
【観山座長】  はい。送っていただければと私も参加して、修文したいと思います。ありがとうございます。
 ほかにこの章、この②でいかがでしょうか。
 
【横山委員】  横山です。よろしいでしょうか。
 
【観山座長】  横山さん、どうぞ。
 
【横山委員】  その下のポツ、あと文中にいくつかある「国民の理解が進んでいるか」という文言について御提案があります。理解増進という言葉はよく好んで使われるんですが、実は非常に古い言葉でして、どちらかというと押しつけて、学者側が決めたことを理解せよというようなニュアンスがあって、好まれません。最近は皆さん御存じのように、双方向のコミュニケーションだとか、早い段階から、上流からの参加とか、競争もそうですけれども、言われますので、このページ全体に、下のほうにもたくさん入れていただいて、意義としてはとてもよく理解できるんですね。国民に議論に参加してほしいということで、決してこちらが押しつけるというニュアンスで書いてあるわけではないのは分かるんですが、文言として、そういうふうに読み取れてしまいますので、例えば「国民の理解の増進による」とか、そうした文言を、「国民の議論への参画」とか、あるいは「国民との双方向のコミュニケーション」というふうにぜひ書き換えていただけたらと思います。
 関連して、少し懸念しますのは、地元のほうでいろいろ小学生に、あるいは中学生と、お子さんたちに出張授業などをされるときに、どうもプロジェクト推進のための位置づけでやるケースが散見されるということで、やはりそれは地元へのメッセージのゆがんだ活動になってしまいますので、十分に気をつけて、理科の、あるいは科学への興味、関心を保とうとする活動と、プロジェクト推進のようなところは切り分けてしていくような配慮がますます必要なのではないかなというふうにも感じている次第です。付け加えの意見も入りましたけども、基本的には理解増進という言葉は控えたほうがよさそうであるということです。
 
【観山座長】  国民との双方向のコミュニケーションが進んでいるかを評価できるエビデンスが必要であるというような形にさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
 
【横山委員】  はい。ありがとうございます。
 
【中野委員】  中野ですけど、すみません。
 
【観山座長】  中野さん。はい。
 
【中野委員】  ここだけじゃなくて、いろんなところで新型コロナウイルス感染症とか気候変動の影響というのが出てくるんですが、それと比べて高い優先度があるものと考えることは難しいというのを我々が言う必要が果たしてあるのかと疑問に思います。これは多分議論し始めると時間かかると思うんですが、基礎科学というのが、例えば新型コロナウイルス感染症と比べて、優先度が高い、低いということがそもそも議論できるのか。長期的に見れば、必ず基礎科学も大事だということになるのではないかと思います。だから、ここまで書く必要はないんじゃないかなと思います。
 以上です。
 
【観山座長】  私も少しこれに近い発言をしたと思うんですけども、要は、規模感からして、1兆円に近い建設費、運営費のことを考えると、コロナウイルスにかかる予算が数兆円だとか、オリンピックが数兆円だとかという予算の規模感だけでの話です。基礎科学という面では全くない話でした。基本的に中野先生の御意見に同感します。分かりました。この辺は少し、配慮した書き方にしたいと思います。
 
【中野委員】  新型コロナに関しては本当に費用対効果がそれほど出ているのかということは検証されていませんし、新型コロナに数兆円かけるなら1兆円は安いという、そういう議論になることもあるかと思います。
 
【観山座長】  はい。多方面の意見があります。
 岡村先生。
 
【岡村委員】  10ページの下から2番目のパラグラフで、「そのような巨額の投資を行うことによって得られる科学的な成果、学術的意義を国民に対し」というフレーズがありますけども、ここはほかのところとも関係するんですが、今までの議論の中では、科学的な成果と学術的意義に加えて、そういう世界の最先端の研究所を建設するということによって、地域ばかりでなく、日本の国の社会に大きな影響を与えられるのではないかというような議論があったと思いますので、私はそういうことも含めて表現するのがよいと思っています。世界的な研究所の誘致による様々な社会的な好影響に対して説明をするみたいなことの双方向コミュニケーションでしょうか。やはり社会に対する影響というものを考えないと、これだけの大きな計画が広く国民の理解を得られるというのは難しいんじゃないかというのは、議論した大きなポイントの一つだったと思います。人文・社会系の研究者を巻き込むとか、そういう人たちには全く知られていないではないかという議論もありましたので、いろんなことにつながることだと思っています。
 
【観山座長】  指摘された箇所が私はまだ探せていないんですけど。
 
【岡村委員】  10ページの下から6行目です。
 
【観山座長】  「学術的意義を国民に対し」という言葉ですね。
 
【岡村委員】  「科学的な成果、学術的意義」、これはもちろん一番重要ですけど、これだけが大計画をやるモチベーションだったのか。経済的な効果も随分議論されましたが、社会に対して非常に大きな影響を与える、若者にポジティブな影響を与えるみたいな話も議論されたので、そういう視点は盛り込んでおくべきではないかと思います。
 
【観山座長】  ありがとうございました。分かりました。
 ほかによろしいですか。それでは、ちょっと時間もありますので、③に行きましょうか。全体のページで11ページになります。③、技術的成立性の明確化及びコスト見積りの妥当性についてです。様々な技術課題についての進展は認められるものの、今回提案されたILC準備研究所というプロセスまで踏み込むことは適当とは言えないなどの記載がありますけれども、御意見、御質問ございますでしょうか。
 準備研究所の点については、(2)のところでまとめて書いてありますけれども、様々な御意見がありましたけれども、規模もそうですが、コミュニティでもまだしっかり議論されていないのではないかというような議論もあったと思います。よろしいですか。
 では、また戻ることもできますけれども、では、次、12ページの④、その他についてです。この部分は短いんですけども、人材の育成・確保の見通しは、計画の見通しがない中では不確定要素が大きいため、他の重要課題と合わせて検討される必要があるなどの記載があります。御意見、御質問、ございますでしょうか。
 徳宿さん。
 
【徳宿委員】  これも細かいですが、我々のまとめでCERNをここで特出しする必要はないのではないかと思います。かつ、委員からのいろんな意見でも、ほかの各国からのいろんな同じような協力が大事だという発言もあったので、このCERNという言葉を「各国が」とかそういう形に直したほうがいいのではないかという気がします。
 
【観山座長】  私もこれは発言したと思いますけども、一番近いところの、世界で一つ作るということになれば、対応として、CERNが非常に大きな経験もあり、各国で作られているということからあれですけど、別段CERNと書く必要はないですね。
 
【徳宿委員】  アメリカもいますし、全世界広いですので、ヨーロッパだけに限る言い方は避けたほうがよいと思います。
 
【観山座長】  それでは、次の(2)に進みましょうか。同じく12ページ、(2)ILC準備研究所の提案に対する考え方についてでございますけれども、現状では、ILC本体の日本誘致を前提にしたILC準備研究所のプロセスに移行することが困難であると言わざるを得ないと書いてありますけれども、御意見、御質問、いかがでしょうか。
 中野さん、どうぞ。
 
【中野委員】  全体的には賛成なんですが、日本誘致を前提とするということと、ILC準備研究所のような何らかの組織体をつくるということは、別のことだと思っているんですね。今回我々が言いたいのは日本誘致を前提とするのは非常にまずいですよと。そこにこだわると、暗礁に乗り上げるということを言いたいわけなので、そのことが少し分かるようにしたほうがいいかなという感じがします。
 
【観山座長】  日本の仕組みとして、これだけのことを、仮に進めば、止められないというか、ILC建設に方向が進むという状況はあります。それを前提としているわけではないけども、そういう形で進むと、中野さんが言うのは、困難になりますよというニュアンスが伝わるような形にしてはということですね。
 ては、徳宿さん。
 
【徳宿委員】  徳宿です。関連してなんですが、やっぱりここは僕も気になりまして、要するに、書き方として、「日本誘致を前提としている提案」とか、「前提としたILC準備研究所」という書き方をしていますが、これはやっぱり我々は議論するべきで、有識者会議として、彼らの準備研究所の提案というのが、日本誘致を前提とした提案だと我々が判断しているように、この文章は取れますけれども、本当にそうなのかというのはやっぱりきちんと議論したほうがいいと思います。
 ここの(2)の一番最初のパラグラフのところに書いてあるのが多分、プロポーザルに書いてある一番近い書き方で、ここに書いてあるのは、提案書では、ILC準備計画のプロセスに進むためには、日本政府がILC誘致に関心を表明し、関係国に対してILC計画実現に向けた議論を呼びかけることが前提ですね。と言っているわけです。これは多分、僕はもちろんこの文章を書くのに関わっていませんが、非常に苦労してこういうフレーズになったのだと思いますが、このフレーズを我々有識者会議が日本誘致を前提としているという書き方でくくってしまっていいのかというのは、きちんと議論して、そうなんだ、だから駄目なんだというのだったら、もちろんそう書くべきですけれども、ここは気をつけたほうがいいのではないかと思います。
 そういう意味で、その後で出てくるときに、誘致を前提としているILC準備研究所という書き方は、私には不適切なのではないかと思うので、単に全部、準備研究所でいいんだと思います。
 
【観山座長】  一つは、慎重な言い回しがどういうことを指しているかと。
 
【徳宿委員】  ですよね。だから、提案書は、これだけ気をつけて書いているのに対して、有識者会議として、我々はそれをセンスしないんですかと。でも、これは準備と言っているんですよと言い切ってしまっていいのかというのは、我々の立場を、我々のスタンスがどこにあるかという議論になるのだと思います。
 
【観山座長】  はい。坂本審議官。
 
【坂本大臣官房審議官】  ありがとうございます。重要な論点で、ここは明確にしておいていただく必要があると考えております。2つ申し上げます。
 1つは、このIDTのレポートをどういう意図で書かれたかというところも当然あるかとは思いますが、政府の関心、表明ということがどういう意味を持つのかというところは、行政は、これは行政としての解釈がございます。ITER計画を見ますと、ITERについては、工学設計活動、これはまだサイトについて具体的に議論する前の工学設計活動が終わった後に、誘致を視野に入れて、政府間協議に臨むということが閣議了解されております。今回のILCの建設費とほぼ同じITERについて閣議了解がなされるということで、政府の関心表明というのはそういう手続が、例えば必要になるということ、これを御理解いただきたいと思います。
 それが1点と、もう1点は、5か国会議で、アメリカ、これは各国がそうですけれども、我々日本の代表に対して、ホストカントリーということを政府当局者は明確に述べています。それで、アメリカの発言を見ていただければ分かるんですけれども、準備研究所のプロセスというのは、ホストカントリーによってリードされるということが明確にアメリカ政府から言われております。
 したがって、IDTの報告書で日本政府は関心を表明すると書かれていたとしても、政府間では、日本がホストすることを前提にして準備研究所を始めるということが議論されておりますので、そこは行政的な解釈としては、日本誘致が前提と、もう事実上なっていると。各国政府との関係ではですね。そう申し上げざるを得ないと考えております。
 以上です。
 
【観山座長】  坂本さん、やっぱりマイクが遠いのか、なかなか聞きづらい点があるんですが。この最初の文章の慎重な書き方は、我々の意見としてはどうでしょうかね。こういう準備研究所をILC誘致の前提とすべきではないというか、前提とすると、問題がさらに難しくなってしまうという点と、一方で、前提でないとしても、今の時点でこの規模の準備研究所をつくるということはなかなか難しいと判断せざるを得ないという状況の2点は、やっぱり了解できるところではないかと思いますので、そういう方向性を基に修文したいと思いますが、いかがでしょうか。
 
【神余委員】  すみません。
 
【観山座長】  神余さん。
 
【神余委員】  私はこの議論は、最初から日本に誘致することがどうかという観点で我々は議論してきたのではないかと思っています。そこは何か急に変わったようなことではないと私は思いますね。そうでなければ、有識者会議を開いて、このホストカントリーとか、あるいは誘致の問題も含めて、併せて議論する必要はないわけで、一般論として、例えばどこか世界に一つ、そういうものをつくるのにどうしたらいいかというような議論を恐らくしてきたのではないんだろうと思います。ですから、最初から最後まで、今日に至るまで、日本にこういうものを誘致するのはどうか、準備研究所も含めて、そういう流れで来ているんだろうと。筋は、やっぱりそこは通しておかなくてはいけないんだろうと思います。その上で、ホストの問題とか、各国からの協力は得られないとか、日本政府の立場からすれば、各国からやっぱりサポートがないとなかなか言い出しにくいとか、そういうことだったと思いますので、そこを変えてはいけないと思うんですね。ですから、あたかもフワッとした一般論で、そもそも世界に一つ、どこかで作るときにどうしたらいいか。そのための準備研究所をつくったらどうですかみたいな、あるいはそれは駄目だというような議論ではなくて、さっきの繰り返しになりますけども、日本誘致が前提としてあったと思います。でないと一貫性がないんだろうと思います。
 それから、もう一つ、世界に一つ、ヒッグスファクトリーを作るという話になると、それはCERNしかないわけですね。ですから、そのことを議論しろというふうに、この有識者会議はエンドースをしているのかどうか。つまり、世界に1つしか作ってはならないという立場をエンドースするのかどうかというのは非常に微妙な問題だろうと思います。もしヒッグスファクトリーがたった一つしかないということであれば、それは日本につくるという議論はそもそもあり得ないわけであって、しかし、それは恐らくILCコミュニティの中では、いや、もう一つ、別にILCのものがあってもいいという認識で議論が始まったんだろうと思います。どうもそこに、最初から一つしかなかったかのように収れんさせてしまうのはちょっと違和感を覚えますね。ヨーロッパではそう思っているのかもしれませんが。それだったらもうCERNでFCCでやるのかどうかということの妥当性ですか、そのことを我々は検討してきたということにすぎなくなるので、そういうことだったのかなと、少し疑問を感じます。
 
【観山座長】  1点目については、確かに我々は、基本的には誘致というものを前提としてというのは、議論の筋だったと思います。ただ、慎重に書かれたという部分、これは報告書にあった部分なんでしょうけども、それを踏まえて、状況が分かるような形で修文したいと思います。確かに、神余先生が言われるとおり、誘致というものの、要するに、これを加速する意味で、準備研究所を日本につくるという状況で議論していたということは、多くの委員の状況ではなかったと思います。だから、そこら辺をちょっと、先ほど言ったところまでは踏み込まないで、しかし、状況は分かるような形で示したいと思います。
 2番目はどうですかね。ヒッグスファクトリーを作るということに関して、CERNがあったとしても、関係者の話し合いがいい形で進めば、ILCで、直線でリニアコライダーという、リニアということは非常に重要なファクターですので、CERNがあったとしても、世界で一つILCを作るという話にならないことは、私はないと思いますけど。私は分野が違いますので、正確なところは申し上げませんけれども、ヒッグスファクトリーを一つ作るのであれば、CERN以外には考えられないという状況ではないと思います。
 
【神余委員】  そこは事実関係のことも関係しますので、はっきりしておかなくてはいけないと思いますけれども、ヒッグスファクトリーと言った場合には、FCCも入るし、それから、ILCも入るという話でしたね。ですから、それはそういうものがヒッグスファクトリーで、そのヒッグスファクトリーを世界に一つ作ったほうがいいという議論をこの報告書では指摘しているのだと思います。そうすると、もうこれはILCも含めて、およそヒッグスファクトリーは世界で一つだというところからまず議論しなさいということを言っているに等しいわけです。そうすると、これは今どこにあるかというと、ジュネーブにしかないわけでして、ですから、そこでILCも含めてやれという世界の議論に有識者会議としても、積極的か、消極的かは別としても賛意を示すということになるのですが、今、観山先生がおっしゃったように、いや、ILCはどこかにあってもいいんだという話は、少し矛盾しているんじゃないでしょうか。そこのところを報告書の中でははっきりさせておかないといけないのではないかと思いますが。
 
【観山座長】  中野先生、どうぞ。
 
【中野委員】  ただ、FCCは、どう言ったらいいかな。スケジュール的にも、ヨーイ、ドンで一緒に始めたら完成がILCより遅くなるし、それから、予算額もILCより大きいので、FCCの計画があるからといって、ILCと競合するとか、FCCが将来できるからILCを作らなくていいとかそういう議論にはならないような気がいたしますが。
 
【観山座長】  近い分野の方で少し。徳宿さん、どう思われます?
 
【徳宿委員】  中野さんのおっしゃるとおりだと思います。FCCについては、今、CERNにあるわけでも何でもないので、これの実現というのも非常に、できるかどうかでも怪しいし、やっぱり技術的にも、あるいは金額的にもできるものか分からないです。だから、CERNならこれはできるのだからそっちにという形の議論は非常に危険で、有識者会議としてやるべきではないと思います。
 
【観山座長】  私の認識するところで……。小磯さん、よろしくお願いします。
 
【小磯委員】  小磯です。この報告書の、結局、最後のほうにまとめていただいた、改めて世界の素粒子物理、加速器科学のコミュニティで、将来の発展に向けてより現実的な議論が行われることを期待するというのが、むしろ今からやってもらいたいということだと思っているので、ここで一つにするべきということを私たちは言いたいわけではないのだと思います。
 
【観山座長】  ほかに御意見はいかがでしょうか。
 一つにすべきであるということではなくて、こういう意見があったという、意見の中には書いてありますので、我々の論調として、一つにすべきであるということを高らかにまとめることではないかとは思いますが。ただ、ヒッグスファクトリーはどちらにしても、巨大な額であります。こういう規模のものを複数作っていくというのは、現実的に考えればなかなか難しい状況ではないのかなと思います。その中で、やっぱり日本の研究者グループは、リニアのコライダーを計画したというのは優秀な、評価できるところではないかと思います。要するに、CERNは円形加速器で進めてきたわけですけども、それをさらにこういう形で作ろうと思うと非常にスケジュール的にも規模的にも金額的にも大きくなるので、そういう状況で世界のコミュニティでよく議論していただきたいと思います。もうCERNがあるからヒッグスファクトリーはFCCだということではないと思いますけどね。
 
【神余委員】  すみません。そうであるならば、9ページのところの表現にも関わってくるのですが、もう少し慎重に書かないといけないと思いますね。つまり、中野先生がおっしゃったように、これは要するに、タイムラグがある話であって、FCCではもっと先の話で、FCCに任しておれば全てできるかというと、お金の問題その他でできない可能性があるので、ならば、前段階として、ILCがどこかで一つであるということを排除しないということであれば、9ページの真ん中のちょっと上ですけれども、ここに、これは我々有識者会議の認識として書いてあるところだと思いますが、「まずは世界で一つどこかにヒッグスファクトリーを実現できるかどうかの可能性について検討することが必要となっているのではないか」と書いてあるのですね。ですから、これはFCCもILCも全部含む話なので、それをどこか一つで作ることをまず検討しなさいというふうに言っていると読めますので、そうではなくて、FCCが将来できるかもしれない。しかし、その前の段階として、あるいは線形型のものが必要になってくるかもしれない。それを、線形型のものも一つ、複数作るのではなくて、一つに絞っていくという、この時間差がある話を世界で一つと言っているのか。その辺がちょっと不明確かなと思います。この辺は若干、検討する必要があるのではないかと思います。ここにまた、フランスもそんなことを言っていますよという話になっているので、ちょっとこれは何やら別の意図を感じるんですけど。
 
【観山座長】  ILCが来たら、スケジュール的にも金額的にも合わないのですから、FCCに乗り込もうということはないと思いますけど。それはもう、幾らなんでももったいなさ過ぎると思いますけどね。ちょっと表現ぶりはよく分かりました。議論されている観点は分かりました。
 ILC準備研究所の書き方についても慎重にしたいと思いますが、最後の4のまとめについてはいかがでしょうか。これはいろいろ、素粒子物理学、加速器科学において今後とも世界をリードする研究成果を創出することが期待されると。ILC計画の進め方については、研究者コミュニティを中心に再検討する時期に来ていること、ILC、FCCを含めてヒッグスファクトリーに関する国際的な研究開発戦略の再構築と併せて検討、整理が必要だと。これは御指摘のとおりかと思うんですね。サイト問題を一旦切り離し、次世代加速器に向けて重要な技術課題等を国際協力の下で着実に実施するべきではないか。関係国内で適正な手続きを経つつ、関係国が議論できる環境の醸成が重要である。それから、関係者間の信頼関係を保ちながら研究者コミュニティが地道な努力を積み上げていくことが重要であるというようなポイントが記載されていますけれども、いかがでしょうか。
 私は中段の14ページの、素粒子物理学、また、基盤となる加速器分野においてと続きまして、最後の2行で、「一方で、昨今の各国の厳しい財政状況を踏まえれば」というところなんですが、やはり日本の研究者が、リニアコライダーという直線加速器を前面に対して世界の研究者と連携してきたという実績、これは非常にすばらしいものがあると思いますので、やっぱり円形加速器では、エネルギーは漏れてしまいますので、やっぱり直線加速器という方向に進もうということを随分、日本の研究者を中心に世界に発信してきて、実現するかどうかはまた別として、非常に大きな運動が出てきたということは、技術的に、かつ、理論的にも重要な視点を日本のグループが引っ張っていっているということは強調しておいたほうがいいと思いますけどね。
 岡村先生。
 
【岡村委員】  一つ、内容に入る前に形式的なことで気になっているところがあるんです。冒頭の出だしに、文部科学大臣の国会答弁が引用されていますよね。これはもちろん議論になるし、重要なポイントではあるんですけれども、まとめの冒頭にもう一度これが引用されているというのは、私にはとても違和感があります。というのは、こういうふうな書き方をされると、結局は大臣答弁がこの有識者会議の境界条件になったみたいな議論がされたのではないかという感じに受け取られて、それだったら有識者会議では、その境界条件が決められた中でしか議論がされなかったのかと誤解されるのではないかという気がします。これは本文の中で重要な論点として会議で議論したと書いてありますので、私はこれはここには書かないほうがよいというふうに思います。とても違和感があります。
 
【観山座長】  確かにそうですね。これを境界条件にして我々は議論したわけではありませんので。
 
【中野委員】  すみません。中野ですけど、よろしいですか。
 
【観山座長】  はい、どうぞ。
 
【中野委員】  書いてあることは大体賛成しますというか、いいと思うんですが、書き方の問題でやっぱり前回の有識者会議のときにも言ったんですが、非常にネガティブな印象を与えるかなという感じがします。付言したいのは、最後から2つ目のパラグラフの内容は非常にもっともという感じがするんですが、こういうメッセージがもう少し伝わるような書き方に変えたほうがいいんじゃないかという気がいたします。最初の段落だけ読んでしまうと、準備研究所というのは難しいから諦めなさいというので、準備研究所設置を提案している人たちはがっくりしちゃって、あと読む気がなくなるような書き方なんですが、ここはもうちょっと工夫できないかなと思いました。
 
【観山座長】  私も前回、中野さんがそういうことを言われて、皆さんも割と賛同されたのではないかと思います。随分、そういうふうに書いていただいたとは思うんですけども、確かにまだこれが、準備研究所はもう駄目よと最初に出てきたので、なかなかその後が読み切れないんですけど、先ほど岡村先生が言われたことも踏まえて、なるべくポジティブに、やっぱり若手の人たちもいますので、こういう分野をいろんな形でプッシュしたいと意味は非常にあると思いますが、やり方についてできる限りのポジティブな発信をできればと思いますけどね。ありがとうございます。
 
【中野委員】  具体的にはやっぱり技術的なリアリティを高めていくということが重要だということは認識していて、そのプロセスが必要だということ。それから、今まで研究者コミュニティと言ったときに、本当のボトムアップで、研究者レベルでの議論とか組織とかそういうのはたくさんあるんですけど、機関レベルでの連携というのはなかなかこの計画に関しては十分でなかったということがあるので、そういう機関レベル、それはMOUを進んでやることになるのか、それとも何らかの組織体をつくるかのか分かりませんけれども、それを機関レベルできっちりつくっていくという、その2点に関しては進めたほうがいいんじゃないかなと思います。それで、ワーキングパッケージが幾つか出てきましたが、そのうちの1つとか2つとか取り組んでいただければと考えます。
 
【観山座長】  今言われた機関レベルというのは、国際的機関レベルということですか。
 
【中野委員】  そうですね。例えばKEKであったり、CERNだったり、フェルミラボであったり、そういう法人というか、機関がメンバーであるような、そういう取組が必要じゃないかなと思います。
 
【観山座長】  その一つとして準備研究所というのは、機関間の協力で進めていこうという計画ではあったわけですが、これは技術的なレベルでも研究者レベルでも連携をもうちょっと進めることがよろしいのではないかということは書きたいと思います。
 岡村さん、どうぞ。
 
【岡村委員】  今の話にもつながるんですが、先ほど言いました科学的成果、技術的問題、経済的な問題だけではなくて、やっぱり社会に対するインパクトみたいなものもどこか最後のまとめには盛り込めないかと思っています。具体的に言いますと、最後から2つ目のパラグラフですが、14ページですね。一番最後のパラグラフで、これは、「なお」と「また」として、2つのことが書かれています。一番最初に出る「なお」というのは、国際的な話です。「また」以下では、「国内外の様々なステークホルダー」という具合に、何かぼんやりとした感じで、多くをカバーするように書かれています。ここはやっぱり国内について、国民の幅広い理解を深めるにはどうしたらよいかみたいな、国内の理解を広める事柄も書き込まれるといいのではないかという気がしております。
 
【観山座長】  はい。よく素粒子分野の方とお話しするときに、宇宙はいいですよ。分かりやすい。星と銀河とかきれいな写真を見せられますから。でも、素粒子というのは、宇宙の開闢だとか言うけれども、なかなか理解が進まないんですよねということをよく言われていまして、そこら辺で、どういう形で理解を深めるかというサジェスチョンはありますか。
 たくさんのシンポジウムだとか開催はされているようなんですけども、なかなか認識度を調べてもILCは非常に少ないですよね。
 
【岡村委員】  いいですか。
 
【観山座長】  はい。岡村先生。
 
【岡村委員】  ほかのどなたかの委員も言われましたが、人文・社会系とかそういう、全く違う分野、今まで広報とか講演会をやると、もともと科学に興味がある人が大部分、来られるわけですけど、そうではない方に、例えば哲学とかそういうような人も含めた形で、認知度を広げる。これも非常に長期戦略で、すぐにできる話ではないかもしれませんが、講演会をたくさんやるというのではなくて、全くこういうことに関心がなかったわけじゃないけど、多分知らないから関心を持てなかったという人も多いと思うんですけど、そういう人へ働きかけるみたいな、大きな何か戦略の転換が必要なのかなと個人的には思っています。
 
【観山座長】  なるほど。なかなか難しい。横山先生。
 
【横山委員】  皆様のお話を聞いて、それぞれ大変勉強になっております。私は、このレベルの研究機関というのは、研究機関というか、加速器ですね。これは世界で一つではないかなと思っているんですけれども、ちょっと厳しい言い方をすると、先進研究者のほうが社会を理解することが必要だと思うんですね。国民に対してこれを支持させるように理解を浸透させるのではなくて、やっぱり科学者がもうちょっと、今どうしてこれだけ苦労しているのかという状況をもうちょっと大局的に見る必要があるのではないかなと思います。
 例えばものすごく端的なことを言いますと、日本の経済は、この30年間、落ち込み続けて、平均給与も韓国にも負けているわけですね。だから、アジアの中でもずり落ちてきている中で、例えば子供の貧困は6人に1人だとか、そういう状況にあるわけですよね。その中でも基礎科学というのはもちろん期待をもって応援されていくべきものであるということは、私たちは常々思ってやってきているわけなんですけれども、いかに状況が厳しいかというのを提案側の研究者にもう少し戦略を練って考えていただく必要があると思いますね。
 そういう意味では、やっぱり私のほうから見ていると、懸念するのは、あまり周りが見えていなくて、非常に素粒子物理学者に対して、不信が募っている状況なのではないかというふうに思っているわけです。それは地元でもそうですし、国際コミュニティにおいても、こういうふうに何度も提案することによって期待を持たせて、その都度、落胆させるということを続けていると、日本のこの分野の信頼が保てないということがあるわけですね。なので、その辺は有識者会議としては広い分野を網羅して議論する、我々としてももう少し慎重に進めるように、推進するために活動すべきではないかという提言よりは、やはり国際的な信頼を保ちながら、社会からの信頼を得ながら、どういうふうにやっていくのか。これまでのやり方はやっぱりもう無理があるんじゃないかということをしっかり助言できるような、そういうふうな文章になるといいかなと拝見していまして、最後のほうに、関係者の信頼を保ちながらという、そういう意味でとてもいいのではないかなと拝見しております。もちろん科学の夢を広げて、みんなに理解してもらうことが大事だと思うんですけれども、ちょっと現実をよく見て、しっかりと社会と共有しながら歩めるようにというようなニュアンスの文章が必要なのではないかなと思っている次第です。
 すみません。全体的な意見ということです。
 
【観山座長】  はい。近い分野の方から、辛口の言い方ですけど、確かに村社会になっているんじゃないかという話は少しありました。ありましたというか、感想を持ちましたけど。
 ほかにいかがでしょうか。徳宿先生。
 
【徳宿委員】  ありがとうございます。全体的にはこういう形なのかなとは思うのですが、ここでやっぱり気になるのは、我々、この文章、ほとんどが提案コミュニティに何かしろとだけ言っている形になっている形になっているんですが、有識者会議としてコミュニティがここまでずっとやってきたけども、ここから先も全部コミュニティが何とかしろという提言でいいのかというのはちょっと疑問に思います。
 でも、実はコミュニティだけではないのも確かなので、先ほどの岡村先生もおっしゃっていた、この14ページの最後のパラグラフ、実は2つ、全く違うものが一つのパラグラフになっているわけで、実は最初のパラグラフは、各国の政府関係者が適正な手続を経つつ、共有できる環境を醸成することが重要であるというわけで、これはある意味では政府に対する提言なわけですよね。これをきちんとパラグラフを2つに分けて、ここをしっかりさせるというのが重要なのではないかと思います。
 今のままだとずっと来て、最後の「この点」というのがどの点だか、国語のテストみたいですけれども、明確ではないです。多分前のパラグラフだけなんだと思うんですが、全てをILCジャパンの活動に期待しているように取られますので、ここはまずパラグラフを分けた上で、最初のところに対しても何らかの有識者会議としてのコメントがあるべきかと思います。
 
【観山座長】  まず段落を分けて、各国政府間の適切な手続という部分と、下の部分は、岡村さんが言われた、もうちょっと国際的な機関が日本に設立される効果みたいなのを踏まえて、段落を分けてつくり直すことが適切だと思います。
 では、まとめ以外にも全体を通じて、何か御意見ありますでしょうか。小磯さん。
 
【小磯委員】  今、徳宿先生からコミュニティばかり要求をするだけではなくというお話が出ましたが、コミュニティとしてもやはりここで、今まで、まずILCありきという形で進めてきたやり方。これに対して、将来どうなのかということを再検討するということはやはり大切だと思いますので、そういうことを言っていただいて、これがきっかけとなって、コミュニティの中でも、特に将来を担う若い方たちを含めた議論が活発化するということがあれば非常にありがたいと思っています。
 
【観山座長】  なるほど。はい。どれくらい盛り込めるか分かりませんけども、確かに若手の人たちの気力を維持できるような形にはしたいと思います。
 神余先生。
 
【神余委員】  私は、このILC計画というのは大変大胆な計画で、日本の科学技術が世界的に今、遅れを取っているといった中で、これだけ熱心に、積極的に、前に向かって政府も動かしていこうという、これは気力のある計画ですよ。ただ、政府としてはなかなか難しいという状況に今あるのかもしれませんけれども、そこをディスカレッジするということが日本の科学全体にとってどうなのかということを非常に危惧するわけです。一有識者会議の立場でこういうことを言うということもさることながら、実はこれは政府全体の問題でもあり、全日本の問題でもあり、また、そういう学術コミュニティの代表である学術会議の問題でもあるわけですね。長期計画に載らなかったからどうのこうのという話ではなくて、こういう分野でこれだけの意気込みを持っている学者集団がいるんだということは、これは正当に評価していく必要があるのではないのかと思います。それが、日本が遅れを取っている一つの大きな原因であって、若手研究者が今、非常に熱意を持って、こういうふうに取り組んでいって、突破口を開いていこうということに対して、他のコミュニティの理解を得るのは私は大事だと思いますが、それを全部研究者に任せるのではなくて、どなたかもおっしゃっていましたけれども、社会全体で、政府全体で、こういったものの大事さというものに取り組んでいかないと、日本の基礎科学、科学技術は、恐らく世界的にこれからも発展することは期待できないのではないかという危惧を感じます。
 この報告書の中にも、そういった点を少し出していただければ、せっかくここまで考えたことが無駄にならないと思います。我々はそれをサポートする立場にあるのではないでしょうか。
 
【観山座長】  それは全く同感です。
 中野先生。
 
【中野委員】  具体的な提案なんですが、まとめのところの最初のパラグラフ、2つ段落がありますけれども、最終的にILC準備研究所段階への移行を支持することは困難であると言わざるを得ないという、この文章なんですけど、時期尚早という言葉に変えられないんでしょうか。
 だから、今やはり環境も整っていないし、それから、そういうタイミングでもないというのが我々の認識だと思うんですよね。だから、今すぐ日本がILC誘致の決断することもできないし、それから、そういう誤解を与えかねない準備研究所というものを今、提案のまま作ることはできないんですけれども、もし実現するとしたらこういうステップはきっと踏まなくちゃいけないはずで、そのこと自体を何か今の時点で支持しないと言い切ってしまうよりは、タイミングが今ではない。今すべきことはかくかくしかじかであるといった提言でもいいんじゃないかと思いますけれど。
 
【観山座長】  皆さん、いかがでしょうか。確かにこれだけの規模のものを作ろうと思ったら、一つ一つのパートに対する技術的なレベル、今でも未解決な問題がありますけど、やっぱり組んでみて本当にできるかという部分は大分違います。これだけの規模になるかどうかは分かりませんけども、将来的には準備研究所というやり方は必要と思われます。それはILCのためのということかどうか分かりませんけどね。実際、世界のコミュニティの中での議論ですが。そこら辺のニュアンスは完全に否定というわけではなくて、そういうニュアンスが伝わるようにしたいと思います。
 横山さん、どうぞ。
 
【横山委員】  御提案に賛成です。いろいろとそういう言い方がよろしいのかなと思うのは、一つは、FCCの次期の欧州の戦略が議論されるのが4、5年後と御説明をいただいているかと思うんですけれども、やっぱり国際的に議論が進まないと、日本としてもどうにも動きようがないわけですから、そういうタイミングに載せて、議論をし直すと。それまでの間は、どちらかというと、コミュニティが議論を積み重ねていく期間と捉えて、その間にさらなる動きがあるというよりは、その間に議論を練っておくというような位置づけとして提案するのは大いにあるかなというふうに思います。
 コミュニティの議論自体、私は外の人間で、それほど知っているわけではなくて恐縮なんですけど、どうしてもプロジェクトごとのコミュニティに閉じて話をするんですね。やり方を変えれば、ほかのプロジェクトにいろいろ言うと、自分たちにも跳ね返ってくるというような遠慮があったりして、コミュニティといっても、非常に狭いコミュニティで議論されている傾向が、先ほど小磯先生が御指摘されたようにあるのかなと思いますので、やっぱりそれには数年かかると思えば、次のタイミングを、国際的に議論するタイミングを文科省を中心に整理していただくまで、コミュニティでの議論を醸成させるのに時間をかける、そういう意味で、今の中野さんの提案には賛成です。
 
【観山座長】  はい。ほかにいかがでしょうか。岡村先生。
 
【岡村委員】  中野先生の御提案には賛成です。基本的な我々の認識は、結局、最後は機が熟していないという言葉で表現されるところに来たんだと思っています。それから、今のページの付言のところ、14ページでも、付言の中の第3パラグラフですが、「この再検討に当たっては」から始まるパラグラフで、「中長期的な時間軸で」というふうに、こういう提案にしたというのが我々の議論の大きなポイントだったと思います。つまり、いついつまでにつくらなければ駄目ですよみたいな提案者からの希望があったけれども、機が熟してないから、もっと長期的に考えなきゃいけないよということが我々の共通認識でしたので、先ほどの中野委員、横山委員の提案は適切だと思いました。
 それを踏まえると、もう一つ気がついたことがあるんですけど、今のパラグラフ、「中長期的な時間軸でどのように再構築していくのか、その戦略の核心をなす技術的課題は何かといったこと」というので、ここに「技術的課題」というのが1個だけ挙げられています。これはちょっと狭過ぎて、技術的な課題を中長期的に再検討するだけじゃなくて、いろんなことを中長期的に再検討するということで、そういうことが表現できるとよいなという気がしています。
 
【観山座長】  ありがとうございました。
 神余先生。
 
【神余委員】  私も皆さんの提案に賛成で、具体的には、一番最初のパラグラフの「現時点において提案研究者コミュニティが希望するILC」云々とありますけれども、「希望する規模と前提での」ILC準備研究所段階への移行を支持することは困難だというふうにすれば、そのレベルや、日本に誘致するといったことを前提とするような議論での準備研究所は困難だけれども、そうでないのであればレベルを下げるとかすれば、それは将来的にはオープンになる可能性があるということになるかと思います。一言入れることはどうでしょうか。
 
【観山座長】  ありがとうございました。今までの意見を踏まえて書き直したいと思います。
 大体意見が出て、結構難しい注文も出ましたけれども、先ほど岡村先生がまとめていただいたように、やっぱりまだまだ機は熟していない国際的な連携の中、それから、国民への理解、それから、技術的な課題、そういうことも踏まえた、技術的課題以外にも触れたいと思いますけれども、そういうことではないかと思います。
 それでは、本日、有識者会議として様々な御意見をいただきました。今後、本日の御意見を踏まえた、まとめたものを、一度、委員の皆様に御確認いただきたいと思います。そこで御意見をいただいた上で、最後は、座長一任ということでさせていただきたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。
 はい。ありがとうございます。それでは、この有識者会議は、本日で最終回になります。なかなか難しい課題に関して様々な御意見をいただきまして、本当にありがとうございました。座長となったときに、私は断りたかったんですけども、本当に最近は全部ネット会議ですので、お断りするというのもネット会議でなかなか難しいですので、引き受けてしまったんですけれども、いいまとめができるよう、またさらに努力はさせていただきますけれども、それに対して御意見をいただいて、最終的には私の責任でまとめたものをつくりたいと思います。
 それでは、事務局である……。岡村さん、どうぞ。
 
【岡村委員】  最終的には座長一任はよろしいんですけれども、結局、今の意見を踏まえた修正版が回ってきて、それを最終的にはこうですよということは全員が了解した上で、座長の責任でまとめるというプロセスだと理解していいですか。
 
【観山座長】  もちろんそうです。
 
【岡村委員】  はい。分かりました。
 
【観山座長】  いや、そんなに強権的なことはしませんので、信頼いただければと思います。
 それでは、事務局である文科省の池田研究振興局長から一言御挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 
【池田研究振興局長】  研究振興局長の池田でございます。ILCに関する有識者会議、第2期を迎えて、夏以降、精力的に御議論をいただきまして、大変ありがとうございました。先生方におかれましては、大変御多忙な中、毎回リモートで御参加いただきまして、貴重な御意見をいただきまして、感謝を申し上げます。本日、大きな方向性としては、見通しに大きな進展は見られないという認識の下で今の現状を考えると時期尚早であるという御意見をはじめいろいろ御意見をいただきましたけれども、具体的な書きぶりやニュアンスに関する御意見もたくさんいただきましたので、事務局として、座長をフォローしつつ、これからまとめる作業を早急にいたしたいと思います。
 また、サイト問題や誘致と切り離して、素粒子物理学や加速器科学の分野の研究が大事だということで、事務局としては、最後のところはポジティブに整理させていただいたつもりではありましたけれども、ネガティブではないかとのご指摘もありましたので、ここも含めて工夫してまいりたいと思いますし、それから、特に後半の議論の中では、素粒子物理学に限らず、広く学術研究・基礎研究に対する先生方の思いもいただきましたので、研究振興局としてしっかりと研究を支援してまいりたいと思っております。
 改めまして、座長を務めていただきました観山先生をはじめ、委員の皆様方に感謝を申し上げまして、私からの御挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。
 
【観山座長】  どうもありがとうございました。
 最後は、事務局から連絡事項をお願いいたします。
 
【林加速器科学専門官】  本日の議事録につきましては、後日、出席委員の皆様にメールにて内容の確認をお願いいたします。その後、当省のホームページで議事録を公表させていただきます。
 本日の意見を踏まえて修正しました議論のまとめにつきましては、座長とも相談の上、後日送付させていただきます。その後、先ほど御議論いただいたようなプロセスで最終的な議論のまとめをつくっていきたいと考えてございます。
 議論のまとめの最終版につきましては、まとまり次第になるかと思いますけれども、文科省のウェブサイトにて公表いたします。
 以上でございます。
 
【観山座長】  それでは、本日の会議は終了いたしたいと思います。皆様、本当に御協力ありがとうございました。
 

―― 了 ――