令和3年12月21日(火曜日)13時00分~15時00分
オンライン開催
観山座長、横溝座長代理、伊地知委員、大町委員、岡村委員、京藤委員、熊谷委員、小磯委員、神余委員、東嶋委員、徳宿委員、中野委員、森委員
池田研究振興局長、坂本大臣官房審議官(研究振興局担当)、渡邉基礎・基盤研究課長、石川素粒子・原子核研究推進室長、林加速器科学専門官、磯科学官
ILCジャパンスポークスパーソン/高エネルギー物理学研究者会議高エネルギー委員長/東京大学素粒子国際研究センター長 浅井教授、高エネルギー加速器研究機構 山内機構長、高エネルギー加速器研究機構 道園教授
【観山座長】 時間となりましたので、ただいまより国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議(第2期第5回)開催いたします。
本日は新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、オンライン会議による開催としております。また、本日もILC計画の提案研究者側の先生方に御出席いただいておりますので、後ほど御紹介いたします。
それでは、まず事務局より委員の出欠と配付資料の確認をお願いいたします。
【林加速器科学専門官】 それでは、まず委員の出欠の状況でございます。本日は横山委員が御欠席でございます。
続きまして、配付資料を確認いたします。本日の資料でございますが、議事次第にありますとおり、資料の1-1から3、それから、参考資料の1と2を配付してございます。
以上、資料の不足等ございましたらお知らせいただければと思います。
続きまして、本日、オンライン会議を円滑に行う観点からのお願いでございます。まず、御発言をいただく際は挙手とお名前をいただくようにお願いをいたします。御発言なさらないときはマイクをミュートにしていただきますようにお願いをいたします。
資料を参照して御発言される際は、ページ番号等をお示しいただければと思います。
本日の傍聴でございますけれども、事前の申込みがございました117名の方が傍聴されております。傍聴の方はユーチューブでライブ配信をしてございますので、そちらで傍聴しているという形になります。
本日の資料、それから議事録につきましては、後日ホームページで公開されます。
以上でございます。
【観山座長】 ありがとうございます。
本日は前回の会議での追加質問への回答の説明として、提案者側の先生方に出席いただいています。事務局から出席者の紹介をお願いいたします。
【林加速器科学専門官】 それでは、お名前のみ呼び上げさせていただきます。
ILCジャパンスポークスパーソン、それから高エネルギー物理学研究者会議の高エネルギー委員長、東京大学素粒子国際研究センターのセンター長でございます浅井先生でございます。
それから、高エネルギー加速器研究機構の山内機構長でございます。
それから、高エネルギー加速器研究機構の道園教授でございます。
以上でございます。
【観山座長】 それでは、本日はどうぞよろしくお願いいたします。
それでは、議題に入ります。まず、議題1、第4回有識者会議後の追加質問についてです。
これまで、提案研究者側との意見交換を行ってきましたけれども、前回の会議においてさらに追加質問がありましたので、その回答をいただいています。
まずは資料について事務局より説明をお願いいたします。
【石川素粒子・原子核研究推進室長】 そうしましたら簡単に資料のほうを確認、紹介させていただきます。
まず、資料1-1でございますが、第4回有識者会議後の追加質問ということで、質問として3点ほどいただいてございます。こちらにつきましては、提案研究者に事前に送付させていただきまして、資料1-1のとおり、回答をいただいているところでございます。こちらについては、この後御説明をいただければと思っております。
もう一つ、資料1-2につきましては、同じく第4回有識者会議後に、質問とともにコメントという形で整理させていただいております御意見を、各委員の先生方から頂戴したものをまとめてございます。こちらについても、この最初の議題のところで御参照いただきながら御議論いただければと思っております。
簡単ですが、資料の紹介をさせていただきます。
【観山座長】 それでは、早速ですけれども、前回の会議後の追加質問の回答について御説明いただき、委員との意見交換を行いたいと思います。
まず、提案研究者から10分程度の御説明をお願いいたします。
【浅井教授】 よろしくお願いします。共有させていただきます。
それでは、説明をさせていただきます。まず、1つ目の質問についてでございますけれども、どのような現象が見えてどういう価値があるのかという点についてでございます。
これにつきましては、4ページ目に行っていただければと思います。この新現象の捉え方と、発見の学術的・社会的意義という点でございます。
まず、2012年に発見されましたヒッグス粒子を調べまして、どうも我々の宇宙というのは準安定であるということが分かりました。それは何を意味しているのかといいますと、今の宇宙に対して、実はもっとエネルギーの状態の低い新現象に関係したものがあるんじゃないかという示唆が得られております。
この状態、この新現象というのは、大きく分けて3つの可能性があります。
1つ目の可能性としましては、これは新しい次元、主に超対称性がある可能性。2つ目の可能性というのは、実は、我々が素粒子だと思っている電子だとかヒッグスというのが、実は素粒子ではなくてもっと小さい構造があるという可能性。3つ目は、非常に高いエネルギーまで新しい現象が起きないという可能性でございます。
1つずつ説明しようと思います。
では、どういうふうに第1の道が見えるかという点でございますけども、もし第1の道の場合には、我々が発見しましたヒッグス場以外に、必ず別の真空の場が存在することになります。そして、素粒子というのはこの両方から質量を得ているということになります。そうすると何が起こるかと申しますと、実は質量と素粒子とヒッグス粒子の結合の強さというのが、1つの直線からずれるということが観測されるというのが期待されるわけでございます。
実際、今、LHCで測定した結果がこの右側にございます。これは何かというと、横軸にその素粒子の質量を取ってあります。縦軸に、その素粒子とヒッグス粒子が結合した強さ、これも測定値でございますけども、プロットしてあります。もし、新しい未知の場がなくて、既知のヒッグス場1つしかなかったら、これ、1本の直線に乗るわけです。実際、ぱっと見たところきれいに1本の直線に載っております。これ、驚きというほどきれいな直線でございます。
ところが、これはログとログのプロットでございますので、拡大したものがこの下に書いてあります。これを見ていただけると分かりますけれども、ZやWへのくっつき方というのは、既にa few%のレベルでございますけども、ほかのクォークへの結合やレプトンへの結合というのはまだ実は10%とか20%の誤差でございますので、実はまだこれを吟味するようなレベルにはありません。これをILCでは1%ぐらいの精度で測ることによって、この直線からのずれというのを観測できて、特にこの2つ(ボトムとタウ)がずれるということによって、第1の道だったんだということが分かる予定でおります。
これが本当に(運転経費まで含めて)1兆円の価値があるのかという点でございます。これは非常に難しい質問でございます。この次元という概念は、実は社会的にも非常に大きなインパクトがありました。ニュートンやアインシュタインの名前を知らない小学生は多分いないと思います。それぐらい人口に膾炙したものでございます。もしこの超対称性というのが発見されますと、何かといいますと、この超対称性というのは、実は我々の住んでいる空間、これは3次元だと普通は思っているんですけども、そうではなくて、実はそれに表と裏のような構造があるんだということになります。これはちょっと変な絵ですけども、局所的に見ると2次元なんですが、大局的に見ると2次元に裏と表があるような絵でございます。局所的とグローバルとローカルが逆になっているようなことになっていて、局所的に見ると表と裏があるんだけども、グローバルに見ると、この世の中は3次元ですということが分かるというわけで、これは社会的にも非常に大きなインパクトのあるものだと思っております。
学術的にどういう価値があるかと申しますと、まず、こういう超対称性粒子が見つかりますと、暗黒物質の非常に強い候補となります。さらに重要なのは、実は力の大統一というものが予言されることになります。これは観測データでございまして、横軸、エネルギーのスケールでございます。縦軸が今見つかっている4つの力のうちの3つの力、強い力、弱い力、電磁気力です。これは結合の強さを逆数で取ってありますので、下へ行くほど強くなります。これは測定結果がありまして、超対称性粒子が存在すると非常に高いエネルギーで1つの力だったということが分かるわけです。
多分、皆さんあまり感動なされてないと思いますけども、実はこれが何を意味しているかと申しますと、物理学というのは統一の歴史そのものでございます。様々な現象を実は1つの理解で理解できるようになってきたというのが物理学の歴史でございます。この力の大統一、この点というのはどこに対応しているのかというのは、ここに対応しているものでございます。そういう意味もありまして、学術的には極めて重要な意義のあるものでございます。
第2の場合には、もう一度同じことを繰り返すことになります。
第3の道でございますけども、これは、結合の強さです。結合の強さを測定して、ぴったり1本の直線に乗ったままでございますというときにどうやって責任を取ってくれるんだという話でございますけれども、そのときは、実は何でヒッグス粒子の質量がこの質量になったのかということの説明ができなくなってしまいます。自然にヒッグス粒子というのは非常に重たい質量になるんですけども、10の35乗分の1、これはあり得ない確率という意味でございますけども、それぐらいの確率でしか、実際に観測した値にならなくなります。このことは何を意味しているかというと、宇宙というのは無限に生成されて、ある特定の条件のときだけ成長して、今の我々のような宇宙になっているんじゃないかと。だから、今の我々の中の物理量にあまり意味はないんだということのサジェスチョンになります。これはマルチユニバースと呼ばれているものでございます。
これは、社会的にはこれはこれでものすごいインパクトのある結果だと思っておりますし、学術的にはどういうことかと申しますと、もう加速器を造って、低いエネルギーから高いエネルギーを研究していくというのは非常に難しいことを示しています。もっともっと高いエネルギーを直接調べるような方法を考えなければならないですよというサジェスチョンになります。
続きまして、暗黒物質の解明でございますけれども、宇宙、我々が分かっているのは実は僅か5%でございまして、残り95%は暗黒物質や暗黒エネルギーと呼ばれているものであります。この暗黒エネルギーというのは、実はこのエネルギーに対応するものでございますが、この暗黒物質というのもILCで探すことができます。
1つは、先ほどの超対称性が見つかったときでございますけども、実は超対称性の場合だけではなくて、暗黒物質が軽い場合何が起こるかというと、ヒッグス粒子が暗黒物質に崩壊するような現象が非常に起こりやすくなります。そうすると何が起こるかというと、ヒッグス粒子ができて消えてしまったように見えるわけです。これはILCで非常にきれいに見える信号でございます。
これによって何が分かるかといいますと、これ、横軸に暗黒物質の質量を取ってあって、縦軸にどのぐらい物質とくっつきますかというのが書いてあるんですけども、今、先ほど言いました超対称性というのがこういう重いところになっていて、こういう重いところというのは、今、直接探索でも探されておりますし、ILCでは超対称性を探すことによってカバーすることができます。
この消えるという現象を探すことによりまして、軽い領域というのも完全にカバーすることができますので、ILCによりまして両方のパターンを完全にカバーすることができるようになっていきます。そういう意味で学術的な価値というのは非常に高いというふうに思われております。これにお値段をつけろと言われたら、ちょっと難しいのでございますけども、そういう次第でございます。
続きまして、質問2でございます。これは第2回の中で、ILCとFCC-hh、これはハドロン型の大型コライダーの両方が必要だというようなことが言われたんですけども、それはどういうときですかという点についてでございます。これは歴史的に、今まではそういう経緯でやってまいりました。それは電子・陽電子で精密に測定して、そうすると次の新現象の場所というのが発見されるわけです。その発見されたスケールに合わせて、エネルギーを比較的容易に高くすることができるハドロンのマシンを使って、それを直接検証するということを歴史的に我々は繰り返してきました。そういう歴史的経緯でそのような説明をしたわけですけども、先ほどの話にありますように、実はこの道1、道2、道3の場合によりまして、そのハドロンが必要かどうかというのは変わってまいります。ILCが必要だというのはこれで確かなことでございますが、このILCで、道1、超対称性である場合が指摘された場合でございますけども、この場合は、この超対称性粒子というのはいっぱいあります。その中で、色の電荷を持ったものを見るには、やはりハドロンコライダーというのを作るのが非常に有力になりますし、色の電荷を持っていない超対称性粒子に関しましては、ILCのエネルギーを増強するのが望ましい場合です。前回、前々回になりますか、この言い方をしたのは、この道1というのを前提とした言い方でございます。そういう意味で、多くの研究者というのがこの道1のシナリオになるだろうというふうに思っているわけでございます。
道2の場合でございます。これは新しい素粒子というものが見つかって、新しい階層が発見されて、電子だとかヒッグス粒子というのが複合粒子なんだということが見つかった場合でございます。では、その新しい階層というのがどのくらいのエネルギースケールにあるかということによってパターンが変わってまいります。もし、比較的低いエネルギーの状態でございましたら、ILCのエネルギーを増強することによってこの研究をすることができて、ハドロンのマシンは不要になります。非常に高いエネルギーだということになりましたら、どういう手段でアプローチするのかということを考えていかなければならないというわけです。
第3の道の場合でございますけども、この場合に関しましては、そういう意味では、コライダーで低いエネルギーから攻めていくということは非常に難しいということになりますので、何か別のアプローチというものを考えていかなければならないというふうになります。そういう意味で、第2回のときに申し上げたのは、道1を前提とした表現の仕方でございます。
続きまして、質問3でございますけれども、一般向けの説明、特に、我々が建設候補地としている地域での説明についてでございます。この図、ちょっと小さくて申し訳ございません。拡大しますけども、この左側のほうを御覧になられてください。この左側のほうは、主に安全とかの説明でございます。建設予定地でありますところに、この放射線だとか、地震の安全の説明をしに伺っております。毎回100名弱ぐらいの参加をいただいておりまして、1時間以上の時間をかけまして説明を行っております。もちろん、出席者の方に何らかの制限を設けることはございません。そこで地域の皆さんに、地震とか放射線に対する安心というものの理解が進んでいるというふうに思っております。
この右上のほうは、今度は一般向けの、一般というか、その候補地の一般向けの広報活動に関するものでございます。大きく分けて2つありまして、1つは学校に出向いて行います出前授業というのと、もう一つは一般向けのセミナーというものでございます。合わせて、大体1万7,000人以上の方の参加をいただいております。これを見て分かりますとおり、非常に多くの方の興味をいただいているというふうに思っております。
質問の中ではなかったんですけども、前回の中で問題になりました、実際、加速器というのが本当にどのくらい役に立って、かつ、プレラボというのができても、実際、ILCができなかったときにプレラボに対する投資というのが無駄になるのではないかという点に関する質問でございます。これは森先生のほうからいただいた質問かと思います。
加速器というのは、一般的なものでございますけども、まず非常に多くの波及効果があります。御存じのとおり、このITから医療、食、そして環境に至るまで非常に幅広い領域で、この加速器というのが波及効果を及ぼしております。
これは一般論でございまして、実際に、ILCが使う予定の超伝導の加速器の産業・医療応用の点でございますけども、まず、この超伝導加速器という点で、エネルギーが回収できて非常にエコでございますし、今のグリーンな世の中に非常にマッチしたものでございます。それを用いまして、例えば、非常に強いEUVを発生することができます。これは次世代のリソグラフィでございまして、これは半導体の製造、国策、技術等に大きく役に立つものでございますし、これは中野先生がやられたりしておりますけども、医療用の放射線をつくったりするのにも、この超伝導加速器というのは非常に大きな役割を果たしております。
実際、本当に役に立っているのかという例でございますけども、実は車1つをとりましても、半導体の性能チェックからタイヤの素材の縮重に至るまで、ありとあらゆるところでこの加速器という技術は役に立っておりまして、こういうものによっていろいろなことができます。繰り返すことになりますけども、ですので、例えばプレラボができた後に、本体が不幸にしてできなくても、その投資というのは十分価値のあるものでございます。
以上になります。
【観山座長】 ありがとうございました。
それでは、ただいまの質問に対して御意見、御質問いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
伊地知先生。
【伊地知委員】 ありがとうございます。今、資料に含まれていて御説明に含まれていなかった、質問3の右下の表の部分について御質問させていただいてよろしいでしょうか。
本文中には、たしか延べ19万人という数字があるのですが、右下の数字からはどのように19万人というのが出ているかということが読み取れなかったものですから、そこを補足いただければと思うのですけども。
【観山座長】 何ページの資料でしょうか。
【伊地知委員】 すみません、今の質問3になりますので……。
【浅井教授】 すみません、19万ではなくて190万です。すみません。183万ですね。私、桁を読み間違えております。
これ、1つ非常に大きなイベントがありまして、これはILC単独のものではございません。すみません、この19万人というのは間違いでございます。19万人というのは、2回ぐらい前になりますけども、以前私が説明しました資料で、ILCの広報活動に参加してくださっている方の延べ人数が19万人でございます。
この19万人に対しまして、この右下のテーブルを見ていただけると、183万人になっておりますけども、これに関しまして、これがずれている理由というのが、これは先ほど前回、前々回のときの数字には加えておりませんでした。これはILCだけじゃなくていろんなものがあるためでございますので、そういう意味のずれの説明でございます。
【観山座長】 いろんなものというのは、素粒子科学だとか、宇宙初期の講演会みたいなものも含まれるということですか。
【浅井教授】 それは芸術祭です。この183万人のやつというのは、芸術祭に対応しているものなので、ちょっと、ILCも一部参加しているというだけでございます。
それに比べて、19万人というのはILCにスペシフィックしたイベントでございます。
【観山座長】 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
東嶋先生。
【東嶋委員】 御説明ありがとうございました。
私も今の3ページ目の質問3についてなんですけれども、いろいろな機会を通じて、安全について、それからILCについて御説明されてきたということでしたけれども、それによって理解が進んでいると書いてあるんですが、実際に参加者の方々に、例えば安全性について理解できましたかとか、ILCを応援したいと思いますかとかいったような、セミナーを受けての感想のようなものはアンケートで取ってらしたら教えていただきたいと思います。
【浅井教授】 そこについては、ないそうです。
【東嶋委員】 ありがとうございます。お答えがないのに理解が進んでいるとどうして言えるのか……。
【浅井教授】 それは、現場で皆さんの反応を見てということでございます。
【東嶋委員】 分かりました。ありがとうございます。
【観山座長】 一般的には、アンケートか何か取らないとよく分かりませんね。
それでは、小磯先生、どうぞ。
【小磯委員】 小磯です。浅井先生、ありがとうございます。今のお話を伺いますと、世界の高エネルギーコミュニティーでまず合意されているのは、エレクトロンポジトロンのヒッグスファクトリー、これでヒッグスの性質を極めるということが第1で、ハドロンマシンについては、その結果いかんでどういうものを作ればいいかが決まってくると、そういう理解でよろしいんでしょうか。
【浅井教授】 それで間違いございません。
【小磯委員】 そうしますと、今、例えば、FCC-ee、こちらはハドロンマシンのことを後回しにしたとしても、ヒッグスファクトリーとしてのエレクトロンポジトロンの性能、これをきちんと評価しようとしていると、そういう段階だということですか。
【浅井教授】 FCC-eeは、そういう意味でILCと一緒の目的のものでございます。現在、それのR&Dをヨーロッパのほうで行っているという状態であります。
【小磯委員】 ありがとうございます。
【観山座長】 中野先生が手を挙げられました。
【中野委員】 小磯先生の質問に追加の質問なんですけど、FCC-eeとILCを比べた場合、やはりどちらが計画として早く進むかというとILCではないかと思うんです。学術的意義のところ、いろいろ御説明されて、なかなか1兆円というのを何で正当化するかというのは難しいということをおっしゃったんですけど、1つにはやっぱり非常に大きな研究者コミュニティがあるので、そのコミュニティの中での求心力が増しているというのが、1兆円かける意味があるということの理由の1つになるんじゃないかと思うんです。
やはり気になるのは、FCC-eeとILCが並列でずっと続いているというところで、学術的意義が上がったのであれば、よりILCに世界の関心が集まっていってもいいような状況じゃないかと思うんですが、その辺りのところは今どういうような感じなんでしょうか。
【浅井教授】 今おっしゃられるとおりで、その関心が多分、強く移るというのは、FCC-eeのいわゆるフィージビリティースタディーが2025年に出たときからだと思っております。そういう意味で、やっぱり2つの大きな問題がありまして、FCC-eeに関してですけども、やはり、電力とコストというのが、両方、非常に大きな問題になってきます。
今、研究者の段階だと、新しいことを始めると楽しくて仕方がございません。ですので、皆さん、そちらのほうを一生懸命やっておりますけども、次のステップ、実際に作ろうという段階のことをスタディーするようになってくると、コストや電力などのやはり非常に大きな問題を抱えてくる。そのときにやはりILCが、1つ目は技術的にマチュアである、2つ目はコストが半分であるという、やはりここが注目されるようになるというふうに思っております。
実際、そういう意味で、今までILCがそういう意味で注目されてずっと来ていたことは確かでございます。日本の進捗状況もあまりよくないこともあって、ヨーロッパのほうでこういうもののフィージビリティースタディーというのが始まったというわけでございます。そこでまた数年後に、これは私の個人的意見ですけども、やっぱりお金的に、電力的にも現実的ではないよねということになったときに、また戻ってくるんだろうというふうに思っております。
以上です。
【中野委員】 分かりました。
【観山座長】 今、中野さんが言われたのがちょっとよく分からない。研究者コミュニティの、どう言われましたか、1兆円の価値があるというのは非常に求心力が増しているということが大きな価値ではないかと言われたのはどういう意味なんですか。
【中野委員】 どう言ったらいいか、ここでやろうとしている科学的な目標というのは、なかなか素人の方に説明しても難しいところがあると思うんですよね、ヒッグス粒子の結合定数測定って。そのこと自体が高エネルギー物理学の中心的課題になっているというのを認めた上で、ILCを実現させるべきだというのが、まずはそのコミュニティの中で、コンセンサスを得られないといけないんじゃないかと。巨額な資金を投入してそれをやることがコミュニティにとって重要だということが、日本のコミュニティだけじゃなく、世界のコミュニティの常識になって、なおかつILCという方法が一番ゴールに近いということであれば、そこに人とかお金とか物とかが集まってきて当然ではないか。そういう流れがあれば、一般の方にも、世界中のこのコミュニティの物理学者がILCに集まっているということを示すことによって、もっと説明しやすくなるんじゃないかと思ったわけです。
【浅井教授】 その点で追加でございますけども、そういう意味で、実際に次はヒッグスファクトリーであるというのは、日本もそうですし、欧州戦略でもそうですし、米国のP5においてもトッププライオリティーであるということは間違いございません。それがILCオンリーかどうかという点についてでございますけども、実際、ILCという名前でスペシフィックに名前でプロジェクトを指定しているものに関しましては、3極ともILCしかございません。
そういう意味で、FCC-eeというのは、そういう意味で、まだきちっとプロジェクトの名前としてメンションされているものではないということもここで付け加えさせていただきます。
【観山座長】 分かったような……、それだったらもうちょっと各国のコミュニティは、素粒子物理学者は各国の政府を動かしてもうちょっと歩み寄っていただければ、まだ話は簡単なんですが。
ほかにありますでしょうか。
熊谷委員。
【熊谷委員】 浅井さんにちょっとお伺いしたいんですが、この中国の動きというのがありますよね。そのLCCと同じようなスケールのコライダーマシンを造ろうという計画が今進んでいると思うんですけども、これとの関わりというのはどういうふうに考えていらっしゃるんですか。もし、中国のLCCが先にできちゃったら、ここで言っている世界のコミュニティという素粒子物理をやっている人たちのマスタープランというのは影響を受けるんじゃないかと思うんですが、いかがなんでしょうか。
【浅井教授】 おっしゃられるとおりで、影響を受けると思います。ただし、中国は技術的には自分たち単独で造るというふうには申し上げてなくて、自分たちで造るということになった場合には、世界に協力を求めます。資金に関しましては、大部分が中国が出すと思いますけども、技術的にはまだ自分たちではそういうマチュアな技術としてハンドルできておりませんので、そういう意味でこれ世界中からの研究者が集まって造ることになると思っております。
そのときに、こういう場で言っていいのかどうか分かりませんけども、米中対立とかも含めてどういう影響を与えるのかということについては、ちょっと今の私のレベルでは判断しかねるところでございます。この点は、欧州と米国とでまた肌の温度が違っておりますし。中国はやっぱり、そういう意味でぜひ造りたいというふうに思ってはいるようでございます。
【熊谷委員】 よろしいですか。中国がこういう大きなプロジェクト、加速器を造るという技術があるのかないのかというのは確かに疑問のところがあるんですが、唯一、ILCのような超伝導空洞を使うような加速器は、まだ多分中国ではできないんだと思うんですよね。そうだとすると、中国ができるであろう可能性が高いのは、超伝導電磁石を使ったLCCのような加速器というのは、一番、何ていうのかな、割合、可能性の高いプロジェクトなので、お金とそれから国際的なコミュニティの後押しがあれば、これ、さっさと造っちゃうかもしれないという印象を強く持っているんです。これは別の高エネルギーのマシン以外にも、例えば、FELであろうと最先端の施設に関する計画というのは結構進んでいるんですよね、いろんなものが。ですので、その一環として考えると、中国をきちっと抱き込んだ上で、世界で唯一のマシンというのを造るという枠組みを早急につくられたほうが賢明かなという感じもするんですけどね。
【浅井教授】 ありがとうございます。
【観山座長】 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。
大体、予定していた時間が来ましたので、追加の質問についての意見交換については、これで終了させていただきたいと思います。提案研究者の先生方は会議から御退室いただければと思います。後で会議は傍聴できると思います。よろしくお願いします。
【浅井教授】 ありがとうございました。
【観山座長】 追加の質問、これは私もまだあるんですけども、切りがありませんので、一応、質問についてはここまでとしたいと思います。
次に、議題2、議論のまとめ骨子案についてです。これまでの有識者会議での議論を踏まえまして、取りまとめに向けて整理していきたいと思います。議論のまとめの骨子案を作成しておりますので、事務局から説明いただき、議論したいと思います。
まずは、本日欠席されている横山委員から事前に御意見いただきましたので、併せて事務局より説明をお願いいたします。
【石川素粒子・原子核研究推進室長】 ありがとうございます。それでは事務局のほうから、この議題2につきまして、資料2、資料3と、今、観山座長から言及いただきました、本日欠席の横山委員から御意見をいただいておりますので、そちらのほうを説明させていただければと思います。
まず、資料2の議論のまとめ(骨子案)でございます。
1ページ、進んでいただきまして、まず目次でございます。全体の構成の部分になりますので、目次についても少し御説明させていただければと思います。
まず最初に、1として検討経緯と本まとめの位置づけということで、これまでの経緯などを記載してはどうかと考えております。
2番目として、ILC計画について指摘されている諸課題ということで、第1回の会議でも、資料として入れさせていただいております前回の有識者会議のまとめなども含めて、これまで指摘されている諸課題について、改めて記載してはどうかと考えております。
3番目として、ILC計画の諸課題、現状についてということで、これまで4回にわたって、本日も5回目ということで御議論いただいておりますけれども、これまでの現状について(1)で、ILC計画に関してこれまで議論されてきた論点ということで項目を立ててみてはどうかと思っております。その中で、丸1 として国際的な研究協力及び費用分担の見通しについて。丸2 として、学術的意義や国民及び科学コミュニティの理解。丸3 として技術的成立性の明確化及びコスト見積りの妥当性。丸4 としてその他ということで、項目をさらに分けて記載してはどうかということでございます。
(2)として、ILC準備研究所の提案書に対する考え方ということで項目を立てさせていただいて、最後にまとめということで、こういった柱でまとめていってはどうかということでございます。
添付資料は、今後また調整させていただくことになろうかと思いますが、これまでの報告書ですとか会議資料などで必要なものを添付という形でつけていければと思っております。
1ページ進んでいただきまして、骨子の中身について、本日、もう少し詳細に御議論いただく材料にしていただくことも念頭に、資料を作らせていただいております。
最初の1ポツと2ポツのところは、ただいま口頭で御説明させていただいたとおり、これまでの経緯などを記載させていただいたり、諸課題についての内容を記載させていただくことを想定しております。
3ポツからが報告書の本論に入ってまいりますけれども、(1)ILC計画に関する諸課題の現状についての丸1 が国際的な研究協力及び費用分担の見通しについてでございます。こちらについて、まず第4回までの中で御議論いただいたことなどを整理させていただいております。
点線の四角囲みの中でございますが、これまで出された論点ということで、この国際の部分につきましては、文部科学省から報告させていただきました主要関係国政府の状況も記載させていただいております。
その上で委員からの主な意見・論点ということで、主に4つほど、この項目についての御意見・論点を挙げております。
1つが、国際的な費用分担の見通しについては、この3年間で大きな変化はないのではないかという御意見がございました。2つ目として、各国とも財政的に厳しい、日本が相当の額を負担する覚悟を持って主導しない限り進まないのではないかという御意見。3つ目として、今の日本の経済状況や、世界的に新型コロナ対策や温暖化対策等に直面している状況を踏まえると、欧米が応分の負担をするなど、関係国が歩み寄る方向性が見えないと、日本が判断することは難しいのではないかという御意見。4番目として、これだけの大規模施設は、FCCも含めて世界で1つという印象であるというような御意見がございました。
ほかにも様々な御意見いただいておりますけれども、これまでの議論を集約していくと、こういうことにまとまっていくのではないかというところを下の矢印の下で、※で記載させていただいております。
これらを踏まえると、各国政府による財政負担に関するコミットメントが全く示されていない中で、具体的な研究協力及び費用分担についての見通しはない状況が続いていると言わざるを得ないのではないかということで、ここの項目についての議論について集約していくとこういうことではないかということを記載させていただいております。
2つ目の※として、国際的な議論が進まない根本的な要因について、今回の有識者会議の議論を通じて共有できる認識はあるかということで、御議論をいただければということで記載しております。
次のページ以降、各項目、同じような構成で中身をつくらせていただいております。
2つ目、学術的意義や国民及び科学コミュニティの理解について、委員からの主な意見・論点ということで、ここでは5つほど挙げさせていただいております。
1つは、この3年間で学術的意義についてはより分かりやすくなりつつあると思うという御意見。2つ目として、1兆円を超える規模の予算に見合うような学術的意義を持つかという観点での説明は不十分ではないか、国民や他の科学コミュニティにも分かるような説得力のある説明が必要といった御意見。3つ目として、全く関係のない分野、人文社会系などの研究者や立地候補地とされている地域以外の地域での理解が進んでいるのか、その取組はまだまだではないかといったような御意見。4つ目として、素粒子分野の専門家に閉じて議論されている計画では、これだけの予算が必要な計画として、国民や科学コミュニティの理解を得ることが困難ではないか、ILC計画が他分野にも波及できるようにするなど幅広い理解を求めていく流れが重要ではないかという御意見。また、一方で最後の5つ目ですけれども、ILC計画は素粒子実験が本来の目的ではないか、マルチパーパスの議論には違和感があるといった御意見もございました。あくまでメインのプロジェクトは何であるかははっきりさせることが必要といったような御意見もいただいております。
矢印の下、※印ですが、これらを踏まえると、この項目につきまして、学術的意義についてはより分かりやすい説明がなされてきているものの、巨額の投資を行うことについての国民の幅広い理解、他分野を含めた科学コミュニティの十分な理解が得られていない状況が続いていると言わざるを得ないのではないかというふうにまとめてみております。
もう一つの※としては、ここの項目につきまして、国民や科学コミュニティの理解をさらに深めるためにどのような視点・アプローチが必要かについて、今回の有識者会議の議論を通じて共有できる認識はあるかということで論点を記載させていただいております。
3つ目の技術的成立性の明確化及びコスト見積りの妥当性につきましては、4つほど意見・論点を記載させていただいております。
1つが、準備研究所で予定されている技術課題は、準備研究所という枠組みがなくても実質的に行うことができる技術開発があるのではないかという御意見。2つ目として、サイトに関する課題を後回しにして、加速器開発等を先に進めることが現実的ではないかという御意見。3つ目として、準備研究所の提案は急な動きに思える、コミュニティ内で十分な議論がなされているのか。また、優先順位づけについてもコミュニティ内で理解が得られているのかといったような御意見。最後ですけれども、非常に大きなプロジェクトであり、これを進めるためにワンステップ置くこと自体は大事といった御意見。また、科研費等ではできない規模の技術開発を実施しないと次に進められない部分があるということは理解するといったような御意見をいただいております。
矢印の下ですけれども、ここの項目、これまでの御意見を踏まえ、また、国際的な動きですとか、学術的意義、コミュニティの理解といった、丸1 、丸2 も踏まえますと、技術的成立性等について、様々な技術課題について進展は見られるものの、今後の進め方として、ILC準備研究所というプロセスにまで踏み込むことは適当とは言えない状況ではないかというのがこれまでの議論ではないかということで記載させていただいております。
2つ目の※として既に整理されているものを含め、重要技術課題への今後の対応について、今回の有識者会議の議論を通じて共有できる認識はあるかということで論点を記載しております。
また、ここでは加速器などの技術以外に、土木・環境対策についても研究者からの進捗の報告などございましたが、この点につきましては、3つ目の※ですけれども、サイト問題と直結する課題であるため、今回の有識者会議の議論を通じて、一定のアセスメントは行われていることが共有されたことを確認する程度にとどめるのが適当ではないということで記載させていただいております。
少し説明に時間かかってしまっておりまして恐縮です。次のページ、その他のところは人材の育成・確保の見通しに関してでございます。ここについても主な意見を2点ほど記載させていただいております。その上で、この人材の育成・確保の見通しについて、矢印の下の※でございますが、全体の計画の進め方とも大きく関係し、全体の見通しがない中では不確定要素が大きいため、他の重要課題の検討と併せて検討されることが適当ではないかということで記載させていただいております。
続きまして、(2)でございます。ILC準備研究所の提案に対する考え方ということで、この論点につきまして、委員からの主な意見・論点ということで4つほど挙げさせていただいております。
関係国の関心を引き止めておく、リアリティを高めるために必要ということは分かったが、それ以上の効果がよく分からないといったような御意見。また、準備研究所だけでも、それなりに費用がかかるものであり、検討の結果、費用に見合わないということが起こり得るというような御意見。3つ目として、今この提案書自体の中身の是非を議論しても仕方がない。一番重要なのは、ILC準備研究所を進めるに当たってILC計画本体の日本誘致を前提としているが、この提案を日本政府が受け入れられるのかということが問われているといった御意見。4つ目として、過去の文部科学大臣の答弁も踏まえると、日本への誘致前提ではなく、サイトの問題を一旦切り離して技術開発を中心にやっていくのがいいのではないかといったような御意見がございました。
こういった御意見を踏まえると、下の※印でございますが、これらを踏まえると、日本誘致を前提としたILC準備研究所のプロセスに移行することは難しいと言わざるを得ない状況ではないかということで、この項目についての意見をまとめてみてございます。
もう一つの※として、先ほどの技術課題の再掲になりますが、重要技術課題についての今後の対応について記載させていただいております。
最後のページ、まとめでございます。委員からの主な意見・論点というところは各項目に記載しているもの以外を記載させていただいております。
1つは、世界的なコロナ対策や地球温暖化対策等の喫緊の課題があることも踏まえた検討が必要であるという御意見。2つ目として、引き返せる道を持ちながら確実に段階を踏んでいくことが必要ではないかという御意見。また、ILC計画の進め方について再検討が必要ではないかといったような御意見を頂戴しております。
これらと前のページまでの各項目の議論を踏まえますと、前回有識者会議の議論の取りまとめ以降、約3年たった現時点において、今後の見通しを明確にするような大きな進展がない状況が続いていると言わざるを得ないのではないかということで、これまでの御議論、御意見をまとめてみております。
最後に、ここの論点として※印でもう一つ記載しております。これまで日本が高いプレゼンスを示してきた素粒子物理学、また、その基盤となる加速器科学分野の継続的な発展のために、今回の有識者会議を通じて共有できる認識はあるかということで記載させていただいております。こういった形で今、骨子案ということでまとめさせていただいておりますので、本日御議論いただければと思います。
資料3につきましては、第4回までの御意見ですとか、今回、資料1-2に入れております追加でいただきましたコメント・意見なども併せて、これまでの主な意見としてまとめてございますので、議論の際に御参照いただければと思っております。
最後に、通しのページでいきますと35ページになりますでしょうか。本日御欠席の横山委員から御意見をいただいておりますので、事務局のほうから紹介させていただきます。
「ILCの議論は、単体のプロジェクトをどうするかを越えて、国際協力であっても限界を迎えている巨大化にどう対応するかが問われています。当該分野は日本で極めて優秀な若手を惹きつけ、育成し、日本のノーベル物理学賞受賞に大きく貢献をしてきました。継続的な研究を応援しています。しかし、巨額予算の折り合いはつきにくい現状で、さらに世界で2050年までに二酸化炭素排出ゼロを目指す現在、大量の電力消費を伴うことは大きな課題になります。
そこで、今後はILC単体をどうするかを問うのではなく、FCCも含めてこの分野の将来をどうするか、ICFAを中心に現実的な将来の議論が必要ではないでしょうか。
生命科学分野では、倫理的・社会的課題があるとモラトリアムをとり、その間、無理に推進をすることをしません。今後のためにも推進物理学者の信頼が、国際コミュニティ、政府、地域社会ともに保たれることが重要であり、困難なときに無理に話を進めようとしないことに注意が必要だと思います。」という御意見をいただいておりますので、最後に紹介させていただきます。
若干時間が超過しておりますが、事務局からの説明は以上でございます。
【観山座長】 ありがとうございました。
ただいま説明がありました骨子案について、特に、3のILC計画に関する諸問題の現状についてと、4、まとめ、総合的な観点について、その他の項目も可能性があると思いますけども、一応この項目、もっともだと思いますので、これに従って意見交換をしていきたいと思います。
まず、全体のページで26ページにあります3の(1)丸1 、国際的な研究協力及び費用分担の見通しについてということでいかがでしょうか。この骨子案に対する御意見でもいいです。
神余先生、どうぞ。
【神余委員】 神余です。簡単に発言させていただきたいと思います。
ここで取り上げられたことは、大体皆さんの意見をまとめていただいていると思います。問題は、国際級の議論が進まない根本的な要因について何か共通の認識が得られるかどうかということですね。それがポイントだろうと思うのです。
私は、共通の認識がもしあるとすると、こういうことがあるのではないかと思います。
1つは、日本あるいは欧米各国に共通する問題として極めて厳しい財政状況があるということが、恐らく共通の認識になるのではないかと思うのです。
それからもう一つは、やはりどっちが先かということです。つまり日本のリーダーシップがないからできないんだという話なのか、あるいは日本がリーダーシップを取るためには、欧米がまず協力をするという意思を示してくれないとリーダーシップが取れないという話なのか、鶏が先か卵が先の議論になっているわけですね。
それを打破するために、つまり一歩でも動かそうとすれば、これは日本がリーダーシップを取らざるを得ないんだろうと思います。欧米が動くのを待っていては、動かないという意味において、日本のリーダーシップがないのではないかと思います。これは、必ずしも学者の先生方のリーダーシップという意味ではないんですけれども、要するに、それを含めた政府あるいは科学コミュニティ全体のリーダーシップが欠如しているのではないか、そこが原因ではないかということについて共通の認識があり得るかなと思います。
3つ目は、ILCか、あるいはFCC-eeなのかということなのですが、どうも欧米はILCを自分たちだけでやろうとする気持ちはないように思えます。したがって、日本がもしできなければ、しようがないからFCCを延長してFCC-eeでやっていくしかないという、FCC-ee優先の感覚は、欧米といいますか、特に欧州にはあるのではないのかということについて認識は共通するものがありはしないかということなんですけれども、この3つの点について共通の認識も持てればというふうに思います。
以上です。
【観山座長】 ありがとうございます。
1番目、今提案いただきました共通の認識ということで、厳しい財政であるという認識は、これは共有できるんじゃないかと思います。様々なトッププライオリティーの課題がたくさんある中で、これがどれだけ各国重要であるかということはなかなか難しい状況であると思います。
それから、2番目については私もそういうふうに思います。ILCよりは1桁ぐらい小さい計画ですけども、アルマという計画を進めるときに、やっぱり日本、北米、欧州が、鶏が先か卵が先かという問題があって、非常に困惑しました。やっぱりどこかがリーダーシップを取らなきゃということがあると思うんです。その点に関して神余委員とそのニュアンスがちょっと違うんですが、やっぱりもうちょっと各国の歩み寄りが必要ではないかなと思います。今の欧州の状況なんかを見ると、何か日本がやりますと言っても、欧州は、フランスなんかも全然その余裕はないというような形を述べています。だからもうちょっと、日本が応分の負担というか多少の負担をするでもあるかもしれませんけども、もうちょっと歩み寄りが進まないと難しいです。何といいますか、まだ全然、土俵の大分外側で見ているような感じがするんです。もうちょっと土俵の間際まで行って、いろいろ相談をするようなレベルになってないと、なかなかまずは日本が土俵に上がるという状況ができないのではないでしょうか。そこまで来ているのかなという印象を持ちました。
いかがでしょうか、皆さん。
3番目はまた、ちょっと、分野に近い方が。
岡村先生、どうぞ。
【岡村委員】 岡村です。今の点で、先ほど浅井さんが言われましたが、FCC-eeとかの欧州の計画については、今は皆さん、研究者が面白いから、いろんな計画をやっているけど、実際、本当にそれを作ろうという話になったら、とても難しいという話がありました。
それから、アメリカもまだ将来どうするかをはっきり決めていないみたいです。日本だけが今こういうふうにILCを是非ともと言っている状況にあることを考えると、確かに観山さんが言われるように歩み寄りが必要というのもあるんですけど、私は、結局は機が熟していないというのが共通認識なんじゃないかと思っているんですけどね。
【観山座長】 機が熟してないというのは?
【岡村委員】 歩み寄りを始めようという段階に、それぞれのところがなっていない。
【観山座長】 ああ、分かりました。
【岡村委員】 日本だけが何とかしなきゃいけないという意識で動いているけれども、ほかのところは、日本がどうやるか見ていたらどうですかみたいなレベルになっているから、それはとても、歩み寄りを期待してこうこうしましょうと言っても難しい状況なのではないかなというふうに個人的には思っています。
【観山座長】 ほかにいかがでしょうか。
まず徳宿委員、それから森委員。
【森委員】 森です。私も、これは世界各国とも必ずしも高いプライオリティーを感じていないというのがあるんですが、この背景には、今、自然科学、様々なサイエンスに対する期待そのものがなくなっているわけではないと思うんですね。
コロナにしましても、今ほど、ある意味ではサイエンスに対する期待で、これで自分たちが救われるという期待が各国にあるんですが、ただ、その期待する対象がILCではない。あるいは、少なくとも素粒子論の中に何らかの将来に対する期待を感じていないということが、1つ、世界の共通的な意思ではないかと感じております。
実際に、宇宙に関しては、まだ関心はあるわけなんですよ。ですから、実際に民間でロケットを飛ばしたりもしているわけですし、それから宇宙開発の話も出てくるわけですから、決してコロナや温暖化だけがサイエンス、興味ということではないと思います。
ただし今は、このILCによって素粒子の、あるいは、さらに深いところへ入り込むということに対して、世界は、ちょっとそこに期待を持つよりは、もっと違うところに期待をしているというのが私の印象で、そのためにプライオリティーが上がっていないんじゃないかと感じております。
以上です。
【観山座長】 ありがとうございました。
徳宿委員、どうぞ。
【徳宿委員】 ありがとうございます。リーダーシップの件についてですけれども、鶏が先か卵が先かという議論は、ILCについてはもう10年以上もずっとやっている、やっぱり非常に難しい問題だという認識を持っています。
今のまとめのところにあるように、財政負担に関するコミットメントが全く示されていないとかいう問題、及びそのコメントの中にある、日本が額を負担する覚悟を持ってやらないといけないという指摘。これ、別にそういうことをどこかで、今回出てきたわけではない意見だとは思うのですが、とにかく、多分鶏と卵を1つ解決するには、やっぱり最初にお金のコミットメントから議論するのが間違っているという気がするのですよね。
それは前から言っていることですが、例えば、この前もちょっと言いましたけれども、E-XFELのときには、まずドイツがやりたいから、コミットメントとか言わずに話し合いましょうという形で言うわけです。今回は、みんながお金を出さないと始まらないと言っていると、みんなやっぱり始まらないところがあるのだと思うのですよね。
だから、そこを何か打破しなくてはいけなくて、そういう意味では、プレラボというよりは、今ILCについては、技術開発はほぼ終わっているというメッセージはもらったと思いますので、これから技術的準備作業、工学的な設計レベルなので、そこを一緒にやりましょうという形での国際的な呼びかけをすることをやって、そこの協力をきちんとやっていくという実績を積んでから本物のお金のコミットメントの議論をするという、そういうツーステップにしたほうが私はいいのではないかと思うんです。国際関係のプロではないから素人考えですけれども、今までの経験、この手のプロジェクトだと、そういう感じが私はします。
以上です。
【観山座長】 歩み寄りの1つの手段として、技術的な共有感をつくろうというのはあり得る話ではないかと思いますよね。
ほかに手が挙がりましたでしょうか。
中野委員、どうぞ。
【中野委員】 今回の骨子案を見て、なるほどというか、うなずける部分がかなりあって、こういう意見があるんだろうなと思うんですけれども、一方で、結構、駄目出し感が強くて、いろいろと推進派がこうしたいああしたいと言っていることに対して、時期尚早であるとか、機が熟してないという先ほどの御意見もありましたけど、そういうことをかなりストレートに言っていて、じゃあどうしたらいいのかというヒントがあまりないような感じがするんです。
【観山座長】 なるほど。
【中野委員】 うん。だから、やっぱりせっかく集まって議論したので、こういうやり方もあるのではないかというポジティブなところも、ちょっとは入れたほうがいいんじゃないかと感じました。
僕としては、何回か前に、山内機構長が準備研究所というのは看板だけでもいいとおっしゃったのは、その時点ではかなりポジティブだったんですね。その看板を使ってどうするかということに関しては、深くお伺いする機会がなかったんですけれども、もし何かそういうアイデアがあるならば、あるいは我々がそういうアイデアを提供できるのであれば、こういうやり方もあるんじゃないかと書き込むことによって、ネガティブ一辺倒じゃなくて、実現の確率はそんなに高くないかもしれないけれども、前に進めるような提案ができればいいかなと思いました。
以上です。
【観山座長】 中野先生が言われること、それが非常に重要なところだと思いますが。
岡村委員、どうぞ。
【岡村委員】 実は、私は機が熟していないというのだけを言って終わってしまいましたが、私は、中野先生の意見に全く同感です。
機が熟していないという状況を踏まえた上でどうしたらいいかという、そういうポジティブなことを書き込むべきだと。もう全く同じ意見です。舌足らずでした。
【観山座長】 京藤先生。
【京藤委員】 よろしいですか。ちょっと視点が違うんですけれども、昔、この類いのプロジェクトなんかは、産業界がかなり興味を持って、やろう、手伝っていこうとか、そういう意欲があったような感じがするんですけど、最近は産業界の経済状況が非常に悪くて、こういう分野に対しての関心が非常に、特に日本は小さくなっているんじゃないかと思います。
企業構造自身が大分変化してきて、今はちょうど転換期で、自分たちがどうやって生きていくか必死になっている状況なので、そういうところにどう働きかけていくかというのは相当工夫しないと。産業界の支援が得られれば、政治家とか、いろんなところが動き出して、省庁も動き出すんですけど、それがないと、なかなかこういうのを、機運を盛り上げていくというのは、今の段階ではかなり厳しいんじゃないかと思います。
特に情報通信関係の成長が激しく、日本なんかはちょっと立ち後れてしまったというのが経済状況を悪化させている理由の1つなので、そういう面でも、今、日本がやるというのは、かなり国民的にというか、社会的に支援を受けにくいという環境にある。
だから、どうやってこの考えを維持して、世界中に仲間をつくっていくかに集中しないと、なかなか難しいんじゃないかと思います。
以上です。
【観山座長】 森委員、どうぞ。
【森委員】 今のは非常に大事なポイントだと思うんですね。私は、ちょっとサイエンスに対するプライオリティーが下がっているんじゃないかとは申し上げましたが、プライオリティーがなくなったということではございません。たまたま、これはこれまでの御説明で、非常にいろいろな新しい知見が得られるということは、恐らく、これもまた熱心な活動のおかげで多分これが出てきていると思います。
ただし、この莫大な投資というところで各国とも二の足を踏んでしまっているところなんですけれども、そういう意味では、最初の、先ほどお話のありました準備研究所、これは結構役割が重要なんじゃないかというふうに思います。
特に、今回、途中段階の波及効果についてのスライドを頂きましたけれども、もっと高精度で、これまでになかったような大きな技術が必要だ、これはいろんなところに使えるんだともっとアピールされれば、これは産業界のほうも、ほかにない、日本がオンリーワンになれるチャンスが出てくるという期待が持てれば、もう少し動きが出てくると思います。
要するに、こういうビッグプロジェクトは、多くの人たちがそれに希望を持てるかどうかに尽きるわけなんですね。だから残念ながら、今はほかのところに、希望がこっちに、抱えている問題がちょっとこれとは違う方向にあるものだから、希望、期待と申しますか、サイエンスに対する希望が、生物であったり、温暖化であったりとか気候科学であったりとかに向いているということだと思うんです。
ですから、この技術開発の中で、これができればこういう希望が開けるということは、これはコロナの最中であっても示すことができると思いますので、この準備研究所が将来の莫大な投資の前提だとかというと、かえって信頼をなくしてしまう危険はありますけれども、そこから始まるのが私は大事だと思います。
以上です。
【観山座長】 プレラボについては後でもありますので、まず丸1 はこれぐらいにしたいと思いますが、最初に神余委員からあったような、共有できる部分としては、厳しい財政であると。こういう国際協力の場合には、誰かがリーダーシップを取って推進することが重要だけれども、私とか、もう一人、二人言われましたけれども、まだまだ歩み寄っているような状況に至っていないんじゃないかというような印象があります。特に財政的な面ではですね。
だから、財政的な面をあまりやるといつまでたっても話が進まないので、例えば徳宿委員がされた、技術的な連携を先にやって、ある種の共有感をつくって、その次のステップに進んではどうかというような、少し中野先生も言われましたけれども、どういう方向があるのかというものを、今のは一例ですけれども、挙げていく方向の最終報告書にしてはどうかという意見がありました。
ちょっと時間のこともありますので、2番目、学術的意義や国民及び科学コミュニティの理解、これはいかがでしょうか。
中野委員、どうぞ。
【中野委員】 先ほど、何か急に話したので、うまく日本語がしゃべれなかったんですけど、学術的意義は、僕は実は上がっていると思うんですよ。
学術的意義の作業部会を前回やっていて、そのときの議論で、やっぱりHL-LHCで新粒子が見つかるか見つからないかでいろいろありますねという話をしていて、どちらのほうがILCの意義が上がるだろうかというのを、最後、決までは取らなかったんですが、多数の意見は、見つからなかったときのほうがILCの価値は上がるんじゃないかという意見だったんですよね。ほかに手がないのでILCをやるしかないだろうという意見が多かったので、実は上がっていると思います。
ただ、上がっているのがストレートにいろんな状況に反映されていないところが問題で、それは一体どうしてなんだろうといつも思っているんですが、アカデミアの世界でも、それから国民からの理解という点でも、その状況がうまく、最大限使えていないというか、反映されていないというのを感じます。
以上です。
【観山座長】 ほかにどうでしょうか。
東嶋委員、それから、次に神余委員。
【東嶋委員】 ありがとうございます。
国民及び科学コミュニティの理解というところで、何かしら、今後このようにしたらということが言えるかということで、ちょっとコメントを述べさせていただきたいんですが、今回の議論を通じて、ILCに対する他国の関心や重要度はさほど高くないというのが分かりました。
それで、そんな中であえて日本にこれを誘致するということでは、国民の皆さんに対して、3つ大きなハードルを越えていただかなきゃいけないと思うんですね。
1つは、まず日本に誘致して大きな土木工事を行うということ。そして2つ目には、多額の投資をするということ。そして3つ目に、他国の協力がどうしても必要だということ。
この3つに対して、国民の皆さんに納得感を持ってもらわなくてはいけないんですが、これまでの御報告を通じて、いろいろなアプローチをされてきたのは分かったんですけれども、やはり認知度とか、それから誘致を望む声についてのアンケートを取られていないので、それがどのように経年変化してきたかが伝わってこないわけです。
ですので、これからは、どうしても日本に誘致したい、応援したいという気持ちを皆さんに持っていただくということを1つの目標に、様々な、もちろん一般の国民の方、学生さん、それから産業界、アカデミアもそうなんですけれども、様々なアプローチを通じてアンケートを取っていただいて、何といいますか、皆さんの興奮度といいますか、興味の度合いを上げていく。着実に上げていって、それを1つのアピールの材料にしていただくということが、どうしても必要条件になってくるかと思います。
それから、応援団もいらっしゃると聞いたのですけれども、やはりもっと広い、クラウドファンディングをやるとか、いろいろなルートを通じて、支援を独自に集めていくということも必要かと思います。それは金額の問題ではなく、そういう支援をする人たちが増えているんだということの表明にもなるかと思いますので、その点をこれからやっていただいて、積み重ねていくことが必要かと思います。
以上です。
【観山座長】 ありがとうございます。その点は私も非常に同感です。
調査をしていないというのは、ちょっと今のレベルで本当にびっくりしました。思い出してみると、東京オリンピック2020って、最初の頃はあんまりみんな関心がなかったですけれども、割とうまいコマーシャルと、それから国民の調査を非常に何回もやっていって、それがだんだん上がっていくということで、みんな期待感が上がっているんだということで、最終的な誘致に成功したということで盛り上がってきたことがあったという気がします。
オリンピックとサイエンス、学術の面で、比べようがなかなか難しいかとは思いますけれども、どれぐらい浸透してきてどれぐらいの期待感があるのかというのは、やっぱりエビデンスを示さない今の状況は問題があると思います。前にありましたけど、すばる望遠鏡だとか、国際宇宙ステーションとの比較で、どれだけの認知度があるかという資料がありましたけれども、それはある時点での調査であって、それがどう変わっていくのかということが少なくともないと、なかなか国民的な理解が広がっているとはいえないと思います。
ありがとうございました。参考にさせていただきます。
神余委員、どうぞ。
【神余委員】 ありがとうございます。私は、様々な科学コミュニティ、あるいはその他のコミュニティの理解が得られていないという状況が続いているということは、そのとおりだろうと思います。
現状では、やはり今、人類、社会を含めて、非常に内向きになっていると思います。コロナにしても温暖化にしても、これは人間に対する脅威というレベルの話であり、また、最近よく言われているアントロポセン、人新世といいますか、それについても、地球の命運がどうのこうのという話であり、さらに中国、米中対立、こういったものを含めて全て、切実な脅威と危機感に根差しているものに随分国際社会の関心が向いているし、また、科学の関心もそこに向いていかざるを得ないということによって、物質の根源とか、宇宙はどう成立したかということに対する興味が削がれてきている状況があると思います。私は、それは非常に残念なことだと思います。
特に、今日の浅井先生のお話は、門外漢の私にとっても、聞いていて非常に良い、すばらしい説明をされたと思います。ああいう説明をやはりどんどんやっていく必要があって、こういう内向きのときだからこそ、物質の根源とか、本当にサイエンスの一番の問題、サイエンスらしいところに対する興味を向けていくことに対する努力を、これは素粒子科学者だけではなくて、科学を担っている者全員でやっていく必要があるのではないかと思います。これは1つの義務ではないかとすら思いますね。
ですから、そういった方向に日本の科学界が、あるいは世界の科学コミュニティが向かうべきなんだというような発信、発想は、これはやはり日本からもしていかないといけない。現状は、あまりにも内向きで、脅威中心の科学観、安全保障観だろうと思うんですね。
ですから、私はむしろ、どなたかがおっしゃいましたけど、中国はどうなのかというときに、中国は恐らく自分では、この分野ではできないので協力が必要だという話であれば、日本が中国を引き込んで、巻き込んでいくぐらいの気持ちで、対中の1つの大きな共同プロジェクトにしていくような勢いも持ってやれば、世界のコミュニティの目もまた変わってくるかもしれない。なんだ、中国が参加するのかという話になりますので。ですから、そういう方向に切り替えていかないと、いつまでも欧米という話になってくると、どうしても、さっき言ったような財政の話とか、そんな話になってくるわけです。
ですから、もっと夢を与える部分について、これは恐らく相当大きなものになると思いますが、私は、その分野の努力が足りないし、今日の御説明のようなことであれば、もっとうまくいく可能性があるのではないかと思います。
【観山座長】 ありがとうございました。途中で言われた学術的意義については、今日の浅井先生の説明は非常によかったと思いますし、分かりやすかったと思います。
ただ、学術会議がこの前、数年前に出したように、まだまだほかの分野に理解が進んでいるという状況ではないと思います。
それから、欧米以外の国をやっぱり、これは個々の項目じゃないかと思いますけども、もっともっと参加を募るということは、非常に重要な視点だと思います。これは3年前にも、ちょっとそういう話があったと思います。
ほかにいかがでしょうか。
徳宿委員。
【徳宿委員】 最初の中野委員の話とも重なるのですが、ここの項目、学術的意義やコミュニティの理解ですので、やっぱり学術的意義についても、少しコメントをちゃんと書いておくべきだと思います。
中野さんはむしろ上がったということで、僕もそう言いたいところですが、でも、多分一番大事なのは、前の委員会のときから基本的な重要性というのは変わっていないのだということは、最低、我々も書くべきかと思っています。
やっぱり、今、ヒッグスをきちんと見るという、ILCのメインの学術的意義というのは非常に重要な課題でして、だからこそ、先ほどの神余委員のほうにもありましたように、ILCがうまくいかないんだったらFCCも考えなくちゃいけないとも考えているというわけです。やっぱりヒッグスをきちんと見るという、物理が重要だというのが変わっていないというメッセージは、ここに書くべきなのではないかという気がします。
これは何十年もかかる巨額のプロジェクトですので、毎年のように価値が上がったり下がったりするべきものではないはずなのですよね。だから、きちんとしたメインの重要性が変わっていないということは、やっぱり、ポイントとして言っておいてあげるといいと思います。
【観山座長】 学術的な意義が上がったという部分と、他のコミュニティからの学術的な意義が分かりやすくなったという2つの面があって……。
【徳宿委員】 そのとおりです。最初のほうについても少しコメントしないといけないという点です。
【観山座長】 はい。最初のほうについても少しコメントすると。ただ、それは割と近い分野の方が端的にコメントしていただかないと、ちょっと私では難しいと思います。
以前に、中野先生が主査で随分議論されて、LHCの結果を見つつ議論があったということは覚えておりますけれども、それが共有できるかどうか分からないけど、盛り込むべきことではないかと思いますが。
では、ちょっと次に行きたいと思います。次は、3番目、技術的成立性の明確化及びコスト見積りの妥当性についてはいかがでしょうか。
これは以前から、何個でしたか、何万という大量な加速器真空システムが必要でした。少数での物はできたんだけれども、大量に生産が可能なのか、それからコストは大丈夫なのか。それから、ドイツで作った研究所ではちょっとレベルを落としてやっているけれども、それ以上の大きなシステムの中で本当に大丈夫なのかという部分が1つあることが課題としてあると思います。また、これは担当者から出てきている話にも書いてありましたけれども、陽電子ビーム、アンジュレーターについて、代替のシステムはあるけれども、でも、最適なものがまだまだ課題が残っているという部分、これが技術的な部分としては大きく2つあると思いますが。あとは全体のコスト、それをどこまで正確に絞れているのかが大きな課題だと思いますけれども、いかがでしょうか。
ちょっとプレラボのことが書いてあるんですが、プレラボについてはまとめて、(2)で話をしてもいいですが、ここでお話しされても結構だと思いますけど、それを含めて。
事務局がまとめられた以上のものは、あるでしょうか。
徳宿委員。
【徳宿委員】 度々すいません。基本的にはいいのですけど、やっぱり技術、観山座長もおっしゃったように、これからやるのは、どちらかというと、もうR&D、技術開発というよりは工学的設計レベルという話だったと思いますので、書き方として、技術開発をやればいいとかいう形よりは、技術開発は、この前の会議のときに聞いた話ではほぼ終わっているわけで、これからやらなくてはいけないのは次の技術的準備作業、あるいは工学設計レベルでの作業だということをみんなで共有して、それには、多分科学的には面白くないところもありますけれども、それが重要なステップなのだということで、ここを理解しながら書くというのが大事なのではないかと思いました。
【観山座長】 2人、手が挙がったので、まず横溝委員。
【横溝座長代理】 ありがとうございます。徳宿さんがおっしゃられたように、今後は、準備研究所でやる内容も実証実験に近い。実機を実際に大量に作って、その性能が狙いどおりにいっているかどうかを確認しましょうという状況になっているんですね。この有識者会議では、加速器技術に関してはあんまり議論がなかった、そういう状況なのでしなかったというのが実態だと思っています。だから、ここで今の技術が少しずつ進んできているというのもありますけども、それの判断をあまり詳細に書く状況にはなっていないという気がしています。
むしろ、次に進めるかどうかというのは、準備研究所に行くのか、準備研究所なしで、技術の実証を世界と協力してやっていきなさいというのかという判断になってくるのでないかと思っています。
ですから、コストに関しても議論できないのは、もともと25%の不確定性があるんですよと言っていると、よっぽどへましない限りはそこに入ってくるのではないかという印象があります。だから、これが良い悪いという議論がしにくいという状況なので、どちらかというと、今の状況を淡々とした上で、次に移るほうがいいのかなと思います。
以上です。
【観山座長】 なるほど。今の視点は重要で、加速器技術に関しては深くここでは議論していなかった、それからなおかつ、技術が達成されているのかどうかということも共有できる状況ではないということですね。それはそうかもしれません。私も全然専門家ではありませんし、専門家の太鼓判をいただいたわけではないということですね。その上で、プレラボありかなしかという議論は、議論しなければいけないということでしょうかね。
もう一人、手が挙がりましたね。熊谷委員。
【熊谷委員】 レディーファーストで小磯さんでもいいですけれども、いいですか。
【観山座長】 どうぞ。
【熊谷委員】 分かりました。
この技術的成立性の明確化というので、E-XFELが1年以上運転を続けて、それなりにいろいろな機器や装置の故障の頻度だとか、問題点だとか、課題というのが統計的にきちっと処理されていると思うんですよね。そういう実績、確かに電界強度がILCは32メガボルト以上だったかな、そのぐらいですけれども、E-XFELは24とか26と言っているので、その差はあるんですけれども、そういう工学システムをきちっと1年間以上運転した実績をきちっと分析した上で、このILCにとって今一番の課題が何であるかということをサーベイしていただきたいなとつくづく思っていたんですが、そういうデータが出てきていないんですよね。
やはり加速器というのは、超伝導空洞だけではなくて、一体的にいろいろなシステムをインテグレートしてできているので、どこか1つに問題が出ると、その加速器システムが工学システムにならないということになりますので、その辺の分析を進めていただきたいなという感じがします。
要素技術個別に見ると、それぞれR&Dの段階は終わっているのかなという印象を私は強く持っています。ただ、その要素技術ができたからといって、工学システムにその全体をまとめて加速器として運転したときに何が発生するのかというのは、日本の中ではまだ経験がないので、どこかで、例えば1ユニット、1モジュール、2モジュールぐらいでも連続運転をして、どこに問題が出るのかというサーベイをきちっとすることが、本計画に進める上の最低限の条件ではないかと思います。
以上です。
【観山座長】 では、小磯委員、お願いします。
【小磯委員】 小磯です。やはりここの場では技術的なことにはあまり踏み込んで議論していないということに関しては、一応きちんとコメントしておいていただければとは思います。
あともう一つ、少し問題点がずれるのかもしれませんけれども、準備研究所などをどういうふうに進めていくかということに関して、実際の加速器研究者コミュニティで十分な意見交換などがなされているのかということに関しても、私としては、もっとコミュニケーションがあったほうがいいのではないかなという感触も持っております。
【観山座長】 プレラボのところでもちょっとそのことは触れてあると思いますけれども、よろしいでしょうか。
大町先生。
【大町委員】 準備研究所の果たすべき役割については、いろいろ資料は拝見しましたけれども、新規地点に立地する必要性がよく分かりません。例えばもっと経費を節減するという観点からすると、つくばのあたりでもいいような気もするし、新しい本体ができる場所に限定せず、経費もリスクも低減できる場所を選定する必要があるのかなと思いました。
以上です。
【観山座長】 ありがとうございます。ほかにはよろしいでしょうか。
また戻りますので、次の課題で、それから、人的な部分、これは何かありますかね。これはもう大きな計画を経験された方だと共有できると思いますが、研究者、技術者だけではなくて、非常に多様な人が要ります。今の日本の研究所の中にはそれを持っていません。例えば日本につくるといったら、全部いろいろなものを輸入しなきゃいけないとか、それから、外国人が来るためのいろいろな状況だとか、国際法だとか、安全管理の仕組みというのは各国で違いますので、それをどういうふうにまとめていくのかというのは、研究技術以外に非常に多様な仕事があって、それをどうするかというのは非常に重要な問題で、ここら辺はCERNで大きな経験がある方々の十分な参加があることが非常に重要なポイントだと思いました。
何かありますでしょうか。
では、後で戻るとして、(2)、先ほどからあるILC準備研究所の提案についての考え方に移りたいと思いますが、いかがでしょうか。
岡村先生、どうぞ。
【岡村委員】 大きな節の中の(1)はさっきまでの議論の経緯がいろいろ書いてあって、(2)というのはそれとは別の1つの大きな項目として取り上げられている重要な論点だと思います。
現在のまとめを見ると、一番最初の※が、「これらを踏まえると、日本誘致を前提とした準備研究所のプロセスに移行するのは難しいと言わざるを得ない状況ではないか。」とまとめてあります。このような意見がたくさんあったことはそのとおりだと思いますが、さっきの中野委員の意見のように、これでぱっと終わったら、じゃあ、この会議でのこれまでの議論はどう考えるのかという話になる。本体の誘致を前提とするしないに関しては、しないほうがいいというような意見もあったし、しなければ進まないという意見もありました。提案者のほうからも、必ずしも誘致が前提ではないというような意見の表明もありました。それから、やるべき事の中から幾つかだけを切り出すとか、いろいろなオプションが議論されたと思いますので、ぜひこの1番目の※の次に、誘致を前提としない場合はどういうような事柄があって、それについてどういうことが議論されたかということはぜひ書き込むとよいと思っています。
【観山座長】 先ほど小磯委員からもありましたとおり、コミュニティに十分この話が共有されているのかということとか、浅井さんのお話でもあったと思いますけれども、230億というレベルじゃなくて、何かもうちょっとポイントを集中したような、割と額が少ない、額が少ないといっても多かったですけれども、各国が十数億円ぐらい分担して50億ぐらいでできるようなレベルでもいいんじゃないかとか、何かいろいろなオプションというか、課題も挙げられたと思いますけれども、いかがでしょうか、ほかに。
中野委員。
【中野委員】 この準備研究所については、準備研究所が必要だという機運が十分に高まっていないというか、必要性が十分に納得できるレベルに達していないというところが一番の問題かなと思います。
同じ準備研究所という名前を使うんですけれども、そのレベルにまず達するというか、確かにリアリティーを高めなくちゃいけないよねというのが本当にコミュニティ、それも国を越えたコミュニティのコンセンサスになるような準備をこの研究所がするんだったら、準備研究所の意味は高いんじゃないかなと思います。
だから、準備研究所をつくるのは難しいと言い切るんじゃなくて、こういう準備研究所だったら意味があるんじゃないかなという言い方がもしできたら、そちらのほうがいいんじゃないかなと思いました。
【観山座長】 私、前回か前々回か発言しましたけれども、当初の230億の準備研究所というのはセットなんですよと言われると、準備研究所ですから、もしもうまくいかなかった場合に、それは会計検査院のターゲットになりますよと言ったと思うんですが。それは脇に置いておいても割と簡単にプレラボの話が出てきましたけれども、R&Dではないにしても、量産化がこのコストでできるのかとか、技術的なレベルが工学的に大丈夫なのかというのを調べて、それがうまくいかないという場合ももちろん想定しなくてはなりません。そうしたときに、私がちょっと心配するのは、日本の素粒子実験分野というのが持続可能かという心配を持ちますね。つまり、巨額な研究所を1個つくるようなレベルで、それがあんまりうまくいかなかった、先ほど浅井さんは産業的に十分な成果が得られるんだとはおっしゃいましたけれども、真の目的である部分に対する、そういうスタンスで本当に大丈夫なのかという感じがしますよね。
それから、ITERのときには、その心配を払拭する意味でも、このプレラボの段階では少なくとも、国際的なコンセンサスというか、政府間の協定ぐらいのレベルをやって、こういうふうに各国が本当に参加するようなレベルでやって、こういう状況にはなりましたというぐらいなことをしないと、後々のことをよく考えてやらないと、ちょっとリスキーな金額のレベルだと思いましたけどね。
【中野委員】 私も全くそう思います。だから、いきなり230億とか大きなお金に行くんじゃなくて、準備研究所の準備研究所と言っちゃうと何を言っているか分からないんですけれども、ファーストステップはもう少し小ぢんまりと始めて、そこにちゃんとマイルストーンを設定して、そのマイルストーンが設定されたら、実機レベルの工学的な検証するというような、そういうツーステップにしてもいいんじゃないかな。
産業界でほとんどのベンチャーとかそういうのは、いきなり多額の資金を入れませんよね。初めは小さな額で始めて、マイルストーンを達成したら増資するというようなことになるので、そういうようなやり方もあるんじゃないかなと思いました。
【観山座長】 神余委員、どうぞ、お願いします。
【神余委員】 ありがとうございます。私は、先ほどいろいろ議論もありましたが、まだやっぱり各国が土俵に完全に上がっていないんじゃないかと思います。ですから、なかなか日本がリーダーシップを取れない、それは確かにそういうことだったと思います。そこで、今やるべきことは、土俵にどうやって連れてきて、どうやって土俵に乗っけるかということが大事だと思います。このプレラボは、恐らくそういうことの目的のためにファンクションする可能性があるのではないかと思います。
金額も230億と言っても、最近、コロナの関係で1兆や何兆といったすごい金を見せつけられて、ああいう金が出ていくのであれば、科学技術に230億円なんていうのは、恐らくそれほど国民がびっくりするような額ではないと思います。ですから、科学技術に対するそれだけの投資というものはやらなくてはいけないという観点から見れば、この230億がどうかというバナナのたたき売りみたいなことはしたくないですけれども、もう少しコンパクトにできるのであればコンパクトにしてもらって、プレラボぐらいは誘致をして、土俵づくりを日本がしていくことによって、初めて実は政治的にもそれ以降のイニシアチブが取りやすくなるということであれば、私はこれはやってもいいのではないかなと思います。しかも、その間に加速器等の波及効果があるということも考えられるのであれば、これはそんなにネガティブになる必要はないのではないかなと思います。
特に、磁気浮上鉄道、ちょっと似たような名称ですけれども、日本はリニアモーターカーの開発のときに、ドイツが先行してやっていたんですが、日本は本当に鶏小屋のようなところで宮崎でやっていて、その後、山梨に移りましたけれども、日本が成功するかどうか分からないけれども、とにかくずーっとやってきた結果、結局ドイツはやめて、中国は上海でちょっとつくっていますけれども、それもやめて、今やもう日本がそれをやり続けてきて、そろそろできるかもしれないというところまで来ました。鶏小屋のような実験のラボを持たないと、各国との関係でも説得力がないと思いますね。そう思いますので、私は額の問題はあるとしても、プレラボのアイデアはそんなに悪いアイデアではないのではないかと思います。
【観山座長】 京藤委員から。
【京藤委員】 神余委員の言われることはもっともなんですけれども、今の日本の学術に出している予算を考えると、特にサイエンスに対する予算を見ると、本当にバランスはそれでいいのかという問題が湧いてくると思います。いきなりプレラボというより、パイロット的などこかで実証するのをまずやっていくということで、学術界のサポートを受けるような形で、実証していくというのがまず大事。特にパーツができているけれども、アセンブリーで実証したところはまだないんじゃないかと思うので。いきなり230億でやっていくというのは、なかなか強引なやり方じゃないかなと私は思いますけれども。
【観山座長】 伊地知先生から手が挙がったんですね。
【伊地知委員】 伊地知です。ありがとうございます。中身というよりかは、この会議としてこの部分のまとめ方に関する点でのコメントになります。
今、資料として上がっている部分というのは、プレラボに関するプロポーザルにある記述を踏まえて、これまでいろいろと伺ってきた内容、あるいはこれまでの資料を踏まえて書かれているかと思うのですけれども、この会議で出てきている議論というのは、それを超えている、あるいはそことは異なる部分もあるかと思っていて、この会議でどういうスタンスでこの部分を記述していくのかということは非常に重要かと思いました。プロポーザルになる場合は、かなり踏み込むケースかと思いますし、それからサジェスチョンということもあるかもしれませんし、オブザべーションということもあるかと思うので、そこのところはよく整理をして、会議として文書を出していけたらなと思っているところです。
以上になります。
【観山座長】 非常に重要な指摘だと思います。確かに我々はこのILC問題について議論しているわけですが、プロポーザルとして準備研究所というのが提案者側から出てきたわけなんですけれども、だから議論しているわけですけれども、そもそも、どう言ったらいいですかね。そういう状況に行って判断するというのは、それを前提として議論しているような形にもなりますし、そこはちょっと注意したいと思います。ありがとうございました。
徳宿委員。
【徳宿委員】 今の伊地知委員の意見は私ももっともだと思います。それに対するうまい答えが今はないですけれども、1つ考えたのは、神余委員もおっしゃったように、今言われているプレラボを丸々認めるわけではないとしても、何らかの形をつくることで、これからの国際的なネゴシエーションが明らかにやりやすくなるというか、進むと思いますので、そういう形のものを何かポジティブに進めていけるというようなメッセージが出るといいのではないかとは思います。ただ、どういう具合に書くかというのは、非常に難しいと私も思います。
以上です。
【観山座長】 神余先生の非常にすごい御発言というか、これぐらいやったらいいじゃないかという意見もありますが、確かに学術的なサイドで言うと、230億ぐらいの、何年間でやるのか知りませんけれども、日本のフロンティア予算、いや、フロンティア予算は関係ないのかもしれないけれども、大型科学技術にやっている予算というのは年間200億とか300億ぐらいですから、数年でやるとしてもその3分の1か4分の1を注ぎ込むという話になるわけです。
横溝委員。
【横溝座長代理】 準備研究所でいく場合は、日本の政府の意思表明があって、政府間協定を結ぶというふうになっていたと思うんです。今の状況でそういうふうに踏み込んでいくというのは、大臣の答弁にもあるように非常に難しい。ほかの国からも、財政的にそれだけ負担していくという表明をするのは難しいという気がします。
かといって、このプロジェクトを将来的に駄目にするということはなくて、今の状況はよくないけれども、変わっていけば、ぜひやれるようにするという視点で考えてもいいのかなと思います。
その一番大きなところは政府間の合意をつくらないと進めないかどうかというところで、前回の現場の人の説明では、研究所間の協定で進めるという話もあったかなという気もするので、少し軽くした上で、もう一つは、それにかかる予算を幾ら政府が提供できるかということにかかってくると思います。だから、今まではあまり予算がつけられないので、その分、工学実証みたいなのができない。だから、230億全部丸々難しいにしても、かなりの工学的な試験ができる程度を各国で出してもらうような、そういうふうな狙いを持って研究所間で協力体制をつくって、しばらくは様子を見ながらやっていくという辺りを表現するというのも1つの手かなと思うのですけれども。
以上です。
【神余委員】 すみません。ちょっとその点について事実関係ですけれども、それはILCの準備研究所の提案の中に既に書かれてあって、政府間協定でやろうというふうには考えていないように思います。これは最初から少数の主要研究所の間の言わば共同宣言、ジョイントデクラレーション、すなわち、政府間の協定ではなくて、政治的な合意ですね、それでやっていきましょうということを前提にしています。ただ、もちろんそのことについて日本政府がサポートをしてくれることが条件ですけれども。ですから、最初は、今まさに横溝先生がおっしゃったように、要するに後者のほうなんですね。研究所間の緩い共同宣言でやっていきましょうということですので、そこに政府も巻き込んで、政府間の協定にしてしまうと、また鶏が先か卵が先かの議論になってしまうので、それは避けたほうが良いと思います。
【横溝座長代理】 それで、これを提案しているところの裏には、そういう意思表明とか予算の裏づけとかというのを期待している部分があるのではないかと思います。
【神余委員】 それはあるでしょうね。
【横溝座長代理】 これを進めたら、日本政府はかなりコミットする覚悟を持ったというふうに世界の研究者は思う可能性もありますし、だから、名前も含めて、もうちょっと別な印象を与えられるような進め方ができないのかなと思うのですけれども。
以上です。
【観山座長】 ここでは共有できるというか、少し文言を考えてみなきゃいけないとは思いますけれども、こういうストレートのやり方以外に、幾人かの方が言われたツーステップというか、技術的な共有を求めてまた次の段階へ進むなり、それから、政府間協定ではないというふうに提案は書かれていますけれども、そうは言っても、ここでもやっぱり歩み寄りを各国の政府レベルが必要でしょう。各研究所レベルで出せる予算だったら、それはそれなりに研究所間の協定でいいかと思います。しかし、多分それではないんだと思いますので、政府間のいろいろな拠出に対する動きみたいなものも見えることが大事だと思います。ちょっとすみません、時間がもうあと数分になってしまった。
最後が一番重要なんですが、最後のまとめとしてここに書かれているのは、3年がたって新しい提案が出てきたわけなんですが、この3年間たった状況で、際立った見通しが明確になったというふうな状況には言えない。それはそうだと思うんですけれども、幾人かからありましたように、どういうふうな方向性を今後、コミュニティというか、推進派に対してコメントするか、提言するかというところは必要ではないかなと思いますけれども、そこはこれだったら大丈夫というのは多分なくて、割といろいろな可能性を列挙するような形にせざるを得ないのかなと思いますけれども、いかがでしょうか。
これは後で事務局から今後の予定の説明もあると思いますが、私もまとめについて考えてみたいと思いますが、大きな進展がない状況が続いているという状況はしようがないとしても、今後どのような方向性、プレラボに対してもいろいろな意見がありましたけれども、いろいろな可能性を並列する、これだったら大丈夫だという意見は多分まとまらないと思いますけれども、可能性について指摘するという状況かなと思いますが、何か御意見いただきたいと思います。
中野先生。
【中野委員】 可能性というか、何かこういうのがあるんじゃないかという提案は多分物すごく向こうとしてもウエルカムだと思うんですが、それだけじゃなくて、何か重要なマイルストーンを我々が提示できたらいいかなと。次のステップとして、こういうことを満たしてくださいというふうな、少なくともこのステップを満たさないと、次には進めないんじゃないかと思っているというようなことが言えたらいいかなと思います。
【観山座長】 中野さんが考えるマイルストーンは何ですか。
【中野委員】 CERNのコミットメント。
【観山座長】 CERNのコミットメント。
【中野委員】 CERNのコミットメントを得られなかったら、多分、フランスもドイツもどこも政府がコミットメントを表明することないと思います。
【観山座長】 なるほど。それは非常に重要なマイルストーンですね。
徳宿委員。
【徳宿委員】 ただ、CERNのコミットメントは、ある意味ではヨーロピアンストラテジーというのがCERNがメインになってやっていますので、そこに書かれているということは、ある程度のCERNのコミットメントが既にあるという理解をするべきだと私は思っています。
【観山座長】 そうですけれども、やっぱりもうちょっと参加を具体的に示されるということとは違うと思いますけど。
【徳宿委員】 CERNはヨーロピアンストラテジーに縛られるので、あそこに書いてあることイコール将来計画で、CERNはそれに従わなくてはいけないというところはあります。ということで、あそこに書いてある通りにやる。その中で、ILCというのはもちろん将来の計画として書かれているという形になっていますから、それ以上のことを何か言うというのは、僕はちょっと不思議な気がします。
【観山座長】 難しいという。
【徳宿委員】 難しいところではありますけどね。CERN自体もかなり過大評価されているような気もしますけれども、CERN自体がILCへのお金を回して何かできるかというレベルではILCはないのは確かなのです。だから、きちんと、CERNだけじゃなくて、共同でヨーロッパとやるのであったらば、ヨーロッパの国から資金が出なくてはいけないという事実です。その中で、全体としてCERNが一緒にコーディネートしているというのは、ヨーロピアストラテジーで出しているというので明らかというのが論理にはなっています。だから、それを超えるところで何かCERNにやれとか言うというのは、ちょっと変かなという具合に私は思います。
【観山座長】 分かりました。マイルストーンにもいろいろあって、具体的に言ってもらうと、なかなかまとまらないというのがよく分かりました。
ほかにいかがでしょうか、このまとめ方について。
小磯さん。
【小磯委員】 小磯です。横山委員からの御意見の中で、ILCを単体でどうするかということではなくて、FCCも含めてこの分野の将来をどうするかという議論が必要なのではないかと横山委員がお書きになっているんですが、私も全くそう思います。この議論をICFAを中心にやるのがいいのかどうか、これは分からないんですけれども、高エネルギー物理の将来像としてどういうものを思い描いているかを、もう少し皆が自分事として議論して合意を得るというのがあるといいのではないかと思います。
【観山座長】 難しいですけれども、非常にごもっともな御意見だと思います。確かに、これは宇宙もそうですが、超巨大化になっていって、普通のサイエンス、要するに、人類ができるレベルが物すごく狭くなっていて、これでおしまいかって、多分おしまいじゃなくて、また次も必ずあるわけで、そこら辺の今後のこういう科学に対してどういう展望を見るかというのはちょっと難しいですけれども、それは一言で書けるわけじゃないと思いますが、1つの視点だと思います。ありがとうございました。
【小磯委員】 私もうまく表現できないんですけれども、世界のコミュニティでのきちんとした議論の深め方というのが、やはり今後必要なのではないかと思うので。
【観山座長】 先に挙がっていた神余委員から。
【神余委員】 私は、一言二言で言うならば、現状で、今の欧米各国の置かれた財政状況、その他科学の関心事の動向を見る限りにおいては、現状でこれがすぐにできるとは思えない。したがって、これを今の段階でいきなり、とにかく予算をつけてどうのこうのということにはならないと思います。ですから、これはあくまでやるならば2段階方式でやる、いきなり行くのは難しい。
そうすると、小さなスモールステップはどこかで取っておく必要があるのではないか。すなわち、この点における日本のリーダーシップがない限り、世界はやっぱり動かないと思います。ですから、日本のリーダーシップが取れるのは何かというと、恐らくプレラボなのか知りませんが、そういうもの、「プリカーサ」のような状態のところで何か化学反応を起こしておかないと動かないということですから、前駆物質を日本がつくっていく覚悟でやるという意味においてのプレラボらしきものは必要ではないかと思います。ただし、それは金額とか何かありますから、その部分については非常に限定的にならざるを得ないと思います。
それからもう一つ、日本全体の予算を考えてみた場合に、国立大学運営費交付金等に影響がないようにしなければならないということも大事な視点だと思います。ですから、これをやるとすると、やはりどうしても特別の予算でやるしかないということではないのかなと思います。しかし、日本の素粒子科学を保っていくためにも、そしてまた、リーダーシップを取っていくためにも、何かが必要ではないのかとは思います。
【観山座長】 ありがとうございました。
森委員、どうぞ。
【森委員】 私も横山委員の最後の3行がとても重要だと思います。最初、希望という言葉を使いましたけれども、科学に対する信頼と希望があって、それで初めて進むものだと思います。
また、信頼を保つ意味でも、私はプレラボがあったほうがいいと思うんですが、ただし、それが誘致を前提としたという条件付になってしまうと、逆に信頼に対してちょっとクエスチョンマークがついてしまうことを懸念します。あくまで、日本の科学をここで閉ざさない、途切れさせないための位置という意味でのプレラボであって、それが一体どの段階で機が熟して誘致ができる、踏み切れるかということは、これはもう前提にしないということ、目的ではあっても前提にはしないという上で、プレラボは私はあったほうがいいと思います。
230億という数字が大きいのか小さいのか、私は判断がつきかねるんですけれども、ある程度の予算をこのために確保しておくことは、多分、国民も信頼を持ってくれるんじゃないかと考えますが、これは私の判断で決められませんので、金額については広範な議論が必要かと思います。
以上です。
【観山座長】 ありがとうございました。
時間も来ましたので、さらに今日の議論で言えなかったことがありましたら、事務局のほうにお送りいただければと思います。
非常に貴重な御意見をいただきました。今後は、事務局に議論のまとめ案を作っていただきたいと思います。私も見たいと思いますけれども、それを基に、次回の会議ではまとめの方向性に行きたいと思います。
ということで、以上、本日の会議は終わりとしたいと思いますが、委員の皆様から何か御発言がありますでしょうか。いかがでしょうか。よろしいですか。
それでは、事務局より連絡事項をお願いいたします。
【林加速器科学専門官】 本日の議事録につきましては、後日、出席委員の皆様にメールにて内容の確認を御連絡いたしまして、その後、当省のホームページで議事録を公開するということになります。
次回の会議の開催につきましては、日程が決まり次第、改めて御連絡をいたします。
以上でございます。
【観山座長】 いつも若干時間が約束の時間より延びてしまって、進め方、手際が悪くて、どうも失礼いたします。
それでは、どうも御参加いただきまして、活発な意見交換、ありがとうございました。次回ができれば最後としたいと思いますけれども、どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。
本日の会議はこれで終了させていただきたいと思います。ありがとうございました。
―― 了 ――