ILCに関する有識者会議(第2期 第3回)議事録

1.日時

令和3年10月18日(月曜日)13時00分~15時00分

2.場所

オンライン開催

3.出席者

委員

観山座長、横溝座長代理、伊地知委員、大町委員、岡村委員、京藤委員、熊谷委員、小磯委員、神余委員、東嶋委員、徳宿委員、中野委員、森委員、横山委員

文部科学省

池田研究振興局長、坂本大臣官房審議官(研究振興局担当)、渡邉基礎・基盤研究課長、石川素粒子・原子核研究推進室長、林加速器科学専門官、磯科学官

オブザーバー

ILCジャパンスポークスパーソン/高エネルギー物理学研究者会議高エネルギー委員長/東京大学素粒子国際研究センター長 浅井教授、高エネルギー加速器研究機構 山内機構長、高エネルギー加速器研究機構 照沼教授、高エネルギー加速器研究機構 岡田理事、東京大学素粒子国際研究センター 森教授、カリフォルニア大学バークレー校 村山教授、高エネルギー加速器研究機構 道園教授、ILC国際推進チーム議長/スイス連邦工科大学 中田名誉教授、


4.議事録

【観山座長】  時間になりましたので、ただいまより国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議(第2期第3回)を開催いたします。
  本日は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、オンライン会議による開催といたします。また、本日もILC計画の提案研究者側との意見交換を行いますので、研究者の先生方にも御出席いただいております。現在はビデオをオフにしていただいておりますが、意見交換の議題が始まりましたら御紹介いたします。
  それでは、事務局より出欠と配付資料の確認をお願いいたします。

【林加速器科学専門官】  それでは、まず、本日の出席状況でございますが、まだ入られていない先生がございますけども、本日は一応全委員が御出席の予定となってございます。
  続きまして、配付資料の確認をいたします。本日の資料でございますが、議事次第にございますとおり資料1-1から2-5、それから参考資料を配付してございます。資料の不足等がございましたらお知らせいただければと思います。
  続きまして、繰り返しになりますけども、本日オンライン会議を円滑に行う観点からのお願いでございます。まず、御発言の際は、挙手とお名前を言っていただくようにお願いいたします。御発言なさらないときは、マイクをミュートにしていただきますようにお願いいたします。資料を参照して発言される場合は、ページ番号を示していただければと思います。
  それから、本日の傍聴登録でございますが、事前に申込みのありました144名の方が傍聴されております。
  本日の資料、それから議事録は、後日文部科学省のホームページで公開されるということになります。
  以上でございます。

【観山座長】  ありがとうございました。
  本日は、ILC計画の諸課題の進捗状況の確認として、提案研究者方の先生に御出席いただいて意見交換を行います。事務局から出席者の紹介をお願いいたします。

【林加速器科学専門官】  本日は、前回に続きまして8名の先生方に御出席をいただいております。
  それでは、御紹介させていただきます。発表される方を先に紹介させていただきます。まず、ILCジャパンスポークスパーソン、それから高エネルギー物理学研究者会議高エネルギー委員長、東京大学素粒子国際研究センターの浅井センター長でございます。
  それから、高エネルギー加速器研究機構の山内機構長でございます。
  同じく、高エネルギー加速器研究機構の照沼教授でございます。
  同じく、高エネルギー加速器研究機構の岡田理事でございます。
  それから、東京大学素粒子国際研究センターの森教授でございます。
  カリフォルニア大学バークレー校の村山教授でございます。
  高エネルギー加速器研究機構、道園教授でございます。
  ILC国際推進チーム議長、スイス連邦工科大学の中田名誉教授でございます。
  各項目の説明につきましては、資料1-1に記載の先生に行っていただく予定でございます。他の先生方につきましては、意見 交換、それから質疑応答の際に必要に応じて対応いただくことがございます。
  以上でございます。

【観山座長】  先生方には、お忙しいところを御出席いただきましてありがとうございます。本日はよろしくお願いいたします。
  それでは、意見交換の進め方と進捗状況の確認の視点等について、改めて事務局から説明をお願いいたします。

【石川素粒子・原子核研究推進室長】  それでは、資料1-1から1-4に基づいて簡単に説明させていただきます。前回に引き続きまして、本日も、提案研究者の先生方からの発表と意見交換ということで進めさせていただきたいと思っております。
  資料1-1の3番目、スケジュール・説明項目・説明者でございますけれども、1ページおめくりいただきまして第3回のところでございます。本日は、技術的成立性及びコスト見積もりの妥当性のうち土木及び環境・安全対策関係、学術的意義や国民及び科学コミュニティの理解、3点目として国際的な研究協力及び費用分担の見通し、4点目として人材の育成確保の見通し及びその他ということで、大きく4つのテーマにつきまして、先生方からまず御発表いただきまして、委員の先生方との意見交換をさせていただきたいと思います。各先生方からの発表の後に、今回は有識者の委員間での討議の時間を確保できればと考えております。
  資料1-2以降につきましては、前回と重複いたしますので簡単に紹介させていただきます。資料1-2はILC計画に関する主な課題ということで、1ポツの国際的な研究協力及び費用分担から、最後、6番目のその他のところまで、それぞれ過去の有識者会議ですとか日本学術会議で指摘された課題を挙げております。
  参考として、政府間同士での、米欧の政府機関との意見交換ですとか、今年2月の文部科学大臣の国会答弁をつけさせていただいております。
  資料1-3につきましては、各項目ごとの進捗状況の確認の視点でございます。1ポツの共通のところでは、記載がございますように前回の報告書取りまとめ以降の約3年間において提案研究者がどのような取組を行ったか、またどのような進捗が見られたかなどについて、確認の視点として記載してございます。その他のところにつきましても各項目ごとに視点を記載しておりますので、意見交換の際などに御参照いただければと思います。
  最後に、資料1-4につきましては、第1回の有識者会議での委員からの指摘事項を記載してございます。こちらにつきましても、各項目ごとの意見交換の際などに御参照いただければと思います。
  簡単ですが、以上でございます。

【観山座長】  ありがとうございます。
  ただいまの説明にありましたとおり意見交換を進めていきたいと思いますので、会議の進行に、どうぞ御協力いただければと思います。
  それでは、意見交換を始めたいと思います。先ほどの進め方どおり、まずは提案研究者側から進捗状況を御説明いただき、その後に意見交換を行いたいと思います。ビデオをオンにして御説明、意見交換していただくのは、項目毎に御説明いただく方と、計画提案の代表として浅井先生と山内先生にはお願いいたします。御説明いただく項目以外の計画提案の先生方は、一度ビデオをオフにしてお願いいたします。
  それでは、まず、技術的成立性及びコスト見積もりの妥当性(土木及び環境・安全対策)について、提案研究者から10分程度で御説明をお願いいたします。
  それでは、照沼先生、お願いいたします。

【照沼教授】  共有いたします。高エネ研の照沼でございます。よろしくお願いいたします。
  私のほうからは土木関係の報告になります。これは先日の資料、ILCに関する主な課題についての補足説明になります。また、以下の視点、指摘事項につきましてまとめたものになります。
  初めに、現在までの準備状況をまとめたものでございます。緑の部分が前回の会議以降の進捗を示しております。最初に土木ですが、現地モデルに基づく施設計画を策定し、それに土木学会の評価をいただくなどしております。安全対策関係では耐震設計の事例調査を基にした方針の取りまとめ、それから地下湧水、さらに放射線安全強化に対する具体的な施設関係の検討を進めてきました。また、住民説明会を開催し、安全に関する説明をしております。環境に関しましては、アドバイザリーボードを立ち上げてILC環境アセスメントの考え方を取りまとめてきました。
  次に実施するのは詳細設計に入りますが、そのためには現地の詳細な地形・地質調査が必須のものとなってきます。また、環境アセスメントに着手する必要もございます。これらの調査・設計には、新たな経費による対応が必要となってきます。
  最初に、体制についてちょっと触れておきたいと思います。加速器の設計については、私たち研究者組織の下で国際的に進めておりますが、とりわけ土木関係に関しましては、専門的な知見を有する産業界との連携が重要になってきます。これには先端加速器科学技術推進協議会が大きく貢献されています。また、立地環境での具体的な検討に向けては、候補地域との連携も重要になってきます。これらの体制での検討は、土木学会による評価・提言を受けるなどして進めてきました。
  土木の説明の背景となります想定する地形・地質の状況について御説明いたします。私たちは、立地場所として長距離にわたっておおむね一様な岩盤が得られる、また振動の影響を受けにくい堅固な岩盤帯であること、さらには既知の断層が横切らない、そういうような場所を候補地として評価・提案しております。これは大量湧水などの土木工事のリスク、それから追加コストのリスクを低減することにもつながっております。
  提案した地域におきましては弾性波探査、電磁探査、ボーリング調査を実施してきました。これらの結果から、地下の加速器を建設する領域には硬くて割れ目の少ない花崗岩が広く分布すると考えております。
  課題に挙げられております耐震設計について、トンネル・空洞における事例調査から方針を確認しております。近年の大規模地震におけるトンネル損傷事例の調査、さらに硬岩体の地下における振幅が減衰するという事例がありますので、それらを踏まえまして、被害が出るのは弱層部であるというようにまとめております。ILCの地下施設において特に注意する箇所として、以下のような場所を挙げております。
  これらの耐震設計を進める上で、類似の既存の地下施設の事例を調査しております。特に立坑・大空洞などの構造物を有するこれらの事例を調査しております。さらに、複雑な立坑・水平抗交差部の地層処分施設等の構造解析が実施されておりますので、それの評価結果を調査するなどしております。これらの結果から、ILCの耐震設計においては一般的な耐震設計で十分対応可能であると判断しております。
  今後の詳細設計における対応としましては、地表との接続部の耐震設計に留意する。これは配管等の影響を軽減することになります。また、地下設備そのものの耐震設計でございますが、これは先ほど言いました地下では振幅が減衰するということも併せまして、地上に準ずる耐震設計を行うということで考えております。
  地下湧水の処理については、機械的手段によらない排水等の検討が必要ということが挙げられておりました。通常時はアクセストンネルを経由したポンプによる強制排水を行い、停電のときは非常時の非常用発電機でその電力を賄うというのが基本方針になっております。それに加えて、排水トンネルを設けることで自然排水が成立するということを検証し、ILC全域にわたって成立しているということを確認しました。
  残土処理、重金属対策についてですが、想定している地域で実施したボーリング調査のサンプルを分析しましたが、重金属等は検出されておりません。選定されている地形・地質の状況から、重金属が含まれる残土が大量に出てくるという可能性は低いと見込んでおります。また、切削したずりは良質の花崗岩でありますので、建材としての有効利用が可能であると考えております。また、地域の大学や自治体により仮置場に関する調査が行われ、複数の有望な候補地が挙げられています。
  これらの条件を整理して残土輸送に関するモデルを想定、それを施設計画に反映させております。コストとして積算しております。もし重金属が含まれていた場合ですが、これは国交省等から提示されています実績のある手法に従って管理することになります。必要な経費等は、以下に示した例がございます。
  今、説明した背景の下に、候補地の地形・地質を踏まえた土木設計を行いました。この図にありますように地下の加速器トンネル・空洞の部分が大部分を占めております。この部分は加速器の設計及び安全設計から形状が決まるもので、その長さ・断面が決まり、設計の大部分になります。
  それ以外にですが、地上から地下へのアクセス部分、これについては、地上の坑口の位置でアクセストンネルの長さが変わってきます。これは最大勾配を10%に抑えているという事情からきます。したがいまして、この部分が建設地の地形に依存した工事費の違いを生み出す基になります。TDRではアクセストンネルの長さを1キロメートルと仮定して算出しておりますが、想定する地域の計画でも、場所によって増減はいたしますが平均して1キロというふうになりますので、大きな違いは生じておりません。
  概算工事費の算出の仕方ですが、地形・地質調査に基づいて土木設計が決まります。これで標準断面及びその補強の設計が決まります。この設計に対して工事の積算基準がありますので、それに基づいて施工計画を立案します。それを基に様々な単価を掛け合わせて積算したものが概算工事費となります。この方法は、一般の道路トンネルでも行われている方法になります。これらのことを東北ILC施設計画にまとめています。この計画を岩盤力学的な技術の観点から土木学会に評価を依頼し、その内容は妥当であるという結論をいただいております。次の作業としましては、詳細設計を行うために必要な地形・地質調査を実施するということになります。そして、土木の施工設計を完了させることになります。
  現在のサイト調査・土木施設検討の状況が一般の道路トンネル等と比べてどの段階にあると判断できるか、土木学会が示すトンネル手順書と比較いたしました。ILCのトンネルは一般道路トンネルと同じ山岳工法で造られますので、これを適用したということでございます。結論を言えば、準備としての計画・調査までは終了しており、次の段階である詳細な設計のための調査を実施し、設計・施工計画の策定をするという状況にございます。
  次に、放射線安全関係のことです。放射線の施設設計に関しましては、KEK及び世界の大型加速器の実績を基に策定しております。特に電子ビームよりも放射化の激しい量子ビーム加速器での実績も取り込んでおります。シミュレーションによる安全評価と併せてビームダンプなど、安全に運用可能であるというふうに判断しています。それの具体的な設備設計については、産学連携の下で進めております。
  あと、地域住民の方々に安全に関する理解促進を目的とした説明会を、対話形式で実施してきました。今までに11会場で実施し、延べ700名近い方々の参加を得ています。説明会での質問等は取りまとめて、ホームページ等で公表しております。
最後になりますが、環境関係の取組について御説明いたします。環境影響評価を検討するに当たり、外部専門家によるアドバイザリーボードを立ち上げて、ILCの事業特性を踏まえた環境アセスメントの在り方を議論しました。基本指針、実施体制、評価対象等を取りまとめております。
  また、環境に配慮したグリーンILCの検討を地域産学連携の下で進めております。ここでは、エネルギー対策として廃熱利用や、地元木材や掘削ずりなどの地域資源の活用を検討しております。
  最後にまとめの概要を示しております。
  以上になります。

【観山座長】  ありがとうございました。
  それでは、ただいまの説明に対して御意見、御質問はございますでしょうか。
  大町先生、どうぞ。

【大町委員】  大町です。
  じゃあ、お伺いいたしますが、ILCを日本に設置する場合には地震対策が非常に重要だと思います。本日のお話の中でも耐震や安全対策として御説明がありましたが、2点ほど伺いたいと思います。
  まず最初は、ILCの耐震設計や耐震性能に関して、今日はトンネルや空洞など土木系施設について御説明がありましたが、土木系以外の加速器や計測器など機械系の施設、あるいは土木と機械が密接に関連する部分などの地震対策についてはどのようにお考えなのか、御意見や、現在までの検討状況などがあればお聞かせいただきたいと思います。これが1点目です。
  2点目は、ILCの地震対策を検討する上で、10年前の2011年東日本大震災によるKEKやJ-PARCでの事例が非常に参考になるのではないかと思いますので、可能であれば、それらの地震被害や復旧工事の内容について、概要だけでも簡単に御紹介いただければありがたいというのが2点目であります。
  以上、土木系以外の機械系の地震対策と、東日本大震災による被害事例について伺わせていただきたいと思います。
  以上です。

【観山座長】  どうぞ、お願いいたします。

【照沼教授】  まず、最初の御質問の耐震設計、土木以外のところに関してでございますが、まず一番大きな、物量的にも一番占めている超伝導の施設関係、これについては耐震の設計というか検討がされています。超伝導の場合は高圧ガスの保安法に基づく耐震設計も必要になります。それもされております。また、クライオモジュールという黄色い超伝導の筒がありますが、それのサポート系に対する耐震性、震動を仮定して、そのシミュレーションの下で耐震設計を進めて、それがまとまっております。
  また、一番大きい構造物であります検出器に関しましても同様の耐震設計、耐震のシミュレーション等がなされておりまして、安全に設置できるというものがまとめられております。
  それから、2番目の質問にございました東日本大震災のときのKEKの加速器の被害事例ですが、まず、KEKつくばキャンパスにおきましては、加速器で一部弱い構造だった所が壊れたというのがございます。ですが、これは耐震設計ということがちょっと弱かったというのがあります。また、地上施設、特に電気関係設備の所で被害を受けた部分があります。地上のほうが揺れが激しいというのもありますので、その辺の設備で被害が出たと。
  それから、J-PARCですけれども、これは場所的にも大体砂地の上に乗っております。もちろん岩盤までサポートといいますか杭を打ってはおりますが、それでも大部分の施設は砂地の上に乗っているような状態でございます。その砂地の上での周辺の電源設備関係、その辺に被害が出たと。それからトンネルについても、トンネル自体が動いたような状態になりますので、それでの被害も出ています。
  ですが、ILCの場合ですと花崗岩の中に造られる、地上も含めて、地上部分はいろいろありますけども花崗岩の中に造られるというので岩盤と一体になって動くということで、地震の影響はかなり抑えられます。
  また、東日本大震災の事例のときもそうですが、近くにある岩盤の中に造られていました江刺地球潮汐観測施設というのがございまして、その中には長いガラス管のひずみ計が数十メーターで置かれていますが、地下の岩盤の中にあったということで全く被害がなかったという事例がございます。
  以上のような形で、ILCにおいての地震の被害というのは、地下は半分から4分の1くらいの振幅に収まるという事例がございますので、大分状況は変わってくると思います。

【大町委員】  どうもありがとうございました。

【観山座長】  ほかにいかがでしょうか。
  それでは、私のほうから1点。さっき耐震の基準ということを言われましたけれども、これはどの程度の規模の地震に対しての耐震なんでしょうか。

【照沼教授】  これは前回のときの資料の中に入ってございますが、地震動をレベル1、レベル2と2つに分けておおよその評価をしています。レベル1というのは運用期間中に数回大きな地震が来るような、そういった地震を想定したもの。レベル2というのは100年に1回とか、東日本大震災もそうですけどもそういう強さを想定したもの。それぞれに対して、レベル1については加速器側の被害が軽微である、すぐに復旧ができるというもの。レベル2におきましても、壊れた所を直してまた再開ができると、そういうことが指針として出されております。実際に高圧ガス等々で出されています指針というのはそういうものを踏まえた、レベル1相当も踏まえた耐震設計ということになっております。

【観山座長】  レベル2というのは、基本的には東日本大震災クラスの地震に対応するということでよろしいんでしょうか。

【照沼教授】  そういうふうに考えております。その場合でもトンネル等には大きな被害ではなくて、加速器の被害を直せば復旧できるという想定、想定というか、そういうふうになっております。

【観山座長】  ほかに御質問のある方はございますでしょうか。

【横山委員】  横山です。よろしいでしょうか。

【観山座長】  どうぞ、横山先生。

【横山委員】  恐れ入ります。
  住民説明会についてお伺いしたいと思います。700人近くの方が御参加されたということで大変結構なことだと思うんですが、どのような質問が多かったかということと、あと参加者の属性といいますか、どういう方々が多く参加されていたのか。少し気になったのが、お写真で見えた限りでは男性の年配の方が多いのかなというふうに拝見しますけれども、年齢層であるとか、参加者の特徴についてお教えいただければと思います。

【照沼教授】  最初の質問ですが、どういう内容の質問が多かったかということです。これはやはり放射線、放射能に関する質問が大体全体の4割ほどを占めております。これにつきましては、福島原発の影響でまだキノコ類の出荷ができないとかそういう影響を受けている地域でありますので、放射能に対してはどうなんだと。そこに対しては、ILCで作られる放射能というのはこういうもので、拡散の危険はないんだということを説明させていただいています。
  それ以外にありましたのは、やはり環境関係です。それが2割ほどあります。土木工事に対して、工事中どういうふうになりますかという質問が出てきましたので、それに対しては想定される状況を回答させていただいています。
  それから、参加された方々の特徴といいますか、御覧になられたと思いますけれども、年配の方が多かったというのは事実でございます。地域として、やはり年配の方がどうしても多い地域だということもありますし、現場、説明会に来て話を聞きたいという方々もやはり年配の方が多い。若い方はいろいろ情報を取ったりしますので、そういう意味でも年配の方が多かったのかなというふうに思っております。若い方ももちろんいますけれども、全体の半分以上は間違いなく年配の方になります。

【横山委員】  ありがとうございます。

【熊谷委員】  熊谷です。いいですか。

【観山座長】  熊谷先生、どうぞ。

【熊谷委員】  58ページに花崗岩帯の話がありましたけども、ちょっと質問があるんですが、花崗岩帯のABCと3つありますよね。この3つの間で地震波の伝わり方というのは、その境界の所で何か変わるんでしょうか。20キロですので、同じフェーズで地震波が伝わっていくとも思えないんだけど、この境界の所でどうなっているかというのは何か調べられましたか。

【照沼教授】  弾性波探査の結果から見ますと、境界部分が例えば明らかに離れているとかそういうことがあれば、当然弾性波探査でもそこで地震波が伝わりにくいということになりますけども、測定した結果から言うと弾性波の速度もきれいに伝わっているというのが分かります。それは境界においても岩盤がかなりしっかりとくっついているということが想定される状況にあります。ですから、花崗岩帯ABCでそれぞれ挙動が違ってくるというのは、データからはないというふうに考えております。

【熊谷委員】  伝わる方向、直行する方向でも全てということですか。

【照沼教授】  そのように考えております。一様な岩盤がありますので、それから、この絵で見るとかなり小さい領域のように見えますが、細い所でも1キロメートル以上ありますので、そういう意味でしっかりと伝わる、くっついているというふうに考えております。

【熊谷委員】  確認はされていないんですよね。その境界の所で例えば地震波の伝わる位相が変わるとか、そういうことは確認されたんですか。

【照沼教授】  そこまでは確認は……。

【熊谷委員】  連続にしているからいいやということですか。20キロもあるのでなかなか、コモンモードで揺れるかどうかというのはきちんと調べておかないと、どこかの境界でフェーズがひっくり返って180度で揺れるなんていうことがあると大変ですよね、ということです。

【照沼教授】  ありがとうございます。現状のデータから言えることは、それほど大きな岩盤での違いを生み出している様子はないということになります。もちろん詳細に関してはその調査をさせていただいて、今言った心配のようなものがどの程度あるのかということは確認したいと思います。

【熊谷委員】  ありがとうございます。

【観山座長】  ほかにございませんでしょうか。
それでは、また後でも質問が出てきましたら、今日は皆さんの御協力で30分延長しておりますので、また後の時間で質問いただければと思います。
  では次に、学術的意義や国民及び科学コミュニティの理解についての意見交換を行います。それでは、初めに提案研究者側から10分程度で御説明をお願いいたします。
  浅井先生、お願いします。

【浅井教授】  よろしくお願いします。
  それでは、学術的意義や国民及び科学コミュニティの理解につきまして、浅井が説明いたします。私は、これまでCERNのLHC実験とFCC実験の委員をしておりましたし、2013年及び2020年の両方の欧州戦略の委員をしておりました。
  学術的意義でございます。パラダイムシフトが見えてきております。2012年にヒッグス粒子が発見されまして、このヒッグス粒子をLHCで研究してまいりました。この赤色、黄色、緑色という信号のように見えますのが、LHCで研究しました結果でございます。この青色の部分、これが我々の住んでいる現在の宇宙の真空の状態であります。我々の宇宙というのは、実は安定なのではなくて、準安定な所にいるんだということが分かった次第です。
  これはどういうことかと申しますと、右側の絵は模式図でございますけれども、この横軸が宇宙の真空の状態だと思ってください。縦軸がそのエネルギーと思っていただけると、実は我々の住んでいる中というのは一番安定じゃなくて、何かちょっと別の所にあるぞということが分かったという非常に大きな成果でございます。
  例えばこの絵で考えると、宇宙の進化って何かというと、この上をころころ、ころころと転がったりすることがインフレーションであったり、そういうことになります。暗黒エネルギーは何かというと、このエネルギーに対応するわけですし、何か新しい新現象の非常に高いエネルギーの現象が見えてきたというような意味でございます。このようにヒッグス粒子を使って我々の住んでいる宇宙の真空を研究する、そんなパラダイムシフトが今起こりつつあるというわけです。何か適当なこと言っているんじゃないかというふうに思われるかもしれませんが、これは傍証でございますけども、欧州戦略2020で「電子・陽電子のヒッグスファクトリーが最も優先度の高い加速器である」と述べられている理由は、こういうパラダイムシフトが見えてきたからでございます。
  それで、じゃあ、何で欧州戦略が変わったのかという点についてでございます。2013年の欧州戦略、このときのメインのテーマは何かといいますと、この高輝度LHCを承認し、それを推進することでありました。そして、その後に関しましては両論併記されておりまして、LHCのネルギーを増強できないかということと日本でILCをやったと、この2つを進めていきましょうというのが2013年の戦略でございました。
  そこから7年たちまして、2つの大きな変化がありました。1つ目は、先ほど述べましたが、ヒッグスの学術的な意義が大きく変わって極めて重要になったという点と、もう一つは超伝導磁石、これはニオブ3スズという物質なんですけども、それの量産の難しさということが分かってきました。それを受けまして、欧州戦略2020に一つ大きな問題が生じたわけです、こういう磁石の開発が遅れてしまっているというわけで2060年以降になってしまうと。なので、この2040年から2060年にギャップができてしまって明確な戦略が立てられない、そういう状況になっています。そこで、まずこの期間にILCを中心に置く場合、この場合は欧州も強くコミットメントしますと、したがいまして、日本に不退転の決意で臨んでいただかないと困るというのが1つ目でございます。今のように日本がはっきりしない場合には、欧州を中心としました戦略で100キロのトンネルを掘って、ここでヒッグスを研究しようというこの2つの可能性について考えているというのが、現在の欧州戦略の状況でございます。
  これで欧州は、FCCと呼ばれます将来円形加速器の可能性の評価ということを現在始めております。2020年のヨーロピアンストラテジーでヒッグス粒子自身を研究する能力、真空を研究する能力はFCC-eeとILCは同じであるという結論が得られております。
  それで、あと建設が可能かどうかということにつきまして、2027年、次の欧州戦略の議論が始まります2025年までに、以下の7点についてフィージビリティーのチェックを行おうというのが評価の内容でございます。
  この赤色に示したのは、これは私個人の意見でございますが、ちょっと難しいかなと思われる点を赤で示してあります。
  1つ目は土木の問題でございまして、円周100キロになりますと、やはり所々に非常に工事が難しいところが存在している。2点目、これは電力でございます。現在CERNで使用している電力、並びにILCの電力に比べまして、FCCで必要とされる電力というのはおよそこの3倍の300メガワットに対応いたします。3つ目、これはコストでございます。ILCが大体8,000億円なのに対して、FCC-eeは倍近くの1.2兆円になります。特にこのうち半分の6,000億円のトンネルはスイスとフランスがメインに負担することになりますので、そこら辺に大きな問題があると思われていますが、こういうことのフィージビリティーのチェックを現在進めているところでございます。
  そういう次第でございますので、こっちへ行くのもそんな簡単な話ではございません。なので、今後の日本の戦略及び対応というのが今後の世界の素粒子研究を決める極めて重要なものでございます。ですので、海外との話合いにおいて、海外の方はぜひやはり日本のイニシアチブというものを強く期待している理由でございます。
  さらに、こういう大きいお話をまとめていくためにはリアリティーというのが極めて重要になってきます。ですので、国際的な枠組みの中で小さいスケールのものを一緒に組み立てていくということによって、こういうILCのリアリティーをどんどん増すことができるというふうに考えています。そのためには、ある程度のリソースというのが今後も必要となっていきます。
  続きまして、科学コミュニティの理解についてでございます。国際素粒子研究分野、これはICFAと呼ばれていますが、ここではILCを次期国際素粒子の研究と位置づけまして、IDTをつくりまして、現在推進しております。
  国内の素粒子研究分野に関しましては、JAHEPと呼ばれていますが素粒子の研究者会議でございます。ここでは2017年に将来計画を策定しまして、ILCは最優先の次世代プロジェクトとして位置づけております。現在、その実現に向けまして現行プロジェクトの調和を図るためにILCジャパンを設立いたしまして、現在高エネルギー研究者会議と連携いたしまして、推進並びに応用の議論を行っております。
  素粒子以外の研究分野でございますけども、国立天文台をはじめとしまして大きい研究所に延べ19回、3,000人の参加者が得られておりますし、大学にはおよそ100回、セミナーに行っております。日本物理学会等でも多数のセミナーを行ってきました。これは技術系のシンポジウムのときの写真でございますけども、こういう技術のシンポジウムに対しましても非常にたくさんの方の参加をいただいております。このように理解が少しずつ進んでいるので、今後は発信型から対話型へ、共同研究型へとコミュニケーションの形を変えていこうと思っております。
  これは重要な研究施設でございますので、これをILCや、素粒子研究者のためだけではなくて様々な分野の方、核物理だとか放射光・物性物理などの方に利用していただけるような、そういうものにしていこうという議論を現在進めております。ILCを核に、素粒子研究だけではなくて、多彩な研究分野の施設の可能性を今後探っていきたいというふうに思っております。
  一方、国民に対する理解のほうでございますが、こういうノーベル賞学者に参加していただいた大規模なシンポジウムを複数回開いておりますし、小さいセミナーも含めまして延べ19万人の方にこの6年間に参加していただいております。
  また、日本郵政の増田さんを代表発起人といたしまして、著名な方にILCの推進をしていただいております。これがILC100人委員会というものでございます。
  アンケートでございますが、これは認知度のアンケートを今回行いました。ILCというのはここにございまして、これは例えばISSです。サンプル数は400でございます。基本的に科学が好きということでのサンプルでございますので、絶対値はあまり意味がございませんけども、相対的なものを御覧になられてください。総じて素粒子というのは宇宙関連に比較するとちょっと低いのが残念な結果でございますが、これを見ていただけると分かりますが、やはり日本が主導して行っている計画に対しては非常に認知度が高いということが分かっておりますので、やはりこういうプロジェクトを国内に誘致するということは極めて重要でございます。
以上、まとめでございます。ありがとうございました。

【観山座長】  どうもありがとうございました。
  それでは、ただいまの説明に対して御質問、御意見がございましたらどうぞ。

【中野委員】  中野ですけど、よろしいでしょうか。

【観山座長】  中野先生、お願いします。

【中野委員】  まず、学術的意義に関してなんですけど、宇宙が安定じゃなくて準安定だということで価値が高まったという御説明でしたが、もともとヒッグスファクトリーというか、ヒッグスの精密測定のときに、ヒッグスのレプトンとかクォークへのカップリングを精密測定することによって素粒子物理学の方向性が分かるということで、その学術的意義が非常に高く評価されていたんです。それで、今回宇宙が準安定だということが分かって測定するものは変わったんでしょうか、それとも、方法自体は変わらずそういう結合を精密測定するということなんでしょうか。

【浅井教授】  そうです、基本的にはやっぱり結合を精密に測定するということが目的でございます。それによって、例えばそのずれからいろいろなことが分かったりしますし、実は、さっきの絵では、これはちょっとごまかしがあって、すみません、またもう一遍共有いたしますけども、例えばこれはヒッグスの質量を横軸に取ってありますけども、これには仮定がございまして、ヒッグス粒子の質量もヒッグス場から得ているだろうという仮定の下で実はやっているんです。だから、LHCではそういう仮定を入れてこういう結果を得ているんですけども、リニアコライダーを用いますとそういう仮定がなく、直接本当にヒッグス粒子の、ヒッグス場ですね、その結合の強さというものを測定できるようになりますので、より本質的な測定が可能になるというわけでございます。

【中野委員】  もう一つは、他の研究分野を巻き込んでいくというお話なんですけれども、ILCができることによって何らかの影響は他分野にもあるわけなんですが、ここで他分野を巻き込んでいこうというのは、ILCを造るような巨額なプロジェクトが走ってしまうと他分野のプロジェクトを圧迫してしまう。そんな場合でもILCがあったらその一部は救えるだろう、そういうお考えなんでしょうか、それとも全く違うのか。

【浅井教授】  それは違います。これは、あくまでも予算は既存の予算と別のところを目指しておりますので、そういう趣旨ではないです。ただし、せっかく世界中から最先端の加速器の技術を持っている人たちが集まるわけですので、それを我々だけが占有して使うと言ったら変ですけども、そうするということはやっぱりよろしくないと思いますので、広くいろいろな方にアクセスしていただいて、素粒子の研究だけではなくて、加速器をベースとしましたより多くの研究の分野を広げていけたらというふうに思っておりますし、これは加速器だけでなくて、例えば超伝導素材だとか、そういういろいろな技術が集まりますので、そういうものを核としたラボというものに進化させていくことがこのILC計画を成功させる一番の近道だというふうに私は思っておりまして、そういう方向に今、一生懸命広げていこうと思っております。

【中野委員】  ありがとうございます。

【観山座長】  ほかに。
  まず、京藤先生から。

【京藤委員】  2点、ちょっと専門外ですけどお聞きしたいんですけども、超伝導線材の量産の難しさという視点、観点があって、この点で、これは材料自身に問題があるんですか、それともプロセス的なものなのか。

【浅井教授】  材料自身の問題で、これ実は化合物になります。ニオブ3スズというのは加熱して化合物とするんですけども、そうするとセラミックになっちゃうんですね。セラミックになると加工が非常に難しくなっちゃって、だから小さいラボレベルでは非常にいい道具なんですけども、それを100キロにわたるような大規模な加速器全体に適用しようと思うと膨大な量のそういう線材が必要になってきて、やはりそういう意味でこのニオブ3スズを使って大型の加速器を造るのは困難ではないかというふうにCERNは考えております。それで、ビスマス系の高温超伝導をある程度念頭に置いて、もう一度線材の開発からやろうというふうな感じになっております。

【京藤委員】  そうすると非常にリスキーですよね、こういう材料の開発って、どれぐらいできるかって予測できない。すると、この計画自身がこれで足を引っ張られちゃうというリスクはどの程度あるんですか。

【浅井教授】  そういうところは、本当にまさしくおっしゃるとおりで、例えばこのニオブ3スズも20年かかって今まで来たわけです。それで何とか実用に堪えるレベルまで来たんだけども、やはりこの量産という概念を入れたときにちょっと難しくなっています。

【京藤委員】  これって、いろいろな開発で問題になるのは、これありきでやって失敗して、もう全然行かなかったというのは結構多くて、まずその開発をスタートしないと、そこに資金投入しないといつまでたっても物ができない、計画も進まないというリスクがあるんで、その段取りの仕方というのはかなり緻密に考えてグローバルでやらないと間に合わないんじゃないですか。

【浅井教授】  これはもちろんグローバルでやっております。CERNは次世代磁石の開発というのを彼らのある意味トッププライオリティーにしてあって、その中で進めておりますし、日本も高エネルギー加速器研究機構が磁石の開発には参加しております。

【京藤委員】  それで、そのときにもう一つ怖いのは材料の調達ですよね。これも世界的にショートしたりするというのが結構あって、こういう分野で物ができてくると高騰したり、そういう国としても相当戦略的にやらないと、結局できないということになっちゃうリスクがあるんで、これはいろいろな分野で起きているんで、そういう観点も入れてもう一度練り直したほうがいいんじゃないかと思いますけど。

【浅井教授】  そうですけど、今のお話の部分は、これはCERNの計画でございます。CERNがこれをやるためにそういう新しい線材も含めた開発を行っておりまして、リニアコライダーに関しましては既に技術はエスタブッシュしておりますし、量産についても……。

【京藤委員】  問題ないということですか。

【浅井教授】  大体のめどは立っていて、今から世界中で作ったものが本当にうまくいきますかというのが次のステップになるというところでございます。これはあくまでもCERNの……。

【京藤委員】  それと相互しているというのはあまり気にしなくていいという結論ですか。

【浅井教授】  これは、正直言うと我々にはあまり関係ないところでございます。ニオブ3スズの件につきましては、これはILCには関係ないことでございます。

【京藤委員】  そういうことをヨーロッパの人たちは考えてやるはずなんだけど、何でこういうのを持ち出しているんですかね。材料ができなかったら、量産できなかったらあまり合理的じゃないという発想をするはずなんですけど。

【浅井教授】  量産可能かどうかというのは、これはやっぱり値段で決まるんです。例えばCERNが、ある程度クオリティを落としてもこれだけのお金を出すから作ってくれと言えば、やっぱり会社は作ってくださると思うんです。

【京藤委員】  そんな簡単じゃないでしょう、物を作るというのは。

【浅井教授】  いや、でも、例えば今のレベルで実際にニオブ3スズを使って、いろいろな加速器はできております。ただし、やっぱり量の問題で、研究室のレベルと量産の……。

【京藤委員】  桁違いですね、確かに。
  あまり深くやってもまずいので、結構です。

【観山座長】  どうもありがとうございました。
  神余先生。

【神余委員】  お伺いします。ILCを実現しようと思えば三者の協力が必要であると思われます。すなわち日米欧ということなんでしょう。そのうちのヨーロッパの戦略ですね、これは浅井先生が非常にお詳しいのですが、2013年と2020年を比較すればかなり欧州の熱意が落ちているというふうに文章的には見ざるを得ないということになります。2013年のときは「eager to participate」ということで、何としても参加したいと、熱望するという段階から、2020年では「world wish to collaborate」ということで、日本がもしやるのであれば、それに協力する用意はある、協力できればよい、そういう程度に落ちているということが文書から見てとれるんですが、浅井先生の御説明だと、いや、ヨーロッパはもう非常に熱心に参加したいと思っているのだと。しかもそれは期間が限定されていて、次のハドロンの拡大したものができるまでの間、すなわち5年ぐらいの間、あるいは次期欧州戦略が始まる2027年、これまでの間に日本でILCができるのであればコラボレートしたいと、こういうことだろうと思います。そのことに関して、ヨーロッパのコミュニティの熱意が落ちてないのかお伺いします。
  それから、もう一つは欧州の政府サイドの対応というのが、アメリカと違って冷たい、財政的にも非常に厳しいということは、これは文科省の説明にはあったわけです。ということは、欧州の科学者コミュニティがそれほど自国の政府にプッシュしてない、それほどILCをやりたいということを相当力を込めてプッシュしていないということになるのではないのだろうかと思われます。
  そうすると、このままでいくと、日本政府が例えば直ちに決定しないと、やがて欧州のモチベーションが失われてくる可能性があるのではないかなと。日本がやらなくても、いずれ彼らは次世代のハドロン型FCCで何年かたったら同じようなことができるのだから、彼らにとっては時間の問題だけで、日本でできなくても自分たちがやるというふうなことであるのではないのかなと。つまり、この文章を見る限りにおいては、また浅井先生の御説明を伺っても、「本当にそうなんですか?」ということをちょっとお伺いせざるを得ないなというふうに思うんですが、どうでしょうか。

【浅井教授】  分かりました。まず、2013年の件で申しますと、このときは、やはり彼らのメインのターゲットというのは、ここに書いてありますエネルギー増強のところがメインでございました。それで、日本でILCが当時できる勢いもありましたので、これができるんだったらこの2つに、ちょうどこの隙間もありますから強く参加を望んでいたというわけでございます。
  一方、今の状況はどうなっているかと申しますと、この2040年から2060年にギャップができてしまっております。先ほど京橋先生おっしゃられたとおり、本当に2060年にこれができているかどうかも、実は状況としては分からないと。先ほど申しましたけど次世代の超伝導素材がどうなっているのか分からないという点もあって、そういう意味でここにギャップが空いてしまっております。このギャップを、今までどおりの表現をすれば、もう基本的にILCが中心となってしまって、そこでやるというのが1つの手です。その場合は、彼らがこれをやる、このFCCをやるというオプションについては放棄することになってしまいます。なので、やはりどちらに転んでもいいような、これはヨーロッパの将来を縛るものになりますので、ある意味どちらでもできるような書き方をしなければならないというのがマネジメントサイドの考え方だと思います。
  ですので、そういう意味で両方書いてあって、特にILCを中心に書きますというふうな書き方をするとこれをやっぱり弱めてしまうことになって、CERNがこういうフィージビリティーチェックをすることが難しくなってしまいます。ですので、こういう書き方になっているというのが一つでございますし、もう一つ大きな要素があって、日本の状況が思っているよりもあまりよくないというふうにヨーロッパの人が感じていることも確かだと思います。これは残念なことでございますが、そうだと思います。ですから、ここにあくまでもILCを中心に書いてしまうと、ここにこういう書き方していいのかどうかちょっと分かりませんでしたけども、「一緒に転ぶのはごめん」というふうに思う要素もあると思います。ですので、こういう感じになったんだと思います。
  ただし、先ほど神余先生がおっしゃられたように、ほっておいたらどうせ100キロのものができるからいいよというふうに思えるかという点につきましては、ここに書きましたけども、やはり非常に多くの困難を抱えています。それで今、彼らはある意味R&Dの段階なので、明るく楽しく研究というものができる状態でございます。その次のステップ、本当にこういう問題を解決しなければならないという状況に陥りますと、やはり大変であるということを認識していくだろうというふうに、これは私個人の意見でございますけども、そういうふうに思っております。なので、決して放っておいてもヨーロッパで100キロのものができるんだからいいやというふうには、少なくともマネジメントの人は思っていないと思います。それはやはりよく状況が分かっていると思っております。
  以上でございます。

【神余委員】  じゃあ、政府があまり熱心でないというのはどういうことなんですか。

【浅井教授】  政府が熱心でないというのは、これは何かというと、一つ大きな問題が日本からの発信、やっぱり政府というのは、研究者の熱意だけの問題で動けないことも確かです。政府間の協定というのは我々の計り知れないこと、神余先生はよく分かっていらっしゃると思いますけども、本当に大変な交渉を今、文科省の方にも頼んでやっていただいている状態でございます。
なので、各国の政府、ファンディングエージェンシーの方は、そうやって「はい、分かりました」と気前よくそういう話ができないことも確かです。そのときに鍵になるのが、日本は本当にやりたいと思っていますという発信が必要で、そうすると各国の政府も、それぞれの国から上がってくるものと、日本が本当にやる気があるんだなというこの両方を合わせて初めて動いてくださると思っていて、今我々は研究者のレベルでいろいろ海外の人と話して、それぞれの国の人が上に上げていることは確かです。ただし、それぞれの国のファンディングエージェンシーの人はまた日本の様子を見ていることも確かで、日本が今回から、今回いろいろなところで出ておりますが、日本がこの誘致に前向きだということのシグニチャーですかね、というのがやっぱり必要ですというのはそういうところです。今はそれがないという段階で、「はい、分かりました」と言って各国のファンディングエージェンシーが、何というんですか、「行け、行け」というような状態にはできないというふうに思っているのが現状でございます。この問題を解決するためには、日本が何らかの態度を示すことが重要なのではないかと思っています。
  それともう1点は、やはりリアリティーだと思っていて、今はまだ各国それぞれのラボでやっています。ただし、それは各国それぞれのラボでの話で、全体の話というのはまだ紙の上の話なんですね。それを全体で集めてきて、世界で一つ何かこういう実際の小さいものでもいいから作り始めると、「ああ、やっぱりILCってできるんだな」と政府がそれぞれ思ってくださると思うんです。このリアリティーをいかに増していくのかというのが、次のステップで極めて重要ではないかというふうに私は思っております。
すみません、ちょっと長々と申し訳ございませんでした。

【神余委員】  ありがとうございました。

【観山座長】  ほかにございませんか。
  では、小磯さん。それから岡村さん。

【小磯委員】  FCC-eeとILCの比較についてちょっとお伺いしたいと思います。小磯です。
  FCC-eeのほうでは、もちろんヒッグスファクトリーではありますが、エネルギーの範囲としては、Zからトップまで想定しているというお話を伺っているんですが、ILCはトップにはもう届かなくてもいいという判断をして250にしていると。この2つを比較したときに、科学的な競争という意味ではどうなんでしょうか。トップに関しては、今はあまり重要性はないということなんでしょうか。

【浅井教授】  また共有させていただきます。これが比較した絵でございます。今、小磯先生がおっしゃったとおり、FCC-eeというのは全部超伝導の加速器を詰め込むと350のトップを作れるところまでエネルギーを上げることができるというふうに言われておりまして、それは1つのオプションでございます。ILCにつきましては、今の加速器で今の長さでやっても350に届かないことも、これまた確かでございます。
  次に何をすべきかという点につきましては、これは今の段階でははっきり分かりません。新現象の兆候が何もないという、ある意味ちょっとネガティブな状況のときに、トップの学習というのは、スタディーというのは、ヒッグスを十二分に調べた後には価値があると思います。そのときは上げればいいと思っていますし、ILCの場合は多分、今のコールドテクニックで35MeV/mでなく、もっと高い勾配のものをセッティングしてという形になっていくと思います。もし何らかの新現象がサゼスチョンされた場合には、そのエネルギーに向けてより高い勾配の技術というものを置いていくことになると、そういう加速器に変えていくことになると思います。どっちがそういう意味でのポッシビリティが高いか、可能性が高いかというと、そういう意味ではリニアコライダーは、加速器を入れ替えなきゃなりませんけども、加速器を全部取り替えれば非常に高いエネルギーというのも実現可能になります。そういう意味で、円形でやる限りは、いくら頑張ってもトップのところまでしか行けないという意味で、直線というものの価値というのは十分にあると思います。トップが価値がないというわけではないんですけども、やはり新現象の兆候が見えたときには、そちらに対してフォーカスすべきというふうに私は思っております。
  以上でございます。

【小磯委員】  分かりました。ありがとうございます。
  あと、すみません、もう一点、ILCジャパンの設立に関して、現実に向けて現行プロジェクトとの調和を取るためとおっしゃっておられましたが、これはもう少し具体的に言うとどういうところなんでしょうか。

【浅井教授】  ILCは、今までILCの方が一生懸命やってくださっていて、どんどん、どんどん進めていただいております。一方、日本には残り、大きく分けて3つプロジェクトがありまして、1つはニュートリノのプロジェクト、それからBファクトリー、そしてLHCでの研究という別のコミュニティがあって、それらのコミュニティでも大体2026年とか27年にまた大きなアップグレードがあります。その後に人の流れというのを上手につくっていかなければならないというのがポイントでございます。なので、今こうやっているILCの人と、私はもともとそういう意味でILCはやっておりませんので、LHCをやっておりましたので、そういうほかの分野の人をちゃんとまとめて、ILCにいきなり全員というわけではないですけども、こうやって少しずつ人の流れをつくっていけるような、そんな枠組みをつくろうと機構長が考えてくださって、このILCジャパンというのを設立した次第でございます。

【小磯委員】  分かりました。ありがとうございます。

【観山座長】  岡村先生。

【岡村委員】  岡村です。
  素粒子研究だけでなくて多彩な分野に展開の可能性をと言われたのはよい方向ではないかと思うんですが、その場合に、いわゆるマシンタイムというのはどうなるのでしょうか。これらはみんなパラレルに実験できるから、たくさんの人が使ってもヒッグスの研究の時間が減ることはないのでしょうか、それとも減るのでしょうか。

【浅井教授】  基本的には、こうやって電子と陽電子を加速してぶつけて、ここでヒッグスの研究をします。その後、ほとんどの電子と陽電子はすーっと通り抜けちゃうんですね。これは今、そのまま捨てているんですけども、それを使って新しいビームラインをつくったり、そういう全体のファシリティーにしようと思っていますので、そういう意味で一部ビームタイムが、このときはヒッグスのビームタイム、このときは原子核のビームタイムですとか、そういうことにはならない予定でおります。

【岡村委員】  幾つものビームラインが、そうやってパラレルにできるんですね。

【浅井教授】  はい、総合的なファシリティーにしていこうというふうに考えております。

【岡村委員】  分かりました。ありがとうございました。

【観山座長】  ほかにはよろしいでしょうか。
  私のほうから、1つ。日本が方向性を出さないから、ほかの国もなかなか研究者も政府もということはよく分かるというか、国際協力事業の場合にはそういうことはよくあることで、どこかがもう確実にやるということがあればほかのところも引っ張ってこられるというのは、我々の経験でもそうなんです。ただ、今のGDPとかそういうことを考えると、日本は、この国民の理解というところにいろいろな計画がありますけども、8,000億円程度の学術推進プロジェクトの建設費の計画を進めたことはなくて、例えばその半分以上を日本が絶対やりますからという表明は、これはなかなか難しい。つまり、米国なりヨーロッパがある程度の方向性を示さないと、日本の政府だって、日本の研究者だって、それはなかなか難しいですよ。我々が関係したアルマとかすばるに比べて日本の出資は1桁以上大きな計画なのです。もちろん国際協力事業というのはどこかの国が非常にしっかりと必ずやりますということで引っ張っていけって進みだすのですが、規模的にちょっと大きすぎます。今のヨーロッパ全体のGDPとかアメリカのGDPと比べて日本のGDPを考えると、これはやっぱり経済的な力というものはなかなか難しいですよね。だから、その中で日本が突出して、もう半分以上、5,000億円ぐらい出しますからやりませんかという発言は、政府としてしっかりとした発言をするのは私は、なかなか難しい状況と思います。そこら辺はやっぱり欧米が少し応分の分担を果たしたいという態度を見せないと、もちろん日本が態度を示すということは非常に重要なことだと思いますけども、三者のもう少しの歩み寄りの方向性が見えないと私は難しいと思いますよ。

【浅井教授】  本当に観山先生がおっしゃるとおりでございまして、反論の余地はないんですけども、やっぱりそこが大事な点で、外国は、こうやって出すに当たっていろいろな議論を進める上で、本当に日本がやる気があるのかというのが1つの大きな要素になっています。そこで大事になるのが、純粋な今までの素粒子研究のお金だけでは、これは絶対閉じない話でございます。ですので、我々がやっていかなければならないのは、これを日本に誘致することによってどういう価値が生まれてくるのかということをもう少しきちっと整理して、きちっと国民の皆さんに発信していくということをやっていかなければ難しいというのは、これは十分承知しております。
  本当に先生がおっしゃるとおり、これは日本が悪いというわけではなくて、海外もそういう意味でもっともっとポジティブなことを言ってくださればいいんで、なかなかこれは卵と鶏の関係になってしまっています。今はどっちが先に言い出すかみたいな感じになってしまっていて、そこをどうやって説いていくのかということをぜひ今後やっていかなければならないと思っていますし、文科省の皆様をはじめ皆様にはいろいろこうやって御迷惑かけておりますが、よろしくお願いしたいと思っております。

【観山座長】  まだ多分意見交換したい点もあると思うんですけども次に行きまして、また最後に時間が残れば思っていますので、次に、国際的な研究協力及び費用分担の見通しについて意見交換を行います。初めに、提案研究者側から10分程度で御説明をお願いします。
  山内先生、お願いいたします。

【山内機構長】  それでは、国際的な研究協力及び費用分担の見通しについて、この3年間の進捗について御説明いたします。高エネルギー加速器研究機構の山内でございます。
  次のページをお願いします。
  まず、国際研究協力に関する進展についてですが、ILCに限らず、加速器を用いた素粒子の研究では、大きく分けて2つの分野の研究者がそれぞれの専門性を生かして参加、協力するということをいたします。1つは加速器そのものを開発、設計、建設する加速器の研究者、もう一方は素粒子物理学の専門家でありまして、こちらが研究計画を提案し、測定器の建設、実験の遂行というのをいたします。
  通常ですと加速器本体が規模、予算においてはるかに大きいのでそちらに目が行きがちでありますが、ILCにおける研究に強い学問的動機を見いだして、検討、提案を続けてきたのは後者の物理学研究者が中心です。
  ILCにおきましては、この分野では世界に2つのコンセプトグループというのが形成されておりまして、そのうち日本の研究者が多く参加するのが2007年に発足したILDと呼ばれるグループです。これには世界21か国から350人の研究者が参加していまして、ILCでやれる成果を最大化するための測定器の検討などを行っています。このグループは昨年、検討結果を求めた中間報告を出版していまして、そのアクティビティは非常に高いというふうに申し上げていいと思います。
  次に、加速器本体に関わる国際共同研究ですが、このページには日本を中心とした研究を3件御紹介しています。いずれも前回、道園さんから詳しい説明がありましたので、私はここで繰り返すことをいたしませんが、一つ、左上にありますのは日米協力による超伝導加速空洞の改良で、ILCのコスト低減にもつながると期待しているものです。
  その右にありますのはフランスとの協力で、ロボット技術を応用することでダストの混入を低減した空洞製作を可能にしようとするものであります。
  このページの下にありますのは、KEKのATFという試験加速器を用いた非常に小さなビームを実現するための開発です。世界中から集まった研究者の共同研究で、既にILCで必要とされる極小ビームサイズというのが実現されています。
  このほかにも、超伝導加速器の開発研究は多数の国際協力によって継続されていまして、成果が報告されています。
  これらの研究協力のこれまでの3年間の進展というのを顧みまして、ILCの実現につながる国際研究協力の進展が起こっているかという点が、この有識者会議の審議の対象の1つであるというふうに理解しておりますが、今御説明したように加速器、物理測定器それぞれで国際研究協力は順調に進展しておりまして、ILCの実現につながるものであるというふうに申し上げてよいと思っております。
  ただし、コロナ禍でありまして、研究や様々な心理的な停滞というのが、これは決して軽視できないというふうに思っておりますので、今後いかに早い時期に回復基調に戻すかというところが大変重要だろうというふうに考えています。

  次に、国際費用分担の見通しについてですが、政府間協議に関しましては、私は御説明する立場にありませんが、1点だけ、アメリカ政府の姿勢について御紹介します。アメリカ政府は、エネルギー省、国務省などから再三ILC計画への支持が表明されていまして、我々研究者の会合などでも、政府関係者が出席の上で支持のメッセージを発していただいています。
  ここに上げましたスライドは、ランクフォードさん、この方は研究者ですが、その方が表明されたアメリカ政府の姿勢をまとめてくれたものです。簡単に述べますと、DOEは、ILCが日本や世界にとって素粒子研究の中心的拠点であると考えているということ。また、DOEは、日本やほかの関係国とともに資源分担やガバナンスの議論に参加する用意があるということ。それからもう一点、萩生田大臣が国会答弁でおっしゃったような国際協議を行うことに賛成するといったことを述べられています。もちろん、これから先は交渉事ですので貢献の規模などは言及されておりませんが、現段階で研究者サイドに示していただける最大限の前向きなメッセージをいただいたものと受け止めております。

  次に、国際的な費用分担に関する研究者サイドの議論について御説明します。2018年の有識者会議第1期におきまして、ILC計画に関する様々な課題というのを指摘していただいておりましたが、この中に国際的な費用分担の考え方というものがありましたので、KEKでは、翌2019年5月に国際ワーキンググループというものを設置いたしまして、この問題を含めたILCの具体化に関する議論を行いました。
  このワーキンググループはヨーロッパ、アジア、アメリカから計7名の研究者に参加いただきまして、費用分担の問題に加え、ILC研究所の組織と運営、残された技術的課題をどう国際的に分担するかなど、前期の有識者会議の指摘した課題に沿った議論というのが行われました。2019年10月に報告書を公開いたしまして、文部科学省をはじめとした世界の政府機関などに提出しております。

  この結論の中で、国際的な費用分担に関しては、インフラ工事、土地取得はホスト国の負担。加速器本体は参加国が物納で分担。軍転経費も参加国で分担すると、こういう原則を示しております。
  この原則をILCの建設に当てはめますと、ホスト国の建設費負担は平均毎年400億円掛ける10年間ということになります。これは非常に大きな費用であることはもちろん承知しておりますが、これで真に国際的な研究拠点が国内に可能になるということであります。
  この国際ワーキンググループではILCの組織の在り方も議論されまして、準備研究所を設けて4年程度でILCの本格的な準備作業を始めるということも提言されていまして、前回説明がありました国際推進チームIDTでさらに綿密な検討が加えられた結果、本年6月に公表されました準備研究所の提案に至ったというふうに申し上げることができます。
  このような議論に加えまして、ヨーロッパにおきましてもCERNを中心にILCへの参加をどう考えるかという大きな議論がありまして、昨年6月に欧州素粒子物理戦略アップデートとして公表されていることは、先ほどの浅井さんの話にもございました。
  私はこれを繰り返すことはいたしませんが、1点だけ申し上げておきたいと思っていますのは、CERNという研究所の性格についてです。CERNは、出資する政府機関による意思決定機関であるCERN Councilの下で運営されておりまして、このアップデートもCouncilが了解したものでありまして、つまりこれはヨーロッパ全体の研究戦略として各国政府もお墨つきを与えたものであると、そういうこととして御理解いただきたいと思います。世界中の各研究所はそれぞれ将来計画というのを持っておりますが、こういったものとかなり重みが違うというものであるということは、ぜひとも御留意いただきたいと思います。予算の裏づけになり得るものであると言っても構わないと思います。
  一方、アメリカに関してですが、アメリカでは6年に一度、スノーマス会議といいまして、世界中から多くの研究者が集まって、1週間にわたりましてアメリカの素粒子研究の方向について大規模な議論をするという会議が行われます。この結果を受けて、米国DOEとNSFがP5委員会を開いて政府としての方針を決めるというのが、アメリカの将来計画の議論の仕方です。
  前回は2014年にP5委員会が、ここに表紙だけございますが「Building for Discovery」という報告書をまとめまして、その中でILCについて述べられています。学問的重要性を認めること、加速器と測定器の開発について適切なレベルで貢献すること、実際にILCが進むのであればさらに高いレベルの関与をすべきであると、こういったことが述べられています。先ほど、米国政府がILCに対する強い支持を表明しているということを申し上げましたが、それはこのような背景に基づいたものであります。
  次回のスノーマス会議はコロナのために1年間遅れておりまして、来年2022年の夏に開催される予定でありまして、もうじき世界中から意見や提案が求められるというふうに聞いています。これに続きましてP5委員会が2023年春に開催されまして、ここで米国の研究計画案というのが公表されることになります。日本をはじめとして世界でILCに関わる研究者は、来年のスノーマス会議に向けて提案を取りまとめる準備をしているところであります。
  次に、国際協力を前提とした人材の育成・確保の見通しということを御説明したいと思います。まず、プレラボの4年間についてですが、必要とされる人員は620人年と評価されていまして、この規模は、各地域の研究機関の分担によって実施できる見通しが立っていると申し上げていいと思います。
  ILCの建設におきまして必要な人材というのは830人と見積もられていますが、これに関連して、ここにお示ししているのは世界の主要な加速器建設計画です。2026年頃にはほとんどの現行の大型加速器建設が終了しているという予定になっておりまして、この辺りまでにILC建設に関する世界的な合意が得られれば、研究者の相当数をILC建設に確保するということは可能であると考えられています。
  もう一点、関連してコメントさせていただきたいのですが、プレラボにおいては国際共同技術準備、あるいは技術設計書作成作業がありますので、ここでILCに精通した人材が育つということが可能になります。これらの人材はILC建設期においては中核的な役割を果たしてくれることになりますので、プレラボか、そういう名前や位置づけでなくてもいいとは思いますが、そのような前段階のものを立ち上げるということは大変重要であるというふうに考えております。
  最後に、関連したコメントをこのページにまとめさせていただいております。時間が過ぎていますので全部は読みませんが一つだけ申し上げたいのは、プレラボというのは、これまで何人かが御説明したとおり大変重要な機能を持つ組織でありまして、これを適切にスタートすることによりまして大きな貢献を呼び込むことができる、言わば呼び水となる先行投資であるということは申し上げておきたいと思います。
  以上です。どうもありがとうございました。

【観山座長】  どうもありがとうございました。
  それでは、委員の皆さん、御意見、御質問がある方は挙手していただければと思います。
  中野先生。

【中野委員】  プレラボについて御質問します。プレラボは最後に重要な呼び水になるとおっしゃったんですけど、その呼び水というのは浅井先生のおっしゃった鶏と卵の問題を解決する鍵となるという、そういう意味でおっしゃっているんでしょうか。だから、プレラボができればその問題がかなり解決するという認識でしょうか。

【山内機構長】  はい、そのとおりです。鶏と卵といいますのは、どちらが一気に解決するということは多分ないと思うんですよ。つまり、例えば日本政府が「じゃあ、ILCをやります」とおっしゃってくださって、やりたい方は一緒に来てくださいと言ってくれるということは、私は多分ないと思います。それよりも、もっと小さなことの積み重ねがだんだん歯車を回していくということが起こってくれれば、少し時間はかかるかもしれませんけどもいずれはILCの合意に達すると、そういうものではないかというふうに私は思っています。

【中野委員】  そういうことでしたら、まず始めるに当たってプレラボの予算の規模はそんなに問題ではない、小さくても看板を掲げて始めることが重要と、そういう認識でよろしいでしょうか。

【山内機構長】  国際協力でもって、ILCに必要な研究開発ができるという枠組みができるということがまず大事だと思っております。

【中野委員】  分かりました。どうもありがとうございます。

【観山座長】  横山先生。

【横山委員】  ありがとうございます。
  プレラボに関連してなんですが、ヨーロッパではリサーチストラクチャーをつくるときにはESFRIを通すというルールがあるんだと思っております。このプレラボのルールのときにはESFRIの正式なプロジェクトとして認められる必要があるのかどうか、日本によるとマスタープランロードマップに相当するものだと思いますが、その点について確認できればと思いました。

【山内機構長】  ESFRIを通すということは、今のところは考えられておりません。もちろん、これからの話の中でこういったものを通したほうが進めやすいですよということが出てくる可能性はあると思っていますが、現在のところ、それを通すという前提では議論しておりません。

【横山委員】  ありがとうございます。その点がかなり気になっていて、要するに素粒子のコミュニティでは合意ができつつあっても、結局施設を造っていくときにはESFRIを通す必要が確実にあるんだとは思っております。そうしたときに、どの段階からESFRIが関わるのか、関わらないのか、ロードマップにも相当しますけれども、また次の機会にでもそういう話を伺えればと思いました。ありがとうございます。

【山内機構長】  ありがとうございます。

【観山座長】  ほかに、森先生。森先生、聞こえていないです。ミュートが外れていないんじゃないでしょうか。
森先生、すみませんが、ほかの方の質問なり、次の発表者の話に移りまして、回復すれば御意見、御質問をいただければと思いますので、よろしくお願いします。
  山内先生の報告に対して、そのほか御意見、御質問、よろしいですか。

【山内機構長】  すみません、よろしいですか。
  ESFRIに関して、中田先生がヨーロッパの研究者の立場でコメントされたいということなんですが。

【観山座長】  そうですか。中田先生、どうぞ。

【中田名誉教授】  どうもありがとうございます。
  私自身がESFRIにも関係したこともあるんで、ちょっと御説明できるかと思うんですけれども、ESFRIの場合には、ヨーロッパの中のラージインフラストラクチャーのためのお金ということなんですが、まず1つは素粒子物理に関してはCERNというものがあるんで、CERNがそのプライオリティーを立てていくという、そういう了解も立っています。という意味で、ESFRIの中に素粒子物理に関係したインフラが直接入ってくるということは普通ないんです。それに対してはCERNが責任持って、CERNでつくったいわゆるヨーロピアンストラテジーで出てくるものがESFRIの中でリファーされるという、そういう感じになります。
  さらに、ヨーロッパでするインフラということになりますので、ILCの場合ですと、まずILCとインフラの分け方、ヨーロッパで何をやって、日本で何をやってということがある程度はっきりした段階で、これは日本、ヨーロッパの中でやっていくことになると、そのときに、じゃあ、インフラとしてこういうものが必要であるということがある程度決まった段階で出し始めることになるんで、そういう意味で、今すぐ出すというわけにはいかないと思います。
  各国の研究所で、ILCも含めて共同のインフラストラクチャーを造ることによって、例えばSIFの仕事を進めることができるとか、あるいはコントロール部分の仕事を進めることができると、そういうような共同のインフラをつくり上げることができますという形でESFRIに出すことは、僕はあると思いますし、そういう考えでいくと思うんで、それはまたある意味で第2ステップになるし、直接に素粒子物理のためということのやり方では多分ないと思います。
  あともう一つは、おっしゃるように確かに大きな額の投資になりますと、まず、各国のファンディングエージェンシーで見るのはESFRIのロードマップに載っているかどうかということになるんですけれども、それは規模によります。必ずESFRIに載っていないからできないということではないです。ある程度の規模以上になると、これはやっぱりヨーロッパインフラストラクチャーになるから、じゃあ、ESFRIはどうなんだという、そういう判断になります。
  一応私の知っている程度なんですけども、御報告だけと思いまして。

【観山座長】  ありがとうございました。
  それでは、次に人材の育成・確保の見通し及びその他について意見交換を行います。初めに、提案研究者側から5分程度で御説明をお願いします。
  岡田先生、お願いいたします。

【岡田理事】  岡田です。共有いたします。
  それでは、人材育成及び確保について、KEKの岡田から御説明申し上げます。
まず、人材育成・確保計画、特に国内の計画に関しては、KEKでは、まずKEKのアクションプランというものを策定いたしまして、その中で最初に4年間での人材育成計画ということを打ち出しました。この中では、基本的な考え方としては準備期間での技術準備の研究開発というところと、それから現行プロジェクトからの移行を組み合わせることによって、建設のためのコア人材を育成するというプランをつくりました。
  この右側に書いてありますのは、そのときにつくった4年プランを、最近のIDTのプレラボのプロポーザルに従ってアップデートしたものです。日本では、現状では40名程度の人数を、4年間で110名程度に増やすという計画になっております。ただし、この中には技術者も含まれておりまして、日本では技術者というのは業務委託、つまり民間企業の方にお願いするというところも入っています。
  こういうことをやるためにはKEKの中でどういうふうに人材を育成するかということですけれども、まず、ILCのキーになる技術である超伝導加速の技術に関しては、応用超伝導加速器センター(CASA)というところで人材育成をしております。このセンター長は道園さんでありまして、ここではILCの研究開発と、それから超伝導加速を用いた医療あるいは産業応用の両方の研究をやるという体制を取っておりまして、既にかなりの人材育成の成果を上げております。
  もちろん、ILCにはそれ以外のいろいろな様々な加速器の人材が必要ですが、これに関しては、一つは現行プロジェクト、SuperKEKBやJ-PARCなどの中でのオンザジョブトレーニングで人材を育成する。
  それから、現在ほかのプロジェクトに関わっている方を、加速器の方を徐々にILCにも関わるということでマンパワーを移していくという、その両方のやり方で人材育成・確保をしようというふうな計画を立てております。
  それから、技術者・技能者の育成や技術の継承、それから特殊な装置の生産や管理、維持についての見通しというのは第1回目の会合で指摘されたことなんですけれども、これに関しては、KEKの中では技術職員の配置と、先ほどありましたような業務委託ということによって対処しております。CASAでもそういう対処の仕方をしておりますけれども、これはKEKにとっては非常に重要な問題でして、必ずしもILCだけではない重要な問題なので、KEKとして計画的に全体として取り組んでいこうというふうに考えております。
  国際的な人材育成・確保に関してですけれども、まず、ILCを遂行するのに十分な加速器の人材ということで世界の加速器研究者を数えてみますと、それは十分に存在する、ポテンシャルには十分に存在するというふうに言えます。
それから、それぞれのある種エキスパートというのは、世界の研究所の中では専門人材や、必要な技術を持つ方というのがどこにいるかというのは、例えば前回の中田さんの発表の中でリストされておりますので、世界で協力する体制ができれば、ILCは十分にやっていけるというふうに思っております。
  それから、特にワークパッケージで、準備期間にそういうワークパッケージという新しいプロジェクトがありますと、それによって新しい人を引きつける、育成するということができますので、これは世界の加速器の人材計画そのものに貢献することだと思います。
  そういうことで、下にありますように準備期間に国内・国外で育成した人をコアにして、ILCの建設期間の中核を担う人材を育成するという計画を持っております。
  一方、物理や実験に関しては、これは世界の研究者にオープンでありまして、これは1実験で数千人という方が集まってくるわけなんですけど、既に現在でも多くの方が参加の希望を、参加したいということで集まってきているので、これに関しては、実際には実験が始まれば多くの方が集まってくるというふうに考えております。
  それから、次にリーダーシップに関してなんですけれども、まずは、浅井さんからもありましたようにILCジャパンというのをこの夏に立ち上げました。これは、ILCに向けて国内の研究者、高エネルギーの物理学の研究者にILCを自分たちの将来の計画として考えてもらおうということで、その流れをつくると。それで、全体として一致してILCに関してプロモートする体制をつくろうということでつくったものです。これはKEKと共にILCジャパンが両輪となっているILCを推進する。ILCジャパンが責任を持って海外の組織であるとか他の学術研究者コミュニティと協力したり、対応したりすることができるようにということでこういう体制をつくりました。
  特に聞かれているリーダーシップとしてどういう方を想定するのかということですけれども、全体の調整を担うリーダーシップというのは、ILCジャパンのスポークスパーソンの浅井さんに担ってもらおうというふうに考えております。
  それから、加速器の総合指揮を執る加速器研究者、それから国民に理解してもらうような、そういう説明ができるようなリーダーは誰かということに関しては、道園さんと村山さんが適切であるというふうに考えております。お二方は、それぞれIDTの中でもワーキンググループのチェアをしていますけれども、実はIDTの前の国際的なリニアコライダーの組織でも中核的な役割を果たしていたということで、世界的にも非常にビジブルな方だと言えます。
  その他の項目に関してですけど、まず、外国人のための住環境や家族の生活支援を含めた環境整備についての検討、これはとても重要なことで、これは現行のKEKでも非常に重要だということで取り組んでいることです。
一方で、これに関しては、例えば行政サービスであるとか医療、それから教育等については、研究所だけではできないことが多くあります。研究所としては、どういう課題があるかはリストすることができるんですけど、実際にこういうことをやろうとするときには、やっぱり産学の組織や地域との連携ということが必要になるというふうに考えておりますので、準備期間にはこういうことを強く進めていきたいと思っております。
  あと、準備研究所に係る体制に関してです。どういうふうに準備研究所へ移行するかということに関しては、全体の準備研究所を経て実現するというシナリオ自体は、まずはKEKのアクションプランで立てました。それのシナリオに基づいて、IDTでは準備研究所の立ち上げを含めての提案書を作りました。この提案書自体は、国際推進チームを設置したICFAという国際組織からエンドースされたものですので、これは国際的なある種の合意を得て進めていることです。
  KEKの中では、KEKの研究推進の指針を示すKEKロードマップというものをつくっておりまして、ちょうど今年5月に策定したものがあるんですけど、その中では、ILCの推進に関しては、IDTの提案に従って早期に準備段階へ移行するということを基本的な方針といたしました。
  技術的・経済的波及効果に関してですけれども、既に先ほど言った応用超伝導加速器センターでは、そういう技術的波及効果を考えて研究を進めているということを申し上げましたし、また、先ほどの浅井さんからの説明でも、いかにしてILCをほかの学問分野にも波及できるように考えていくかということが、研究者コミュニティとしても重要な問題として検討しているというお話をしましたけれども、そのような検討を続けていきたいと思っております。
  一方、経済的波及効果についてどういうふうな指標を設定するか、それがどういうふうな分析方法があるかということは、これは物理研究者だけではとても答えが得られるものではないというふうに考えまして、これは人文社会系の研究者とのコラボレーションによって進めていきたいと思っております。既にそういうことは勉強会という形でやりましたけれども、これからはILCに限らず、そういう大型の研究、それも国際的なものを進めていくためにはどういうふうにそういう波及効果について指標を設定して分析したらいいか、それを訴えていったらいいかということを一緒に考えていければというふうに思っております。
  以上でまとめです。以上です。

【観山座長】  どうもありがとうございました。
  それでは、ただいまの説明に対して御意見、御質問がございますでしょうか。どうぞ。

【横溝座長代理】  横溝です。

【観山座長】  横溝先生、どうぞ。

【横溝座長代理】  110ページに建設期も含めた絵が示されておりますが、最初の4年間のこの人数の増え方というのは、ちょっと大変だけどもやっていけるかなという気もしますけど、その後のオレンジ色になったところの人の仕分と言いますか、青い人が残っていた上に、足りない分がオレンジで、会社の契約者社員とかそういう形で上積みされると思っていいのですか。建設が終わった後のビーム試験から運転時期のイメージがこれだと分からないので、どういうコアの加速器の人を人数として考えているのかなというのを説明していただけるとありがたいですが。

【岡田理事】  この辺に関しては、国際ワーキンググループあたりで議論したんですけれども、まず、実際の建設期になると建設のために大きな予算がついて、それでそれぞれが分担して進めるということになります。そのときにコアになる加速器のサイエンティスト、それは準備期間に育てた人が中心・中核になるということを考えておりまして、あと、実際に大きくなるところは、そのプロジェクトを進めていくというところで様々な企業の方も含めて、民間の方も含めて、あるいはここには全て設置する方だとかいろいろな方が入っておりますので、そういう必ずしもサイエンティストだけではない技術者を含めてのトータルの数です。ですから、そこは建設に従って必要になる、予算で必要になる人数が増えていくと。何しろ準備期間と建設期間ではそれぞれ予算規模が全く違いますから、コアな加速器の人材を育成するというのは準備期間の段階でやるということがここに書いてある基本的な考え方です。

【横溝座長代理】  そうすると、建設期間、ビーム試験から運転に向けてのコアとなる加速器研究者の部分ですが、この青色で示されるような人の数というのは、この後はあまり増えないでコンスタントにいくのですか、それともちょっとは増えていくのですか。

【岡田理事】  それに関しては、もし道園さんからコメントがあればお願いします。

【観山座長】  どうぞ、道園さん。道園さんはおられませんかね。

【横溝座長代理】  じゃあ、後で答えをもらってもいいのですけども、心配になっているのは、準備期間の人数くらいだとちょっと年数が延びても集められるかなという感じはしておりますけども、このオレンジ色のところは、これだけの研究者は集められないでしょうし、将来的な研究所の規模としてはどのぐらいのイメージをお持ちなのかなというのが知りたいです。

【岡田理事】  またそれはTDRから、それを250前後にしたときに、詳しいその内訳というものは検討いたしましたので、それは後でまた御説明できると思います。

【横溝座長代理】  どうも、よろしくお願いします。

【観山座長】  それでは、ほかの委員の方から御質問があれば。

【中野委員】  すみません、中野ですけど、よろしいですか。

【観山座長】  中野さん、どうぞ。

【中野委員】  人材の確保というところで、CERNのコミットメントというか、CERNがILC計画を自分の計画として考えるというのはどれぐらい重要なのかということと、もしそれが実現した場合は、コアな人材の一部もCERNから供給可能なのか、その2点についてお伺いしたいです。

【岡田理事】  CERNは、ヨーロッパの加速器の言わば旗頭としての役割が非常に大きいです。各国の国立研究所は、CERNがどういうふうなストラテジーを取るか、どういうような意思決定をするかというのを皆さん見ている。CERNのある種お墨つきがついたようなプロジェクトにはヨーロッパ全体で関わるけれども、CERNがこちらのほうにヨーロッパとして行こうというふうなのとは別の意思決定というのは、なかなか各国の国立研究所ではできないというのが現状です。
  ですから、もちろんCERNにはエキスパートがたくさんいますから、CERNのエキスパートの方に入ってもらうということは重要なんですけど、CERNがある種ヨーロッパのコーディネーターとして、あるいはCERNが中心になってILCに関わるということが重要で、一旦それが起きると各国のナショナルラボラトリーは各国の予算要求ができて、これはCERN公認のプロジェクトであるということなので各国からリソースを得て参加することができるということになると思います。
  ですから、そういう意味でCERNとしては、ヨーロピアンストラテジーの中でも、欧州以外のグローバルな領域のプロジェクトに関わる場合には、CERNがヨーロッパのコーディネーターになるんだというふうにはっきりと明言しておりますので、CERNが関わること自体は非常に重要です。

【中野委員】  分かりました。コア人材についても、その場合は送ってくれると考えてよろしいのですか。

【岡田理事】  CERNはストラテジーの中でILCが進むんだったらヨーロッパはコラボレートしたいというふうに言っていますので、そのこと自体はCERNの方針とコンシステントなものであるというふうに思います。

【中野委員】  ありがとうございます。

【観山座長】  ほかにいかがでしょうか。
  すみません、小磯先生、どうぞ。

【小磯委員】  すみません、この人材育成で準備期間を4年間取っておられまして、この間にどのレベルの人を育成するのかというイメージがよく分からないのですが、割合若い方が入ってきて、加速器研究者として独り立ちするというのを考えると少し短過ぎるようにも思うのですが、いかがでしょうか。

【岡田理事】  まずは、本当にコアになる人たちは、若い特任助教であるとかそういうようなレベルの人が入ってきて、訓練しないといけないと思いますけど、それとともに、ある程度経験がある人は次第にILCプロジェクトのほうへも移行するということのコンビネーションですね、それをうまく加速器の中、もちろん現行計画を進めながらですから、現行計画を進めながら新しい計画へ新しく入る人をつけることによって若い人を育てながら、ある種経験ある人を移していくというのをうまく加速器の中でマネジしていくことによってこの人材確保の計画が成り立つんだというふうに思っております。

【小磯委員】  そういうことができるようになるには、現行計画のほうでももう少し人にゆとりがないと難しいのではないかという気もいたしますので、その辺りもよろしくお願いいたします。

【岡田理事】  それは現行計画を進めながら、つまり、全く人がつかないのに仕事ばかり増えるというのは、これは破綻するということはよく分かっておりますので、そこは新しい人材のリソースを得ながら人を移すということと、それから新しい人を育てるということを両方同時にやっていくということをやっていかなければいけないというふうに思っております。

【小磯委員】  ありがとうございます。

【観山座長】  熊谷先生。

【熊谷委員】  今と関連するんですけども、この109ページの加速器、土木、事務局の人員のこれからの4年間の推移がありますけども、この現状、現在ですけども、これの年齢分布というのはどうなっているんでしょうか。いわゆるコアとなるべき人と、コアとなるべき人を育てる人材の分布というのがちぐはぐだとこれは継続しないような気がするので、ちょっとその辺を教えていただければと思います。

【岡田理事】  これも道園さんのグループの分布なので、もし道園さんがいれば答えていただきたいんですけれども、そこに書いてありますように、基本的にはシニアの人の中でリーダーとなる人がだんだん上のポジションになっていって、それで、そこに書いてありますように過去4年で10人くらいの新しい人を採るということができましたので、そこは全体として若い人がどんどん入ってきて、かつシニアの人がリーダーシップを執るという分布にはなっております。

【熊谷委員】  シニアの人というのは、定義としてはどのぐらいの年齢なのかということと、この計画は10年、20年と非常に長いですよね。そうだとすると、できたときにシニアの人はとっくの昔にもういないという状態になってしまうわけで、そうだとすると、言ってみれば現在30代後半ぐらいの人がぎりぎりかなと、できたときに責任者になるのには。そうすると、30ぐらいできちっとしたサイエンスとそれから技術、テクノロジーのところでよく現状を認識しているような人が……。

【道園教授】  いいですか。今は聞こえますでしょうか。

【観山座長】  道園さん、お願いします。

【道園教授】  申し訳ありません。ここで書いてあるのはFTE換算です。延べ人数ではございません。入っているのはいわゆる常勤職員です。63歳までのKEKの常勤職員が入っていて、退職した方、あるいは博士研究員みたいな方は入っておりません。年齢分布としては、我々のような50代から、若い人だと20代まで。CASAに関しては比較的若い方が多いんですけれども、割と20代から50代までバランスが取れた人数の分布になっていると思います。
  以上です。

【熊谷委員】  すみません。そうだとすると、若い人を責任者に育てるためには、何がしかの責任をきちっと持たせて研究開発をさせないと人材は育たないんですよ。よく専門的なところに特化して人を育てると全体が分からないような人がどんどん増えていって、こういう大きなプロジェクトを牽引するにはちょっと、ということになりかねないと思うんですが、そこら辺を危惧しているんです。

【道園教授】  その辺は、全体を見えるような人を育てていくというのはもちろん大事だと思いますけれども、ワークパッケージというふうに分けてありますが、各々のワークパッケージもかなり広い分野をカバーしますので、人材としてはよく育成できるような課題にまとまっているのではないかと思います。

【熊谷委員】  よろしくお願いします。

【観山座長】  岡村先生。

【岡村委員】  岡村です。
  113ページのところで、外国人のための住環境や家族の生活支援を含めた環境整備ということが出てきていますけれども、これは、もう一つこの視点から踏み込むと良いと思います。そういう環境整備が地域でできた結果として、非常に多くのいろいろな国の人たちが日本の人たちと一緒に生活をするということは、言ってみれば文化的な価値もあるという視点です。よく技術的・経済的波及効果と言われますけれども、そのような新しい地域ができるということは文化的な波及効果もあるんだというような視点を入れるのです。物理とかだけではなくて、人文系の人たちともそういう波及効果、経済ではかれるかどうかは分かりませんが、そういうものもあるというような考え方をしていくと、国民の理解という点でも役に立つのではないかという気がしています。これは質問ではありません、コメントです。

【岡田理事】  ありがとうございます。まさに地域での検討はそういう視点で検討していらっしゃると思いますけれども、特に人文社会系の方と協力してやるというのは本当に重要なことだと思いますので、どうもありがとうございます。参考にさせていただきます。

【岡村委員】  ありがとうございます。

【観山座長】  今の点は非常に重要な点だと思います。日本的には欧米の研究者環境というのは理解がなかなか難しいところですね。私もすごく経験しておりますけども。
  では、よろしいですか。意見交換をこれで終了したいと思います。さらに質問がある場合には――すみません。東嶋さん、お願いします。

【東嶋委員】  ありがとうございます。先生、私より森先生が先ほどから御質問できていないんでしょうか。森先生の次で結構です。

【森委員】  すみません。私、先ほどマシンの調子、マイクの調子が不調になってしまいまして質問できなかったので、このタイミングをさせてください。

【観山座長】  そうですか。どうぞ。

【森委員】  先ほど、アメリカの状況についてお話しいただきましたけれども、ヨーロッパに比べてさらにあまり積極性がちょっと見えなかったかなという気がしたのが気になった点です。さらにこの分野ですとカナダとか、あるいは中国、韓国、インドなどかなり関心を持つ国もあるように思うんですけれども、今特に中心的なところは日本とヨーロッパですけど、あとアメリカとそれ以外の国のILCプロジェクトに関する関心といいますか、それはどういう状況なんでしょうか。CERNのような組織ができれば研究者をそこに送り込むという、それくらいの感じなのか、あるいはもっと積極的にプロジェクトにコミットしたいというところなのか、何となく前に伺ったときよりも全体的に温度が下がっちゃっている気がするのがどうもちょっと気になっているところで、感触をお伺いしたいと思った次第です。

【観山座長】  どなたでも。

【山内機構長】  山内ですが、よろしいですか。

【観山座長】  山内先生。

【山内機構長】  アメリカの温度が下がっているということは決してないと思います。2014年からこれまでに公式な書き物は出ておりませんので、その間何もなかったように見えるのかもしれませんが、いろいろな類いの研究会、ワークショップ等を開催した際には、当然のことながら一緒にアクティブに参加しておりますので、決して温度が下がったということではないと思います。今度のスノーマス会議でもって、また非常にアクティブな議論がなされるものと考えています。
  それから、アメリカ以外の国です。韓国、インド、ロシアかな、いろいろな国でセミナーを開かせてもらって、「こういったこともあるので、皆さん一緒にやりませんか」みたいな話を始めたところだったんですが、実はコロナで2年間ぐらい何もやっていませんので、コロナが解決し次第、またそういった活動を再開したいと思っています。インドとかロシアはかなり脈があると思っています。

【森委員】  ありがとうございます。

【観山座長】  森先生、すみませんでした。
  それでは、東嶋先生。

【東嶋委員】  ありがとうございます。
  時間も迫ったので簡単に。先ほど浅井先生のスライドで、欧州のFCCとILCを比較された表を出されたときに、FCCはある時点で転用されるというようなことが書いてあって、ILCのほうはいろいろ応用ができると書いてありましたが、ILCは今のところ20年間運転というのが最初の計画だったと思いますが、どのぐらいまで最先端の研究施設として使えて、使い終わったというのもおかしいんですけれども、あまり最先端の施設として使われることが少なくなった場合、この50キロのトンネルはどのようになるのか、お考えをお聞かせください。2050年頃というと、ここにいらっしゃる先生方はもうはっきり言って引退されているか何かですので、その先のことを、このトンネルと、それから負債といいますか、使ったお金がどのように還元されていくのか、お聞きしたいと思います。

【浅井教授】  では、浅井のほうから説明させていただきます。
  まず、第1点でございますが、いつまでこの実験をしますかという観点でございますが、まず、建設が終わってから20年はヒッグスの研究をする予定でおります。その後、次のエネルギーのスケールが見えてきたら、そのスケールに合わせて加速器の改造を行う予定でございます。それにはどういう技術を使うのかとか、ひょっとするともうちょっと長くしなきゃならなくなったりとかいろいろなことがあるとは思いますが、そういうことを行っていこうと思っております。
  先ほども申しましたが、狭い意味での加速器衝突実験だけではなくて、いろいろなファシリティーというものを周りにつけていって、これはそういう意味で、今後ずっと永続的にこのリニアの部分を中心にして展開していきたいというふうに思っておりますので、終わるということは基本的には考えてはおりません。ただし、いつかは終わらなきゃならない、これは人の世の定めでございますので、そのときにどういうふうにしていくのかという点に関してですけども、少々お待ちください。共有いたします。
  終わった後、どういうふうに使っていくのかという点でございますけども、そういう意味でCERNというのは本当にずっと少しずつ加速器を使って、どんどんどんどん拡張していっていろいろ利用しております。最終的に使わなくなったものをどういうふうに使っているのかという点でございますけども、先ほど申しましたとおり非常に安定した地盤で、かつ温度、湿度ともに非常によく制御されております。こういうものをどういうふうに利用していくのかという例としまして、例えばデータセンターです。涼しくて温度管理できるような所に置くと電力の観点で非常に具合がいいというわけで、そういうデータセンターへの活用だとか、あとはちょっとあれですけどもキノコの栽培場だとか、ワインの醸造だとか、そういういろいろな用途に実際にこういうものが使われております、トンネルの跡地が。なので、そういうことも視野に入れて終わった後というのは進めていきたいと思っております。
  すみません。以上でございます。

【観山座長】  ありがとうございます。
  委員の皆様、よろしいでしょうか。

【京藤委員】  ちょっといいですか。

【観山座長】  はい。

【京藤委員】  先ほど、データセンターなどと言われたんですけど、データセンターを運営するというのは莫大なエネルギーを使わなきゃいけないことになると思うんですけど、そのエネルギーの供給源は、例えば原発とかああいうのを置いちゃうとか、そういうことですか。

【浅井教授】  確かに今おっしゃるとおりで、このままデータがどんどん、どんどん増えていくと、全世界の使用量のおよそ2割をデータセンターが担ってしまうというような時代になってしまうと思います。そういう意味で、今後どうやってデータセンターを省電力化していくのかという研究につきましては、これとは別にやっていくことだろうと思っております。実際我々、実はLHCで素粒子センターというのは膨大なデータセンターを使っておりまして、その電力は結構なものでございます。世界のおよそ1%ぐらい使っているんですけども、世界の全データセンターの1%ぐらい使っているんですけども、やっぱりそれをどういうふうに省電力化していくのかという研究を現在進めております。なので、そういうのも併せて総合的にデータ科学にもこういう素粒子の研究というのは役に立っております。ぜひよろしくお願いいたします。何をよろしくかはよく分かりませんけども。

【京藤委員】  素粒子関係でも相当エネルギー使っちゃうということですね。

【浅井教授】  実際、今全データセンターのおよそ1%がLHCのデータでございます。

【京藤委員】  NTTが4、5%使っていますよね、全国で、結構大きいですよね。

【浅井教授】  大きいです。単一目的でこれだけのものを使っているというのはある意味例を見ない研究で、これはだから国際的にやったから初めてできたことでございますし、これを今度次にどう省電力化していくのかというのも、これはインターナショナルに進めております。日本だけじゃなくて、ヨーロッパやアメリカと一緒になって次世代のデータセンターをどう省力化していくのかというのをやっております。

【京藤委員】  そういう面では、ILCを使うときは全部直流でコントロールしていくという考えも成り立つんですね。

【浅井教授】  直流……。

【京藤委員】  消費電力を落としていくということでは、交流でなくて、施設を全部直流しちゃうと。

【浅井教授】  いや、それは多分……。

【京藤委員】  難しい?

【浅井教授】  ええ、そう思います。やはり市販のものを使うというのが、ある意味一番コストを安くすることになりますので。さらに応用もできますので。

【京藤委員】  分かりました。

【神余委員】  すみません。

【観山座長】  神余さん。

【神余委員】  先ほどの終わった後にどうするかということなんですけども、トンネルは結構長いトンネルで、深いですかね、ある程度深いですよね。そうすると、実は地震の観測として使うこともできて、気象庁は松代に松代観測所というのを持っていますけども、そこはトンネルで世界中の核実験、地下核実験で起きた、あれはP波ですか、S波ですかね、それを感知しまして、それで探知網、世界的なネットワークをつくっているのですが、そういったことにも応用できるんじゃないですか。地震観測あるいは核実験、地下核実験の探知といった平和利用に使っていけるということは、一つ事後的なものとしてはプラスの方向に行くんじゃないか、キノコの栽培もいいですけども、恐らくそっちのほうがいいんじゃないかと思います。

【浅井教授】  ありがとうございます。本当に100年先のことだと思っておりますので、まだあまり考えておりませんけども、そういうふうに思っておりますし、実はこれは私の個人的な好みでございますけども、量子センサーみたいなものを開発して、より高い感度で、今神余先生がおっしゃったような地震波じゃないですけども、そういう振動を検出するようなこういう装置を作って、重力波の検出も含めていろいろなそういう基礎科学への応用ということができていくというふうに思っております。その一環として、確かにそういう地震波の測定というのは非常に面白いと思いますし、地球の中の研究とかもできるようになっていくと思います。

【観山座長】  どうもありがとうございました。
  本日の提案研究者の方々の説明は以上になりますので、十数分残されていますけれども、提案研究者方の先生は会議から退出していただければと思います。本日は本当にどうもありがとうございました。
  退出はされますが、傍聴はされていると思いますので。
  項目それぞれについて意見交換をと思いましたけれども、それだけの時間はちょっとないようなので、どの項目でも結構でございますので御意見、いかがでしょうか。
  まず、中野先生から。

【中野委員】  短く。プレラボの設置についてですけど、看板代だけで構わないとおっしゃったのは非常に大きいと思います。何か始めてみて歯車が回り始めるというのを見ることができたら、それはそれでよいのかなと。きちんとしたミッションと、年度ごとのマイルストーンというようなものはちゃんとつけないといけないと思いますけれども、費用はそんなにかからないんだったらやってみる価値はあるかもしれないと思いました。
以上です。

【観山座長】  伊地知先生。

【伊地知委員】  私、あいにく前回出席できなかったものですから、そこの中でどういった御説明、あるいはどういった意見交換がなされたかというのは承知していないのですけれども、このプレラボ、準備設立研究所については、資料の中でも、前回、第2回でいうと、例えば126ページにも図があって出ていたかと思います。日本にどういった組織を設立するとした場合にでも、例えば法律でつくられるというところであれば、それなりのつくり方というのはあるかと思うのですが、既存の許されている組織の種類によるのであれば、設立の仕方からすると、それに合わせた形でまずつくられなければいけないというように考えています。そして、それとこの126ページにあるものとをどのように整合させていくのかということについて非常に関心を持っていて、これについては、まだ追加して関係の専門家の方々に御質問できるということなので、それをお伺いしたいと思っています。
  特に、今日のお話をお伺いしていても、国際的な関係でいうと、例えば欧州で言えばCERNが中心的なところであるわけですけれども、しかし、実際にプレラボに各国が負担をするとなれば、各国がどうそこに関与するかといったことがあって、そういった国際機関あるいは外国の機関が、国内の組織に、どう国内の法律に合致する形で代表者が参画してくるのかというところ、どちらかというと今日の多くの議論は、組織中において専門的な研究者、技術者の参画がどうなのかということもあったかと思うのですが、全体としてのガバナンスのところというのが、実際にこれを実現するには重要なところかと思っていまして、そこのところを提案研究者の方々にお示しいただけると、もう少しフィージビリティーが見えてくるのかと思っている次第です。
  以上です。

【観山座長】  1つは、今のプレラボのことで言うと、形式だけでいいのかという問題です。提案では実際にやることがあるのかということだと思います。やっぱり組織をつくっていくとか、それから人材の育成だとか、それから工学的な試験設計だとかということでいうと、これは金額的にそんなに吹っかけられているわけじゃなくて、だから必要なんだと思いますが、一方で、我が国の予算の進め方として、プレラボというのは、そこで検討した結果、もしかすると不幸にも予算的に見合わないとかそういう状況も起こり得るのがプレラボですよね、そういうことが認められるかというのは非常に難しい状況だと思います。これは120億円でしたか、それは随分減額はできるのかもしれませんけども、やっぱり今までのいろいろな計画で、なおかつこれだけ大きな計画なので、それなりの人材の確保だとか、工学的な設計だとか、そういうものが完全に終わっていて、これだと絶対大丈夫だというので石橋をたたいて渡るというか、そこまで計画が熟して動くんだったら動くんだと思いますが、科学者の感覚、観点から言うと、やっぱりこういうR&Dがしっかりやってなければうまく動かないというのは非常によく分かるんだけど、仕組みとしてなかなか難しい提案ではないかなと思いますね、どうでしょうか。
  中野先生。

【中野委員】  いきなり120億円はあり得ないような気がいたします。どういったらいいか、ほかにも120億円欲しがっている人はたくさんいますけれども、何らかのちゃんとアウトカムがあるような計画でないとそういうような金額は要求できないので、それはあり得ないんですが、一方、海外からのコントリビューションというか、海外のリソースをうまく使うということで開発というのも進められるということを示すというのも、推進したい人たちに課せられたことじゃないかなと思うんです。だから、もちろん全く予算なしという、看板だけ、本当の看板だけというのはあり得ないと思うんですけれども、初年度にこれをクリアしたら増額はあり得るとか、何かそういうマイルストーンを置きながら徐々に規模を大きくしていくということでうまく折り合いがつけば可能かなというふうには思います。一足飛びにILCが実現するというのは、山内機構長もおっしゃったんだけどあり得ないような感じがして、今までのプロジェクトの進め方とはかなり違ったやり方をして、もしかしたらそれでうまくいくかもしれないと、そんな感じを受けました。

【観山座長】  岡村先生。

【岡村委員】  岡村です。
  私も中野先生と非常に似た感じを持っています。一番最初に提出された資料を見た段階では、「プレラボができなければILCはできないんだ」みたいなニュアンスにちょっと聞こえたんですが、それがこの2回で随分大きく雰囲気が変わってきたような気がしています。横山さんも前回言われましたけど、それだったらプレラボというのは何か前提条件で、これをやらなきゃILCはできないとか、これができたら必ずILCを造るという決断になるみたいな、そういうセットと考えなくても良いのはないでしょうか。本体の実行とはちょっと切り離して、本当にできるところからやってみて、それでどういうふうにうまくいくかというのを試してみるという位置づけにすることはできないでしょうか。本体とは切り離すというのもおかしな話ですけど、切り離した形式にするというような形で小さい規模でもやり始めるということができたら、今までとは違った状況が何か生まれるのかなという気がしています。
  ただし、じゃあ、本当にそれは本体とは関係ないですよという、最初から絶対それは関係ありませんとくぎを刺した形でそういうプロジェクトが進められるかどうかというのは、観山さんが言われるように難しいかもしれません。しかし、そういう意識は重要で、私は提案者の方々の感じ方が大きく変わってきたんじゃないかと、トップの人が入れ替わったからかもしれませんけれどもそういう気がしました。

【観山座長】  横山先生。

【横山委員】  ありがとうございます。
  岡村先生のお考えにすごく私は近いので、そういう意味で中野先生にも近いかと思いますけれども、今おっしゃっていただいたように誘致前提でやるという考えは切り離して、サイトに関する研究は後回しにすると、もうそれは切り離して技術開発のところを中心にやっていくと。やっぱりFCCとの関係やその引っ張り合いというのは、いろいろな国際状況を鑑みても流動的なものだと思いますし、もっと言ってしまえばCERN側でILCのようなリニアをやらないということはないわけです、あるかもしれないわけです。予算としては向こうのほうがGDP比で確実に取っているわけですから、そういう可能性も鑑みて、この分野が途絶えずに技術発展していって、どこか合意できるタイミングが来たら一斉に決断ができるような状況にしておくというのが、今の状況の中では最善なのかなというふうにお見受けしていた次第です。
  以上です。

【観山座長】  ありがとうございました。ほかにいかがですか。
  では、横溝さん。その次に森さん。

【横溝座長代理】  横溝です。
  今、この有識者会議はかなり瀬戸際に立たされている。準備研究所は、この間の質問したときも彼らははっきり言っているのは、国際間で協定をつくってスタートしたいんだと言っていましたよね。もしそれをやるとすると、日本のコミットを世界的に表明することになる。だから試しにやるという段階じゃなくて、もうこれを推進する研究者は実績としてもそういうステップを踏んでいきたいんだというふうに思っていると思うんです。この間質問したのは、これがなくても、じゃあ、今までみたいな技術開発でやれるでしょうと言ったら、彼らは国際協力にしたいんだということを言っているわけですよね。ですから、国として本当にこれをスタートするというところまで覚悟した上で、これが準備研究所に行ってくださいというふうに有識者会議が言うか言わないかという、かなりリスクを含んだ決断をしないといけないんじゃないか、そういうのを私は感じています。
  以上です。

【観山座長】  ありがとうございます。
  森先生、どうぞ。

【森委員】  今の最初、その前のお二方の御意見に私は近いんですが、今の話があって、もしも、これをやるかやらないか、イエスかノーかという0・1だというものを突きつけられたとしたら、これをやりましょうとは恐らく言いにくい。非常に言いにくいんですよ。これは言いにくい、恐らく言えないと思うし、それは有識者会議としては、これ以外の道はない、ある意味では非常に莫大な研究資源をこれに集中してでもやるべきだとまで、そこまで断言するのはちょっと無理だというふうに思っています。ちょっと卑怯だというか、申し訳ないと言うとあれかもしれませんけども、引き返せる道を選びながら進んでいくしかないと思っているんです。その意味では、先ほど横山先生がおっしゃったプレラボを少し科学技術とかそういうところから始めていってという見方になるんですけれども、もしこれを進めるとすると、そしたら国際協力がまず一つ、それからどの国もですが、どの国もこれで一体、これが本当に自分たちの国にとって最高のプライオリティーの課題であるというふうに言えるかどうかというと、恐らく自信を持って言える科学者はいないと思うんですよね。少なくともたった今、このコロナウイルスがまだはびこっていて、ワクチンが非常に今は効いたとしても、まだそれは全部普及し切っていない。だとすれば、まずはその資源を医療関係に使ってほしいなと思う人は結構たくさんいると思いますし、ほかにも、私は温暖化をやっていますから温暖化研究をまだまだやってほしいなと。それを言い出したら、この資源に全部イエスかノーかという答えではなくて、やはり段階を踏んで進んで、かつ引き戻す、引き返すことはないけれども、確実に段階を踏んで進んでいけるという体制みたいなものをやるべきだというふうに言わざるを得ないというふうに思います。先ほどのプレラボ、イエスかノーか的なところの決断だというふうな見方をしなければならないとしたら、私はそれを推すことはできないと、はっきり今申し上げたいと思います。
  以上です。

【観山座長】  坂本審議官。

【坂本大臣官房審議官】  ありがとうございます。もうお時間もなくなってきましたので、貴重な御議論をいただきまして、文部科学省側の状況を御説明し、確認を簡単にさせていただきたいと思います。
  今、非常に重要な御議論をしていただいておりまして、まず、各国との関係、先ほど石川室長から御説明させていただきました資料1-1の7ページから8ページにも書かれておりますけれども、我々は今、各国政府との間でそれぞれのロードマップでのプライオリティーづけなど、ここに書かれている状況にどのような変化があったのかということを、今、幾つかのチャンネルで確認をしておりますので、その状況についてはまた御報告させていただきます。
  それから、改めてでございますけれども、今の論点は我々も非常に重要だと考えております。参考資料の148ページにもございますけれども、これは今年5月末に文部科学大臣からICFAの議長の先生に出したレターでございますけれども、ILC計画、あるいは素粒子物理は非常に大きな可能性を持っているというものだと思います。一方で、様々な大きな課題があることも事実でございます。国際費用分担、この全体の資金規模が6,000億円から8,000億円というのは、先生方で御存じの方も多いかと思いますが、ITER計画の計画立ち上げ当初の見積もりと同等の規模でございます。こういった大型プロジェクトとしてどう扱うのか、そして技術的成立性、研究者コミュニティを含む国民の御理解などの様々な課題がございます。そして、今回の準備研究所のレポートにおいては、この準備研究所の活動を始める前提として、日本政府が日本にILCをホストすることについての関心を表明し、そして国際パートナーたる各国に対してILC実現に向けて議論することを招くと、そういう議論を呼びかけるということが必要だというふうに書かれてあることでございます。これは行政として非常に重いプロセスであると考えております。これはもう観山座長、浅井先生からも、あるいは山内機構長からも御議論があったところでございます。
  こういったことで、我々、先ほど申し上げましたとおり関係国政府との間でもしっかりと意見交換を進めていく、これも148ページの文部科学大臣のレターにも書いておりますが、国際研究協力もしっかりと継続していくこと、これの支援もさせていただくことは必要だというふうに考えております。
  それから、1点だけ技術的なところでございますけれども、先ほど超伝導コイル、これは主要コスト要素として非常に大きなものでございますが、ITER計画においてニオブ3スズについては、縦16.5メートル、幅9メートル、線材としては長さ800メートルにも及ぶこの超伝導、世界最大の物でございますが、長年のITERの工学設計活動、これは誘致プロセスとは、選定プロセスと切り離された形で行われた事前活動でございますが、それも政府間協定に基づく活動において長年開発されて、今は実機製作のレベルになっております。19基がITERに装着されることになっておりますけども、そういった技術の適用可能性も含めて慎重に考慮されると、そういったことも一つ重要な要素かと考えております。
  以上です。

【観山座長】  非常に重要な議論――神余さん、どうぞ。

【神余委員】  私も実は、これは予算もさることながら、国立大学の運営費交付金の7、8割をどんと使うような額のプロジェクトなので、もちろん全国の国立大学の研究が影響を受けるということになりますよね。
  それからもう一つは、やっぱりヨーロッパが本当についてくるのかということが、どうも私にはいまひとつ腹にすとんと落ちないのです。あの欧州素粒子戦略の表現を見る限りにおいては、ヨーロッパは日本がやるならどうぞと、そのときは協力させていただきますよということなので、これはよほど日本がぐいぐい引っ張っていかないと実現しないだろうと思います。分担について国際交渉するにしても日本がリーダーシップを執って、金も出して、人もつけてという相当な覚悟がないと、恐らくついてこない可能性が非常にあるのではないかなというふうに思います。
  そういうことを考えると、まず準備研究所をつくってスタートしてちょっとやってみて、リニアモーターカーみたいにちょっと小さい実験施設を造って実験して、でかくしていくという、そういう発想では恐らくないんだろうと思うのです。恐らく日本政府として、あるいは日本全体として相当コミットした格好で進めないと、これは本気になってやるつもりがないというふうに見られがちだと思いますので、恐らくそういうボトムアップ型というのは非常に難しいのではないかなという感じはいたします。

【観山座長】  2つの意見があり、対象としてはプレラボをどうするかということが重要な観点だと思いますけれども、今日は時間がもう参りましたので、継続して議論を進めたいと思います。私の印象では、これぐらいの規模の国際的機関をするのには、プレラボが看板だけでというのはなかなか難しいと思いますよ。実際にみんながやる気になっていただくためには、それは相当の覚悟とレベルを示さないとなかなか難しいのではないかと思います。
  どうも今日はありがとうございました。次回もありますので、また御意見、コメント等がありましたら事務局のほうに送っていただければと思います。
  今後、もう1回か2回か、ちょっとどうなるか分かりませんけど、議論の進め方によりますけれども、再度提案研究者側に説明願いたいという必要がありましたら設けたいと思います。
  それでは、非常に重要なテーマの議論を始めたところですが、時間の関係もありますので今日はこれまでにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
  それでは、事務局のほうから何か連絡がありましたら、よろしくお願いします。

【林加速器科学専門官】  それでは、連絡事項を2点申し上げます。本日の議事録でございますけども、こちらも後日、出席委員の皆様にメールにて内容の確認をお願いいたしまして、その後、当省のホームページに公表いたします。
  それから、次回の会議の開催につきましては、また日程のほうを調整させていただきまして、決まり次第御連絡させていただきます。
  以上でございます。

【観山座長】  今日はどうもありがとうございました。
  それでは、本日の会議をこれで終了したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。


―― 了 ――