令和3年3月5日(金曜日)16時00分~18時00分
文部科学省 Web会議システムによる開催
宮園主査、島主査代理、青木委員、中釜委員、中山委員、西川委員、野田委員、古矢委員、堀田委員
高木研究振興戦略官、岩﨑先端医科学研究企画官、清家がん研究推進係長、間石学術調査官
岩佐がん対策推進官(厚生労働省 健康局 がん・疾病対策課)、市村課長補佐(厚生労働省 健康局 がん・疾病対策課)、浦課長(日本医療研究開発機構 創薬事業部 医薬品研究開発課)
【清家係長】 ただいまより第2回がん研究の推進の在り方に関する検討会を開会いたします。本日も前回と同様、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点より、ウェブ会議システムによる開催とさせていただいております。委員の皆様には御配慮、御協力いただき誠にありがとうございます。
本日は委員の皆様全員に御出席いただき、定足数である過半数に達しておりますことを御報告いたします。
また、ウェブ会議システムについて、前回同様ではございますが、御発言の際だけマイクをオンにし、お名前をおっしゃってから御発言いただくようお願いいたします。システムの不備等が発生しましたら、随時お知らせいただけますようよろしくお願いいたします。御不便をおかけすることがあるかもしれませんが、何とぞ御理解のほどよろしくお願いいたします。
それではこれ以降の進行は宮園主査にお願いいたします。宮園主査、よろしくお願いいたします。
【宮園主査】 宮園ですが、どうぞ今日はよろしくお願いいたします。
本日の議事は議題1と議題2に分かれておりまして、議題1の次世代がん医療創生研究事業の事後評価に関する議論は、当事者または第三者の利益を害する可能性がありますので、設置要綱第6条第2項の規定に基づきまして非公開といたします。傍聴者の方への配信については、議題2のがん研究の推進の在り方に関する議論からといたしますので、恐縮ですがどうぞ御了解をよろしくお願いいたします。
≪以下非公開議題≫
(傍聴者入室)
【宮園主査】 よろしいでしょうか。それでは事務局から議題2に関する配付資料の確認をお願いいたします。
【清家係長】 配付資料の確認をさせていただきます。議題2の資料につきましては、議事次第に記載のとおり資料2-1から2-6までの6点と参考資料2を用意しております。
以上です。
【宮園主査】 それでは議事に入らせていただきます。議題2のがん研究の推進の在り方の検討に関しまして、検討事項について事務局から説明をお願いいたします。
【清家係長】 事務局から今後のがん研究の在り方に関する検討事項について説明いたします。
現事業の暫定的な事後評価においては、必要性・有効性・効率性のいずれの観点でも高い御評価を頂くとともに、今後の展望として、次期事業に向けた重要な御意見を取りまとめていただきました。今回取りまとめていただきました暫定的な事後評価を踏まえ、今後の文部科学省が進めるがん研究の在り方について具体的な検討を進めるに当たり、事前のヒアリングや前回の検討会において委員の皆様から頂いた御意見を基に、検討事項のたたき台を事務局で作成いたしました。こちらの検討事項は推進すべき研究、上段と、それを推進するための取組、下段に記載しております。その2つのパートに分けて整理しております。
まず、文部科学省において推進すべき研究についてです。前回の検討会において、「がん研究10か年戦略」や「健康・医療戦略」等の政府全体の取組の中での文部科学省事業の位置づけや、最近の政府全体のがん研究の取組について説明させていただきました。これらの動向を踏まえ、次期プログラムの目的・役割がどうあるべきか、研究領域、研究フェーズはどのように設定すべきかなどを御議論いただくとともに、次期プログラムにおいてどのような成果が期待されるか、御意見を頂きたいと考えております。
次に、研究推進のための取組についてです。最初の2つの検討事項として、若手や研究歴の浅い研究者の支援・育成を強化するために必要な取組や、研究環境に左右されることなく研究を進めるための支援について御検討いただきたいと考えております。これまでの議論や事前の御意見で出てきたキーワードを例示として示しておりますが、これ以外にも様々な御提案を頂ければと思っております。
3つ目の検討事項として、より一層早期導出を実現するために必要な、企業や他事業との連携の在り方などについて御議論いただきたいと考えております。
また、このほかの事項についても自由に御議論いただければと思っております。
なお、事前のヒアリングなどで頂いた主な御意見につきましては参考資料2に取りまとめております。
以上です。
【宮園主査】 どうもありがとうございました。
ただいま事務局から説明がありました検討事項のたたき台で、おおむね必要な事項については網羅されていると思いますが、この内容に限ることなくこれから議論は進めてまいりたいと思っております。
この後、事務局、厚生労働省、それから中釜委員、間石先生、西川委員より今日は御発表いただくことになっておりますが、御発表いただいた後で、検討事項の内容も含めて全体で議論する時間を取っております。ただ、現時点でこの資料2-1を御覧になって、もし何かお気づきの点、御意見がありましたら、どうぞよろしくお願いいたします。
資料2-1はたたき台ということで、今、何かお気づきの点がございますでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、引き続きまして、「「がん研究10か年戦略」の推進に関する報告書(中間評価)」への対応状況について、事務局から説明をお願いいたします。この後、事務局、厚生労働省、中釜委員、間石先生、そして西川委員と順番に御発表いただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。それでは事務局から資料2-2について、説明よろしくお願いいたします。
【清家係長】 事務局から次世代がん医療創生研究事業の取組を振り返る趣旨で、「「がん研究10か年戦略」の推進に関する報告書(中間評価)」に対する、文部科学省事業の対応状況について説明いたします。
2ページ目を御覧ください。10か年戦略の中間評価では、前半期で明らかになった課題を踏まえ、後半期間に取り組むべき研究の方向性を8つの柱ごとに整理し、複数の柱にまたがる事項につきましては横断的事項としてまとめられました。このうち、次世代がん事業に関連する部分は赤字でお示しした1から6及び横断的事項9です。
3ページ目以降では、柱ごとに整理された具体的研究事項のうち、主に次世代がん事業に関連する部分を抜粋し記載しております。
例えば(1)のがんの本態解明に関する研究では、分子・細胞イメージングを活用した新たな切り口での研究、ゲノム解析を含めたオミックス解析の技術を活用した研究や、主要なドライバー遺伝子に関する理解をより深める研究等を推進すべきとされております。
次のページをお願いします。(2)アンメットメディカルニーズに応える新規薬剤開発に関する研究、(3)患者に優しい新規医療技術開発に関する研究、(4)新たな標準治療を創るための研究では、治療の効果予測・効果判定に係るバイオマーカーの研究や、治療効率の向上や副作用の低減を期待できるドラッグデリバリーに係る研究等が挙げられています。
次のページをお願いします。(5)ライフステージやがんの特性に着目した重点研究領域、(6)がんの予防法や早期発見手法に関する研究では、小児や高齢者等のライフステージに着目したがんや、希少がん・難治性がんの研究、異分野融合による早期発見の手法の開発が挙げられております。
次のページを御覧ください。(9)各柱にまたがる横断的事項では、シーズ探索の重要性やがんゲノム医療に係る研究、免疫療法に関する研究、リキッドバイオプシーに係る研究の推進、若手の育成や研究者育成に必要な支援についての検討の必要性が言及されております。
次のページをお願いします。これまでの次世代がん事業において支援している研究課題の状況等から、本中間評価への対応状況を検討し、対応が不十分だと思われる分野を8ページ目に列挙いたしました。小児がんを含む希少がんや難治性がんの研究支援に関しては、多種多様ながん種に関する研究課題を支援できているとは言えない状況です。
一方、感染症に起因するがん、iPSや遺伝子改変技術を活用した研究については、必ずしも文部科学省事業のみで対応すべきものではなく、感染症関連事業や再生医療関連事業といったAMED他事業との連携により対応していくべき研究分野もあると考えております。
以上です。
【宮園主査】 どうもありがとうございました。ただいまの事務局からの説明に関して何か御質問、御意見等がありましたら、よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。
こちらはよろしいでしょうか。
特に御意見ないようでしたら、次に進みたいと思います。「がん研究10か年戦略」の中間評価でも、がんゲノム医療に係る研究について指摘が出ております。また、先日、青木委員からもゲノムデータベースの重要性について御指摘がありましたが、全ゲノム解析については「全ゲノム解析等実行計画」に基づきまして、革新がん事業を中心に取り組んでいると聞いております。厚生労働省の方から取組の概要について御説明いただけますでしょうか。どうぞよろしくお願いいたします。
【市村課長補佐】 厚生労働省のがん・疾病対策課の市村です。よろしくお願いいたします。
全ゲノム解析等のさらなる推進に向けた体制整備について御説明させていただきます。
次のページをよろしくお願いします。全ゲノム解析等のさらなる推進に向けまして、1から4つ目まで御説明させていただきたいと思います。1つ目ですが、事業目的としましては、全ゲノム解析等の成果を患者さんに還元することが第一であることを改めて明確化しております。次に、患者還元体制の構築、そしてそういった患者還元体制について実際に事業を実施する体制の構築について、さらには厚生労働省においてどういった検討体制でこれらの体制を検討していくかということについて提示させていただきます。
次のページをよろしくお願いします。こちらは患者還元体制の一つの形の提案となっております。こちらは医療機関におきましてシークエンスセンターでシークエンスされたFASTQファイルを自施設で解析ができる場合の図でございます。シークエンスセンターで解析されたFASTQファイルは医療機関に返却されると同時に、解析・データセンターへもデータが蓄積されていきます。そしてその蓄積されたデータ等を用いまして、研究や創薬に活用していただくという流れを考えております。
次のページをお願いいたします。多くの医療機関におきましては自施設で解析ができるとは限りませんので、シークセンスセンターで得られたFASTQデータを解析・データセンターと共有して解析・データセンターで臨床解析及びレポート作成まで行って医療機関に返却し、その医療機関においてエキスパートパネルで協議をしていただくという流れも考えております。多くの医療機関ではこのような形になると考えております。
いずれのタイプにおきましても、解析・データセンターに蓄積されたデータを用いまして、研究や創薬に活用していただきたいと考えております。
次のページをお願いいたします。これらの患者還元体制を含めて、どのような実施組織で今後全ゲノムを進めていくかというところなのですが、こちらに示しております図はGenomics Englandの図となっており、こちらを参考に考えております。実施組織は全ゲノム解析等の推進に関する専門委員会における検討に基づきまして、臨床情報の収集や検体の採取、臨床解析、データ保存、データ共有・利活用の調整を担うことを想定しております。
実施組織の構成につきましても、Genomics England等を参考としつつ、責任者を含むボードメンバーを置くこと。総務、財務に係る部門や事業管理に係る部門、そして学術研究支援に係る部門、商務、利活用推進に係る部門等を検討しております。そしてボードメンバーに対しましては専門的な助言を行う各種諮問委員会も検討しております。
次のスライドをお願いいたします。このような患者還元体制や事業実施体制についての厚生労働省における検討体制についてですが、かなりいろいろな検討会があるところ、来年度からはかなりシンプルにしていきたいと考えております。「全ゲノム解析等実行計画」の着実な推進に向けまして、厚生労働省の厚生科学審議会の科学技術部会の下に、新たに全ゲノム解析等の推進に関する専門委員会を設置いたしました。
こちらの専門委員会は実行計画の着実な推進に向けた検討を行うとともに、実行計画に基づく取組が確実になされているか等について確認しまして、必要な意思決定を行います。そして必要に応じて実行計画の見直し等の検討を行って、より責任体制を明確化しまして実効性の高い検討体制とすることを考えております。
また、この専門委員会に対しまして、患者還元や解析・データセンター、ELSI等について、より専門的な検討を行う専門委員会を厚労科研として設ける予定でございます。
以上が厚生労働省におきます全ゲノム解析の推進に向けての体制整備についての御報告となります。
【宮園主査】 どうもありがとうございました。
ただいまの厚生労働省からの説明につきまして御質問、御意見等がありましたら、どうぞよろしくお願いいたします。
一つ確認ですけれども、これはがんに限らず、全ての疾患のゲノム解析ということで、今日御説明いただいたということでよろしいでしょうか。
【市村課長補佐】 現時点ではがんと難病ということになっております。
【宮園主査】 分かりました。了解です。いかがでしょうか。
【堀田委員】 堀田です。よろしいでしょうか。
【宮園主査】 どうぞ、堀田先生。
【堀田委員】 御説明いただいたように、今、革新がんのほうで特に領域1で全ゲノム解析は動いているのですけれども、それをどう利活用するかということは、ここに今お示しいただいたことになるのだと思います。先ほど2枚のポンチ絵を出していただいて、一つは解析自体を医療機関でできるところと、それではなくて解析センターに移す場合があって、多くは後者になるというお話でした。独自に解析できるような施設については、自分のところで得たシークエンスデータをそのまま研究に利用することが可能になるのか、あるいは解析センターに一応登録はするわけですから、全体としての利活用についてのコンセンサスをどこで得るかという、この辺のところを説明していただければと思います。
【市村課長補佐】 ありがとうございます。
一般的には自施設で解析したものに関しましてはその施設での研究等に用いることは差し支えないと思いますが、いずれにおきましても研究計画時の説明同意書に規定されたものですが、今回、「全ゲノム解析等実行計画」におきましては共通のICFを用いることを想定しています。解析・データセンターへのFASTQファイルの共有につきましても、共通のICFでそのようにすべきというところで統一して行う予定です。
自施設の患者さんのデータを自施設で解析するのは当然優先されるべきことですし、同時にそのデータを自施設だけではなく、解析・データセンターに共有して、しかるべき研究計画書が提出され、それが解析・データセンター等での利用審査を経た後、共有して、研究や創薬に役立ててもらいたいという立てつけを考えております。
【堀田委員】 ありがとうございました。今の説明でよく分かりました。自施設でできるところについては研究開発に利用するプライオリティーがあると理解しましたので、そのほうがインセンティブは働くだろうと思います。ありがとうございました。
【宮園主査】 どうもありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。こちらはよろしいでしょうか。
【青木委員】 一つ教えていただいてもよろしいでしょうか。
【宮園主査】 どうぞ。
【青木委員】 青木です。御説明ありがとうございました。非常にきちっと考えられているということが分かりました。少し大ざっぱな質問かもしれないですが、タイムスケジュールはどのような感じで考えられているかということと、規模感ですね。どのぐらいのデータベースを目指しているのか。
あと、国内にたくさんのシークエンスデータをお持ちの施設があると思いますが、そういった既にあるようなデータベースを活用・連携するようなことは考えておられないのでしょうか。
最後に、今回送られてきた若手研究者の方の御意見にもあったのですけれども、臨床検体が使えると大変いいといったようなお話がありましたが、アカデミアの先生方が臨床検体を実際に使うことも想定されているのでしょうか。
【市村課長補佐】 ありがとうございます。
まずタイムスケジュールについてですが、R3年度はAMED研究を中心に行っていく予定です。R4年度以降につきましては現時点では確定的なことが言えないところなのですけれども、R4年度以降につきましても引き続き獲得できる予算を獲得し、進めていきたいと考えております。
事業規模につきましては、「全ゲノム解析等実行計画(第1版)」におきまして、先行解析として、がんで主なバイオバンクにおいて蓄積されている検体としまして大体1万6,000検体が解析できるのではないかというような表現が使われております。先行解析につきましてはそれぐらいの規模を目標に今後やっていきたいとは考えております。
また、臨床検体を使えるようになるかどうかに関してですが、こちらは解析・データセンターに臨床情報と解析結果は行くのですが、シークエンスセンターで残った検体とか、そういったものの検体自体の取扱いについてはまだ確定的な取決めがされているわけではございませんので、今後その残検体の研究での研究所枠における取扱いについても、今後できる専門委員会で検討していくことになると思います。
あとは、何か忘れているところはないでしょうか。
【宮園主査】 海外の同じような取組との連携ということを青木先生はおっしゃいましたでしょうか。
【野田委員】 これまでのデータベースとの連携について質問されていたと思います。
【宮園主査】 そうですね。これまでのデータベースです。
【野田委員】 フルゲノムというところはちょっと誤解があるかもしれません。
【市村課長補佐】 ほかのデータベースとの連携につきましても、技術的な問題はあるかもしれませんが、戦略室を中心に現在検討していると認識しております。
【宮園主査】 よろしいでしょうか。
【青木委員】 ありがとうございました。
【宮園主査】 ほか、いかがでしょうか。大体よろしいでしょうか。
それではまた最後にまとめて御意見を伺いたいと思いますので、次に進ませていただいて、中釜委員より、難治性がん・希少がんに関する研究の状況についての御発表をお願いいたします。中釜委員、よろしくお願いいたします。
【中釜委員】 領域AのPOを務めている中釜です。
私からは難治性がん・希少がんに関する今の次世代がんの研究支援の状況についてお話させていただきます。先ほど文部科学省からの説明の中に、「がん研究10か年戦略」の中間評価を受けてさらに後半期に強化すべき課題の説明が幾つかありました。その中での治療抵抗性を獲得した難治がんであるとか、それから小児・AYA、あるいは高齢者のがんといった希少がんへの対応、それから希少・難治がんに関しては研究支援体制の強化。日本やアジア地域に固有に多いスキルス胃がんやATLなど、こういうものの研究強化が指摘されていました。
実際にアカデミア主導の公的研究費を使って強化する研究の中で、なかなか企業主導で行いにくいような難治性がんや希少がんに対して、公的な研究費を使って研究を加速する支援は非常に重要だと思います。
そういった意味で、これまでのAMEDの次世代がんの支援状況についてまとめたものですが、2ページ目をめくっていただきますと、平成28年度から令和2年度の応募課題数と採択課題数の表が示されています。簡単に説明いたしますと、平成28年度は応募課題のうち採択された122題、全体の15.7%が採択されていますが、この採択率に関して言うと、それ以降、平成29年度から令和2年度に関しては約10%前後、令和2年度は少し高くて応募216課題と採択47題で、21%ぐらいの採択率であります。その中で実際に難治性がん・希少がんに関する研究課題がどのくらい採択されていたのかというのがその下の2つの行に示されています。難治性がん・希少がん合わせて平成28年度では24課題、採択課題数全体としては大体20%弱。平成29年度、これは全て難治・希少がんの公募課題だったのですが、13課題全てが難治・希少がん。令和2度年に関しては難治性がん・希少がんの26課題と、採択課題の中で大体半分近くを占めている状況です。採択課題の全体273課題の中で、大体3割程度で難治性がん・希少がんを含めた研究が採択されている状況であります。
領域Aから領域Eまで、どのような分布をしているかを示したものが下の棒グラフです。一見して分かりますように、特に平成28年度、令和2年度など採択課題数が多かった年に関して言いますと、かなり領域に割と均等に近い形での採択があったことから、各領域においても難治性がん・希少がんに関しては一定の割合で確実に採択をしてきている状況かと思います。
めくっていただきまして次のページ、これは希少がん・難治性がんの公募状況、平成29年度のデータを示しています。先ほど申しましたように、この平成29年度は難治性がん・希少がんを対象にした公募でしたので、採択課題全てが難治・希少がんなのですが、その中でどういう課題が採択されているのかを示しているものです。難治性がんに関しては、やはり膵臓がんが非常に多く、その他は悪性中皮腫。希少がんにおいては採択された9課題において、御覧のように様々ながん種が採択されていることが分かります。がん全体で200種類ほどある希少がんをどういうふうに取り扱っていくのか、その中からエビデンスをどう構築するかという希少がんの難しい課題はありますが、AMED次世代がん事業としては、難治性がん・希少がんに関して一定の採択を続けてきていることは評価できるだろうと思います。
少し細かいデータを申しますと、先ほどの資料にもありましたが、文科省のデータの最後のページです。令和2年度の応募課題216課題の中で難治性がん・希少がんの全体の研究応募は53課題、全体の二十数%あったということです。この中で採択された課題は47分の20で、約半数ですので、ほかのがん種に比べても希少がん・難治がんに関する理解が進み、あるいはその応募課題が多く、かつ優れた課題が多かったということだと思いますが、より積極的に採択されてきた状況があるかと思います。
一方で課題も指摘されていたかと思います。難治性がん・希少がんの場合は先ほど説明しましたようにがん種が非常に多いことから、必ずしも多くの希少がんを拾うことができないという点です。そういう中でエビデンスを構築するためには、やはり採択課題数全体を増やす必要があるかなと思いますが、これは予算全体の中でどのように対応していくかということになると思います。また、先ほど厚労省から説明がありましたゲノム情報をデータベース化し、それをうまく連動していろいろながん種横断的な研究が推進されることによっても、今言った課題も解決されうるのかなと思います。
全体として、次世代がん事業としてこの希少・難治に関しては非常によく取り組んでいただいている印象をPOとしては持っています。
私からは以上です。
【宮園主査】 中釜先生、どうもありがとうございました。
ただいまの中釜先生からの御発表につきまして御意見、コメントあるいは御質問等がありましたらよろしくお願いいたします。
難治性がんにつきまして、膵臓がんの研究がそれほど日本から出てこないと言っていたのですが、結構最近応募があるようになりましたが、やはり肺小細胞がんとか卵巣がんは応募も少なく、まだ採択されたものも少ないということですね。それから今、中釜先生がおっしゃいましたが、希少がんにつきましても多少応募が多いものとなかなか応募がないものがあるということで、それをどういうふうにしていくかということかと思います。
私もこの資料を見ていて非常に印象深かったのですが、論文を出したときもなかなかいい雑誌が見てくれないのと、それから私ども「Cancer Science」のエディターをやっていますと、査読してくれる方もいらっしゃらないということもあって、なかなか希少がんはいろいろ難しいところがあるとは思いますが、やはり希少がんの研究は大変重要なので、これを何とかしてうまく対象のがん種もこれからまた拡大して、研究を推進していく方策も必要かなと思って今日はお聞きしておりました。皆様、いかがでしょうか。
【堀田委員】 堀田です。
【宮園主査】 堀田先生、お願いします。
【堀田委員】 ありがとうございます。
難治がんにしろ希少がんにしろ、その捉え方の切り口が実は、例えば医療的な場合と学問として発展させるのとでは多分違うのだろうと思います。例えば希少がんの場合、200種類もある中で、何をターゲットに研究したらいいかというところで、医療的に言えば、ほかのメジャーながん種のサブタイプとしてしっかり見られるような希少がんは医療的には対応が可能と考えることもできますが、学術的にはそれでは解決したことにならない、といった問題があります。特徴的な遺伝子異常を示す希少フラクションをどう扱うかということも、今後の議論になるのだろうと思います。医療的に言えば、数が少ないがために研究者が少ない、あるいは医療体制も整っていないために受療機会が非常に恵まれていないので、政策的にはそこを強める必要があるということなのですが、学問的に言えば、そういうこととはまた別に、切り口として臨床像が際立ったものについては、それは何らかの遺伝子異常なりあるいはゲノムの変化が見つかる可能性が一般のがんよりもむしろ可能性があるので、そういう切り口も必要なのではないかと思います。
難治がんに関しても、診断が困難で結果として見つかりにくいから難治になっている場合と、がんそのものが治療抵抗性であるものでは違いがあり、そういったところも今後の次世代がんでは、難治がん・希少がんといってもどこにフォーカスを絞っていくかというのは、ある程度戦略性を持つ必要があると思います。
以上です。
【宮園主査】 どうもありがとうございました。ほかに御意見はございますでしょうか。中釜委員、よろしくお願いします。
【中釜委員】 堀田先生の御指摘はまさに御指摘のとおりだと思います。先生がおっしゃるように、希少がんは非常に種類が多く、そういう中でどういう視点でこの研究をするかということが、研究者のアイデアや、臨床的な特性、そこに希少がんであるがゆえに、あるいは珍しいがんであるがゆえに、逆に特殊ながんとして現れている可能性があるという観点が重要と思います。それを研究者がどういうふうに的確につかんで提案するかというところが恐らく希少がんのある意味重要なところだろうと思いますし、そういった意味では、これまで採択されてきた方は恐らくそういうところが十分にアピールできていたのだろうということです。
ただ、もちろんそれだけで多くの希少がんに対応できるわけではないので、先ほど私も申しましたように、例えばこれから日本がつくろうとしているゲノムデータ基盤などをうまく活用しながら、希少なものをデータベースのほうに向けていって共同研究を広げていくということも必要かと思います。
あと、難治性がんに関しても先生が御指摘のように、非常に早期発見が難しい形になっているのは、恐らく次世代がん事業の中ではそれほど採択は多くないと思うのですけれども、治療抵抗性であったり、そもそも治療に反応しないなど、がん細胞が持つ細胞としての特性をうまく表現型として見いだし、それをいかに解決できるかを考え、アイデアを持っていくかというところで、個人的にはこの難治がん・希少がんは研究者のユニークな視点が生かされた新しい科学を生んでいくことを期待していると思います。こういうところにAMED次世代がん事業がさらに力を注力してくれると、非常にいいのではないかと思いました。どうも御指摘ありがとうございました。
【宮園主査】 どうもありがとうございました。
ほか、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
特にございませんでしたら、最後に議論する時間があると思いますので、次に移らせていただきます。次は若手の研究者の視点で現状や課題、それから今後期待する内容について、文部科学省の研究振興局学術調査官を務めていただいています、北海道大学大学院歯学研究院の間石先生より御発表をお願いしたします。よろしくお願いいたします。
【間石学術調査官】 よろしくお願いします。北海道大学の間石奈湖と申します。
初めに簡単に自己紹介させていただきます。北海道大学の歯学部に所属しています。樋田京子先生が主宰する教室で助教として働いております。
これまで腫瘍血管を中心にがん微小環境に関する研究を行っておりまして、特に腫瘍血管内皮細胞とがん細胞の相互作用によるがん転移促進などに着目しております。例えば腫瘍血管内皮細胞が分泌するバイグリカンががん細胞の血管内侵入それから肺転移などを促進することに着目してきましたし、現在では腫瘍細胞と腫瘍血管内皮細胞が細胞塊をつくることでがんの転移が促進されるというような視点で着目した研究を進めております。せっかくの著名な先生方の前ですので、ちょっとだけアピールさせていただきました。
AMEDの採択歴としましては、2015年に1年枠として革新がんで採択されて、その後2016年から3年間、同じ革新がんの若手育成枠で支援を頂きました。学術調査官としましては昨年10月から就任させていただいております。
本日は「若手視点での現状や課題、今後期待すること」というお題を頂きましたので、それについて発表させていただきます。
次をお願いします。まず初めに、これまでのAMEDの次世代がんの事業における若手公募の実績について、文科省の方に調べて教えていただいたことを簡単に発表させていただきまして、その後、メインとして若手研究者からの声について発表させていただきます。
次をお願いします。これまでのAMED次世代がん医療において若手がどのように支援されてきたかに関しまして、平成28年から若手育成枠で採択された課題数をこちらに示しております。平成28年から29年に関しては22課題。次の2年間で21課題採択されていて、その後、課題数がずっと減って、3課題、5課題と聞いております。現在、また30課題公募しているうちの15課題が若手の優先枠と伺っています。
その若手育成枠で採択された人たちが次につながっているかどうかも調べていただいたのですけれども、これは次世代がんでの採択数になりますが、22課題あった最初の28年から29年に関しては、そのうち8課題がその後採択されている。それが若手枠と一般枠両方あると伺っています。その次に関しては21課題中7課題ということで、大体3分の1の課題についてはその後の次世代がんで同じように採択されていると伺っています。
また、次世代がん以外にも革新がんでの採択であるとか、あるいはAMEDのほかの事業、あるいはJSTなどAMED以外でも多分活躍されていると思いますので、若手育成枠として採用された若手がその後研究を発展させていっているのではないかと感じております。
次をお願いします。2つ目、若手研究者からの声としまして、よかった点と残念な点あるいは今後期待する点について、若手の研究者複数名から、現在この状況ですのでオンラインでヒアリングを行いました。対象者としましては、がんの研究分野で活躍している30代後半から40代前半の比較的若手の先生方。AMEDのがん若手ワークショップで知り合った若手研究者も含まれております。これらの研究者の中には、応募経験はあるもののAMEDに採択されたことがない人、あるいはAMEDの次世代がん、革新がんのどちらかもくしは両方に採択歴がある人、それからAMEDのほかの事業での採択歴がある人が含まれております。私の意見もこの中に含めております。
次をお願いします。まず、よかった点につきまして、若手育成枠の設定については、やはり採択されること自体が業績になるということもありますし、設定していただいたのはとてもありがたいと感じております。一般枠では太刀打ちできなくても、若手育成枠を設定してもらえたことで、がん研究を推進するきっかけをもらえたと。やはりこういうことがあると若手は活性化すると思うということで、かなり前向きな意見を頂いています。
1年のみの採択枠で採択された人も複数人いましたけれども、大きな研究費を獲得する経験を1年でも積むことができたのはすごくよかったと。複数年にわたるような大型の研究費ももちろん大きな事業を進めていく上では必要なのですけれども、若手としては取っ掛りが欲しいところもありますので、1年枠で裾野を広げて採択件数を増やすのもあってもいいのではないかと考えております。
次をお願いします。採択された結果得られたものに関しましては、これは複数名からの意見だったのですけれども、がん若手のワークショップで横のつながりができたのは大きな財産であると。またそこから共同研究に発展して、次の新しい研究を獲得できた人もいました。COVID-19のこの現在の状況では開催すること自体が難しいかもしれないですけれども、できればオンサイトで、フェース・トゥー・フェースで開催していただけると活性化するのではないかと考えております。
非臨床から治験などあまり経験のない若手にとっては、進捗管理をしてもらったり、都度相談することができて迅速に研究を進めることができたと、感謝している現場もおります。また、次世代がん、革新がん両方で若手育成枠などに採用された人は、新しいシーズの開発につなげることができたと言っておりました。また、技術支援を活用できた人については使わせてもらえてとてもありがたかったと、そういう意見を頂いています。
次をお願いします。ここから先はAMEDの方に今後期待したいことということで、やはり若手の研究者にいろいろ聞くと、よかったことはそこそこで、今後に期待したい点のほうが圧倒的に多かったのですけれども。
まず公募内容・方法につきましては、説明会が事前に開催されていると思うのですが、そういうところでどういう課題を求めているかというところを詳しく聞きたいという話がありました。もちろんそういうことを説明してくれる説明会もあったけれども、中には公募要領を読んでいるだけのものもあって少し残念だったという話がありました。また、個別相談などできるとうれしくて、領域は幾つか設定がありますけれども、どれを選んだら一番マッチングできるのかというところも事前に相談できるとよいのではないかと話を聞いています。
臨床サンプルへのアクセスに関しましても、あることが前提ということが多く、ないと採択されないと。その臨床サンプルへのアクセス自体もAMED側でサポートしていただけるとうれしいという意見が複数ありました。というのも、若手だと事前にそういう臨床とのネットワーク構築までできないと。ハードルは高いこともありまして、そういう意見があります。
3つ目として、研究提案する時点で確実なもの、ある程度結果が予測できるようなものしか通らないのではないかと。若手の育成という点ではもう少しシーズに重点を置いてほしい、長期的な支援という視点が欲しいという意見が複数ありまして、そういう意味では萌芽的な研究という枠も別にあってもいいのではないかという意見がありました。
次をお願いします。ここら辺は似たような話が続くのですけれども、やはり創薬ターゲットがある程度絞られていないと採択されないのではないかと。そのターゲットを絞るところ、前段階についても課題を対象にしてほしいという意見があります。
AMEDが立ち位置的に出口重視ということはもちろんみんな分かっているのですけれども、がん研究を推進する立場のAMEDのほうで、もう少し基礎研究に力を入れてシーズの育成をしてほしいと。シーズの枯渇を避けるためにも長期的な育成を考慮してほしいという意見が複数ありました。
非臨床や臨床試験のように先がある程度見えてくるような研究と、もう少しシーズから始まる研究は分けて評価したほうがいいのではないかと。特にシーズから始まる研究は結果次第で方向性が変わっていきますので、マイルストーンを申請書の段階で設定するときに細かく記載するのは結構難しいということで、申請書の作成の段階でもそういうところを考慮できるといいのではないかという意見が複数ありました。
次をお願いします。学術変革Bのように、若手がネットワークをつくって主体的に研究推進するようなシステム。今みたいに代表者、それと分担者というようなシステムではなくて、できるだけ対等でチームをつくって研究申請するような公募があると、5年10年などの中長期で見ますと、よい研究ネットワークはつくれるのではないかという意見がありました。AMEDの立ち位置的にそこまでやるかどうかも、何人かの先生に聞いてみても意見は分かれましたけれどもそういう意見もあったということです。
前に話したことと少しかぶっていますけれども、裾野を広げて採択件数を増やしてほしい。初めから金額の一律固定ではなくて、小さい額とある程度大きい額というふうに設定が異なる公募の方法もあってもいいのではないかという話が出ました。
それから次世代が2年の設定というのは短くて、2年の時点で中間評価をして、成果次第でさらに2年の継続というふうな方法もあってもいいのではないかと。新規に申請するのではなくて、例えば4年のスパンで計画を立てて、2年で切るのか、額を減らすのか、あるいはさらに推進するのかというような評価の方法もあってもいいのではないかという意見がありました。
また、今回ヒアリングでお話しした人が40前後、40代に入るか入っていないかぐらいの人たちが多かったので、40歳代に入ると特に男性は40未満というのが若手設定枠の設定になりますので、40を超えてしまうと、そこから年配の先生と対等に戦うことになるのですけれども、現実的に難しいことが多いと。特にちょうどそれぐらいの年代ですとラボを立ち上げる、あるいは独立したばかりの人が多いと思いますので、そういう人を支援してくれるような枠があるとさらにうれしいという話がありました。
次をお願いします。技術支援に関しましては、支援を受けられた人はすごくよかったという意見もあったのですけれども、応募して必ずしも全員が採択されるわけではないということで、サポートが得られなかった人の意見からですけれども、技術支援があるのを見込んで申請して、課題が採択されたものの、この技術支援のほうに応募したらサポートを得られなかったため、とても残念だったと。得られていたらきっと研究が進んだのではないかと考えているということで、初めから支援を希望しているのを前提であれば、課題の審査の時点でそういうところも評価してもらえたらよかったのではないかという話がありました。
あと、ドラッグスクリーニングなどがあるとうれしいという意見がありましたけれども、具体的にどんなスクリーニングかというところまでは踏み込んではいないのですが、そういう希望がありました。
次をお願いします。予算について。これはちょっと若手だけではないかもしれないですけれども、基金化するなどして、年度をまたいで本当は使用できるとうれしいという意見があります。施設によってもきっと状況は違うと思うのですけれども、ある施設では発注が1月2月までしかできなくて、その後数か月発注ができないということで研究が止まってしまうという話で、こういう意見を頂きました。また、研究結果の内容によっても変わるとは思うのですけれども、予算の前倒し、あるいは次年度で繰り越して進めたいということもあるのですけれども、年度打切りだとそれができないということで、意見がこちらは結構多くの人からありました。あと、予算の用途の使いづらさ、柔軟性が欲しいという意見もあります。
結果次第で思いがけない展開になることがありますけれども、新たな方向性に進めるフレキシビリティーがAMEDだと少し小さいのではないかという意見、さらにもし当初予定していた方向とは違う方向に進んだところで、さらにそれを支援してもらえるような追加配賦などもあるとさらにうれしいという意見がございます。
次をお願いします。あと、予算について、金額の決定にもよるとは思うのですけれども、若手枠といっても本人だけで実験するものでもない年頃のメンバーですので、テクニシャンなどを雇って進めたいときに、人件費は結構お金がかかりますので、若手育成枠では、金額の設定にもよりますけれども、雇用が結構難しくて、人件費など別に設定するなどの枠組みもあってもいいのではないかという意見がありました。
また、備品の購入もする前提だと少し難しい。もちろん共通機器を使用することは今では推奨されているとは思うのですけれども、コアとなるようなPCRの機械であるとか顕微鏡、物にもよりますけれども、コアになる機器がないと、現実的には時間外の使用などができなかったりして不便であるという意見がありました。
次をお願いします。書類・評価についてですけれども、書類が多過ぎるというのが結構多くありました。ウェブ上での入力など、一括して管理するようなシステムが、たしかJSTか何かで採択されている人が、そういうシステムが最近できてすごく便利なので、そういうシステムがAMED側でもあるとシンプルでいいのではないかという話がありました。
また、結果次第で思いがけない展開になることがあると。先ほども申し上げましたけれども、特に若い人ほど思っていたとおりには進まない。逆に言うと可能性もあるということになるのですけれども、AMEDの今の評価システムだと大幅な修正がしづらくて、もう少しフレキシビリティーが欲しいという話があります。
こちらで最後のスライドになります。成果主義に感じるという意見が結構ありました。結果が出ないと駄目という評価方法だと、やはりどうしても次につなげたいということもありますので、結果が出るようにという研究の方向性に絞ってしまって、小さく収まってしまうのではないかと。評価のための研究になってしまっていることもあるという話です。
特に基礎研究ベースの人ですと、方向性が変わって違うのですが、マイルストーン重視、マイルストーンをどれぐらい達成したかというところが多分評価の大きなウエートを占めると思うのですけれども、最初に設定したマイルストーンを達成しないといけないというところに注力してしまって、本末転倒ではないかと。もちろん領域にもよるとは思うのですけれども、そういう領域に関しては臨床・非臨床とかと、もうちょっとベーシックな方向ということで評価方法を変えたほうがいいのではないかという意見がありました。
あとは、評価の方法として論文をどれだけ出したかというのもあるとは思うのですけれども、1つの課題に対して論文を毎年出していくのも必ずしもできるものではない。若手の場合は特に自分たちでの研究には限りがあるということで、少し長い目で見てほしいということがありました。
また、採択額が大きい課題と小さい課題とあると思うのですけれども、それを一律の評価方法にするのではなくて、小さい額であればもう少し簡素化するなどの設定を考えてほしいという意見がありました。
以上です。ありがとうございました。
【宮園主査】 間石先生、どうもありがとうございました。
ただいまの間石先生からの御発表に何か質問、御意見等はありますでしょうか。
私から一言。次世代がんの場合、若手研究者も大体1,000万円ぐらいを配分することが多いですが、むしろもっと少なくてもよいから裾野を広げてほしいという意見が多かったと考えたほうがいいのでしょうか。それとも、例えば文科省の科研費みたいにAとBをつくって、1,000万円ぐらいの方ともっと少ない方とをつくったほうがいいのか、何か具体的な御意見はあったのでしょうか。
【間石学術調査官】 そうですね。やはり何度も採択経験のある人は大きい額で欲しいというのはありますけれども、なかなかそこまで到達していない人としては、少ない額でもいいからチャンスが欲しいという意見なので、どちらかというと先生がおっしゃった2番目の、2つに分けてしてもいいのではないかという感じでした。
【宮園主査】 そうですか。分かりました。ほかいかがでしょう。古矢先生、どうぞ。
【古矢委員】 間石先生、御説明ありがとうございました。古矢と申します。一つお尋ねしたいのですが。少し長い目で見て研究を育てるみたいなことをぜひお願いしたいと。非常によく分かる御指摘で、POのうちでも何とか育てたい、これはいろいろ楽しみだというところはあるのですが、一方で、中釜先生が御説明になったとおり採択率が非常に低いことがあって、これは文部科学省に毎年標的探索をお願いしているのですが、これまで応用研究は少し長めの時間を取って研究が続けられるという体制もあったかと思います。そうすると、先生御自身の御意見も含めてで結構ですが、ある特定の方が長く時間を取ってしまうことと、毎年新たに挑戦できることと、それぞれ一長一短あるかと思うのですが、若い先生から見てどちらがいいとお感じになっていますか。
【間石学術調査官】 正直、個人的には件数があるほうが恐らく裾野が広がる意味ではいいのではないかとは思います。途中で発表しましたように、2年たって、打ち切って、また成果が出ているならもう一度一から申請するという方針もありではあるのですけれども、もし、例えばこれはという課題があるのであれば、そのまま継続という、新規申請ではなくてそういうチャンスを与えるような枠があってもいいかもしれないと思います。
【古矢委員】 分かりました。とても悩ましい、いつも悩ましいので、ありがとうございます。
【間石学術調査官】 ありがとうございます。
【宮園主査】 では中釜先生、どうぞ。
【中釜委員】 領域AのPOの中釜です。間石先生、どうもありがとうございました。
一点、先生の御説明の中に臨床サンプルへのアクセスがないと採択されない、なかなかそれが難しい面があるという御指摘がありました。確かにそうかと思うと同時に、一方では最近いろいろなバイオバンクで情報をオープンにしていて、そこへのアクセスはある程度門戸が開けている部分もあるかと思います。オープンベースでそういうアプローチをすれば必ずしもというふうに思うところもあったのですけれども、でも実際にはなかなかそこがうまくアクセスできないという現状がかなりあるのか、若手の中でそういう声が強かったのか、その点だけ教えていただけますか。
【間石学術調査官】 そうですね。所属する機関にもよるとは思うのですけれども、例えばそれが整っていて、自分たちがそのバイオバンクを使いたいと言ったら、はいオーケーとなるような人にとっては問題ないとは思うのですけれども。若手はどうしてもPIではないので、上を通さないとそこにアクセスできないというときに、上の先生との話がうまくいかないこともあるという意見がありまして、それを間にAMEDが入って、もう少し公的なところでサポートしていただけると、臨床検体の種類もそうですし、数もそうですし、あとはお金的なところも含めてアクセスしやすくなるというのが若手の意見です。
【中釜委員】 なるほど。そういった意味での支援、結びつけみたいなものがあってもいいのではないかということですね。分かりました。ありがとうございます。
【間石学術調査官】 ありがとうございます。
【宮園主査】 どうぞ、野田先生。
【野田委員】 野田です。次世代がんの採択されている課題を見ると、必ずしも臨床検体を用いた解析が含まれていないと採択されないということではないのですが、さらに革新がんのフェーズにまで進むに当たっては、やはり臨床検体へのアクセスは必須だと思います。
さて、間石先生、今日は、ありがとうございました。これだけ広く意見を集めていただいたので、我々、特にPOの先生たちは、御自分が、今後の次世代がん事業にとって必要と考えるものを選んで、それらの意見を生かしていくということになると思います。その中で、臨床検体へのアクセスについては、それほど次世代がん事業では無理に言っているわけではないのですが、採択後に、それが必要と考えられる場合、どのように支援をするのが良いのかは、考える必要があると思いました。ただ、技術支援のところで、現在、柱になっているケミカルスクリーニングに関して、「これがあると良かった」という意見があるなど、理解不足の面もあるように感じました。一応、次世代では60課題に対してスクリーニング支援をやっており、対象が広がっています。そのため、整理をした上で、大切な意見をピックアップして、対応を考えていくのかなと思いました。ともかく、貴重な情報をありがとうございました。
【間石学術調査官】 こちらこそありがとうございます。
【宮園主査】 どうもありがとうございます。
ちょっと時間が押していますが、何かもしなければ、間石先生、どうもありがとうございました。
【間石学術調査官】 ありがとうございました。
【宮園主査】 大変貴重な意見を頂きましたので、また検討させていただきます。
それでは続きまして、現役のPIでもあられますが、西川委員から実際に研究を実施する立場から、研究の推進に必要な取組などについての御発表をお願いいたします。西川先生、よろしくお願いいたします。
【西川委員】 宮園先生、御紹介いただきありがとうございます。私、御紹介いただきましたように、国立がん研究センターと名古屋大学に所属しております西川と申します。今日はそうそうたる先生方の前で、せっかくですので私も自身がPIとして行った研究の宣伝をしまして、その時感じた課題、そしてこれから期待するというようなことをお話しできたらと思います。
特に先ほどの資料にございました1番のがんの本態解明に関する研究や、各柱にまたがる横断的事項のところでも免疫のことは取り上げられていましたけれども、特に私はこの免疫のところ、領域でCでしたかね、そこでチーム型のPIとして研究をさせていただきました。
私の話の中で少し分けてお話ししたい点は、TR、トランスレーショナルリサーチとリバースTRという点です。多くの次世代がんの研究はTRになると思うのですけれども、一方でバイオマーカーは逆にリバースTRという側面が強くなると思いますので、そこら辺を少し分けてお話をさせていただきたいと思います。
次のスライドをお願いいたします。私が取り組みました研究はこの次世代がんの研究領域Cで、がん細胞及び免疫応答解析に基づくがん免疫療法効果予測診断法の確立ということを、代表者として実施させていただきました。
次をお願いいたします。私たちが研究を始めた頃は主にがんの免疫療法、今から5年前ですけれども、免疫チェックポイント阻害剤の単剤治療が中心でしたが、非常に急速ながん免疫療法の展開がございまして、今はがん複合免疫療法が主になっておりますが、少し問題点を共有させていただきたいと思います。
左の上の図はカプラン・マイヤーカーブの模式図になりますが、従来の化学療法ですとピンクの線が青に変わる、つまり単剤が併用になります。これは、ほぼ多くの方がその効果を享受できるということを意味しています。
一方、その右側にあります模式図ががん免疫療法のカプラン・マイヤーカーブですが、赤い線が併用になりますと黄色に持ち上がるようなイメージになります。がん免疫療法はこのテールプラトーと呼ばれる治療効果、即ち長い治療効果が認められることが特徴であります。それが黄色の線に持ち上がって、一見全ての方が併用すればいいのではないかということになるわけですが、正確に言えばそれは正しくなくて、赤の下、つまり20%前後の方はそもそも単剤できちんと治療効果があったわけです。にもかかわらず、現在この方々に対するバイオマーカーがないということで、患者さん全員が、これでしたら4割ぐらいの方は効果があるから、みんな併用してしまおうという、やや治療としては乱暴な治療が実施されているわけです。これは取りも直さずきちんとしたバイオマーカーがないことが原因になっているわけです。
下の病理画像ですけれども、これは同じがん種の画像ですが、茶色い点々は免疫細胞です。同じがん種をみても、右側にあるようにたくさん免疫細胞がある方から左のほぼないような方までいらっしゃいます。免疫療法というのは一番右側のたくさん点々がある方に比較的治療効果がみられる、ということになるわけですが、こういった方を私たちの研究班ではどうやって見つけて、どういうバイオマーカーによって層別化するかということを検討しています。このカプラン・マイヤーカーブは実際に達成したバイオマーカーの一つを出していますが、バイオマーカーによってここまで患者層別化を達成することができました。
次をお願いいたします。こちらは私が最初に申請したときのスライドから幾つかピックアップしたのですが、左側の上にありますように、がん免疫療法では、体内で免疫応答がとても活性化してがんが小さくなる方と、残念ながら泣いている人形がありますように、うまく活性化しなくてがんが大きくなってしまうということを、本研究課題で見分けたいということでした。
右にありますように、赤いところが免疫療法です。青いところがゲノム解析。両方を組み合わせることによって、赤いところが主に国立がん研究センター、青いところがん研の西尾先生方に分担になっていただいて研究を進めました。
検体に関しては、肺がんや胃がんといったところはやはりがんセンターとがん研がタッグを組めば十分に集まるのですが、残念ながら免疫療法ですと当時は最も主たるがん種だったメラノーマについてはやはり大きなチームをつくらないと十分に患者を集めることができませんでした。海外に対抗することもありますが、やはり臨床に応用するバイオマーカーを見つけるためには一定の数がどうしても必要になりますので、こういった大きなチームが必要になりました。
また、本邦で治療が非常に進んでいるATL、希少がんのATLに関してもやはりCCR4という、あれは分子標的薬でありつつ免疫療法薬でもあるということで、我々の班で研究をしました。この中で、代表的な肺がん・胃がんに対するバイオマーカーについてお話ししたいと思います。次をお願いいたします。
5年間にわたって研究を進めました。スライドの左上から順番に右に行って左下に戻って右にというこの矢印の順番のように研究を進めたわけですが、114種類のパラメーターをがんの局所で網羅的に解析して、機械学習によって最も治療効果と相関したものを、もちろんプラスもマイナスも含めてですが、機械学習でピックアップしていきました。つづいて今度は深層学習、ディープラーニングをAIを使って行いまして、プラスとマイナスのトップに来たパラメーターの比が一番いいということを見出しました。さらにもっと複雑な計算式を幾つもやったのですが、最終的に右にありますようにバイオマーカーに到達いたしました。これは革新がんに導出して医師主導治験で進めようと最初は思っていたのですが、一気に企業導出が進みまして、もう来月から企業治験が始まるところまでこぎ着けました。
これに関しては次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業に展開できたことも大きくて、そこでこのバイオマーカーを測定するのに、実はがんの局所の細胞をフローサイトメトリーで解析するという非常に困難な作業を実施していたのですが、それ自体も研究レベルの解析技術を企業導出して実用化を達成することができました。こうして私たちは研究を進めることができました。
次のスライドをお願いいたします。ほかにも幾つか業績がございましたので、簡単にまとめますとこのようなバイオマーカーを見つけたということです。
一方で、やはり私たちが研究をしている間に臨床現場は、併用療法、複合療法と呼ばれる複数の治療薬を用いる治療が展開されました。2ポツ目ですが、胃がんで一気に複合療法に展開されたことで、免疫的な表現型のみを解析していてはなかなか研究の進展が厳しいため、ゲノム解析を統合していかなければいけないと考えて研究を進めました。例えばRHOAが出ていると治療効果が悪いというようなことが分かってきました。次世代がんも終わりかけにはなってはきているのですが、そういうことが分かってきて、やはりこれは次の課題として次の事業で解析を進めていければと考えています。
一方で若手育成、先ほど若手の間石先生からお話がございましたが、私たちはこういったチーム型をつくることによりまして、一番下のところで、教授・部長への昇格が4名ございました。これは研究グループ中の先生方です。さらにいわゆる特任やポスドクといった研究費雇用の先生方の中から19名、20名近くの方が、大学で言いますと助教とか准教授というような承継ポストや、がんセンターでいいますと研究員といったようなポストを獲得されました。こういった意味でもやはりチーム型というのは一定の若手育成、人材育成にもつながったのではないかと考えております。
これを実施してきた中で私が気づいた点を次のスライドでお示しします。私は国立がん研究センターに所属しています。ここの中にもおられる堀田前理事長、それから中釜理事長からサポートを頂いて、リバースTRをどう進めるかというのが、私ががんセンターに着任したときからの課題でした。この点について、国立がん研究センター研究開発費でどういうモデルをつくっていくのが良いかと試行錯誤しました。
私も基礎研究者ですので、左側にあるようにplanして、do、check、actというPDCAモデルという、いわゆる従来型の研究を実施するのが一般的でした。しかし、その中から国立がん研究センター研究開発費を用いて、OODAモデルという、もちろんこの研究開発費はAMEDのような大型予算ではありませんので、スモールスケールではありますし、国立がん研究センター内で行っているものなのですが、このobserve、orient、decide、actというOODAモデルを回すことを実施しました。まさに観察というのは、私たちは直接患者さんを観察できる立場にはありませんので、そういった臨床の先生方の観察と私たちの今までの基礎研究の成果を合わせることで、状況判断し、ではこうしていきましょうということを決め、そして動くという、このサイクルをうまく回すことが、私たちがリバースTRとして行った研究がうまく回った一つの大きな理由ではないかと思います。
ですので、やはりここで私が強調したいのは、臨床医と密接なコミュニケーションが取れるかということが特にリバースTRでは重要になってくると思います。中釜先生はよくこの言葉を使われるので、若干真似た感はありますけれども、やはりオブザベーションから研究までシームレスに進めなければいけないと考えます。特に免疫のところで私は、ラッキーにも小さいスケールでしたが、国立がん研究センター研究開発費で回すことができていたので、それをがん研、また先ほど示しました広い組織に展開して回すことができて、一定の成果を上げられたのではないかと自負しております。
次をお願いいたします。これで何とか赤の下にいた、2割ぐらいの単剤で治療効果が得られる方は層別化できるのではないかというところまで進みました。当然この方々が余分な治療を受けないということは、免疫療法は当然irAEといった問題もございますので、それも避けられるという利点もあります。複合免疫療法ではかなり高いirAEの出現が分かっておりますので、そういうことも避けられることが分かります。
一方で、では残りの赤から黄色のところに持ち上がった人は、当然複合免疫療法が必要になるわけですが、それぞれの患者で変わってきます。当然抗がん剤を使うのか、VEGF阻害剤のような分子標的薬を使うのか、ということになってきます。今、分子標的薬もVEGF阻害剤に加えてマルチキナーゼインヒビターといったものもどんどん入ってきますので、今後、腫瘍微小環境に留意して併用療法の薬剤選択は進めていくべきなのかと考えます。つまりTRによる薬剤開発の戦略を立てるために、リバースTRから得られた情報は必須になってくると思います。そういった意味で免疫プレシジョンメディシンと私が勝手に名づけて、こんな大それた言葉をつけてはいるのですけれども、プレシジョン医療というのは、今後分子標的薬を探すというだけではなくて、免疫療法を含めたところまで展開していく、そういう素地をこの次の研究では進めていただきたいと思います。
次、最後のスライドになります。こういったことを含めまして、私が感じたこと、そして期待する内容を一枚でまとめさせていただきます。
研究開発、これは主にPDCAで行うわけだと思います。TRでは、とても重要なモデルだと思いますが、リバースTRではOODAが重要になり、そこから出たデータをもう一度TRに結びつけるような有機的な流れが必要になってくると思います。
そういう意味で、臨床医と研究者が今だとどうしても研究代表者1人、分担者というような立て方をしなければいけないと思うのですが、co-director型的なチーム編成でもいいのではないかと思います。これはある意味、physician scientistの育成という、大きく私たち日本が立ち後れた部分の育成にもつながるのではないかと思います。
そして3番目ですが、やはりチーム型は多様性が重要だと思います。私たちは幸い研究開発を開始する際にゲノムの先生方に参画いただくことでその当時は多様性を持っていたのですが、今であれば普通の組合せになっています。さらに今後は情報学とか、情報物理学というような呼ばれ方でも言われていますが、研究データをもとに現象をモデル化をするようなものとの融合するというようなところがリバースTRでは必要になってきます。さらに、そこからもう一度TRに戻すためには、こういったことがより重要になってくるのではないかと思います。
そして、複合免疫療法が進んでいますから、やはり免疫という縦切りではなくて、ゲノムであったり代謝であったりというような、そういったところを合わせたユニットでもチームでもいいのですけれども、つくっていただけるとうれしいなと思いました。
以上です。どうもありがとうございました。
【宮園主査】 どうもありがとうございました。
私の不手際でちょっと時間が押してしまいましたが、西川先生で何か今、質問はございますでしょうか。
がんの免疫療法、もうアメリカに行くとオンコイミュノロジーの話ばかりで、本当にそういう意味でも日本ではぜひこうした分野での若手を育成していただければと思いますし、分野融合は非常に重要かと思いますが、よろしいでしょうか。
それでは西川先生、どうもありがとうございました。
【西川委員】 ありがとうございました。
【宮園主査】 それではこれまでの御説明や御議論を踏まえまして、先ほど事務局から案を提示していただきました資料2-1に従いまして、検討事項について議論を進めたいと思います。ここにありますとおり、文部科学省において推進すべき研究についてというので3つ、そして研究推進の取組についてということで下のほうにまとめていただいております。
ちょっと細かく分けて議論しようかと思いましたが、時間があと30分ちょっとしかありませんので、まず「文部科学省において推進すべき研究について」ということ全体の中で、何か御意見等、あるいは追加するようなことがないかということも含めて御議論いただければと思います。それからこの後、「研究推進のための取組について」議論させていただきますが、これは一番上の次世代のPIとなる研究人材の発掘と支援ということまで議論いたします。その下の3の項目については第3回、次回御議論いただくことにしておりますので、上の四角の中の3つ、それから研究推進のための取組についての最初の次世代のPIとなる研究人材の発掘と支援ということで議論させていただければと思います。
繰り返しで申し訳ございません。この4つのことについて、もう御自由に御意見を頂ければと思いますので、よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。
【中釜委員】 中釜です。よろしいでしょうか。
【宮園主査】 どうぞ。
【中釜委員】 先ほど西川先生からお話があった中で、いわゆるco-director的なという提案がありました。これは恐らく臨床と研究が一体化したようなチーム型のやり方だと思いますが、そういう形ではかなり金額の大きな編成になってくるわけです。そうすると次世代がん事業として大きなプロジェクトを立ち上げ、その中でもいろいろなプロジェクトが立ち上がってくると思いますが、領域AからEまで考えても大きな課題になってきて、現在採択率が非常に厳しい中、限られた予算で進める中で、一方で若手から提案があったような、小規模でもいいのでたくさん門戸を広げてほしいという動きがあります。それから今、西川先生がおっしゃったようなチーム型で、これまでにないco-director的なということは少し相反すると思うのです。西川先生の御提案も、間石先生の御提案ももっともだと思いますが、予算規模として、実際にこれをやろうとすると、かなり総額が膨らんでくるイメージがあります。
提案として非常に重要だと思いますが、あまり言い過ぎてしまうと非常に採択が苦しくなるとか、言い出しにくいところもありますが、その辺りは書き込めるものなのかどうか。補足文でももし書き込めるのであれば、今言ったco-director的なものは、間石先生の門戸を広げるのと同時に重要かと思います。これに関して、次世代の技術支援の部分にも少し関わってくるかなという気はしていますが、野田先生、その辺りはどういうふうにお考えですか。何か答えになっていないような質問で申し訳ないですが。
【宮園主査】 野田先生、いかがでしょうか。
【野田委員】 ありがとうございます。
私の個人的な考えですけれども。基本的に、各々、重要と考えられる様々な事業を並べた上で、全体として望ましいデザインを描いて概算要求に向かっていくということだと、文科省の方からは御指導いただいているわけですが、実際には、それが最終的にどのくらいの資金サイズになるかは、現時点では様々な可能性があるのだろうと思います。それに弾力的に対応して、より良い事業を立ち上げるには、今は、二つの軸を設定して考えることが重要だと思います。つまり、まずは、今の次世代がんが果たしてきた有用な機能をさらに発展させるのが、一つの軸ということ。もう一つの軸は、ここまで次世代がん事業が果たせなかった部分を、どう取り入れていくかということで、この二つの軸を基本にして、予算サイズに合わせて、うまく全体を構築していくことが大事なのだろうとは思います。
そうすると、先ほどの若手の方から言っていただいたことも、あるいはもっと大きいところだと西川先生のような考えも、後者の部分に関する議論であり、この先に必要なものとしては何を取り込み、それがさらに発展させ、他事業への波及的効果も得るには、さらに何が必要なのかというディスカッションなのだと思っています。
その中で、先ほど出てきたR-TR(リバースTR研究)については、革新がんを見てもR-TRは取り込みにくい領域になっていると感じています。おそらく、革新がんと次世代がんを跨ぐような形の事業設定は難しいでしょうが、まずは革新がんも含めての議論を行い、整理をしていかないといけない部分ではないかと思います。
一方、今度は逆に、手前のフェーズの方、すなわち次世代がんへの入り口の部分の整理も重要です。そこはやはり文科省として、今、我々が見直してみるべきところなのではないかと感じます。そこは、もう基礎研究でやるべきでしょうと言うときに、今の基礎研究がその機能を果たしているのか。その基盤研究をやっている人が、ヒトがんを見るべきときに、実際に臨床の検体を見られるのか。そこは、まさに今日若手の方が言ってくださった話です。
この、基礎研究と次世代がんの連結部分、そこに関して皆さんの意見を集めて、それを整理して、きちんと機能するシステムを構築するといいのではないかと思います。
【宮園主査】 ありがとうございます。
チーム型というのはどうするかという意見があったのですが、西川先生のやっておられるチーム型はそういう意味では若手を取り込むことも含めてやっていただいたと考えてよろしいわけですね。どうもありがとうございました。そういった形も今後またどうするか、おそらくチーム型をどういうふうに考えるかというのは今後の大きなポイントになるのではないかと思います。ありがとうございました。
ほか、いかがでしょうか。
【岩﨑企画官】 宮園先生、一点よろしいですか。
【宮園主査】 岩﨑さん、どうぞ。
【岩﨑企画官】 野田先生、ありがとうございます。概算要求云々というのはこの検討会とは直接は関係なくて、この検討会の報告書はあくまでも先生方の忌憚のない御意見というか、こういうものがあったらいいなという御希望を頂いて、その中で我々が概算要求とか次の事業を立てつけるときにできることをやっていくということになるので。そこにあまり、予算が限られているからこれはどうせできないよねというのではなくて、こういうふうなものがあったほうがいいと言っていただければ、チャンスがあったらそれは我々も、事業なのか何なのか、とにかくそういうものを膨らましていくための糧になるというか武器になるので、ぜひともそこは忌憚のない御意見を、先生方の御自由な意見をどうぞ盛り込んでいただければと思います。
【野田委員】 分かりました。
【宮園主査】 では堀田先生。
【堀田委員】 ありがとうございます。
ちょっとまた視点が違うことでお話をしたいのですが。この「がん研究10か年戦略」は2014年にスタートしてしまして、来年度で8年目を迎えるんですね。そうすると、この10か年戦略自体がもう次のステップに入っていかなければいけないと。その途中にこの次世代の次のプログラムを考えなければいけないということなので、このプログラムの途中に10か年戦略が変わるかどうかは分かりませんけれども、もう一回立て直しが入ってくることを考えますと、ちょっと先を見越したことも突っ込んでおいて、次の10か年戦略にもそれが生きていくような議論がされるといいのかなと思いました。
当時、この10か年戦略ができる今から7年前8年前ですか、この頃にはまだ全ゲノムどころかパネル検査もないような、話題に乗っていないような時代で、プレシジョンメディシンという言葉さえもなかった時代が今日に至ると随分変わってしまって。途中で中間評価をして、いろいろな方向性をもう一回修正していただいたので、それで今日に至っているわけです。そういうことを考えますと、5年とか10年先にどういった研究が展開していくだろうかということを具体的にではそれが何だと言われても私では考えつかないのですけれども、恐らく今の領域についてはそんなに問題がないと私は思っているのですが、その中身をどうしたらいいかということについては少し長期的に見る必要があるかなと思いました。これが一点です。
もう一点は、この進め方に若干入ってしまうのですが、先ほどの西川先生のOODAという考え方は非常に魅力的な考え方で、臨床医も含めてリバーストランスレーショナルリサーチをどうやって進めるかという、これはチーム編成のことを言っているのだと思いますけれども。よく古矢先生がトレー、要するに希少がんはシーズ開発から次に応用研究に行って臨床開発に行く、こういうトレーを移していかなければいけないのだと。その時にはプレーヤーも当然変わってくる必要があるという、こういう一つの流れとこういう一つのチーム型研究の中でそれを解決できるか。この辺のところも面白い議題だと思いました。ありがとうございます。
【宮園主査】 どうもありがとうございました。
皆様、もう今日は自由意見になってもいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。事務局から頂いた宿題としては、先ほどからずっと資料2-1にありますけれども、次期プログラムの目的・役割ですとか、推進すべき研究領域・研究フェーズ、それから次期プログラムの目標、そして先ほどから話題になっております次世代のPIとなる研究人材の発掘・支援、こういったことについて、今日、何か御意見を頂ければということで、ずっと次世代のPIとなる研究人材の発掘・支援ということについては、今、御意見を頂いておりますし、それからリバースTRというものを次期プログラムにはどこかでやはり入れたほうがいいのだろうなということが御意見の中であったようにも思います。そのほか何かありましたら御意見を頂ければと思います。どなたか御意見はありますでしょうか。
【中山委員】 中山です。
【宮園主査】 どうぞ、中山先生。
【中山委員】 今、創発研究が始まって、かなり若い方たちは支援がインテンシブに入るようになってきた中で、この次世代PIとなる研究人材の発掘をこのがん研究の領域でどういうふうにアプローチしていくのかというのは、ちょっと課題かなと思っています。
実は私もアドバイザーをやっていて、一生懸命発掘しています。彼らをここに入れるのか。そうすると多分お金をたくさんもらってしまう人たちが出てくる。では重複は認めませんとすると、もしかしたら非常に優秀な人材はなかなかこのがん研究に入ってこなくなってしまうかもしれないということで、その辺、ちょっと具体的な話になってしまったのですが、その辺はどういう人たちを取り込んでいくかは少し考えておかないと。かなり200人以上、今年は採択になっているので。というふうにはちょっと思っています。
同じようにムーンショットが始まって、やはり大きなラボの人たちはそこに入り込むようになっていくと思っています。そうすると、まさに先ほどお話があった、非常に大きな規模でコラボレーションするところが始まるので、そこにもそれなりに大きなPIの人たちの若手が入っていってしまう。とすると、どこをターゲットとして、この若い世代の人たちを入れていくような仕組みにするのかということは考えたほうがいいかなと思って、今、考えていました。
西川先生のお話を聞いても、やはり臨床家と一緒にやるのはがんの研究にとっては非常に重要で、そこに入ってくる私みたいな基礎研究者も楽しく共に研究ができる体制になると思うのですが、それをきちんとアピールして入れ込んでいかないと、それこそ創発にどんどんいい人は取られていってしまうみたいなことになってしまうなと、ちょっと懸念しています。
以上です。
【宮園主査】 どうもありがとうございます。規則の上では創発研究は文科省の科研費で、次世代がんはAMEDの研究費ということで、重複規定はもちろんないとは思いますけれども、やはり審査される上ではエフォートとしてどれくらい次世代がんのほうにエフォートを割いていただくかというのは、今後審査するときには確かに考慮しながらということになるかと思いますが、大変重要なことだと思います。創発研究は結構一定の研究費が数年にわたって配分されますので、そういったものと競合しながら、優れた若手を発掘していくことは非常に重要だと思います。どうもありがとうございました。
ほか、いかがでしょうか。
【古矢委員】 古矢です。
【宮園主査】 どうぞ。
【古矢委員】 上から3つのどれになるかちょっとよく分からないのですが、宮園先生から自由に発言をとおっしゃっていただけたと思いますので。
次回に審議ということかもしれませんが、御相談いただく企業導出がどうしてもKPIのところで大きな存在になっているとすると、若手の間石先生からも御指摘があったかと思うのですけれども、今日お越しの堀田先生が関わっておられる固形がんの治療効果判定のためのガイドラインという、いわゆるRECISTのガイドライン、企業にいるとどうしてもこれが大きなポイントになって、要はどういうシーズを取り上げていくかということになると、エンドポイントとかサロゲートエンドポイントを設定しやすいテーマを優先しがちだなと思っています。
一方で、がんはステージによってステージ1から4という形で、その場合例えば転移があるかないかということが大きなステージ判定になるかと思うのですが、要は申請があるときに、例えば転移を抑えるというようなシーズ提案が出てきたときに、そういうものはとても魅力的には映るのですが、同時にエンドポイント、サロゲートエンドポイントをどう置くかということと、まして企業から見てそれが魅力的な提案に映るのかという、そこの葛藤が少しあるなと、ずっと思っておりました。
がん以外の研究も私は携わっておりましたけれども、その場合は疾患の定義がステージ1、ステージ2というふうな管理で、例えば子宮内膜症、子宮筋腫のようなものは薬剤の治療によってステージ3をステージ2に戻すんだと、明確でステージの定義と治療効果が合っていたのですが。がんの場合は必ずしもそうでないというようなことがあると、今は状況がどうなっているのか分からない部分はあるのですが、例えば転移とか脳転移とか、そういうテーマを提案いただいたときにとても魅力的なのですが、これをでは推すべきかというと、企業は取らないだろうなという可能性もあるし、悩ましいなと思うところで、何の提言にもなっていないのですが。すいません。
推進すべき研究領域として、例えばどうしてもエンドポイントの設定がしやすいようなシーズが選ばれがちなのですが、この次世代がんとして本当に基盤的なところ、例えば脳転移をいかに抑えるかというようなことについても取り上げていくような視点もあるべきなのかなと。ちょっと悩んでおりますというような。どこでどうしていいかよく分かりません。
【宮園主査】 野田先生、いかがでしょうか。
【野田委員】 まさに、いつもきっぱりと明解なことをおっしゃる古矢先生が、今述べられた感想は、議論すべきポイントをよく表していて、ここでいい題材になると思います。導出・医療実装という出口からの評価だけで、次世代がんの入り口までを決められるかということだと思います。
今、おっしゃったように、例えば「転移抑制剤の開発」というと、もう我々の評価は、駄目だ、それは導出できないよという結論になりがちです。けれども、それが、がんのバイオロジーにとってどれだけ重要か。そのバイオロジーのキーモレキュールは、それをコントロールするポイントになるか。というところを見て、その価値があるかどうかを判断すべき部分が、やはり入り口における評価では必要になるのだと思います。
ですから、今、糖尿病などに対する創薬とがん創薬について、その結果における違いをおっしゃいましたが、国内にあっては、あるいは次世代がん事業においては、そういうメジャーなファーマに直接導出することが考えられない研究課題は駄目だという考え方は、やはり適切ではなく、それは、一旦、脇に置く必要があると思います。例えば今、FDAで承認される抗がん剤の半分以上が、最初のシーズ段階での開発はベンチャーで開発されているものです。そうした海外のシステムは異なり、ベンチャーが果たすべき機能が、なかなか存在しない日本においては、もっと積極的に光るバイオロジー、分子、そしてシーズを拾い上げるシステムをつくらないといけないと思います。それが次世代がんの入り口のところのシステム構築において、何かアイデアとして生きないかなとちょっと思います。これは古矢先生の悩みを、逆にこちら側、すなわち基礎研究者の側から覗くとそういう話になるということです。
【宮園主査】 ありがとうございます。なるほど。
【野田委員】 今、支援班でも導出の支援もやっていますが、直接の導出はまず難しいです。企業はほとんど共同研究を要請してきます。そのため、共同研究でやるべきことと、この次世代がんでやっていただくことを、これはもう本当に古矢先生がいつもPOとして指導されていらっしゃるところですが、そのミシン目をきちんと引いた上で、両方が助け合う形で進むような形が良いと考えて、それを基本的スタンスとしてやっています。
しかし、今度は共同研究のところで、企業のほうは、大きい企業であればあるほど、それがすばらしいシーズになり得るとなると、知財の問題などを考えて、ある時点で、そのシーズの導出を受けるよりは、改めて自分たちで取り直して物質特許を取るという道を選ぶというパターンが多く見られます。古矢先生、そうですよね。
それを考えると、古矢先生の言われた「分類」に基づく評価だけでやっていたら、やはり、なかなか有望なシーズも、そして有望な若手人材も育たないように思います。先ほど、文科省の創発的研究事業の話も出ましたが、次世代がん事業には、そういう、がんをやってみたい、がんを理解してみたいと考えてくれる研究者にとって、がん研究への入り口になり得る場所も設定しなければいけない。それも、次世代がん事業の大切な役目なのではないかと私は思うのですけれども。古矢先生、違いますか。
【古矢委員】 おっしゃるとおりで、悩ましいと申し上げました。
【宮園主査】 大変悩ましいです。今、先生のおっしゃったとおりで、POCを取るために抗体を作れと言って、作ると、企業は早く言ってくれればうちでちゃんとやるから作り直しますというところがあるようで、今、大きな会社はなかなか導出が難しいですよね、野田先生。
【野田委員】 そうです。その支援している先生方と話しているときに、やはりすごく大事なのは、初めから持ち込まれた標的に抗体ができたら、それを最適化したら患者さんに使えるようになるなんてことはほとんど起きないわけですから。そこでPOCがまだぼんやりしているものでも、それを標的として取得した化合物や抗体を使って、そのPOCをクリアにし、新たなバイオロジーへの展開を見せる能力は、企業にはなくて、研究者にしかありません。その点で、やはりPOC取得と阻害剤探索のキャッチボールは次世代がんの最大の特徴だと思います。そうやって、「三角関係」と言うと悪いイメージになってしまいますが、POの元で、研究代表者と、そうした共同作業をやり続けていけば、やはり、先ほど言ったように大きい製薬企業にとっても、非常に魅力的な新たな創薬の提案ができるのではないかと思っています。皆さん、大変に優れた研究者ですから。
【宮園主査】 ありがとうございます。ほか、いかがでしょうか。
やはりそれと、私があまりしゃべってはいけませんが、この次世代がんは支援班とかですごくいろいろな、自分の研究室だけでやってもなかなかうまくいかないことを支援していただくことが非常にありがたくて、それによって若い人でも支援班の支持を頂いて、自分の研究を発展して創薬に結びつけることができることが非常にありがたいと。次期プログラムにおいても支援班で新しいそういったシステムを取り入れていただくことで、僕はちょっと書いたのですが、次期次世代がんはそういう支援班があることによって、もっと新しい視点の革新的な治療法に関する研究とか、そういったものが出てくるような基盤ができると非常にありがたいと思っています。
そういう意味では、私もAMEDのほかの事業を見ていますけれども、次世代がんのシステムはほかのテーマにも非常に波及効果があるのかなと私は自負しているというか、支援班のおかげですが、そういう形になってきているのではないかと思っております。それを今回の事後評価票の暫定案にもちょっと書かせていただきましたが、そういった形で進められればと思います。
島先生、評価委員長という立場もございますが、何か御意見はございますでしょうか。
【島主査代理】 先ほどの若手の研究者の声で、特になるほどな、と思ったのは、40歳だと若手枠がなくて、年配の先生と戦うのは現実的に難しいという意見でした。審査をしていると、そういうところがあるのではと思うことがありました。
若手枠で出している場合、大きなラボの中の例えば助教であるとかの方はそれほど困難を感じないと思いますが、一方で、そういう人たちが例えばPIとして一旦外に出て、若手枠から外れてしまうと、今までのボスから離れて自由ですが、新しい研究を立ち上げてものになるには、やはりちょっと時間がかかると思います。そういう、今までのボスとの関係を断ち切って、自分のオリジナリティーを出した、地方に行ってPIになったそういう人を何か助けられたらいいなと思うことがありました。
うちは地方だということもあるかもしれませんが、地方でも例えば若手でPIなんかでやっていると、特に野田先生のところの支援班に非常に助けられて、いろいろ自分たちで全くできなかったことができるようになり、すごくエンカレッジされて良いと思いました。そういう意味では、大きなラボよりもちょっと小さなところで独立したPIに対して、多めに光を当てていただくといいかなと思いました。
以上です。
【宮園主査】 ありがとうございます。そうですね。
あと、次回までに考えておいていただきたいと一つ思ったのは、今日、希少がんと難治がんの話が出てきました。私、今回の次世代がんで時々発言させていただくのですが、アメリカのNCIはRASイニシアチブというものを打ち出して、それで6年ほど前にそのプロジェクトが出たときに、僕はこれは成果が出ないだろうなと思いました。恐らく、例えばこれは次世代がんでやったら3年たっても成果が出ないというので、いい点をつくというのはなかなか出さないのではないかなと思いながら見ていたら、1年半ほど前、NCIとAACRのシンポジウムに行ったら、結構製薬メーカーがどんどんRASの新しい治療法を出してきていて、すごいなと思いました。
次期プログラムの目標について、例えば難治性がんについてもっと幅広く募集するような取組をやるかとか、あるいは希少がんについて何かそういった取組をするかという、ちょっと今までやってこなかったものを考えてはいかがでしょうか。まあ難しければもうよいと思いますし、予算規模によってなかなかそこまでは手が回らないかもしれませんが。次期プログラムで何か今回のプログラムでやらなかったような新しい難治性がんについて特に少し柱を立ててはどうかとか、あるいは希少がんについて考えてはどうかというのも、ちょっと皆様、頭に入れていただいて、次回までに御意見を頂ければと思いますが。野田先生、それはどうでしょうか。
【野田委員】 まさに今、全ゲノム解析をやって、更なる標的が見つかっていくにしても、最終的に、有効な治療の標的分子が存在するがんは、全てのがんの15%なのか、30%なのかというところになっていて、その15%と30%のギャップにはRASがあって、変異RASが標的となり得るか否かという部分が大変に重要な部分になっています。このRASの標的薬は、最初は、フランク・マコーミックのシステインへの変異を標的となる薬剤の開発から始まりましたが、その流れは、アカデミアにも公開され、戦略の基礎にあるサイエンスが理解できる形で開発が進みましたが、今や、システイン変異以外の多くのRAS変異を標的とする数多くの薬剤の開発が進んでいて、これらの臨床試験の結果がASCOで次々と発表されていますが、AACRでの発表を幾ら聞いても、もう治験が始まろうとしているシステイン以外の変異RAS蛋白に対する薬のメカニズムは、全く外に出さずに会社が開発を進めている。そういう状態ですよね。
【宮園主査】 そうですよね。
【野田委員】 そうなったときに、確かに希少がん・難治がんは大事だと思います。でも企業は、多くのがんに関して、これだけ多くの患者さんがいるから、すなわちマーケットが大きいから、その中の治る患者さんにだけ届ける薬剤を開発すれば良いというスタンスで開発を進めているわけです。治るものと治らないもの、先ほどの西川先生の言われたことにもつながりますが、我々次世代がん事業にとっては、治るものと治らないもの、そのどちらもが大切なのだと思います。例えば、全く同じK-RASの変異が、これだけ多くの患者さんに存在しますが、ようやく、有効な標的薬が手に入ろうとしている今、各種のマーカー解析を通じて、同じ変異を持つがんの患者さんの中で、標的薬が効く方と、効かない方を解析して、また新たな標的の探索に戻っていくという仕事は、やはり次世代がん事業ならではの研究であり、先ほどの難治がんあるいは希少がんも含めてやっていくのは大事だと思います。
【宮園主査】 ありがとうございます。
【野田委員】 どうせ見えないところじゃないですか、これから進むところは。
【宮園主査】 そうですね。
【野田委員】 いま見えないところはどこなのか。そこは、どうしたら見られるのかという枠組みをここで皆さんと考えるのが一番いいのかなと思います。
【宮園主査】 ありがとうございます。
すいません。司会の不手際でもうちょっと議論の時間があるかと思ったのと、それから事務局からはこの推進すべき研究の3つの課題と次の取組について1つ目について、きちんと順を追って議論するようにと言われていたのですが。アトランダムに皆さん、思いついたことをしゃべっていただいて、これを事務局がまとめるのは、清家さん、大変だと思いますけれども、次回もあるということで、今日もし議論が不十分だったところとか何かありましたら、また次回そこはお願いしたいということで。次回は研究推進のための取組についての下の3つについて議論する予定ですので、その時また、今日議論し残したことをできればと思いますが、よろしいでしょうか。
あと、言い足りなかったことは事務局に直接メールでお知らせくださいという、私へのメモ書きが書いてございます。
ということで、時間が迫ってきましたので、事務局から連絡事項等をお願いいたします。
【清家係長】 事務局です。
本日は貴重な御意見を頂きありがとうございました。メールで意見を頂きましたら、事務局でまとめまして次の検討会に生かすような形にしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
次回の検討会は3月23日の13時から1時間を予定しております。日程につきましては決まり次第、御連絡申し上げます。よろしくお願いいたします。
【宮園主査】 分かりました。次回は1時間ですね。
【清家係長】 はい。
【宮園主査】 分かりました。
すいません。あと二、三分残っておりますが、何か追加で御意見のある方はおられますでしょうか。よろしいでしょうか。
どうもありがとうございました。それでは2時間、本当に皆様、熱心な議論をありがとうございました。本日の議事については以上です。お忙しい中どうもありがとうございました。これで終了させていただきます。
―― 了 ――
研究振興局 研究振興戦略官付