マテリアル革新力強化のための戦略策定に向けた準備会合(第1回)議事要旨

1.日時

令和2年4月27日(月曜日)

2.場所

開催方法:書面審議

3.議題

  1. 外部有識者ヒアリングについて
  2. オブザーバー府省ヒアリングについて
  3. 今後のスケジュールについて

4.出席者

委員

(外部有識者)
稲垣委員、榎委員、大野座長、小野山委員、片岡委員、川合委員、川﨑委員、小池委員、佐藤委員、関谷委員、十倉委員、中村委員、橋本座長代理、松岡委員、三島座長代理、村山委員、山岸委員

(文部科学省/経済産業省)
村田委員(文科省)、飯田委員(経産省)、髙田委員(経産省)

 

5.議事要旨

マテリアル革新力強化のための政府戦略策定に向けた検討について、外部有識者およびオブザーバー府省よりヒアリング資料を各委員に送付し、書面にて意見および質問を提出頂いた。委員からの意見および質問と、それに対する回答は以下の通り。

【議題1】外部有識者ヒアリングについて
<資料2-1 日立製作所発表資料に対する意見・質問>
○  4ページ目、材料探索期間の短縮化と低コスト化を目的とする。エンジニアリングDBと材料DBを統合したデータ駆動型の材料探索を行うという記載があるが、異分野融合、公的研究機関によるDB用データ取得、高度な分析装置群の利用、など広範囲に亘る提案であり、具体的な実施項目や体制を定めるのは困難が伴うか。(小池委員)
(回答)
ご指摘の通り、具体的なエコシステムの構築は容易ではなく、今後、政府や公的機関を中心とした関係機関との協議が必要と考えます。(日立製作所 宮崎克雅研究開発グループ 材料イノベーションセンタ主管研究長、品田博之基礎研究センタ主管研究長(以下、日立 宮崎、品田))

○  4ページ目の最後の段落について、NIMS等公的機関に期待していただき有難うございます。ぜひご期待に応えるよう努力したいと思います。一方で、公的研究機関は本件のような単なるサービスだけでなく、レベルの高い論文を数多く出すこと、産業界と大型の共同研究を行うこと、なども重要なミッションとして求められております。産業界におかれては公的研究機関を使うという観点だけでなく、一緒になって我が国データプラットフォームを作っていく、との視点を持っていただくことが大変重要と考えます。各社が個別でデータを持つより、そのほうがコスト的にも極めて有利であると考えます。(橋本委員)
(回答)
今後、国際競争力強化が求められる産業界において、ノウハウという観点も含めた上で、新たに取得が必要なデータに対してコストの指標で定量化が図られると考えられます。そこで、特に非競争領域となるデータについては、産業界も公的研究機関と一緒になって、データベースプラットフォームを作ることが加速されると思われます。このような取り組みの例としては、革新型蓄電池の分野における産業界と公的研究機関による研究開発の事例があります。(日立 宮崎、品田)

○  4ページ目、各種の材料性能に関するDB、エンジニアリングDBとプロセス・構造・物性を含むDB、材料DBが重要とありますが、これからの研究・開発を加速・低コスト化するための指針を書いた素晴らしい資料だと思います。お教え頂きたいのは、材料性能の定義とDBへの落とし込み方:性能を発現するための関係式等を集めたものになるのでしょうか。(山岸委員)
(回答)
我々が考えるエンジニアリングDBは、各材料に対して、各種の材料性能、すなわち製品性能に直接的に影響しそうな材料の因子を格納したDBになります。このエンジニアリングDBとプロセス・構造・物性を含む材料DBに対して、機械学習等の手法を適用することにより、両者の相関関係を導き出せるものと考えます。なお、これらのDBを用いて得られた各種知見等の取り扱いについては協調・非協調領域の観点から、検討が必要と考えております。(日立 宮崎、品田)

○  4ページ目、製品仕様に基づく製品性能などについて、「製品性能」は単なる各材料の性能の線形和ではなく、相性などの組み合せにも依存し、組み合わせによる性能の影響まで含めたDB構築も重要ではないでしょうか。また、データの流通で儲ける仕組みの実現に必要な技術基盤(ブロックチェーンや暗号化、モデルやデータの秘匿化技術など)も重要な開発課題となると思いますが、如何お考えですか。(山岸委員)
(回答)
ご指摘の通り、製品性能は相性等の組み合わせに依存いたします。材料のユーザ企業では、製品性能を左右する各種の因子に分解して、求める材料の性能(材料性能)に落とし込み、適切な材料をより速やかに探索する技術が必要となります。製品性能から材料性能への落とし込みは競争領域であり、各ユーザ企業が独自に保有する技術と考えます。
また、ご指摘されている、材料に関するデータの流通で儲ける仕組みを実現する技術基盤については、その前提となる材料に関するデータの流通ビジネスの成立性を十分に検討すべきと考えます。なお、ご指摘の通り、材料に関するデータの流通にあたってはセキュリティも重要であり、他のビックデータを取り扱う上で必要とされ、開発が進められている暗号化技術等が基盤技術として適用できると想定されます。(日立 宮崎、品田)

○  5ページ目、材料DBおよびエンジニアリングDBによるデータ駆動型材料探索のコンセプトについて、エンジニアリングDBを素材メーカが共有できる事は大変に重要です。従来、素材データがエンジニアリングに吸い上げられる傾向が強かった事が、我が国の産業が伸びきれない一因であったと考えています。(小野山委員(代理:本間様))
(回答)
今後は材料のユーザ企業と素材メーカを含めて、非競争領域に対して、ここでいうエンジニアリングDBを共有できるような仕組みを作ることが必要かと思われます。特に、今後、新たに開発される材料に対するDBは、非競争領域に位置付けられる範囲が大きいと期待され、また、アカデミアとの共創が期待される分野と考えます。(日立 宮崎、品田)

○  6ページおよび9ページ目、データ駆動科学について、DBを活用し計算科学援用で疑似固体電解質開発に成功したことは素晴らしい。そのうえでデータ駆動科学の活用を提唱しているが、より先端的なデータ科学手法を活かすためにはどのようなスキームを期待するか。自社でデータ科学者を持つのか、大学・国研等との連携(期待する役割)により行うのか、自社研究者へのリカレント教育の機会などご提示いただきたい。(大野委員)
(回答)
ご指摘のように、データ駆動科学を活かすためには、一定量の技術者人材の確保がキーになると考えます。このため、自社の材料技術者に継続的なデジタル教育を通じて、材料もデジタル技術も理解できる人材育成に取り組んでいるところです。加えて、より高度なデータ駆動科学の活用にあたっては、大学・国研等に大きく期待するとともに、協働を図っていきたいと考えています。(日立 宮崎、品田)
 
○  8ページ目、これからの材料開発の実現に向けたさらなる提言について、このスライドの下部に指摘されているように成果帰属についてのルールを、場合分けをしつつ整備しておく事は必要と考えます。(片岡委員)
(回答)
ご指摘の通りと思われます。今後、産学官でのルール作りが必要と考えます。(日立 宮崎、品田)

○  8ページ目、ユーザ企業からみた新しい革新材料の開発のポイントにプロダクトの製品性能を支配する革新的な性能を持つ材料の開発には、プロセス、材料構造および材料物性、さらには材料性能の相関関係の把握とメカニズムに基づく理解が重要とありますが、製品性能は企業の秘密情報であるので、それに関するオープン可能な情報をオールジャパンのマテリアル研究開発体制の中でどの程度共有化できるかが鍵になるのではないでしょうか。国プロで実施する場合は、開発するモデル材料を設定して、それに関する結果を共有するのが一案と考えます。(村山委員)
(回答)
ご指摘の通りと思われます。前述のように、特に、非競争領域に対しては、公的研究機関を中心にした研究開発と、徹底した情報共有が国際競争力向上に有効かと思われます。特に、今後、新たに開発される材料に対するDBは、非競争領域に位置付けられる範囲が大きいと期待されます。(日立 宮崎、品田)

○  10ページ目、材料DBの構築の必要性、プラットホームの整備に向けてという部分について、御社としてDBやプラットホームへの取り組みの現状はいかがか。また、人材の確保に関しての特別な対策を進めているか。(榎委員)
(回答)
モノづくりに関する全てのDBやプラットフォームを独自に整備することは、コストに加え、収録するデータの多様性の観点などから現実的ではないと考えます。特に、非競争領域に対しては、公的機関のDBやプラットフォームの活用が必要と想定されます。このようなDB構築には積極的に参画していきたいと考えております。
また、人材の確保に関しては、一定レベルのデジタル技術をデジタルリテラシーと定めて、教育を通じて、材料技術者のデジタルリテラシーの向上を図っています。また、素養のある材料技術者には、より深い継続的なデジタル教育を通じて、材料もデジタルも理解できる人材の育成に取り組んでいます。(日立 宮崎、品田)

○  10ページ目、データ駆動型の科学と併せて、理論、計算、そして計測を含む実験科学連携を支えるプラットフォームの強化が必要とのご意見を支持します。既存の共用事業を強化する上で、民間保有設備や装置の共用事業への参画のご提案は、大変興味あるところです。実現に向けての制度面の整備が必要とのことですが、具体的には何が障害になっていますか。(川合委員)
(回答)
民間保有設備の共用化推進において、法令による具体的な制度上の障害は感じません。現時点でほとんど民間設備の共用がない理由は、民間側にそもそも装置を共用しようという発想が思い浮かばないこと、そして共用事業に民間も参画可能ということが認知されていないということがあると思います。加えて、利用者を技術的に支援するエンジニアがコストと認識されている点もあるかもしれません。したがって、民間の装置共用が広く認知され、企業にとって何らかの中長期的なメリットが感じられ、また、それを支援する制度設計やその広報をしていただくことを提言させていただきます。
以下は、企業にとっての中長期的なメリットの一例です。最先端かつ高度な装置には、高度な技術を持った育成に時間のかかるエンジニアの存在が欠かせません。一方、民間の装置には、経営状況等により、短期的な視点で設備の廃棄やエンジニアの異動が実施されます。そのような措置が取られてしまった後、再びその技術が必要となった場合、特に人材はすぐに育成できません。共用事業により、施設の安定運営に加え、優秀な技術者の確保や後進の育成を支援していただけますと、国にも企業にもメリットがあるのではないかと思います。(日立 宮崎、品田)

○  10ページ目のまとめの部分、プロダクト・システムの製品性能を実現する材料性能に関するエンジニアリングDB、 プロセス-構造-材料物性の相関関係の導出を実現する材料DBが必要とありますが、素晴らしいご提案と思います。私も今後国の共有財産となる新しいDBを構築していくことは不可欠と考えます。一方で、これまで企業で培ってきた膨大なデータやノウハウ、知財を共有することはやはり難しいでしょうか。新たにDB化するとともに、各企業ですでに保有する膨大なDBを統合することでさらに世界的に優れた競争力を早期に実現できるのではないかと期待します。(関谷委員)
(回答)
資料にも示したように、各社の事情もあると思われますが、これまでに企業で培われてきたノウハウを含むデータを直ちに開示するのは容易ではないと思われます。一方、非競争領域について、公的な研究機関等を中心に、材料DBに加えて、エンジニアリングDBを構築することが、データ駆動型の材料開発および製品開発を実現する上で、現実的な解のひとつであると考えます。弊社を含めた産業界は、非競争領域に関するDB構築については参画しやすいように考えます。(日立 宮崎、品田)

○  資料全般について、材料探索期間の短期・低コスト化の実現を目的に、データ駆動型の材料探索を活用する場合、各種の材料性能に関するデータベース(DB)、エンジニアリングDBが必要との考え方に共感します。ただ、それをどこがどのように主導するのかが問題で、最終製品に近づくほど企業から発信はなくなるのが現状だと考えています。(中村委員)
(回答)
ご指摘の側面もあるものと思われます。一方、材料のユーザ企業は、製品仕様を実現する際に、個々の製品仕様を各構成材料に求める材料性能に落とし込む必要があります。今後の研究開発を更に短期間で行うためには、材料のユーザ企業は、この材料性能を、材料メーカと共有できるレベル、すなわち、非競争領域となる材料性能にまで分解することが求められると考えます。このような非競争領域のエンジニアリングDBの構築により、材料性能を、材料のユーザ企業と材料メーカが共有することができます。これにより、材料のユーザ企業は、製品性能を革新する材料探索に要する時間を大幅に短縮できることが期待できます。なお、データベース構築にあたっては、ルールづくりも含め、公的機関主導で行うことにより、産学官の参画を得やすくなるものと考えます。(日立 宮崎、品田)

○  当該資料は新材料創製に係る時間と投資額をいかに縮小するかに関してデータ駆動形手法を積極的に導入することの重要性を示している。その内容はすでにこれまでの準備会に置いて提示されており、1)材料科学と情報工学を融合する材料開発システムの先鋭化の必要性、2)特に機能性材料や高分子材料などの分野においてはデータベースの構築が産官学のコンソーシアムの形で具現化し始めており、その高度化が急がれる、3)材料開発のためのシステム構築には産官学、特に産業界からのデータの供出が望まれるところであり、知財の保護や供出にあたってのインセンティブ付与などのルールづくりが急がれる、そして4)供出されるデータの記述方式のシステムごとでの一元化の必要性などが示されている。(三島委員)
(回答)
我々の資料の趣旨は、委員のご指摘のとおりです。さらに、材料ユーザが製品性能から落とし込む材料性能にまで踏み込んだエンジニアリングDBを非競争領域に位置づけ、公的機関が主導して、エンジニアリングDBおよび材料DBを構築することが必要と考えます。この取り組みにより、材料メーカとの協業が促進され、革新製品の開発期間の更なる短縮につながるものと期待しております。(日立 宮崎、品田)

<資料2-2 島津製作所及び早稲田大学発表資料に対する意見・質問>
○  2ページおよび8ページ目について、分析装置に関しては、「統合データ解析プラットホーム」の実現に向けて開発を行っているとありますが、材料解析(材料試験機、疲労試験機、硬度計等)に関しての総合システムの取り組みはいかがでしょうか。また、これら装置に関してもロボット技術を積極的に利用した実験・計測の自動化について、産学共同で取り組む必要があると考えます。(榎委員)
(回答)
材料解析データは材料の物性評価に必須であるため、統合解析プラットフォームに取り込む予定です。また、マテリアル開発では膨大な分析計測データが必要であるため、ロボット技術による実験・計測の自動化もマテリアル開発の加速に大切な取り組みです。ロボット技術に長けた機関と共に実験・計測装置の高度化に産学協同で取り組むプロジェクトも必要であると考えています。(島津製作所 北岡及び早稲田大学 一村)

○  8ページおよび16ページ目について、分析装置群を連携させ、共通データフォーマットを用いることで取得データの共有化を実現するとありますが、共通データフォーマットとサプライチェーンを跨ぐシステム作りの必要性は確実であり、これを構築することでAI分野のマイクロソフトになれるかもしれません。(小池委員)
(回答)
サプライチェーンを跨ぐシステム作りは高品質・高効率のマテリアル生産を実現する上で重要な取り組みであると理解しており、共通データフォーマットの普及が進めば実現も可能になるかと思います。そのためにも、今回取り組む共通データフォーマットの標準化に各方面からご関心を持っていただき、それぞれのお立場からのご理解とご支援を頂くことを期待しております。(島津製作所 北岡及び早稲田大学 一村)

○  8ページから10ページ目について、統合データ解析プラットフォームについて、統合データ解析プラットフォームを構築するのに共通データフォーマット開発が重要です。単にハードではなく各使用者の認識を共通化することを必要とします。(中村委員)
(回答)
有効なデータ活用を実現するには、共通データフォーマットによる測定値の共有だけではなく、サンプルの前処理方法や分析条件などのメタデータも必要です。また、AI活用においては語彙の共通化も重要となります。このように使用者が必要とする統合データ解析プラットフォームに対する理解を深めながら共通データフォーマットの設計を進めることが大切であると考えています。(島津製作所 北岡及び早稲田大学 一村)
 
○  10ページ目、統合データ解析プラットフォーム実現の要点について、計測装置からデータを共有させるシステムにつき、Open/Close戦略の観点から、規格標準化は極めて重要です。カスタマーが自身のポリシーに従ってセキュリティレベルを独自に設定するシステムが不可欠となり、その基準を明確に定義できないと、機器の購入は差し止めざるを得ません。(小野山委員(代理:本間様))
(回答)
データの共有に関しては、共通データプラットフォームに求められるセキュリティ要件を理解しながら共通データフォーマットを設計する必要があると考えています。具体的には、医薬品の製造現場で用いられる計測分析データには厳格な管理が求められており、機能実行の権限をユーザごとに設定するセキュリティ管理機能を実現しています。こうした製薬分野向けのデータ管理システムの知見や開発実績を水平展開し、マテリアル分野でのセキュリティ機能を実現したいと考えています。(島津製作所 北岡及び早稲田大学 一村)

○  10ページ目について、国際競合他社間で、データフォーマットを統一することで、情報共有が有効になる重要な活動です。XMAIL 形式で共通化をされると記載されておりますが、国外メーカのデータをコンバートすることもできますか。総合力を期待するのであれば、国内外の計測機器からのデータ全てを取り込む可能性を視野に入れて置かれるべきと考えますので、ご教示ください。(川合委員)
(回答)
国外メーカのデータをコンバートすることの重要性は認識しています。2020年度から「戦略的国際標準化加速事業」でJIS開発から着手する予定ですが、海外メーカを巻き込みつつ並行してISO化を前提としたVAMAS活動を推進し、国内外の計測分析装置からのデータ全てを取り込むことを視野に入れて進めていく考えです。(島津製作所 北岡及び早稲田大学 一村)

○  11ページ目、共通データフォーマットについて、共通データフォーマット作成の意義は高いが、マテリアル分野では国産以外の計測・分析機器も数多く使われている。データフォーマットの作成においては海外企業も含めて考えて行かないと汎用性がでないのではないでしょうか。(片岡委員)
(回答)
ご指摘のように、海外製の計測分析装置の出力データも共通データフォーマットの対象にしないと片手落ちになります。まずは国内の計測分析装置メーカを主対象にしたJIS開発から着手しますが、海外メーカにも協力者を拡げるべくISO開発を並行して進める計画です。(島津製作所 北岡及び早稲田大学 一村)

○  16ページ目、共通データフォーマットにより実現できることについて、日本の強い計測・分析機器のデータがデジタル化され、解析できるようになる意義はとても大きいと思います。まずは分析機器のセキュリティの確保、また、そのデータ解析ソフトの使い勝手も重要だと思います。各機器のデータはもちろんですが、統合解析ソフトの使い勝手も意識した設計にして頂きたいと思います。また、企業における分析機器は、海外メーカ製品が多いのが実情です。本構想が活用されるためには、海外含めた機器への対応を想定した戦略も必要だと思います。(山岸委員)
(回答)
海外を含めた機器への対応に関しては、JIS開発(国内計測分析装置メーカ中心)からISO開発(海外計測分析装置メーカの取り込み)への展開を構想しています。これは、合意が形成しやすい国内メーカを主対象としたJIS規格原案をもとにISO展開を図る方が、ISO規格の骨格を作りやすいという考えに基づいています。
また、統合解析ソフトの使い勝手を意識した設計も重要なご指摘です。これまで、様々なウェブ環境上で取り扱い可能な共通データフォーマットであることが、ソフトウエアベンダーの参入を促進する必要条件だと考えて進めています。2020年3月に終了したNEDOプロジェクトでもその考えに基づいてウェブサーバー上でそれらの共通データを読み込んで動作するCPS型複合計測システム(共通データプラットフォーム)を試作しました。そのソフトウェアでは、目的に応じて注目すべきデータを抽出して束ねることができ、束ねたデータを市販のAI解析アプリケーションソフトに渡して解析することができております。ただし、現状では抽出条件設定やデータ抽出の速度等に影響を及ぼすデータフォーマットの課題があり、今後更なる応用展開を進めるためにも利便性の高い共通データフォーマットの開発を進めたいと考えています。(島津製作所 北岡及び早稲田大学 一村)

○  17ページ目、データフォーマットの開発と標準化についての取り組み状況について、広範な分析装置における進捗に大変感心した。P17に2023年度末までのプロジェクトが大括り化で終了と記載しているが、重要な取り組みに思える。インセンティブが効いて、計測装置メーカのリソースを割いての自発的な取り組みが連鎖する段階への課題などお教え願いたい。(川崎委員)
(回答)
NEDOプロジェクトは予定を早め2年目(2019年度)までの実施となり、その後継プロジェクトとして、経済省委託事業(戦略的国際標準化加速事業)を活用し、2020年度からNEDOプロジェクトの成果を踏まえたJIS開発を行う予定になっております。分析計測装置メーカからは、自社のリソースも投入する形で参画するとのお話を伺っています。共通データフォーマットの開発で各社・各装置の計測分析データが扱えること(協調領域の構築)で、計測分析装置のユーザ企業に魅力的な複合・統合解析用のアプリケーションプラットフォームの開発・製品化(競争領域の展開)が可能になることが、計測装置メーカのインセンティブとして働くものと期待できます。その意味でも、JIS開発(国内計測分析装置メーカ中心)からISO開発(海外計測分析装置メーカの取り込み)への展開が自発的取り組みを誘発するための大きな課題となると考えています。(島津製作所 北岡及び早稲田大学 一村) 

○  19ページから22ページ目、計測機器のデータ形式に関して、ご指摘のように計測機器のデータ出力形式をそろえることは、特にMIへの展開を考える際に極めて重要です。現在各社で異なるものをそろえていくことは、例えばNEDO事業などで誘導することは、国内企業の場合は可能かもしれません。しかし、計測装置に関しては海外メーカのものも多く、これら全体をそろえていくことを誘導することは無理があると思います。それより、各社の出力形式を統一形式に翻訳するといった戦略のほうが現実的であり、有効であると考えますが、いかがでしょうか。(橋本委員)
(回答)
各社の出力形式を統一的に翻訳する方式は、現在NIMSで展開されていますように、一つの進め方だと考えます。しかしながら、”自社のデータ構造・データ出力形式を開示することが難しい(公開に社内的な制約がある)”という計測分析機器メーカのお話も伺っています。そこで、①各社のデータ形式は秘匿したままで、共通データフォーマット形式に変換頂く(そのための変換用コンバータ作製に協力頂く)、②必要により(各社判断で)変換項目に「鍵」を設定することも可能とする、ことを提案しました。現在国内計測分析機器メーカのご理解・ご協力を得て進めていますが、この方式の方が(ISO化の推進において)海外メーカのご理解・ご協力を得やすいと考えています。(島津製作所 北岡及び早稲田大学 一村)

○  23ページ目、計測分析データのトレーサビリティ、信頼性、再現性の確保とありますが、計測分析データのトレーサビリティ、信頼性、再現性の確保は極めて重要な視点であると考えております。一方で、より多くの装置が高度化、高精度化し、さらに大量に扱われる中で、一つ一つの機器の計測精度のトレーサビリティを「リアルタイム」で取るのは極めて難しいと考えます。その具体的な方策はあるでしょうか。また国としてどのような方策が必要でしょうか。(関谷委員)
(回答)
一つ一つの機器の計測精度のトレーサビリティをリアルタイムでとることは極めて難しい問題です。現実的には、計量計測の3R(①繰り返し性(repeatability)、②再現性(reproducibility)、③信頼性(reliability))の観点で課題を深掘りすることが必要で、3Rに関係する各要素の測定不確かさへの影響度を評価することが第一ステップとなると考えています。例えば、計測分析装置の自動校正機能の増強と、自動校正による不確かさ低減評価などが、リアルタイムの計測精度評価に繋がるものと考えられます。
一方、今回の共通データフォーマットは、「完全可用性」の観点から様々な情報を計測分析データに付与し、サイバー空間で検索可能とすることを想定しています。従って、例えば自動校正からの経過時間に伴うスペクトル形状の変化の様相などをビッグデータ解析の対象とすることで3Rに係わる新たな情報入手が可能で、リアルタイムでのトレーサビリティ評価につながるものと想定されます。(島津製作所 北岡及び早稲田大学 一村)
 
○  当該資料は高品質なデータを取得するための分析・解析機器開発の重要性、また取得するデータを材料開発研究者が利用するためのシステムづくりに関する現状とあるべき姿を提示しています。前半は島津製作所、後半は早稲田大学からの資料提示であり、最先端計測分析機器に求められる研究者からの要望、種々の測定や分析において取得するデータに対する国際標準化への対応や規格化のための共通フォーマットの開発の必要性が述べられています。以上はこれまでに文科省によって運用されてきたナノテクプラットフォームでのノウハウを継承すべきであり、本資料は今後の最先端機器の共同利用システムにおける取得データの共用化へ向けた最新の取り組みです。(三島委員)
(回答)
最先端機器の共同利用システムにおける取得データの共用化構想は、日本学術会議におけるロードマップ2020の策定に際して、分析化学分科会(早稲田大学 一村が委員長)で提案し採択された学術大型研究区分1の課題(計画No.111、学術領域No.26-1)にも記載しています。そこでは、ご指摘の「ナノテクプラットフォーム事業」との連携も想定しており、ノウハウ継承に関しても今後検討を深めたいと考えています。(島津製作所 北岡及び早稲田大学 一村)

<資料2-3 日本材料技研発表資料対する意見・質問>
○  4ページ目、企業や大学の未活用技術を導入し、ファブレスで事業化について、技術導入段階でどれだけ成熟したものになっているかが鍵であり、開発要素がある場合の対応が難しいと思われます。ここをどう乗り越えるのでしょうか。あるいはそのような技術は放置するのでしょうか。VCとして支援するのでしょうか。(小池委員)
(回答)
ご認識の通りで、弊社ではある程度成熟した技術の社会実装を進めています。こと材料分野については、技術的にはかなり開発が進んでいながらも、社会実装の観点では有効活用されていない技術が、企業や大学には多数眠っていると考えているからです。一方で、そうはいっても程度の差こそあれ、どのような事業化にも開発要素はあるものですが、そのような場合は弊社で研究計画を立て、実際の作業は研究受託・試作受託の会社に依頼する形で実施しています。しかし、そのような方策をとるとしても、弊社での対応が難しい事案もかなりあるのは事実で、そのような場合は弊社としては残念ながら技術導入を見送っています。
弊社で見送った技術について、弊社が積極的に起業家人材とマッチングして、スタートアップを設立することまではしていません。開発要素がある技術の事業化を進める場合は、その技術に対して熱意のある起業家が主体的にチャレンジしない限りは難しく、弊社で形だけ整えてもうまくいかないと考えています。言い方を変えると、技術とお金だけあっても事業にはならず、志ある人がいてこそ初めてイノベーションは成功するものと考えています。
弊社の検討案件に限らず、熱意のある起業家がチャレンジするという場合には、エンジェル投資家またはベンチャーキャピタルとして、可能な限り支援を行っています。(日本材料技研 浦田社長)

○  7ページ目、大企業とスタートアップの連携を促進とありますが、今後、社会はこれまでの政策議論が白紙に戻る程に大きく変わります。企業群はその中で社会を最適化するために人、経済、資源、価値を有効活用しなければいけません。ベンチャーやファンドは、企業群のアンテナ、水先案内人として、社会のミクロな側面を良く掘り起こして下さい。(小野山委員(代理:本間様))
(回答)
ご助言ありがとうございます。ポストコロナの社会問題解決に貢献できるよう努めてまいります。(日本材料技研 浦田社長)

○  8ページ目について、御社のビジネスモデルは見方によっては化学材料を扱う専門商社のようにも捉えることができるかと思います。どこに大きな違いがありますでしょうか。また、“儲かる知財”は大手企業が欲しがると思いますが大学等から譲渡してもらう知財はどのようにデューデリジェンスされていますでしょうか。総じて、大手企業にはないベンチャーの起動力を活かした経営が差別化の源泉ということでしょうか。(関谷委員)
(回答)
専門商社と弊社の違いに関するご質問ですが、弊社はファブレスとはいえ、あくまで製造業です。そのため専門商社とは異なり、技術開発リスク・在庫リスク・製造責任リスクなどをとっています。
「儲かる知財」についてのご質問ですが、知財≒特許というイメージであれば、その考え方は材料分野では成立しにくいです。なぜならば、材料分野においては特許だけではモノづくりが成立せず、スケールアップする段階で蓄積される製造ノウハウや、開発マーケティングを通じて獲得される顧客の要求特性に関する情報など、事業化の過程で蓄積されるノウハウがあって初めて事業になるからです。大学等からライセンスを受ける特許は事業の中核の一つではありますが、そこに弊社の事業化活動によって蓄積される製造ノウハウや顧客情報等が付加されることによって、はじめて知財としての価値が生まれることになります。その段階まで至れば、「儲かる知財」として大手企業によるM&Aの対象になることはあると考えていますが、そうでなければ特許だけで価値がつくことはほとんどありません。こうした状況理解のもとに、弊社が技術のライセンスを受ける際には、まずは工業的な生産が可能かどうかを確認しています。現実に販売に至るニーズがあるかどうかは、顧客に評価してもらわない限りは判断ができませんし、今はニーズが無くても時代が変われば新たにニーズが生まれることもあるので、ライセンスを受ける段階では市場性についてはあまり気にしていません。このような判断は、現代日本においては、ベンチャーキャピタルでも専門商社でも大手企業でもできないと思いますが、1970年代~1980年代に石化コンビナートを完成させ、そこから川下展開して機能材料事業を次々に生み出していた30年前の化学企業であれば、どこでもチャレンジしていたことなのではと考えています。
弊社の差別化の源泉についてのご質問ですが、幾つかの理由により、長期的な視点で事業化に取り組めることだと考えております。すなわち、①株主にベンチャーキャピタルがいないため、短期的にIPOやM&Aなどの出口を求められることが無く、事業化までに10年~20年かかっても構わないという経営ができること、②事業化に向けた先行投資を外部資金に頼らず、自社事業の収益で賄えている(=黒字経営を維持していること)こと、③外部株主の比率が低く、経営者による迅速な意思決定が可能であることの三点です。なお、スタートアップだからといって、必ずしも機動力があるということにはならないと思います。スタートアップにおいても、複数のベンチャーキャピタルや事業会社が株主に入ると、必ずしもそれぞれの株主および経営陣が良しとする経営方針が一致するわけではありません。株主間の意見調整をする中で、大企業よりも意思決定が遅くなったり、経営方針がぶれたりすることも少なくありません。スタートアップであることが重要なのではなく、機動的な意思決定を可能にするような株主構成になっているかどうかか重要だと考えています。(日本材料技研 浦田社長)

○  資料全般について、とても素晴らしい取組みと感じました。材料ベンチャーはITベンチャーと比べてもその数が少なく、国内多く存在しません。様々な理由が考えられると思いますが、何がボトルネックになっているとお考えでしょうか。全般に資金調達の状況はいかがでしょうか。短期的な利益を求めるVCが多い中で、材料ベンチャーが生き残るために必要な国の制度として、どのようなことに期待されるでしょうか。(関谷委員)
(回答)
材料ベンチャーが少ない理由についてのご質問ですが、ベンチャーキャピタルからの資金調達が難しいことは大きな要因だと思います。材料分野の新規事業は、一般的なベンチャーキャピタルの存続期間(10年程度)と比較して、開発着手から黒字化までの時間軸が長い(10年とも20年とも言われる)と認識されています。そのため、少なくともIPOを目標とする場合、ベンチャーキャピタルによる投資回収は難しいと考えられています。これは日本に限らず米国においても同様であり、実際に米国のベンチャーキャピタルによる材料・化学ベンチャーへの投資リターンは、IRRで数%前半という統計もあります。このような状況では、金融投資家であるベンチャーキャピタルとして、他にもリターンの出る投資先が数多ある中で、あえて材料ベンチャーに投資する理由はありません。
材料ベンチャーによる資金調達に関するご質問ですが、上記の事情もあり全般的には難しさがあります。JSTやNEDOのベンチャーエコシステムも、基本的にはベンチャーキャピタルとのマッチングファンドが多いため、ベンチャーキャピタルが魅力を感じない材料系ベンチャーは、そのメリットを享受することがなかなかできません。
国の制度に関するご質問ですが、上記のような状況を変えるためには、ベンチャー投資の出口として材料関連の大手企業によるM&Aを一般化する必要があります。基本的には、スタートアップや大手企業が民間の自助努力で取り組めば良いことだと思いますが、国の施策としてできることがあるとすれば、国内スタートアップを企業が買収する際に、何らかの税制上の優遇措置を設けるとよいのではないかと考えます。(日本材料技研 浦田社長)
 
○  資料全般について、当該資料は2015年設立のベンチャー企業からの紹介資料であり、今回のマテリアル革新力強化についての構想の中でスタートアップ企業を育てることは国際競争力強化にとって必須です。(三島委員)
(回答)
ご提言ありがとうございます。マテリアル分野の国際競争力強化に貢献できるよう努めてまいります。(日本材料技研 浦田社長)

<資料2-4 JACI(新化学技術推進協会)発表資料に対する意見・質問>
○  7ページ目、JACIの人材育成・確保に関わる取り組み、化学・デジタル人材育成講座について、技術マネジメント教育は始まってから年数が経ちますが、化学×デジタル人材の育成に早々と取り組んでいるのは興味深いです。材料開発者とAI開発者との懸け橋になると期待します。(小池委員)
(回答)
貴重なご意見ありがとうございます。資料9頁に記載のとおり、JACIでは「化学×デジタル人材育成講座」に加えて、中級編となる情報科学WGおよび国内外動向の情報共有を目的としてMI推進WGを設置し、革新的なマテリアルを創出するためのMI・AIを駆使できる研究者の育成に戦略的に取り組んでおります。今後も弊協会の事業活動にご注目いただけたら幸甚に存じます。(JACI 専務理事 髙橋武秀)

○  7ページ目、『化学×デジタル人材育成講座』の開設について、素晴らしいお取り組みであると感じました。内閣府、経産省、文科省でプロジェクトが進んでいるデータ駆動型材料開発プラットフォームの成果についてもフォローして頂き、国プロの成果にリーチできるような研修を組んで頂けると、大学側としても教育的な目的で使いやすいと感じました。今後、学生が材料と情報の両方を理解する上で、このような産業界に精通した新しい教育が必要であると感じております。(関谷委員)
(回答)
貴重なご意見ありがとうございます。資料9頁に記載のとおり、JACIの中には「化学×デジタル人材育成講座」に加えてMI推進WGを設置しており、国内外動向の情報共有や講座のブラッシュアップについての意見交換等を随時実施しております。今後も弊協会の事業活動にご注目いただくとともにアカデミア様との新たな連携についてもご支援いただけたら幸甚に存じます。(JACI 専務理事 髙橋武秀) 

○  8ページ及び10ページ目、化学×デジタル人材育成講座の開設について、実際の問題においては、会社の実データを用いない限り、あまり意味がない場合が多い。講座で用いるデータは基礎的なものだけでしょうか。川上から川下までデータを連携させるためには、会社ごとに異なるプロセスデータの共用化が必要となる可能性がある。各社の知財の合意は取れているのでしょうか。(榎委員)
(回答)
ご質問ありがとうございます。現在JACIが運営している「化学×デジタル人材育成講座」や情報科学WGではいわゆるワイガヤコミュニティの醸成も目的としており、公開のデータセットを活用して解析に用いるようにしております。
また、ご指摘いただいたとおり、知財に関する合意については今後の大きな課題であり時間を要すると思われます。解決策の一つとして、現在、経産省様が主催されている(高分子領域の)特許情報データベース化検討会(資料9頁参照)を自動車領域まで拡張しデータ連携することができれば、各社がそれぞれ個社データを追加して解析することが可能になるのではないかと考えられます。(JACI 専務理事 髙橋武秀)

○  10ページ目、業界の壁を越えて川上から川下までデータを連携させ、最適な製品を設計するという記載について、素材メーカの競争力強化のための有効な方策と考えます。川上企業と川下企業を繋ぐ繋ぎ役として公的研究機関がお役にたてると思います。(村山委員)
(回答)
貴重なご意見ありがとうございます。資料12頁に記載のとおり、JARIとJACIによる連携も今後の検討対象としており公的研究機関、例えば産総研様のご支援も是非賜りたく存じます。何卒よろしくお願い申し上げます。(JACI 専務理事 髙橋武秀)

○  12ページ目、自動車材料のデータベースについて、自動車メーカは使用したい新材料があると、それに組合せる材料の選定が必要となり、分析・評価にかなりの時間がかかる。新材料が必要とする条件で組み合わせ材料が特定出来たら、スピーディーな製品化が可能になります。(小池委員)
(回答)
貴重なご意見ありがとうございます。ご指摘いただいたとおり、JACIではマテリアルから自動車までのデータ連携を実現することにより、技術の革新、国際競争力の向上に貢献していきたいと考えておりますので、今後ともよろしくご指導の程お願い申し上げます。(JACI 専務理事 髙橋武秀)

○  当該資料は新材料創製に係る時間と投資額をいかに縮小するかに関してデータ駆動形手法を積極的に導入することの重要性を示している。その内容はすでにこれまでの準備会に置いて提示されており、1)材料科学と情報工学を融合する材料開発システムの先鋭化の必要性、2)特に機能性材料や高分子材料などの分野においてはデータベースの構築が産官学のコンソーシアムの形で具現化し始めており、その高度化が急がれる、3)材料開発のためのシステム構築には産官学、特に産業界からのデータの供出が望まれるところであり、知財の保護や供出にあたってのインセンティブ付与などのルールづくりが急がれる、そして4)供出されるデータの記述方式のシステムごとでの一元化の必要性などが示されている。(三島委員)
(回答)
貴重なご意見ありがとうございます。ご指摘いただいたとおり、材料開発のためのシステム構築には産学官、特に産業界からのデータ供出とそれに伴う知財の保護や供出にあたってのインセンティブ付与などのルール作りが今後の重要課題であると当方も認識しております。JACIでは資料9頁に記載のとおり、課題解決策の一環として、MI推進WGを設置しその中でデータ標準化についての議論を進めております。また、現在、経産省様が主催されている(高分子領域の)特許情報データベース化検討会にも協力させていただいております。今後も弊協会の事業活動にご注目いただき、ご指導ご助言を頂戴できれば幸甚に存じます。(JACI 専務理事 髙橋武秀)

<資料2-5 東京工業大学発表資料に対する意見・質問>
○  2ページ目、公平性透明性、シェアクローズドデータ、データを提供すればするほど自社にメリットとの記載について、オープンとクローズドのグレー領域であり、境界をひくのが難しいのではないでしょうか。(小池委員)
(回答)
大変クリティカルなご指摘をいただき、ありがとうございます。おっしゃるように、シェアクローズドデータはグレー領域で、線引きは大変難しいと考えております。二つの観点でシェアクローズドデータの取り込みを考えております。
【ベストな物性値ではないデータ】
全自動で物質合成をして物性を最大化する過程で、ベストな物性ではない物質が多数できます。通常は論文にもならず、埋もれてしまっていたデータです。企業はベストな物性を示す物質の特許を出しますが、ベストではない、最適化途中の物質のデータについてはシェアクローズドデータとしていただけないかと期待しております。AIロボットを用いた自律的合成では、コンピュータですべて制御しているのでデータ入力の手間もかからず、シェアクローズドデータになるのではと考えております。
【自社の本業ではない領域のデータ】
現在、マテリアルドックという構想を考えております。AIロボットで物質を作った後に、様々な分析機器により、多角的に物性評価を行います。これを完全に自動で行います。すると、企業がビジネスを展開するために求める特性”以外”のマテリアルデータが手に入ります。たとえば、ある企業で電池ビジネスを行っている場合、通常はイオン伝導率だけ測定し、磁性は評価しません。もしかして、磁石メーカがみたら驚くべき高性能かもしれません。このように、マテリアル研究では、データベースは穴だらけになっているのが現状です。しかし、AIロボットシステムを使うと、網羅したデータベースが自動でできあがります。すると、企業の本業に関わらないデータが多く取得できます、これはシェアクローズドデータにできる可能性があると考えています。
今後、ユーザの要望を取り入れつつ、最適な戦略を作る必要があります。また、現在、大型共用施設が行っているように、クローズドにするには高額のデータベース使用料を支払うという仕組みも必要だと思っております。(東京工業大学 一杉教授)

○  2ページ目、データを提供すればするほど自社にメリットがあるとの記載について、素晴らしいお取り組みであると感じました。プラットフォームは使う側が何らかのメリット感じなければ使われません。かつ、圧倒的に一番になることがプラットフォームにとって重要で、例えばあるプラットフォーマでは電子決済システムで赤字を出しても一番になろうとしているのは一番のプラットフォームになるためであると考えられます。したがって、プラットフォームを構築した当初は、企業や大学にお金を払ってでもデータを集めることを提案します。(関谷委員)
(回答)
ありがとうございます。ぜひご提案通りにできればと考えております。おっしゃるとおりで、世界で圧倒的に一番のプラットフォームにならねばなりません。そのための強みが、データが大量に得られるハイスループット実験技術と、新マテリアル予測技術の二本柱です。経済的合理性を感じられる価格設定と仕組みを構築し、数多くのデータを集めることが最優先となります。(東京工業大学 一杉教授)

○  3ページ目、デジタルラボについて、ライフサイエンス実験では、ルーティンな作業も多くすでにAI × 実験ロボットによる研究手法の開発がコンセンサスを得て加速している。一方、材料科学・開発では、より専門性やノウハウに依存し、課題が多いという意見も多い。材料開発におけるベストシナリオ、期待できるターゲット材料は何か。またデジタルラボ時代の人材育成像はあるか。(大野委員)
(回答)
はい、おっしゃるとおりでライフサイエンス分野ではAIロボットの導入が急速に進んでおります。マテリアル分野で広げるにあたり、まず最初に取り組むべき領域は半導体デバイス領域だと考えております。
半導体産業ではすでに自動試料搬送や自動成膜が進んでおります。それとAIを融合すれば、自律的にマテリアル開発するシステムとなります。したがって、AIロボットを用いた自律的マテリアル研究に最も近いと考えています。実際に私たちのラボでは、半導体製造技術をもとに、それを構築しました。
半導体領域では、high-k、絶縁体材料、トランジスタ材料などが今後、自動で探索できるでしょう。それを薄膜状態で探すので、半導体産業にすぐに展開できます。実際に複数の企業からお声がけいただいております。
さらに、材料探索だけではなく、デバイス特性も含めて自律的に開発が進められます。たとえば、界面を作ったときの特性など、物質と物質が接する界面を作って初めて分かることがあります。実際にデバイスを作製して自動的に特性評価し、その特性を最大化するようにclosed-loopを回すことが実現できるでしょう。実際に、私たちは今、そのようなシステムを構築しています。
デジタルラボ時代の人材育成像として、重要なことは俯瞰的な視野を持つ人間だと考えています。AIロボットシステムを使うと、人間が解析できるスピードよりも速く、磁性、イオン伝導性、熱特性など多様なデータが生まれます。磁性だけに着目していたら、極めて優良なイオン伝導材料を逃すかもしれません。したがって、大量のデータを多角的な観点で検討する、俯瞰的な視野が重要視されると考えております。
それに加え、これまで単純作業に奪われた時間を、創造的な活動に費やすことができるでしょう。すると、サービスまで含めて、「今必要なマテリアルはなにか」ということも考えられるようになるでしょう。ますます、社会の仕組みや動向に敏感なマテリアル人材が必要になると考えております。(東京工業大学 一杉教授)

○  3ページ目、収集・蓄積の観点→ハイスループット実験について、ここにあるハイスループットのレベルでは、今後の社会の変化に到底間に合いません。社会は何を求めるのでしょう。それは絶えずものすごい勢いで変化変容します。そこを高速で掴みとり課題化できるハイスループットでなければいけません。(小野山委員(代理:本間様))
(回答)
 ありがとうございます。AIロボットを用いたシステムは万能ではなく、適切な課題を見つけ、それに適用すべきと考えております。おっしゃるように、社会が抱える問題は絶えず変化しますので、「適切な課題を見抜く目」を持つ人材の育成が重要だと思っております。
AIロボットを用いた研究開発は、人間との共同作業があってこそ成り立つと思っています。我が国は、現在、マテリアル分野で優秀な人材の知識・経験・勘が蓄積しております。これを有効活用するのが最も重要で、人間と共生したマテリアル用AIロボットシステムが重要と認識しております。(東京工業大学 一杉教授)

○  5ページ目、AIとロボットを活用した研究開発について、データの利活用・共用化を進めて材料開発進めていく上では、実験の自動化およびデータ駆動を用いた再実験のループの自動化が確かに重要であり、是非とも推進していくべきです。一部ラボレベルでは取り組みが容易かもしれませんが、素材製造におけるマルチスケールの課題に対する展開についても考慮していく必要があります。(榎委員)
(回答)
コメントをいただき、ありがとうございます。おっしゃるとおりで、マルチスケールの課題に対する展開は非常に重要だと考えております。そのためにはいくつか重要なポイントがあると考えております。
1.マルチスケールにしていくに連れて特性が変わっていくが、現在は予測ができないという課題が多数あります。しかし、AIロボットによって試行回数が増やせるならば、マルチスケールにした際に、「各スケール間の相関関係」を明らかにすることができる可能性があります。もしそれが明らかになれば、因果関係を解明できる可能性が出てきます。そうすれば、予測もできるのではと、期待しています。
2.マルチスケールの実験は作業が複雑になりますので、ロボット技術がさらに発展しなければなりません。たとえば、複雑な実験を進めるためのロボット技術、そのロボットに手順を教えるためのAI技術など、解決すべき課題は多数あります。したがって、ロボット研究者、AI研究者、マテリアル研究者が一堂に会する拠点が重要だと考えております。
大野先生への回答で述べましたが、半導体産業ならば、現在の半導体プロセスを活用すると、マルチスケールにも対応できる余地があります。実際にデバイス作製まで自動化し、そのデバイス特性を最大化するように自律的に実験を進められる可能性があります。(東京工業大学 一杉教授)

○  6ページ目、10年間で1000億を投資しても、その後の新マテリアル開発費でペイできるとの記載について、10年間で1000億を投資しても、その後の新マテリアル開発費でペイできると考えているとのご指摘の根拠をご教示ください。本当にペイできるならば、企業は1000億円を単年度でも投資する、企業が投資したいと思える水準にあげることが国プロの目的ではないでしょうか。(松岡委員)
(回答)
「準備会合一次とりまとめ」の資料を拝見しますとマテリアル開発の成功例としてGaN、リチウムイオン電池やネオジム磁石の開発が挙げられています。そのようなインパクトのある貢献ができれば、ペイできると考えております。
多くの企業の方とお話させていただくと、人材数や研究時間の減少から、AIロボットシステムの現場への導入は「必至」という声を聞きます。
そのため、企業が率先して投資することも考えられ、経営判断が待たれます。したがって、国プロが先行するのではなく、企業、国、大学、国立研究所が一丸となって取り組むことができれば、より早く成果が出るのではと考えております。(東京工業大学 一杉教授)

○  7ページ目、図5について、物質科学と情報科学の融合人財を育てる人財の育成は極めて重要であり、このスキームに共感します。一方、これまで日本の大学院では学生は一つの研究室への帰属性が高いと思います。この様ないわば「室(ムロ)」に閉じ込めない新しいシステムが必要ですが、そこはどの様に体制作りをされているのでしょうか?(片岡委員)
(回答)
おっしゃるとおりの問題意識を持っております。「たこつぼ」にこもらないため、多くの施策を行っております。すでに前回の資料と机上配布資料(https://www.tac-mi.titech.ac.jp)に記載したラボローテーションとプラクティススクールの他に、企業メンターとビジネスモデル討論合宿も行っております。
【企業メンター】
これは「企業のマネージャークラス」の方に学生さんのメンターになっていただくというものです。研究の内容ではなく、社会に関すること、人生に関することを学生さんに伝えていただくことが狙いで、年に二回は学生さんと直接話し、刺激を与えていただいております。学生さんにとっては、大学教員だけではないチャネルで人生、あるいは研究を考える機会となり、広い視野を涵養することが目的です。
【ビジネスモデル討論合宿】
海外の学生さんらとチームを作り、こちらからトピックを提示して、ビジネスモデルを考えるものです。これも社会を意識して、自分の研究がどう活用できるのか、あるいは社会の課題は何かを考え、自分の研究にフィードバックすることが狙いです。
以上のような施策により、より広い視野、俯瞰的視野でものごとを見られる人材の育成に取り組んでおります。
今回の卓越大学院プログラムとは関係ありませんが、将来的な教育システムとしては学生さんが、「一つの研究室に所属する」というスタイルではなく、「いろいろな研究室を自由に回遊しつつ研究を展開する」というスタイルも考えられます。(東京工業大学 一杉教授)

○  7ページ目、物質・情報プラクティススクールについて、昨年度、東工大と旭化成でこのプログラムを実施致しました。最新の情報科学を用いて企業の事業課題を解決するプラクティススクールは世界でも初めての試みでしたが、我々にとっては非常に価値のある成果を出してくれました。産業界にとっても価値の高いプログラムであると思います。また、データサイエンスは大学の関連学部で必修にするなど、基礎として学んでおいて頂きたい科目だと思います。(山岸委員)
(回答)
御社には大変お世話になっております。昨年度、御社でプラクティススクールを実施させていただき、学生さんらは一回りたくましくなって戻って参りました。企業に6週間滞在させていただき、学生さんらにとっては非常に刺激があったと実感しております。
本年度は二年目となり、ますますスムーズにプラクティススクールを運営できるものと考えております。(東京工業大学 一杉教授)

○  8ページ目、WPIによる国際連携、分野融合について、世界中から優れた人材を惹き付け、外国人の活躍・定着を促すことについて、WPIで効果が上がった取り組み、展開へのアイデアをいただきたい。(大野委員)
(回答)
これはWPI関連で多く議論されていたことと同じと考えています。「マテリアル研究開発プラットフォームだからこそ」という展開はすぐに思いつきません。結局、世界で唯一無二の研究や拠点を作るのが近道だと思います。時間をかけて考えたいと思います。(東京工業大学 一杉教授)

○  8ページ目、ここでも情報発信のしかた、つまり、マーケティングが重要であるとの記載について、素晴らしいご提案に強く賛同いたします。国の広報は、非常に強いインパクトがあると感じます。経産省や文科省が、日本の材料開発の魅力(ロマン)を伝える広告等を国内や海外向けに出す等、国の機関の名前を使ったマーケティング戦略を立案することを提案します。(関谷委員)
(回答)
ありがとうございます。政府には「文化」「空気」を作ることを期待しています。そのため、文科省、経産省内に、マテリアルに加え、科学や技術全般のイメージアップを図る、マーケティング専門部署を設立してもよいくらいだと考えています。
企業は自社製品やサービスのマーケティングのために多大な投資をしています。その企業の努力、あるいは大学の広報とも連携し、多くの人材をマテリアル産業や科学研究に惹きつけるために、その専門部署が活躍することを期待します。(東京工業大学 一杉教授)

○  9ページ目について、データ駆動型の開発と共にある必要があるのが、AI + ロボットを利用した材料開発とのご意見、大賛成です。全ての材料開発現場に、ロボットを導入するにはかなりの経費と時間がかかると思います。共同利用機関や大型研究施設などが率先して導入検討する必要があると思います。国内にどの程度の拠点を配置して進める必要があるとお考えでしょうか。(川合委員)
(回答)
はい、おっしゃるとおりで、共同利用機関や大型研究施設で、ラボを「システム」として構築する必要があります。その際にいくつかステージがあると考えております。
【第一ステージ】NIMSにデータベースとともにハイスループット実験設備を構築し、データ収集開始。それと同時にM×D人材育成を進める。[今すぐに始めるべき]
【第二ステージ】AI研究者、ロボット研究者、そしてマテリアル研究者が集結した拠点を形成し、マテリアル研究に適したAIロボット技術とマテリアル予測技術を構築する。[今からすぐに準備をはじめるべき]
【第三ステージ】その技術と人材を土台として、分子科学研究所を始め複数の機関でシステム化されたラボを構築・運用する。その際、得意分野に合わせて拠点を形成する。[基盤作りを今すぐに始めるべき]
以上のプロセスにおいて、どの拠点も必ず、NIMSのデータベースにデータを集約するのが肝要かと思います。(東京工業大学 一杉教授)

○  M×D人材に関して、大変元気が出る内容で感心した。現在の学生を育成するだけではスピードが追いつかない。既に社会で活躍している人材を取り込んでM×D人材の育成を加速する、大学ならではの方法についてお考えを伺いたい。(川崎委員)
(回答)
ありがとうございます。会員企業として参画する動機の一つに社員教育があると聞いており、今回の取り組みでは、社員教育の機会を提供することもミッションとしております。
マテリアルシミュレーション、マテリアルインフォマティクスという講義では、演習と講義を行います。会員企業の社員が東工大に来校し、実際に講義を受けていらっしゃいます。そして、学生さんと机を並べているために、そこで学生さんと社員の方の交流が生まれ、共同研究や就職につながるなどの副次的な効果も期待しております。
また、このような取り組みを通じて、社員の方が博士課程に進学することもあります。
今後、企業と大学の交流がさらに増えるように、努力していきます。現在、企業の方からの協賛金のみで、博士課程学生の奨学金を支払っております。この仕組みがサステナブルになり、博士課程学生を支援し続けられるよう、引き続き尽力します。(東京工業大学 一杉教授)

○  当該資料は新材料創製に係る時間と投資額をいかに縮小するかに関してデータ駆動形手法を積極的に導入することの重要性を示しています。その内容はすでにこれまでの準備会に置いて提示されており、1)材料科学と情報工学を融合する材料開発システムの先鋭化の必要性、2)特に機能性材料や高分子材料などの分野においてはデータベースの構築が産官学のコンソーシアムの形で具現化し始めており、その高度化が急がれます、3)材料開発のためのシステム構築には産官学、特に産業界からのデータの供出が望まれるところであり、知財の保護や供出にあたってのインセンティブ付与などのルールづくりが急がれます、そして4)供出されるデータの記述方式のシステムごとでの一元化の必要性などが示されています。(三島委員)
(回答)
コメントをいただき、ありがとうございます。マテリアル研究に適したAI技術とロボット技術の開発も必要です。AI研究者、ロボット研究者、マテリアル研究者が一つ屋根の下に集まる拠点が重要だと考えております。今後もぜひご支援いただけますと幸いです。(東京工業大学 一杉教授)

【議題2】オブザーバー府省ヒアリングについて
<資料3-1 内閣府発表資料に対する意見・質問>
○  2ページ目、欲しい性能から材料・プロセスをデザインする「逆問題MI」について、大変優れた取り組みであると感じました。材料、プロセスのパラメータは無限で、これらから重要なパラメータを抽出し、さらに逆問題を解くためには、巨大な計算機リソースが不可欠と感じております。さらに巨大なスーパーコンピューターがその一つの解であると思いますが、量子コンピュータなどの活用など、材料と計算機科学の重要性を再認識しております。(関谷委員)
(回答)
人工知能(AI)を駆使した材料開発手法の刷新に向けて、ものづくりが大変革期を迎えています。本プロジェクトで目標とする統合型材料開発システムの構築に際しては、欲しい性能から材料・プロセスをデザインする逆問題MIを実現するために、スパコンの利用も含めて、課題に応じてソフトウェアとハードウェアの選択を行っております。このように、複雑な最先端構造材料・プロセスを計算機で扱うためには、問題を解くための手法や規模を適切に設定することが重要ですが、さらにそれを解くハードウェアを適切に選択することも重要であると考えております。(内閣府)

○  5ページ目、マテリアル革命の研究開発全体像について、3月の会合でも申し上げましたが、今後も日本が材料技術において世界のリーダーシップを維持し続ける為には、以下の4点が重要と考えます。
①マテリアル革新力強化のための基盤整備
・1社では実現できない先進的、革新的な材料の開発を、産官学が連携して進める体制
②重要技術領域の戦略的推進
・総花で無く、注力する分野を絞り込み、材料設計~プロセス技術~設備設計まで含めたトータルの技術を確立する事で、他国が真似できないブラックボックスとする事
③マテリアル・イノベーションエコシステムの構築
・長期間を要する事が不可避な新規材料の開発において、産学官が連携すると同時に、全ての参加者がメリットを享受できる仕組み。場合によっては1社の得た利益を他社に還元する事を含めたエコシステムの構築
④人材の育成・確保
・材料に関わる人材の育成は、理論学習と経験を含めて長期間を要する。大学の研究者と企業の技術者が容易に行き来し、クロスアポイント等も活用して、流動性を高め、社会全体として競争を越えた「共創」の状態を実現する事(稲垣委員)
(回答)
本プロジェクトの材料・プロセス開発における逆問題MIの効果の実証は、参画する素材・重工メーカ等による実用化・事業化ロードマップ上で行われることが不可欠です。それを官学が逆問題MIを通じてサポートする産官学オールジャパン体制となっております。
また、本プロジェクトでは、構造材料の中でも永遠の開発ターゲットと言える耐熱材料、高比強度材料、さらにプロセスも近年、世界的に開発の勢いが著しい3D造形技術に絞り、その高品質・高生産性・低コストの実現に貢献する材料・プロセス設計技術を開発しております。また本技術は、とりわけ高性能・高信頼性が要求される航空・エネルギー産業を主対象としていますが、他産業への波及効果も極めて大きいと考えております。
これらの各々の予測技術に加えて、MIシステムの社会実装に向かって必要なセキュリティの向上、使い勝手の良さ、コンソーシアム構築などを念頭に、データ取り扱いの検討、業界の標準化や認証活動などを行う事で、出口戦略への対応を加速させております。
さらに、MIを活用した先端的な材料・造形プロセス開発に係る研究拠点・ネットワークを構築し、イノベーションのための国際連携、人材育成を推進します。
本プロジェクトの研究開発成果が、日本の素材産業のさらなる国際競争力強化に貢献するよう、プロジェクトを進めて参ります。(内閣府)

○  6ページ目、逆問題MI基盤構築について、これまで経験のない社会に変容していく中で、逆問題解析は重要さが大きくクローズアップされると思います。しかし現状のMIはデータに頼りすぎであり、それを維持する原資はありません。希薄なデータ群から課題を抽出し、既成概念を超えて広範囲な領域に解をもたらすMIが求められると思います。(小野山委員(代理:本間様))
(回答)
本プロジェクトでは、「物質探索」を主目的とする現状のマテリアルズ・インフォマティクス(MI)とは異なり、計算科学・理論・実験などを融合した材料工学手法およびデータ科学を活用して計算機上で材料の諸事象をバーチャルに再現することで材料開発の時間短縮・コスト低減を主目的とする、マテリアルズ・インテグレーションを扱っております。
本プロジェクトで扱う構造材料は極めて複雑なシステムであるために支配するメカニズムを全て理解することは難しいと考えられますが、理論的に解明されている部分や経験則、また、実験等をデータ科学の力で上手に組み合わせることにより、十分実用的な予測が行えると認識しており、それを踏まえたMIシステム構築を進めております。(内閣府)

○  6ページ目、逆問題MI基盤構築について、発想は良いが具体的にどうするのでしょうか。順問題解析のために各ステップ(プロセス→構造→特性→性能)が紐づいた非常に多くのデータが必要と推察されるがどうやって集めるのでしょうか。(松岡委員)
(回答)
逆問題MIの手法は課題ごとに異なりますが、典型的には、材料・プロセスから性能を予測するための順方向の計算技術(モジュール及びワークフロー)を開発し、これを用いて計算機上で効率的に材料・プロセスの最適化を図るというものです。
また、データの集め方につきましては、次の意見に対する回答にも記載しますが、MIシステム社会実装化に向けて、データ収集方法や企業が保有するデータから得られた成果をどのように取り扱うか、という戦略の検討を加速させております。特に、企業保有データの活用は極めて重要と認識しており、産学官連携のコンソーシアムを早急に設立し、その中でデータに関するオープン・クローズ戦略のコンセンサスを得ることを目指します。ただ、SIPとは関係なく取得されたバックグラウンドデータまでをも共有資産化することはかなり困難と考えますので、現時点では、MIシステムとして、各機関が保有するデータの機密状態を保ったまま、企業データを活用する技術的な方法を用意することが、産業競争力向上にとって有効であると考えております。加えて、モジュールを作成する大学・国研では、長年の研究で蓄積したデータや知見に基づいて開発を行うことになっています。(内閣府)

○  当該資料は新材料創製に係る時間と投資額をいかに縮小するかに関してデータ駆動形手法を積極的に導入することの重要性を示しています。その内容はすでにこれまでの準備会に置いて提示されており、1)材料科学と情報工学を融合する材料開発システムの先鋭化の必要性、2)特に機能性材料や高分子材料などの分野においてはデータベースの構築が産官学のコンソーシアムの形で具現化し始めており、その高度化が急がれます、3)材料開発のためのシステム構築には産官学、特に産業界からのデータの供出が望まれるところであり、知財の保護や供出にあたってのインセンティブ付与などのルールづくりが急がれます、そして4)供出されるデータの記述方式のシステムごとでの一元化の必要性などが示されています。(三島委員)
(回答)
本プロジェクトにおいては、欲しい性能から材料・プロセスをデザインする逆問題MIに対応した統合型材料開発システムを世界に先駆けて開発しております。構造材料の中でも高い国際競争力が要求される革新的CFRPや粉末・3D積層材料を対象とし、既存の材料データベースの活用はもとより、新たなプロセス・評価技術に対応したデータベースの構築を図り、材料科学・工学と情報工学を融合した逆問題MIを援用して社会実装に向けた開発期間・開発費用の低減に取り組んでおります。
企業保有データの活用は、極めて重要と認識しています。本プロジェクトでは、産学官連携のコンソーシアムを早急に設立し、その中でデータに関するオープン・クローズ戦略のコンセンサスを得ることを目指します。ただ、SIPとは関係なく取得されたバックグラウンドデータまでをも共有資産化することはかなり困難と考えております。現時点では、MIシステムとして、各機関が保有するデータの機密状態を保ったまま、企業データを活用する技術的な方法を用意することが、産業競争力向上にとって有効であると考えています。
その仕組みとして、
(1)逆問題MIシステム上から企業内部の計算を駆動する分散型計算制御を実現し、機密データを用いた計算を企業内部で行うことができる仕組みを用意する。
(2)逆問題を解くために用意すべきデータについて、標準となるデータ記述様式を設計する。
(3)(データ自体は無理でも)データ記述様式は広く共有化する。
を検討しております。
企業保有データは必ずしも逆問題MIで活用できる形でデジタル化されていない(デジタル化に必要な標準的なデータ記述様式が存在していない)場合が多いです。本課題で設計するデータ記述様式に従ってデータが用意されれば、逆問題MIシステム上で計算を行うことができ、企業内で埋もれているデータの利活用が促進されると考えます。さらに、このデータのデジタル化により、データ価値の定量評価も可能になり、材料データの流通市場の構築にもつながります。これを意識して、広く公開して標準化・基準化のイニシアティブをとる所存です。(内閣府)

<資料3-2 農林水産省発表資料>
○  1ページ目、スマート農業政策について、アグリテックが世界的なトレンドとなっているところです。現場の農家さんのアグリテックに対する期待の一つに、「植物の病気」を技術の力で解決して欲しいというものがあります。自動化やビジネスモデルの話に加えて、植物の病気対策や予測を行うことができる技術にも着目することを提案いたします。(関谷委員)
(回答)
ご指摘ありがとうございます。農林水産省では同様の認識の下で、AIを活用した病害虫早期診断技術の開発等に取り組んでいるところです。(農林水産省)

○  2ページから8ページ目、生物機能を活用した新素材新たなバイオ素材や世界トップクラスの木質バイオマス利用技術について実例を挙げていますが、経産省NEDOのTSCは今年度から特に環境エネルギー分野での農水省との協働プログラムを立ち上げるところであり、注目すべきです。(三島委員)
(回答)
環境エネルギー分野のおける連携にご尽力いただきありがとうございます。現在、調査の準備を進めているところであり、今後とも両省の連携に努めてまいります。(農林水産省)

<資料3-3 国土交通省発表資料>
○  別紙1、副産物有効活用コンクリートについて、コンクリートは長い歴史と実績を持つ「複合材料」であり、「マルチマテリアル」です。歴史的な変遷をふまえ、新しい骨材を活用するために、鉄筋、鉄骨技術を協働させた新しい構造体の研究が有効であり、加えて逆問題的なアプローチでリサイクル資源の活用を開拓すべきです。(小野山委員(代理:本間様))
(回答)
ご意見ありがとうございます。今後の技術研究開発の参考とさせていただきます。(国土交通省)

○  別紙1、副産物等も含む様々な骨材を活用できる技術の構築、活用の例示が必要とありますが、高温多湿で、地震が多い我が国において、耐久性に優れている日本のコンクリート技術は世界的にも競争力のあるものと感じます。これらのマテリアル、プロセス技術を発展途上にある国へ展開していくことで大きな市場が期待できると感じておりますが、いかがでしょうか?また、膨大な経年劣化インフラが国内にはありますが、これらを安全に維持管理していく方策などに新しいマテリアルのヒントがあると感じておりますが、いかがでしょうか。(関谷委員)
(回答)
コンクリートの原材料である水や石灰石、砂や砂利などの天然資源の状況は各国で多様であり、それぞれの地域の事情にあわせた適切な技術を模索する必要がありますが、わが国での副産物活用の検討で培った技術は、国際貢献の面でも活用できるものと考えています。
また、国土交通省が策定した「インフラ長寿命化基本計画」において、「新材料等に関する技術研究開発を進め、それらを積極的に活用する」としております。(国土交通省)

○  別紙1、資源の枯渇に対応した副産物有効活用について、再利用として安全で安価な処理方法や分別などの開発や実運用ができる拠点などはあるでしょうか。また、コンクリートに限りませんが、日本で完結できるリサイクルシステムの構築のビジョンがあればご教示ください。(松岡委員)
(回答)
コンクリート塊については、現状でもそのほとんどが、路盤材(再生砕石)などとして再利用されています。この再生砕石を製造している産業廃棄物処理業者の有する設備(の一部改良)により再生骨材の製造も可能と考えられます。製造された再生骨材を用いたコンクリートの製造は、天然骨材の場合と同様に、レディーミクストコンクリート工場、プレキャスト製品工場等で可能です。
また、ご質問の「日本で完結できるリサイクルシステム」の趣旨とは異なるかもしれませんが、国土交通省においては、建設副産物のリサイクル等を推進するため、「建設リサイクル推進計画」を策定し、様々な施策を展開しているところです。その結果、日本国内の建設副産物のリサイクル状況を調査した平成30年度建設副産物実態調査によれば、建設廃棄物全体の再資源化・縮減率(※)は97.2%となっており、多くの建設廃棄物が日本国内でリサイクルされている状況となっていることがわかります。今後は、リサイクルされた再生資材の利用の観点から、リサイクルにおける「質」の向上の視点を踏まえた取り組みを検討していく予定です。
※再資源化・縮減率:建設廃棄物として排出された量に対する再資源化及び縮減された量と工事間利用された量 の合計の割合。(国土交通省)
経済産業省では、資源循環政策に係る国際的な議論の高まり、人口減少等の社会構造の変化、モノからコトへの消費・ビジネス構造の変化を踏まえ、今後の資源循環政策の方向性を示す「循環経済ビジョン」を策定するべく検討を進めているところです。(事務局)

○  別紙1、循環型社会の構築に資する「資源の枯渇に対応した副産物有効活用コンクリート」の検討について、国交省に置かれては我が国のインフラ(橋、トンネル、道路、建築構造物)などのリジリエンス強化のための構造材料の開発、特に単に現存インフラの更新ではない例えば多機能型の構造用複合材料の開発に挑戦して世界をリードして欲しい。(三島委員)
(回答)
ご意見ありがとうございます。今後の技術研究開発の参考とさせていただきます。(国土交通省)

【資料全般について】
○  今回の皆様の資料を通じて、より議論が深まることを期待しています。(十倉委員)
(回答)
ご意見ありがとうございます。(事務局)

○  MIは、研究開発力を強化するために不可欠なものですので、データに関する取り組みを積極的に進めていただければと存じます。それと同時に、その前提である真理に迫る基礎研究や研究者を支えることも、また進めていただきたいと存じます。(十倉委員)
(回答)
ご意見ありがとうございます。後者のご指摘の点は文科省等の事業を通じてしっかりと進めてまいります。(事務局)

○  事業においては、化合物デザインとともに、プロセス開発・品質保証・ユーザーとのすり合わせ等も重要で、日本企業においては、後者の部分が強みです。MIにおける協調領域の設定にあたっては、この点について関係者の共通認識を持つことができれば、今以上にMIにおける協調領域を広げることができ、ひいては、各企業も競争力を高めることができるのではないかと考えます。(十倉委員)
(回答)
ご意見ありがとうございます。ご指摘の点は、第2回戦略準備会合で重点的にご議論いただくとともに、取りまとめ文書にも反映することを考えております。(事務局)

○  多くのプロジェクトが走っており、それなりに成果もあがっているのに、科学技術論文や実際のイノベーションで実績が低下している真の原因をできるだけ教育論に落とし込まないで追究することが必要です。(中村委員)
(回答)
ご意見ありがとうございます。ご指摘の点は第6期科学技術基本計画の策定に向けた全体的な議論がなされていると承知しております。マテリアル領域における課題分析と取組提案は、これまでも戦略準備会合でご議論いただいてきたところですが、分析が足りない点等があれば、是非具体的なご指摘をいただければ幸いです。(事務局)

○  材料はあくまでも科学と工学の融合がポイント、かつ材料供給の安定性はいまでも重要。コロナ対応マスクでも経済合理性で製造が中国任せになった際のリスクは大きい。研究レベルでの共同は不要ですが、どこかで全短観を見ている部署が必要です。これは、資源循環にもつながります。(中村委員)
(回答)
ご意見ありがとうございます。材料分野については、これまでも科学技術・イノベーション政策の司令塔たる内閣府CSTI(総合科学技術・イノベーション会議)のもと、経済産業省、文部科学省が連携して、研究開発に取り組んでまいりましたが、今回のマテリアル強化戦略の策定を機に、今後より一層連携を強化してまいります。より一層の連携強化のため、ご指摘の点は取りまとめ作成の際に参考とさせていただきます。(事務局)

【その他】
○  バイオマテリアル(生体材料)について、今回のコロナウイルス対策でも話題になったように、医療用資材や医療機器に関係する材料開発も安全・安心社会の構築にとって重要と思います。この分野はAMEDとの領域棲み分けの狭間に落ちてしまうことが多いのですが、開発にあたってはここで議論している先端材料的な取り組みが重要です。今回の話題には入っていませんがマテリアル革新力強化の一環と考えます。(片岡委員)
(回答)
ご意見ありがとうございます。コロナの影響への対応については、第2回戦略準備会合で重点的にご議論いただく予定です。取りまとめの中で例示する社会実装領域や技術マップも少し修正が必要になると考えているところです。(事務局)

【参考資料1 「マテリアル革新力」に関する参考データ】
○  この度の全国規模の緊急事態宣言を受けて、社会の様相は想像をはるかに超えて変わってしまいました。事態が沈静化しても元に戻る事はありません。従ってこれまでの政策提言を大きく見直す必要があります。今後も活きる物、変えなければいけない物を、峻別しなければいけません。(小野山委員(代理:本間様))
(回答)
ご意見ありがとうございます。ご指摘の点は、第2回戦略準備会合で重点的にご議論いただく予定です。(事務局)

○  4ページ目について、SDGsの優先順位は大きく見直さなければいけません。筆頭の「貧困の撲滅」の重要さが一層高まります。マテリアルは「安価」「大量生産」「いつでもどこでも誰にでも作れる」「品質の安定」が必須要件です。デバイスは高性能よりもロバストで「メンテナンスフリー」が最重要です。(小野山委員(代理:本間様))
(回答)
ご意見ありがとうございます。ご指摘の点は取りまとめ作成の際に参考とさせていただきます。(事務局)

○  23ページ目について、社会を変えた我が国発の研究成果はどのように生まれたかのエピソードから「マテリアル革新力」の議論にどのように生かせているかを教えてほしい。(松岡委員)
(回答)
ご質問ありがとうございます。ご指摘の資料には、マテリアル領域でノーベル賞を取るような研究成果は、全て「社会実装・産業化を通じて大きな社会変革にまでつながった」点が示されております。これは、基礎研究の段階から社会実装を意識することの重要性、また、社会実装に至ってこそマテリアルの知は真の価値となることを示すものであり、「融合」の観点からマテリアル革新力を強化することの重要性提示に活用しております。(事務局)

○  29ページ目について、グローバルな物流低下によりレアメタル供給が細ります。一方、特定分野の経済縮減で供給過多になる資源もあるかもしれません。今一度、新しい元素戦略を深く議論して下さい。(小野山委員(代理:本間様))
(回答)
ご意見ありがとうございます。これまで進めてきた元素戦略PJの実績を踏まえつつ、文科省及び経産省において、実施すべき事業をしっかりと議論してまいります。(事務局)


 

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研究振興局参事官(ナノテクノロジー・物質・材料担当)付

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