将来のHPCIの在り方に関する検討ワーキンググループ(第6回) 議事要旨

1.日時

平成31年4月10日(水曜日)15時30分~17時30分

2.場所

文部科学省17階研究振興局会議室

3.出席者

委員

大島委員,鯉渕委員,小林主査,佐野委員,須田主査代理,滝沢委員,伊達委員,吉田委員

文部科学省

橋爪参事官,坂下室長,根津参事官補佐,荒井専門職

オブザーバー

本田数値予報モデル開発推進官

4.議事要旨

議題1 これまでの議論について
・資料1-1,資料1-2について事務局より説明。



議題2 将来のHPCIの在り方について
・ポスト「京」時代(2025年頃),ポスト「ポスト「京」」時代(2035年頃)におけるHPCIの目的および具体的姿について,資料2にもとづき,各委員より説明。
 主な発言は以下の通り:


(大島委員,滝沢委員より説明)
【小林主査】  アプリケーションの開発はポスト「京」,ポスト「ポスト「京」」,その時代の流れの中でどのように変わっていくとお考えでしょうか。
【滝沢委員】  結局のところ,ハードウェアありきのところがあって,ポスト「京」はどういうふうになるかもう決まってしまっているので,この文章はそれに合わせるというようなスタンスで書きました。ポスト「ポスト「京」」について考えることしては,どのサイズのコンピュータを我々が欲しているのかということを決めないといけないんじゃないかと思っていて,結局のところ,もう既に僕たちの分野では今よりも大きくなったところでそれでしかできないことで,有用な解を与えることが少ないと考えます。計算リソースは欲しいんですけれども,それを使いこなすことができないような状況になっています。もちろん分野によっては,まだまだ欲しいところはあると思うんですけれども,そういったところが何なのかを見定めるのがポスト「京」の次に行くための前に必要なところではないかと考えています。
【須田主査代理】  その「コンピュータのサイズが選ばれるべきである」ですが,選ぶ主体というのが,個人とか研究あるいは分野単位なのか。それとも,今みたいに,日本という枠で,あるいはそのHPCIの幾つかの領域みたいな形なのかというのは,それはどんなふうにお考えですか。
【滝沢委員】  私は,これは税金によって作られるものですので,それが償却するまでの間にどのくらい国民に対して成果を出せるかという分野で選ぶべきかと思っています。ですので,大きなコンピュータがあればチャレンジできるものというのはたくさんあると思っていて,もちろん僕もこんなに使えますよと言われたら,もう喜んで使うと思いますけれども,そのポスト「ポスト「京」」が償却するまでの間に,何らかのよいフィードバックが国民に対してできる分野であるということはしっかりと見定める必要があるのかと。それが出せないのであれば,小さなものをたくさん作る方が有意義だろうというのが私の考えです。


(鯉渕委員より説明)
【小林主査】  これはもうポスト「京」の時代からこういうことが始まりつつという認識でしょうか。
【鯉渕委員】  ポスト「京」まではきちんとできていますし,先ほどのスライドでございましたとおり,「京」コンピュータに対して,アプリケーション実効性能100倍といった数字に従って設計されておりますから,そこまでは見えていると思います。その先へ進むときにどうなるのか。また,ポストムーアのときに何が起こるのかというのはまだ分からないというのが私の意見でございます。
【小林主査】  ありがとうございました。


(吉田委員より説明)
【大島委員】  ポスト「京」の話の方で,ビッグデータは産業界にあるのでなかなか難しいというお話がありましたけど,それはそれとして,シミュレーションとAIの融合をするという方については十分なデータが確保できるという認識でいいんですか。
【吉田委員】  そうですね。私が意図しているところは,シミュレーションから出てくるデータそのものが価値を持つドメインというのがあると思います。流体の計算だったり,材料のシミュレーションです。計算で行ける最高到達度が非常に高いですね。そこからいきなりリアルアプリケーションまでは少し壁があるんですけど,計算だけで行けるところが非常に大きいところがあって,そういったところで,シミュレーションのデータを取りながら,AIで何か予測をして,それを繰り返していく。そういったイメージです。


(伊達委員より説明)
【滝沢委員】  多様化というお話ですけれども,今まで既にいろいろなアーキテクチャがあって,大体大きなお金を投入して,大きなコンピュータが作られているのは,今無い技術を作って,今よりも大きなものにチャレンジするという,狙いがあったように思います。多様化にすると,既にあったものを幾つか作っていくということで対応できるような気がするんですけど,それではだめな部分というのはあるんでしょうか。
【伊達委員】  私が思う多様化というのは,まず一番狭義の意味でいくと,お答えできているか分からないんですけど,まず計算ニーズが相当多様化しますよね。その研究者がGPUで作っているものがあったり,FPGAで作っているものがあったりするときに,その受け皿となるような多様化する計算基盤という意味合いもあると思います。私が思っているのは,例えば極端な話,ソフトウェア的なところのスタックが違う,バージョンが違うみたいな細かい問題も起こっているので,それを支えるのが2025年頃には,計算基盤の方から提供していくという意味でやっているというイメージで思っているんですね。さらに,今,分野的にもどちらかというと理系分野というところがメーンで使っている中で,文系の方も使いたいという中で,そのときに,その人たちの希望に何か応えられるようなインフラという意味で多様化ということを言っていたんですけど,お答えできていますか。
【滝沢委員】  先の質問の意図としては,新技術を欲しているのか,既存の技術をスムーズに使うシステムを作ろうというところに力を入れるのかということでしたが,そのスムーズに使う方に力を入れた方がいいという意味合いですかね。
【伊達委員】  そうですね。私がここに2025年頃,性能というところよりは,どちらかというと高生産性というところに書いたのは,実際に使う方がおられるので,その方に合わせた,使い方の多様化みたいなところがあると思うんですよね。そういったところに着眼して,アーキテクチャというのを作っていかないと,HPC,リソース,このHPCIというインフラを使ってもらえる人口が増えないのかと思っていまして,だから,もう少し広げるという意味で多様化を支える。鯉渕先生の方もそういうふうにおっしゃったと思うんですけど,そういうイメージでいいですね。


(佐野委員より説明)
【大島委員】  前半も後半でもあった話ですけど,結局というか,システムの多様化が進んでいくと,共通できる部分と共通できない部分というのが結構,両方増えますよね。そうすると,そもそも意見交換というか,技術交流とか共有しようと思っても,できる部分とできない部分というのが結構あると思っていて,その辺が難しいと思うんですよねというようなコメントになっちゃうんですけど。
 なので,例えばSNSとかいう話もありましたけど,あるレイヤではすごく話は合うんだけど,違うと全く合わなくなっちゃうというのがあって,すごく大変だなというふうに思っていて,その辺は解決するべきなのか,それはそれとして置いといて,もう一個,上のレイヤで共有すべきなのかとかいろいろあるとは思うんですけど,その辺について何か,具体的にはないと思うんですけど。
【佐野委員】  具体的にはないですけども,レイヤー毎にしか合いづらいということには私も同感です。ただ,お話したようなツールや環境があれば,全く異なるレイヤ間では無理だとしても少なくとも同じレイヤで話ができますし,あるいは隣り合うレイヤ間でも話ができるかもしれません。ということで,何かしら相乗効果は出るだろうなと思っております。


(須田主査代理,小林主査より説明)
【須田主査代理】  最初に出てきた「アンサンブルアーキテクチャ」というのが全くイメージが湧かないのですが。
【小林主査】  要するに,いろんなものの集合体で,全体の汎用性を実現しようというイメージで書いております。
【須田主査代理】  ただ,それぞれのアプリケーションから見ると,何か,どれかの形が一番合っているわけで。
【小林主査】  そうですね。適材適所という形で,それを引き出せるような仕組みが必要と思っています。
【須田主査代理】  オーケストレーションというのは,その分野の違い等も含めてということですかね。
【小林主査】  まあ,どのレベルまで行くかというのはいろいろあろうかと思いますけど,マルチフィジクスにしろ,AI,HPC融合にしろ,いろんな多様性を一つのワークフローの中に収めようとしたときに,そういうことも必要ではないかと思っています。
【大島委員】  その一つのシステムでやるんですか。
【小林主査】  そこはどこまで仮想化するかというのは,境界はあると思いますけど,一番単純なところは,本当にFPGA,GPU,汎用系とかいろいろなものがある中で,それをうまく活用できるようなプラットフォームがあると,アプリケーションの開発にもより便利ではないかと思います。


(全体討論)
【小林主査】  今までの発表も含めて,全体で討論という形にしたいと思いますが,どうぞ,自由な御意見,これまでの御説明に関して,何かありましたらよろしくお願いいたします。
 はい。佐野委員,どうぞ。
【佐野委員】  よろしいでしょうか。生産性というキーワードは,私以外の委員の方からも出たと思うんですけれども,私の話でも,特に計算機を使うための生産性,プログラミングの手間とかコストとか時間ですね,それをケアする必要があるという話はしました。それに加えて,小林先生の最後の話も聞いて思ったんですが,将来,異なるアーキテクチャが混載するようなものになっていき,特に汎用なアクセラレータも上回るような,個々の特定の問題に特化したハードウェアアーキテクチャが組み合わさったようなものになるとしたときに,個々のアーキテクチャ,システムを誰が作るんだろうかと。そうしますと,使うだけではなくて,複雑化するシステムを効率よく開発するような研究者,技術者,開発者に対して,そのための生産性の支援のようなものも必要なのではないかと考えました。
 以上です。
【小林主査】  ありがとうございました。
【大島委員】  佐野先生,それは例えば今で言うところのプロセッサを作るとかそういうレイヤという意味ですか。
【佐野委員】  そうですね。アーキテクトだったり,システムインテグレータだったり,また個々のアルゴリズムですとかハードウェアの構造や回路を熟知し,それをインテグレートして,オーケストレーションとありましたけれども,実際,オペレーションが可能なシステムに統合できる人材を強化するなりですね。運用以前の問題として,開発側もかなりケアしないと,この時代では,日本では作れなくなってしまうというように,危惧を感じています。
【大島委員】  じゃあ,そこからの関連で一つ思っていることがあります。私はGPU研究をずっとやっているので,GPUはもともとグラフィックスの需要があったから普及したという話がありまして,例えばそのGPUのようなものを作って後追いしようと思っても,どう考えても勝てない時代がずっと来たわけですね。これがこの2025年を超えていった後に,よりそうなるのか。実は汎用化するというか,一般化してしまって,むしろ追いやすくなるのか。そこら辺が個人的には気になっているんですが,ハードの専門家じゃないので正直分かりません。ただ,気にしている点としては,そういう専用のすごい,特定の分野に強いプロセッサ的なもの,アクセラレータ的なものを日本でも容易に作りやすくなるのかもしれないと。だめになるかもしれない。それによっては,大分できることは変わるかというのは思っています。
【佐野委員】  それに関しまして,これまでなぜその後追いが難しかったかというのを考えますと,幾つか理由があると思うんですが,一つは,パテントのようなものですね。技術的な障壁があって,実現できなかった。あるいは,パテントの問題が無かったとしても,余りにも相手がアドバンストし過ぎていてキャッチアップできないか,できたとしてもビジネスとして勝てない。そうすると,収入が得られないので,コスト的にも太刀打ちできず,そもそもやる意味がないという判断を下すことがあったと思うんですね。そこのコストですとか技術的なところがもし何らかの支援ですとか,うまい体制で解決できれば,日本でも将来のその時代にやれる可能性はあると思っております。例えば,今,あちこちでAIチップなども作っていますね。そこは新しいニーズがあって,うまくできればウィナー・テイク・オールで勝者一人が全部持っていく世界かもしれませんけれども,まだ勝者が決まっていないとしたら,勝てる可能性が残っておりそこには投資が行われているということだと思います。そういう状況があればやれる価値があるのではないかと考えております。
【小林主査】  個人的な感想では,GPUは,GPUのマーケットがあって,それをHPCに展開して,またそれをGPUの開発に戻してとか,良いエコシステムができたと思うんですけど。
【大島委員】  そうです。
【小林主査】  それが「京」,我が国の場合を考えたときに,政策としてそういうものを作って,それが市場を作り出して,また次のシステムの開発に生かされるというエコシステムがなかなかできていないところが一つ課題かと思っています。
 はい,どうぞ。
【滝沢委員】  コンピュータのサイズのことをすごく気にしていて,国を挙げて作るもので,最高峰のものを作る必要があるとは思うんですけれども,大抵議論しているものというのは,小さいところでも立証することができるものだと思うんです。特に,ソフトウェアなんかもほとんどそうで,コンピュータ1台で動くものがスーパーコンピュータに持っていったら,それは使えます。テストは1台でもできますみたいな状況にあって,研究というのは,必ずしも全部を使ったものでなくてもできて,開発もできるし,論文も書けるんです。それをあえて一番大きいコンピュータでやる意味というのは,一つは,その計算結果なりが価値があるから。もう一つは,その環境でないとテストできない何かがあるからということだと思うんです。僕はそちらの専門ではないので,そういった観点で,今の議論のものがどれがそれに当てはまるのかというのが分かりづらいなというのが,聞いていて思ったことです。
【鯉渕委員】  現時点でスパコンを使わなくても構わない場合,使うべきじゃないと思います。コストを考えた場合,クラウドを使えば安くなるわけですから,それでスパコンを使った場合と得られる知見が変わらないのであれば,むしろスパコンを積極的に使わない方が良いと思います。スパコンを使う理由が説明できないものについてはクラウドを使うことが基本だと思います。
【滝沢委員】  趣旨としては,今,新しい技術に対して議論がなされていると思うんですけれども,その新しい技術を立証するのには,実は小さなシステムでいいんじゃないかということですね。小さなシステムで立証されたものを使って,この大きなものを作りますよという。大きなものの中で一緒に新しい技術も作っていきますということは,必ずしも必要ではないんじゃないかという。
【鯉渕委員】  現時点で出来ていると思います。つまり,小さなものを作って,恐らくポスト「京」も小さなサブセットを作って,そこで検証しながら進め,大きくする。
【滝沢委員】  もちろんそういうふうに認識しているんですけど,ということは,それでどのくらいの規模のコンピュータができるとしたら何ですかという,その何という部分があって初めてそれは成り立つものですよね。積み上げていけば,大きいものができますというところまでは,議論はいいと思うんですけど,このサイズであるからこそ,何々ができますの何々の部分というのが余り見えないのかと。
【鯉渕委員】  例えばポスト「京」に関して,「京」に対してアプリケーション実効性能100倍でこれができますというレベルの説明では弱いという御指摘ですか。
【滝沢委員】  そうですね。そういう印象は受けていないです。自分たちのアプリケーションというサイドでと言うと幅が広くなりすぎて私が代表すべきではないですが。
 こういうものがあるからこれが必要ですとか,若しくは,この規模を一つ作ると,個別に10個作るよりも電力パフォーマンスがいいですとか,何々ですよということがあるのであれば,みんなが喜んでそれを作りたいなというふうに思うと思うんですけど,僕は否定している意図は全然なくて,そのバランスというのを取らないといけないと思うので,それが何なのかというのを見ないと,結局はこの大きさのコンピュータの議論にはならないのかと思ったということです。
【小林主査】  「京」のときも,ポスト「京」のときも,もちろんコンピュータは道具ですので,それによってどういうサイエンスが進むかとか,あるいはエンジニアリングがどう進むかとか,そういう議論をした上で,こういうものが必要だということで開発が進められてきたわけですが,それと同じようなことをポスト「ポスト「京」」に対して,必要だと思います。もし,もう性能は要らないという話になったら,単に大きなものを作っても意味がないので,必然性がないとは思いますけど,ただ,いろんな分野でまだまだ計算能力が必要だというところもあるでしょうし,データサイエンスとかいろいろな新しい分野のニーズも考え,こういう機能なり,性能が必要だということを議論していけばよいと思います。
【須田主査代理】  私の個人的なというか,「京」ができるときからの印象ですけれども,古典系はもうそんなに要らないんじゃないかという気がしていて,必要なのは量子で,かつ,多体系になって,要するに,電子が3つとか4つとか5つの相互作用でないと説明できない現象というのをシミュレーションしようとすると,それでもう4乗,5乗,6乗という計算量が必要になってきているので,そういう問題が現状の「京」でも難しいサイズの問題になっていますし,あと,私はそっちの方はよく知らないんですけども,バイオ,それから,生命関連の話でまだまだこれからいろんなことをやっていける可能性が秘めているんじゃないのかとは思っています。
 古典系の課題とすれば,非常に長時間なものと短時間なものと併せるような,そういう昔から言われていますけれども,マルチフィジクスとかマルチスケールみたいなそういうのがまだまだいろいろやることがあるんだろうなと思って,その中にAIというのも入ってくるんだろうというふうには思っていますけれども,それは何かすごく大きなシステム。1個という感じでは必ずしもなくて,そこそこの。例えば今の「京」の半分ぐらいのやつが100個ぐらいあれば,すごくいいことができるのかとは思っています。
【滝沢委員】  そういう観点から言うと,この場でですけど,大きいものじゃないと,できないもの以外は余り議論する意味がなくなってしまうように思うんですけれども,大きいコンピュータ1台に対して多様なものをたくさんやることが効率的ですということが,もし先生方がおっしゃるのであれば,そっちの方ですごくいろいろとやりやすいと思うんですけれども,実はそうではないですよ,そういうものはそういうもので別々になった方がいいんですよということだとすれば,それは小さなところでやっていく方がいいので,この国を挙げた大きなものというものの議論にはふさわしくないんじゃないかと思ったので,そこをはっきりしていただきたいなというか。まあ,僕は専門ではないので分からなくて,お尋ねしたと。でも,今のお話を聞くと,例えばですけれども,僕たちの分野というのは,実は対象じゃないんじゃないかという印象を受けました。新しいアーキテクチャを必要としていないんじゃないかと。今のサイズでも,今のサイズのものがたくさんある方がうれしいなというふうに多分感じているので,そうすると,これはもう切り捨てるものなのかもしれないと。でも,一緒に集めたり,そういったいろいろなものをやっていくところにくっつけることによって,僕たちも恩恵を受けられるんですよ。そういう議論になれば,こちらもすごく有り難いですし,そういったシステムになっていくのかと。
【小林主査】  ただ,HPCIといったときには,フラッグシップをもちろん中心にやりますけど,それを支える第二階層というか,そういうシステムもありますので,その全体としてどういうような在り方が必要かという議論も必要と思います。
【滝沢委員】  はい。
【大島委員】  コメントですけど,私も自分の資料の中でも書きましたけど,これから,ポスト「京」まではとりあえず汎用的ですごく速いのがあったら,いろんな分野の人がうれしいという状況があったので,こうなっているわけですね。これがその次どうなるかというのは分からないんですよね。それこそいろんな分野の人たちが,我々はこういうシステムがあったらうれしいけど,こういうシステムじゃうれしくない。うちの分野は,いや,こっちはうれしくて,こっちはうれしくないんだというのがみんなばらばらになっていく可能性があって,そうすると,そもそもフラッグシップというものが成立不能になる可能性があるわけですよね。
 ということも考えた上で話をしていいのがこの場だと私は勝手に思っていて,なので,実際に,じゃあ,この分野の人はどうですかという話をしていって,本当にポスト「ポスト「京」」はどんなふうにしますかというのは,それはそれとしてまた議論になると思います。
 恐らく滝沢先生みたいに,うちの分野としてはここからこのまま進んでいってもうれしくないという分野の人も多分いるんです。そういう人たちが出てくると思いますし,同じような意見も出てくると思うので,そのときにそれを全体としてどういうふうにやっていくとうれしいかというのがHPCIとしてやることかと私は理解しているんですけど,間違っていたら済みません。間違ってはいないですよね。
【小林主査】  ええ。もちろん,一つのシステムで全体をカバーできるなんて誰も思っていないと思うので,HPCIというインフラの中でどうそれを解決していくか,その多様なニーズをどう解決していくかと。その中にフラッグシップもあるでしょうし,あるいは場合によっては八ヶ岳で,その分野ごとに頂があるものもあるでしょうから,そこを考えていくという場でよろしいのかと思っています。
【鯉渕委員】  私のイメージだと,よいインフラができると,それに触発されて,また使い方が少しずつ変わっていき,その使い方にあわせて,さらによいインフラが登場するという循環があります。フラッグシップでいくという意味ではなく,先ほどおっしゃったように,複数のマシンかも知れませんが,何か変わることによって使い方が変わり,また何か得られて,それによってまた新たなインフラが必要になっていくという,そのインフラの好循環というのがこれまで続いてきたんだと思います。したがって,そのような流れに乗るという発想はあんまりないものでしょうか。
【滝沢委員】  誤解のないようにあれですけど,簡単に言うと,研究をするには,今はコンピュータが大き過ぎるんですよ。こんなに大きくなくても十分に研究ができるんです。何て言うんでしょう。研究開発というか,新しいアルゴリズムを作ったり,どういうふうにやったらいいかということを示すに関しては大き過ぎるというような印象で,だから,こんなに大きくなくても実はできるんです。だけど,実際に答えを出そうと思ったら足りないというのはもちろんそのとおりで,僕たちも足りないと思っています。その実証をする人たちに対して,満足させるというのが今の議論がすごい大きなところになっちゃっているなというふうに思っているということです。
【小林主査】  その規模感はいろいろあるのかもしれない。ただ,キャパシティコンピューティング的に大量にバルクジョブを流すということで生産性が上がるということもあるのではないかと思います。
【滝沢委員】  同じものをたくさん流すのであれば,1個じゃなくていいわけですよね。たくさんコンピュータがあったらいいわけですよね。そうすると,同じ計算リソースを提供するものが1か所にあるのか,10か所にあるのか。どっちが効率的ですかというふうに僕たちは思うわけです。1か所の方が効率的ですよというと,すごくうれしいわけですよ。大きいものもできるし,小さいものもできるので。でも,そうじゃないのではないかというのが印象で,それはハードウェアの方が一番御存じだと思うんですけれども,それを危惧しているというか,そういうことです。
【小林主査】  ほかに何かございますか。せっかくですので,(今回オブザーバー参加の本田推進官からも)是非。
【本田数値予報モデル開発推進官】  気象庁は,防災にかかる現業官庁として数値予報モデルというものを運用しており,アプリケーション側になります。HPCIの古くからのユーザーの一人ではあると思います。
 この先,2030年ぐらいまでを見据えたときに,我々のミッションというのは大して変わらないかと思います。防災情報の精度向上というのはまだまだ求められていて,精度の良い数値予報プロダクトを提供していく必要があると思います。それを支えるためには何をしなきゃいけないかというと,今の数値予報モデルを更に高分解能化し,より精緻なモデリングをしていくということと同時に,一つの決定的な予測だけでは難しくて,ユーザーのニーズ,利用の仕方は高度になってきているので,アンサンブル情報として,確率,信頼度情報が求められており,それに応える必要がある。また,大気のシミュレーションだけじゃなくて,地球システムとして海洋とか化学物質とか,いろんなこれまで別々に存在していたモデルを一つのシステムとして扱い,この多様な構成要素を持つシステムを効率的に計算していくことが求められていくだろうと予想します。このような複雑なシステムを効率的に計算できるようなシステム,ハードウェアが必要になってくるのかとは考えております。
 また,予測をするためには,良い初期値が必要になりますが,そのためには観測データが必要になります。それこそビッグデータと言われているような観測データ,つまりセンサの性能向上も著しく,得られるデータ容量も非常に増えてきているということなので,ビッグデータとしてたくさんの観測データを一度に扱い,処理できるようなハードウェアが必要だと思います。
 計算自体は,流体力学の計算なので,従来と同じようにノード間の通信が頻繁に発生するので,新しいアーキテクチャには馴染まないかもしれませんので,従来のアーキテクチャをまだまだ追求していってほしいと思います。
 一方,アンサンブル予報では,沢山のメンバーをパラレルに効率よく走らせることができる。たくさんのデータを一遍に出力,読み書きできるようなシステムであってほしいと思います。
 これまでは,気象情報というのは,数値予報結果を元に翻訳した情報をユーザーに伝えてきた。だけど,最近は,数値予報結果のデータそのものをユーザーに提供して,ユーザーが自身のアプリケーションで更に良い情報に加工して使うという時代になってきていると思います。膨大な数値予報データが我々の世界においてビッグデータであり,このデータへ,アプリケーションを使うユーザーも一緒に扱えるようなプラットフォームが必要になるのかと思います。なお,その加工の仕方においても,既に我々は機械学習法とかニューラルネットワークとか使っていますけども,AIも今後益々使われると思います。
 地球システムモデリングについても,いろんな分野の研究者の能力をかりながら開発をしていくことになるので,官学が連携して,そして今後は更に産業界もその連携に入ってくるかもしれません。産学官で連携できるようなプラットフォームであるようなHPCIの世界があると良いのかと思うところです。
【小林主査】  ほかに何か御質問等ございますか。
【吉田委員】  話が戻っちゃうんですけど,大きいものが要るかどうかという話ですね。これもデータ科学の特異な話かもしれないんですけど,研究者というのはいろんなスタイルがあって,自分の何か解きたい問題がありますと。それに対して,必要なものを求めるというスタイルの研究者。これは多分,自然科学の王道なのかと思うんですけど,データ科学は,そういう方もいらっしゃるんですけど,テクノロジードリブンのところが多くて,例えばこういうテクノロジーがありますと。そこから問題を考えると。つまり,こういうことができたので,じゃあ,こういうことができますよというスタイルですよね。そういう観点から言うと,ポスト「ポスト「京」」で何かステート・オブ・アートが更新されると,それによって新しいサイエンスとテクノロジーというのが生まれてくるという可能性はあるかと思うんですね。
 あとは単純に,進歩を求めたいというのがサイエンティストの特徴,共通のあれだと思いますので,何かフロンティアを求めていきたいなというのが,これはあんまり議論というか,すごくざっくりした話なので申し訳ないんですけど,ここでストップを掛けていいのかというのは,後退というのはあり得ないんじゃないかと。もし,それは2035年の社会状況でそれが許されなかったとしても,目指すべきは目指すべきなんじゃないかというのは思います。
 あと,今日の話で,小林先生のスライドがちょうど出ていますけど,これは別に議論というか,感想で,計算科学駆動型データ科学,あと,データ科学駆動型計算科学と,これは先生の造語ですか。
【小林主査】  はい。
【吉田委員】  そうですか。非常に私はいいなと思っていまして。
【小林主査】  ありがとうございます。
【吉田委員】  そうですね。私が考えていることはこれだと思うんですよね。計算科学駆動型データ科学とデータ科学駆動型計算科学,この定義というのはいろいろあると思うんですけど,例えば実験計画,データ科学,シミュレーションを回すというのが計算科学駆動型データ科学。データ科学駆動型計算科学は,多分データ同化なんかもそっち側だと思うんですね。あと,きょう,資料に少し出てきましたけど,慶應大学の泰岡先生がデータ科学を使ってシミュレーションを加速する。MDの計算ですね。GANという,ニューラルネットワークを使って加速させるというProof of Conceptが示されましたけど,そういった研究もデータ科学駆動型計算科学という形になるんじゃないかと思います。まだまだそういう潜在的なデータ科学とHPC,シミュレーションの融合というのはあって,ポスト「京」ですかね。それである程度ビジョンを明確にして,次に,ポスト「ポスト「京」」という,そういった流れを作り出していければなというか,いきたいですねという話です。
 以上です。
【小林主査】  ありがとうございます。
【佐野委員】  私も滝沢先生の話に戻るんですけれども,計算機屋さん側からのコメントですけれども,トップのマシンの技術というのは下りてくるわけですよね。ですので,ふだんの研究者の方がスキームの開発に使うような環境もより安くなって,より高性能で,より大規模化していくと思うんですよ。あとは,そのスキームというのも結局,最終的には答えを得るために使うものですので,その時代のハイエンドの大規模マシンを使うためのスキームになるわけですよね。ある程度はですね。そうすると,ハイエンドマシンと同じようなものが,小規模であってもふだん使えた方が良いというのはあると思うんですよね。
 そういう意味では,ふだんは使わないかもしれないけれども,ハイエンドはハイエンドで研究開発をしておいて,それがおりてきた計算機を使って,ふだんの研究でも,将来それを使うための研究をそこでするというのは有りだという気はしています。これまでと同じ流れですけれども。
 そのアプリケーションの最終的なキャパシティとして,ハイエンドマシンはもう要らないという話じゃないですよね。
【滝沢委員】  要らないことはないんですけれども。
【佐野委員】  ですよね。答えを得るためには大規模が必要。でも,ふだんの研究では小規模でも研究はできるという。
【滝沢委員】  そうですね。それが第一なのと,あとは,結局,計算したいものをしたときに速くならないので,やりたいことをやろうとすると,年月がたってしまう。こういうのをやりたいんだよなと思って,今こんなに大きいコンピュータがあるんですと言われても,それを解くのには,じゃあ,1か月掛かります。1か月かというふうになってしまうような状況にあって,それを短縮することができないことが一つの問題になっていると思っているので,そういう意味で使い切れないという印象があります。そのリソースを使い切れないという。
【佐野委員】  それはそのアプリケーションの実行時間ということではなくて,使う時間も含めて考えてという話ですか。
【滝沢委員】  いや,実行時間を考えたときに,ですね。
【佐野委員】  そうですか。まだまだその性能は必要ですね。
【滝沢委員】  必要ですけれども,その性能の伸び方が並列計算によってしか伸びない状況であるために,並列化するためには,少ない数のものは計算できないので,結局大きくしてしまって,問題が大きくなってしまうので,到達点まで掛かる時間が結局は伸びると。だから,短時間にはできていないので,その目的は達成できていない。
【佐野委員】  なるほど。それに関しましては,ハードウェア側からの意見というか,コメントですけれども,もしコストとかそういうものを度外視すれば,滝沢先生がやりたい計算専用のものをもし作れば速くなります。今でもですね。ただ,それに見合うコストがとんでもなく掛かるので,汎用化して,皆さん,相乗りで同じシステムを使った方が全体ではいいですし,現実的だからですよね。ただ,今はそうですけれども,2035年では状況が変わってくる可能性はあると思うので,私はああいう意見を述べたわけです。
【滝沢委員】  そうですね。僕は本当にそれはすごく期待しているところであって,その僕たちのものがすごく速くなるんですよというのを示すには,何か小さいシステムで例えば一緒に共同研究させていただいたら示せるような気がするんですよ。これができるので,このコンピュータがあると,これができるんですよというふうに言いたくて,それをみんなが持ち寄った状態で,ポスト「ポスト「京」」なので,その間にはそういうことがないといけないのかというふうに。だから,このサイズ,お願いしますというふうに言いたいというところです。
【佐野委員】  どちらかというと,基礎研究向けのシステム,プラットフォームみたいな感じですかね。
【滝沢委員】  いや,せっかく一番大きいものを作るべき,僕も本当にそういうふうに思っているんですけれども,大きいからできる。大きくないとできないものというのは絶対に必要だなということで,それがあって,それの周りで僕たちは研究させてもらうのでももちろんいいんですけれども,一番上というのが何かというものが見えないと,多分みんなは推してくれないと思うので,それが何であって,そのチャレンジできるものが何であって,どういうアーキテクチャなのかみたいなところまでが議論された方がいいんだろうなと思っています。
 例えば先ほどの吉田先生の話では,何でもいいから,すごいものがあったら,それに順応する人たちもいるんですよということもあったので,例えばハードウェアとしてはこういうものだったらすごいものができると思っていますというふうに,そちら側からのものがあってもいいと思いますし,ソフトウェア側でこういうのがあったらこれができるので,これを作ってほしいですというのでもいいとは思うんですけれども,何らかの理由というのを持ちたいなというふうに思いました。
【伊達委員】  いいですか。
【小林主査】  はい,どうぞ。
【伊達委員】  滝沢先生の御意見を伺っていて思ったんですけど,そういう意見をすごく重要視しないといけないなというのは思います。それと僕が思っているのは,HPCIというところで,サイズだったりだとか,性能だったりだとか,ソフトウェアとかハードウェアの技術の多様性を受け皿として機能しないといけないと思うんですよね。
 多分,一つある批判は,もしかしたら限られた人しか使えないじゃないというように見えてしまっている現状があると思うので,そういうところに技術あるいは運営する人という面で,ちゃんと適材適所な場所を見つけてあげるということをやらないといけない。更にその上で,HPCIという基盤を使って,人の交流がなされていて,実は速くならないと思っているかもしれないけど,実はその連携によって速くなるかもしれないという。それができれば,逆に言うと有り難いわけですよね。そういうようなところで,ちゃんとHPCIというか,コンピューティングインフラストラクチャーというか,もうそういう,皆さんがとにかく入ってきてもらって盛り上がるというところを作っていかないといけないのかと思いました。
 もう一つあるのは,2035年頃というのは人口が減っているから,国際連携というのがすごく重要なのかと個人的には思って,研究者の状況もすごく変わっていて,もしかしたらどうなっているんでしょうと疑問に思いました。
 最後はコメントです。
【小林主査】  1台のシステムで全てカバーするのは基本的には無理なので,多様性は第二階層も含めて全体で考えていくべきと思います。今後そういう議論をして,まだここで35年のマシンのイメージを作れという話ではなくて,その多様性が必要だということをここで議論すればいいのかと思っておりますので,引き続きよろしくお願いします。
 ほかに何かございますか。はい,どうぞ。
【須田主査代理】  いいですか。いや,私,誤解されているような気がするので。私はいろんな,各センターが自分の個性を出さなきゃいけないという中に,古典の流体系のアプリというのは本当にもう世の中にたくさんあるわけなので,それに特化したアーキテクチャを追求していくグループというのが一つ必要だと。少なくとも一つ。宇宙も,それから,気象も似たような特性を持っていますから,そういうグループというのはあるんだろうというふうに,そういうのを作っていかなきゃいけないし,みんなそれぞれ腹を決めて,とにかくデバイスの進歩というのをそんなに望めないということは,じゃあ,あるデバイスを何に使うのかと。どういう計算が必要だから,こういうバランスで作りましょうというものを作っていかないといけないと思うんですよね。
 それが多様性という話であって,その中で,本当に最大のものが必要になる分野というものもあるし,それぞれのサイズで,最適なサイズを持っているものというのは,そういうサイズで,そこにチューニングしていくべきだと思っていますし,なので,本当に分野ごとというのが望ましいかというと,それは汎用ができれば,それがいいに決まっているんだけど,多分難しいのではないかというのが認識です。
【小林主査】  この委員会は,将来のフラッグシップではなくて,将来のHPCIの在り方なので,全体で考えていければと思います。ありがとうございます。
 ほかに何か。先生のたくさんの裾野を広げるという意味では,多様性というのは非常に重要ですけど,鯉渕委員にお聞きしますが,具体的にどうすれば増えるというふうにお考えでしょうか。
【鯉渕委員】  先ほど申し上げたとおり,枠組みとしては,私学,公立に広げるというのがあると思います。 例えば我が国ですと,私立大学が昔はスパコンを作っていたわけですよ2003年頃のトップ500には,同志社大学のPCクラスタがランクインしていました。しかし,今は完全に消えてしまっている。それはもう経済的に持つ意味がないから。また,今はクラウドがあります。
 ただ,その一方で,私学も最近のAI関係,機械学習の話によって若干,リボーンしていて,(私学の研究者も利用できる)共同利用のスパコンについては,新たなニーズが生じているはずで,そういった流れをうまく支援してあげることが良いと思います。
【小林主査】  これまでの限られた人のための特殊な機械の民主化をどのように進めるかというところでしょうか。
【鯉渕委員】  これまで国研と国立大学にはうまくHPCIの枠組みを使って,運営してきたんだと思います。いろいろ御意見はあるとは思うのですが,外から見ていると,よかったのではないかと思います。
 この絵で,頂点がぐっと上に上がっているのですけれど,これは将来のコンピュータの予測というのは正確に,どの時期にどの性能をどの方式でできるとまで言い切らないと,余り意味はないですよ。つまり,この手の予測というのは,ある意味,プレコンペティションであって,みんなが納得したような目標値があったときに,初めてみんなが取り組んで達成できるものであります。例えば半導体分野もITRS,今で言いますとIRDS,Rebooting Computing。そのスパコン版が作れるかと言われると,難しいと思います。それは長期リスクでありまして,いつかは100エクサフロップスのコンピュータができるというのは言えるけれども,二千何十年にどの方式でできるとまだ言えない。したがって,そうすると,プレコンペティションができないので,どうしていいか分からない不確定性が生じ,その不確定性によるリスクを取らざるを得ない。それは別に我が国だけの話ではない。したがって,同じ主張ですけれども,そういった意味での多様性,いろんなことをやる人を残しておくことが重要。
 先ほど須田先生から,システム系の研究者数が少なくなっているというのは非常に実感しているところであります。例えば一つの情報系の学科の中で,システム系の教授の先生が退官した後に補充されないというのはそれなりに起きております。もちろんAIの話がありますから,ちょうど同じ情報系だとしたら,そのタイミングでシステム系と入れ変えるんですよね。教員数は限られていますから。それをよしとするか,よしとしないのかというのも考えていかないと,スパコン開発に響いてくると思います。
【小林主査】  AI25万人と言っていましたからね。それに耐えられるようなインフラができるのかどうかというところもあるのかもしれませんけど。
 ほかに何か。いかがですか。
【吉田委員】  先ほど何か議論の中で,高校生というような話もありませんでしたっけ。
【小林主査】  はい。小学生のAI教育ですかね。
【吉田委員】  この前,ある方がおっしゃっていたんですけど,昔は読み書きそろばんというのがあったのが,読み書きAIになるという話をしていて,確かに本質的かと思っていまして,その機械学習,いろんなソフトウェアであったり,例えば深層学習のフレームワーク。近年,何が大きく変わったかというと,コモディティになって,あんまり数理的なディテールは分からなくても,ツールを使えると。それによってユーザーが圧倒的に,急速に増えているというのがあって。
 この前,ある記事で見ましたけど,小学生の夏休みの研究で,そのTensorFlowを使って,何か画像認識のプログラムを作ったりとか,何かそういうことが普通に行われている。2035年,そういった時代も本当に来るかと思っています。もし仮にそういった,小学生とは言わないですけど,高校生ぐらいの方がこういう,「京」でもいいですし,HPCIでもいいんですけど,そういうスパコンとなかなか量子化学計算を高校生でやるというのは難しいと思うんですけど,そういう機械学習であれば,そういったことも体験できる可能性があって,それはこういうコミュニティの人材育成というか,将来的な種まきとして,非常におもしろいかと思いました。
【大島委員】  コンピュータサイエンス(CS)の人間としては,AIとCSというのは両輪。多くの人が言っていますけど,コンピュータサイエンスとAIは両輪なので,今の流れだと,AIの車輪がドカンとでかくなって,ぶっ倒れそうな気がしていて,CSにも若者の機動力が欲しいなと思うんですけど,どうやったら集まるんでしょうかというのが私分からないんですけど,これは一体。
【吉田委員】  今,アメリカも中国もそうですけど,CSは,AIとCSというのは両輪になっているので,すごく研究者,若い人たちが入ってきますけれどもと私は聞きましたけれども。
【大島委員】  いや,日本はどうやったらCSの人が増えるんだろうなと思うんですけど。
【吉田委員】  日本は分からないです。
【大島委員】  なかなか分からないですよね。
【伊達委員】  待つしかないですかね。
【大島委員】  いや,でも,待つと,結局,今待っていたら,先細ってきてしまったので。AIがバンと上がってきたので,何とかそこをCSもついていかなきゃいけないんですけど,なかなか自分自身がそこにうまくコミットできていないんですよね。
【伊達委員】  でも,AIの方も使っていると,CS的なところの重要性を感じてもらうという。
【大島委員】  そういう流れができてくれればうれしいんですけど,現状だと,例えばツールを使って,これはできました,やったで終わってしまうとか,そのままAIに行ってしまわれると,それはそれでCSの進歩につながってくれないので,じゃあ,これで,今,何か。あれっ,なったのかな。小学生にもプログラミングをという話があるので,そういうところからもっとコンピュータサイエンスに興味を持ってもらえるような働き掛けを,HPCIに関係するような方からうまくさじ加減を調整してあげると,少しうれしいみたいになるのかとか思うんですけど,なかなか。直接的にはぴんときてないので,もうちょっとそういう発想も必要かとは常々思っております。
【小林主査】  キャリアパスでしょうね。学生さんが来るのは出口がしっかりしているかどうかだと思いますね。
【大島委員】  はい。そう思います。大学生になった人たちに,こっちに。こっちというのは,AIという立場もあるでしょうし,計算科学という立場もあるでしょうし,計算機科学という立場もあると思いますけど,大学生で入ってきた人たちにいい感じに調整したのを粉を掛けてあげることがいいのか,その前からなのかと。じゃあ,どこまでが前に行けばいいのか。なかなかその辺というのは,そういう専門家ではないので,そういうことが分かるような人たちも取り込んでいって,若いところからうまくやってあげないといけないのかという気がしますね。
【小林主査】  ありがとうございます。
 そろそろ時間も近付いているんですが,何かそのほかに御意見等ございますか。
【須田主査代理】  いいですか。質問ですけども,我々の分野でも,AI,機械学習系のタスクがこれから増えるだろうというふうには予想しているし,そういうふうに言う人たちもたくさんいるんですが,じゃあ,それは具体的にどういうアーキテクチャを狙っていくんですかというと,何かよく分からないんですよね。それって,つまり,AIというものが,機械学習というものがこの計算のタスク等の中に入ってきたときに,じゃあ,どういうアーキテクチャを我々は目指すべきなのかというのは,何か御意見がありましたらお願いしたいです。
【吉田委員】  一つ,最近のトレンドというのが深層学習ですね。要するに,行列演算を何回も繰り返すというあれで,世界的にもそういうトレンドというのは一つできていると思うんですけど,私,先ほど申し上げたように,そこに追従するというのは非常に危険だなというふうに思っていまして,テクノロジー,データ科学,本当に進歩が,テクノロジーの勃興が激しいので,つい,例えば2018年12月にある論文が出たんですけど,深層学習というのは,要するに,行列演算を階層的に繰り返していくんですね。これというのは,差分,時間の方から,差分方程式みたいなふうに見ると,これは連続時間にすると,要するに,常微分方程式とか偏微分方程式になるんですね。それで,深層学習の時間,階層を連続にしてあげて,常微分方程式のソルバとか,パラメータ推定の問題に落とし込んで,それで一気に解いちゃおうと。高速に解いちゃおうみたいな,そういったことが急にポン,ポンと出てくるわけですよね。そういったことが多分ここしばらく,少なくとも5年ぐらいはどんどん変わっていくので,深層学習の進歩も隆盛も多分もうそろそろ収束するんじゃないかと思っています。そういう意味において読めないというところですね。
 あと,私は個人的に思うのは,従来のシミュレーションで行けばいいんじゃないかと思うんですね。そこにデータ科学の穴を埋めていって,新しいシミュレーション,単独ではできなかったようなものを作り出していくというのが一番おもしろいんじゃないかと思っていますね。じゃあ,データ科学に必要なアーキテクチャって何なのかと。あんまり考えても答えは見つからないんじゃないかと思います。だから,多様性というか,HPCIみたいなので,こういういろんなダイバーシティの高いものを作っておいて,必要に応じて。
 答えになっていないですけども。
【小林主査】  ほかによろしいでしょうか。
 それでは,どうもありがとうございました。


小林主査より閉会発言


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