感染症研究の推進の在り方に関する検討会(第1回) 議事録

1.日時

平成30年12月4日(火曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省 17階 研究振興局会議室

3.出席者

委員

味戸委員、荒川委員、石井委員、岩田委員(主査)、石川委員、斎藤委員、佐藤委員、山崎委員、横田委員

文部科学省

磯谷研究振興局長、吉田研究振興戦略官、高城先端医科学研究企画官、田邉研究振興戦略官付係長

オブザーバー

井口厚生労働省結核感染症課室長、宮川日本医療研究開発機構感染症研究課長

4.議事録

【田邉係長】  それでは、時間となりましたので、ただいまより第1回感染症研究今後の在り方に関する検討会を開催いたします。
 まず、石川委員でございますけれども、遅れて到着と聞いておりますので、始めさせていただきます。
 委員の皆様におかれましては、御多忙の中お集まりいただきまして誠にありがとうございます。私は、研究振興局研究振興戦略官付の田邉でございます。主査に進行をお願いするまでの間、進行役を務めさせていただきます。
 初めに、検討会の開催に当たり磯谷研究振興局長より御挨拶を申し上げます。
【磯谷局長】  改めましてこんにちは。皆さん、どうぞよろしくお願いいたします。
 今、司会からも申し上げましたけれども、委員の皆様方におかれては、日頃から感染症研究の推進に対して多大なる御支援、御協力を賜り、また、お忙しい中、今回の検討会について委員をお引き受けいただきましたこと、心から御礼申し上げたいと思います。
 感染症につきましては、皆様方、専門家でいらっしゃいますので釈迦に説法ですけれども、現代社会においてグローバル化が進んで、国境を越えて感染が拡散するケースが出てきていることは言うまでもありません。我が国におきましても、近年、感染症による死亡者数自体は少ないわけでありますけれども、このような世界の状況を踏まえますと、今後、感染症が拡大するリスクというのは以前より高まっているということでございます。国際的にも、エボラ出血熱など、高い病原性を持つ病原体による重篤な感染症に対する対策が大きな課題となっているわけであります。このため、国内のみならず、国際的な連携の下に、感染症の感染制御に向けた取組を実施する必要が生じております。
 これまで、文部科学省では、J-GRID(感染症研究国際展開戦略プログラム)におきまして、国内の大学がアジア・アフリカに設置しました海外研究拠点を活用して、長年培ってこられました相手国機関との信頼関係を基に、感染症対策に資する基礎研究、人材育成を行ってまいりました。
 また、J-PRIDE(感染症研究革新イニシアティブ)におきましては、長崎大学に設置予定のBSL-4施設を中核とした感染症研究拠点への研究支援、あるいは次世代を担う若手研究者に対する支援を実施しております。これらの事業につきましては、来年度にJ-GRIDの事業期間が終了いたします。J-PRIDEは3年目の中間の年ということでございます。節目の年でございます。この検討会を発足させていただいて、この検討会ではこのような時期を捉えて、これまでの事業の実施状況、あるいは国内外の感染症の動向、感染症研究の現状等を踏まえて、今後さらに発展・推進すべき具体的な取組を、他の事業との役割分担も考慮した上で検討していただきたいと考えてございます。
 今後の感染症研究のさらなる強化に向け、本検討会での忌憚のない御意見をお願いしております。どうぞよろしくお願いします。
【田邉係長】  ありがとうございます。磯谷局長ですが、公務の都合によりここで失礼させていただきます。
【磯谷局長】  今日は失礼させていただきます。よろしくお願いします。
【田邉係長】  次に、配付資料の確認をさせていただきます。資料はお手元のタブレットに格納しておりますので、そちらで御確認いただくようお願いいたします。
 資料と参考資料と、2つのフォルダがございまして、資料のフォルダには議事次第、資料1-1から2-2までの合計5点、参考資料のフォルダに、参考資料1から7までの合計7点を入れさせていただいております。操作等を含む不明点がございましたら、事務局まで御連絡いただくようお願いいたします。
 それでは次に、本日御出席いただいている委員の皆様方を御紹介させていただきます。資料1-1の3ページに委員の一覧がございますので、そちらに基づいて、名前を順番に読み上げさせていただきます。
 まず、味戸慶一委員です。
【味戸委員】  よろしくお願いします。
【田邉係長】  荒川宜親委員です。
【荒川委員】  よろしくお願いいたします。
【田邉係長】  石井健委員です。
【石井委員】  よろしくお願いします。
【田邉係長】  岩田敏委員でございます。
【岩田委員】  岩田です。よろしくお願いいたします。
【田邉係長】  齋藤昭彦委員です。
【齋藤委員】  よろしくお願いいたします。
【田邉係長】  佐藤裕徳委員です。
【佐藤委員】  よろしくお願いします。
【田邉係長】  山崎伸二委員です。
【山崎委員】  よろしくお願いいたします。
【田邉係長】  横田恭子委員です。
【横田委員】  よろしくお願いします。
【田邉係長】  なお本日は、川名委員、俣野委員、脇田委員からは御欠席の御連絡を受けております。
 また、本検討会ではオブザーバーとして、厚生労働省健康局結核感染症課から井口室長に。
【井口室長】  井口でございます。よろしくお願いいたします。
【田邉係長】  日本医療研究開発機構(AMED)戦略推進部感染症研究課から宮川課長にお越しいただいております。
【宮川課長】  宮川でございます。よろしくお願いします。
【田邉係長】  次に、事務局の紹介をさせていただきます。
 吉田研究振興戦略官。
【吉田戦略官】  吉田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【田邉係長】  高城先端医科学研究企画官。
【高城企画官】  高城でございます。どうぞよろしくお願いします。
【田邉係長】  そして私、田邉になります。よろしくお願いいたします。
【岩田委員】  石川委員、お見えになりました。
【田邉係長】  失礼いたしました、石川豊数委員。
【石川委員】  よろしくお願いします。遅れまして申し訳ございません。
【田邉係長】  よろしくお願いいたします。
 それでは、議事に入る前に、本検討会の主査ですが、設置要綱第4条の(1)に基づきまして、あらかじめ研究振興局長より岩田委員を指名させていただいておりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
 それでは、岩田主査から一言御挨拶をお願いするとともに、今後の進行につきましては岩田主査にお願いしたいと思います。
 よろしくお願いいたします。
【岩田主査】  皆さん、こんにちは。ただいま御紹介いただきました、主査を務めさせていただくことになりました岩田と申します。私は現在、国立がん研究センター中央病院の感染症を担当しておりますけれども、昨年の3月までは慶應義塾大学の方で感染症、感染制御を担当して思いました。もともと小児科医ですけれども、最近は余り小児科はやっていなくて、感染症の方を主にいろいろ担当しているという状況でございます。
 先ほど、局長のお話にもございました、文科省で今進めている感染症の大きなプロジェクト、J-GRIDとJ-PRIDEとありますけれども、J-GRIDの第3期になるところと、J-PRIDE立ち上げのときにいろいろ委員としてお手伝いさせていただいた関係で、今回主査を務めるということになったんだと思います。不慣れなので、うまくコントロールできるかどうか分からないんですけれども、是非よろしくお願いいたします。
 感染症は今も昔もとても大事な疾患であるわけですけれども、現在の感染症においては、やはり診断、治療、予防、全部進歩してきて、すごくコントロールできるようになったんですけれども、先ほどの局長のお話にもありましたようにグローバル化の問題ですとか、いかんせん、患者さんが増えてきていることとか少子高齢化の問題、それから、自分の専門としての薬剤耐性とか、そういったところのいろんな背景が変わってきているというところで、これに対して、やはり感染症関連の研究も前を向いて進めていかないといけないということだと思います。
 この会は、先ほどの局長のお話にもありましたように、J-GRID、J-PRIDEの先を見据えて、これからの国がお金を出して進める感染症研究をどういうふうに進めていったらいいかということを、皆さんにいろんな御意見を出していただくということですので、委員には産官学からそれぞれ感染症の専門の方に参加していただいていますけれども、是非、忌憚のない御意見を頂ければと思います。
 どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、議事に入りたいと思いますけれども、まず初めに副主査についてですが、設置要綱の第4項の(5)におきまして、主査は副主査を指名することができるというふうにされております。そうしましたので、私としては、今日は御欠席なんですけれども、国立感染症研究所の所長でいらっしゃいます脇田委員にお願いできればと思っております。脇田委員には、あらかじめ御内諾は得ておりますので、決して欠席裁判ではございませんので、御了解いただければと思いますけれども、よろしいでしょうか。いかがでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【岩田主査】  それでは、よろしくお願いしたいと思います。
 それでは、議事に入ります。まず、議題1の検討会の進め方について、事務局の方から御説明をお願いいたします。
【高城企画官】  事務局でございます。私の方から御説明をさせていただきます。
 タブレットの資料1-1という資料を御用意いただけますよう、お願いいたします。設置要綱でございます。冒頭で前後して、設置要綱の説明がありましたけれども、改めてこちらで御説明をさせていただきたいと思います。
 タブレットにつきましては、指で動かすと下の方に行けますので、適宜、動かしながら見ていただければと思います。
 初めに、設置の目的というところでございます。冒頭御紹介ございましたように、研究振興局におきましては、感染症研究の基礎分野について事業を実施しているところでございます。次年度、31年度でございますけれども、こちらで事業の節目を迎えるということから、今後の事業全体の在り方を検討いただくものでございます。
 2の検討事項でございますが、こちらに記載のとおり、課題、評価、在り方に関することでございます。また、3、委員の任命、4、検討会の運営、それから設置期間につきましては、記載のとおりでございます。
 また、情報公開の関係でございますけれども、この会議につきましては、原則公開で実施してまいりたいと思っております。また、次ページにかけてただし書きがございますが、当事者又は第三者、この利益を害する可能性のある議事につきましては、全部又は一部を非公開とすることができるものとしてございます。守秘義務、庶務については記載のとおりでございます。
 その他、議事の手続、検討会の運営、こちらについて必要な事項は、主査が本会に諮って決めていただくということになっているところでございます。
 委員一覧につきまして、別紙に付けさせていただいておりますので、御高覧いただければと思います。
 続いて、在り方検討会の進め方という資料1-2、横向きになっている資料でございます。
 資料の左から現時点でございまして、右に向かっていくほど次年度までのものを表した時系列になっております。全体といたしましては、来年の5月頃までに本日を含めまして6回程度の検討会を経て研究推進の在り方について取りまとめを目指してまいりたいと考えているところでございます。本日はその第1回目ということでございます。後に御紹介いたします検討事項のたたき台に沿って、現状や課題を議論いただきたいと思っております。
 第2回、第3回につきましては、J-GRID、J-PRIDEの各事業について、暫定的な評価をお願いしたいと思っているところでございます。こちらの評価につきましては、最終的には中段落の右端にあるように、次年度末までに最終的な評価を定めたいところでございますけれども、この在り方につきましては5月頃までに一旦取りまとめたいというところでございますので、暫定的な評価を、第2回、第3回で行っていただきたいというところでございます。
 事後、重点化すべき領域など、研究推進の在り方について3回程度、併せて、必要に応じて専門家等のヒアリングを実施して取りまとめていただきたいと考えております。
 次のページに行っていただきますと、事業評価の進め方(案)というものがございます。こちらについて説明いたします。
 左手のJ-GRIDにつきましては、事業終了に伴う事後評価、右手のJ-PRIDEについては、中間的な評価となってございます。したがいまして、左手、J-GRIDにつきましては、事業の達成状況・成果、J-PRIDEにつきましては進捗状況などをそれぞれ評価いたしまして、今後の研究の在り方や事業展開に利用するということを目的としているところでございます。
 中段にございます評価の観点、これにつきましては、これまでそれぞれの事業の中間評価ですとか事前評価で使用してきた観点で、事業の運営、目標の達成や有用性、進捗状況等、それから、総合評価という大きな3本柱の項目を基本としております。J-GRID、J-PRIDEそれぞれの事業特性を踏まえて、項目の詳細については具体的な観点の案をさらに下に細かく示しておりますので、御確認をお願いいただければと思っているところでございます。
 続きまして、下から2番目のカラムに実施方法というのがございます。実施方法につきましては、それぞれの事業につきまして、PS、プログラムスーパーバイザーという各事業を管理していただいているPSですとかPO、プログラムオフィサーですとか、いらっしゃるわけですけれども、そのうちのPSの方を中心にヒアリングを実施してまいりまして、その結果を皆さんに御確認いただき、意見を頂戴いたしまして、一旦暫定評価として取りまとめたいと考えているところでございます。
 2ポツ目の最終的な評価につきましては、先ほど御紹介のように次年度末までにAMEDの実施する個別評価、こちらも参考といたしまして取りまとめる予定となっております。
 3ポツ目、本評価につきましては、第三者の権利利益を害するおそれのある内容を取り扱いますので、先ほど御紹介の設置要綱に照らしまして、非公開の取り扱いとさせていただきたいと思っております。
 一番下の段落でございますけれども、評価における事業関係者の意見の取り扱いでございます。研究代表者、PS、PO等、この方々につきましては、当該事業に関係する事項につきましては評価に直接反映せず、参考の意見とさせていただきたいというところでございます。
 事務局からの説明は、一旦こちらでおしまいになります。よろしくお願いいたします。
【岩田主査】  ありがとうございました。
 ただいま、事務局から設置要綱、あるいは審議の進め方等について御説明いただきましたけれども、御説明いただいた内容につきまして委員の先生方から御質問、あるいは御意見があればお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 このJ-GRID、J-PRIDEに、実際に関わっている先生もいらっしゃいますし、そうじゃない先生もいらっしゃるかと思いますけれども、何でも結構ですので、もし何か御質問あればお願いしたいと思います。
 PSの方とかのヒアリングというのは、別にこの会でするわけではないんですね。
【高城企画官】  そちらでございますけれども、順次、実施していこうと思っております。ここの会ではなくて違う場でやろうと思っております。既に、J-GRIDにつきましては実施をしております。来週あたり、J-PRIDEの方もヒアリングを実施したいと思っております。そちらの方を、PSの方に概要を取りまとめていただいたものを、第2回、第3回の方で説明していただき、それを踏まえて皆さんの御意見を頂戴したいと考えているところでございます。
【岩田主査】  ありがとうございます。
【田邉係長】  すみません、少し補足させていただきます。本検討会の第2回、第3回においての説明というのをPSにやっていただくということを今のところ想定しております。
【岩田主査】  PSの方にいらっしゃっていただいて。
【田邉係長】  PSの方に来ていただいて、PSからこの場で御説明していただくということを想定しております。
【岩田主査】  ありがとうございました。分かりました。
 ほかに何か御発言はございますでしょうか。荒川先生。
【荒川委員】  J-GRIDは、もともと文科省が始められた事業で、それがAMEDの方に運営といいますか、取りまとめが移管されていますね。文科省とAMEDとのその辺の役割分担、あるいは連携とか、そのあたりがよく分からないので、もし……。
【高城企画官】  ありがとうございます。AMEDは資源配分機関ということでございます。いわゆる健康・医療戦略の推進法といったものが平成26年だったかにできまして、その後、AMEDが平成27年に立ち上がりまして、以降、事業運営の方はAMEDにやっていただいているところでございます。ただ、予算の方は文部科学省で予算要求をしておりますし、事業、施策の概要につきましても文部科学省の方で関係省庁と調整をしながら、それをAMEDと共有した上で研究代表者の方に資源を配分し、事業を実施していただいているという格好になっております。
【荒川委員】  そうしますと、評価はAMEDさんの方でやられて、再度、その結果を基に文科省でもやられるという二段構えの評価という理解でよろしいでしょうか。
【高城企画官】  はい、そのようになっております。
【岩田主査】  よろしいですか。ほかには何か御質問ございますでしょうか。よろしいですか。
 もし何かあれば、また後で御意見頂ければと思います。
 それでは、次に議題2の感染症研究の現状や課題等に関することについてでございますけれども、資料が2種類ございますので、まずは新興・再興感染症制御プロジェクトの現状について、事務局から御説明をお願いいたします。
【高城企画官】  失礼いたします。それでは、資料2-1に基づきまして御説明をさせていただきたいと思います。資料2-1を御用意願います。こちらも横の資料になっております。
 1枚目でございますけれども、先ほど御紹介の政府の健康・医療推進本部というところで、重点化すべき研究分野というものを9個、プロジェクトを掲げておりまして、そのうちの1つが感染症に係る研究プロジェクトという位置付けになっております。この8というのは、9個のうちの8番目、そのうちの1つということになります。
 こちらの資料でございますけれども、基礎研究から右に向かって実用化までのフェーズに沿って、文科省、それから厚生労働省で研究開発を進めているというところでございます。ごらんのように、文部科学省の方は薄いグリーンの基礎研究を担当いたしまして、赤の厚生労働省の事業と連携・協力をしているというところでございます。
 続きまして、2枚目をごらんいただきたいと思います。こちらは事業の中身についての御紹介でございます。本事業につきましては、平成27年度より、AMEDより実施されているところでございまして、その後、上段に書かせていただいておりますように、国際的に脅威となる感染症対策の基本計画、それから、薬剤耐性対策アクションプログラム及び長崎大学の高度安全実験施設(BSL-4)整備に係る国の関与について、こうしたものが関係閣僚会議で順次決定されてきたというところでございます。そのような状況を踏まえた形で事業を実施しているところでございます。
 具体的には、こちらの青枠にありますように、インフルエンザをはじめとする4大重点課題、それから、エボラ出血熱等の国際的に脅威となる感染症、こちらを対象といたしまして、文科省におきましては、J-PRIDE及びJ-GRIDを実施しており、厚生労働省と連携・協力をしながら、予防・診断・治療などへの貢献を目指して事業を進めているというところでございます。
 少しずつ各論に入ってまいります。次のスライドをお願いいたします。
 こちらが3枚目のスライドになります。初めに、文部科学省のJ-GRIDの事業について御紹介させていただきたいと思います。中段にございますように、こちらは9か国に9つの拠点を置きまして、アジア・アフリカの海外研究拠点において、相手国と協力をしながら、先ほど御紹介の4大重点課題に加えて、結核、エイズ、小児重症肺炎などについて新たな診断・治療薬シーズの開発、それから、疫学研究などによる病原体情報の収集・共有など、こうした基礎的研究を推進いたしまして、感染症制御に向けた予防、それから、診断・治療に資する新しい技術の開発などを図っているものでございます。
 続きまして、次はJ-PRIDEの事業でございます。こちらは先ほど御紹介の国際的に脅威となる感染症対策強化の基本計画などを踏まえまして、感染症における革新的な医薬品創出を図ることとしております。
 具体的には、左下のブルーの枠の中のように、BSL-4施設を中核とした感染症研究拠点に対する研究支援として、長崎大学の実施いたします病原性の高い病原体の研究、それから人材育成、研究設備整備を支援しているところでございます。また、真ん中の黄色枠のように創薬シーズの標的探索研究として、下に掲げる3つの分野を対象に、次世代を担う若手研究者を中心として、異分野連携、斬新な発想などに基づく基礎的な研究を推進しているところでございます。
 文科省からの事業説明は以上となりますので、引き続き、厚生労働省の事業の説明をお願いいたします。
【井口室長】  厚生労働省でございます。右下、5とあるスライドでございます。新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業というものでございます。治療薬の発達でありますとか予防接種の普及によって、一時は制圧されたかに見えている感染症ですけれども、新興・再興感染症として、今なお猛威を振るう可能性を有しているということで、これらの感染症から国民を守るために、本研究事業では、予防接種に関する基本的な計画であるとか、特定感染症予防指針、ストップ結核ジャパンアクションプラン等々を作っておりますけれども、これらを踏まえて基盤的な研究から、診断薬、治療薬、ワクチンの開発等の実用化に向けた開発研究までを一貫して推進しているというところでございます。
 具体的には、下に研究課題として挙げておりますけれども、感染症サーベイランス、病原体データベース、感染症拡大防止等の総合的な対策に資する研究から始まりまして、5つ並んでございますけれども、これら、5つの重要な研究課題を通して研究開発を進めております。行政的ニーズに直結する研究課題を推進しているところから、喫緊の課題への対応であるとか、応用研究、臨床研究に至るまでの幅広い対応が求められているというところが特徴でございます。
 このような研究課題を推進するために、国内外の研究機関との連携対策の構築というのが重要だと考えておりましてシンポジウムなどを通しましたJ-GRIDとの連携等を実施しております。当事業では、今後も文部科学省と連携を行いつつ、研究開発事業を推進してまいりたいと考えております。
【岩田主査】  ありがとうございました。
 ただいま、文部科学省、それから厚生労働省、それぞれ、感染症に関わる大きなプロジェクトに関して御説明がございましたけれども、今の御説明に関しまして何か御質問があればお聞きしたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。
【齋藤委員】  先ほど高城さんから御説明があった2ページの、「エボラ出血熱等の国際的に脅威になる感染症」、この領域は、多分これから更なる新しい感染症が出てくる可能性があります。これらの感染症は、世界のどの場所で起こるかなかなか予測がつきません。J-GRIDでは研究を行う場所が指定されているので、そこで起これば研究対象になり得ますが、J-GRIDで指定されていない場所で起こる可能性も十分あります。新興感染症が指定されていない場所で起こったときに、どのような体制で研究を進めるか、臨機応変な対応はこれからの新興感染症を考えていく上で非常に大事な点だと思います。その点について、拠点のこととか、その対応について、お考えはございますでしょうか。
【高城企画官】  なかなか難しい課題でございます。9拠点というところで、J-GRIDの方はやっておりますけれども、必ずしもここでぴたっと感染症が発生するという限りではないんですけれども、近隣の国とも多少協力なり情報を得ながら進めていくということは一つ考えられるかなとは思っております。
 ただ、現時点、文部科学省の事業としてやっているのは、資料の3枚目にございますような国において拠点を設けてやっているという現状でございますので、これ以外の国で起こったときに直ちに対応できるかというと、そこは何とも言えない部分がございます。
 あくまで、私どもがやっているのは基礎的な研究分野でございますので、例えば具体的な感染症対策という形になると、厚生労働省とよく相談をしながら、第一正面には厚生労働省の方で情報をとりつつ実施していく形になるのかなと。その際にどんなことがお手伝いできるのかなというのも御相談かなと思っているところでございます。
【齋藤委員】  ありがとうございます。
【岩田主査】  井口さんの方から何か追加はございますか。
【井口室長】  特にございません。
【岩田主査】  そうですか。分かりました。
 ほかにはいかがでしょうか。
【荒川委員】  名古屋大学の荒川でございます。1点教えていただきたいのは、文科省さんでも新興・再興感染症に関する研究の方を、これまでもいろいろ展開してこられましたけど、厚労省の方でも新興・再興感染症のいろいろな対策等が行われてきていると思うんですけれども、この省庁間の調整をする場というのは、中身が重複しないようにとか、あるいは、今後どちらが中心になって進めるのかとか、そういう省庁間の調整の機関というのは何かあるんでしょうか。
【高城企画官】  こちらの方は、例えば、厚生労働省と文科省で研究自体について直接話し合う場というのは具体的にはないんですけれども、AMEDの事業で、両者、今御紹介したような事業をやっておりますので、それらの合同のシンポジウムをやったり、合同のPD・PS・PO会議という、いわゆるこのプログラム全体をマネジメントされている有識者の方々の会があるんですけれども、そういう場で情報交換をしているという現状でございます。
【吉田戦略官】  補足しますと、この資料の1枚目にあります、1ページの新興・再興感染症制御プロジェクトというのは、全体は内閣官房の健康・医療戦略室というところが取りまとめをしておりますので、そこが政府全体の総合調整役という役割を担っております。そこでそれぞれ、文科省、厚労省がやっております事業について、重複がないかとかきちんと連携ができているかというところも確認をしていただきながら、それぞれの事業を展開していくというところがございます。
 今、実施の方につきましては高城から御説明がありましたように、AMEDの方に事業全体の実施をお願いしているということになりますので、実施の方につきましてもそこで一括した形で調整が行われているという形になっているということでございます。
【岩田主査】  よろしいですか。
【石井委員】  医薬基盤・健康・栄養研究所の石井です。厚生労働省管轄の研究所になります。以前、AMEDに出向していた関連もありまして、是非質問させていただきたいのが、感染症研究として、先日のG7のサミットや政府からAMRに対するアクションプランがだされました。ワンヘルスなんていう言葉も出てきました。その時点で、(担当省庁として)いわゆる文部科学省と厚生労働省以外の省庁の、例えば農林水産省でありますとか、若しくは経産省等の、いわゆる他の省庁も関連するような事案が出てきたかという理解です。これは健康医療戦略室マターかもしれませんが、今後、これから議論になると思いますので、そのあたりの関連を今どのようにお考えになっていらっしゃるか教えてください。
【高城企画官】  今の観点からの検討というのはしたことがございませんので、今後念頭に置いていきたいと思います。
【岩田主査】  また検討事項のところでそういうテーマも出てくるかと思うので、是非また御意見頂ければと思います。
 ほかはよろしいでしょうか。
 特に御質問がなければ、少し早めに進んでおりますけれども、次の資料、本検討会の検討事項(たたき台)というのがあるんですけれども、そちらについて事務局の方から御説明をお願いいたします。
【高城企画官】  それでは、お手元に資料2-2という資料を御用意いただきたいと思います。検討事項(たたき台)と書かれた横の紙でございます。
 こちらの1枚目でございますけれども、検討事項のたたき台として、こちらは事務局で作成しているものでございます。1ページ目から2ページ目にかけて、現状と課題として5つの事項を挙げてございます。対象疾患、研究手法、それから診断・治療薬等の実用化、データベースの構築と利活用、次のページに行きまして人材育成、それから厚生労働省等との連携と、この5つの事項を挙げてございます。
 資料の構成について申し上げますと、こちらの事項の現状につきまして、簡単な概要をつけてございます。それから、下の矢印の先の方に議論の方向性を示しているものでございます。
 少し飛んでいただいて、3枚目に参考資料というものをつけてございます。こちらの資料につきましては、先ほど御紹介の事業の全体図、こちらに赤字で検討事項を事務局の方で付け加えたものとなっております。最初の資料、1枚目、2枚目の検討事項でございますけれども、こちらの事項の後ろの方に、※と数字を付けさせていただいているところでございます。こちらの※と数字、それから参考資料の全体図に付けております※と数字というのを合わせることで、それぞれの検討事項が全体図においてどこの位置付けにあるのかを図表上に落とし込んだものが参考資料3ページ目ということになっております。
 例えば※の1につきましてでございますが、1ページ目に戻っていただきまして、初めの対象疾患、それから研究手法のところに※1を付けさせていただいております。対象疾患の現状は記載のとおりでございますけれども、今後も対象疾患として見ていくかどうか、新たな環境の変化などに伴い留意すべき疾患などはないか。また、研究手法として現状を踏まえて推進すべき手法はないか。異分野や研究先進国との連携の在り方についてどう考えるのか。
 飛びまして、2ページ目の人材育成の部分にも※1を付けさせていただいておりますけれども、現状は海外研究拠点の活用、J-GRIDを意識しておりますけれども、こういったものですとか、また、J-PRIDEに見られるような若手の異分野連携の推進などを実施しているところでございますけれども、感染症研究を担う人材の育成の観点から、必要な取組をどう考えるか、どう進めていくか、こういった議論の方向性があるのかなと思っているところでございます。これらは、3枚目の資料においては左上のグリーンの文科省の事業の中に赤字で書かせていただいておりますけれども、今後何をすべきかという主要な検討事項の1つと考えております。
 いろいろと資料が飛んで申し訳ございません。同様に※2の関係でございます。
 1ページ目に行っていただきまして、丸の2つ目のところに診断・治療薬等の実用化、研究成果の社会還元について記載がございます。こちらの方は※2と付けさせていただいているところでございます。こちらも3枚目の全体図において※2としているところでございます。文科省の研究事業は、基礎である性格上、成果を実用化に直接結び付けるということがなかなか難しいこともあるかと思います。ゆえに、実用化に資するもの、将来に向けて実用化につながる成果としてどのようなことが考えられ、どういう説明ができるのか、また、情報を含めた成果の共有により社会還元ができるのではないか。また、基礎の成果は新たな研究フェーズなどへの導出のみならず、新たな基礎研究への活用が図れれば成果の還元とは言えないか。また、そのような典型事例などはないか、こういったことについて御意見を頂戴したいと考えているところでございます。
 また、※3、4については、資料の1枚目、2枚目の方にそれぞれ、データ構築、利活用ですとか、厚生労働省等との連携を示してございます。現状、議論の方向性は記載のとおりでございます。こちらについても全体図での位置付けを参考に示してございます。
 また、3ページ目の参考の図、一番上の方でございます。3ページ目の参考図の上部に記載してございますのは、AMEDの国際事業の例示を記載してございます。それぞれ海外と協力して感染症に関する研究事業を実施できるものとなっておりまして、例えばSATREPS、NTDs、SICORPなどがあるという例示を示しているものでございます。現在でも、特にJ-GRID事業の拠点において、一部現地においてこれらの事業も並行して実施されているところでございます。
 また、最後に2ページに戻っていただきまして、2ページ目の2ポツのところでございます。真ん中から下でございますが、今後の目標と重点的に推進すべき領域につきましては、現状の達成目標というものが健康・医療戦略に基づいてこちらに記載のように定められているというところでございます。これらを踏まえまして、文科省の事業として中長期目標をどのように考えるか、本日御紹介の既存事業などとの役割分担に留意すると、重点化すべき領域はどうあるべきなのか、こちらについても本日の議論、それから今後実施いたしますJ-GRID、J-PRIDEの暫定的な評価、こちらも踏まえまして、今後議論を集約していく中で御意見を頂戴したいと考えているところでございます。
 本日は1ポツの現状と課題、こちらについて様々な御意見を頂戴できれば幸いであるというふうに考えております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
【岩田主査】  ありがとうございました。ここからが今日の本番ということですけれども、検討事項について先生方の御意見を伺うということなんですけれども、今日は1ポツだけやればよかったんですね。
【高城企画官】  そうですね。そこを中心に。
【岩田主査】  そこを中心に。ただいまの検討事項(たたき台)についての御説明で、何かここで聞いておきたいことがありましたら、お伺いしたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。
 そうしましたら、検討事項の内容について、この後フリーディスカッションということになるんですけれども、あらかじめ先生方には資料全体を見て、何か御意見、あるいは御提案がないかということをメールでお送りしてあったかと思うので、是非、忌憚のない御意見を伺いたいと思いますが、多分、1ポツじゃないところも考えてこられた先生方もいらっしゃるかと思うので、とりあえず、まず御意見、御提案がある方がいらっしゃったら伺おうかと思いますけど、いかがでしょうか。
 目が合っちゃったので、佐藤委員、お願いいたします。
【佐藤委員】  1ポツだけじゃなくて、3ポツのデータベースの話と、4番目の連携の話、恐らくは2の方の中長期の目標にも関わる話です。今は感染症が発生してからそれを分析して早期対応、あるいはワクチン、薬剤で防ぐという形になっています。次にどういうものが出てくる、つまり、予測科学の部分を少しずつ進めるべきかと。これはそう簡単にできるとは思っておりません。天気予報でも、50年、60年掛けて、ようやく1週間後の予測ができる、そういうレベルです。感染症の場合、特に私はウイルス感染症が専門ですが、基本はウイルスの分子と宿主側の分子の分子間相互作用の連鎖で、つまり、突き詰めると物理化学的な現象がベースになっているので、理解が進めば、やがてはそういう予測の部分も可能になっていくんじゃないかと個人的には考えていています。ただ、いきなりは非常に難しいので、ベースの部分を今から少しずつ作っていくというのが、個人的には大事じゃないかと考えています。
 そういう目で見たときに、このJ-GRID、若しくはJ-PRIDE、このあたり、あるいは厚労省の方の研究も全てそうですけど、いわゆるビッグデータを収集する、病原体のゲノムだったりタンパク質の情報、若しくは臨床や疫学、免疫の情報、こういうのがそれぞれの事業を通じて蓄積していく。恐らく、そういうものの継続は非常に大事である、エッセンシャルであると思うんですが、同時に、文科省的、恐らく文科省でしかやれないと思うんですが、複雑科学とかデータ科学とか、そちらの専門家と一緒になりながら、そういう予測の科学、感染症の予測の科学を少しずつ基盤を作っていくことが大事じゃないかと個人的には考えております。
【岩田主査】  ありがとうございました。今後、どういった方向性のものを新たに加えていったらいいのかというところの御意見だったかと思いますけれども、今の佐藤委員の御意見に関しまして、委員の先生方、何かございますか。今、余りそういうことはされていないですかね。そういうゲノムのデータベース化とか、そういうのはしているかと思うんですけれども。
【高城企画官】  J-GRIDの方で、幾つかの拠点で、例えばインフルエンザのデータですとかデング熱のデータですとかをため出しているというところは、文科省としてございます。あとは、感染研の方でもそういったデータベースを構築されているかとは思いますけれども、それをこちらのテーマでも書かせていただき、データベースの構築と利活用というところに書かせていただきました。そこにどういうデータを入れて、どういう活用の仕方をするといいのかという点については、今後よく検討していかないといけないと思っておりますし、その活用の一つの手段として、今、先生がおっしゃいましたような予測の科学というんですか、こういったものの御提案があったというふうに認識しております。
 事務局からで申し訳ないんですけれども、いろいろ感染症があると思うんですけれども、毎年流行るインフルエンザなんかは、今年はこんなのが流行るねとよく話題に上がるんですけれども、その他の感染症の中で、そういう予測の科学といいますか、そういったものになじみそうなものというのはどんな例があるのか、先生のお考えがもしありましたら、御紹介いただければと思います。
【佐藤委員】  実ははっきりとはありません。基本は細胞レベルでのウイルスの増殖です。薬の効果、その他を調べることができるようになってくると思っています。それから、個体レベルでの病原性の発現の有無ですね。若しくは免疫応答。最後に、今言ったインフルエンザのような集団レベルでの流行の予測ということになると思います。それで、どの感染症がというのは、これはやっぱりウイルス感染症の専門家も含めて、どれが一番モデルケースとして進めていくのにいいかというのは検討した方がいいと思います。個人的には、今J-GRIDの拠点があるところで、再興感染症のような形で時々流行するような、そういうものはひとつターゲットになるかなと考えています。
【岩田主査】  ありがとうございます。
【齋藤委員】  今の話題に関連するところで、特に今、小児科の領域などで一番注目を集めているのがRSウイルス感染症です。その理由は、RSウイルスの予防目的にリスクのある患者さんにパリビズマブというモノクローナル抗体を投与します。これは流行期に月一回、約半年投与します。未熟児や、先天性心疾患である児、免疫不全のある児、21トリソミーの患者などが投与の対象です。この感染症の流行の予測は非常に重要で、なぜかというと流行する前に予防を始めて、準備をする必要があるからです。今、この流行の時期が大きく変わっています。今までは大体秋から冬に流行する疾患でしたが、今はそれが夏から秋にかけての流行にシフトしています。流行の予測という観点からは、今、小児科の中で世界的にも問題になっている感染症ですので、大切な疾患と考えております。
 以上です。
【岩田主査】  ありがとうございました。対象疾患のところにも少し踏み込んで御意見を頂きました。確かに流行予測は大事ですよね。全く新しい感染症が出てくるかもしれないとか、そういうことも予測できそうなんでしょうか。
【佐藤委員】  いわゆる新興感染症は、ナチュラルホスト、人以外の集団で維持されていて、それがぽっと人に来る場合ですね。ですから、やはり動物側のウイルスの情報もたまってくれば、それで人との接触がありそうな場所、その他の情報がだんだん蓄積されてくれば、そういった突然来るものに関しても対応が可能。ただ、すぐにはそういう、もともとのビッグデータのデータの部分がまだまだ足りないと思いますし、それから、それぞれのウイルスの基本的なこと、どういうメカニズムで複製していて、体内でどういう免疫応答が起きてと、そういった情報もまだまだ理解が不十分な部分があると思いますので、そういうのとパラレルに、そういう複雑科学やデータ科学をやっておられる先生方と連携を少しずつ作っていくのが大事かなと思っています。
【岩田主査】  ありがとうございました。
 ほかの先生方からは何か。別のことでも結構です。御意見ございますか。
 横田委員、お願いします。
【横田委員】  J-GRIDの審査と新興・再興の審査の両方に関わっているので思うんですが、新興・再興という名前でいろいろ話をするだけではおかしなことが起こる。J-GRIDは国際拠点、今まで積み上げてきて、すごく立派な国際拠点になったと思うんですね。人のつながりもできたし、そういう研究という意味で一緒になってやれるグループが幾つもできた。それはすごく大事にするべきなところがあって、土台として維持するのは大事だと思うんです。
 新興・再興の方も併せてデータベースをいろいろ作ってきました。データベースを作って、それをどう利用するかということに関しては、佐藤先生のようなプロジェクトをサポートするような形がいいかなと思うんですけど、厚労省側、いわゆる今の新興・再興感染症の研究費の動きというのは、厚労省側の、どうしても国として必要なものの部分とそうでない部分とがミックスになっている。従ってJ-GRIDの方では今の拠点を維持するために必要な部分と、そこの拠点でのユニークな、そこでしかできない病原体で基礎的な研究をするという枠組み、厚労省の方は、厚労省の国の施策として大事な研究とか、やらなきゃいけないこと、ベースのところをやる枠組み、更にそれを融合して文科省と厚労省が一緒に次に発展させるような、お金を取りやすいような形にできるプロジェクトの枠組みと、3つに分けた方がいいかなと私は思っているんです。
 結局、内閣官房とすり合わせるときに、予算を取ってくるのが事務官の人の一番大事なことだと思うんですね。予算を取ってくるときに「こういうことをやりましょう」と、厚労省と文科省の事前の打ち合わせみたいなものはやっているんでしょうか。それとも別々に企画してから行ってみて、(内閣官房から)これは重複しているからだめとか、そういう話になっているんですか。
【高城企画官】  先ほど戦略官の方からも紹介がありましたように、全体のプロジェクトは内閣官房の方で見ていただく形になっています。その中で、厚生労働省、文部科学省の役割分担はどうなっているのというチェックを受けるという形になっておりまして、それらを踏まえて、我々も事業の方を企画立案しているという形になっております。
【横田委員】  とりとめのない話でした。
【岩田主査】  いえいえ。今の話は、今回、J-GRIDの第3期では疾患がある程度決められてしまっていて、それを拠点に当てはめるのにかなり無理なところがあったりするものもあったりするので、少し分けて考えた方がいいんじゃないかとか、そういう御意見ですね。
【横田委員】  はい。
【岩田主査】  ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。御自由に御発言いただいて。
 荒川委員、どうぞ。
【荒川委員】  事務局の方から、5分ぐらい何か話をするようにとありましたので、それで、いろいろ資料を見ながら箇条書きで書き出してきましたので、それを一通り手短かに御紹介させていただきたいと思います。
 感染症という病気は、ほかのがんとか糖尿病と違って、人から人へ広がるという特徴がありますので、そのための対策は、社会防衛的な観点からの総合的な戦略が必要になってくるんじゃないかと思うんですよね。やはり、特に病原性の強い疾患が広がるようなときは、やはり文科省とか厚労省とか、そういうような省庁別の体制ではなくて、国全体を挙げた対策が必要になってくるので、これは研究でやることかどうか分かりませんけれども、そういう組織作りが必要になってくるんじゃないかなという気がします。
 それから、やはり日本が弱いところは、何か感染症が起きたときに、どうしてもWHOとかCDCの出方待ちなんですね。CDCやWHOが何か出せば、それを和訳して発表したりということはあるんですけど、国独自として何か、WHOやCDCに先立って対策を講じるということは余り得意じゃないという印象がありますので、そういうことが可能な体制とか研究的なことを充実していく必要があるのではないかなと思います。
 それから、こういう対策を行う場合に、まずアセスメント機能をしっかり持たないと、何か起きたときに、例えば山からタヌキが出てきてもクマが出てきたという過剰反応を起こしたり、逆に、クマが出てきてもタヌキが出てきたということで過小評価をしたりすることがあるので、アセスメント機能とマネジメント機能の両方をきちんと機能させることができるような研究とか組織作りが必要になってくるんじゃないかなと思います。
 それから、J-GRIDなんかで、これまでいろいろたくさんの課題を達成してこられましたけれども、特に人材、これまで育てた人材のネットワークと、そういう国々が一緒になった国際的なプラットフォーム、感染症対策、情報共有のためのプラットフォーム、少なくともWPROとかSEAROの地域を守備範囲に入れたような国際的なプラットフォームの構築がやはり大事かなという気がします。
 それによって、感染症が起きてから情報をもらうんじゃなくて、日常的にいろんな感染症の情報、病原体の情報を収集、把握、分析、評価できるということが可能になるということで、そういう国際的なプラットフォーム、そういうものがこの先重要になってくるんじゃないかと思います。
 海外拠点に若い人を送ろうと思いますと、やはりなかなか研究環境が十分備わっていないだろうということで、正直な話、行きたがらない人が多いんですけど、これに対しては、大学等が研究所とか、そういうところを退任をされた研究者、教員の方々の能力とか経験を活用しながら、そういう海外の研究拠点、これまでもやっておられますけど、そういうようなことを強化していくとか、日本の若い人が海外に行くのと一緒に、海外の現地の若い人をたくさん受け入れる、そういった枠をもっと増やして、現地でそういう意欲のある、若い、能力のある人たちを日本の研究所、あるいは大学等に招き入れて、そこで教育訓練をして、また国に帰ってもらうような、そういう留学生枠みたいなものの強化・充実が大事かなと思います。
 それから、各省庁だけではなくて、やはり感染症関連の学会、岩田先生もいろんな理事長をやっておられましたけれども、そういうものを巻き込んだ連携促進をさらに強化していくという方法で感染症対策、あるいは感染症に対する研究の促進が期待できるんじゃないかというふうに思います。
 あと、BSL-4の設備については、感染研にありますけれども、以前は理研にもありましたけれども、なかなか維持管理が難しいということで閉鎖状態ですが、長崎にもう一つ作るのは、これは地理的にも、分散して、東京と違うところに作るということは、リスク管理上も非常に重要なことだと思いますので、非常に期待できるんですけれども、ただ、それを維持するためにたくさんの経費が必要になるんですね。その経費が、本当に建物を作った後の、実際に動かすための経費が大事なんですけど、その経費をどうやって保障されていくか、文科省さんが出すのか、厚労省が出すのか、内閣府が出すのか、総理大臣のポケットマネーで出してもらうのか、その辺をちゃんと決めておかないと、建物を作ってもなかなかうまく機能させられないのではと思います。人材の件も含めて、少し不安が残りますので、そのあたり、要はどのぐらい必要なのかという研究も必要になってくるんじゃないかと思います。
 それとAMR対策ですけれども、これは目標値を、例えば何とか菌の何%に減らすとかいう形で設定されていますが、AMR対策の最終目標は、そういうもので亡くなる患者ですね、耐性菌によって感染症で亡くなる人を減らすということが最終目標なので、抗菌薬を適正に使うことによって、結果的に抗菌薬の使用量が減ったり、あるいは感染症の患者の耐性菌が減ったり、感染症の患者さんが減っていくということだと思うので、抗菌薬の使用量とか、耐性菌の分離率を最終目標に置くというのは、目標値の設定の仕方がおかしいんじゃないかなと個人的に思うんですけれども、その辺も含めて、今後厚労省の環境の研究班で検討してもらえればと思います。
 あと少し、もう一点似たようなことなんですが、事業と研究の切り分けが非常に曖昧、国として行うべき事業と研究事業の切り分けがなかなかはっきりしてなくて、これは研究でやることじゃないだろうというようなものも研究事業の中に突っ込まれたりしていますので、これは文科省さんも厚労省さんも、研究課題を設定するときに、研究で行うべきことと、それから、本来行政が自らの事業として行うべきものを切り分けたような形の研究課題の設定が必要になってくるんじゃないかなと思います。
 それから、若手の人に経費を配るのも非常に大事なことなんですけれど、大学においては、若手の人が取った研究費も教室で一緒になってしまって教授が管理しているという、今、くすっと笑っておられる先生もおられますけれども、そういうことが起きないように、若手に配分したお金が若手の人の裁量とかアイデアでもっと活用できるように、使用条件を明確にするというようなことが必要になってくるんじゃないかと思います。
 それから、インフルエンザ対策ですけれども、新型インフルエンザにこれまで非常に力点を置いてやってこられましたが、基本的には季節性のインフルエンザが制御できなければ新型インフルエンザが発生しても制御できません。ですから、季節性インフルエンザの制御をきちっとやれるようにしていくことが非常に大事かなと思います。新型インフルエンザ対策も大事ですけれども、季節性インフルエンザの制御ができるように、さらに研究、あるいは対策に関わることを強化していく必要があるんじゃないかなと思います。
 あと、そのために国立感染症研究所の強化ですが、やはり国立感染症研究所は地方衛生研究所を割と強いパイプを持っていますけれども、大学とはなかなか、強いところもありますし、余り勢いのないところもあって、特に大学との連携強化を今後もっとしていく必要があるんじゃないかなと思います。
 あと、耐性菌バンクです。感染症研究所に、AMRセンターに置かれますけれども、どういう対象に対してどういうタイミングで耐性菌の事業とかを行うかということはまだ検討中のようですが、もし大学を対象にして広く対応するということであれば、そのための人員の増加、体制強化が必要になってきます。
 あと、病原体ゲノムなんかの情報なんかも、今、病原体ゲノム解析研究センターでやっておられますけれども、さらにこういうものを皆さんで使いやすいようにしていくような体制の整備が必要かなと思います。ただ、炭疽菌とか、そういう怖い菌の情報を垂れ流しにするわけにもいきませんので、そこはやはりきちんとリスク管理をしていただく必要があると思います。一般的な病原体のゲノム情報をもっと大学で活用できるような算段は必要かなと思います。
 あと、基礎研究の成果の発掘のためのシーズのデータベースをもっときちっと設立していく必要があるんじゃないかなと。これをオープンにするということよりも、そこに登録された人たちに対して提供していくようなクローズドのデータベースですけれども、やはり基礎研究で持っているようなシーズをより生かしていくためのシーズデータベースのようなものを、文科省とか、厚労省とか、経産省が協力して作られたらいいかなと思います。
 あと、ワクチンの整理も非常に重要だと思うんですけど、今のワクチンは戦後間もない時期に、製造が開始になった当時の方法を踏襲して作られていまして、やはり新世代のワクチンとか、そういうものを開発しなきゃいけないというような意見もあるんですが、なかなかされてないですね。結局風疹もそうですけれども、効果が短いとか、DPTなんかは何回も打たないといけないとか、そういうワクチンが実際的に多くて、やっぱり1回打てば30年、40年は大丈夫なような超強力なワクチンの開発を国として推進するべきで、そのための基礎研究を強化したらいいかなと感じます。そのためには、臨床治験とか基準の改定、薬事法の改定とか、いろいろなところとの調整が必要になってきますけれども、少なくとも基礎的な部分である研究開発をもっと強化しなきゃいけないかなと思っています。
 ちょっと長くなりましたが、この資料を見させていただいて気が付いたところを言わせていただきました。
【岩田主査】  ありがとうございました。非常に広範囲にわたって数えたら大体16項目ぐらいコメントを頂きましたけれども、何か今の荒川先生のお話で伺っておきたいこととかございますか。今日は第1回目ということで、先生方からたくさん意見を出していただいて、それをだんだんまとめていくというような形に多分なるんだと思うんですが、たくさん御意見を頂いてありがとうございます。
 先生、事業と研究ってなかなか難しいですけれども、例えば、具体的にはどういったことがありますか。
【荒川委員】  例えばインフルエンザを例に挙げますと、新型インフルエンザの患者さんが出たときにどういうふうな対応をするかとか、対策をするかというような、そういうことの中身は、これは国の感染症の対策事業としてきちんとやる、インフルエンザが広がろうが広がらないであろうが、日常的にやっていなきゃいけないと思うんです。ただ、特定のタイプのインフルエンザとか特定のウイルスに対するワクチン開発なんかはやはり研究としてやると。サーベイランスなんかは、どちらかというと国の事業として本当はやるべきことで、研究でやることじゃないと思います。だから、ある意味その辺の切り分けをちゃんとした方がよりすっきり、評価するときに楽じゃないかと思うんですね。
【岩田主査】  ありがとうございます。何か事務局の方から伺っておきたいこととかございますか。
【高城企画官】  いろいろとたくさん御指摘を頂いたところでございますので、文部科学省がやるべく研究事業の部分と、あとは感染症の対策としてやっていく部分と、いろいろと切り分けていかなきゃいけないのかなと思っております。メモを起こして、検討させていただきたいと思います。
【岩田主査】  ありがとうございます。
 じゃ、石井委員。
【石井委員】  荒川先生がたくさんの課題を出された後でなんですが、私もAMRだけで30分、ほかのもので2時間半ぐらいのスライドを持ってきて、いろいろ申し上げたかったことがあるんですけれども、それを端的に3分ぐらいでまとめますと、あと、AMEDでこういう立ち上げとか管理に関わってきた立場もCOIとして開示しながらお話しさせていただきます。
 まず、これは対象疾患として感染症を研究する現場の人間から言わせていただくと、予算の獲得や報告に追われる研究自体が楽しいものでなくなりつつあると。研究はそもそも「面白い」、「楽しい」ところが原点で行っているものだということを、是非これを基軸にして、それを楽しくするには何をすればいいかという解決方法を見つけるような議論にしていただきたいと。これはなかなか難しいと思いますが。
 一方で、それができなくなってきた、若しくは苦しくなってきた原因は何かというと、やはりこれは文部科学省の会議として必ず言わせていただきたいんですけれども、やっぱり教育がそこに併走している場合と、していなかった場合が多々あったんではないかという考えを強固にしております。
 特に感染症研究に搬送すべき「教育」と申しますのは、小、中、高等学校の教育ももちろんですが、いわゆる感染症の現場の教育、On the Job Trainingというのが教育の現場であり、研究の現場であると思います。これがJ-GRIDですと、いわゆる海外の拠点ですし、実際の医療現場でも感染症に携わっている現場がたくさんございます。それは本当の感染症の患者を診る人間から、サーベイして予測するまでの研究現場というんですか、それらを俯瞰的に把握することが、まずはこの議論のたたき台と書いてありますし、いわゆるたたき台になるのではないかということが私の最初の意見であります。
 もう少し大きくいきますと、今、特に世界中を走り回って本当に痛感しているのは、日本にはそれを全て行える原資はあると思います。ただ、それがほかの世界各国や各団体と比べてできていない理由は、僕はただ1つの言葉で、ダイナミズムと言いまして、早い遅いだけではないんですが、規制とその対策の葛藤における解決法であるとか、そういうダイナミズムの不足が、やはりこの各問題点を生んでいるのではないかと考えました。
 まずこれが最初の提案の3つのキーワードです。研究が楽しいということを基軸に、と、教育も大事だという点。あとダイナミズムの問題。それから、今、対象疾患の話をさせていただきましたけれども、研究手法ですが、これもいわゆるダイバーシティー、(J-GRIDの以前のプログラムでは)いろんな感染症をいろんな場所でいろんなサーベイをやっていて、その評価後の反省点からJ-GRIDは対象疾患が絞られましたよね。実はこれもまた、振り子のように次は「絞り過ぎだ」という議論が起きると思います。じゃ、どこまで広げればいいのかというところは、やはりこれも教育につながっていまして、医学部の教育ですと、感染症というと、細菌、寄生虫、ウイルス学という講座があったんですが、それが全て免疫学に置き換えられたり、ゲノム科学に置き換えられたりとどんどん変わってきていますが、その教育の現場を感染症の対策と教育に合わせるためにはどのようにしたらいいのかというところも、是非文科省の課を超えた議論にしていただければというのが私の意見です。
 あと、もう一つは、対象疾患として具体的に言いますと、ここでキーワードとして出したいのが「VPD」です。Vaccine Preventable Diseasesと言いまして、WHOやその他世界の機関では必ず出てくる、予防できているのにアウトブレークが起きているエンデミシティがあるという、対策としては必ずやらなくちゃいけないというプライオリティは非常に高いものだと思います。AMRももちろんです。
 今、全部言うと、また終わらなくなっちゃうので、これで終わります。
【岩田主査】  大丈夫ですか。
【石井委員】  はい。
【岩田主査】  ありがとうございました。やっぱり1つのキーワードは教育ですかね。ということで、3つぐらい上げていただきました。ありがとうございます。
 よろしいですか、何か事務局で確認することは、特にない?
【高城企画官】  ええ、大丈夫です。
【岩田主査】  ありがとうございます。それぞれの委員からお話を先に伺えればと思うんですけれども。
 じゃ、味戸委員。
【味戸委員】  Meiji Seika ファルマの味戸でございます。先ほどは緊張の余り、立って挨拶ができず大変申し訳ございませんでした。私は製薬協からということですので、頂いた5分ぐらいの時間を、製薬協からの伝達の様な内容と、後半は文科省の方々から御説明頂いたたたき台についてお話ししたいと思います。
 先生方もよく御存じの通り、製薬協では2017年の4月にAMRの対策に向けた提言という文書を厚労省宛てに出させて頂いておりまして、その中で5点述べています。大きくは備蓄の問題と、コンソーシアムの問題と、臨床評価のガイドラインの問題と、企業のインセンティブの問題と、それから、事前に薬価の相談ができないかという5点です。その中で、技術的な問題は三番目の項目、則ち臨床評価と理解しておりまして、これまで消火器理論で有名な元アストラゼネカのジョン・レックス先生が再三話されていらっしゃる通り、TierのB或いはCだと思います。則ち、フルパッケージで対照薬を置いて非劣性を証明していくという臨床試験は日本の中で非常に難しいと思いますので、それをいかに最小限のデータパッケージで進めていくかが課題であろうかと。あるいは臓器別に限定しないような承認或いは添付文書にならないかと、そこのところのポイントを述べさせて頂いていると理解しています。
 実は製薬協の方の中には、J-GRIDの中間評価に参画された方がいらっしゃいまして、その中で2点ほど述べられています。今日の話の中にも一部関連することが出て参りましたが、せっかく成果が出ている訳ですので、今後もJ-GRIDの成果を続けられるような仕組み作りを作っていけたら良いのではないか、という御提案と、それから拠点の人材育成という点が1つの大きな目標になっていますので、その人材育成をどういうふうに推進していくか、評価する仕組みがあってもさらに良く人材育成が見えてくるのではないか、という2点をポイントとして頂きました。
 次に、産の観点で今日のたたき台について簡単に述べさせて頂きます。
 まず、せっかく大学だけではなくて国がバックに付いている企画でございますので、絶対企業にはできないような、新しいか、あるいは非常に斬新なというか、パラダイムシフトするようなテーマに傾注できるようにすると有り難いという製薬側からの期待がございます。これが当たっているかどうか分からないのですが、例えば、最近では、Antibody Drug Conjugateという薬物がよく言われていると思うのですが、勿論フィロソフィー的には1900年の初めにポール・エールリッヒ先生が提唱されたと思うのですが、その後、実際には1990年の半ばぐらいに、ダニシェフスキー先生らが仕事として始められまして、2000年の前半に承認に至っているという経緯があったと思います。こういう薬物はなかなか企業スタートでは難しいかと思います。
 もう一つは、出口という点で、どうしても触れなくてはいけない課題が、日本だけではないのですけれど、死の谷を如何に越えていくかということだと思います。私も製薬企業なので言いにくいのですけれども、日本の製薬企業さんはどうしても石橋をたたいて渡らないという傾向がありますので、感染症だけを考えますと、ターゲットは日本も該当することもありますが、やはり世界を考えていく必要があるということで、余り日本の製薬会社に焦点を当て過ぎると、規模の小さいプログラムになる可能性があります。やはり海外マルチのトップの方々がどう考えているのかを知るのは非常に大事であると思っています。
 日本ですと、どうしても利益推移のラインを書きまして、それが上に向かないとやらないとすぐ取締役会で言われてしまいますが、海外マルチのCSOに集まっていただいて、座談会を開いたというときの記事を読んだことがあるのですけれども、勿論最後の事業化のところは利益が大事なのですが、上流の仕事のディスカッションをしている時には、事業評価というのは殆ど持ち込まないと言われている方がすごく多かったです。ですから、初期の検討をされる時は、余り利益推移のところに目が行きすぎると逆に小さいプログラムになってしまう可能性があると懸念致します。
 最後に、人材育成について触れさせて頂きます。今日お集まりの先生方は医療の最先端の方面にいらっしゃる方が非常に多く、私は、化学屋ですけれども、どちらかというと、一番上流の端の方にいます。物を評価してくださっている薬理の先生或いは、バイオロジーの先生というのは、非常によくお医者様方と話す機会があるのですが、私達化学屋は、最先端の医師の先生方とお話しさせて頂く機会は多くありません。事実、岩田先生が理事長をされていらっしゃる感染症の学会は本当にお医者様方ともの作りのスタンスと両方の研究者の先生がいらっしゃるのですけれども、両者が交流できる機会は多くはありませんので、講演会或いはセミナーになると思いますが、そういう仕組みを意識的に構築していかないと、そこでの医工連携のような関係が非常に作りにくいのではないかと、イメージを持っております。
 雑駁ですが、以上です。
【岩田主査】  ありがとうございました。製薬メーカーの立場からいろいろ貴重な御意見を頂けたと思います。何か御質問とかコメントございますか。
【石川委員】  私、ワクチン産業協会から一応推薦されているので、産業界代表ということで、この検討会に参加させていただいておるんですけれども、先ほど荒川先生、ちょっと耳の痛いような御意見もございましたが、やはりインフルエンザも季節性インフルエンザがちゃんと処理できなくて、何で新型インフルエンザができるかという御発言もあったし、また、混合ワクチンのDPT、あるいは風疹の効果の持続性の問題等々もあって、新しい新世代のワクチンということもありましたけれども、文科省の感染症研究の在り方、研究の在り方という点で考えてみますと、やはり事業で得られた成果がすぐに、診断であるとかワクチンであるとか、治療に結び付いていったらいいんですが、それはなかなか難しいと思いますし、先ほども話がありましたけれども、データベースです。せっかく現地で積み重ねられた疫学データであるとか、遺伝子であるとか、そういったデータベースをこつこつと蓄積していただいて、そして、いざというときに、それに対応して評価につなげられるということにしていただければいいのかなというのが私の率直な意見でございます。
【岩田主査】  ありがとうございます。今もいろんな基礎のデータベースはたくさんあるかとは思うんですけれども、それぞれの機関ごとのデータベースが横になかなかつながっていないというところが使いづらいところなのかなと。それは多分荒川委員の意見も石川委員の意見もそういうことかなと思いました。ありがとうございます。
 それでは、ほかの委員の先生方、いかがでしょうか。
 齋藤先生、お願いします。
【齋藤委員】  私は特に最初の研究対象と研究手法について、具体的にお話しさせていただきたいと思います。
 研究対象の疾患は、数多くの感染症中でも、特に致命的な疾患、予後の悪い疾患、ワクチンで予防できる病気などが重要で、それらにフォーカスが絞られるべきと考えます。
 対象疾患の中にはインフルエンザ、デング熱、AMR、結核、エイズなどが含まれています。私は小児科医なのでその立場から言わせていただくと、小児重症肺炎だけが疾患の名前で、病原体の記載がありません。また、重症感染症も同様です。先ほどお話しさせていただいたRSウイルス感染症は、途上国においても先進国においても小児の重症肺炎の中でも一番の原因ウイルスです。それ以外にも再興感染症として注目を浴びている百日咳は、ワクチンで予防できる病気ですが、実際にはワクチンで予防できていない現状があります。小中学校でのアウトブレークなどの報告が多く、成人での症例も多く見られます。最終的に一番大きな問題を被るのは新生児や早期乳児たちです。患者が実際に国内で報告されていますので、非常に重要な疾患と思います。あとは、ワクチンが普及し、重症の感染症が減少している一方で、血清型の置換が問題となっている肺炎球菌やまだ予防手段がなく今ワクチンの開発が進んでいるB群溶連菌などが重症肺炎の対象として大事な病原体と考えております。
 それから、重症感染症で高病原性の病原体と書かれていますが、ここでも、小児にでは肺炎球菌、それから髄膜炎菌、溶連菌などが重要です。その対策が必要です。
 また、新生児、特に乳児、早期乳児などでは、単純ヘルペスウイルス、エンテロウイルス、パレコウイルスなどが命を落とすことのあるウイルス感染症として重要かと思います。
 あと、ここにあげられていない韓国などでもアウトブレークのあったMERSも新興感染症として非常に重要な疾患であると思います。
 もう一つ、これも小児科医の視点からですが、母子感染は重要で途上国では依然に大きな問題です。その中の多くは予防可能ですが予防できていない感染症が多くあります。例えばジカウイルス、トキソプラズマ、サイトメガロウイルス感染症などです。しっかりとした情報があれば、予防できる疾患も含まれており、また、国内での発生もあとを絶たないことから、このあたりも対象疾患として大切と思いました。
 また、先ほど荒川先生からお話があったサーベイランスのことについては、私も同感です。現在は、定点からの報告や、厚生労働省の研究事業、日本の地域を絞って、臨床医が症例を報告してそのシステムが成り立っています。感染症のアウトブレークをキャッチするためには、日頃からの感染症サーベイランスが非常に重要であり、サーベイランスを国の事業としてやることがまず基本にあるべきと考えます。そこで、アウトブレークをどう感知するのか、そのあたりの仕組みの再構築が必要で、今の決められた定点からの報告や感染研の先生方に頼り切っているだけでは、限界があるのと考えます。
 あと、海外の拠点に若手の研究者が行きたがらないというのも、私自身、J-GRIDの仕事上体験しているところです。では、実施に行ってみたいと言っている人に話しを聞くと、学生時代に経験のある方と一緒に海外の拠点に行ったという方が多いです。ですから、大学生、大学院生などに教育の現場で海外で活躍している先生方のお話や実際の海外での実習などを若い人たちを育てる必要があるのではないかなと思いました。
 最後に研究の在り方というところで、研究先進国との連携というところです。確かに今、J-GRIDの拠点などでは、我々の技術を持っていき、現場の方々に指導していますが、同時に研究先進国から学ぶこともすごく大事だと思います。今年の春に文部科学省で募集のあった国際共同研究のグラウンドなど、若い人たちを研究先進国に送るような取り組みもいろいろな意味でこれからの発展が期待できると思います。海外に出る人たちが減っている現在、若い人たちが海外に出る機会というのを積極的に作ることも、感染症の研究のこれからを考える上で非常に重要なのではないかと思います。
 以上です。
【岩田主査】  ありがとうございました。齋藤先生から、特に小児科のお立場から、今後重要な研究の方向性ということでお話しいただきました。
 今、お話出てきたサーベイランスなんかは、日本は特に米国なんかと比べると、感染症のサーベイランスはとても貧弱なところが目立つので、これは先ほど荒川先生のお話だと事業ということですけれども、確かに感染研だけではなかなかやり切れないところもあるのかも分からないんで、この辺はもう少し、例えば学会とかを利用するとか、そういうようなことがあってもいいのかなと感じて伺っておりました。
 齋藤先生のお話に関して、御質問とかコメントございますか。
【石井委員】  よろしいですか。今、病原体の種類がたくさん出てきましたので、ちょっと追加させていただくと、忘れた頃にやってくる疾患、例えば、西ナイル熱とか、それからグローバルに重要疾患であるマラリアであるとか、リーシュマニアであるとか、日本では最近報道で出ているのは梅毒トレポネーマであるとか、HIVと肝炎は厚労省の方で事業がありますが、A型肝炎とか、忘れてならない日本などの特有の疾患であるHTLVであるとか、SFTSとかが挙げられるべきと思います。一つ一つの感染病原体を絞らない、モックアップという考え方がありまして、今、CEPIなんかでもそうですが、未知の感染症を検知して予測する技術、それは感染症の病原体の名前は出ないですが、重要なキーワードになると思います。あとは、やはりQOLを下げるようなリーサル(致死的)でない疾患を起こす感染症、例えば、真菌感染症であるとか、そういうものが医学部等に(専門の)教室がない分だけ後ろに置かれている感じはあると思います。今回病原体名や関連事項に関して意見させていただきました。
【岩田主査】  ありがとうございました。ほかには、今の齋藤先生の御意見に関してよろしいですか。
【石井委員】  あ、すいません、1つ大事なものを。HPV。
【岩田主査】  HPVですね。
【石井委員】  すいません、大事なものを忘れてました。
【岩田主査】  ありがとうございます。それでは、まだ御発言のない山崎委員からお願いいたします。
【山崎委員】  大阪府立大学の山崎です。恐らくこの中で唯一医学系ではないと思いますので、ちょっと違った側面からお話しさせていただきたいと思います。
 先ほど、私、石井先生がおっしゃられたこと、冒頭に言われたこと、それから教育の部分とか、やはり研究がおもしろいからできたというところは非常に共感いたします。そういった切り口からいたしまして、私、J-GRIDのPOもさせていただきましたので、今回アフリカも拠点なんかも見学に行かせていただいて、現地の様子なんていうのも非常によく勉強させていただきました。
 その中で感染症というのは人に対して起こるものを防いでいくというものであり、やはり人の間で問題となっているものは非常に重要だと思うんですが、ただ感染症ということを全般に考えますと、昨今、いわゆる新興感染症と呼ばれるものは環境破壊でありましたり、あるいは、動物から人に来ているところがありますので、これは近未来というよりは中長期的な展望になるのかもしれませんけれども、例えば、環境省ですとか、農林水産省なんかも個々に取り込みながら、やはり基礎研究においては文科省が中心となって進めていくと。人獣共通感染症においては、厚生労働省と農林水産省、あるいは環境省が連携しながら、先ほど言われたようなワンヘルスという立場でやっていく必要があるのかなと。
 例えば、実際問題、今、外来生物種なんかも日本に入ってきておりますし、野生動物の中で調べてみると、いろんな病原体が検出されてきているという現状もあります。それからあと、動物にいたしましても、例えば、渡り鳥も含めまして、海外から様々な動物が入ってくる可能性がある、実際来ていると。また、もっと違った側面から言いますと、例えばBSEが1つの例であり、サルモネラ・エンテリティディスもまた別の例であり、大腸菌O-157も輸入牛肉の増加量とともに日本で発生件数も増えてきたという、相関性がどこまであるか分かりませんけれども、そういった現状もありますので、やはり輸入食品を介して持ち込まれる感染症、病原体も考えられますので、そういった観点からこの感染症対策というものを取り組んでいく必要があるんではないかなと個人的には思います。
 例えば、J-GRIDで見てみますと、やはり世界のいろんなところに拠点があるのが理想なんでしょうけれども、もちろん一方において予算的な問題もありますので、次から次へと増やしていくことは難しいかと思いますが、個人的な視点といたしましては、南米、あるいは東ヨーロッパのあたりにあってもいいんじゃないのかなと思います。
 それから、あと人材育成の点につきましても、いろいろなコメントをされておりまして、私も本当に、特に若いうちにそういったことを経験する機会を持った人というのは、自分でも行ってみたいとを考えるようになると思うんですが、やはりそのためには、研究に入ってからというのも1つかもしれませんけれども、教育を受ける段階でそういった機会が設けられていくということも重要なのかなと考えます。
 それと、あともう一つは、これも非常に難しい問題がはらみますので一筋縄ではいかないと思うんですけれども、いろいろなところで病原体の分離、それから感染症情報というのが得られてくる中で、感染症に対する情報というのは比較的情報をシェアしやすいものになると思うんです。例えば、国立感染症研究所でまとめられております病原体検出情報なんていうのは有用な教材として講義のときに非常に役立っております。そういった情報が海外の拠点の方から上がってくる、それを各研究者がシェアできるような体制をとっていく。もう一方におきまして、病原体も貴重な研究材料になりますので、病原体の場合には、やたらめったらシェアすることは難しいのかもしれませんけれども、例えば、ヨーロッパとかですと、O-157のリファレンスセンター、サルモネラのリファレンスセンター、そういったリファレンスセンターがあって、ある大学、あるいは、ある研究所が分離されたら一括管理すると、情報もデータベースも全部併せ持つと。多くの研究者がそこにアクセスすることによっていろんな菌株が研究に用いられると。そういったことも将来的に日本の中でもより進んでいけば、感染症の研究も発展しやすくなるんではないかなと。
 もう一方におきまして、やはり今感染症法がありますから、本当に小耳に挟んで残念だなと思いますのは、例えば、今まででしたら衛生研究所なんかでもボツリヌス菌を分離してもそれを保管していた、しかし、昨今ですと、検出してもすぐ破棄してしまうということで、貴重な菌株が国内から失われていっているという現状もあります。
 あと、そこともつながるんですけれども、そういった中で産学官の連携をしていくと。やはりふだん接して感じますのは、いろんな企業で、例えばBSL-2の病原体ですらなかなか扱うのが厳しい、それから入手できないというような状況がありますので、そういった意味でも、例えば菌株をどこかで一括管理ができて、それがある程度自由にアクセスできる、もちろん企業の方ですと、特定病原体を扱えるような施設を持てればいいですけれども、持てなければどこか大学と連携を取る、あるいはBSL-2にしましてもというふうなところもあります。
 あと、冒頭に佐藤先生がおっしゃっていたことで、佐藤先生に質問しながら御確認したいんですけれども、例えば、予測のところで新しいウイルスが出てくるということに加えまして、抗ウイルス薬を使うことによってどのような耐性ウイルスが出てくるとか、あるいは、抗生物質の使用の頻度、種類によってどのような耐性菌が出てくるかというふうなことも、もしメガデータがそろってくるならば解析できるようになる可能性はあるんでしょうか。
 私が本当にびっくりしましたのは、ロタウイルスなんかでも、ロタのワクチンを使ったら全然違ったタイプのものが逆に流行してきたというような問題も知りましたので、そういった意味でも流行予測のところで、そういったワクチンの使用、抗ウイルス薬、抗菌薬の使用のところでのメガデータ、それと、あとは企業との連携で、それが実際に社会実装の方にも生かされていくという体制が整っていけばいいのかなと感じております。
 以上ですけれども、佐藤先生、そのあたりどうなんでしょうか。
【佐藤委員】  薬を使う、あるいはワクチンを使うと新しいものが出現する。恐らくは、特に私は変異しやすいRNAウイルスでやっていて、検知されていないサブポピュレーションの把握が大事かと。例えば、ノロウイルスを例にとりますと、恐らくは無症候感染者の中で維持されているいろいろなサブポピュレーション、その全体像がつかめてくれば、予測は可能かと。こういう薬を使ったときはこういうやつが適用度が高くて出てくる。要するに、今まで検知されていなかったんですね。そういう予測は可能になると思います。現時点で欠けているのは、ですから、環境中、あるいは人全体の、ノロウイルスならノロウイルスのポピュレーション、どれだけのサブポピュレーションがあるかという情報が欠けている。恐らくは、衛生研究所、保健所で発覚するのは症状が激しい方々のみで、河川中に検出されるノロを見ますといろんなタイプが出てきます。ですから、地球上にあるノロウイルスならノロウイルスのポピュレーション全体が分かってくると、この薬を使ったらこういうのが出てきちゃう、あるいはこのワクチンだとこういうやつが出てきちゃう、そういう予測は恐らく可能になると思います。
 それから、結局変わり身の早いウイルスは何かプレッシャーをかけると違うのが出てくる。全体をコントロールするのは非常に難しいと思うんですが、ただ、そうはいっても、彼らも増えていくために変われない部分、変わりたくても非常に変化の制約がかかっている部分があるわけでして、それもいろんなところで流行しているゲノム情報、それから、そのときの患者さんの病態の情報、いろんなデータがそろってくると、そうするとこういう部分を狙えば、たとえ変異して逃げても適用度が非常に低くなって、要するに進化の袋小路に追い込むという手法が将来可能になってくるんじゃないかと期待しています。
 それで、そういうことをやるために、とにかく基礎となるデータがまだ圧倒的に足りないのと、それから、それぞれの病原体の感染機構、宿主に与える影響、そういったものの情報がまだまだ少ないと思いますので、そういう部分が、こういうAMEDの新興再興の事業だったり、J-PRIDEやJ-GRIDの事業で情報を蓄積していくと。
 それから、荒川先生もおっしゃっていた連携の話、10年ぐらい前だったかな、鳥インフルエンザが日本に入ってきたときに、瞬間的に、環境省、それから農水省も含めて一時的に連携ができたんです。ただ、インフルエンザの騒ぎが収まったら自然に消滅するという感じで。私は新興再興感染症には絶対連携が必要だと思っているんです。だけど、こういうことをやるんで連携しましょうという、何らかのテーマ設定がないと、恐らく何かができた瞬間だけ連携するみたいなことになるんじゃないかと。それだとやはり恒常的に、何か新しいものが出てきたときに対応が遅くなると思うんです。ですから、テーマ設定は非常に難しいと思いますが、さっき言ったような予測科学というのは、環境省も含めて、それぞれベースラインを作っていくことは必要な領域なので、そういうのは連携する1つのテーマになり得るかなと思っています。
【岩田主査】  ありがとうございます。よろしいですか。
【山崎委員】  はい。
【岩田主査】  3時までですね。
【高城企画官】  そうです。
【岩田主査】  そしたら、先に御意見を。
 じゃ、横田委員。先ほど御意見を伺いましたけれども、もう少し全体を通してお願いいたします。
【横田委員】  感染症は取り上げたら切りがなく出てくると思うんですが、J-GRIDで何をやるかという、元に戻ると、やはり日本ではできないような感染症の患者さんがいて、そういう病原体がいるところにフォーカスを当てているのが視点だと思うんです。一方、日本国内で必要なのは、ワクチンで予防できるような病気で、ワクチンの副作用も含めてですけれども、ホスト側の反応をもっとしっかり見ていくことで、そのようなプロジェクトを新興再興感染症研究でやらないといけないんじゃないかなといつも感じています。
 J-GRIDの、これからどういう病原体にするか、あるいはフォーカスを当てないのかというのはこれから議論されるんだと思います。その辺は多分神田先生が説明されてから皆さんの議論が始まると思います。
 人材育成に関して、少なくとも早い時期にモチベーションをつけるというのはすごく大事だと思います。中学、高校で海外を体験した人は英語になれやすいというのは見られますし、一番いいのは、大学の最初の1年の夏に拠点ツアーを開催して学生を募るとか、それよりもっと前の高校生ぐらいのレベルの子たちにお金を出して拠点を見てもらうとか、そういうこともいいんじゃないかなと思います。
 以上です。
【岩田主査】  ありがとうございました。J-GRIDは拠点をもうちょっと生かした研究をやったらいいんじゃないかということと、アーリーエクスポージャーが教育には大事だということだったかと思います。
 石川先生、何かもう少しございますか。追加で。
【石川委員】  特にないですが、今の横田先生の御意見を聞いていて思うんですけれども、今の教科書の在り方がどうなのか分かりませんが、感染症というテーマで、どういう分野で感染症を教えるのか、詳しく私は存じませんけれども、やはりこの辺をJ-GRIDの事業も含めながら、小さいうちにそういうのを啓蒙していくのも1つ大きな役目があるのかなと思います。
【岩田主査】  ありがとうございます。
【石井委員】  よろしいですか。本日、1ページの現状と課題ということでしたので、キーワードだけ言えてなかったので出させていただくと、やはり特に出口戦略とか左から右へ物が動くという考え方をやめて、薬ができるとか感染症が減るということではなくて、感染症をコントロールできる社会が生まれるとか、そういうことをよく知っている子供たちが社会人になるということの方が社会還元になるので、これは数値目標がなかなか難しいと思いますが、シーズが出る、論文が何本出るというところの数値目標とは別の議論ももしここで可能であればやっていただきたいということ。
 もう一つは、感染症の定義を最初にきちんとお話しされてなかったですが、特に病原体は病原性のある微生物で、病原性を決めるのは宿主、若しくは社会集団でありますので、それが人間以外のものも含む、環境も含むという考え方を新たに取り込んでいくということが、やはりこの検討会では議論されるべきだと考えます。
 その点で一番のハードルとなるのが、まず研究予算に対し立ち上げから評価にかかわり利益誘導ととられるリスクがある学会(組織)、これは感染病原体ごとに分かれていたりします。それから、産学官の立場としてCOIをきちんと開示して、それのコンフリクトを皆さん知った上での議論にしていただきたいと思います。
 それと、あともう一個、議論がなかったのが、他のファンディングエージェンシーです。これはグローバルに活動する感染症研究のファンドが、日本からも、それから世界からもたくさんありまして、日本で一番関連のあるGHITであるとか、ちょっと外に出ますと、日本政府もお金を出しているCEPIであるとか、それから、ビルゲイツ財団であるとか、そういうところで日本人の方も研究をたくさんされていますので、そういうところの関連の方の意見も聞かれるのが多分有効打になるんではないかと考えました。
 以上です。
【岩田主査】  ありがとうございました。いろいろ先生方から御意見もフリーに出していただきましたけれども、そういったことをこの会では、第1回目は求められていたんじゃないかと思うんですが、もう大分時間が迫ってきましたが、ほかに何か、これは言っておきたいということがあれば、是非お願いしたいと思います。いかがでしょうか。
【山崎委員】  すいません、いいですか。
【岩田主査】  山崎委員、どうぞ。
【山崎委員】  先ほど石川委員から話が出たことも含めまして、私が過去に聞いたことがありますのは、いわゆる小中学校の教科書に病原微生物学の話はないと。それが教科書に載っていないということは、学校の先生の教育として必須でなくなってしまっているということで、小中学校の先生が、いわゆる病原微生物のことを勉強しなくてもいい、それから再教育を受けなくてもいいという悪循環があるというのをちょっと聞いたことがあるんですが、やはり教科書に病原微生物のことを載せるというのは難しいんでしょうか。もしそれが可能になるならば、今、ここで言われたような、若い世代に病原微生物の重要性を非常に強く認識させることができるんではないかなと思うんですが。
【岩田主査】  ありがとうございます。いわゆる基礎の基礎の研究、多分少し違うかも分からないですけれども、教育に関する研究という意味ではとても大事なことなんだろうなと思って、前に微生物学連盟という感染症とか微生物を広く扱う連盟があって、そこで高校生とか中学生に微生物とか感染症のことを分かりやすく説明できるような教科書のようなものを作った方がいいんじゃないかということで取り組んでいたことがあります。自分も途中で微生物学連盟を出ちゃったんで分からなくなっちゃったんですけれども、感染症とか微生物を扱っている学会の集まりですから、そこの中ではそういう議論はされていたということなので、やはり早くから興味を持って、若い研究者の方を育てるにはそういったところからやっていかないとなかなか難しいなというところですね。
【石井委員】  我々の分野では、どんな偉い先生の免疫学の講座より、今、『はたらく細胞』という漫画がありまして、そちらの方が子供たちにとってとてつもないインパクトがあると感じています。そういうことを考えますと、これまでの教育方法をもう一度見直して、やらなくてはいけないことに加えて、今できることは何かという議論が多分あると。私は『はたらく細胞』の微生物バージョンがあれば非常に有効打になると考えています。
【岩田主査】  ありがとうございました。ほかには何かございますか。よろしいですか。
 そうしましたら、今日は先生方から御意見をたくさん頂戴いたしましたので、事務局の方でこれを少し整理していただいて、今後の検討課題にしていただきたいと思います。
 それから、今日は限られたお時間でしたので、あるいはまた、この会が終わってから何か思い付いたこととかが出てくる方もいらっしゃるかもしれないので、その場合は是非、本日この委員会が終わった後でも後日でも結構ですので、もし追加の御意見があれば事務局の方に寄せていただければと思います。
 それでは、最後に事務局の方から連絡事項があればお願いしたいと思います。
【田邉係長】  本日は貴重な御意見を頂き、ありがとうございました。御連絡事項といたしましては、次回の検討会につきましてですけれども、御連絡を差し上げているかと思いますが、次回、第2回は1月11日の金曜日の16時からを予定しております。内容の詳細につきましては、また決まり次第御連絡差し上げますのでよろしくお願いいたします。
 以上です。
【岩田主査】  ありがとうございます。ほかに追加はないですね。
 それでは、本日の議事については以上でございます。お忙しい中、本当に皆さんありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

── 了 ──

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