ポスト「京」の利活用促進・成果創出加速に関するワーキンググループ(第2回) 議事要旨

1.日時

平成30年12月18日(火曜日)15時30分~17時30分

2.場所

霞が関コモンゲートナレッジスクエア

3.出席者

委員

(ポスト「京」の利活用促進・成果創出加速に関するワーキンググループ)
合田委員,伊藤委員,宇川委員,臼井委員,梅谷委員,加藤委員,栗原委員, 白井委員,住委員,田浦委員,高田委員,辻井委員,原田委員, 安浦主査

文部科学省

磯谷局長,千原審議官,原参事官,渡辺課長,坂下室長,根津参事官補佐,荒井専門職

オブザーバー

(理化学研究所)松岡センター長,岡谷副理事

(説明者)
(高度情報科学技術研究機構)高津センター長,関理事長
(内閣府)岩村参事官補佐
(スーパーコンピューティング技術産業応用協議会)金澤主査,笠
(理化学研究所)姫野コーディネータ

4.議事要旨

議題1 「京」及びHPCIの利用者の声について
議題2 内閣府(防災担当)における「京」の利活用について

資料1について高度情報科学技術研究機構神戸センター高津センター長より説明。
資料2について内閣府(防災担当)岩村参事官補佐より説明

質疑応答については以下の通り

【合田主査代理】NIIの合田でございます。1件目の利用者の声について御質問させていただきます。先ほど、企業利用の観点で、企業利用者の方から敷居が高いというお話がございましたけれども、今日の資料を拝見しますと、敷居が高いというのは、いわゆる手続の部分に対して敷居を感じているのであって、実際のマシンの利用ですとか性能については特に敷居の高さを感じていないと理解したんですけれども、それで正しいでしょうか。
【高津センター長】全ての声を反映できているとは考えていませんけれども、手続きの面から敷居の高い方もいらっしゃいますし、一方、ある企業の方のお声を聞けば、スパコンの性能自体が雲の上のものであって、我々が使えるんだろうかという意味の敷居の高さというものも伺ったことがございますので、両方の要素があるんだろうと感じております。
【安浦主査】今のお話は、企業様がお持ちのアプリケーションがスパコンを使うまでもないという意味ですか。
【高津センター長】自社のマシンで計算されていたのが、規模を大きくしていくと、どうしても自分のところではできない。だけど、果たして自分たちで「京」が使えるんだろうかということで、技術的な面でハードルをお持ちだったというふうに伺っています。それは、共同研究者の方のサポートと、実際にランされてから、我々も支援して、いい成果につながっておりますが、イメージとしてかなり高いハードルがあったと伺っています。
【加藤委員】高津さんにお聞きしたいんですけど、産業利用って、トライアル利用、たしか5万ノード時間積があって、それから、実証研究利用と。これが実は昨年度の委員会でさんざん議論したんですけれども、研究開発の利用があると。最後に個別利用があると。これはお金を払いますと。そのときに必ず出てくる議論が、民業圧迫にならないのかという観点があると思うんです。でも、例えば播磨のSpring-8を見ると、あれは最先端の研究開発設備を産業界に使ってもらって最先端の成果を出すと。だから、考えている次元が違うんだと。という整理で、どんどんどんどんお金を払って使ってもらいましょうという考え方でポスト「京」も行くということでいいんですよねという、どちらかというと文科省に確認をしているんですけども。僕はそうやったらいいと思うんですよ。全然違うレベルの設備なので、その最先端の設備を使っていかに産業界が今までにないような成果を出せるかと。そのために成果は公開しなくていいから、お金払ってもらうと。それを強力に推し進めると。研究開発レベルまでは無償でやる。その後は、プロフィットを得てもいいから、お金もらうという、そこの確認をしたいという。
【坂下室長】まさにこのワーキンググループでの結論の中でそういった考え方も盛り込んでいきたいと思っています。今日この後も産業界の御意見も伺いますけれども、そのあたりの御要望も踏まえて、いろいろなユーザーのバランスも含めて考えて方針を出したいと思っております。
【加藤委員】そうですね。ちょっとその辺が「京」のときに少し曖昧だった点があると思っておるので、そこをはっきりさせてから。
【梅谷委員】加藤先生に御質問なんですけど。そういう意味で、ポスト「京」を使った産業界の成果って、いわゆる有償利用をするような産業界の成果というのをどういうふうにイメージされているかと。
【加藤委員】産業界からプレゼンがあるので、またその後にでも。ただ、具体的なイメージはあります。
【住委員】内閣府の方に御質問なんですけど、これだけが後から途中で課題審査で入ってくるので、何か不思議な感じが。いつもやっているんだったら、前もって制度的にできるんだと思うんですよね。地震・防災とか、そういう国家的なタスクのことはわかっているわけですから。だから、課題設定とか、特にそういう枠をとるとか、もうちょっと早くできないんですか。何でいつも途中から申請があって何とかってするんですか。
【岩村参事官補佐】内閣府です。なかなか内閣府の検討の中でも、どのタイミングでスパコンをお借りするかということが見通しづらく、現状ではこういう形で、時々にわかにお借りしているところですけど、御迷惑をおかけしているかもしれません。
【安浦主査】地震学の方もいろんな準備が整うまでの時間とか、そういうのもあるんですよね。
【岩村参事官補佐】資料に書かせていただいたように、検討会を立ち上げていて、まさに最新の理学の成果を結集して、こういうモデルを作ろうかというところまでの検討というのもやはりそれなりに時間かかりまして、それが出来て、ようやくモデルが出来た段階で、スパコンをお借りしようというので、今みたいな流れでお借りしているところでございます。
【安浦主査】その辺も、ポスト「京」どうするかというところで今後議論していきたいと思います。
 先ほど加藤先生の御質問で、高津センター長の方は、現在はどういう方針でやられているかというのはお答えいただけますか。
【高津センター長】あくまでも企業がなされる研究開発の一環として有償課題まで進められるというのは当然必要なことであって、それも受け入れてやっている、そういう状況でございます。
【安浦主査】じゃあ、有償課題で、成果は見せなくてもいいから、どんどん使ってくれという、そういうスタンスはまだとっておられないということですか。
【高津センター長】いえ、研究開発に限るのであれば、有償課題で成果を非公開というものも、当然ウェルカムというか、受け入れてやっている状況でございます。
【安浦主査】そこの部分をポスト「京」でどこまで許すかという問題として考えていくべきかと思います。
【臼井委員】私どものような民間事業者からしますと、そこの部分がまさに民業圧迫につながるところだと思うんですが、逆に手前どものような会社にお問い合わせいただく研究者の方、学生の方も、大半はお金がないということについてお問い合わせを頂く次第でして、1万円で貸し出すものを何とか5,000円にしてくれないかとか、そういった御要望というのは、常日ごろ毎日のように対応させていただいている状況です。そういった部分も含めてHPC領域でどこまで何を貸し出すのかとか、どういった値付けをされるのかというのは是非是非協議を進めさせていただきたいところでございます。
【安浦主査】ここのところはポスト「京」の利活用の制度作りに非常に大きな問題かと思いますので、このワーキングの最後までに基本的な方針に関する答申を作っていきたいと思います。
 ほかに何かございますでしょうか。
【梅谷委員】「京」の運用、高津センター長のほうなんですけれども、利用側としてちょっと課題だなと思っているのは、「京」の稼働率がまだらというか、4月から6月ぐらいまでは結構あいていて、年度末になるに従って混んでくると。それに対する問題意識だとか対応策とかという検討というのは何かされているんでしょうか。
【高津センター長】それは最初の方の4ページで御紹介しましたけれども、「京」の方が年2回の募集を受け入れてもらいまして、通常端境期で利用の落ちてくる時期というものがあって、一方混んでくる時期というのがあるわけで、それをシフトすることでおおむね平均化した利用率になるということを狙って年2回募集にしております。そういう試みはやっております。一定の効果は出てきているんですけれども、それで十分かどうかは、ちょっとまだ何とも申し上げにくいところです。
【梅谷委員】そういう意味では「京」はとりあえず利用停止になってしまっているんですけれども、後半期の課題は少なかったですよね。
【高津センター長】7割と3割ということで重みを付けてやってございますけれども。
【梅谷委員】そういう意味では、今回、この問題というのは、課題審査が終わってからの準備期間、利用開始までの準備期間が非常に少ないのと、我々、例えば使う側でいうと、世界で初めてのことをやろうということでいうと、やっぱりアプリケーションが動かないみたいなところ。アプリケーションが動く、動かない検証も利用開始と同時に実施というところがちょっと問題ではないかと思っているので、御検討いただければと思っております。
【関理事長】まず利用開始までの時間が短いという御指摘は、第1回目の審査が終わった初年度頃からもう既に声が上がっておりまして、我々としては、審査のタイミングを早めて、2カ月ぐらいは時間をとっていただけるように審査期間を早めております。
 それから、利用のまだら模様については、理研さんの方ともいろいろ協議をいたしまして、理研さんの方でもいろいろ工夫をされて、先にどんどん使ってもらうと、後ろの方で予定を超過しても、ちょっとプライオリティーを下げて使いますよというようなことで、大分初期の4月、5月の利用状況は改善されてきていると理解しております。年2回の募集というのも基本的にはそういうところを何とかしようということの試みでもありますが、まだ29年度に始めたばかりなので、どれぐらい効果が具体的に上がってきているかということを定量的に申し上げるのは若干難しいかなと思っております。
 以上です。
【梅谷委員】その点なんですけれども、シミュレーションの工程って、まず、シミュレーションモデルを作成するという工程が入ります。我々の場合でいうと、大体シミュレーションモデル作成に2カ月から3カ月かかっているという実態があります。トップガンの研究をやるとなると、それなりにシミュレーションモデルの作成に時間がかかるというのも御配慮いただければと思います。
【安浦主査】辻井先生。
【辻井委員】ちょっと観点が変わるんですけど、データサイエンスだとかビッグデータの話からすると、先ほど内閣府の地震対策という話がありましたけど、実際に減災をどうしていくかとか、被害をどのように極小化するというような話になると、地図のデータだとか、どこにどういう人が住んでいるかとか、かなりデータ系の話が入ってくるというのと、それから、過去の災害でとられた膨大なデータがあるわけですよね。そこからある種の被害のエスティメートをするとか、何かそういう意味では、シミュレーション技術とはちょっと違ったもう一つの技術とうまくかみ合わせていく必要があると思うんですけど、そのあたりの議論というのは、防災の方では内閣府の方はやられているんでしょうか。
【岩村参事官補佐】今おっしゃったようなことをHPCとか、そういったものでどう活用していくか、そういった御質問ですかね。
【辻井委員】はい。
【岩村参事官補佐】そういった意味ですと、少なくとも内閣府の防災担当でそういった取り組みは特段今していませんけど、まさにそこは最新の科学かなと思っていまして、そういった分野の研究をされている方がいらっしゃると思うので、そういったところの成果が形になってくれば、取り入れられるところは取り入れたいと思います。
【根津補佐】事務局から補足です。先生のおっしゃるとおり、まさに防災・減災にこういったシミュレーションの結果を結び付けていくという面で、AIとかビッグデータが非常に大きな役割を担っていただくことになると思っています。実は今政府でSIPという事業の第2期が始まっていて、そこで防災という課題も立っているんですけれども、次期SIPの防災の方では、まさにAIなりを活用して、例えばAIスピーカーなりを使って、住民の方々に直接そういった政府なり研究機関の判断を届けられないかとか、あとは、地方自治体が今非常に困っているのは、情報が非常に洪水として押し寄せてきているんだけれども、防災担当が1人、2人しかいないので、そういった専門的な知識をどういうふうに自治体の方々にお届けして、判断の支援ができる、かみたいなところをまさに防災の研究者の方はやられています。そういったものとまさにこういった巨大なシミュレーションみたいなものが組み合わさって、行く行くは一人一人の国民の方に届けられるような、そういった面では、エッジコンピューティングみたいな話にもつながってくると思いますし、そういったところがまさに政府全体としては構想されているところだと思いますので、そういった一翼をポスト「京」は担えるという姿が描けると非常に親和性が高いのかなと思っております。

議題3 ポスト「京」の利活用に関する産業界からの提言について
議題4 計算創薬の近未来戦略に関する報告書について

資料3についてスーパーコンピューティング技術産業応用協議会の金澤産業シミュレーションロードマップタスクフォース主査より発表

資料4について理化学研究所情報システム本部姫野コーディネータより発表

議題3、議題4の質疑については以下のとおり

【加藤委員】計算テストベッドという話が姫野さんから出て、僕も大賛成なんですが、そうなると、今までの課題選定の考え方を少しドラスティックに変えないとできなくなる。RISTの調査検討WGの方でABCIの話があって、あちらもかなり運用側も突っ込んだチーム、ワークグループを作ってやっているという話もあったんですよ。僕もポスト「京」は、RISTさん、今までやられているのは、もちろんマジョリティとしては継続した方がいいんだけど、先ほど防災の関係で枠をとったらどうだという話もありましたが、そういうあらかじめ枠を設定して運用側も含めて研究開発を一緒にやるというような課題というか、運用の仕方というか、少し新しいことも入れた方がいいんじゃないかと考えているんですが、その辺、姫野さんはどうお考えかなというのをお聞きしたかった。
【姫野コーディネータ】そこはむしろ是非そういうふうにしていただければと思います。
【加藤委員】そのときに多少はあらかじめお金をとる。そうすると、回収が、例えばこのチームからは年に2億円、というふうに読めると思っているんですけど。そうなってくると、今度は民業圧迫との関係も出てくるので、そこはそれをやっている方に何かあればコメントを頂きたいと。
【臼井委員】おっしゃるとおりでして、枠組みを作ること自体、私自身も非常に前向きにやっていくべきだと思います。あと、手前どもとしましては、省庁またぎの、例えばさっきの防災の話とかですと、気象衛星のデータをお預かりして、それを民間に渡すような事業というのも今始めたりもしているんですけれども、ポスト「京」におかれましても、そういったようなデータの渡しだったり、各スパコン間での、ノード間でのデータの渡しだったり連結をするなんていうのを設計していくことによって、この部分はただでいいけれども、この部分はお金を頂くよ、みたいなことがうまくスキームとして作れますと、一々計算資源に対してむしろお金をかけなくてもいいんじゃないかなんていうことも考えられるんじゃないかなと思います。
【梅谷委員】お金の話。姫野さんが説明された後、やっぱり我々自動車業界がやっていることとかなり近いところがあって、新しい手法で何ができるかと、どれぐらいもうかるかというのをまずこういう枠組みで検討させてほしいと。一番困るのは、じゃあ、それに幾ら金が付けられるかというのを、先ほど姫野さんがおっしゃられた、結果が出てみないとどれぐらい金が付けられるかというのが分からないというところがちょっと悩ましいというふうに感じていて、姫野さんの御説明を聞いて、全く同じだなと感じた次第です。
 お金の件でいうと、今後ポスト「京」を使うに当たって、有償利用という枠組みというのは、営業費用がかかるということもあって、避けられないだろうと感じています。
 一方で、国の税金を使って仕立てたコンピューターなので、いわゆる個人で使う、個社で使う場合は、相当の費用、まともな費用を払うべきだと。民業圧迫なんてとんでもないと。少なくとも税金を使うという考え方でいえば、まともな費用を払えというのが国民の声というか、当たり前のことなのではないかと思います。特に心配なのが、民業で考えた場合に、大手のクラウドベンダーって、AWSだったり、Azureだったり、やっぱりアメリカ系が多いので、少なくとも日米貿易摩擦になるようなことは絶対避けるべきだと思っています。
 一方で、姫野さんがおっしゃられたように、産業界全体を大きく薬の作り方を変えるだとか、自動車の作り方を変えていくだとか、そういう枠組み、いわゆる個社じゃなくて産業界全体で新しい取組をしていくんだというところには、やっぱり無償の枠組みがあって、そういう産業発展につながるような活動をしやすいような枠組みというのはポスト「京」でもぜひ残していただきたいと考えています。
【安浦主査】ありがとうございます。今のお話、金澤さんの方と共通する部分はあると思うんですけど、産応協の方はどういうふうにお考えでしょうか。
【産応協・金澤氏】今梅谷さんがおっしゃったことは、私の資料で申し上げたいことの1つでして、産業界で共通するような取組というのが、個別利用じゃなく、個社のためにやるものではなくて、業界で共通するもの、普遍的なものという取組が必要で、それに関しては、やはり有償というものではなくて、これまでの実証利用の方の考え方のような、成果を公開して無償で使えるというような枠は必要だろうというのが私の申し上げたかったことです。
【安浦主査】栗原先生。
【栗原委員】どうもありがとうございました。いろいろ課題が伺えて、大変よかったです。多くの課題があるなというのが印象です。
 私、ポスト「京」のアプリケーションの開発を拝見しているのですが、今、いろいろなアプリケーションがたくさん出来ています。まず、せっかく作ったものをどう使ってもらうのかというのは非常に大事な課題だと思います。さらに、学術的に重要な課題も多くやられているわけで、そういう部分もきちっと残すべきでしょうし、産業上有用である、産業からの期待というのが非常に大きいというのが今回伺ってよく分かったところで、例えば先ほど産業界から言われた数値フラスコのようなものを作るのは一体どういうチームなのだろか、産業界の組合というような形なのか、あるいは産学連携なのか、いろいろあると思うので、少し幅広くいろいろな形を想定して検討していくのが必要だなと今日ここに来て非常に感じたところです。
 あとは、モデルを作るのに時間がかかるというふうに梅谷さんおっしゃったのですけれども、そういうものとか、新規ユーザーに対しての対応や、利用者にとってのいい形とはと考えると、本当に規則的な割り振りがいいのか、もう少し柔軟な仕組みを作っていくことが大事だと思います。でも、いきなりはできないかもしれないので、少しずつ良くしていくと良いと思いました。
 私、SPring-8の運用についても伺う機会あるのですが、やはりだんだんに変わってきていて、ユーザー負担もある程度きちっとやってきているし、いろんな形が出来ているので、そのあたりの運用の方法も参考になると思います。例えばビームラインをそれぞれの組織が持つような場合もあります。やはりこれだけ使いたい人がいるときに、ある一定の量を、そんなに機械的に、早い者勝ちみたいなものでもないと思うので、マシンが出来るまでの非常に大事な期間で、丁寧な議論をすごくやるべきだなと思います。議論よりは試行かもしれないですね。試行的なトライアルみたいなのをいろいろ考えるべきではないかなと思います。
【安浦主査】ありがとうございました。田浦先生、お願いします。
【田浦委員】新しいユーザー層の発掘とか、特に産業界、それもこれから例えばAIのスタートアップとか何か、そういうところがもしかするとうまく連携できたらいいなと思っているんですけれども、そういう観点から、いわゆる民間のクラウドとかとこの手の国のスパコンって何が違うかというと、やっぱり国のスパコンって、全て申請書ありきというか、最初に何か難しい申請書を書いて、これだけ成果が出ますと言わないといけなくて、しかも、途中で梅谷先生がおっしゃられたように、実際には開発にすごく時間がかかるんだけど、申請がまず通ってからじゃないと1ミリも使えないという、そういうことになっていると思うんですね。だから、これは実際にはたくさん使われてはいるので、実験してみないとわからなくてなかなか難しいんですけれども、国の計算機とかでも、申請書ありきじゃなくて、本当に端っこの方で試してモデル開発するとか、このアプリケーションがちゃんと動くかどうか調べるとか、そういうことは本当に思い立ったらすぐにできると。何も書かずにできる。何者かを名乗らずにもできると。そういうような枠組みというのは作れないものかと。
 それでちょっとお試ししてもらって、これ、成果が出そうだということになったら、そこで少し大きくコミットしてもらえばいいと思いますし、それ以前のところでお金をとってもいいと思うんですね。そういうところは本当に民業圧迫しないようにちゃんとしたお金をとればよくて、そのときに、今の申請書ベースと違うのは、申請書ベースというのは、要するに、全部これだけ使いますと宣言して、それに見合った成果が出ますということを1年かけてやらなきゃいけないんですけれども、使った分に比例してお金を払うというのが今の民間のクラウドの当たり前ですから、それと似たようなことができれば、途中で引き返すとか、そういうことも簡単になりますし、なかなか難しいところはあると思うんですけれども、そういう方向で考えられないかなというふうに常々思っています。
【安浦主査】ありがとうございます。いわゆるアジャイルな利用拡大ができるような枠組みを考えた方がいいということですね。辻井先生、どうぞ。
【辻井委員】創薬の話を聞いていて、計算なのか、データなのかというのがやっぱり問題になると思うんですよね。特に分子間作用の反応だとか、ちょっと大きめの例えば細胞レベルの話になっちゃうと、本当に計算能力を上げていって、シミュレーションだけでできるのか、あるいは分かっていないことが結構多いので、ウェットから出てくるいろんなデータからボトムアップ的にモデルを作らざるを得ないのかという話があると思うんですよね。それがやっぱりデータとかなり絡んできていて、例えば産業界を取り込んでくると、各企業が持っている秘密にしたいデータというのが膨大に出てくる可能性はあるわけですよね。だから、そういうのを、産業界とつき合っていくときにどういう形でオープンなデータと、それから企業の方で保持しておきたいデータをうまく切り分けるとか、あるいは、コンソーシアムでやっていく場合の取り決めだとか、データになってくると特にそういうコンフィデンシャリティだとか、利益と直接絡んでくるというんですか、彼らの方はかなりお金をかけてデータをとっていますから、それがすっと出てくるというのは考えにくいですよね。そこのあたりの取り決めを少し考えていく必要があるかなという感じがしましたけど。
【安浦主査】ありがとうございます。高田先生。
【高田委員】2つあります。1つは、有償利用というか、産業利用の枠の考え方についてです。宇川先生、加藤先生、私のような、「京」を最初に立ち上げたHPCIコンソメンバーで議論したのは、トライアル・ユースのような形で最初の敷居はなるべく低くするということと、もう一つは、基本的に今でもその精神が生きていると思いますが、プロダクトランをしないということがありました。プロダクトランというのは、例えば会社で日常業務としている計算を実行する、すなわちコストを節約するためだけに「京」を使うという利用を意味し、そういう利用はしないようにしましょう、ということでした。それは梅谷さんが言われたように、国の税金を使っているわけですから、私は基本的にはやっぱりプロダクトランはやめた方がいいと思います。それとは別の考え方として、私もそうですし、梅谷さんとか加藤先生のところもそうだと思いますが、やっぱり企業の人たちが、コンソーシアムというか、業界単位で皆さんお互いに助け合って技術を切磋琢磨していきましょうという流れは日本の産業界の強みでもあって、そういう集団利用ができるとなると、チャンピオン、プロフェッショナルじゃない企業の人たちも一緒にトライできるという意味で、産業界利用者のすそ野拡大および日本のものづくり技術の底上げに貢献できます。
 ですから、やっぱり産業利用については、そういうコンソーシアムという形か、グループという形でも応募できるようにしていただいたら良いと思います。そのときに、そういう枠というのは多分、個々の会社の一利益ではなくて、社会のためとか、業界のためという、かなりオフィシャルな意味があります。当然そういう意味で公開もできるわけですから、社会に対する貢献もはっきりすると思います。そういう利用は、個別の計算のすごさというよりは、やっぱり社会的で、業界全体へのインパクトと有益性が重要となります。したがって社会に貢献するということを審査の対象に入れていただいて、そういう枠を利用できるようにしていただいたらいいのかなと思います。
 もう一つは、今、辻井さんが言われたように、まさにデータサイエンス、ポスト京利用の中で、シミュレーションとデータサイエンスをどう組み合わせていくかが重要です。私は、今、Mi2i(マテリアルインフォのプロジェクト)の企業コンソの幹事長を務めていますが、その中でもいろいろな課題や議論があります。データをどうするかという点については、個々の会社や自分で持っているものを出したくないということがありますし、外のものを使おうと思ったとき、何をどうやって使うのが良いか。さらに、データを集めてきたとき、自分で集めてくるのはいいですが、それを更にコピーして他の人に渡しちゃったときに権利の問題をどうするのかなど、いろいろ克服しなければならない問題があります。
 ですから、データの課題もありますし、あと、AIと言っていいかどうか分かりませんけど、利用方法についての課題もあります。機械学習というのはある意味では今猫も杓子も企業はどこでもやっています。機械学習を使うことの障壁は高くないですけれども、ポスト「京」を使うということになったときに、ポスト「京」を使う理由がきちんとしていないといけません。本当に膨大なデータを扱うために必要なのか、あるいは、かなり高度なシミュレーションと組み合わせた形でデータ同化のようなことをしていくために必要なのか、です。ポスト「京」利用時代のAIというか、データサイエンスの利用の仕方は、やっぱりガイドラインを示してあげないと、特に企業の人に対しては使い方が分かりにくいです。
 例えば、今の段階でトップレベルの有識者の人たちが集まれば、ポスト京でのデータサイエンス利用について大体幾つかパターン分けできると思います。先ほどお話ししたように、膨大なデータを扱いたいというケースもあるし、天気予報のような形でデータ同化する、すなわち偏微分方程式を解きながらデータを取って予測精度を上げていくケースが想定されます。幾つか類型化されたガイドラインを示してあげれば、企業の人は、自分の課題とポスト「京」の能力を勘案して、それに合わせた有用な利用ができるかなと思います。それを検討するための、今がその時期なのかどうか分かりませんけれども、AIとデータベースについてはかなり特化して議論できる場を作らないと、このまま漠然と議論していたら多分うまくいかないのではないかという気がします。
【安浦主査】データの問題というのは、ポスト「京」だけではなくて、日本の計算基盤をどうするかというときのデータシェアリング、これは科学全般に対して、オープンデータとか、いろんな言葉が飛び交っていますけれども、そういう中で、データを作った人の権利だとか、個人データであれば、その大元の個人の権利、プライバシーをどう守るかというような話があります。それらをうまく大量に利用することによって初めて新しいイノベーションが起こるのであれば、イノベーションが起こりやすい仕組みをこの国としてどう作るかという問題として捉えないといけない話だと思いますので、このワーキングで全部決着つく話ではないと思いますけども、このワーキングから問題提起はきちっとして、文科省の方でしっかりそれを受け止めていただきたいと思います。
 ほかに何か御意見。どうぞ加藤先生。
【加藤委員】まず簡単な補足なんですが、金澤さんが言ったポスト重点課題というのは、多分再来年度からのことなので。というのは、再来年度から成果創出フェーズが始まるかもしれないんですが、多分それだと思うので、そこに積極的に参加されて。
 それから、もう一つ、簡単でもないんですが、市販アプリを是非動かしたいとおっしゃっていましたが、実は「京」のときは結構早くそういう動きがあったんですが、ポスト「京」はいまだにそういう動きは僕が知る限りはそんなに大きくはできていないような気がするんですけれども、あるのかもしれないですが、それは後で議論するとして、産業利用にしても、それからAIの活用にしても、いろいろ課題があって、御意見を聞いていても相当温度差があるなというような感覚を持ちました。
 だから、ここでもそうなんですから、これはほかの人にこの結論を言うと、もっとそういうふうに感じるような気がするんですね。ですから、せめてここでは明確なこういう方針でいくというようなところがきっちり柱が決まって、まともなやり方をしているなということを、是非そういう結論を主査の主導で導いていただきたいというお願いと、それからもう一つ、宇川先生がおっしゃっていたトップダウン的な利用と、それから、ボトムアップ的な利用という観点もあるので、それについても是非よろしくお願いします。
【安浦主査】どうもありがとうございます。ほかに何か御意見ございますか。
【伊藤委員】ちょっとマクロな話をしてしまいますけれども、やはりインフラストラクチャーと言っている以上は、初期の鉄道網だとか、高速道路整備とか、あるいは今だと整備新幹線ですとか、こういったような観点で少し考えていただくと、どうもお話を聞いていると、階層ごとに役割が違うんだと言っているけれども、なかなかエコシステムいという観点では機能していないんじゃないかと思うんですね。だから、そこに十分配慮いただいて、例えば利用負担をするときも、確かにそういう大きなマシンじゃないと解けないような問題に集中するべきかとは思いますが、できれば効用ベースではなくてコストベースで提供すると。日本がそういうことをちゃんと作り上げているんだということを活用するべきだと考えております。
 以上です。
【安浦主査】ありがとうございます。そのほか何か御意見、御質問ございますか。高田先生。
【高田委員】「京」コンピューターが立ち上げたときに、HPCIのコンソーシアムでいろいろ議論した中で、私は今でもよく覚えていますが、あるべき姿をどうしたらいいかということで決着がつかなかった話に、「京」コンピューターと第二層目以降の資源を、日本全体でどううまく管理し利用していくかという課題がありました。今ちょうどポスト「京」に切り替わる時期ですので、改めて全体のあるべき姿を議論すべき時期ではないかと思います。今このまま議論しないで進んでしまうと、第二階層を使っている人はそのままで、「京」を使っている人はそのままポスト「京」を使うことにならないか心配しています。成り行きというか、今の姿がもちろん望ましい姿になっているのであればそれでいいとは思いますが。企業の立場から別の観点で言いますと、先ほど梅谷さんが言われたように、企業はアプリが動かないマシンは利用しないということになりますので、資源配分のあるべき姿とは別に、利用したいソフトによって利用するコンピューターを決めているというのがあって、本来の姿ではないような気がします。
 ですから、もう1回、日本全体のリソースの管理の仕方をどうしていくかという議論も有効な利活用のために重要です。各機関の管理の方法やいろんなルールに縛りがあったために、なかなか資源提供しにくかったというのが、最初にHPCIコンソが立ち上がったときにありました。それらの制限がその後緩くなったかどうかわかりませんが、少しずつ望ましい方向に変えていくのにポスト「京」がスタートするのはちょうど良い機会かなと思いましたので、是非その点も少し議論していただいたら良いかなと思います。
【加藤委員】そこはもちろんやられた方がいいと思うんですが、コンソーシアムの方でもいろいろ、田浦先生初め、関係者に入っていただいて、もうちょっと、例えばHPCIとか、JHPCNの関係とか、ポスト「京」と、フラッグシップと第二階層の連携とか、そこはもうちょっと明確に整理していこうということをやっています。御参考までに。
【安浦主査】そこのところは、実際の活動を動かしながら、是非引き続き検討していただいて、その成果で、やっぱり変わり目じゃないと変えられない話があるのであれば、今回のポスト「京」のところで変えていくという、そういう考え方をとるのがいいんじゃないかと思いますけど。そのほか何か御意見、御質問ございますか。
【宇川委員】今日のいろんな議論を聞いていて、私が思っていたことを皆さん発言されていらっしゃるので、付け加えることは特に感じないですけれども少し発言させて頂きます。
高田先生のHPCI全体としてどう使っていくのかというのは大変大事な点です。実際上は「京」とそれ以外の階層の利用というのは、例えば一時期、今でもそうですけど、「京」と第二階層のマシンを同時に申請できるとか、その審査の順番をどうするかとか、いろんなことをやってきて、私自身は、「京」を使っている人は「京」を使っていて、第二階層を使っている人は第二階層を使っていて、分かれてしまっていて、そのまま移行するということではないんじゃないかなと思っています。それでもやっぱりもう一回そこのところを考えを整理するというのは大事なことだと思いました。
 それから、産業利用に関しても、高田先生がポイントをおっしゃっていただいたので、それについては、私から付け加えることはありません。
 内閣府の利用ですけれども、これはすごく大事なことだと思いますが、今日の御説明で、「京」を利用して、それがどう使われて、内閣府における検討にどういう形で役に立ったのかというところの後半のところの情報公開というのか、説明というのか、そこをもうちょっとやっていただくといいのではないかなという気がします。それは逆に言うと、枠組みとして、こういう政府の必要とする計算をどういう考え方でどういうふうにしてやっていってもらって、その成果をどうやって、大げさな言葉を使えば、国民に知らせていくのかという、そこのところをもう一回整理した方がいいんじゃないかなと思います。
 以上です。
【安浦主査】ありがとうございました。ほかに何か御発言ございませんか。
 よろしいでしょうか。このワーキングとしましては、今後、次は1月に予定しています。1月のところでは、辻井先生が何度も言われていますAIとか、データ処理、ビッグデータ対応とか、そういったところの実際の応用のお話を、3名の方にお話を頂いて、そういう分野が、ポスト「京」を使ったら何ができるかという、そういうお話を伺おうかと思っております。
 そして、2月のところでは、重点課題がもう走っているわけでございますので、重点課題の中から幾つか御紹介いただいて、今、重点課題をやっておられる方々からどういうふうに問題が見えていて、できればポスト「京」の利用の制度とか体制をどうしたらいいかというようなことも含めて御意見を頂こうかと思っております。
 ということで、本日は、「京」コンピューターの現在までの利活用の支援体制、利用枠等を含めた利用体制の話、あるいは、産業利用等の制度の問題をお話しいただいて、ポスト「京」に対して、そういう問題に対する基本的なコンセプトを一度クリアに作る必要があるという、そういうところが1つの問題点として御指摘されたかと思います。
 それから、国家的課題、今日は岩村さんに話をしていただきましたけど、こういう問題は今後また、防災だけじゃなくて、いろいろ出てくる可能性もありますので、そういった課題に対してどういうふうに利用を考えていくかということも、重要な、ルール作りの上でも考えておく必要があるのではないかということかと思います。
 ポスト「京」については、そういう「京」での経験を踏まえまして、課題選定の枠組みを大幅に変えるとか、その中ではコンソーシアムによる共同開発、業界全体で使えるようなものを作っていくような話、そのときの課金の仕掛けとかやり方をどうするかという問題。それから、あくまでも学術的なインフラとして作ってきているものですけれども、産業応用と学術的なインフラとしてのポスト「京」のバランスをどうするか。更に、初めて使う人たちが使いやすいようにするためには、小さいところら始めて、だんだん広げていくアジャイルな利用ができるような、そういう仕掛けどう作るかなどが指摘されました。
 あと、辻井先生、高田先生の方から御指摘がありましたように、データに関する問題が結構重たい問題として出てくるので、その辺をどう整理していくかという、これはこのワーキングだけではなくて、もっと広い視野で国全体で考えないといけないと思いますけれども、そういう問題を考える必要があることも指摘されました。
 更には、計算インフラとしてのHPCI全体の国としての構造を再構築する必要があるかどうかということも今後の議論の中で検討していきたいと思いますので、是非今後も、いろいろ御提案を頂いて、また、こういう人の話を聞いたらどうかというようなことも御紹介いただければと思います。
 また、臼井さんのような、実際に計算サービスをされている側から、今後、計算サービス自身も変わっていく変化などもできれば御紹介いただきたいと思います。、あくまでも予測でしかないと思いますけれども、どういう方向に計算サービスというのは向かうのかという、それも踏まえないとなかなかインフラとしての国の計算インフラをどう扱うべきかということも見えてこないと思いますので、そういうお知恵も是非頂ければと思います。
 本日の議論、大体まとめましたけれども、何か御発言ございますか。松岡さん。
【松岡センター長】皆様、御議論ありがとうございます。オブザーバーですが、1つだけ気になったことがありますので、御発言させていただきます。今の議論、「京」のインスティテューショナルメモリが非常に強いような感じがいたしました。ですから、何十倍速くなるとかという話がありましたけれども、ポスト「京」はただ単に「京」が何十倍速くなったマシンではなくて、非常にいろんな意味で変化がございます。例えばArmのエコシステム。先ほど加藤先生の話がありましたけれども、ISPソフトウェアに関しては、はるかにポスト「京」の方が拡充する。かつ、それはただ単にポスト「京」のプロセッサだけじゃなくて、全く同じプログラムが動く、ほかのプロセッサが数多く今後出てくることが期待されて、ISPもそれは自覚しているわけですね。ですので、はるかにISPのソフトウェアを含むエコシステムは拡充するだろうというのがあって、これは企業利用に大きな影響を与えると思います。
 例えば、そのほかにも、もちろん計算パワーは非常に上がりますが、それ以上にも、例えばIOだとか、あと、AIにおける性能、これも「京」のただ単に数十倍ブーストという以上に機能が強化されています。IO速度もはるかに、ブーストもはるかに大きいですし、AI用のいろんな機能、これはただ単に数十倍じゃなくて、AI性能と比べると数百倍の性能がポスト「京」では出ます。
 ですので、そのような、前回私が講演させていただいたようなポスト「京」における違いですね。今後の議論で、ポスト「京」の「京」に対する違いの部分も御想察いただいて議論いただけると、更に利活用の範囲が広まるんじゃないかと思います。

安浦主査より閉会

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