平成29年6月19日(月曜日) 10時00分~12時00分
文部科学省16階 科学技術・学術政策研究所会議室
中釜主査、増井副主査、赤塚委員、内山委員、狩野委員、高坂委員、玉腰委員、南学委員、山田委員、山本委員
関研究振興局長、野田ゲノム研究企画調整官、小林研究振興戦略官付先端医科学研究企画官
オーダーメイド医療の実現プログラム事後評価委員会 羽田主査
【中釜主査】
それでは、定刻となりましたので、これより第4回の、ゲノム医療実現のための研究基盤の充実・強化に関する検討会を開催いたします。
本日は、委員11名のうち10名の委員に御出席いただいておりますので、検討会開催に必要な定足数に達していることを報告いたします。
また、本日は、オーダーメイド医療の実現プログラム事後評価委員会の主査として、千葉大学大学院医学研究院環境健康科学講座公衆衛生学の羽田教授に御出席いただいております。
それでは、事務局より本日の配付資料の確認をお願いいたします。
【野田ゲノム研究企画調整官】
それでは、配付資料の確認をさせていただきます。
座席表、議事次第の下に、資料1として、オーダーメイド医療の実現プログラム事後評価報告書(案)をお配りしております。こちらはまだ案の段階ですので、机上配付のみとなっております。資料2としまして、この検討会のとりまとめ(案)、さらに、参考資料として大学が整備しているバイオバンクの一覧をお配りしております。また、前回までの資料も、緑の紙ファイルにとじてお配りしておりますので、適宜御参照いただければと思います。
以上でございます。
【中釜主査】
ありがとうございました。
それでは、これから議事に入りたいと思います。
まず議題1は、オーダーメイド医療の実現プログラム事後評価の結果です。本検討会の第2回では、東京大学医科学研究所長の村上先生にこれまでのオーダーメイド医療の取組状況を御発表いただきました。本検討会では、今年度で終了を迎える本事業で構築してきた研究基盤の有効活用の在り方について事後評価結果も踏まえて検討することとされておりますので、事後評価委員会の羽田主査から、御報告をお願いいたします。
【羽田事後評価委員会主査】
千葉大学の羽田と申します。事後評価報告書(案)に沿って説明いたします。
資料1を御覧ください。この事後評価委員会は、1ページにありますメンバーが構成員です。全委員による書類審査と2日間のヒアリングを基に取りまとめたものです。それでは、早速、事後評価結果の概略を説明させていただきます。
まずは、2ページの事後評価結果の「総評」の部分を御覧ください。バイオバンク・ジャパン(BBJ)の事業は、第3期にわたって実施されてきました。第1期が平成15年に開始され、日本でこのような取組がなかった時代から始めて、第2期と続き、第3期が平成25年から始まりました。今回、その3期が終わるということで、的確な事後評価と、今後につなげるにはどうしたらいいかということを中心に検討しております。
第1期と第2期が第1コホート、第3期が第2コホートと呼ばれております。第3期に行われました第2コホートの収集目標10万人に対して、5万人ほどのDNA及び臨床情報が収集されております。また、第3期に関しましては、各臨床研究グループ、JCOG、JCCGのがん関係のもの、その他との連携が求められておりまして、DNA、血しょう、組織のBBJへの保管が始まっているという状況であります。配布状況等に関しましては、後ほど詳しく説明させていただきます。データの公開状況等に関しましても、幾つかの課題が挙がりました。
それでは、「達成状況」に関して説明させていただきます。2ページの下の2ポツ、達成状況として、「必要性」、「有効性」、「効率性」の3つに分けてまとめてございます。
まず、「必要性」に関しましては、多額の国費を用いた研究開発としての意義が評価項目で、疾患バイオバンクの構築と、それを活用した研究による遺伝子同定等の必要性が認められるかということが評価基準ということになります。主に、多因子疾患であるがん、生活習慣病、アレルギー等の疾患、それから、ファーマコジェノミクスと言われる薬剤への応答性と副作用に関して、様々な解析が実施されました。これらの成果が出れば、国民のQOLに直結するものであろうと考えられております。
BBJは、ゲノム医療研究を支える重要な研究基盤として、3大バイオバンクの一つに位置付けられており、世界最大規模の疾患バイオバンクということは問題なく言えると評価しております。また、我が国のゲノム医療の実現に資する成果としては、想定通り、あるいは、それ以上の成果をこれまでに上げてきていると考えております。以上から、本事業の「必要性」は高いと評価しております。
次に、「有効性」についてです。3ページの中ほどから下を御覧ください。データ及び生体試料の収集により、オーダーメイド医療の実現に有効な研究基盤が構築され、解析したデータの利活用が十分に行われたか、あるいは、疾患の発症関連遺伝子とか薬剤関連遺伝子の同定等がどの程度行われたか、というところを評価基準にして検討いたしました。
最初の括弧の、研究基盤の構築につきましては、第1コホートでは20万人、34万症例を収集したということで、当初掲げていた目標は達成できております。第2コホートに関しましては、10万人という目標に対して、5万人、8万症例を収集したということで、これもある程度の成果を上げたと考えております。ただ、力点を置いた疾患の優先的な収集をするということを言明されて始まったわけですが、これに関しては疑問とする意見がありました。また、疾患ごとに十分な症例数であり、現在あるいは今後の研究において、世界的な価値のある研究に結び付くような症例数あるいは臨床情報であったかという点は、今後、検証が必要であると考えております。第2コホートでは、国内の臨床研究グループとも連携しています。この連携体制が構築できたことは非常に高く評価できるのですが、その内容、あるいは、今後の研究成果につながるかということに関しましては、まだ検証の余地があるだろうと考えています。
これまでの利活用に関しましては、59件の配布を行ったとありますが、やはり理研への提供が中心であり、その他のオープンな利活用ができたかというと、限定的であったと言わざるを得ないと判断しております。
今回、配布に際して無償相談を始めたことに関しましては、評価しております。一方で、より多くの研究者による利活用を推進するための、データベース整備が完全にできているとは言い難い状況です。また、保存してある試料の品質については、DNAに関しては問題ないと判断しておりますし、血清等のメタボローム解析での評価をある程度実施しておりますが、長期間の保管による影響などの検証も課題だと思われます。あるいは、利活用したいという方の要望に従って、試料・臨床情報・ゲノムデータを一括して提供できるような体制ができたかというと、まだそこまではできていないので、きちんと対応する必要があると判断しております。
次に、4ページの2段目の、疾患関連遺伝子解析等の研究についてです。平成25年から第3期に入りまして、「がん関連」、「メタボリック・シンドローム」、「薬疹(やくしん)」、「保存血清」、その他の公募研究を実施しております。この中には、成果を上げたものも、成果が想定までは到達していないものもありましたが、連携体制の構築自体を評価できるのではないかという意見もあり、ある程度の評価はしております。
それから、4ページの下の方、第1コホートのゲノムデータ17万人分と3つのゲノムコホートとの連携による一般集団のゲノムデータを用いた研究に関しましては、多くの論文に結実しています。ゲノムデータに関しましては、1,000例ほどの全ゲノムシークエンス解析をパイロット研究として実施しておりますが、データの公表に関しましては、まだ課題があるだろうという評価でございます。第2コホートに関しましては、解析も実施されておらず、研究ビジョンが不明確だったという意見がありまして、ここの文言にも取り入れております。
ゲノムデータは、NBDCにより非制限・制限公開、あるいは、共同研究の枠組みにおいて解析が可能な環境が理研にありますが、まだ利活用を促進する環境として整備されたとは言い難いと判断しております。
その他の取組として、ELSIに関しましては、我が国における先導的な様々な取組や、外国の状況も取り入れた、我が国の国民の意識等に関する活動は非常に評価できるものであろう、としております。また、ゲノムメディカルリサーチコーディネーターの育成を含めた人材養成、あるいは、ニューズレターやWebページ、eラーニングシステムや講習会、そういった関係者への周知活動に関しましても、非常に評価できます。
以上から、「有効性」に関しましては、総体的に言いますと、おおむね妥当であったと評価しております。
最後の「効率性」は、計画・実施体制の妥当性を評価項目とし、連携体制の妥当性等を評価基準としております。これに関しまして、理研と3つのゲノムコホートとの連携によるゲノム解析については特に評価しており、その他の連携研究の達成度は研究課題によって差がありますが、ヒアリングによってある程度納得できるものがありましたので、「効率性」の観点からもおおむね妥当であったと評価しております。
最後に、3ポツの「今後の展望」です。25万人という世界最大規模のバイオバンクが構築されたことは十分評価していますし、これまでに出た成果も十分評価しています。ただ、その内容については、最初はゲノムコホート研究というたてつけではなかったということもあり、十分な抜けのないデータがあるかどうかというクオリティの面、あるいは、血清等の試料の品質、何に使えて何に使えないかという評価に関しましては、まだ検討の余地がかなりあるのではないかというのが1点です。2点目で、先ほども言いましたように、利活用に関しましては、まだシステムも不十分だと考えられます。さらに、委員からは、もっとターゲットシークエンスや全ゲノムシークエンスを行うはずではなかったのか、という御意見もありました。これに関しても、その文言をここに記載しております。
以上のような様々な課題がありますが、BBJにおけるバンキングは日本有数のもので、このシステムを利用することに関しては何も問題ないと考えられます。ただ、これがどんな研究にどのように使うのが有効であるか、これをどのように活用すべきか、ということに関しましては、まだ議論の余地があります。この辺りの課題を十分検討することによって、今後につなげることが必要です。
以上が事後評価報告書(案)の概略でございます。
【中釜主査】
御説明ありがとうございました。
それでは、今の御報告について、御意見、御質問等ありましたら、よろしくお願いいたします。このバンクの背景から、その達成状況、それから、必要性、有効性、効率性、その3点に分けて御説明いただき、さらには、今後の展望についてのコメントを付記していただいたということですが。狩野委員。
【狩野委員】
御説明ありがとうございます。
日本の研究全体についての心配なこととして、こちら側の考えている研究テーマをやっていただくという方向については結構良いシステムがあると思うのですが、先方の考え方で研究を進めたいと思ったことに対して、どうやって支援をするかというところが、基盤経費が少なくなったりして、なかなか難しい世の中になってきている気がします。この後者、つまり提供側ではなく活用側の考え方で研究を進めることの支援という観点に対して、BBJを活用しようと思った場合に、どのような活用のされ方があり得るか、あるいは、BBJのシステムがどのように変わるとうまく回るようになるか、という点はいかがでしょうか。
【羽田事後評価委員会主査】
なかなか難しい御質問ですが、一般的な話としましては、ガラス張りの客観性のある委員会等で検討すべきであるしか言えないので、具体的にどうすればいいというところまでは、適切な回答をできないという状況でございます。
非常に重要だと思いますけれど、BBJの最初の成り立ちとこれまでの歴史がかなり長いので、途中から大きく変えることが難しかった面もあります。それが有効だった面もありますので、それは評価しつつも、今後、そういった御意見も併せて検討することが非常に重要だと認識しております。
【中釜主査】
ありがとうございました。ほかに御質問ございますか。増井委員。
【増井副主査】
この前の村上先生の発表で、BBJは、最初のときに時間もかけて、コーディネーターの労力もかけて、生活情報を集めた部分がある、それも含めて、これまで情報の部分の流通がよくなかったので、それをよくするためのデータベースの充実を考えるというような話があったのですが、その辺りはどのように議論されたのでしょうか。
【羽田事後評価委員会主査】
私は第2期のELSI委員会に参加していましたが、GMRCというインフォームドコンセントを得る人材の育成、認定等によって、我が国における先導的な役割を果たしていましたので、努力は確かにされたと思います。
ただ、情報の入力に際して、本来は、「このデータがないと登録が終了しない」というように抜けがないシステムがあればよかったと思うのですが、未入力を許容するようなシステムだったということで、クオリティの高い、抜けのないデータが必ずしもそろっていない状況です。死亡調査も含めて、様々な後からの努力は認めますが、皆さんもよく御存じのように、抜けたところを埋めるというのは非常な労力を要しますし、そのあたりに関しましては完璧とは言えないので、これが世界的なゲノムコホートとして使えるかどうかに関しましては、余り自信がないというのが本音でございます。もちろん、村上先生が一所懸命努力されているのはよく存じております。
【増井副主査】
そうしますと、最初に集めるときのデータの集め方が少し甘かったから、そういう意味では、今の基準で使えるかどうか分からないというようなお答えでよろしいでしょうか。あるいは、抜けがあったとしても、使える部分というのは随分あると思うし、量があるということもありますので、一度、そういうデータが使えるのかどうかも含めて、公開して使ってみる価値はあるようにも思っています。
【羽田事後評価委員会主査】
それは研究テーマによると思います。村上先生によりますと、かなりの共通項目はもう入力できたし、クリーニングも実施したとおっしゃっておられるので、それでできる研究というのはもちろんあると思います。疾患コホートという限りは、疾患の経過に関するデータをきっちり捉えることが今後ともできるかどうかに関して、人材も要るし、経費も掛かります。電子カルテからのデータが経時的に入っていくということであれば、かなりなレベルのところまでできるかもしれないとは思いますが、その辺りに関しましては、今後の見通しも含めて、まだ必ずしも明確ではないというのが私の個人的な印象です。
【増井副主査】
やはりデータベースの形で、検索だけではなくて、ある程度、例えば、「こういうものに関心があるのだけど、それがどのぐらいあるだろうか」というようなラフなものでも、20万人分の情報の中から出てくるだけでも、随分興味深い部分はあるのではないかと思います。その部分の利用というか、疾患によっては250項目ぐらい集められたと聞いていますので、それらを何らかの形で使えるようにするということ、あるいは、少なくとも使えるよう試す価値はあるのではないかと思います。
UKのバイオバンクの利用者が増えた一つの理由には、どういうものがあるかということが、興味があるものについて、「これがどのぐらいありますか、どのぐらいの分布ですか、年齢分布はどうですか」といったときに、そういうラフな統計が利用者の興味で出てくるだけでも随分違うというようなことがあると聞きましたので、そんなことも少し考えられるようなコレクションとして。それがうまくいくかどうかは、きっと、情報インフラが整って現在動いている、例えば東北メディカル・メガバンクの中でどのようにデータベースを運営していくかということにも関わるかもしれないと思います。
【羽田事後評価委員会主査】
東北メディカル・メガバンクは疾患コホートではないので、すみ分けはできると思いますが、今、増井先生がおっしゃったような、データのクオリティの検証は、まだ完璧ではないのかなと。本当に使えるものであれば、積極的に使ってもらうというのは当然のことだと思いますが、そこまでオープンなサンプルとデータが、今まで解析したデータや臨床データも含めてどの程度あるかについて、もっと見えるようにすることがまずは必要かと思います。それが見えた上で、何に使えるかという評価もできるようにすることが必要だと思われます。
【高坂委員】
よろしいですか。
【中釜主査】
はい。
【高坂委員】
このプログラムのPSをやっております高坂です。今、御質問があった点について、いきさつをよく承知しております。
やはりそういった、どこにどういうサンプルがあるかということをきちんと皆さんに周知させるということになりますと、個票に記載された臨床情報と、DNA情報等がマッチングした状態で、しっかりとデータベース化しておかなければいけないということになります。今、BBJと東北メディカル・メガバンク、ナショセンのいわゆる3大バンクで、どういう試料がどこにあるかということを検索できる、横断検索システムを作ろうとしています。昨年あたりからそれをやろうと試みていたのですが、今、羽田主査がおっしゃったように、BBJはまだ個票の整理、いわゆるクリーニングができていなかったという現状がありました。それで、BBJの方で一所懸命やっていただいて、ようやくそれが完成してまいりましたので、これからは3つのバンクを中心として、まずワンストップサービスができるようなシステムをこれから構築できるという状況です。AMEDも非常に力を入れてやっていただいています。
それから、先ほどのELSIのことで一言申し上げますと、臨床情報の開示ということと品質管理ということがきちんとしていないと、恐らく、サンプルが使われづらい状況になると思います。BBJでは当初からELSIに関する委員会を持って一所懸命活動していただいたということはよく承知しているのですが、残念ながら、その活動内容がどうもオープンになっていなかったということが後で判明しました。2か月か3か月ほど前に武藤先生に来ていただきまして、BBJのELSIがどうなっているかということを、これまでの歴史も含めていろいろ説明していただいて、それで初めて、こういう活動をされていたということが分かりました。それについては、非常によくやっていただいたと思いますけれども、残念ながら、臨床情報の開示という部分で、なかなか統一した見解ができていなかった。それが、ある日突然、割とすんなりと情報が開示されていったというような、なぜそうなったのかという経緯も含めて、なかなか不透明なところもあったというのが現状です。
ただ、全般的に言うと、それぞれの時点で問題点を一応把握して、それを解決しようという努力をされたことは認めたいと思います。
【玉腰委員】
よろしいですか。
【中釜主査】
玉腰委員、お願いいたします。
【玉腰委員】
これはBBJというよりは、むしろこういう事業をどう評価するかという話だと思いますが、5年ごとに一定の評価をしながら15年進んできたものが、最後に来て、「あれが足りない、これが足りない」という話になるのは、それまでの評価できちんとフィードバックが掛かっていなかったということなのか、それとも、受け手側が十分に対応できなかったのか、対応できない事情というのは、例えば、人手の問題、費用の問題、いろいろな背景があると思うので、そういうことなのか。そのどちらなのかは随分大きな問題で、この先、今あるメディカル・メガバンクだとか、いろいろなところの評価の在り方に関わると思います。今回の評価だけではなくて、これまでの評価とも関係すると思うのですが、例えば、生活習慣の情報がないというのも、早い時点であればもっと補えたものが、10年たったらやはり分からなかったとか、いろいろな事情が出てくると思います。そこはどのように考えたらよろしいのでしょうか。
【羽田事後評価委員会主査】
そこはゲノム研究の流れということも加味して考える必要があると思います。当初は、GWASを中心としたケースコントロールで、多くの疾患の感受性遺伝子及び薬剤感受性遺伝子の同定が大きな目的でした。そのためには、目的とした各疾患のサンプル数をとにかく集めなければというのが最大目標だったと思います。その結果、様々な疾患における疾患関連遺伝子が次々と分かってきて、それなりの成果が出たことに関しましては、誰も異論はないと思います。
ただ、スタート時点で、今考えて非常に有用だと思われるようなゲノムコホートとしてのたてつけがあったかどうかというと、それは必ずしも言えないかもしれません。まず優先するべきものがあったと思うので、1期、2期に関しましては、GWASによるデータ、成果が出たということで、十分に評価されていると思います。
ただ、GWASでこれから先もどんどん成果が産出できるかというと、なかなか難しいところがあります。それを含めて、第3期では各所からの指摘に対応しようという努力をされたと認識しておりますが、初期のデータクリーニング等に関して、どの程度のところまでできたのかがこれからの研究の有用性につながると思います。数字上で、基本項目では何%というようなことは分かっているのですが、その他にも、疾患ごとに必要なデータ等もありますので、そこに関しまして、そこまでのたてつけはなかったのではないかと思っております。
【中釜主査】
ありがとうございます。
今の御議論の中に議論のエッセンスが込められていたかと思いますが、私からも2点ほど質問とコメントです。
このバイオバンク、BBJ事業は、この事業の必要性、有効性に関して、非常に大きな効果を上げてきたということは間違いないだろうと思います。15年前を考えると、当時、やはり量的な形質に関する遺伝学的な解析というのは、遺伝学的にきれいな均一な動物モデル系を使わないと難しいと言われていた時代に、こういうバンクが構築されて、ヒトでGWASという手法を使ってやっていこうという、その効果は非常に大きいと思います。それからの15年の間に、ゲノム解析でいろいろなことができるようになって、逆に、期待も膨らんできた。そういうものに対して、当初のICの状況が十分に対応できたかという問題は、確かにその後起きてきた問題だったと思います。ただ、その過程でもELSIの問題は十分に議論されてきた。大きな貢献をしたことは間違いないと思いますが、ただ、特に第3期以降、その利活用、効率性というところで若干のハードルがあったのだろうということだと思います。そこを上手に解決しながら、これまでの15年間の成果を、きちんと今後のゲノムプラットフォーム事業等に生かしていくというのが大きなところかなと、今の御議論を聞いていて思いました。その問題解決というところが、やはり残されている課題かなという印象です。
この報告書の最後の方、「今後の展望」について1点確認です。第2パラグラフの最後の方に、「当初から疫学的には精密に設計されたものではないこと等から、今後の追跡調査の必要性について、ニーズを踏まえた判断が必要である」と書かれています。もともとコホートといいますか、ケースコントロールスタディという形で、ラージスケールな、スケールメリットを生かした解析のために構築されたのですが、「疫学的に設計された」というのは当初から可能だったのでしょうか。ここは少し言い過ぎているような印象も少し持ちました。この辺りはどういう御議論だったのか、お願いします。
【羽田事後評価委員会主査】
どのように記載するかに関しては、委員の間でかなり議論がありました。疫学といっても、いろいろな疫学のレベルがあるわけで、記述研究等に関しましては何も問題ないのですが、コホートというたてつけが必ずしも完璧ではなかったという意味で書きました。文言がもし不適切であれば、玉腰先生はじめ、御意見を頂いて、適切な表現を教えていただければと思っているというところで、この文言に強い意味を込めたつもりはありませんでした。
【中釜主査】
ありがとうございます。そのほか、御質問、御意見ございますか。山田委員。
【山田委員】
玉腰先生と中釜先生がおっしゃった時系列の話なのですが 、恐らく3つか4つに分けられて、試料の収集と保全、それから、いわゆる実験の技術的な面と、それから、情報の保管と公開と、ELSIの4つです。いずれもやはり15年もたつと、いろいろな面で技術革新等が起こりますので、どの時点で切り替えればよかったのか、それとも、そもそも切替えが難しいのか、外部化する方がよかったのか。4つの点、それぞれ技術の進み方はいろいろですが、全てが進んでいるのは確かなので、4つのポイントのうちのどれは切替えがうまくいって、それはどうしてうまくいったのか、お金が投入されたからうまくいったのか、それから、どの点は余りクリティカルに考えなかったので時代遅れ化が非常に強くなってしまったのか。4つの点が余り明確に分けられていないような気がします。私は情報屋ですから、特に情報技術的には、恐らく余り大改革が途中で入っていないと思うのですが、次世代シーケンサーが入ってきたのと同じレベルで、情報の方も、どうやって情報をハンドリングしたらいいかという技術等は入ってきています。この先継続していくときに、これまでの遺物となりつつある情報技術をそのままつぎはぎしながら実施していくのはかなり難しいと思いますし、その切替えについての考察は、ToMMoさんなども今後やはり切り替えをしていかなくてはいけないと思うので、どの時点でどのくらいの人とお金を投入しないとうまくいかないかといういい知恵になるのではないかなと思います。
【中釜主査】
ありがとうございます。では、今の点についてお願いします。
【羽田事後評価委員会主査】
昔はインピュテーション等もできなかったのですが、今、東北メディカル・メガバンクの公表されているデータを使って、インピュテーションが可能になっていますよね。BBJもその辺りのデータをもっと出して、統合するようなことがあれば、もっと精確で有用なデータベースになるのかなという感覚は持っております。その辺りも含めて、利活用が可能かと思います。
【中釜主査】
では、南学委員。
【南学委員】
山田先生が指摘された、時代とともにいろいろ技術革新が起こるということ以外に、法的な規制も大きく変わってきていて、ある日突然ゲノムが個人情報になったりするので、そういったからも非常に大きな影響を受けるだろうと思っています。なので、その辺りがこの計画にどういう影響を与えて、今後どのようにするべきかということは、実際やられておられる方々は非常に大変なことだと思うので、その辺りを斟酌(しんしゃく)してあげなければいけないのではないかと思っています。あと、データの欠測値等ですが、これは臨床試験で最近やられるようになったプラグマティック・クリニカル・トライアルという概念があります。従来の治験などだと、非常に特殊な、合併症のない年齢の若い患者さんを集めて、薬を治験期間中ずっと変えないという、日常臨床ではなかなかない状態でやって、それが普遍的な結果に結び付くのかということから、通常の患者をどんどんクリニカル・トライアルに入れていって、欠測値はあるのだけど、数の力でノイズをカバーしましょうという概念があるので、こういったものについてもものすごく大きなNがあるはずなので、ある程度の欠測値というのはカバーできるのだろうと思います。もちろん、糖尿病を解析するのに、ヘモグロビンA1cのデータが採れていませんでしたといったら話にならないですが、その辺り、どれぐらいクリティカルな欠測値があって、どれぐらいはささいなことなのかなということも検討していただくのがいいのかなと思っております。
【中釜主査】
ありがとうございました。ほか、よろしいですか。では、狩野委員。
【狩野委員】
組織というのは建造物のようなものだと思っております。この表現を使うとしますと、当初の目的から今に至る過程で、目的が変わってしまったときに、改築あるいは増築で済む範囲と、それから、やはり新築しないといけない範囲がきっとあるのではないかと思います。今回の場合、「改築」あるいは「増築」で利活用が盛んにできるとすると、どのような利活用であればいけるのでしょうか。
【羽田事後評価委員会主査】
それを含めた探索というか、評価というのが必要だと思うのですが、今の臨床データ等でどこまで何ができるかを知りたいというのは、先ほど私が言ったとおりです。今の状態でここまでできると示すことができれば、かなりオープンになって、利活用できるのではないかと思っております。
【中釜主査】
ありがとうございます。
恐らく後半の議論が正にそうですが、主に効率性の観点から、それを今後の展開にどのようにつなげていくのかというところで、幾つかの要素に分解した議論が十分に行われてきたと思います。この報告書の書き方では、要素ごとにどういう状況で、あるいは、どれが足りなかったかが分かるような形にしていただけると、今後の展望にもうまくつながるのかなと思います。その点にかなり集約されるかなという印象を持ちましたので、その辺りを考慮していただいて、最終的な報告書にしていただければと思います。
ほか、よろしいでしょうか。では、山本委員。
【山本委員】
まず、この報告書をまとめられて、羽田先生、大変だったのではないかと思います。お疲れ様でした。それから、BBJが始まった頃のこと、15年前にゲノムをやろうと取りかかったことは大変だったと思います。今、私たちは、マウスや実験動物中心のサイエンスから、ヒトを中心としたサイエンスを打ち立てようというフェーズに変わってきているというところですが、そんな議論があんまりないときにこれをやったというのは、先進的で大変だったのだろうなと考えています。
それで、先ほどから皆さんのお話があるのですが、1つは、ゲノム解析手法のものすごい進歩があって、それに事業をやりながら対応していかなければいけないというところ、第2に、バイオバンクという考え方そのものもこの15年の間に非常に進歩してきて、社会のインフラストラクチャーとしてバイオバンクがなければいけないということが認識されてきました。そのような解析の手法の進歩、それから、バイオバンクという考え方の進歩に対応しながらこれまで事業を進めてこられたと理解しています。足りないところもあったのかもしれませんが、これらの点が中心的な議題だったと思います。
それで、先ほど「疫学的に見て」という話がありましたが、やはりバイオバンクを作ろうと思って患者さんを集め始めるというデザインを見ると、羽田先生のような立場の方から見ると、やはり余り「疫学」をやっていたという雰囲気ではなかったのかなというところは、少し私も感じるところがあります。
それで、この報告書案を見たときに、「オーダーメイド医療の実現」ということがプログラムのタイトルでもあり、一丁目一番地でもあって、これに向かって、この15年間にどんな貢献があって、どんなところが進歩したかということがもう少し書き込めるのではないのかなと思います。
3期目が始まるときに、次世代シーケンサーが出てきて、エクソームや全ゲノム解析ができるようになってきたところに対して、それらへの対応をやりますという議論があったのと、もう一つ、そろそろ遺伝情報を、こういうコホートで決まってくるような遺伝情報ですけれども、どうやって遺伝情報を患者さんに還元していって、利用されていくのかということについても考える時期に来ているのではないか、オーダーメイド医療ですから、遺伝子解析結果の回付方法とか、そういうことも考えるような時期になってきているのではないかというのが、第3期の最初のときにあったと思います。そういうことを含めて、このプロジェクトがなければオーダーメイド医療の進展が十分できなかったのではないかというようなことが、もう少し事後評価報告書に反映できたらいいかなと思いました。
【中釜主査】
ありがとうございます。
恐らく、事後評価委員会のメンバーも、この委員会メンバーも思いは同じで、BBJの事業が日本の生物学、医学研究に果たしてきた貢献は大きいと感じています。それをいかに今後、更に生かしていくかというところが、やはり我々も知恵を絞る必要があります。そういうことを込めた報告書の形にするのは大変だと思いますが、もう一つお力を頂ければというのが、この委員会の総意かなと思いました。ありがとうございました。
それでは、次の議題に移らせていただきたいと思います。
議題2、本検討会のとりまとめ(案)について、まず事務局より説明をお願いいたします。
【野田ゲノム研究企画調整官】
それでは、資料2を御覧ください。前回までの御議論を踏まえて取りまとめたものでございます。
1枚おめくりいただきまして、まず「はじめに」というところでは、この検討会の背景となったゲノム医療研究をめぐる動向や政策的背景について記載し、2ページ目にございますとおり、本検討会での検討の経緯についても記載しております。
次に、1ポツの「ゲノム医療の実現に向けた研究基盤の取組状況」でございますが、こちらについては、第1回、第2回の検討会で実施しましたヒアリングの概要をまとめておりまして、それぞれプレゼンターの先生方にも御確認いただいている記述です。(1)として、AMEDゲノム医療研究支援機能、3ページに行っていただきまして、(2)として、東北メディカル・メガバンク計画、(3)として、オーダーメイド医療の実現プログラム、4ページ目後半から、(4)として、ナショナルセンター・バイオバンクネットワーク、さらに、5ページ目に、(5)として、大学のバイオバンク、これらについてまとめております。
そして、2ポツの「研究基盤に対するユーザーのニーズ」として、第1回のヒアリングで御説明いただいた内容をまとめてございます。
これらを踏まえた上で御検討いただいた結果として、今後の方向性として、3ポツに「研究基盤の充実・強化の在り方」としてまとめております。こちらについては、第3回に御議論いただいた論点整理を骨子として、それに前回の議論の内容を付け加える形で、報告書としてまとめております。この3ポツに関しまして、全体を御説明申し上げます。
(1)バイオバンク等の利活用促進方策としましては、産業界、アカデミア双方のユーザーから、アクセシビリティや対応スピードの向上について引き続きニーズが示されたということで、これに関しては、AMEDがゲノム医療研究支援機能のアドバイザリーとして設置した各種分科会にユーザー側もメンバーに加えるといった形で、ユーザーの意見が的確に反映できる仕組みの構築が必要であるというところです。そして、特に、ワンストップサービス機能への期待が高いということで、3大バイオバンクを中心に開発を進めている横断検索システムの高度化が必要、としています。また、その際には、各バイオバンク/コホートでデータベースの構築等に関わる人材がいらっしゃるわけですが、ファンディング・エージェンシーであるAMEDが、それらの人材が情報共有し合う場を設置することで、データ管理等の水準向上を図るということも付け加えております。
次に、7ページ目に行っていただきまして、前回の御議論の中でもありましたように、試料については限りがあるということで、ゲノムデータ等の汎用性のある解析データに関しては、バイオバンクに還元し、広く共有できる仕組みを構築する必要があるのではないかということで、このような仕組みの構築についてバイオバンク横断的に検討することが必要であるという記述を追加しております。
また、アクセシビリティや対応スピードの迅速化とともに、情報管理における安全性等の確保との両立が前提となる点に留意が必要という点も付け加えております。
また、バイオバンク側からはユーザーニーズがつかみにくいという課題もございますので、これらについては、ユーザー側で、例えば、業界や疾患領域ごとに共通ニーズを集約する等の対応が求められるという点を記載しております。
また、バイオバンクやコホートが研究基盤として貢献していくことや、ユーザーが解析したゲノムデータをバイオバンクに還元するといったことには、それぞれのモチベーションの向上が必要ということで、そのような貢献を評価する仕組みの導入などによって、研究基盤を通じた貢献に対する価値観の醸成を測るということも、前回の御議論を踏まえて追加しております。
続きまして、(2)今後の疾患バイオバンク機能の在り方でございますけれども、昨今の研究動向を踏まえて、先ほどのオーダーメイド医療実現プログラムの中でもございましたように、ヒト生体試料については、ゲノム解析に利用するというだけではなく、第2段落にありますような、試料がプロテオミクス・メタボロミクス等のオミックス解析を行えるような品質を有していることや、時系列で採取した試料や組織があるといったことへの要望も出てきております。また、更に細かな臨床情報が必要な場合もあり、きめ細かな対応が求められるというケースがあります。このように、試料に求める要件が多様化しているということで、目的に応じた条件で試料・情報を収集するニーズ対応型の疾患バイオバンク機能が必要であるという方向性を記載しております。
8ページ目に、前回の御議論の中でもありましたように、ニーズ対応型といっても、特定のユーザーの個別具体的なニーズに合わせて収集するという方法や、将来的なニーズを見越して先行的に収集するという方法の両方があるということで、両方を記載してございます。
また、このように収集した試料が蓄積されることで、バイオバンクとしての多様性が高まり、他の研究へも利活用の幅が広がっていくということへの期待も記載しております。特定のユーザーのニーズに合わせて試料を収集する際には、ユーザーの依頼するインセンティブが損なわれないように、その試料・情報を他に共有する場合には、必要に応じて分譲開始まで一定の期間を置けることや、臨床情報の一部は分譲対象外とできることといったルールを設けることが必要、としております。
次に、基礎研究から初期段階の臨床研究を支える疾患バイオバンク機能でございますけれども、このようなニーズ対応型の疾患バイオバンク機能については、NCBNでは患者レジストリーに基づく臨床研究開発段階のインフラとしての機能を強化していくという方向性がございます。一方で、基礎研究から初期段階の臨床研究でも、比較的少数の質が高く多様な検体が必要になるケースがあり、これへの対応のために、一部の大学で臨床機関に併設する組織的なバイオバンク、診療機関併設バイオバンクとしておりますけれども、そのようなバイオバンクの整備が独自に開始されているという状況がございます。また、大学病院は、多様な症例が集まり、検査システムが充実していることや、診断への信頼性が高いこと、様々な臨床研究が行われるといったことがあり、正確な臨床情報が付加され品質の確保された多様な生体試料を収集する場として有望という背景がございます。このような特長を生かして、機関の特色や方針に応じて、オンデマンドに試料に収集・提供を行って、余剰分を他の研究に提供するという取組や、また、機関内の臨床研究や医師主導治験等で得られる試料・情報を、将来ニーズを見越して収集・保管し、提供するといった取組が考えられるのではないか、としております。
このような背景情報を踏まえて、我が国の基礎研究から初期段階の臨床研究を支える疾患バイオバンク機能として、我が国の中核的な大学病院による診療機関併設バイオバンクの利活用を促進する仕組みを国として整備することが効果的であるという方向性を記載しております。その際には、各大学が独自に整備を開始しておりますので、その自立的運営を促しつつ、より広く利活用されるために必要な取組を国が支援するということが必要であるとしております。
一方で、一つの診療機関併設バイオバンクでは規模やスピードが限られているということもございますので、複数のバイオバンクの試料を横断的に利活用できる環境の整備や、また、更に一歩進めて、複数のバイオバンクが連携して試料収集を行う仕組みの導入が効果であるということも、9ページ目の冒頭に記載しております。
そのために、具体的には、バイオバンクをネットワーク化し、さらに、その取りまとめを行う中央機能を設置し、試料・情報の所在情報の横断的な活用や、情報システム・品質管理等の標準化、また、将来的には中央倫理審査委員会の活用や疾患レジストリーとの連携等を、3大バイオバンクとともに行える体制を整備することが必要である、としております。
また、前回の御議論にもありましたように、情報システム・品質管理等の標準化に当たっては、目的が飽くまでも利活用の促進であるということを念頭に、過度な条件が付されないように進めていくことが必要ということも記載しております。
一方で、基礎研究段階の探索的な研究においては、臨床情報や品質が限定的であっても、多様な試料・情報が大規模かつ迅速に入手できることが有効な場合がありますので、そのようなケースへの対応において、大規模疾患バイオバンクであるBBJを相互補完的に有効活用できるようにすることが必要である、と記載しております。
次に、(3)バイオバンク・ジャパンの有効活用方策でございます。BBJについては、主としてゲノムワイド関連解析を目的に構築されたものであり、ゲノム解析に必要な試料の品質は確保されているということ、収集規模が大きいということ、また、一定範囲の臨床情報が附帯しているということで、疾患研究における大規模ゲノム解析に有用な試料・情報が蓄積されていると言えるのではないか、という御議論でございました。
このような有用な試料・情報を今後最大限に有効活用していくために、ユーザー視点に立った利活用を更に進めるための取組を行っていくことが必要、としております。その際には、AMEDのゲノム医療研究支援機能を通じた、他のバイオバンク等との連携も重要であるとしております。
また、この際に、試料は有限ということで、ゲノムデータ等の汎用性のある解析データとして共有し、ニーズに応じて臨床情報や試料とともに分譲できるようにするなど、多くの研究者が様々な研究アイデアを気軽に試せるよう広く共有する仕組みを確立することが必要である、としております。
ゲノム解析以外の用途については、用途によっては利活用が困難な状況にあるという御議論がございました。どのような用途への利用が可能かということをユーザー側で判断するための情報が、今は十分に開示されていないという状況でございますので、今後、利活用の幅を広げていくためには、まずはそういった情報の開示が必要であるということでございます。10ページ目に行っていただきまして、その際に、前回御議論がありましたように、情報システムの抜本的な改善がまず必要ではないかということも、併せて追記してございます。
また、疾患コホートとして実施してきた追跡調査や生存調査等でございますけれども、これまでの提供実績は限定的であり、疾患名以外の臨床情報は余り活用されていないというデータが前回ございました。平成30年度以降の追跡調査等の必要性に関しましては、今後、更なる追跡調査等への要望、ニーズやこれまでに蓄積した情報の今後の利用状況を踏まえて慎重に見極める必要がある、としております。そのためには、必要に応じて調査をできるように、一定の年限を設けて、各医療機関で対応表を保持しておくということが望ましいのではないか、としております。
最後に、BBJの充実したバイオバンク設備を生かして、今後はナショナルバンクとしての仕組みを構築する、すなわち、中小規模バイオバンクで収集する試料のうち、一元的に保管することが適しているもので利活用が期待される試料を保存するという仕組みを構築してはどうかということを記載しております。ただ、その際には、有用なものを受け入れるために、外部有識者から構成される審査体制を構築した上で、審査を行って、受入れ等を行うということも記載しております。
最後の4ポツは参考で、政府文書における関連の記述をまとめたものでございます。
報告書の内容は、以上でございます。
【中釜主査】
御説明ありがとうございました。
それでは、今の説明を踏まえて、資料2のとりまとめ(案)の主に3ポツ以降の部分、研究基盤の充実・強化の在り方に関して、(1)から(3)について重点的に御議論いただきたいと思います。今の説明の中で追加すべき点や修正すべき点がありましたら、まず御意見を頂ければと思います。
【山田委員】
私、第1回と第2回は出ていないので、もしかしたら議論はあったのかもしれませんが、今回、バイオバンクを対象にするに当たって、サンプルとデータを二重化しておかなくていいのかという話は、お金の掛かる話なので難しいのですが、そこはこういう大きなところで言葉に残しておかないと、なかなか動きにくいと思います。貴重なデータとサンプルなので、災害があっても大丈夫なようにするのか、ある意味仕方がないと思って各施設のネットワークに任せるのかというところは、もしかすると一応コメントはしておいた方がいいのではないかなと思いました。
【中釜主査】
その点は、余り本格的には議論されなかったかと思うのですが、増井委員、何か御意見ございますか。
【増井副主査】
この中で、サステナビリティの話が正面からは取り上げられていないのですが、いろいろなところで取り上げられてはいるのですが、やはり少し書いた方がいいという気がします。
サステナビリティを保つために何をするのかということが、バンクが利用されて、お金が回ってという形になるとはなかなか思えないところもあるので、社会インフラとして考えたときに、バンクの使命という問題があります。それから、この中で大学のバイオバンクのところは、書きようが偏っていますね。参考資料のリストを見ますと、ほかにもいろいろな大学が行っているとありますし、それぞれに特徴があるものがありますので、この書き方だとちょっとまずいかなと思っております。
ただ、岡山大学がどうしてこれだけ注目されているかということの中には、企業との連携という問題があると思います。企業との連携の持つ意味について、中規模・小規模のバイオバンクの中での役割、それから、大きなバイオバンク、例えば、東北メディカルやBBJもそうですし、6NCのNCBNもそうですけれども、その役割がまた違うと思うのです。ですから、この形でこう書いていると、何となくバンクというものがわーっと横並びに論ぜられる形になっているので、少しそこのメリハリ、規模、それから、役割についてのマッピングのようなものを考えるということが必要であると思います。バンクの連携とその補完的な共同が大事だということは書いてありますが、それについて、この機会ですから、少しそういうマッピングのようなものを考えてやるというのも、1つの手かなとは思います。
【中釜主査】
そこは、利活用のイメージが分かるような形でのマッピングということかなと思います。
狩野委員、お願いします。
【狩野委員】
本学の名前を出していただきましたので、この機会に、一応関連する現状の考え等を含めて申し上げます。
1つに、持続性の問題としては、運営資金の問題がどうしても出てくるわけでございまして、とりわけ昨今、公共セクターの予算がだんだん減っているという状態の中で、どのようにそれぞれが運営していくかという問題を含んでいると思います。もちろん、公共セクターがまた大きくなれば今までのやり方でいいと思いますけれども、今のところ、そういう気配が余りまだ見えないので、そうすると、運営費用をどこからうまく回してきてキャッシュフローにしていくかということを考えざるを得ません。その際に、やはり企業様というセクターとどうやって御一緒できるかというのは、大きな1つの考えどころだということで、本学では、それの在り方の一つとして、今の試みを実施しているというところがあります。
とりわけ地方大学ですと、全体的に予算もそれほど大きくはないわけで、その中でどのように、せっかくある検体、試料をうまく活用して、しかも、その結果として、国立大学でもありますので、日本の医療研究の発展に役立てるかと思ったときには、現在のやり方が一つの解というような気持ちで実施しているところがあります。
それのサステナビリティは、今のお金の話もさることながら、もう一つ、人材の問題もあるかと思います。バイオバンクで働いていかれる方々をどういうふうに育成して、その人たちの将来はどうするのかということも極めて心配してもよい点だと思っております。例えば、特殊な能力が必要ということで言うと、研究に対して理解がある人でないといけない上に、臨床医の方々がどれだけ検体採集を苦労しておられるかも知っていないと、多分、御一緒しにくいと。なおかつ、検体をどうやって品質管理できるかも知っていないといけないということで、結構特殊な能力の方々になると思うのですが、こういう方々について、いわゆる有期雇用でいいかとか、そういう問題も持続性の点ではあるだろうと思います。
全体の公的セクターの話でしますと、最近、大学のお金が減るので、例えば、アメリカのやり方を習いなさいと言われて、アメリカの大学の状況を見ると、寄附金で、数百億円レベルで稼いでおられると。これは日本のレベルの数百倍でありまして、こういう中で、日本の大学をどうして回していくのかということは、極めて大きな課題になっているわけです。アメリカの大学の方々に言わせると、アメリカで公的セクターが細ってきたのはもう三、四十年前からだと。そこから努力をして今に至っているので、日本もこれから頑張れというようなことを言われるのですが、どうなるかは、文化背景もいろいろ違うので分からないところでありまして、その中で1つの試みとして、本学の試みもあり得るかもしれない、と考えて進めているという状況です。
であっても、この箇所で一つの大学名が特に記載されるべきか、もちろん検討の余地があると思います。関連して申し上げたいのは、ボトムアップによる多様性のことです。記載いただいた岡山大学としては、本学の取組の在り方を一応どのように思っているかということなのですが、一番初めの質問で申し上げたように、ボトムアップ的な発送をどうやって活用していくかということが大事かなと思っています。岡山大ではとりわけこのような試みをしておりますが、例えばほかの機関ではこういう試みがあって、それを合わせたときにどのようにより強い機能になるかということは、無論考えてもよい点ではと思いますし、そうした多様な取組が併記されるのも良いかもしれません。それは、組織ごとのボトムアップ的な多様性ということです。そのほかのボトムアップの拾い上げとしては、研究テーマごとのボトムアップということもきっとあるでしょう。関連して申し上げれば、例えば、JSTの濵口理事長が最近おっしゃっているように、サイエンスマップやSci-GEOのようなもので見たときに、日本の研究というのが比較的塊でテーマが存在していて、個々に、個別のテーマでチャレンジしている人が余り見かけられないというデータが出ているようです。この観点からも、ボトムアップの発想を支援するという方向ももう少し広げていかないと、日本の科学での世界における存在感は減るのではと心配します。そういうことを考えたときに、この会議で議論していることを含めた研究基盤はどのようにあったらいいかということもあるでしょうし、あるいは、組織ごとの独自の取組をどのように拾ったらいいかということもこれから考えるべきところかなと思っております。
次に、そうした多様性をつなぐべきネットワークについてです。そういう意味で、どの程度の多様な組織をどのようにつなぐのがネットワークとして有効なのかということも今後考えるべきところだと思っております。それは、ネットワークの目的は何なのかを明確にする必要があるでしょう。自発的にそれぞれの機関が入ってこられるようなネットワークでなければ、やはりむりやりになってしまうでしょうから、どういう目的でネットワークを組めば、それぞれの機関が自発的に入ってくる方向になるのかということを考えねばならないと思います。
提案としては、1つは、例えば、利用者を拡大するためのネットワークであるとか、あるいは、各機関でそれぞれ自発的にやっているのだけれども、ベストプラクティスがどこにあるかということを知るためのネットワークだとか、あるいは、各機関がばらばらにやっているといっても、やはり共通基盤がないといけないところとして、同意書はどんなものがいいかとか、あるいは、横断検索したときに、どんな使い勝手の良さが出てくるかとか、あるいは、共通言語としてどんなものが必要かというような点、場合によっては、AROとかCROというものが併設されている方がやはり全体に良いのであれば、そういうことを高めていくためのネットワークなどがあり得るかもしれません。この点に関しても、利活用が進むという言い方よりは、今後どうしたら、先ほどから申し上げているような、いろいろなボトムアップの研究アイデアがあったときに、それをどのように実現していけるか、世界に向かって日本がどのように存在感を示していけるか、ということにつながるようなセッティングはどういうことなのか、ということがもし考えられれば、非常にいいなと思います。
【中釜主査】
ありがとうございます。非常に重要な議論、御指摘点だと思います。
今のサステナビリティの問題、それから、ネットワークの目的、有効性、その意義に関しては、恐らくAMEDが今後取り組まれようとしていると思います。研究支援機能にも関係すると思いますので、一言、AMEDの方から、今のサステナビリティ、あるいは、ネットワークの有効性、効率化、そういうところについて、現時点でどのようなお考えがあるか、聞かせていただければと思います。
【加藤基盤研究事業部長(傍聴席)】
AMEDの研究支援機能ですが、昨年度立ち上げまして、ゲノム研究の支援について、我々は今後、どのように貢献できるか、ということがポイントでございます。
特に情報の共有は非常に重要でございまして、これまで必ずしも情報共有しながら進めてきたとは言えない部分がございました。多くのバイオバンク等が一堂に会し、悩みやソリューションを共有することができるプラットフォーム、場が重要というのが、私どもの考え方です。
ただ、1つ分かってきたのが、関係者が一堂に会して物理的に会うのはスケジュール調整上困難であり、正にICT、ホームページやテレビ会議等を使って、いろいろ試していきたいというのが我々の考え方でございます。
【中釜主査】
では、山本委員、どうぞ。
【山本委員】
今の議論は本当にすばらしく前向きで、とてもいいと思います。
この報告書を見ながら、少し私が考えたことというか、感想めいたことで申し訳ないのですが、申し上げます。ゲノム医療実現のために、いろいろな方策がいろいろな局面で出されていると思いますが、この報告書で初めて「バイオバンク」が重要で、バイオバンクをきちんと作ることが、ゲノム医療の実現のための力になるのだということをしっかりとまとめ上げたと思います。そのような案になっているのではないのかと思うので、これは大変に画期的なものをこの委員会がまとめるのではないのかと考えています。
3ポツのところで3つの方針が示されています。最初は、今、狩野先生のところの議論にもあった「ネットワーク」ということです。クリニカルバイオバンクは、個々に独立してぽつんぽつんとあるものではなくて、つないでいって力を発揮するものだと思います。2番目ですが、疾患バイオバンクというのは、私どもがやっているような、健常人・前向きのバイオバンクとはまたひと味違って、患者さんを集めてくるというところに特徴があります。以前にも少し申し上げましたが、臨床の先生たちは、検体を集める性質があって、それで、みんな検体を持っているのですが、それをバンクとして使わないで、単に医局のフリーザーの中にためているケースが多いと思います。これをクリニカルバイオバンクという形に仕立て上げて、少し前向きに行こうかという御提案が、この今後の疾患バイオバンクの機能というところに書かれていると思います。
これはすばらしいのですが、合わせて、岡山大学の話やいろいろな話が出て、オンデマンド型で、企業の方から御要望があったら集め始めるようなこともお話になっていたと思います。一方で、事前にこんなニーズがこれからあるかもしれないというので皆さんが集めているものをネットワークにして、検索型バイオバンクを作っていくというのも非常な力になるのではないのかと思います。その検索型バイオバンクをAMED主導でネットワーク型に作り上げるというのは、すばらしい考えではないかと思います。
その際に、ある品質基準に達していてほしいとか、ある条件は満たしていてほしいとか、それから、増井先生がおっしゃったような、試料をなくさないように分散保管をするとか、ダブルで保管するとか、いろいろな機能を持たせるという意味で、中央的な機能をBBJに担ってもらおうというのが3番目の話で、これは全て非常に前向きな話だと思います。それをどのように実現していくかということは、私どもがお題目のようにゲノム医療、これを推進するのだ、と言っているところが、一歩地に着いて先に進んでいく取組につながるのではないのかと思って、すごく画期的な会議に出してもらったのだな、良かったなと思っています。
特に、バイオバンクとして、何か新しいことが分かったり、新発見があったりしてから、患者さんを集めたり、サンプルを集めたりして解析をするのでは、やはり我が国の技術革新のスピードが遅くなると思います。近代的で運営の良いバイオバンクを持っていて、それを学術の振興や産業の発展のために使っていく、それを私たちはここで議論したのだということが大切なことだと考えています。
【中釜主査】
ありがとうございました。
今の議論は、もう既に3ポツ目の、これが本日の議論の主なポイントなのですが、「研究基盤の充実・強化の在り方」の部分に入り込んだ御意見だと思います。早速、本題であるこの部分に入って議論したいと思うので、もしその前に何かあれば。どうぞ。
【玉腰委員】
いいですか。ちょっと後ろ向きの聞き方になるかもしれないのですが、なぜ「バイオバンク/コホート」とくっついてしまっているのでしょうか。バンクは「集めて出す」機能を持っており、3ポツに入った途端に「バイオバンク/コホート」とくっつけられてしまっていますが、もともと目的の違うものです。ゲノム医療を推進するという意味で、理解ができないわけではないのですが、まるで同じものであるかのように扱うのは、特にその下に、AMEDがファンディング・エージェンシーであるとか書かれていると、若干リスキーな気がするのですが、少しその点を明らかにしていただいてよろしいでしょうか。
【野田ゲノム研究企画調整官】
こちらについては、内閣官房の方で行っていますゲノム医療実現推進協議会の報告書でも、バイオバンクとコホートというのは並べて書かれているのですが、やはり健常者の追跡調査をずっと蓄積しているコホートにも一定の研究基盤があるという考え方で、そのような位置付けにされていると思います。
ただ、先生が御懸念のように、コホートについては、バイオバンクとは異なり、そもそも保管して提供するという前提で始まったものではなく、目的も違うということもございますので、ここをどう書くべきかと考えたのですが、今後、コホートまで含めた形で研究基盤として考えていくという方向性ではないかということで書かせていただきました。ただ、そこについて、まずはバイオバンクということであれば、書き方についてはもちろん検討させていただきたいと思います。
【中釜主査】
その点について、もし追加の御意見があれば、またこれ以降の議論の中で続けたいと思います。では、3ポツの(1)から(3)に論点を分けて議論をしていきたいと思います。
まず(1)のバイオバンク等の利活用促進方策について、これはAMED医療研究支援機能の充実・強化となっています。これについては、これまでも意見が幾つか出されていると思いますが、何か追加での御発言、御意見ございますでしょうか。増井委員。
【増井副主査】
先ほど山本先生の方からお話があったことは、非常に重要なことです。企業の人たちとオンデマンド型のバイオバンクという話をしていたときに、一回お話ししたと思うのですが、「やはりオンデマンドだと集めるのに時間が掛かりますよね。だけど、我々は早く仮説をテストしたい、ともかく何かやってみたいと思うような仮説というのはたくさん出てくるわけです。その中から生き残るものはそれほど多くはありませんが。」、というような話があって、やはりそれなりの数とバラエティーをためてあるということも非常に重要だという話が、企業のスピードの問題の中で出てきたということは、1つ考えておいていただきたいと思います。何となくそのことを忘れてしまうような議論が先行してもいるものですから、その点だけお伝えしておきたいと思います。
【高坂委員】
よろしいですか。
【中釜主査】
高坂委員。
【高坂委員】
今の増井委員の御発言についてですが、8ページのところに、「ユーザーの個別具体的なニーズに合わせて収集する」ということ、これが恐らくオンデマンドと呼ばれているものですね、それから、「将来的なニーズを見越して、一定のユーザー層に汎用性のある条件で集めていく」ということ、その二本立てが必要であるということが明確に書かれているわけです。
汎用性のある条件でとは言っても、やはりサンプルを採るところは、それぞれの目的が違うわけです。したがって、9ページ目の右上の、いわゆるバイオバンクのネットワーク化と、先ほども御発言にあった、目的に応じたサンプルが収集されている、それをネットワーク化で補完し合っていくということなので、私は、これはよくまとまっているのではないかと思いました。
【中釜主査】
今の点について、何か御発言ありますか、よろしいですかね。
(1)で、先ほどの御指摘があった「バイオバンク/コホート」の記載に関する私自身の考えとしては、バイオバンクとコホートは、そもそも目的は多少違うかもしれませんが、オーバーラップする領域があるのかなと思います。バイオバンクの中にはコホート的な意味合いもあり、あるいは、コホートの中にもバイオバンク機能があります。そういう意味で、研究基盤としては、恐らく、バイオバンクというストレージ機能とコホート的な意味合いの両方を視野に入れながら進めていく必要があるのかなとは感じています。ただ、どのような記載方法が適切かということに関しては、少し御意見いただければと思います。玉腰委員、何か追加であればお願いします。
【玉腰委員】
バンクは、臨床情報が重要で、追跡をしていくという意味で、コホート的な機能があるというのは、もちろん十分了解ができます。それから、東北メディカル・メガバンクのように、住民が対象だけれども、そもそもバンクの機能を持って始まったものでも十分理解ができます。
ただ、一般的な話をすると、コホート研究というのは、他の人が使うことを目的として始めているわけではありませんので、そこを広げることを進めるということであれば、やはりそれに見合った支援なり、基盤なりを作っていただかないと、そもそもそのために作られていないものを拡大するということになるので、その辺りが、バンクの議論をしているうちに、コホートも似ているから入れちゃえばいいよねという話ではないだろうと。そういう意味で申し上げました。
もちろん、検体の質の話等についても、どこまでの測定を目的にして集めた検体かという意味では、似たようなことが言えると思います。利用価値が十分あるというのも確かで、一般の、まだ病気になっていない方の情報をどんどん使っていきたいというのはよく分かります。ですが、もともと目的が違っているものを拡大するのに、言ってみれば、コホート関係の人たちがほとんど入っていないところで、ゲノム研究の推進のためだからというだけで進めてしまうことに対して、私は少し心配をしているということです。
【中釜主査】
重要な御指摘だと思います。ほかに、この点に関して、何か御意見ございますか。
【山田委員】
1点よろしいですか。
利活用の促進に当たって、この会議では、「それぞれのバンクが、どういう検体を幾つ、どういう情報をどういう分布で持っているのかということが出ていないと、やはり使う側としては使えないよ」という話は出たと思います。6ページに、そこのところを反映するべく、検索システムの項目を充実しようとは書いてあるのですが、以前もこう言っていて結局できなかったことなので、どうしたらここをもう一歩踏み込んで、実際にバンクさんの情報が出るかというところを、私はやはり情報屋なので気にしています。
こういう抽象的な文章に書くのはちょっと難しいかもしれないのですが、具体的に言ってしまえば、「項目として挙がっているものは検索して見られるようにしてよ、項目として集めたものは、その精度のいかんによらず、分布までは見せてもいいじゃないですか」というのが、情報屋としてはあります。それを、このような形の文章に書くのがふさわしいかどうかは難しいところですが、何かしら、「バイオバンクなのだからもう少しちゃんと出せよ」ということを言葉にしていただけると、これまでやはり私も機会があるたびに「出してください」と言い続けながら、なかなか突破できていないところがあり、せっかくこの席を頂いているので、こういう文章が機動力となって、バイオバンクの情報公開が進んでくれたらなと思います。
【中釜主査】
ありがとうございます。
【山本委員】
よろしいですか。
【中釜主査】
山本委員。
【山本委員】
本当に今の御説明のとおりです。最近、AMEDのゲノムプラットフォーム事業等では、公的なファンディングで始めた事業については、これは公的なデータなので、原則として公開していくということだと思います。プライベートに始めたコホートの試料や情報を全て公開することはないと思います。確かに、コホートは自分の研究のために集めているものなのですが、その中でもAMEDでしっかりとした「疾患コホート」としてのサポートを受けるものについては、バイオバンクとしての要件も考慮に入れて始めてくださいということを求めても良いのかなと思います。
【中釜主査】
ありがとうございます。
先ほどの玉腰委員の御指摘は、非常に重要だと思います。そういう点を踏まえながら、研究基盤としてのバイオバンクをどのように発展的に進めていくのか、そのときに、コホートとの連携をどのように図っていくのかというところが分かるような書きぶりというのが良いように思いました。その辺りを踏まえて、少し修正をしていければと思います。
ほかに、(1)に関して、何か御質問、御意見ございますでしょうか。高坂委員。
【高坂委員】
大枠はこれでよろしいと思いますが、細かいことで恐縮なのですが、例えば、(1)、7ページの上から4行目、「解析したデータをバイオバンクに還元し」という言葉があります。それから、同じく、(1)の中の一番下から上へ5行上がったところにも、「ユーザーが解析したゲノムデータをバイオバンクへ還元する」という言葉があります。これは少し誤解を与える可能性があるので、やはり公的な情報を、例えば、NBDCであるとか、そういったデータをきちんと集めていくというのが、たまたま一緒であるかもしれませんが、一般的に言うと少し違うので、誤解を生む可能性があるので、言葉を換えられた方がいいと思います。
【中釜主査】
ありがとうございます。その点も十分に重要なポイントだと思います。
ほかに、(1)に関して、何か御質問、御意見ございますでしょうか。
よろしいですかね。では、ひとまず(1)の議論は以上としまして、続きまして、(2)今後の疾患バイオバンク機能の在り方について、先生方の御意見を頂ければと思います。特に、大学病院等のバイオバンクに関しては、先ほど増井委員、あるいは、狩野委員から御意見がございましたが、追加で何か書き込んでおくべき点があればお願いします。
【増井副主査】
この前、東大医科研の武藤さんとしゃべっていたときに、海外分譲をどうするのだろうという話が出てきました。やはり最初、BBJは海外に出さないということがあったわけですが、今の状態で、どういうポリシーでやっていくのかということについて、それはきっと他のバイオバンクも同じだと思うのです。それこそ根こそぎ30万件全部欲しいみたいな話をする人たちもいるかもしれないと思ったりもするわけです。そういうことがあると、どう対応するのか、どういう判断で対応するのかということを考えなければいけないと思いました。
日本の企業を応援するということが非常に大きな理由だったわけですが、やはり日本で納税をするということも視野の中にあったように思います。その辺りが、今、国際企業の中では、そう単純な話でもなくなっているというようなこともありますし、日本がどういう役割を果たしていくのかという中では、大きなことかもしれないと思っています。
医薬品の審査が非常に速くなって、欧米と比するようになって、かつ、日本で最初に承認されるものが随分増えてきたということがありますが、これは考えようによっては、国際的に外国の安全管理に依存していたものを、日本人は自分たちのPMS(Post Marketing Surveillance)のシステムを含めた安全管理の下に、国際的な医薬品の安全対策により貢献をしていくというようにもフレーズできるわけです。なので、そういうことを考えると、日本人の試料を海外の人たちが使うということをどのようにフレーズして、そして、海外に出していくのかということが問題になってきたのかもしれません。国際的な動きは、その逆の方向へ行っているようなので、あんまりそういうことを言ってもしょうがないのかもしれませんけれども。ただ、考えていただきたい、その問題があるということも、ここには書いていただけると有り難いと思っています。
【中釜主査】
ありがとうございます。
海外分譲を含めた海外の研究機関との利活用の問題は重要な課題かと思います。そこは今後ある程度ステップバイステップで進めていく必要があると思うので、一言、そのことは触れておいた方がいいのかなと思います。
狩野委員。
【狩野委員】
前回ちょうどその発言をさせていただいて、余りその先に進んでいない状況です。もう一つ、関連して申し上げると、大学等のバイオバンクにおいて、アカデミアの外、あるいは、共同研究関係の外にまでも試料を提供していいかどうかということ自体について、まだいろいろな解釈があるようです。ここをもう少し全体的に、例えば、営利団体を含めたところにお出ししてもよいとか、よくないとかいうことは、ある程度統一的な見解があった方が良いかもしれません。と言いますのは、各組織に任せておきますと、この解釈においていろいろなパターンが出てくる可能性があり得ると思うからです。解釈を狭くしてしまうと、今議論しているようなことは実現しにくくなります。前回少し申し上げたところですが、ある程度何か、行政側としてもお考えいただいて、この辺りの指針のようなものが分かると、より各組織としてやりやすくなる、あるいは、倫理委員会として審査がしやすくなるということがあるかと思いますので、今後よろしくお願いできたらと思います。もちろん、海外も含めてです。
【中釜主査】
ありがとうございます。
海外分譲に関して、問題点を認識しているという意味をこの中で書き込んでおくことは重要だと思いますので、その点、よろしくお願いいたします。
最後に1点、(2)に関して、ユーザーサイドから、大学病院のバンクに関して期待することについて、何か一言いただければと思います。まず赤塚委員、お願いします。
【赤塚委員】
ありがとうございます。
大学で構築されるバイオバンクに関しては、現在は、共同研究的で実施していると思います。先ほどから出ています、それらをネットワーク化するときに、この会でもお示しさせていただいた最低限の品質的なものとか、IC的なものをどこの大学でも満たしていればネットワーク化しやすいのではないかなと思いますので、その辺りを考えていただいて作っていくということが重要だと考えております。
【中釜主査】
内山委員、お願いします。
【内山委員】
全体的には、第1回の会議の際に我々診断薬業界のニーズとして伝えたことを盛り込んでいただいております。更に疾患バイオバンクの機能について、業界の希望ですが、目的とする疾病のバンク試料はありますが、評価をする上では、その疾患の無病、正常検体というのも、診断の有用性、例えば、基準値であるとか、Cut Off値を設定するために必要ですので、提供いただくバンクの試料には、疾病だけではなくて、それぞれの疾患における無病の検体も併せてストックしていただくことを、我々としては希望しているところです。
【中釜主査】
ありがとうございます。
そこも重要なポイントです。現状では、疾患間でのお互いの補完的な利活用をしていると思います。同時に、先ほど出ていたコホートとの連携も重要かと思います。正常な試料をどうするかというところも、重要な論点かと思います。
それから、ネットワークにおけるコーディネート機能が重要なのかなと思います。そこは、先ほど御発言のあったBBJやAMEDがうまく連携しながら、機能しうるコーディネート機能をどうやって付与するか、そういうところかと思いますので、そこも一言触れておくといいのかなと思いました。
ほか、よろしいでしょうか。高坂委員。
【高坂委員】
この報告書のたてつけとして、1ポツの(1)(2)のあたりというのは、割とオールジャパン体制で、日本におけるバイオバンクの在り方みたいなことで議論していくわけですね。その後の3として、BBJに特化した議論があるということは、(2)までは、日本全体のことを俯瞰(ふかん)したという意味で書かなければいけないと思います。それで、AMEDの方で、少し言いづらいのですが、オールジャパン体制でやってほしいということを常に言っています。要するに、文科省と厚労省、あるいは、場合によっては、経産省がもう合体してやってほしいということを常に申し上げています。そういう意味で、非常に瑣末(さまつ)なことを言っているかもしれませんが、例えば、8ページのところで、「大学病院」を特に挙げてしまうと、やはり文科省管轄に特化したという印象をどうしても与えてしまうので、ここまでの(2)までのところは、どちらかというと、例えば、「診療機関併設型」とか、「我が国の中核的な診療機関」というような別の名前を使う。あるいは、「大学等」という言い方でもいいと思います。「等」が入った方がオールジャパン体制ということを意味すると思いますので、「大学病院による」という限定的な言い方はやはり避けた方がいいだろうという、ちょっと抽象的なコメントです。
【中釜主査】
この点について、何か御発言ございますか。
より限定的にならないように、診療機関併設型というのは、もう少し広いかなと思うので、そこがうまく伝わればよいと思います。
【野田ゲノム研究企画調整官】
NCBNに関しては、臨床研究開発段階でして、一方で、基礎研究から初期段階の臨床研究というものが、主に文科省で支えている研究フェーズです。ここに関して、やはり今、大学病院を活用するのがいいのではないかという流れで書いておりまして、それ以外の小さな診療機関や臨床に特化されている診療機関等の中にも、こういった取組を行うところがあるのかどうかというところは、我々の方でも把握をしていなかったということもあり、これまでのヒアリング等を踏まえて、大学病院という形で書かせていただきました。
ただ、ほかにもこういった取組を行い得るところがあるということであれば、「等」を付けておいた方がいいのかもしれないと思います。
【中釜主査】
ありがとうございました。増井委員。
【増井副主査】
1つの提案です。これからのバイオバンクということなのですが、バイオバンクでの情報を使えるように用意されるかということが大事だということを考えると、例えば、公的な機関が行う臨床研究のようなもののときに、試料と情報を一緒に集めてどこかへ寄託し、それが横断的に使えるようになれば、随分力強いものになる可能性もあると思います。そういうことは、ここで考えることかどうか分からないですが。
【中釜主査】
今後の利活用の、特に横断的なワンストップサービスも含めて、そういうことを踏まえた文言が加わるといいと思います。是非、そういう形で対応していただければと思います。
では、最後の(3)のバイオバンク・ジャパンの有効活用方策についてです。これに関しては、冒頭の羽田主査からの事後評価結果報告において、「今後の展望」の中でかなり議論していただいたかと思います。それとの関連を含めて、BBJの有効活用という点から、更に追加で御発言、あるいは、冒頭の議論で漏れていた点について御発言あればお願いします。
恐らく、論点としては、利活用を前提とした、これまでに構築されたデータベースの整備であるとか、試料の品質や評価に関する点、それから、ゲノムデータ等、構築したものの公開に関する点とか、ニーズを踏まえた追跡調査の必要性、そういうところが主に論点とされたかと思います。何か追加で御発言、御意見ありますでしょうか。では、南学委員、お願いいたします。
【南学委員】
非常によくできている文章だと思うのですが、実地で臨床をやっている者として、やはり読むとクエスチョンが頭の中に浮かんできます。例えば、「一定の年限を設けて対応表を保持しておくことが望ましい」という記載がありますが、この一定の年限というのは、カルテの保存期間の5年なのか、もっと長いのかとか、対応表を保持するということは、できる限り我々は個人情報を持たないようにと指導されているので、それをどのように保管するのか。
また、その前に、先行的に収集する方法という話がありますけれども、最近どんどんルールも厳しくなっているので、包括同意をまず倫理委員会で認めてもらえないとか、個人情報のオプトアウトができなくなっているとか、そういう実際に研究を実施する前段階で、我々は今、ものすごく労力が取られて悩みが大きいので、できれば、その辺りの法整備ができるか、あるいは、委員会として指針を将来的に出していただいて、現場の人たちがより取っかかりよく研究できるような体制ができるといいのかなと思っています。
【中釜主査】
ありがとうございます。
その点に関して、増井委員、何か御提案は。
【増井副主査】
前回は出席できなくて失礼しました。前回の議論の中でその話がされていたというのを、私も非常に心配をしているところで、特に臨床研究法ができて、法律の中での臨床研究というのは意外と限られているのに、言葉としては同じものが使われるものですから、試料を使ったデータドリブンの研究、介入がない研究まで、介入のある研究のような雰囲気で議論をされてしまう。そうすると、「包括同意は駄目、それぞれにインフォームドコンセントを丁寧に」という話にグーっと行ってしまうのですけれども、やはりオーバースペックにならないようにしなければいけないと思っております。
もう一つ、バンクの非常に重要な機能として、何度も議論されていますが、ものを試すという予備実験で、数件でもいい、10件でもいいので、ともかく測ってみて測れるかとか、あるいは、染めてみて染められるかというようなことができるだけでも、随分研究の進捗が違うというようなところがあります。京大の病理のバイオバンクでは、当時のバイオバンクのマネージャー、真鍋先生がいらっしゃったときですが、真鍋先生の決裁だけで利用できる。もちろん、期間も利用数も限られるのですが、そのような枠組みを作られたりしていました。そういうことを考えると、予備実験を支えるものとしてのバイオバンクもありますので、やはり臨床研究法ができたという問題については、もう少し議論をしておいた方が、医学研究全体にとってはプラスになる側面もあるのではないかと思っています。
【玉腰委員】
よろしいですか。
【中釜主査】
お願いいたします。
【玉腰委員】
臨床研究法もそうですし、疾患の登録や、希少疾患を集めておきましょうというような話をしたときに、実際には、患者さんの登録をして、検体まで頂いてというところには、非常にいろいろなハードルがありますので、その辺り、これは(1)に入れることなのか、(2)か、どこなのかなと思っていました。ものを集めて配るという過程の中で起きる問題をもう少しきちんと整理して、それをどうやったら国として乗り越えられるかというところを考えておかないと、余剰分の保管など、先ほど先生がおっしゃったように、あり得ないことになってしまうと思います。それは、やはりきちんとしていかなければいけないことだろうと考えます。
【中釜主査】
山本委員、お願いいたします。
【山本委員】
私も、今の意見に大賛成です。バイオバンクはやはり公的な存在であり、社会の進歩に役立つものだと考えられていて、幾つかの国、例えば、フィンランドや台湾では、バイオバンクを法律で守るための「バイオバンク法」という法律があります。今、臨床研究法の話が出ましたけれども、バイオバンクを振興するための法律がある国もあるので、そういう視点でバイオバンクを応援していくということが、大切なのではと思います。
【中釜主査】
ありがとうございます。狩野委員。
【狩野委員】
先ほど羽田先生にお伺いした最後の質問と関係するのですが、日本文化は「あなたと私が同じでないといけない文化」で、一方、研究の世界は「あなたと私は違わないといけない文化」で、ここがいつも相克しています。この会議において、日本文化の背景で進めていると思いますので、最後は同じ目的に向かってみんなで一緒にやるということは了解があると思います。ただ、そこに至る過程はだんだん西洋風になってきて、あなたと私は違ってもいいことになってきていると思います。そのときに、BBJは、どんな目的であれば利活用が特化できるのかということを、もし明確にできると、ほかの特長を持ったところが存在しないといけない理由が明確になるだろうと思いますし、そういう意味で、明確には書き込まれていない気がするので、もしうまく記述できるのであれば、お願いしたいと思います。
【中釜主査】
ありがとうございます。
冒頭の議論でも、利活用が今後の展開として重要だというのは間違いないのですが、どういうところが可能で、どういうところは現状なかなか難しいのか、そこを少し整理しておくのが、今の議論においても重要だと思います。広くバイオバンクを利活用するという意味において、今後構築していく、あるいは、全体をコーディネートする際に、どういうところに注意して、何ができるのかということは、全体の議論の中に少し書き込めるといいかと思います。かなり難しいところもありますが、少しそこは検討したいと思います。よろしくお願いいたします。
この点も含めて、(3)バイオバンク・ジャパンの有効活用の方策について、既に多くの意見が出たかと思いますが、何か追加で御意見ございますか。
それでは、企業側から、何か追加で御発言等お願いします。まず内山委員。
【内山委員】
先ほども申し上げましたが、我々、診断薬業界のニーズは、ほぼ盛り込まれています。先ほど狩野先生のお話もあって、この文章の中のどこに盛り込んでいただくのがいいかというのは少し迷いましたが、これから、我々、利用者側がバンクの試料を使用するに際しては、各バンクが永続的に運営管理されていく必要がどうしてもあると思ったときに、やはり運営するための、企業で言えばビジネスモデルになるのですが、例えば、利用に際して、利用者側に対する受益者負担を望むといったようなこともあってもいいと思います。企業の我々側から言うべきことではないかもしれませんが。我々も、今後、いろいろな目的に合わせた利用条件を提示したいと思いますが、非常に付加価値のあるバンク試料については、それなりの費用をお支払いするといったこともあるでしょうし、単に試料の測定のみで、試料にひも付く患者情報を利用しなければ、通常よりもリーズナブルな価格で分譲していただきたいという希望もあります。
ただ一方で、我々、業界の中では、費用の問題よりも、バンクを利用したいという要望は、一定の管理がされた品質上の優位性と、それから、倫理的な対応、対応の仕方は各バンクで異なる場合もあると思いますが、少なくとも倫理的な対応をきちんとされているというところが、我々にとって一番のニーズなものですから、そういったことの整備をするために必要な負担は我々に求めていただいてもかまわないと思いますので、そういった文言も少しぐらい明記していただくことも、私は差し支えないと思っています。
【中釜主査】
非常に重要で積極的な御見解だと思います。では、赤塚委員、いかがでしょうか。
【赤塚委員】
ほぼ同じような感じですが、生体試料を活用させていただくときには、プラットフォーム構築ではなく、それを活用し研究していくときに関しては、今もそうだと思いますが、資金投入はあるかと思います。
一方で、多くのバンク、たくさんの取組があるので、全てに投入してくれというのは無理な話だと思います。その辺りは、ネットワークでできるところもあれば、そうでなく、こういうところは資金を投入してとか、それは各社違っていることもあるかもしれませんが、そのような気持ちで言っているのは、企業側としても同じだと思います。
【中釜主査】
それは、全体のバンク事業、日本におけるバンク事業をどうやって維持し得るのか、いかにしてサステナビリティの高いものにしていくかという、財源を含めた問題だろうと思います。受益者負担だけではなかなか維持が難しいのかなと。そこに、寄附や、その他の公的な資金を含めて、どのような仕組みを作っていくのかということは、ビジネスモデルを含めて、少し前向きに検討する必要があると思います。
なかなか難しい議論かと思います。これをどのようにこのとりまとめ案に書き込むのかについては、事務局の力が問われているかと思いますが、反映させていただければと思います。
高坂委員、お願いします。
【高坂委員】
先ほどの狩野先生の御発言は、非常に大事なコメントだったと思います。今後のBBJ的なバンクの在り方ということを考えたときに、(3)の中に、対象疾患をどうするかということを書き込むべきなのか、書き込まないでいいのかというのは、少し悩ましいところが実はあります。これまで3大バンクを中心として、それなりに、東北は正常人のコホートとか、1つの明確な目的があるわけですよね。その中で、従来はコモンディジーズを中心と言われていたBBJのこれからをどうしていくのか。今、がん領域がどんどん入ってきていますし、そういった意味でも、少しフィールドを書いておいた方がいいのかなという気もしないでもないです。なので、やはりこれからはコモンディジーズだけやるというわけではないと思います。
それプラス、ネットワーク化ということがあって、先ほどの少し小さめのバイオバンクなどは、恐らくがんもやるだろうし、難病もやるだろうしという、それぞれが強みがあるので、今後のBBJの在り方を考えたときに、どういう疾患に指向性を持たせたものにしていくかというのは、やはり書き込むべきなのでしょうか。そこはよく分かりません。山本委員はどうお考えですか。
【山本委員】
難しい質問を頂いたと思います。疾患バイオバンクというと、学協会の方々もやられるでしょうし、大きな病院やナショセンの人たちもやられると思います。そういうところとすみ分けて、BBJが特長を出していくためには、これまで培ってきたいろんなノウハウで、ヘッドクォーター的な機能、若しくは、ネットワークを支援するような機能とか、それを補完する機能とか、これらの機能を果たしていくやり方は結構あると思います。
それで、他の疾患バイオバンクと同じように疾患の名前を挙げてやっていくのもあるかもしれないですが、今の高坂先生の御質問で私がピンとくるのは、もう一段高いところからBBJが応援するような図式もあるのではないのかなと思います。
【中釜主査】
ありがとうございます。
既に25万人、42万症例と、数としてかなり大きな症例を集積してきているのは間違いありません。これから何か特定の疾患というよりは、その中で出てくる疾患に対して、ケースコントロールで対応してはどうかというところも、広い意味での貢献はできると思うので、先ほど申し上げました、今後のネットワークの中でどうやってそれを目指していけるのかというところが重要なのではないかと個人的には思います。何か追加で御発言、御意見ございますか。よろしいですか。
それでは、ほかに(3)のBBJの有効活用について追加の御発言ございますか。なければ、本日の御意見を踏まえて、私と事務局の方で修正しまして、本検討会のとりまとめ(案)として作成していきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
ありがとうございました。では、本日の議事については、以上となります。委員の皆様におかれましては、計4回にわたる活発な御議論を頂きまして、まことにありがとうございました。
それでは、最後に、事務局から連絡事項がありましたら、お願いいたします。
【野田ゲノム研究企画調整官】
事務局より3点御連絡いたします。
検討会の今後のスケジュールでございますが、とりまとめについては、主査一任となりましたので、主査とも御相談させていただいて、必要がありましたら先生方にも一度照会する等で、まとめさせていただきたいと思います。まとめたものに関しましては、7月に予定しておりますライフサイエンス委員会で、主査より御報告いただく予定です。
次に、議事録でございますが、本日の議事録については、事務局で案を作成しまして、委員の皆様にお諮りした後、ホームページで公開いたします。
最後に、配付資料でございますが、本日の配付資料につきましては、机上に置いていただければ、事務局から郵送いたします。
では、最後に、関研究振興局長より御挨拶申し上げます。
【関研究振興局長】
今日も、熱心にいろいろな観点から御議論いただきまして、大変ありがとうございました。今、中釜主査からお話ありましたように、短い期間で4回の限られた会議という中で、大変密度の濃い議論をしていただきまして、この検討会のとりまとめにつきましては、バイオバンク等の利活用促進、ネットワーク化、BBJの有効活用方策、また、今後、ゲノム医療研究を更に加速するための取組といったことで、今後の文部科学省としての取組にしっかり反映させるようにしてまいりたいと思っております。
また、今日の御議論の中で、いろいろな課題も提示していただきまして、これから更にバイオバンクを「貯めるだけでなく、活用されるバンク」として再構築していく、そういった観点からの取組に当たりましても、大変示唆に富むお話を頂いたかと思っております。
また、今後も、私どもがこれを更に具体化していく上では、いろいろな課題を乗り越えていかなければならないと思いますので、引き続き、先生方には、いろいろ御指導いただきますようにお願い申し上げまして、御礼の御挨拶とさせていただきます。
本当にどうもありがとうございました。
【中釜主査】
それでは、本検討会は、以上で閉会させていただきます。短い期間で集中した議論に参加いただき、まことにありがとうございました。
―― 了 ――
研究振興局ライフサイエンス課