平成29年5月29日(月曜日) 10時00分~12時00分
文部科学省17階 研究振興局会議室
中釜主査、赤塚委員、内山委員、春日委員、狩野委員、高坂委員、南学委員、山田委員、山本委員
関研究振興局長、板倉大臣官房審議官、永井ライフサイエンス課長、野田ゲノム研究企画調整官、小林研究振興戦略官付先端医科学研究企画官
日本医療研究開発機構:加藤基盤研究事業部長
【中釜主査】
それでは、少し定刻よりは数分早いですが、皆様おそろいですので、これより第3回ゲノム医療実現のための研究基盤の充実・強化に関する検討会を開催したいと思います。
本日は、委員11名のうち9名の委員に出席いただいておりますので、検討会開催に必要な定足数に達していることを御報告します。
それから、山本委員は本日11時半頃に御退席の予定とお伺いしています。
また、本日、オブザーバーとしまして、国立研究開発法人日本医療研究開発機構から、加藤基盤研究事業部長に御出席いただいております。
【加藤基盤研究事業部長】
加藤でございます。よろしくお願いします。
【中釜主査】
それでは、事務局より、本日の議事及び配付資料の説明、確認をお願いいたします。
【野田ゲノム研究企画調整官】
配付資料でございますけれども、クリップ留めを外していただきまして、座席表、その下に議事次第がございます。本日は論点整理を行ったものについて議論を頂くこととなっております。
資料1として、本日御議論いただく論点と今後の方向性の案、そして、資料2として、本日御欠席の増井先生と玉腰先生から御意見を頂戴しておりますので、そちらをお配りしております。先生方の御意見が網掛けになってございます。増井先生の御意見が8ページ目の前半までございまして、8ページ目後半からが玉腰先生の御意見でございます。
また、参考資料として、本日の議論の参考とするため、新たなデータをバイオバンク・ジャパンから御提出いただいております。この資料のうち、3ページ目までは前回もお配りしたものをそのまま抜粋したもので、新しい資料は4ページ目でございます。臨床情報の提供実績として、初回のもの、それから、追跡調査等で収集した経年データの活用状況を示したグラフをお配りしております。また、そのほか、前回までの資料を緑色のファイルにとじてお配りしておりますので、適宜御参照ください。
不備等ございましたら、事務局までお申し付けください。以上でございます。
【中釜主査】
それでは、議事に従って会を進めたいと思います。
まず、この検討会における論点、それから、今後の方向性につきましては、私と事務局の方と相談しまして資料を作成いたしました。本日は、これをたたき台として御議論いただきたいと思います。それでは、事務局から説明をお願いいたします。
【野田ゲノム研究企画調整官】
それでは、資料1を御覧ください。今回の検討会では、平成30年度の予算要求を見据えた検討を行うということでございますので、論点としましては、総花的というよりは、焦点を絞った論点整理を行っております。大きく3つの柱がございまして、まず、構成について御説明いたします。
1ポツとしましては、第1回の検討会で、産業界、アカデミアの双方から基盤に対するニーズについて御説明いただきましたけれども、そのほとんどの内容がバイオバンクの利活用促進方策に関するものであったということを踏まえまして、1ポツはバイオバンク等の利活用促進方策、具体的には、AMEDのゲノム医療研究支援機能の充実・強化についてまとめております。
それから、2ポツでございますけれども、第2回に重点的に御議論を頂きました今後の疾患バイオバンク機能の在り方についてまとめております。
1枚おめくりいただきまして、3ポツとしまして、今年度でプロジェクトが終了しますバイオバンク・ジャパンの有効活用方策としております。
論点につきましては、黒い丸でこれまでに頂いた御意見や事実関係等を記載しておりまして、それへの対応や、今後検討が必要な事項について、下に矢印で記載をしております。
それでは、1ページ目に戻っていただきまして、内容について御説明いたします。
まず、1ポツの一つ目の黒丸でございますけれども、産業界、アカデミアの双方から、バイオバンクのアクセシビリティや対応スピードの向上への要望が非常に強く出されたということを踏まえまして、AMEDがゲノム医療研究支援機能のアドバイザリーとして設置している各種分科会にユーザーサイドもメンバーに加えるなど、ユーザーの意見が的確に反映できるように取り組んでいくことが必要ではないか、としております。
次の黒丸でございますけれども、特に、ワンストップサービス機能への期待が非常に高かったということを踏まえまして、今、AMEDで3大バイオバンクを中心に横断検索システムの開発を進めておりますので、それの更なる高度化、例えば、検索対象のバイオバンクやコホートの拡大や、ユーザーの意見を取り入れて検索項目を充実するといったことが必要ではないか、としております。
また、検索システムの高度化等に伴って、各バイオバンク/コホートでデータベースを構築・活用する人材がおりますので、その方々が情報共有し合う場をファンディングエージェンシーであるAMEDが設定するということが必要ではないか、としております。
次の黒丸でございますけれども、一方で、バンク側からは、ユーザーから様々なニーズがあるものの、臨床情報について基本的にどこまでそろえればいいのか等がなかなかつかみにくいという御意見がございましたので、それに対しては、ユーザー側で、例えば、業界や特定の疾患領域で必要とされる基本情報項目を明確化することなどが必要ではないか、としております。
続きまして、2ポツでございます。一つ目の黒丸でございますけれども、昨今の研究動向を踏まえますと、ヒト生体試料によってゲノム解析を行うだけではなく、リバーストランスレーショナルリサーチや基礎医学研究への活用が必要になってきているということがございますので、研究の内容に応じて、試料がプロテオミクス・メタボロミクス等のオミックス解析を行える品質を有していることや、時系列試料があること、また、組織があること、必要な項目の臨床情報がひも付いていること等の、よりきめ細かな対応が求められているということがございました。
これを踏まえまして、これまで行ってきたような、あらかじめ必要になりそうな試料を画一的な共通プロトコールで収集して蓄積しておくやり方ではニーズに応えきれないということが想定されますので、目的に応じて、試料・情報を収集するニーズ対応型の疾患バイオバンク機能が必要ではないか、としております。
また、前回の御意見にありましたように、このようにして集めた試料について、それを蓄積することで、バンクとしての多様性を高めて、他の研究への活用を図るということが有効ではないか、としております。
ただし、その際には、試料・情報の収集を依頼する側のインセンティブが損なわれないように、例えば、臨床情報の一部は分譲対象外とできることや、分譲開始まで一定の期間を置けること等のルールを設けることが必要ではないか、としております。
次の黒丸でございますけれども、ニーズ対応型の疾患バイオバンク機能につきましては、ナショナルセンター・バイオバンクネットワーク(NCBN)では患者レジストリに基づく臨床研究開発段階のインフラとしての機能を強化していく方向という御説明がございました。一方で、基礎研究から、特に初期段階の臨床研究では、比較的少数の質が高く多様な検体が必要になるケースがあるものの、そのようなニーズに対応できるバンクがこれまでなかったということもあり、岡山大学ではこのようなバイオバンクを作ったという御説明を頂きました。また、岡山大学以外にも、一部の大学でそのようなバンクの整備を独自に開始されているという状況がございます。
これを踏まえて、我が国の基礎研究から初期段階の臨床研究を支える疾患バイオバンク機能として、我が国の中核的な大学病院による診療機関併設バイオバンクの利活用を国として整備することが効果的ではないか、としております。
ただ、その際に、各大学が独自に整備をしてきておりますので、どのようなバイオバンクをどこまで支援することが適当かということについては検討が必要であろう、としております。
続きまして、次の黒丸でございますけれども、一つのバイオバンクでは、試料収集の規模やスピードが限られているということがございますので、研究に必要な試料の数や種類を効率的に確保する仕組みが必要ではないかという御意見もありました。それを踏まえて、複数のバイオバンクの試料を横断的に利活用できる環境の整備、さらには、複数のバンクが連携して試料収集を行う仕組みの導入が効果的ではないか、としております。
このためには、バイオバンクのネットワーク化、さらに、そのバンク間の連携の取りまとめを行う中央機能の設置、また、それによる情報システム、品質管理等の標準化等が必要ではないか、としております。
一方で、次の黒丸ですが、基礎研究段階の探索的な研究においては、臨床情報や品質がある意味では限定的であっても、多様な試料・情報が大規模かつ迅速に入手できることが有効な場合があるということで、そのようなケースへの対応において、大規模疾患バイオバンクであるバイオバンク・ジャパンを診療機関併設のバイオバンクと相互補完的に有効活用できるようにすることが必要ではないか、としております。
また、中小規模バイオバンクでは保管できるスペースが限られておりますので、それらのバイオバンクで収集する試料のうち、一元的に保管することが適しており、利活用が期待されるような試料については、バイオバンク・ジャパンが有する基盤を活用して保存する仕組みを構築することが望ましいのではないか、としております。
ただ、その際、「貯めるだけでなく、活用されるバンク」となるためには、将来的に競争力を持ち、利活用が期待される試料の見極めはどのような体制や判断軸で考えることが適当かということについては検討が必要であろう、としております。
次に、3ポツでございます。一つ目の黒丸でございますけれども、バイオバンク・ジャパンは、主としてGWAS解析、つまり、ゲノム解析を目的に蓄積されたということでございますので、前回の検討会でも、ゲノム解析に必要な試料の品質は確保されていることが確認されました。また、試料収集規模が大きいということ、一定範囲の臨床情報が附帯しているということで、疾患研究における大規模ゲノム解析に有用な試料・情報が蓄積されたと言えるのではないかということがございました。
これを踏まえて、このような有用な試料・情報を今後も最大限に有効活用すべく、来年度以降も、利活用を更に進めるためのユーザー視点に立った取組を行っていくことが必要ではないか、それには、AMEDゲノム医療研究支援機能との連携が必要ではないか、としております。
その際、試料は限られておりますので、ゲノム情報に関しましては、情報化して、ユーザーのニーズに応じて分譲又は共同研究によって、データを広く共有できる仕組みを確立することが必要ではないかと。産業界の方からも、データでの提供のニーズがあるというような御意見もございましたので、それも踏まえて、このようにしております。
また、このような、主にはゲノム解析等といった用途を想定した場合に、BBJはバイオバンクであると同時に疾患コホートという側面がございますので、そのコホートという観点から、追跡調査や生存調査の継続についてどう考えるかということについても検討が必要、としております。その際には、これまでの臨床情報の利用実績を踏まえる必要があり、さらに、医療機関との協力関係の継続や今後のコスト等を考慮することが必要であろう、としております。ここの参考として、参考資料をお配りしております。
それから、最後のページでございますけれども、ゲノム解析以外の用途につきましては、前回も御議論がございましたけれども、例えばメタボロミクス解析等、用途によっては利活用が困難な状況にあると考えられるということでございました。ただ、一方で、ユーザー側で判断するための情報があれば、ユーザー側としてはどう使えるかについて検討できるという御意見もございましたので、試料の品質確認結果や附帯する臨床情報等の範囲をユーザーに対して明らかにして、活用方法の拡大を図ることが必要ではないか、としております。
最後でございますが、BBJは充実したバイオバンク設備を持っておりますので、矢印以下の記載としては先ほどの再掲でございまして、中小規模バイオバンクの試料の一元的な保管等を行ってはどうかということをまた改めて書いております。
説明としては以上でございます。
【中釜主査】
御説明ありがとうございました。
研究基盤としてのバンクに求められる重要な論点、主に3点について、丁寧に御説明いただいたわけですが、文科省として取り組むべき研究基盤の充実・強化について、残りの時間を使って、皆さんで御議論いただきたいと思います。この資料1の順番に沿って御議論いただければと思います。
まず、1ポツのバイオバンク等の利活用促進方策について、委員の先生方で御意見ありましたら、お願いいたします。これはバイオバンク全般に関するアクセシビリティを含めた利用促進についてです。では、春日先生。
【春日委員】
前回のときも申し上げたのですけれども、また、誤解があっては非常に申し訳ないと思うのですが、やはりユーザーの方で、具体的には、今回御出席いただいている内山委員や赤塚委員の方で、業界全体の意見をまとめるような会をやっていただいて、まず、今あるバイオバンクをそもそも使う気があるか、使う気があるかというのは非常に失礼ですけれども、その辺りから議論していただきたいと思っています。せっかくユーザー側の方に出ていただいても、代表の方の御意見が全体の御意見ではない場合があると、なかなか難しくなると思うので、是非、業界全体の御意見をまとめていただくと、非常にやりやすいのではないかと思っています。
【中釜主査】
今の春日委員からの御指摘について、内山委員、赤塚委員、御意見ありますか。よろしければ、どうぞ。
【内山委員】
臨床検査薬協会から参加させていただいている内山でございます。今の春日委員の話は我々にとっては非常に取り組まなければならない課題だと認識しております。第1回の会議のときに、我々のニーズを簡単にプレゼンさせていただきましたが、その中で、アンケートの結果として、「今後バイオバンクの利用ができれば活用したいか」という質問に対して、回答者の75%が利用を希望すると回答していますが、なかなかそのニーズが出てこなかったということがありました。
我々がテーマとしてあげているのは、体外診断薬の承認申請という決まったレギュレーションの中で利用するということから始めて、更に広範な利用につなげていきたいと考えていますが、現在、我々は、これからバンクを利用するに当たり、例えば体外診断用薬品の承認申請データに利用する場合に、各バンクに対して基本的にお願いしたい利用条件を、協会内のワーキングを立ち上げてまとめようとしております。
基本的な条件は、試料の品質情報、我々が利用したい情報の提供のニーズ、さらに、現在バンク側で対応されている倫理的な対応、我々がベースとして考えているのは研究倫理指針ですが、体外診断薬の承認申請で利用する上で、倫理指針に対応しているかという、その3点を基本原則に確認をするということを取りまとめて、これは早ければ、この夏、9月ぐらいまでには、我々業界から基本的な考え方を何らかの形で公表させていただくべく、準備を進めているところでございます。
また、利用のニーズについては、我々臨床検査薬協会と、製薬協との間の情報交換というのも必要になろうかと思いますので、その辺りは赤塚委員とも相談して進めていきたいと思います。
【赤塚委員】
ありがとうございます。まず、最後におっしゃった情報共有に関しては、資料1には産業界と書いてありますが、やはりいろいろな業種によって多少違います。そこは、すり合わせというか、お互いに知った上でコメントしていくというのが重要ではないかと考えて、その辺りはいろいろ相談させていただくことになっております。
それで、ニーズなのですが、確かに業界でまとめるということは、画一的なものはやはり難しいのは難しいです。ただ、第1回にお示ししましたような品質に関してはこういう記録が欲しいでありますとか、医療情報が付いていてほしいでありますとか、そういう基本的なところというのは、製薬協の方ではアンケートを採った結果で出してきているところなので、今後もしバイオバンクを構築していく場合には、そういう最低限のところというのはあってほしいということだと御理解ください。
また、過去のものに関してどこまでそれを求めるかというのは、やはり時代によってサイエンスレベルも全く変わってきてしまっていますので、もう我々もそれに追い付くように、追い付くように研究しているということで要望も変わってきていますし、個社でも変わってきているというのが現状で、大変申し訳ないところです。
まとめていくとすれば、一番基礎的なところとしては、ここまではあってほしいということに関して、例えば医療情報でありましたら、疾患によって多分必要な情報というのはスパイクのように変わってくると思うのですが、そのベースのところはどこなのかということをまとめていくというのは、やはり課題としてやっていかなければならないのではないかと感じております。
まだ手は付けていないのですが、製薬協、研究開発委員会に入られている会社の方に、アンケートなり何なりを取って、そのベースのところはこういうところとして出てきましたということを示していく必要があると、今のコメントを見て、感じております。
【内山委員】
補足をしてもよろしいですか。
【中釜主査】
お願いします。
【内山委員】
我々は既に各会員企業からいろいろなニーズを聞いていますが、各会員企業のニーズは非常に多様化しており、利用に当たっては、ある程度横断的にニーズを絞らないと、バンク側に非常に負担をかけてしまうので、やはり利用の原則を少し絞り込むということも今進めているところです。
【中釜主査】
ありがとうございます。では、高坂委員、お願いします。
【高坂委員】
正に今、内山委員がおっしゃったことだろうと思います。これまでに何回も、企業サイドのニーズは何かをまとめていただきたいという調査をした経験があるのですが、その都度、やはり総論的な話しか出てこないということで、どこまでそれに対応したらいいかというのは、非常に我々は悩むところもありました。
今おっしゃったように、横断的なところの基本項目についての要望はまとまる可能性がかなりあって、それは恐らく品質管理、例えば、採血、試料を取るまでの時間、凍結までの時間など、そういう一般的なことだろうと思います。それから、最低限の臨床情報など、そういったところについては横断的な共通項は拾い出していると思います。
しかし、例えば、どういう疾患を対象としていて、どういう状況にあるから、薬を投与した、あるいは、発症してからどのぐらいの方だとか、そういう細かいことになってくると、恐らくもう各社ばらばらだと思います。
やはり、それに一番対応できるのがニーズ対応型というか、各社違うニーズを必ず持っていますので、その各社のニーズをいかに拾い上げることができるかという、その方策を考えなければならない。それでないと、机上の空論になってしまいます。
今それに一番対応しているのが、厚生労働省等が実施しているGAPFREEというテーマがあって、企業と1対1でコホートを組んで、その企業が考えている疾患、こういう疾患を集めてほしいというニーズに応じて、これはまさしくニーズ対応型の臨床試料を集めて臨床研究に持っていくという形になっています。ただ、それはマッチングというか、非常に難しいところもあって、それをどこがお世話するかというところもあるのですが、一つ、そういった形というのも考えないと、恐らく、春日先生がおっしゃったことを満たす回答にはならないのではないかなという気がしています。
【中釜主査】
ありがとうございます。
最初の体外診断薬等の取組については、高坂先生の御意見と重なるかと思うのですが、どういう疾患を対象にするかによって、その品質保証などに加えて、やはりリファレンスパネルをどうするのかというところに関わってくると思います。その辺りは、バイオバンク側もある程度意識して、ある程度きちんとしたものをそろえていく必要があると感じましたが、その辺りはどうですか。既存のものでも整理をして見やすくするとか。
【内山委員】
整理する中で、高坂先生がおっしゃるように、情報の利用ニーズを絞り込むというのは、企業のニーズが多様化しており、かなり難しいところですが、品質情報について言えば、高坂先生がおっしゃったように、例えば、保管温度はマイナス70度以上が望ましいというような具体的な提案は、もしバンク側にとって負担がなければ、そのような形にさせていただきたいと思うのですが、我々利用する側も、やはりバンク側の品質情報だけではなく、そこで足りないものは我々が自ら実証するというスタンスを持たないと、効率的な利用ができないのではないかと思っています。
品質についても、バンク側が実際に温度管理をするに当たっての精度管理的な手法を、例えばBBJでも試みているとお聞きして、それらの手法は、個々の検体の安定性を保証するというよりも、その保管管理システムそのものを維持管理するための精度保証だと思います。システムを維持管理していただければ、我々は、目的の物質に応じて、温度条件や品質情報に応じた検証を必要であれば行いますし、バンク側の情報で足りれば、より効率的な利用が可能になりますが、やはり我々も、限られた情報の中で必要なことはやっていくということをしないと、多分なかなか両者で利用が進まないのかなと思っています。
ですから、例えば情報も、今ある情報の中で完結できるような審査のやり方を、PMDAと相談させていただく。つまり、情報があればあるほど、それだけいろいろな照会事項も増えるわけですから、そうなると、やはり審査が長引いてしまうというようなこともあるかもしれません。
ただ、バンクの試料を使ったデータだということを表明した上で、提供された情報はこれですと示した審査の中で、もしそこではまだ足りないものがあれば、別途やはり医療機関等から改めてオンデマンドに集めるしかないと思っています。申請の区分によっては、既存のもので十分対応できる申請区分もありますし、新規項目のように足りないものは、我々が別途、情報をほかの医療機関で求めるというやり方があっていいのかなと思います。
【中釜主査】
ありがとうございました。
それと、2点目のニーズ対応型、これはバンクとしては、付随する臨床情報がかなりあることを考えると、高いレベルのものだろうと思います。横断的な項目で情報としては平易な部類と、プラス高度なもので、二層性のイメージです。例えば共同研究、GAPFREEもそうだと思うのですが、企業側として、ニーズ対応側の場合はどのようにお考えか、そこは余り抵抗感がないのか、そういうことも含めて、分譲という体制の方が望ましいのか。あるいは、バイオバンク、提供側としては、かなり層が違う、レベルの違うものだという意識がありますが、その辺りはどうですか。
【赤塚委員】
GAPFREEに関しては、AMEDを中心にマッチングをしていただいたということで、これまでは基本的に共同研究を個社でやっていたのを、あのようにオープンにして、いろいろな大学、アカデミアといろいろな企業とがマッチングしやすいようになったシステムという形で、我々としては、資金もそうですけれども、共同研究の一環のように考えているというような感じだと思います。
そういった試料、サンプルの分譲うんぬんに関しては、契約にもよるのですが、やはりGAPFREEでは情報を頂くような形になっているということなので、分譲が望ましい会社さんも多分たくさんあると私は思っております。
日本人の生体試料を使う気があるかどうかというところに関しても、必要だと思ってはいます。やはり背景が海外とは違いますので、それと、やはり最初に研究の段階で手を付けるのは日本ということなので、必要ですし、それを社内で研究していくためには分譲という形というのは望ましいと思ってはおります。
【中釜主査】
一方で、詳細の臨床情報を自動的に電子カルテから抽出するシステムというのは、今のところ、なかなか難しい部分であります。その部分にバイオバンク側が、あるいは、医療者側がコミットする時間や労力は相当に大きいことから考えると、そこの部分に関しては、付加価値は非常に大きいですね。
もちろん、自動的に臨床情報や病理情報を抽出できるようなシステムの構築というのがどうしても必要になってくるのですが、そこを目指しつつ、その間に、分譲か共同研究かという議論はしばらく続くかなと思います。同じことの繰り返しですが、やはり自動的な抽出システム、効率的に抽出するシステムができるまでの間というのは、ある程度そういう二層的な分譲レベルとか、あるいは共同研究レベルというところを検討する余地があるのかどうか。その辺りについてはどうでしょうか。
【赤塚委員】
そうですね、並立していくことに当然なってしまうだろうと思います。分譲いただくときに、今、分譲いただくサンプルに付いているものというのは増やすわけにはいかないので、どういう情報がこのサンプルには付いているのか、付いていないのか。付いていないという情報も重要だと思っています。付いていないのであれば、付いていないという形で、分譲いただく試料を選んで分譲いただくということになるでしょうし、全てが欲しいということになると、GAPFREEのような共同研究の枠組みを使うという形の並立になると思っています。
【中釜主査】
ありがとうございました。
ほかに御質問、御意見はございますか。今は、この最初の論点の3ポツに話題が集中しています。山田委員、お願いします。
【山田委員】
第1回と第2回を欠席したので、本日が初めてです。ゲノムに関しましては、「もの」であるという視点と、もう既に「情報」であるという視点があって、要は、ゲノムを解析するために分譲するということは、有限な試料を、ゲノム情報を読み出すために切り取り、その人に付託して、その人が責任持って解析してくれるという、そういう立場で、もしゲノムの情報が全部情報としてストックされているのであれば、それを情報として分譲すればいいので、劣化することはありません。
そういう意味では、まだシステムがうまく回ってないようですので、情報の提供という意味では、ゲノムを「もの」として提供するのであれば、実施した解析は共有財産としてフィードバックするというような形でやるということであれば、どんどん分譲して、パワーのあるところが解析して、情報を増やせばいいと思いますし、逆に、同じ検体で同じ解析を繰り返すようなことは、ある意味、「もの」としてのゲノムが少ない場合には、そこのレギュレーションなり、コントロールを入れて、無駄のないように、両方活用するのがいいのではないかと思います。
【中釜主査】
ありがとうございました。ほかにありますか。山本先生、お願いいたします。
【山本委員】
どうもありがとうございます。このバイオバンクの利活用方策というところで、前回も発言したのですが、バンク側から見ると、アクセシビリティを向上させて、何が入っているのか、どのように使えるのかということをよくわかってもらう点、それから、対応のスピードを上げていく点、これが絶対に必要なことというか、バンクの使命だと考えています。
一方で、余り個人情報等に触れないものを配るだけのバンクであれば、この2点だけでいいと思うのですが、今のお話もあったように、個人情報の固まりのようなゲノムの情報も、しかも品質のいい形で配るということになると、今度は、分譲するときのセキュリティも大切かもしれないし、それから、相手方の体制を見ることも必要かもしれないと思います。バンクの運営とマネジメントに関するしっかりとした体制を築くということも必要で、それはある意味ではスピード化ということとトレードオフの関係になるかもしれないと思います。
でも、使う側の方は、しっかりとしたICを持っていて、しっかりとした倫理審査も済んでいるような、製品化にしたときにバグが入らないようなものとしてバンクの試料を使われるということが、将来的に見たら絶対に必要で重要なことではないかと思うのです。そこをしっかりやるのが公的なバンクとしての使命ではないかと思っています。
もう一つ、最初に申し上げたのは、バイオバンクの運営ということに関しては、アクセシビリティ、それから、スピード化が命なのですが、一方では安全性ということ、それから、二次利用を保証するような体制を持っていること、こちらもしっかりしていることが大切だと思います。試料を配って、製品化に一歩となったところで、実はそれはICがきちんと取れてないので使えないものでした、などということがないようにバイオバンクを作るということは、本当に大切だと思います。
もう一つ、分譲か、共同研究か、という議論がありました。確かに、オンデマンドでやるような、非常に細かい情報までを必要とするようなバンクの利用というところを共同研究で行おうというのは一つの方向かと思います。しかし、全体として公的に使うものは、やはり、バンク側が知財を取らない、知財ごとお渡しするような分譲の形を作ることが大切だと思います。私たちの文化というか、研究の文化の上にそのような気運を作り上げていくことが必要ではないかと思います。
知財ごと差し上げて、ある一定期間は成果占有非公開の条件で使ってもらう。しかし、成果が出たときにはバイオバンクに戻してもって、バイオバンクを豊かにしていく、国民全体の共有の財産にしていくという観点から見ていくことが必要ではないでしょうか。
それで、分譲をしっかりやっていかないといけないと思うのです。例えばコホートでも、バイオバンクではないコホートは、共同研究で試料や情報を使うしかないのです。そのようにしてできてきた疾患コホートは、やはりバイオバンクになってほしいと思います。バイオバンクでは、何を研究するかということに関しては細かいことは問いません。そちらで知財を取ってくださいという形のバイオバンクを作っていくことが、我が国の学術はもちろん、産業界の振興に向かって役に立つことになるのではないかと思います。ここは、やはりもう分譲の文化を作り上げるのだという気概が必要だと思います。
分譲では手が回らないような、もっと細かい、もっと微細にやるような、また、もう治験に近いような研究は、共同研究ベースでやっていく、そういう体制も作っていくということに、その辺りの線引きをしながらやっていくことが大切ではないかと考えています。
【中釜主査】
今、山本先生が重要な論点をまとめてくださいました。安全性が確保されて、そのIC対応もきちんと取られている、バンクを作る側もそういう配慮をして質の高いものを作っていくと同時に、その質の高いものを広く利活用する。これが次の視点では重要なので、そういった意味では、作る側と使う側が相互にリスペクトしながら、分譲に関するルールをきちんと整えていくということかなと思います。
その中で、知財戦略のところはやはりある程度考考慮しながら、ユーザー側にもきちんと担保する。もちろん、提供するバンクの内容によりますが、そういうところが必要かと思います。
その議論、論点にはほぼ間違いはないかなと思うのですが、あとは、そこをいかに加速、促進するか。そのときに、分譲と共同研究というところをうまい具合に、ユーザー側とバンク構築側で議論しながら、広く国民にその成果が共有できるような形をより前向きに皆で目指すというところなのだろうと聞いていました。基本的にこのような方向で、恐らくこれから具体的なところを検討していくことかなと思います。
今、特にこの最初の論点に関しては、3つ目のポツに議論が集中していますが、加えて、例えばアクセシビリティの問題や、ワンストップサービス機能、これもまた重要な論点かと思いますが、南学先生の方から、アカデミアサイドとして、この点に関する御意見がありましたらお願いします。
【南学委員】
ありがとうございます。これはすごく大事なことだと思っていて、是非やっていただきたいのですが、少しその前の話に戻って、分譲の話について。山本先生のおっしゃることは非常に大事だと思うのですが、一方で、臨床研究法ができてしまって、しまってと言うといけないですけど、できて、この前、法律の先生に聞いたら、少額寄附でも臨床研究をやることは一切まかりならなくて、企業、特定の薬剤を念頭に置いた企業との研究は必ず共同研究契約を結んでやることと法律で規定されてしまったと言われました。
例えば、恐らく、企業の方が基礎研究で薬と全く関係ないことをされるのであれば分譲が可能で、また、寄附をこのバイオバンク側が受けないで分譲することは可能だと思います。しかし、もし寄附をしていただいて、ある薬剤のために分譲するとなると、それは恐らく臨床研究法に抵触するのではないかということを非常に危惧しているので、その辺りを明確にしていただくと、企業の方も使いやすいのではないかと思います。
【中釜主査】
分かりました。そこはバンクそのものを構築する段階からの戦略だと思います。
この点について、何かありますか。
【内山委員】
臨床研究法だけに限って見ると、体外診断薬品がそもそも臨床研究法の適用外になっております。ただ、今、先生がおっしゃったようなことは我々も法律家から聞いております。
我々にとって望ましいのは、やはり分譲という形です。特に、最終的には製品化を目的に申請するので、やはり成果物というか知財が企業側に全て帰属するのが企業側としては望ましいのですが、利用する側として我々企業も、倫理的な対応、コンプライアンスの遵守の整備をしていかないと、何か起きたときにまずいのかなと思います。
例えば、先生方は、バイオバンクの利用に関して、利用者側があらかじめ社内等の研究倫理審査委員会の承認を得て申し込んでくださいとよくおっしゃるのですが、各企業も自社に研究倫理審査委員会を持っているところが増えてきてはいます。しかし、倫理委員会の存在のみならず、企業の倫理委員会が倫理指針に沿った質の高い倫理審査委員会になっているかどうかを問われるのであれば、共同研究という形で、例えば倫理審査をバンク側の倫理委員会に委ねていくということもあってもいいと思います。
ただ、繰り返すようですが、共同研究の場合は、やはりその知財の帰属がどうしても企業側としては気になるところなので、そこの線引きをうまくできたらいいなと思っています。
【中釜主査】
ありがとうございます。非常に重要なポイントの議論だと思います。一つの考えとして、例えば共同研究をもっと加速して、そこから経験された成功事例を示すことによって、分譲の垣根をより下げていくというアプローチももう一つあるのかなと思いました。 高坂先生、その辺りについて御意見ありますか。
【高坂委員】
知財については常にそういう議論があるのですが、世の中一般的な流れとしては、違う方もいらっしゃるかもしれませんが、今のところは、最初から知財を要求することはしないという方向が恐らく一般的になっています。
例えば、共同研究契約にしても、一定の成果が出て、もしそれが工業化等で知財に結び付く場合には、そのときにまた別途協議させてくださいということで形になっているわけです。なので、まずは、いいものをとにかく作り上げてほしいというのが双方の思いであって、一定の成果が出るまできちんと皆さんでやっていきましょうという姿勢が大分増えてきたと思います。
やはり、アカデミアの方も、分譲だけして、本当に一番難しいところは企業に全部やっていただいているのに、そこから出た知財を俺たちによこせというのは余りにもひどいじゃないかという議論も出始めていて、一時に比べて、相当雰囲気が変わってきていることは事実です。
だから、やはり、今、先生がおっしゃったように、成功例を幾つか出して、こういうことで国民に非常に我々は貢献していますよということをどんどん出していくことによって、その分譲という垣根は確実に下がってくるだろうと私も思います。
【中釜主査】
ありがとうございます。少しユーザーニーズのところに議論が集中していますけど、そのほか、アクセシビリティ、あと、ワンストップサービス、これに関しては、必要なことは間違いないだろうと思いますし、そのときに、恐らくどういうところにユーザーに対する敷居を設けるとか、どのように管理するとか、その辺りは今のユーザーニーズのところと関連するのかなと思って聞いていました。この最初の二つのポイントに関して、何か追加で、御発言、御意見ございますでしょうか。高坂先生。
【高坂委員】
1ポツの支援の充実については、今日は加藤部長がオブザーバーで来ていらっしゃるので、本当は加藤部長の方から発言していただいた方がいいかと思うのですが、AMEDでもいろんな分科会を作って対応しようと努力をし始めているところです。加藤部長、もしよろしければ情報提供がありましたらお願いします。
【中釜主査】
お願いいたします。
【加藤基盤研究事業部長】
ありがとうございます。バンクの研究支援機能については、昨年から本格的に始めましたが、実際、一昨年から、高坂先生の御支援を頂きながら、企業だけでなく、農水系の研究者を始め、多くの方にお越しいただき、試行錯誤してまいりました。
今後、我々がこういった支援機能を充実させていくためにも、やはりどうしてもバンクの方々のインセンティブ、モチベーションが大事だと思います。
というのは、私が2年前にAMEDに来て感じましたのは、恐らく最初にバンクやコホートは個人研究ベースで始まり、その人の研究のためにという形で進んでいったということです。
それが、研究や政策のニーズ等があり、一つの機関の長がコントロールし始めたと。ただ、それもまだ、その機関のためにという意識が、2年前までは強かったような気がします。それがおととしの7月の中間とりまとめで、使われるバンク、すなわち、利用・活用のバンクとなったところから急に変わっていったのですが、制度がしっかりと付いていっているかというのはやや疑問もあります。
やはり、自分の研究のために貢献したかどうかという形が多い制度設計になっていたわけですね。オールジャパン体制、オールジャパン構想ということになったのであれば、人のためにといった価値観をどう評価してあげるか、という部分が確立し切ってないのかなと思われます。
そういう意味で言うと、分譲ですとか、又は、知財を放棄するとか、少なくともこれまでの自分のためのというところから離れていくわけです。更に質を良くする、量を多くする。当然、スタッフも多く入れなければならないような状況になったときに、そういった制度設計をしていかなければならないという点について、支援機能としては強く感じる部分がございます。
その面で、恐らく機関の長も研究者も、又は、バンクで働く人たちも、同じ方向に向けるような何かが必要なのかなというのは常にいつも感じていまして、そういう意見が支援機能の中でかなり、一昨年からバンク側の方からは出ているという状況を御披露しました。
【中釜主査】
ありがとうございます。今、加藤部長がおっしゃったように、個人から機関へ、機関からオールジャパンへと、バンクに求めるものが広がってきているということですね。これは恐らく研究そのものに期待される精度、クオリティーというところも関係しているのかなと思うので、自然な方向性だと思います。そういうものに頼るような、きちんとしたものを国として作っていくことは間違いなく重要なことで、それはひいては個人の研究のクオリティーにも反映されるということだろうと思います。そういう全体像を見せながら、我々としても取り組んでいく、是非、国としても取り組んでいく。その中でのユーザビリティやアクセシビリティ、ユーザーニーズに対する対応ということを考えていく必要がある。まとめると、当然な結論になってしまいますが。
【山本委員】
よろしいですか。
【中釜主査】
はい。
【山本委員】
今のお話、本当に現実に即したお話を聞いたと思うのですが、実際には、私たちの科学研究の世界というのは、インフラをやっている方たちがたくさんおられて、例えば、NBDCで情報を配っている方も、それ自身が研究というよりは、下支えをしていると思います。それ以外にも、バイオリソースセンターを運営している人や、たくさんのインフラをやっておられる方たちがおられます。私は、バイオバンクはインフラだと思うのです。
そういうところから出てきた試料や情報がすばらしい成果につながれば、これは一つの大成功だと思います。それがインセンティブになるような文化を作っていくことが必要で、私たちが実施しているバイオバンクで、今集めているもので、これがみんなインセンティブになるからと言ったら、先生、死ぬまでには大丈夫ですかねと言われるような気がして、加藤部長の言うのは本当に現実論でよく分かるのですが、やはりここは私たちが社会のインフラで、学術の振興や産業の発展につながるものを作り上げようという意志を固めることが大切だと思います。また、それを評価する体制も必要なのではないでしょうか。また、そういうインセンティブも必要ではないでしょうか。
【中釜主査】
正にそうですね。研究におけるインフラの重要性はますます理解され、共有されてきていると思うので、それに対する個々のコントリビューションも正当に評価されるような仕組みも作っていく必要があると思います。この点はこの10年で随分変わってきたのかなと思いますが、インセンティブや、それのコントリビューション、評価の在り方というのも併せて考えていくことも重要です。
はい、狩野先生、お願いします。
【狩野委員】
2点加えさせていただければと思います。
一つ目は、とある企業の方とお話ししているときに、研究を進めていく上で、当然、正常コントロールが必要であるという点について御意見をお伺いした内容です。私はそれを伺う以前には、正常コントロールとしては、例えば東北メガバンク様で集めておられるものがあるからお願いできればよいようなことを思っておりました。しかし、この企業の方がおっしゃったのは、東北メガバンクで集めておられる正常例というのは3世代ぐらい、しっかり集められたものであって、そういう貴重なものをただのコントロールに使っていいのでしょうか、ということでした。確かにそうだなと思った次第です。この意味では、インフラ整備という観点から考えたときに、正常例の集積をどうするかというのも一つ論点かなと思いました。
2点目は、日本のバンクを整備することは、現状では当然、国内企業あるいは国内の研究者のためのインフラストラクチャーとしての発想で話が進んでおりますけれども、片や、こうしたバンクを運営していく上でのキャッシュフローを考えると、海外の関係者にも使っていただいた方がいいのか、という点は考えてもいいかもしれないという点です。
もし、海外の関係者が使うということも考慮した場合には、臨薬協様や製薬協様がまとめられた内容だけでうまく回るのか、あるいは、その中におられる海外資本の企業の方々に、別途、そのような観点だったらどういうことが必要だと思いますか、と伺った方がいいかというのは、考えてもいい視点かと思います。
特に中国、韓国においては巨大なバンクがたくさん出てきていて、それらが非常に、何といいますか、いろいろな心配はあるかもしれませんけれども、使う側から見ると気楽に使えるという状況だと聞いております。これと日本がいろいろなお金を掛けて整備したものがどういう人に対して開かれるように作るかということは、もしインフラストラクチャーの仕組みをこれから作るということがあるとすると、重要な論点かもしれないと思った次第でございます。
【中釜主査】
ありがとうございました。
今の論点は恐らく、今進めているゲノムも含めたオミックス情報というものの、情報のバンクを含めて、国家戦略、海外戦略にも反映すると思います。その辺りも是非視野に入れながら、今後の在り方等について検討すべきだと思います。
ほかにも、最初の論点についての議論がありましたけど、よろしいでしょうか。では、また何かお気付きの点があれば、後ほど御発言いただきます。
次は、2番目の論点です。今後の疾患バイオバンク機能の在り方についてですが、これについて、御意見、御質問ありましたら、お願いいたします。
【狩野委員】
では、私から。
【中釜主査】
お願いいたします。
【狩野委員】
この論点は、恐らく、私が前回御発表申し上げた内容から派生しているところがあるかもしれませんので、先に意見を申し上げたいと思いまして挙手しました。
一つ目は、この活用に当たっては、複数の価値観が並立していると思っておりまして、その中でも、ニーズに応じて何か貢献するタイプの生体試料活用システムというのはやはり必要だろうというのがこちらの論点でございます。
そのときに、ニーズ駆動といっても、更にもう一つ考え方が派生するかもしれないのは、現在あるニーズに応えるという方向に加えて、将来発生するであろうニーズを先読みしてためていくという議論も、もしかすると、今後要るかもしれないということは加えておきます。これは資金と労力と実際のニーズのバランスがありますので、どこまでかは分かりません。ただ、こういう方面をプロスペクティブ的なコホートと最近は呼ぶと海外では言われていると伺っております。
それから、このニーズ駆動型で進めましても、余剰検体があり得るわけですけれども、この余剰をどのように活用するかということもまた考えてもよいことかと思っております。ただ、この点では、どうしても、違う条件のもとで集められた余剰検体の集積になってしまうので、どのように活用できるかも検討の余地があるかと思います。
それから、こうしたニーズ駆動型ということをもし推進するとしますと、私どもの側から行政の皆様にお伺いできるとすれば、現在は、生体試料の活用というのは一体どういう意味なのかというところについて、まだ少し議論がある状況ですので、「生体試料を積極的に活用して、基礎研究、あるいは、臨床研究の促進につなげる」という方針を公にしていただける可能性があると、大変有り難いことではないかなと思っております。
次に、連携の視点をこの中に記載していただいておりますけれども、どの程度の連携をするかというのはなかなか、実際に連携をする段になると悩みがありそうであります。大変高度な連携ということになりますと、それの仕込みには、かなり大変な努力を要するであろうという見通しを持ちます。この努力に見合った程度に使っていただけるかどうか、ということを考えながら、どの程度の連携にするかということは一つ考えどころだと思っております。
例えば、ニーズ駆動型というのは、別の言い方をすると、前向き採取というか、ニーズが判明したので、これから集めますという考え方だと思います。このような前向き採取に当たって、どこと連携するとうまく回るかという考え方の連携も、ニーズ駆動型という意味では、また更にあり得ると思っております。以上です。
【中釜主査】
ありがとうございます。ニーズ駆動型という視点からの御意見でしたが、加えて、それをいかにして従来型のアーカイブ型のバンクと連携するか。
南学先生。
【南学委員】
このニーズ駆動型は、実地で試料を収集する側からすると、かなり厳しくて、まず、今、倫理委員会の審査のハードルが非常に上がっているので、包括同意がほとんど認められなくなっていて、最初から具体的にどういうものをやるかということを明示しないと、なかなか倫理委員会が通してくれません。
しかも、恐らく新しいものを取るときには、その都度、インフォームドコンセントも取らなければいけなくて、それをやるのが非常に手間であって、かつ、こういったものを実施する施設は恐らく人の入れ替わりが結構激しいので、その都度きちんとプロトコールが改定されていて、その倫理申請で登録されている人がインフォームドコンセントを取らないと、これもまた違反になります。
目的に応じてというのは非常に理想的なのですが、実際それを取ってくださいと言われる側からすると、かなりこのハードルが高いものであります。
【中釜主査】
この点について、追加で御意見ございますか。山本先生、バンク構築側の御意見として。
【山本委員】
私は、狩野先生のこのオンデマンド、ニーズ駆動型というお話を前回聞いて、やはりこういう方向なのだなと思って、大変勉強になりました。一方で、自分の置かれている状況というか、自分たちの大学のことを考えてみると、お医者さんというのは大体患者さんのサンプルをため込む性質のある人たちだと思うのです。
前の地震のときによく分かったのは、みんな自分の医局にディープフリーザーを持っていて、何年も前からの試料を蓄えているのです。それが今正に先生がお話になったように、担当者が替わると、記録もろくに残ってない散逸したようなものが「冷蔵庫の肥やし」のようになってしまう。それで、多くの試料が冷凍庫の肥やしになっているのが今の状況ではないかと思います。狩野先生のおっしゃるような未来の話ではなくて、現実の話はそんなレベルかなと考えました。
それで、生体試料の利用ということでは、どうせため込む性質のある人たちだったら、それをクリニカルバイオバンクという形で整備したらどうでしょうかと思います。しっかりとした診断の付いた試料を、中核的な大学病院の先生たちやナショセンの先生たちにしっかりとためていただいて、それがリストになっていたら便利ではないでしょうか。実際にそれを使った研究をするときには、しっかりとした目的別の倫理申請をしてもらうにしても、バンクとして将来の利用に備えてお預かりするようなシステムではいかがでしょうか。先ほどのところにもあったのですが、統合的なデータベースの中で、どこの大学にどういうがん患者の症例がこれぐらいあります、網羅してみたらちょうどいい数ぐらいあったので、それでは申請して使ってみますか、というような形になるのも有効ではないでしょうか。「オンデマンド」ではないのですが、「検索型」でいけるようなクリニカルバイオバンク・ネットワークみたいなものができるといいと思います。
そのようなことを考えているときに、私の大学でもよく言っているのですが、余り古いものはもういいよと、10年、15年たって、利用者がゼロだったら、早く捨てようというようなこともあると思います。そういうルールも作りながらやってみるのも、生体試料の利用ではいいのかなと思います。そうすると、せっかくしっかりした診断が付いてストレージした、バンキングしたサンプルが、日本全体で活用されていくようなシステムになるのではないかなと思った次第です。
【中釜主査】
ありがとうございます。
私の方から一つ。オンデマンド、いわゆるニーズ対応型となってくると、その最終的な出口としては創薬とか、診断薬開発とか、予防薬の開発を強く意識したものになってくると思います。そうすると、どういう戦略でバンクを構築し、しかも、それが実際に出口に向かうのかということに関して、かなり専門的に詳細な議論が必要かと思います。
そのイメージだと、どうしても、やはり分譲よりは、バンク構築側とのより細かなやり取りをするというイメージがあるのですが、その辺りに関しては、製薬、あるいは、検査側としてはどういうお考えですか。
【赤塚委員】
クリニカルバイオバンクのような前向きのものに関しては、基本はやはり共同研究的なニュアンスが強いと思っています。今、山本先生がおっしゃった、それをどこかでつないで何か検索できたら、この先生のこの試料とこの先生のこの試料は比較、あるいは、まとめて解析できるじゃないのというようなことがあれば、今まではそれが分からなかったので、それぞれ共同研究のお話をしていくしかないのですが、そういうことができれば、やはり使いやすくはなると思います。
問題は、南学先生がおっしゃったICというのは、全体的なところで使えるような状況になっていないと後で言われると、やはり困るので、クリニカルバイオバンクであっても、どこの先生が取られているときでも、どういう状態なのかというのがわかるといいと思います。
ある先生のサンプルは包括的には使えない状況だと、幾ら同じような条件のサンプルであってもやはり使えません。我々は、今どうなっていますかと各先生に全て聞くわけにもいかないので、そこは公開しろというわけではなくて、例えばそこを見ていただけるようなところがあれば、そこが分かるような形で使えると、使わせていただくときには、ほかの利用ということになった場合に、その先生の研究以外のところに使うことになってしまうので、そこがしっかりしているということはユーザー側にとっては重要かなと思っています。
【中釜主査】
はい。
【高坂委員】
南学先生が御指摘になった点は、非常に難しい点があると思います。確かに現場としては、そういう包括的な同意はなかなか取りづらくて、かなり詳細なことを言わないと、倫理審査に通らないという面があるとは思います。
しかし、一方では、やはり、例えば余剰検体を別の目的で使う場合には、その都度、再同意を取るのではなくて、まず、その機関のIRBに掛けて承認を得ますと。少なくとも、最初に倫理審査委員会に掛けた目的とは別のときには、本人に再同意を取るのではなくて、その倫理審査委員会に掛けて別途協議します、確実にいい研究を行わせるように審査しますということで同意を取らないと、絶対に再同意、再同意、再同意だと、結局使えなくなってしまうので、そこはやはりある意味での包括的な同意も取っておかないと、動いていかないだろうと思います。
だから、これは指針の改定もそうだったのですが、指針が改定された場合には、各委員会で、あるいは、IRBでもう一度協議をして、いい方向で研究を動かしますという、余り具体性がないのですが、そういう内容のインフォームドコンセントを取らないと、やはりずっとこの問題が解決しないのではないかと思います。
【中釜主査】
ありがとうございました。
先ほどの御発言で、ニーズ対応型の場合はどうしても共同研究的な色彩が強くなるということでした。ただ、そうやってためた情報を今度はどうやって共有できるかが問題になってくるかと思います。
そういう流れからいくと、今、AMEDの例えば臨ゲノで取り組んでいる3つのデータベースというのは、恐らくそういうところの問題を解決していくような要素もあるかと思うのですが、その点に関して、加藤部長から何か御発言ありますか。
【加藤基盤研究事業部長】
ありがとうございます。今、正に疾患を超えて多くの人に共有していただくという形で、臨ゲノの場合には、非制限共有という形でオープンにしようとしています。非常に基本的な部分だけですけれども。
当然、そこはそういう同意の取り方をしているでしょうし、やはり同意の取り方の工夫ですね。もちろん患者に不利にならないようにしなくてはならないのですが、もう少し研究していく要素があるのかなと今思っています。
【中釜主査】
ありがとうございます。
大規模なアーカイブ的なバンクと中小規模のクリニカルバンクとの連携をどのようにして、どこまでを支援するのか、その連携したクリニカルバイオバンクのクオリティーをどうやって担保するのか、どうやって管理するのかというところにも、恐らく反映される問題点だと思います。その点に関して、何か御発言ありますか。
【狩野委員】
先ほど来、山本先生と南学先生から頂いた視点について、私ももともと南学先生の所属の大学出身ですので、大体様子が透けて見えるようにも思うところですが、それと比較して、現在所属している大学に来てみて、随分組織によって風合いが違うところがあると思っております。そういう視点から、組織の特長を生かした方向性というのはあり得るかなと思っております。
また、より一般的にも、国内に多様な在り方の機関がなぜ並立して必要なのかという理由付けもきっと今後更に必要だろうという観点の一環として、こういう組織の在り方も意義があるかなということを思っている次第です。
もちろん、それだけでなくて、せっかく各地の機関に来られる患者さん方の情報や試料もございますので、これらをどうやってできるだけ活用していくかということを考えると、このような提案もできるかなという、そういう視点でございました。
その観点に関して、もう一つ申し上げます。同意の取り方も御議論ありました通りですが、それに加えて、共同研究を実施しやすくするということを考える場合には、例えば、前回申し上げましたけれども、AROと組んだ形の組織の窓口としてのクリニカルバイオバンクというのが一つの在り方だと思っております。そうしますと、御一緒する企業様がどのぐらいの研究計画を作っておられるか、あるいは、アカデミアの方がどのぐらいの研究計画をしっかり作っておられるかということを確認した上で、そのクリニカルバイオバンクの検体を提供するかどうかを考えるという仕組みもありだろうと思って、こちらではそのような整理にしているということでございます。
【中釜主査】
ありがとうございます。非常に重要な御指摘だと思います。
山本先生。
【山本委員】
一つの方向性として、クリニカルバイオバンクも本格的なバイオバンクにして、バイオバンクは試料・情報の二次利用を可能にすることができるわけですので、バイオバンクに預けていただくというのはいかがでしょうか。それで、そのバンクは、バイオバンクとしての運営をきちんとやるので、サンプルの二次利用を可能とするインフォームドコンセントを患者さんから頂く。そのインフォームドコンセントはGMRCが非常に丁寧に、普通の臨床研究のレベルではなくて、バンクレベルのICを頂くということをしていくのが、今、高坂先生がお話になったり、南学先生がお話になったりしたような、臨床研究を一つ超えたクリニカルバイオバンクを作るという方向になると思います。規模が小さくてもバイオバンクだということにしていくのが今後の方向性ではないかなと思います。
【中釜主査】
ありがとうございます。
その場合に、その二次利用に関しては、検体試料そのものの二次利用なのか、情報の二次利用なのか、両方ですか。
【山本委員】
両方です。
【中釜主査】
ほかに、このニーズ対応型、あるいは、アーカイブな大きなバンクとの連携、その見方に関しての御質問ございますか。
【狩野委員】
品質のお話が1ポツでも出てまいりました。これについては、どのような保管状況を経ると、どのような試料状態に至り、使い勝手がどうである、というような既存知見が論文でも幾つか出てきていると思われます。けれども、これをまとめた形で簡単に見通せる状況には今は恐らくなっていなくて、各研究者あるいは利用者が全部自分で調べて確認している状況だと思います。これを、誰がやるかという問題は次の議論として、もしあったらいいなと思うものとしては、例えばワンストップサービスかもしれませんが、そういう場に「どのような保管状況であれば、どのような目的に使えるという既存知見がこのようにあります」ということが、もし情報の集積としてあると、大変良いとのではないかと思っております。
【中釜主査】
その点について、山本先生、集める側として、試料等の品質管理の現状に関して何か。
【山本委員】
品質管理は非常に大切です。一番大切なのは、ログがちゃんと付いているということだと思います。クリニカルバイオバンクの場合は病院で試料を取得しますので、比較的ログを付けやすいと思うのですが、まず、ログが必ず付いていること、それから、室温に置く時間をもう本当にできる限り少なくすること、さらには、なるべく機械管理をし、コンピュータ管理をして、情報を電子化して、保冷庫に秩序立った形で納めていくことが一番サンプルにとってはいいのではないかと思います。
バイオバンクの自動化というのは大分トレンドになってきて、小ぶりのものから大ぶりのものまでできるようになっていると思います。そこに心を配っていくことが必要で、先ほどバイオバンクと申し上げたのは、先生が今お話になったように、品質管理という意味でのバンクということもあるし、それから、二次利用を可能にするICをもらって納めていくという意味でのバンクもあります。そういう形で、臨床の現場に密着したクリニカルバイオバンクが幾つもできて、それらのネットワークができていくと、日本の臨床研究の大きなドライビングフォースになるのではないのかと思います。
【中釜主査】
ありがとうございます。
その際に、品質保証をされたバンクに関しては、どのようにして手順を標準化して集めていくのかというところなのですが、その辺り、例えばAMEDのバイオバンク事業の方で、どういうコンセプトで今後その点について臨まれるか、何かありましたら、お願いいたします。
【加藤基盤研究事業部長】
現状では、昨年の春の調整費でしたが、ISOの動きもあるので、これまでバンク間で比較的情報共有が薄かった品質研究の部分を、三者で一緒になって、これも高坂先生に主査をやっていただいているのですが、一つの報告書を今取りまとめています。ただ、これは飽くまでも一つの考え方で、それを近々中に発信する予定です。
大事なことは、正に今、狩野先生がおっしゃったように、こういったものをきちんと研究して、逆にそこの部分も特許や論文化する可能性があると見ています。そこは、AMEDの支援機能の中で大きなネットワークを作っていきたいと思っています。
先ほど、農水の人と申し上げたのは、冷凍保存技術についてだったのですが、いろいろなところに広がる可能性があります。そういうものをリバーストラスレーションで、そういう領域が必要かもしれないといった考えを、いろいろな方々と共有していきながらやっていけないかなと思っています。
もう一方、少し私が知っている話で申し上げますと、輸送技術というのも結構重要でして、品質を保ちながら輸送するといったときに、結構民間企業が特許を取っている状況が、今、出てきています。そう考えると、いずれ近いうちに、民間との関係というのもいろいろ考えていかなければならないと思っています。
【中釜主査】
非常に重要な御指摘だと思います。標準化に関して、全てのバンクを統括的に行うのは難しいかもしれませんが、非常に高いクオリティーのものに関してどうやって全体をグリップしてやるのか。
それから、最後に御指摘された輸送や冷凍の方法については、以前は、日本はある程度技術的に強かった部分だと思いますが、最近は、他国がなかなか頑張っているという話も聞くので、国のインフラとしてそういうところをどうするかということも戦略的に必要なのかなと思いました。
高坂先生。
【高坂委員】
今の加藤部長の話を少し補足させていただきますと、クリニカルバイオバンクをネットワーク化するという山本先生のお話がありましたが、これも一つの流れとしては非常に大事なのですが、やはり先ほどの小さな研究室がそれぞれ抱えているという、少し大型なクリニカルバイオバンクもなきにしもあらずです。
したがって、そこで集めている品質がどうなっているかとか、どういう目的でその方が集めているかと、いろいろなバイオバンク、クリニカルバイオバンクによって非常に温度差が大きいところを、どう標準化していくかということはやはりかなり大きな問題になろうかと思います。
もう一つは、そういったことがあるので、標準化ということを考えると、ワンストップサービスを含めて、まず、3大バンクの辺りからきちんと横並びにして標準化していってはどうかと。それを均てん化して、各クリニカルバイオバンク、大小問わず、そういったものに広げていくのがステップとしては楽なのではないかという気がします。
いずれ、今幾つかあるクリニカルバイオバンク、プラス、もっと埋もれている、各大学に埋もれている小さな研究室の希少なサンプル等も統合していくということになろうかと思いますので、かなり我々は汗をかかないと、なかなか難しい問題が多々あるかなという気がしています。
それから、もう一点は、先ほども御発言がありましたが、生体試料を取り扱うときに、指針的にまだ実は少し不備があるというのを私も感じています。
ヒューマンサイエンス振興財団という財団があって、これは製薬協も関係していらっしゃいます。その財団が、ヒトの組織、肝臓のような組織を集めて企業に出していくという、そういったバンクを一部持っていました。やはりなかなか集めづらい試料なので、今は本当に実際に動いているのかどうか分からないのですが、それは一方において、特にリンパ芽球にしていくとか、そういった意味では、非常に企業のニーズが高い分野です。
なので、そこは生体から取るということ、プラス、言っていいのかわかりませんが、死体ですよね。死体由来の組織をどう我々はハンドルするかということも、そろそろ真剣に議論を始めないと、法的にも非常に難しい、特に死体解剖保存法との関係があり、いろいろ難しい面があるので、いずれで結構だと思いますが、バイオバンクの充実ということをにらむと、これも少し考えていかなければならないという気がしています。
【中釜主査】
春日先生。
【春日委員】
山本先生のおっしゃっていることの方向性はそのとおりで、そういう意味で、山本先生のところにオールジャパンの代表みたいな形で、まず先頭を走っていただいているわけですよね。だけど、いろいろな大学でやっていらっしゃるクリニカルバイオバンクとはやはり大分まだ差があると思います。
先ほどお話も出ましたけれども、恐らく、希少な疾患で症例数が少なくなればなるほど、集める人はもう一生懸命その患者さんを説得してようやく集めたサンプルで、どちらかというと自分で使おうと思っているので、山本先生のおっしゃっていることは理想なのだけど、そこに近付けるためには、高坂先生がおっしゃったように、まだかなり時間が掛かって、いろいろな努力をしないと、なかなかそこまで行かないのかなと思います。
全国で、均てん化していくというのは大分これから時間が掛かるのではないかと思います。
【中釜主査】
ありがとうございます。正にそのとおりかなと思います。同時に、希少な疾患でも、その部分を本質的に解決しようとすると、ある程度の中規模のネットワーク化というのはどうしても必要です。最終的には研究者側にもインセンティブとして返ってくるという文化、そういう文化をどうやって醸成していくかというところも求められるかなと思うので、そういうところも併せてですが。
今、御質問に出ていました中小規模を含めたバンクの一元的な保管、試料管理、あるいは、それに対する横断的な検索、利活用できるような環境整備ということに関して、ユーザー側の御意見として、こういうものがあると、こういうふうにするといいのかなというものがもしありましたら、御発言いただけますか。赤塚委員、よろしいですか。
【赤塚委員】
先ほども述べさせてもらいましたけれども、やっぱり一極にするのかどうか、先ほどの輸送の話もありますので、検討すればいいとは思うのですが、どういう情報であるとか、どういう生体試料がどういう先生のところにあるのかというのが分かるというのは、やはり一番分かりやすいところかと思っております。
【中釜主査】
では、内山委員。
【内山委員】
私も赤塚委員と同じ意見ですが、先ほど、いわゆるニーズ対応型のお話で、これは我々にとっても将来を含め、非常にバンクの利用における新しい可能性を秘めたものではあります。現在我々が新しい診断マーカーを開発する際に実施する臨床性能試験は専ら医療機関等と共同研究契約を締結して、診断目的の患者さんから、我々の研究のために余分に採血をしてくださいという同意を得て行うのが一般的な形です。したがって、これまでは、先ほど先生方がおっしゃっていた残余検体でそういうことが行われていたのですが、やはり倫理的ハードルが厳しくなっている現在は、各企業、可能な限り、患者さんの同意を得て、生体試料を入手していると思います。
しかし、実際にバンクを利用することで、今までプロスペクティブでしか考えていなかった臨床性能試験も、実は質の高いバンクの検体をレトロスペクティブにできる可能性もあるのではないかと。そうなれば、患者さんにとっては余分な試料を取るという侵襲性的な負担、バンク利用における最終のステークホルダーである患者からしてみれば、侵襲性的な負担がなく新たな診断薬の開発をするという展開も、バンク利用における新たな可能性として考えてもいいのかなと思います。
そのためにも、やはりその情報等の利用、バンク間の横断的なネットワーク、バンク試料の品質についても、試料の輸送において、例えば、条件的に長時間の輸送が安定性において難しい検体はクリニカルバンクのように採取後すぐ保管できる検体があればいいですし、また、希少疾患の検体となると、入手が難しいので、例えばナショナルセンターバンクであるとかバイオバンク・ジャパンのこれまでのノウハウを生かして提携する医療機関から広く短時間に集めるというやり方というような、いろいろな可能性をやはり考えなければならないと思っております。
【中釜主査】
ありがとうございました。ヒストリカルなリファレンスとしての重要性というところでも十分にあるのかなという感じがいたしました。
ほかに御質問、御意見ございますか。情報の見える化というのは非常に重要で、確かにどこに何があるのかというところを共有することは、ユーザー側、あるいは、構築する側にとっても、逆にユーザーになり得るわけですので、重要だと思いました。そういうときに、情報提供する研究者、構築側のインセンティブをどう保証するかというところがやはりモチベーションとしては重要かなと思いますので、そういうところも考えていく必要があるかと思います。
ほかに。
【山田委員】
1点だけ、よろしいですか。
【中釜主査】
お願いいたします。
【山田委員】
標準化して統一してという方向で進むのだと思いますが、よくあるのは、統一していくと、全てのリクワイアメントの一番高いところにそろっていくというのがあって、そうすると本末転倒になります。今回、大きいところがまとまって、それで敷居が上がったりするくらいならば、中小のところがたくさんあって比較的敷居が低い方がまだ有り難いというような、そういう事態にはならないで、目標は使うことなので、その点だけは頑張って進めていっていただきたいと思います。
【高坂委員】
よろしいですか。
【中釜主査】
はい。
【高坂委員】
そういう意味でも、さっき加藤部長がおっしゃったISOの動きが、間もなく結論が出ていくのではないかと思います。場合によってはアクレディテーションという、認定制も導入されてきて、ここはしっかりウォッチしながら、今先生がおっしゃったように、レベルが非常に高いものを作られたら、国内がかなり混乱してしまうので、そういった不利にならないようなことを今やっていただいているのだろうと思います。
【中釜主査】
ありがとうございます。
そのほか、この2ポツ目の論点について、追加の御発言ございますでしょうか。よろしいですか。
あと、疾患ニーズ対応型の場合は、疾患レジストリというところとも関連すると思うので、その辺りもきちんと連携を取りながら進めていくというところが重要だと思います。
ほか、よろしいでしょうか。また、もし御意見ありましたら、後ほどお伺いすることにして、3つ目のポイントに移らせていただきます。
3つ目は、バイオバンク・ジャパンの有効活用の方策ということですが、この点について、御意見、御質問ございましたら、お願いいたします。では、冒頭、事務局より御説明がありましたけど、追加の参考資料について、簡単に御説明いただけますか。
【野田ゲノム研究企画調整官】
参考資料としまして、BBJより新しい資料をお配りしております。
4ページ目が今回新しく提供されたデータです。横軸が臨床情報のカテゴリーで、その横軸に書いてある数字、47や1というものは、そのカテゴリーに含まれている臨床情報の項目数になっています。縦軸が提供回数となっておりますので、カテゴリーごとにどのような臨床情報が何回提供されたのかが分かるグラフとなっておりまして、臨床情報のうち初回に取ったデータが青、追跡調査等によって経年で取ったデータが赤で示されております。
全項目数が1万3,000項目ございますけれども、そのうち提供した項目数は1,261項目であり、その総件数が3,888件であったというデータとなっております。
簡単ですが、以上でございます。
【中釜主査】
ありがとうございます。
参考資料として提示されている資料の4ページ目の、臨床情報の提供実績に関する説明でした。この点も踏まえながら、御意見ございましたら、お願いいたします。
【狩野委員】
よろしいですか。
【中釜主査】
狩野先生、お願いいたします。
【狩野委員】
一般に評価ということになりますと、「良くなかった」というような話がたくさん起き得る場所なので、申し上げようも難しいのですけれども、評価というのは、私が思いますに、価値観と対応しておりますので、どのような価値観に対して、これが「良かった」のか「悪かった」のかということと、それから、これが「走り始めたときの価値観」と「今の価値観」が違うのであれば、今の価値観だけで判断しても、本当は評価という意味ではいけないのだろうとまずは思います。
そうしますと、これが走り始めたときにどのような価値観があって、それに対して、このバイオバンク・ジャパンがどれぐらいにお応えになったのかというのが一つの観点ですし、それから、これからの価値観がどこに置かれるかによって、こういう形の活動が継続されるのがよいのか、あるいは、何か方向性が変わったらいいのかということになるかと思います。
そういう意味では、この活用という観点から見て、もし例えば多いとか少ないとかという話があったときに、それを今後どのようにできるかが決まってくると思いますが、ここは何か共通した価値観が今あるのでしょうか。それによって、このBBJが今どうなっているかということをここで議論する対象が変わってくるのかと思う次第です。
【中釜主査】
この点については誰が答えたらよろしいですか。
【野田ゲノム研究企画調整官】
事務局からお答えします。
このバイオバンク・ジャパンが開始された当初は、恐らくバンクをどんどん利活用していくという方向性がそれほどなかった時代であったとは思います。ただ、ゲノム医療実現推進協議会の中間とりまとめで、「貯めるだけでなく、活用されるバンク」が国の方針として示され、そこからは明確に、使われるバンクへという方向に3大バンク中心にかじを切っていったということもございます。
また、BBJに関しては、第3期が始まるときの在り方検討会の報告書の中でも、やはり利活用を促進していくという方向性は出されておりますので、そういった方向性、そういった価値観の中で、第3期が運用されてきたものと御理解いただければと思います。今後も利活用を進めていく方針は、他のバンクと同様だということで御理解いただければと思います。
【狩野委員】
ありがとうございます。
【中釜主査】
ありがとうございます。
4ページの資料を見ますと、基本的な情報に関しては、初回データを含めて、経年データに関する情報の提供実績はあるかと思いますが、それ以外のものに関して言うと、初回データへのアクセスというのはある程度あるということです。このデータを改めてユーザーから見たときに、こういうところの改善点、あるいは、もしあると付加的によいのではないかという御意見がもしありましたら、頂けると。では、赤塚委員。
【赤塚委員】
恐らくそこを業界としてまとめないといけないというのが、最初の方のコメントだったと思いますので、そこは感じております。
それで、これを見ていただくと、圧倒的に多い3つ、真ん中より若干左の3つというのが、やはり既往歴であるとか家族歴とか現在の処方というところが、圧倒的に欲しいと、提供されたということで、これに関しては、恐らく情報としてないと解析できないのだと思います。
というのも、先ほどコメントいただいたように、時代というか年代も違いますし、そうすると、使われているお薬も違うので、例えば昔に使われたお薬と比較するということはしないことも多いですし、そうすると、どういうお薬を使われた生体試料なのかということで、比較したいものというのをやはり選んでいくことにもなるかと思います。今の処方であるとか、今どういう病気に罹患(りかん)されているかというような情報的というのはないと、その生体試料を解析あるいは評価していくときに、なかなか難しいのではないかというのは、業界ではみんな言っているところなので、それはまさしく反映されているのだなと思っております。
左側の方の基本情報というところをどこまで認めるか、こういうところを少し整理していかないといけないなというのが一つです。
これを見ますと、やはりがんのところが多いですね。提供されているのが多いということで、これは時代なのかもしれないのですけど、今はゲノムの解析も恐らく進んでいることもあり、こういうところが多くなっているのだろうと思います。
右側の疾患特異的なところには、全体でまとめると個社によって違いが出てきてしまうのではないかと予想はしていますので、我々はどちらかというと、真ん中から左側のところの基本情報、やはり無駄にならないような情報、情報はたくさんあってもかまわないですけど、こういう情報があるのか、ないのかということだけが分かればいいというのをまとめていく必要があるのかなと思っております。
【中釜主査】
ありがとうございました。
【山田委員】
よろしいですか。
【中釜主査】
山田委員、お願いします。
【山田委員】
私はバイオバンク・ジャパンの臨床情報を提供してもらう側になったことがあります。それから、バイオバンク・ジャパンの内部で臨床情報を提供する側になったこともあります。それから、バイオバンク・ジャパンの年度、年度でこういうタイプの会がありましたけど、この委員を務めたこともありますので、十何年にもなりますけれども、バイオバンク・ジャパンの臨床情報の提供について、ちょっとだけ言わせていただきたいと思います。
資料1にあるように、使い方によっては有用な情報がたまっていると思います。ですけれども、残念ながら、当初余り積極的に情報を出すという形で整備をされなかったこともあって、情報の提供に非常に人的コストが掛かる形で出来上がってしまったと私は認識しています。
その後、年度が替わったときや5年の節目などに情報公開しろという形の勧告が出るものですから、頑張られたとは思うのですが、限られた予算で抜本的な改革をしないで、頑張るぞという感じの頑張り方をされていたと私は認識していて、頑張ってはいらっしゃると委員会では納得したのですが、やはりこの先、情報の提供を本当に積極的にするのであれば、情報の出し方について手術が要るのではないかという印象を持っています。
ただし、今どういう形で情報の提供をしているかの情報提供がここではないので、もしかしたら、すばらしく提供できるようになっているのかもしれませんが、私が過去のいろいろなところで得た情報では、情報を積極的に出すには何かしらの方策を立てないと難しいのではないかなと思います。
【内山委員】
一つよろしいですか。
【中釜主査】
内山委員、お願いします。
【内山委員】
このバイオバンク・ジャパンが出している資料を見る限りでは、体外診断薬業界でいう後発品の申請に対応するには十分の情報だと思います。先ほど山田先生がおっしゃったように、これをどういう形で実際に出すかという検討課題はありますが、出していただく情報としては、後発品としては十分だと思います。
ただ、逆に今度、バイオバンク・ジャパンと同じレベルで、例えばクリニカルバイオバンクその他のバンクも同じレベルで情報提供が可能かどうかという問題があるかなと思いますが、ベースとしては、このぐらいの情報があれば十分我々が利用可能な情報かなと思います。
【中釜主査】
ありがとうございました。
それに関連して、この情報提供の仕組みとして、今、山田委員から御質問がありましたように、どういう改善、どういう取組になって現状に至っているのかということについて、簡単でいいので、もし追加で御発言があれば、お願いいたします。
【野田ゲノム研究企画調整官】
今、山田委員からも御発言がありましたように、やはり当初は提供を想定されて作られたシステムではなかったため、今でも結構時間が掛かっているという状況であると聞いております。プログラムを組んで検索をして、臨床情報の抽出をして提供するというようなことが必要だと聞いておりますので、今、山田先生がおっしゃったとおり、今後、提供をどんどん進めていくのであれば、何かしらの方策は必要であろうという状況かと思います。
【中釜主査】
春日委員、お願いします。
【春日委員】
私もバイオバンク・ジャパンの、評価というか、そういう会に前に出させていただいたことがあるので、私の認識では、バイオバンク・ジャパンが始まった頃、疾患コホートとしてDNAを集められて、疾患コホートとしての特長をうまく生かされて、いろいろな疾患に掛かりやすい遺伝子タイプというか、疾患の発症と関係している遺伝子、あるいは、SNPを明らかにするという点で非常にすばらしい成果を上げられたと思います。
そのようなステップが済んだ後、そのときの委員会のお願いといいますか、アドバイスとしては、疾患コホートの意味というのは、一つはそういう疾患が、特にこの場合、ゲノムを持っている疾患コホートということですので、疾患がどういう遺伝素因で起こるかということを調べると同時に、いろいろな治療法に対する遺伝素因、ある意味ではファーマコジェネティクスみたいなものや、もっとより大きな意味で、ある治療法が疾患に効くか効かないかということの遺伝素因を調べるのがもう一つの疾患コホートの意義ではないかということで、そういうことを今後やられたらどうでしょうかという報告をした覚えがあります。
そのためには、経時的なサンプルの採取や、ある治療法に対するレスポンスがどうだったかというデータがないと、それの元になる遺伝素因というのは分からないわけです。そういうふうなアドバイスをしたことまでは覚えているんですが、その結果がどうなったかというのは、私は十分には認識していないので、その辺が分かればと思っています。
【中釜主査】
これは誰にお答えいただけるのでしょうか。
【野田ゲノム研究企画調整官】
分かる範囲でお答えいたします。
診療情報については毎年の追跡調査で蓄積してきているわけですが、理研を中心に行っている解析の方では、疾患と遺伝子タイプとの関係の解析を今行っているような状況ですので、この経年データ、追跡調査の結果を使った解析というところまではまだ実施されていないと承知しております。
【春日委員】
今、私がお話ししたような情報があれば、非常に有用だろうと思います。それぞれの疾患について、そのような情報が取れている人が、例えば肺がんの方には何人ぐらいいるとか、そういうデータがあるのかどうかというのは、すぐには出ませんかね。
【野田ゲノム研究企画調整官】
具体的な数字は今すぐ出ないのですが、毎年、各医療機関でカルテ情報を集約するという作業、追跡調査をしておりますので、第1コホートに関しては、その追跡の情報は蓄積されてきています。当然、入力率に差がある等はありますので、その必要な情報がどの程度集まっているのかについては、個別に集計をしてみないとわかりませんが、相当数の臨床情報がカルテから転記されて集約されております。
ただ、その利用については、先ほど御説明した参考資料の4ページ目のような状況でして、経年のデータはまだ余り使われていないという状況になっております。
【中釜主査】
ありがとうございます。
【高坂委員】
よろしいですか。
【中釜主査】
高坂委員、お願いします。
【高坂委員】
このBBJは、これまで、そこに書いてありますように、GWAS解析を中心に非常にいい仕事をしてきたと。当初は、です。これからどうあるべきかを考えたときに、第1回の会議のときにも申し上げたのですが、やはりバイオバンクはゲノム医療の目的だけではないということになると思います。オミックスを中心とした総合的な解析に資するような試料を、3大バンクを中心に持つ必要があるということが第1点です。
そういう意味では、これまでの流れとしては、DNAについては非常に優秀な試料を持っておられるということで、それなりの貢献をしてきたと思うのですが、果たしてそれ以外のサンプル、それ以外の目的ではどうかというところは検証が必要なのだろうと思います。
それから、もう一つは、ネットワークという観点、先ほどおっしゃったと思うのですが、やはりBBJというのは、断定的な言い方をして申し訳ないですが、当初は生活習慣病的なところをきちんとやりましょうと、メディカル・メガバンクの方は正常ですかね、3世代の正常人コホート、それから、ナショセンの方は疾患コホートというような流れで、一応役割分担はできていたということになります。
ただ、先ほどのこの情報の提供実績を見てみると、先ほどおっしゃったように、がんがかなり出てきているということもあるので、これから今後を考えたときには、がんコンソーシアムも動いてきておりますし、そことの関連性をどうデマケを付けていくのかなという、役割分担という意味で、ネットワークという意味で、そういったことも念頭に置きながら、今後の組織形態を考えていかなければいけないと思います。
いずれにしても、このDNAの質というのはかなり担保されているので、広く使われたかどうかは別として、かなり論文的には非常にいいものが出てきているということは評価すべきだろうと思います。
【中釜主査】
南学委員、お願いします。
【南学委員】
我々から見ると、この疾患コホートというものはとても大事で、一般住民コホートも大事ですけれども、何かの疾患でいろんなものを見たいと思った場合、先ほど春日先生がおっしゃったように、薬の反応性ですとか、そういうものを見るためには、その疾患におけるイベントの発生率が圧倒的に重要で、一般住民コホートだと、このイベントの発生は非常に少ないので、この疾患コホートをきちんとやるということは非常に大事だと思っています。
ただ、生活習慣病だと、やはりどうしてもイベントが起こるまでに時間が掛かるので、かなり長いフォローアップをした上でないと、恐らくそういった解析ができないということはあるので、継続性が非常に大事なのではないかと思っているのが1点目です。
それから、2点目に、生存調査を継続することが必要かというような御指摘があって、それは大事なのですが、死亡の原因まできちんとフォローしないと、交通事故で亡くなりましたというように言われても、恐らく何の意味もありません。だからといって、やはり数で勝負すると、さっき先生がおっしゃったように、中国などには絶対かないません。ですから、質の高いものできちんとやることが大事だと思うので、その辺りを是非、情報公開をしていただきながら、より積極的に利活用ができるような体制を取っていっていただきたいと思っています。
【中釜主査】
ありがとうございました。
今、南学委員が御指摘されたように、BBJが最初に疾患コホートとして立ち上がった。それが果たしてきた役割は非常に大きいかと思いますが、時代を経るたびに、バンクへの要請、要望内容も変わってきている。それに広く応えていく、その成果がどうであったかということをもう少し見える化して、みんなで考えていく必要があるのかなと思います。
それから、高坂委員が指摘された、NCBNが実施しているがんの取組とこのBBJの事業との差別化、ジャームラインとソマティックの違い、それから、がんをとってみても、その治療効果を見るのに、がんに対する効果、プラス、やはり個体側の薬剤に対する反応性であるとか、免疫反応の起こしやすさというところはどうしても必要だという時代に入ってきています。そういう意味でのバンク間の複合的な利活用の在り方について、みんなで智恵を絞る必要があるのかなと、聞いていて思いました。
これまでの成果が十分に見える化できていなかった、余り情報共有できてなかったところはあるかと思いますが、そこは是非進めていただきたいというところと、バンクの利活用も含めた、今後の方向性について、何か追加で御発言、御意見ございますでしょうか。よろしいですか。
あとは、高坂委員が御指摘された、DNAのようなかなり安定的な試料に関しては恐らく問題ないでしょうけど、やや不安定性を伴うような試料の利活用に関して、どのように考えていくのか。この点について、何か御発言、御意見ございますか。ユーザー側から、あるいは、アカデミア側から、前回御発言いただいたと思いますが。
まず、内山委員の方から、何か。
【内山委員】
確かに我々、診療薬業界の場合は、目的とする試料が血清であるとか血しょうというDNAよりもかなり安定性には差がある試料を集めますので、やはり安定性を確認しなければいけないというところです。
その際に、一律、例えばマイナス70度でも保管期間2年以内のものしか使わないとかという均一の利用条件で整理していいのかというと難しいところがありますので、やはり先ほど最初に申し上げましたように、我々はまず品質に関する情報、例えば保管期間であるとか、凍結融解の有無であるとか、あるいは、採血してから保管するまでの時間、特にバイオバンク・ジャパンの場合は多くの医療機関から試料が集まってくるので、やはり輸送の時間とかというのは非常に気になるところなので、そういった情報を公開していただく必要があると思います。
あるいは、BBJと、例えばほかのクリニカルバイオバンク、どこか一定のところで試料の比較をしてみるという使い方で、その辺りを確認する必要があるかなと思います。
【中釜主査】
ありがとうございました。
ほかのクリニカルバイオバンクとの連携という意味では、このバイオバンク・ジャパンの試料の管理システムは非常に高度なシステムを持っておられると思います。質の高いクリニカルバンクを共有して保管するとか、そういうところでのエクスパンダビリティというか、そういうところについても今後議論が必要だと思います。
ほか、アカデミアの方から何か追加で。南学先生。
【南学委員】
ありがとうございます。やはり測定するものによって全然違うので、例えば、ホルモンのように朝と晩で違うものなら、幾ら一生懸命条件を良くしても、採血時間が書いてなければ何の意味もありません。ある程度の現実的な路線で、こういった条件でやりましたということで、それで使えるものであれば、きっとみんな使いたいだろうし、逆に、非常に特殊なものを測りたい人はやはりそれも直接やっていただくしかないので、現実的な路線で条件を開示していただければいいのではないかと思っています。
【中釜主査】
ありがとうございます。では、赤塚委員、お願いします。
【赤塚委員】
ありがとうございます。BBJが実施されたゲノム解析に関しては、すごい成果があると我々も思っておりまして、使えるゲノムというところで疾患との関連性というのが出てきているのだろうと思います。
先ほども少し言いましたが、サイエンスレベルが変わってきてしまって、次世代シークエンサーで全ゲノムをやったときに、出てくるものがすぐに標的分子に当たる時代でもなくなってきてしまっていると。そうすると、やはりいろいろコメントされた多層オミックス等々で複合的に解析することで、標的分子であったり、マーカーであったり、そういうところを見付けていくという、技術レベルが上がってきているところに使えるような生体試料であってほしいというのは、もちろん希望としてあります。
そういうふうなことを考えていくと、先ほど少し山田先生がおっしゃったのですけど、これからずっとためていくと、どんどん多くなっていって、10万から20万、100万となっていくわけですけど、その施設の設備の問題ももちろん今後出てくるかと思います。
一概に古いから駄目とか新しいからいいというわけではありませんが、どこかで何かそういうサイクルというか、生体試料の保管の仕方、どういう基準で、山田先生は先ほど何年かとおっしゃいましたけれども、そこまでびしっとやるかどうかはともかくとして、何か考えないと、保管施設だらけになってしまうのではないかというのが、企業側としては懸念します。
企業の中でも、やはり、実験室に冷凍庫ばかりあるのです。研究している中で、昔の試料であったり、誰が管理していたか分からない試料であったり、どうしても研究の中で管理しなければならないものは管理しているのですが、そうでない試料などもどうしても出てきてしまうので、これが日本の国で起こらないようになればいいかなと思った次第でございます。
【中釜主査】
ありがとうございました。重要な御指摘でございます。
私の方から山田先生に質問ですが、BBJが行ってきたGWASは非常に大きな成果を上げて、新しいバイオロジーというかモレキュラーのシステムを提唱できたと思います。一方で、技術的に、シングルな遺伝子ローカスと表現型との相関関係が導き出されていて、それ自身ではクリニカルに非常にインパクトのあるものはそう多くないということなのですが、恐らく遺伝子-遺伝子間の相互作用と、それに対する環境からのインプットの関係で、新しいエビデンスを作れる基盤があるのかなと思います。そうなってくると、正にAIの領域かなという気もします。
そういう意味での今後の可能性とか、この点における今後更に必要な追跡情報とか、生存に関する情報というのは、どの程度そういった解析には寄与するのか、その点について御意見ありますか。
【山田委員】
大変難しい質問です。まず、組合せですけれども、シングル・ヌクレオチド・バリアントの組合せで何かを言うというのは、もうここ10年くらい、非常に多くの解析系の人が何とか解けないかと思ってやってきて、余りいい手法がないなといって、組合せについては非常に困ったところでストップしています。それはゲノムの解析だけでいうと思うと、要は難しいところですね。
もう一つは、頻度の低いレアバリアントと言われるものが、次世代シークエンサーで解析すると出てきますけれども、このレアバリアントがまた難しくて、これだと思ったものが出たようだけれども、やはりこのレアバリアントが非常に数多くありますので、これもなかなか結論が導けなくて、これも10年来いい方策がないということで、基本的にはゲノムの情報だけで何かゲノムのインパクトを評価するというのは、少なくとも今のスタディ規模、10万人程度のスタディ規模ですと、ちょっと難しいです。
では、増やせばいいのかというと、次に増やす規模は100万ではなくて、1,000万とか億の単位ならもしかしたら何かわかるかもしれないという、そのくらい、組合せというのは難しいところに来ています。
それでは、ゲノムは使えないのかといえば、もちろんそんなことはなくて、トランスクリプトーム、プロテオーム、メタボロームなどの、ある意味では傍証といいますか、そういったものと組み合わせることで、併せ技でこのように効いているのだろうなという知を引き出していければ、人工知能を含めて、解析の価値があったかなというところなので、どちらかというと、ゲノム一本槍(やり)ではなくて、複数のオミックスを横断的に使って、何とか我々が理解できるタイプの臨床知といいますか、病気の知を引き出そうとしているところです。
そういう意味では、この情報はオープンにしていただいて、なるべくいろいろなタイプの人が情報にアクセスして、あれやこれやというのを試せる環境を作っていただくのがいいのではないでしょうか。それは、臨床の情報も含めて、全ての情報について、そうしていただければいいのではないかと思います。
【中釜主査】
追加の質問ですが、そのときに、ゲノム以外に、例えばエピゲノム情報、あるいは、トランスクリプトーム情報に加えて、環境のインプットの程度というのが分かると、情報としてはどのぐらいあると、ある程度次のステップに行けるのでしょうか。
【山田委員】
そうですね。環境の情報ももちろんきれいに取れればいいですけれども、環境の情報はなかなかきれいに取れませんので、環境の情報を取るのであれば、比較的客観的な取り方をした方がいいです。アンケートで聞きましたというものを集めても、恐らく余りいいことはないと思います。
エピゲノム、トランスクリプトーム、プロテオームに関しては、1点取っても使いものにならないので、時系列で取ります、体のあっちとこっちとこっちで取りますという、そういう時空間的に高次元な情報を取っていくことで、ようやく何かできるのではないか、そういう感じだと思います。
【中釜主査】
分かりました。そうすると、どういう提案をするか、それに伴い、バンク側はどういう対応が可能かという議論ですね。この点は非常に前向きなポジィティブな議論かなと思います。
【山田委員】
では、もう一点だけ。
情報を処理するのは大変なのですが、逆に言うと、ある人の全ての時刻の全ての臓器でデータがそろっていなければ解析ができないかというと、それはベストではありますが、そうでなくても、これとこれは同じ人から同じときに取りました、それを全部組み合わせて眺め渡すとどうなるかというようなところを、人工知能とかでやっている、私もやっているわけですけれども、そういう意味では、単体で取るのではなくて、少なくとも二つのオミックスについて、きちんと整合性を取りながら解析できる形で情報をためていくのがいいと思います。
【中釜主査】
ありがとうございます。
ほかに、このバイオバンク・ジャパンの有効活用の方策、方向性について、何か御質問ございますでしょうか。
【狩野委員】
よろしいですか。
【中釜主査】
狩野委員。
【狩野委員】
しばらく前に、JSTのバイオサイエンスデータベースセンターの役割を頂いていたときに、そこで扱っておられる内容に、より臨床的な情報を加えられないかとか、増やせないかとか、あるいは、センターとして活用の程度が増やせないかと、センターとして、という議論があったと認識しております。直近ではこの役割を私は既にしておりませんので確たる見解ではありませんけれども、もしそれの枠組みと、例えばこういう枠組みの情報の利活用がうまくつながってくるようですと、なかなか面白い展開があるかなと思っております。例えば、データベース研究をやっておられる方々のほかの分野に対する方法を、こちらの公開されたデータがあったとして、そちらに応用したらどんな知見が出るかとか、そういう活用の仕方がもしかするとあるかなということを少し思い付きましたので、申し上げておきます。
【中釜主査】
ありがとうございました。
そのほか、追加で御意見、御発言、ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
今日議題としてあげました3つの論点につきまして、委員の先生方から様々な御意見を頂きました。全体の方向性として、議論の方向を集約できたか、あるいは、新しい論点に具体的に落とし込めたかというのは、今の段階では私は整理できないのですが、それは事務局の方にお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
ほかに、よろしいですかね。それでは、ほかに御意見がなければ、本日はこの辺りでそろそろお時間ですので、会議を切りたいと思います。
本日の議論を踏まえまして、資料1をベースに、本検討会の取りまとめ案を事務局の方で作成していただいて、次回取りまとめを行いたいと思います。
最後に、事務局から連絡事項等ありましたら、お願いいたします。
【野田ゲノム研究企画調整官】
事務局より、3点御連絡いたします。
まず、検討会の次回のスケジュールでございますけれども、6月19日月曜日、10時から12時に第4回を開催させていただきます。今、主査からございましたとおり、この検討会の取りまとめを行う予定でございますので、よろしくお願いいたします。
それから、本日の議事録でございますが、事務局にて案を作成して、委員の皆様にお諮りし、主査に御確認いただいた後、ホームページにて公開いたします。
次に、本日の配付資料でございますが、机上に置いていただければ、後日、事務局から郵送いたします。また、緑の紙ファイルにとじております参考資料につきましては、次回も事務局で机上に用意させていただきます。
以上でございます。
【中釜主査】
先ほど申し忘れましたけど、本日御欠席の増井委員と玉腰委員からも、資料2として御意見が出されていますが、本日の議論の中で、ある程度網羅できたかなと思います。もしこぼしている部分がありましたら、それも併せて御意見いただければと思います。
それでは、本日は以上です。お忙しい中、どうもありがとうございました。
―― 了 ――
研究振興局ライフサイエンス課