長崎大学高度安全実験施設に係る監理委員会(第4回) 議事録

1.日時

平成29年12月5日(水曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 3F1特別会議室(3階)

3.出席者

委員

(委員)笹川主査、春日委員、加藤委員、河本委員、平川委員、堀委員(欠席:筧委員、小松原委員、櫻井委員)
(説明者)長崎大学 調感染症共同研究拠点 副拠点長、二村副学長(BSL4施設設置計画担当)、安田 長崎大学感染症共同研究拠点高度安全実験(BSL4)施設設置準備室長、堤施設部長、中嶋 長崎大学感染症共同研究拠点施設・安全管理部門長

文部科学省

関研究振興局長、高谷研究振興戦略官、藤井大臣官房文教施設企画部計画課長、西井学術機関課長、高城先端医科学研究企画官、田川専門官

オブザーバー

安居内閣官房国際感染症対策調整室参事官、門田内閣官房健康・医療戦略室参事官、磯谷厚生労働省結核感染症課情報管理官、飯島内閣官房副長官補(事態対処・危機管理担当)付参事官補佐、森川国立感染症研究所獣医科学部長

4.議事録

資料2-1から資料4について長崎大学の説明後、以下の議論があった。

【笹川主査】 今までの御説明の中で、何かございますでしょうか。
【堀委員】  順天堂の堀でございます。詳細な説明をありがとうございました。
 まず、資料3-2の7ページですが、各国のガイドライン及びリスクの評価に基づくBSL4施設設計の検討について、というものがございます。
 回避すべき重大な事象の中の4つ目、感染以外のBSL4実験室の利用者の健康被害というのがあります。、第2回目の会議において、メンタルケアのお話も少し出てきたかと思うのですが、それも含まれていると考えてよろしいでしょうか。
【長崎大学】 御指摘のとおりでございます。作業環境で言いますと、70デシベル程度の相当な音量になる陽圧防護服の中での作業や、トイレにも自由に行けないという話もございますけれども、3、4時間程度そういった環境で作業、実験をすることになります。空気等については温度管理と湿度管理がなされたものでございますけれども、手袋も3重でございますし、普通の環境ではないというところがございます。、限られた部屋、限られた空間の中での作業になってまいりますので、単に身体的なことではなくて、精神面でも相当きついだろうということを考慮の上でいろいろなシナリオを想定させていただきました。
【堀委員】  16ページ、17ページの事例で、17ページはあくまでも一例ということなのでございますが、当然16ページの過去に起きた事例に関しても含んで検討は行われていると理解してよろしいでしょうか。
【長崎大学】 御指摘の通りです。いろいろと調べれば調べるほど人にまつわる事故というのが起きる可能性があるということを我々も自覚をしているところでございます。特にこの1番目の針刺し事故というのは、BSL3、4実験室を問わず、あとは医療現場でも、起きているところです。
【堀委員】  一番起きますからね。
【長崎大学】 特に動物を用いた接種試験などでは、間違いが起きると大変なことになりますので、色々な訓練を行った上で、ある一定のレベルの人以上に限って使わせないとか、トレーニングのところから始めなくてはいけない対応かと考えております。
 それから、万が一刺してしまった場合、刺したかどうか分からない場合の報告というのも、海外のBSL4施設を使用した経験がある人たちからも話を聞く中で、非常に重要で、徹底していかなくてはいけないと考えております。
【堀委員】  それはシナリオの中に入れて想定されているということでよろしいですね。
【長崎大学】 はい。
【堀委員】  ありがとうございます。私からは以上でございます。
【笹川主査】 ありがとうございました。様々な事故というのは、BSL3実験室でも既に事例があると思いますので、その辺もうまく取り入れていかれると良いのではないかと思います。
【加藤委員】 封じ込めというのが階層的に行われると考えるのだったら、安全キャビネットの性能維持をどうするかという話が最も大事になると思うのですが、これは、建築をやっているから、安全キャビネットに関してはまだここには記載しなくても良いということなのですか。
【長崎大学】 安全キャビネットというのも、例えば、WHOのセーフティマニュアルの中でも重要な検証の機械ということで上げられております。通常定期的なメンテナンス、テストは、義務付けられてはいないのですけれども、しなくてはいけないものとして我々はガイドラインに位置付けていかなくてはいけないと考えております。
 それから、日々使う場合も、安定をした上で安全キャビネットを使えるような、使い方について規則を作った上で対応をしていきたいと考えております。
【加藤委員】 基本的な考え方ですが、封じ込めを多段階でやる際に、安全キャビネットで封じ込めが行われていて、それが漏えいして室内に漏れて、更にBSL4実験室からBSL3実験室に漏れたときに、一般的には、ワンオーダーずつ下がって汚染されていくと考えるので、BSL4実験室に危険物質が漏えいする前に安全キャビネット内でほとんどを回収するというのが危険物管理の一番であるため、これからもし住民説明に使われるのだったら、安全キャビネットで最大限の封じ込めが行われているということに関して検討をすることが必要になるのではないかなと思いました。
 それから、現時点では空気感染する病原体は扱わないということだと思いますが、病原性の物体が液中にあるのだったら、液中にあるものが、アトマイザーか何かで噴くとか、それとも燃焼系で蒸発させるとか、エアロゾルになるところはどこかということに着目すべきだと思います。それが全て安全キャビネットの中で行われているのかどうか。そのときに安全キャビネットが、負圧制御がきちんとされているのかどうかということが問題になるので、私だと、その液体で物が漏れるとかそういう話ではなくて、気密性を物すごく強調されるのだったら、どこでそのエアロゾルが発生して出ていくのか、そのソースをここの中に述べられないといけないと思います。
【長崎大学】 承りました。端的に申しまして、例えば、ごく少量のものでございますが、安全キャビネットの中で物質をこぼしてしまったときに、液体がこぼれてしまうと、そこでスピルオーバーをして、エアロゾルが発生することがございます。安全キャビネットを正しく使えば当然捕捉をされて、表に出てくることはないと考えられるところですが、安全キャビネットの使い方を誤っていたら、飛び散ったもの、それから非常に微細な粒子になったエアロゾルが出てしまう可能性はあろうかと思います。表に出てしまったものがずっと生きているかといえば、そうではありませんが、我々は、安全キャビネットを使う際には、基本のテクニックをしっかりと使っていくのが一番良い対策ではないかと考えております。
【加藤委員】 私が一番言いたいのは、落としてしまってエアロゾルが発生するという可能性は事故ですよね。そうではなくて、エアロゾルをアトマイザーで噴くというのだったらこれは常時ですよね。それが違うということを言っているのです。
【堀委員】  私は、微生物研究者であり、感染対策の専門家として申し上げますと、一般的に実験室内でエアロゾルが発生し得る手技というのは決まっております。それをしっかり明確に定義して、そのエアロゾル発生を起こし得る手技に関しては、安全キャビネットの中で行うというふうにしっかり定義付ける必要があるかと思います。その前には、必ず安全キャビネットが作動していることを確認した上で行うということを運用マニュアルの中に明記するということが大事かと思います。
 加藤先生が今御指摘されたのは、アトマイザーで噴くというような、エアロゾル化を人為的に行うということは、通常の実験室内では余り行わないというか、ほとんど考えられないと思います。ただ、ボルテックスをかけて、遠心器をかけて飛び散るとか、あとは電熱コイルの中に白金耳を突っ込んでそのときに出るとか、そういう可能性があるものは全て安全キャビネット内で行うという定義をしっかり守っていただくようにすれば、恐らくその懸念は解消されるかなと思います。
【加藤委員】 僕は逆に言うと、気密性が各国の基準も相当厳しいみたいですが、本当に要るのかということを実は疑っています。
【堀委員】  先生のおっしゃるとおりで、空気感染する病原体を扱うものでなければ、要らない部分もあるかと思いますが、安全と安心という言葉があると、安心のために用いることもあるというふうに御理解いただければよろしいかと思います。
【笹川主査】 ありがとうございました。
 これもBSL4実験室に限ったことではなくて、既にBSL3実験室で確立されている中で更に厳密にやろうというところかと思います。
【長崎大学】 先生おっしゃったことに加え、通常の実験では、ピペッティング操作とか、こぼしたとか、ボルテックスをかけた後、封を開けた際にエアロゾルが発生する可能性があります。また、感染動物から尿などで排出された際にエアロゾルが発生する可能性があります。この場合も安全キャビネットではないのですが、陰圧アイソレーターを使うということできちんと対応を検討しております。
【加藤委員】 そういうことをされておくと良いですね。
【笹川主査】 ありがとうございます。
【春日委員】 資料3-2の8ページにリストアップされている想定される自然災害等の起因事象なのですけれども、ここに火山の噴火による、特に火山灰で、それで給排気設備の異常が起こるということを1つ加えてはいかがかと思います。
【長崎大学】 ありがとうございます。長崎の土地における火山の影響を検討して、砂埃、異常気温、黄砂に加えて、火山灰も考えていこうかというところで、クライテリアとしては、粒子物質として考えさせていただきました。その対処としては、HEPAフィルターの吸入の前にプレフィルターを設置するなどがあろうかと考えています。
【春日委員】 それと、次に御説明いただく地域との共生にも関係するかもしれませんが、その前の7ページや、最後の17ページに上げていただいている、回避すべき重大事象やシナリオについて、専門家だからこそ頭に浮かぶ事象やシナリオというのはたくさんあると思うのですけれども、専門家だからこそ気が付かないようなこともあるかもしれないので、是非一般の方との話し合いの中で、一般の方からのアイデアに学ぶということも加えていただけたらと思います。
【長崎大学】 ありがとうございます。
【平川委員】 この手の施設のリスク評価に関して私は全く素人なので、素人っぽい質問かもしれないのですけれども、こういった原因事象、更に結果事象とか潜在的なことに関しての連鎖に関して、例えば、ある項目で起きた事象が別の事象、今別々に分けてあるわけですけれども、相互に関連し合うというような、フォルトツリー的な事象の発生ということもあり得ると思うのですけれども、そのあたりもこれは考慮されているのでしょうか。
【長崎大学】 ありがとうございます。複雑な好ましくない事象というのも、動線を作り、機械に支障があるという中で考えておりました。例えば、地震が起きて、施設関係者が大学へ出勤できないときに何かあったときどうするのだとか、そういった災害時の対応などはもっと詰めていかなくてはいけないのではないかなとは考えております。
【平川委員】 ありがとうございます。是非お願いいたします。
【笹川主査】 ありがとうございます。あとは、そうしますと大学の方から、地域における理解促進に向けた取組について説明をお願いいたします。

その後長崎大学から資料5について説明後、以下の議論があった。

【笹川主査】 ありがとうございました。
 これにつきまして、何か御説明あるいは補足等がございましたら承りたいと思いますが、感染研の森川先生、感染研の方の取組は私もよく存じ上げているのですが、何かそちらの方で少しこれを加えたらどうかということでもありますか。
【森川部長】 基本的に同じような感じだと思うのですけれども、市民公開講座の開催に当たっては、感染研の場合、市民からの要望も聞いた上で行うということで、例えば、冬になるとインフルエンザをやってほしいという話になるとインフルエンザをやるといった形を取っておりますので、そういう取組があると良いかと思います。
【笹川主査】 市民への貢献という意味では、あとは近辺の小学校もやられておられますね。
【森川部長】 そうですね、近隣の小学校からの要望に応じて感染研の専門の先生が派遣されて、授業を行っています。場合によっては保護者も参加する形で行っています。
【長崎大学】 学内の議論の中でも、PTAや小中学校に対して、そういうBSL4施設に限らず情報提供をするようなことをやったらどうかという話もありましたので、是非検討したいと思います。
【春日委員】 感染研では、疫学情報センター長が、毎月毎月メディアとの対話の機会を持たれるようにしていたと聞いております。もちろんセンター長だけではなくていろいろな方が協力されているのですけれども、継続的にメディアと顔を合わせるということは、両者の理解が進んでとても良い取組だと思います。
 また、サイトビジットをした後で事務局を通じてお尋ねしたことでもありますが、長崎大学は、直接このBSL4施設に関わっていらっしゃる方以外にも感染症の専門家がたくさんいらっしゃるので、全学を挙げて市民との交流というのは取組まれていると思うのですけれども、引き続きよろしくお願いしたいと思います。
【長崎大学】 学内もいろいろな意見を持っている人もおりますし、学生もおりますので、実はこの前、学長と私と安田先生で講義の空き時間に学生約110名と対話をする機会を設けました。その後、学長と私で、学生生協の学食で一緒に学生と飯を食いながらという会もやりました。学長はまたやろうと言われておりますので、やっていきたいと思います。
【笹川主査】 ありがとうございます。是非よろしくお願いいたします。
 あとは、関局長、何かお気付きの点がございましたら、この機会ですので御意見を頂ければ大変ありがたいと思いますけれども。
【関局長】  今日はどうもありがとうございました。
 大変詳細にわたって、また具体的に御意見を頂きましたので、これから長崎大学で更に実施設計を進めていく上で、大変重要なポイントの御指摘を頂いたのではないかと思っております。
 私の方から特にこと細かに申し上げることはないのですけれども、今、地域との関係のところがありましたけれども、実施設計やこれからのソフト面も含めて、一番の課題はいかに分かりやすくその取組をしっかり情報発信していくかということが大切かと思いますし、その前提として、当然今日の御議論を踏まえて中身をしっかり作っていくということがあるわけですので、更に私どもの方も大学と密接に連絡を取りながら進めていきたいと思っています。予算的にも来年度から施設の工事に入っていく本格的な実施という段階を迎えるということになりますので、更に気を引き締めて取組んでいく必要があろうかと思いますし、引き続き先生方にはいろいろと御指導、また御指摘を頂ければと思っております。よろしくお願いいたします。
【笹川主査】 ありがとうございます。
【笹川主査】 よろしいですか。ほかに御意見はございますでしょうか。もしなければ、これで本日の議題は以上でよろしいでしょうか。事務局から何かございますか。
【高城企画官】本日は精力的に御議論いただきまして、誠にありがとうございました。次回の監理委員会ですけれども、今、頂いた御意見を踏まえてこれから大学の方は実施設計に入られるということで、私ども文部科学省としては、大学との日常的なやり取りや、地域連絡協議会に参加し、情報を取りながらやっていきたいと思います。長崎大学における今後の取組、進捗を見ながら次回の日程については別途調整をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
 以上でございます。
【笹川主査】 貴重なお時間を頂きまして、どうも大変ありがとうございました。また次回、よろしくお願いいたします。

お問合せ先

文部科学省 研究振興局 研究振興戦略官付

(研究振興局 研究振興戦略官付)