長崎大学高度安全実験施設に係る監理委員会(第2回) 議事録

1.日時

平成29年5月26日(金曜日)15時00分~18時00分

2.場所

文部科学省 13F2会議室(13階)

3.出席者

委員

(委員)笹川主査、筧委員、春日委員、加藤委員、河本委員、小松原委員、櫻井委員、平川委員、堀委員
(説明者)長崎大学 調学長特別補佐、堤施設部長、安田熱帯医学研究所教授

文部科学省

関研究振興局長、板倉大臣官房審議官、高谷研究振興戦略官、藤井大臣官房文教施設企画部計画課長、小林先端医科学研究企画官、錦専門官、齋藤専門官

オブザーバー

原内閣官房副長官補(事態対処・危機管理担当)付参事官、門田内閣官房健康・医療戦略室参事官、川野内閣官房国際感染症対策調整室参事官、宮川厚生労働省結核感染症課感染症情報管理室長、森川国立感染症研究所獣医科学部長

4.議事録

【関局長】  研究振興局長の関でございます。委員の皆様方には、大変お忙しい中、第2回の監理委員会にお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。また、櫻井委員、平川委員におかれましては、今回からの御出席ということで、よろしくお願い申し上げます。
 前回も申し上げましたが、この監理委員会、昨年11月の国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議の決定に基づきまして、長崎大学におけるBSL4施設の整備に当たりまして、大学が実施する安全性確保と住民理解などに向けた取組について、第三者の立場からチェックするため設置しております。
 本日は、このたび長崎大学の方でBSL4施設整備計画の基本的な方針を整理した、基本構想の中間まとめを公表したということでございまして、その基本構想(中間まとめ)につきまして、この委員会で御議論いただきまして、そして、その内容について、7月末に取りまとめる予定のこの基本構想の最終案に可能な限り反映されるということで考えているところでございます。
 委員の皆様におかれましては、それぞれの専門的なお立場、見地から、忌憚のない御意見、御助言を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

その後、長崎大学から長崎大学の感染症研究拠点の中核となる高度安全実験(BSL4)施設の基本構想(中間まとめ)について、説明があり、以下の議論があった。

【笹川主査】  それでは、今回から出席の櫻井先生、平川先生、もし何かコメントございましたら。
【櫻井委員】  この中間まとめの文章を読ませていただいて、内容はまだ抽象的で、今後、これから詳細にしていくということが前提であるとして申し上げたいと思います。
 1つは、こういった施設における危機管理で何が大事かというと、法執行といいますか、作ったものがきちんとできるかというところが一番の肝ですけれども、そういう点で言うと、大学は一般論として、法制度上ガバナンスが効きにくい組織であると考えています。資料2-2の56ページ以降に長崎大学の管理運営体制が示されておりますが、こういった施設の管理体制を本当に効く形でどうやって作っていくのかということについては、この脆弱な部分であろうと考えておりますのでしっかりと、どうするのか検討することが必要です。場合によっては、法的な対応も必要かもわかりません。
 学長と言っても、最近少し立場が強化されておりますけれども、いわゆる一般の会社におけるガバナンスに比べると、弱い部分なので、そのあたりはどういうふうにお考えになっているのかが気になります。
 また、バイオセーフティオフィサーというのを作るということですが、これにつきましても、内容は資料2-2の56ページですが、今後、具体的に検討するということになっておりまして、実験計画について監査を行って、問題があれば、ある程度学長に対して独立した形で勧告をするということですが、これがどの程度効く仕組みなのかというのは、現時点で何とも言えません。独立しているからうまく動くということではなく、どういう権限を与えて、どういうふうに動かしていくのかというところがもう少し見えてこないといけないと思いますので、この辺はもう少し詳細な御説明をお伺いしたいと思いました。
 2点目は、ハード面です。建築物としての施設をどう造るかというところについては、これは質問も含めてで、基本的には現行法令の範囲内で、その基準で持っていかざるを得ないということになりますが、その基準は建築基準法のルールでもって作るということになっていくのでしょうか。特段のそれ以上の規制については、現行法上は必ずしも想定されていないという理解でよろしいでしょうか。
 それから、外国のガイドライン、外国の基準を参考にされるということですけど、人口密度は我が国はとても高く、施設が街中であるということからすると、それらの国とは想定する危険度が少し違う部分があるのではないかという感じもしております。資料として、外国のガイドラインがあれば、是非出していただけるといいのではないでしょうか。また、我が国の人口の動向、土地の利用状況、気象条件、防災面など、そういうところも含めて、そのガイドラインで本当に足りるのかというところも、詳細な吟味が必要ではないかなと思っています。
  それからワーディングが古いところがあって、地域社会との共生という言い方も、新味はない表現だと思います。地方とコミュニケーションするのは結構ですが、県議会と市議会と、それから住民です。地域社会といっても、議会と一般住民の間の乖離があって、議会の同意を取ったからといって住民が賛成しているとは限らないわけでして、議会制のある種の機能不全のようなところもあり、その辺については、大学としてはどうお考えになっているのかと思いました。
【笹川主査】  ありがとうございました。それでは平川委員、どうぞ。
【平川委員】  作業者のバイオセーフティの項で少し気になったのが、例えば、この手の割とセキュリティが厳しいようなところ、あるいは、セーフティの管理が厳しいようなところだと、作業員、スタッフの人たちのメンタルなケアというのが重視されていると思います。例えば、普通の会社、企業なんかであれば、産業衛生医が付く形で、いろいろとアドバイスをしたりとか、ストレス測定をやるとかという形で対応したりしているので、そういう作業者のメンタルといったセーフティの基盤になるような、ソフトの管理、マネジメントというのはどうなのかなと思いました。
 それから、地域との関係の話で、1つは、今既に設けられている地域連絡協議会というのが、1つコアになってくると思います。運営のいろんな模範としては、例えば、フランスでも、原子力施設で、通称CLI、地域情報監視委員会というのを設けて、これは地域の住民の代表、あと、その住民の代表の中でも批判的なグループ、例えば、NGOの代表者、議会の人、県の行政など、そういう人たちも入れて、非常に混合したチームの中で施設の運営管理をやっていく、安全性の向上に対していろいろとアドバイスをするようなことをやっています。そこの運営の仕方というのは、地域住民の世論対策とか、そういうのも含めて、いろいろと参考になると思います。
 あと、地域連絡協議会をコアにしながら運営していく中で、信頼を得ていくときにいろいろと考えなければいけないのは、世界最高水準というと、どうしても今の時代だと原子力の方を連想してしまうので、これに関して、単に言葉として言うのではなくて例えば、海外だとこうなっているとか、分かりやすくきちんと比較可能で、かつ、長崎大学の中でそれがどういうふうに達成されているのかに関して、分かりやすい指標、インデックスを作って、それを地域の住民に対して示していく。直接には、この地域連絡協議会の方でそれをしっかり見てもらう必要があると思います。単に専門的に見てもらいましたというだけではなくて、それを分かりやすくブレークダウンする形で、翻訳した形でもいいので、分かりやすい、外から見えやすい指標というのは必要なのかなと思いました。
 あとは、コミュニケーションの仕方としては、これはもう実際に運営の中での動かし方ですけれども、説明責任というのは、単にきちんと説明するというだけではないわけです。例えば、これは政治学の中で言ったら、アカウンタビリティというのは、要は、問われたことに対して答えるということですので、きちんと住民から出てきたいろんな疑問、質問に対して答えていく。その答えたことというのが、単に言葉として返すだけではなくて、反映された部分に関しては、できる限り示していくということも大事です。フィードバックされている、自分たちが言ったことが、施設の運営管理、安全性維持や向上に役立っているということが目に見えるようになると、地域の人たち、協議会に参加している人たちだけではなくて、その外にいる一般住民たちから見ても、例えば、何か意見を言ったときに、言う甲斐がある、あるいは、そこに関心を持っている甲斐があると。そうすると、地域との連携というのがつなぎやすくなってくる。逆に、通り一遍になって、反映がないと、だんだん関心も薄れてしまったり、責任も希薄になっていったりしますので、そういう形でのコミュニケーションというのは非常に重要だと思いました。
 あとは、今、この協議会の人たちだけでなく、地域からもと言いましたが、そういう意味では、この基本構想を作っていく段階でもそうですけれども、実際の運営の中でも、例えば、年に1回、何か皆さんの方で関心のあること、疑問のあること、改善点とか、こういうことをやってほしいとかというのがありますかと、定期的に1、2年に1回でも、この協議会だけではなくて、外の一般住民の人たちとのコミュニケーションの手段というのは考えられているのかなというのは思いました。例えば、それ自体を地域連絡協議会の活動の一環にしてもいいのかなと思いますし、そのあたりはどうお考えなのかということを最後にお聞きしたいと思います。
 以上です。
【笹川主査】  櫻井先生の方からは、大学のガバナンス、そのまま、ただ字に書いただけで、こういうふうなものに対応できるのかというお話から、ずっと幾つか、全部で4項目出していただきまして、それから、平川先生の方からは全部で5項目、地域との連携の在り方、それから、世界水準のことに関しましては、これはもうこの委員会が立ち上がる前から、最高とは何かということは問われているので、これはまた更なるいいお答えがあるかもしれません。やはり具体的な例を示して、比較で、確かに最高であると。世界中でBSL4施設はこれからも設置されていくと思いますけれども、今進行中で、日本国ならではのきちんとしたものができているということであれば、アジア諸国からも1つの規範になって、いい形で国際貢献もできると思いますので。
 ここで一回切らせていただきます。長崎大学の方で持ち帰って検討していただく事項もあると思いますが、まずお答えできるものについて、発言をお願いいたします。
【長崎大学】  御指摘のとおり、いろんなルールについては、まだ根幹的なところを作っているところでありまして、建物の図面を作りながら、その中で具体的な運用ルールを決めていくというところもあり、まだまだ詰め切れていないところがたくさんあるというのは、おっしゃるとおりです。
 大学がこういう施設を持つことについて、地元の方々からの意見としては、大学は国ではないではないか、何かが起こったときに誰が最終的に責任を取るのかと言われているのと、それから、反対を表明している教員もいるので、学内のガバナンスが問われたことはあります。
 なかなか難しいところもあるんですけれども、今後、学内のルールをしっかり作りながら、というところでしかお答えできないところもあります。特にバイオセーフティオフィサーについては、ルールも作り始めたところです。具体的にどういう権限を付与するかに関しては、例えば実験計画に疑義があれば、実験計画の差し止めであるとか、事故の報告が上がれば、実験を停止するとか、施設を一遍止めるとか、そういう権限は基本的には付与されるものと理解をしています。学長にその立場を脅かされないようなポジションの作り方、何か言ったから、早く辞めてもらおうかということがないような作り方もしなければいけないというところで、そういうところの検討を開始したところです。
【笹川主査】  まず今のところで、1つだけ、櫻井先生からの御指摘の中で、大学のガバナンスは必ずしも盤石ではないということで、これは学術会議で提言を出すときから、何かあったときに、大学だけでは、財政状況も非常に厳しいですので、例えば、保険とか補償をどうするか。そういうときに、国がある程度バックアップをして、それを支えると。
 それから、システム上は、大学に任せるのではなくて、第三者の立場、国に近い立場からこの委員会がまずしっかりする必要がある。様々な意見を掘り起こしていくというのは、ここでないとできないことが多いと思います。そういう意味では、当事者で全部管理体制を完結するのではなくて、こういう委員会もあって、国がこういうふうな形で関与するということを最終的には書き込むと住民の側からも安心だと思います。
【櫻井委員】  問題は、このバイオセーフティオフィサーというのが、学長から独立していてもあまり意味がないことです。なぜかというと、学長自体が大した権限を持っているわけではないので、学長に言ったからどうなるわけでもないということです。むしろ自律的に国立大学法人をどういうふうにコントロールするかということであるので、その外側にいるオフィサーでないと有効に機能しないという懸念があるように思いますが。問題意識は、そういうことでよろしいですか。
【笹川主査】  なるほど。分かりました。
【長崎大学】  バイオセーフティオフィサーの雇用にあたっては、辞令は学長の名前でしか出せず、給与も長崎大学法人から出すという形になりますので、そこのところは、制度上は我々としてはいじりようがない部分ではあります。
【櫻井委員】  現行制度を前提にすればそうなるので、本当は感染症法でもう少し対応してもいいのかもしれません。
【長崎大学】  例えば、権限の中に、学長をスルーして、文部科学省や厚生労働省に、こういうことが起きているので、こういうふうにするぞということを具申するようなことも検討しております。国立大学法人の中には監事というのが、長崎には2名おりますが、彼らは直に文部科学省に進言することができるという権限を有していますので、それに近い制度を作ることは可能だと思います。
【笹川主査】  これは少し検討していただくということで。
 あとは、いかがでしょうか。堀先生、どうぞ。
【堀委員】  順天堂の堀でございます。
 先ほどのセーフティというのが、日本だと、セーフティの意味が、セキュリティとセーフティと混同しがちであるのと、あと、安心と安全という部分が混同されるところがあるんですけれども。
 安心に関しては、リスクコミュニケーション、平川先生を中心とした委員の先生から、安心を得るための、不安を和らげるためのいろんな方策を入れていくことが重要であろうと思います。
 安全に関しましては、テクニカルな技術的なことと運用の両方に分けて検討していくべきで、その運用の中に、組織の在り方、ガバナンスというところで、櫻井先生の提言は生きてくるのかなと思いますので、そこは定義を切り分けながら、しっかりとお話を進めるべきかな、と思いました。
【加藤委員】  1点よろしいですか。
 この基本構想の目次を見て、施設の基本計画と書いてあって、封じ込めが成功しているかどうかということをモニターして見える化するということについて、その項目がないのが気になりました。
 一番簡単に、封じ込めがきちんと成功しているか確かめるには、例えば、安全キャビネットの中でトレーサーガスを出して、そのトレーサーガスというのは、封じ込めが成功していれば外には絶対漏れないはずだから、外でモニタリングしていて漏れていないことを確認する。排水に関してでしたら、排水の中に何かトレーサーを入れていて、それが一段外へ出たところで、やっぱりトレーサーが出ていない。
 トレーサーガスが問題だったのなら、僕自身も今そういうことをやりますが、ファージ(※)をエアロゾルにして飛ばして、例えば、中の研究者の人がきちんと手順どおりやって、外にファージが漏れていないかどうか検討する。それはセキュリティにも役立って、もし万が一持ち出されたときに、そのファージの遺伝子を調べれば、そこから持ってきたかどうか、それから、ファージをトレースすれば、どこをどう通っていったかも分かります。
 封じ込めが成功しているということを見える化して、モニターして、地域の住民の人たちに、漏れていませんというのが、一番分かりやすい説明になるので、その項目がないのは気になりますね

※正式にはバクテリオファージといい、細菌に感染して菌体を溶かして増殖するウイルスの総称で、それぞれ特定の細菌種にのみ感染する。

【堀委員】  テクニカルな問題になりますので、モニタリングするということに関しては、皆さんの資料3の監理委員会からの前回の意見のまとめ(資料3)の中の2、3にございます。特に3番目の実験室が陰圧に保たれているか、実験中に確認できるインユースのモニタリングが必要で、これがいわゆるプロセスで見る方法でございます。
 どういうことかと申しますと、気流を陰圧に制限するということで、これがしっかり保たれていれば、アウトカムとしては多分保たれているであろうという見方でもって、プロセスで管理するモニタリング方法があって、今、加藤先生がおっしゃられたファージを出したり、トレーサーガスを出したりというのは、アウトカムでモニタリングするという方法だと思います。
【加藤委員】  ええ、それが一番分かりやすいという意味ですね。
【堀委員】  そういう意味で、コストと手間と実現可能性を含めて検討していただくということで、プロセス管理とアウトカム管理を検討するというようなことを盛り込んでいただくということでよろしいかと思います。具体的な方法はまだまだいっぱいあるでしょうから、とは思います。
【笹川主査】  そうですね。報告書に、細かいテクニカル資料を付ける必要があると思います。ここに全部具体的なこと、細かいことを書きますと、大部になってしまいますので。
 トレーサビリティのことは、私も実は東大の医科研にいたときに関わりましたが、新しい施設を建てるとき、地域住民は、外に出てくるか、出てこないか、ということに関心が強いわけです。その当時は、T-偶数系ファージがバクテリアを溶菌することを検討しておりました。実際は行わず、地域住民に対してHEPAフィルターを見せたり、生物的なパーティクルは通らないということも説明しました。こういった丁寧なことは、やはりこういう添付資料は作られた方がよろしいかなというふうな印象を持ちました。
【堀委員】  それはリスクコミュニケーションで、またとても大事なことで。
【笹川主査】  我々専門家の目と、住民の側の目と、両方別々に用意された方が、スピードが速いと思いますね。中から家を見ている人と、外から家を見ている人の違いということがあると思います。
 
【加藤委員】  差圧制御の話は、私が一番気になっていることで、安全キャビネットとか、ドアとか、いろんなところで幾ら差圧制御されても、人が通れば、それから、手を出し入れするだけで、空気は出入りします。私が言っているのは、差圧制御をモニターしているということよりは、それより、本当に漏れたものが見えるようにしておくということが大事かということで、見えるようにするというのは、色を付けるということで、それはトレーサーだと。
【堀委員】  それは私も同じです。いろんな評価方法がある中で、インユースでのプロセスと、あとは定期的なアウトカムの調査を盛り込んでいくようにして、万全にすればいいんじゃないかと。
【笹川主査】  長崎大学に伺いたいのですが、外国のBSL4施設では、こういうトレーサーは技術的には解決しているのでしょうか。生物学的なトレースについては、存じ上げているのですが。
【長崎大学】  実際的には、生物学的なトレーサーはやっていないと承知しています。
【笹川主査】  やっていないですか。
【長崎大学】  HEPAフィルターの基準とか、使用基準において、こういう基準を満たしているということで説明しているところがほとんどです。
【笹川主査】  そうですか。
【加藤委員】  例えば、安全キャビネットの陰圧制御で、どれだけ部屋側に漏れてくるとか、そういうのに関しては、性能試験自身がトレーサーガスを使うということですね。
【長崎大学】  BSL3の施設などでは、長崎大学でも、オイルの微小パーティクルで、どれぐらい漏れるかという試験は、HEPAフィルター性能試験としてはやっています。
【笹川主査】  それは義務付けられていますね。HEPAフィルター、何か月か何年かに。
【堀委員】  そうですね。利用基準で。
【加藤委員】  だから、それを常時やられて、日報についていて、漏れていませんという実績を地域住民に示されるというのが最もいいのではないでしょうか。
【長崎大学】  そうですね。常時やるというのは難しいと思うんですけれど、定期的にということで、御理解いただければと思います。
【加藤委員】  例えば、ヘリウムガスを少し出しておいて。ヘリウムガスを実験室の中でお使いになるなら別ですけど、ヘリウムガスの検知は簡単にできるので。
【長崎大学】  ただ、先ほど笹川先生もおっしゃりましたが、ガスと微生物、パーティクルというのは全く違うものですので、ヘリウムガスが抜けていることと微生物が出ているということは、ちょっと違うのではないかと考えております。
【加藤委員】  いや、それは同じこと、陰圧制御されていると言ったから、陰圧制御で封じ込めをしているというんだったら、陰圧制御が効いているかどうかというのは、ガスで分かると。パーティクルは、もちろん別の話ですけどね。
【堀委員】  ここで全部決めるのは難しいと思いますので。
【笹川主査】  これも、なるべく技術的に解決できる部分は、最大解決すると。それが世界最高の、いわゆる我々のすべき努力だと思いますので、是非、それは持って帰って、また検討ください。
【櫻井委員】  さっきも少し申し上げた話ですが、施設の整備基準は、特に感染症の基準はどういうものがありますか。
【堀委員】  感染症法で、こういった高度の実験施設の要件は決められております。例えば、前回、私が指摘した消毒施設と滅菌施設の関係に関しても、感染症法で指定されているところです。建築基準法で、もちろん建物自体はそれで建ちますけれども、だけど、感染症の実験施設として、こうあらねばならないという要件は、感染症法で規定されています。
【櫻井委員】  通常、技術基準があって、ものによりますが、技術基準があって建築確認で担保しますが、そこはどうなっているんでしょうか。
【堀委員】  技術基準というよりは、こういうふうにならないようにしてくださいと、そういう書き方。例えば、漏れないようにしてくださいとか。
【櫻井委員】  感染症法の基準ではそうなっていて、担保はないのですね。
【堀委員】  具体的な指定技術は示されているわけではないです。
【櫻井委員】  ということは、この取りまとめの中に書いてある基準は、それを踏まえて、大学としてお考えになった、自主的にセットした設計の考え方ですね。
【堀委員】  それと、海外の施設とか、WHOとか、また、そのWHOのガイドラインを基にした各国のガイドラインとかマニュアルを調査した上で、最大公約数的なものを出されているのではないかと思いますけど。
基準自体にちょっと不備があるというか、あんまり技術基準としてあまり十分ではないということではないでしょうか。
【堀委員】  それがあれば、逆に言うと、我々は要らないわけで、世界最高水準という定義がなかなか難しいところですね。
【春日委員】  私も、準拠すべき法令とかガイドラインをきちんとこの中に明記していただいた方がいいと思いました。もちろん、感染症法については、引用はされているんですけれども、関係する施設面での建築法関係の法令も含めて、はっきりと分かる形で整理すべきところがあるのではないかと思います。
 今度はガイドラインの段階になりますと、関係するとすれば、病原体取扱い関係の実験指針と、遺伝子組換え実験指針も該当するのではないかと思いますが。先日の学術会議の分科会で、実はその議論がありました。現行の日本のガイドラインでは、一種病原体に対応している、その観点では不十分ではないかという指摘がありました。
 例えば、ソフトセキュリティにも関係しますが、入館者の審査項目が、まだ今の中間取りまとめの中では具体的に書かれていません。そのときに、どういう項目を当てはめるべきかということですが、作業者、研究者、入館者の審査項目を現行のガイドラインではカバーできていないという点です。
 それから、実験室内の作業に関して、2人以上で監視するということですけれども、監視カメラの置き方も、実験不正の防止も含めて、作業メンテのところまで監視ができて、それが記録できるような、そういう体制にする必要があると思いますが、そういうことも含めたガイドラインというのがまだ日本にはないと思います。
 それから、事故時の連絡体制も、やはり一大学、また、一つの県ですと、長崎県内の連絡に第一義的にはとどまると思います。仮にテロリストが海外逃亡までするようなケースを考えると、広域の警察庁への連絡、それから、入管との連携なども、大学や県だけではとっさにやることは難しいのではないかと思います。文科省にとどまらず、国として、しっかりとそれに対応する準拠ガイドラインというところに格上げしたものを作っておくべきではないかと思います。これは長崎大学ではなくて、前回も同様ですが、文科省にお願いします。
【笹川主査】  はい。これは、先ほど平川委員の方からも御指摘ありましたね。作業者のメンタルケアも含めて、多分、そういうことだと思います。
 この点に関しては、感染研においては、完成度の高いマニュアルができていて、入館者のチェックその他は随分議論しました。住民からの質問も非常に多かったですね。それから、持ち出し、作業者の監視モニターなど、今日の話は、全部住民の方から出尽くしている話の中に包含されていると思いますけれども、いかがですか。何か参考になることは。
【宮川室長】  幾つか御質問のあった点について事実関係だけ申し上げますと、まず、感染症法の規定では、幾つか定めなければいけないものが当然ございます。端的に申し上げると、特定一種病原体を所持している者については、法令に基づいて設置をしなければならないものだと決まっておりまして、例えば、病原体取扱主任者の設置が義務付けられていて、その責務は決まっています。これについては、例えば、取扱主任者の責務の中には、その施設に立ち入る者について、法令を遵守させる、それから感染症発生予防規程、設けることが義務付けられていますが、それの実施を確保するための指示をして、それで従わせるということが、法令上書かれています。つまり、取扱主任者を選任し、彼らが法に基づく安全管理に関して、立ち入る者に指示をする、それに従わせるということが規定があるわけです。ですから、大学がいうところのバイオセーフティオフィサーというものと、法令に基づいて設置をしなければならないものというものの関係は不明ですけれども、いずれにしても、責務を有する者の選任をして、きちんと職務をさせるということは、法律上決められているということになります。
 それから、施設の基準ということですけれども、これは一部堀先生からもお話がありましたけれども、例えば、施設基準に関して申し上げれば、地崩れ及び浸水のおそれの少ない場所に設けることとか、それから、管理区域を設定しなさいとか、そういうような書き方になって、大体省令とか規則で書くのは、そういうような書き方になっている。ですから、それを実際に図面に落として、どういうふうに管理していくかというのは、それぞれ施設ごとにやっていかなければならないことにはなりますけれども、最低限守らなければならない基準というのは、省令の中に既に書かれているということになります。
【笹川主査】  日本には、幸いなことに、1つ具体例というか、30年前の非常に古い建物ですけれども、基本的には、今でき得る最大のことをやっているという事例がございますので、最大に取り入れていただきたいです。
【長崎大学】  感染研には随時御相談しながら、先進事例として学ばせていただいているんですけれども、感染研は感染研の職員が作業をするというところと、大学は、全国の9大学のコンソーシアムを作っていて、無制限に誰でも、ということは考えておりませんが、複数大学の研究者が使用するというところで、制度は、より厳しいものを作っていかないといけないとは思っております。
 ただ、日本人の研究者に限定して使わせるとかいうのは、なかなか実際は難しいように思っていて、今考えているのは、学生や大学院生については入室を許可しない、ですけれども、教員であるのは前提ですが、外国人教員も最近増えておりますので、外国人教員については今後慎重に対応を協議していきたいと思います。
 それから、警察関係に関しましては、長崎県警と相談をしているところです。警察庁とも情報交換しています。
【春日委員】  そういう地道な積み上げが必要だとは思いますが、最終的に大学だけの責任で、大学固有のマニュアルだけで済むものなのかなということが気になります。感染研と長崎大学と両方をカバーできるような、国としての指針を、新しくバイオセキュリティについて定めるべきではないかと思います。これは、実は学術会議からの提言に盛り込まれていますので、対応を御検討いただきたい。
【板倉審議官】  今、厚労省が御説明になりましたとおり、指針というよりも、今は法律がございますので。
【春日委員】  もちろん、法律の下で、それに対して、今、病原体実験指針や遺伝子組換え実験指針があるわけですね。
【板倉審議官】  遺伝子組換えも、カルタヘナ法という法律になってございまして、そこはもう統一された考え方で、まさに法規制をやっておりますので、長崎大、感染研、共通したカルタヘナ法の規制がかかってございます。
【笹川主査】  春日先生がおっしゃっているのは、多分、こういうことだと思います。法律があったり、マニュアルがあったりしても、実際にそれを誠実に実行するということが、末端できちんとなされるようなことをしないと、全く形骸化されるというのは、研究室のレベルもそうですけれども、そのために、大学の場合には、研修を何か月したとかですね。せっかくアカデミア中心にできる、文科省の方のお力で、設置されるので、その辺をもう少し、単なる法律・規則だけではなくてですね。
【堀委員】  私、病院の中でクオリティコントロールを担っているわけですけれども、先頃、ジョイントコミッション・インターナショナルという、世界的な安全性に関する病院認証の取りまとめを行ってきました。
 そこで、日本にはないなと思ったシステムが、職務記述書と職務評価、それらに基づいた職務権限の付与という部分をかなり明文化して、実質のあるものにしなさいというふうに言われました。これをバイオセーフティオフィサーの独立性の問題とか先ほどありましたけれども、どういうトレーニングを受けた人が、どのような評価を受け、それがどのような権限を持たされて職務を執行するのかという部分を、この際、今、春日先生がおっしゃられたような法律とシステムの間を埋める要件として定めるということを宣言されて、詰めていかれたらどうでしょうか。
【笹川主査】  私も、それが一番やっぱり現場では大事かなと思いますね。住民の方も、そういうふうなお話をされると。
 それから、住民の方とのコミュニケーションですね。お二人の委員の方も御発言されましたし、あるいは、定期的に住民に情報発信する、あるいは、受け入れる、双方向のですね。例えば、ニュースレターみたいなもので、今こういうふうなことが行われている、こういうふうなことを今また検討しているというようなことを流して、あるいは、ホームページで掲載しても結構ですけれども、積極的にやられるといいと思います。また、基本構想に書き込まれた方が、単なる住民との連携というふうな言葉だけではなくて、少し丁寧に書かれるといいと思います。
【河本委員】  バイオセーフティオフィサーについては、制度論として、先ほどもどういう職務上の立場にするか、権限をどうするかという話がありましたけど、中身の話として、先般も申し上げましたけど、堀委員がおっしゃったように、バイオセーフティとセキュリティは根本的に違いますので、1人のバイオセーフティオフィサーがバイオセキュリティも見ると書いてありますけど、それは本当に可能かどうかということです。
 例えば、IAEAの安全原則にも書いてありますように、セーフティの取組がセキュリティの取組を阻害しないようにということが書いてあって、逆に、セキュリティの取組がセーフティの取組を阻害しないようにとも書いてある。すなわち、この2つの取組がお互いに相反することがあり得るという前提になっているわけです。
 それと、セーフティの専門家の方がバイオセーフティオフィサーになられたとして、セーフティとセキュリティの兼ね合いを1人の中でそれを整理できるのかという議論もあり得るのではないかという気がしています。ですから、先般ちょっと申し上げましたけど、セーフティオフィサーとセキュリティオフィサー、やっぱり両方いた方がいいのではないかと思います。
 それから、もう一つは、このセーフティオフィサーが、いわゆる監査をする立場になっていて、独立的な立場で客観的に監査をして、不備な点については勧告をするという形ですが、セーフティオフィサーが誰に勧告、改善の指示を行い、誰がPDCAを回していってマネジメントするというところが、資料3の管理運営の体制のところを見ると、明確ではないように思います。多分、セーフティオフィサーは、それをするわけではなくて、監査をする立場で、客観的に見る立場であると思います。
 それから、リスクアセスメントというのは資料2-2の63ページに出てきていますけれども、リスクのプロファイリングはどうなっているでしょうか。どんなリスクがあって、そのリスクはどういう脅威があって、それはどういう状況で、どういうふうに発生するのかというような、まずリスクのプロファイリングがあって、それを今度評価して、それに対して、BSL4の施設の脆弱性をどう評価していくのかということがなければ、実際にはセキュリティの対策をどう取っていくかという答えは見えてこないはずです。
 恐らくセキュリティの対策をすることもそうですし、先ほど来議論になっている、地域の住民、あるいは、施設の外の方々、外のステークホルダーの方が、確かにここはすばらしいセキュリティをやっていると見ていただくためにも、こういうことを考えているということを示すべきかと思います。もちろん、セキュリティの話ですから、一から百まで全部公開する必要はないのかもしれませんけれども、そういうプロセスでセキュリティをやっているということについては、明確にしておいた方がいいのではないかと思っています。
 それから、あと2点、細かい話ですけれども、技術的なことで、私は詳しくないので、質問ですけど、中から汚染をされた空気が外に出ないということはお示しになっていますが、逆に、給気はどういうふうになっているんだろうなと思っています。実は、テロ対策の面で言うと、給気の方が非常に大事で、その給気のところから、例えば、生物剤や化学剤を放り込んで、内部の人間に危害を加えるということは十分にあり得る話で、我々が施設のセキュリティ監査をするときには、第一に外側を見て、どこから空気を入れているのかチェックをします。給気口が、外か見えるように、設置してあったりするわけですね。簡単に近寄れてはだめでしょうみたいな話をするわけですけど、そこはどうなっているのでしょうか。もう一つは、車両をアクセスさせるかどうかというのがありましたが基本的には、アクセスさせてはだめだとセキュリティの人間としては思います。面倒でも、そこまで行って、荷物を受け取って中に入れるということが必要ではないでしょうか。
 バイオ関係については、セキュリティが後れているように感じます。後れているというのは、今まで技術がなかったですから、やむを得ない部分はありますけど、核セキュリティも、ここ数年来、やっと内部脅威対策まで議論が来たというところです。そういう意味で言うと、空港のセキュリティだとか、食品の工場も参考になるのではないでしょうか。そういうところは、完全に車両のアクセスをさせないとか、あるいは、納入品の数量計算をきちんとするとか、数が足らないのはオーケーだけど、多いのはだめとか、そういうことがあります。ものが出たり入ったりするという意味で言うと、バイオディフェンスについて先端的な取組をしている企業の例などは、参考になるところがあるのかなと思いました。
【櫻井委員】  今、全般の話を聞いていて思うのは、先ほど感染症法の御説明がありましたが、セキュリティの話は一番重要で、施設の技術基準ができているということが極めて大事なことで、それがきちんとできていれば、基本的に問題は起きないわけです。だから、なるべく可及的にしっかりとした基準を作るということが大前提で、どのぐらいブレークダウンされているかということも含めて、十分とは言えない部分があるのではないかと思います。
 取扱主任者のお話がありましたが、これは大学の場合だと、学長ないし施設長になるのでしょうか。
【長崎大学】  取扱責任者は、大学の教員です。
【櫻井委員】  個別になるわけですね。
【笹川主査】  ええ。
【櫻井委員】  問題は、少なくとも感染症法の想定の中に、国立大学のような組織というのは想定されておらずそこは素直に対応していくように考えられたらいいのではないかとは思います。
【宮川室長】  事実関係だけ申し上げると、二種病原体というのがございます。これはボツリヌスであるとか、毒素とか、そういうものは、これは現に所持している施設が国内にございますけれども、ここも先ほど申し上げた取扱主任者を設置することが義務付けられておりますし、予防規程を作ったりすることももちろん求められていますし、施設基準も、一種ほどではありませんけれども、基準がございます。
 それらの所持に当たっては、大臣の許可が必要になりますけれども、これは大学等も既に許可を受けている施設がございますので、大学を想定していないということではないと思います。
【櫻井委員】  いや、本件に関してということで。
【宮川室長】  もちろん、本件に関しては、もうちょっと中身の話は必要かと思います。
【櫻井委員】  研究者がそれぞれ取扱主任者になるということになると、基本的に大学の教員ということですよね。
【宮川室長】  現時点では、そういう方がなられています。
【笹川主査】  多分、櫻井先生の御指摘は、このケースは非常に気を付けてやらなければいけないので、普通の場合は、取扱主任者は、同僚や若い教員が、比較的知識のある、RIの取扱いも含めて、やっているのが実情ですが、この場合は、それでいいのかという、そういう趣旨ですね。
【櫻井委員】  そうです。大学の教員は普通の法人の職員と違うということです。大学の教員は独立性が強く、指揮監督に服する関係がありません。
【堀委員】  だから、そういう意味では、職務権限と職務記述書の部分と資格ですよね。それをしっかり明文化されていた方がよろしいのではないでしょうか
【板倉審議官】  例えば、類似の事例として、原子力の世界がございまして、プルトニウムを大学が保有して、その管理というのは、大学の教員が放射線取扱主任者などという形で、しっかり、学長に対してでも助言ができると。そういう位置付けをしっかりやっていただいて、管理をしていただいている事例もございます。
 あと、原子炉を持っている大学もございましてですね。
【笹川主査】  試験研究用原子炉ですね。
【板倉審議官】  はい。それで、大学だからできないとなりますと、長崎大学ではBSL4施設を保有できないのかということになりますが、原子炉でもプルトニウムでも大学は扱っておりますので、そこは、今、感染症法の世界もありますけれど、しっかり大学の中で組織をどう作っていくか、職務権限をどう与えていくのかということを、是非御示唆を頂ければ、我々も長崎大学と一緒に考えていきたいと思います。
【櫻井委員】  法律的な観点からいうと、現行法制度から見たときに、そこの部分が弱いのではないかということをコメントとして申し上げたということと、さらに、制度インフラとしては、そこのところを充実させた方が、将来的にも懸念なくいくのではないかということを申し上げております。現行制度の下で、長崎大学において最初の例としてこれから作っていくわけですので、その趣旨を織り込んだ形で、内部的な基準ということになると思いますが、そこのところをどう考えたらよいのかということを申し上げております。
行政側からそのような後ろ向きのご指摘があるとすると、遺憾に思います。
【小松原委員】  関連しますが、運用開始後の姿がよく見えてこないところが大変気になります。安全やセキュリティがバイオセーフティオフィサーに依存する面が強いようですが、彼が何をするのかというのがよく分かりません。運用前はマニュアルを作ります、運用後は、安全に関わる研究計画の承認権限もあるみたいですし、事故分析をやるみたいなこともあり、利用者の資格認定をどうするかという話もあるようです。そうなると、誰々先生にお願いしようという名前が先に出るべきではなく、長崎大として一体どういうことを期待していて、それに見合った人は誰なのかというふうに決めなくてはいけないと思います。それをきちんと職務記述という形で定めた上で、1人でいいのか、2人が必要なのか、サポートスタッフは何人要るのか、彼の居室はどこに置き、どのくらいの頻度でもって現場の監査をしてもらうのかというようなことを決めていただきたいと思います。細かい話もいっぱい出てくるわけで、運用後のリスク管理とかセキュリティ管理の在り方というのを具体的に出していただいて、バイオセーフティオフィサーには何をお願いします、だから、こういうような公募要件で公募しますというふうにしないといけない。
 もう一つ言えば、学長から独立しますというのはよいように聞こえますが、逆に言うと、バイオセーフティオフィサーがだめだった場合に、クビにできないです。なので、独立した権限を与えるのがいいのか、与えない方がいいのかというのは、よく分からないところですが、彼のポジションの任免権限を一体どこが持っているのかということは明確にしないといけないのではないかと思います。期待した人材が、期待どおりに働いてくれない場合に、どうするのかということを考える必要があると思います。このことがはっきりしないことが非常に懸念されます。
 もう一つが、運用開始後ということで言うと、30年、40年という施設の運用年数、耐久年数の話が全然出てこないですが、一体何年前提の施設なのでしょうか。どれくらいの頻度で定期検査や設備補修しなければならず、そのときの金はどうするかという話が出てくるはずですが、今回、お金の話が全然出てこない。一体この施設は人件費、施設維持費は年間何億円かかり、交付金や個人研究費などを活用し、資金的に先々、持ちこたえる見込みはついているのか、ということもしっかり考えていただく必要があります。
 そういった意味で、年間の稼働率はどのくらいで、維持運営費はどのくらいで、その内訳はどのくらいで、それに見合った収入は一体どこから持ってくるのか。それが恒久的に期待できるのかというようなところの資料も提出いただきたいと思います。最初はいいけれども、その後、息が続かなくなるということは避けないといけません。
 あと、3番目に、世界最高水準という言い方は、原子力の人たちが好きですが、ハザードに見合った安全管理体制ということが正しい言い方ではないでしょうか。世界最高水準だからといって安全ではないのです。それは他箇所に対して相対的な問題でしかないからです。この施設で扱うハザードや、地域の脅威、例えば地震とか、風水害とかいうような外部からの攻撃とか、内部にある危険性などのハザードの持つ危険性に見合った管理体制を構築することが重要です。世界最高水準という言い方では、話が進まないので、ハザードに見合った安全管理体制、セキュリティ体制をどう構築したらいいかということを、長崎大が中心になって真剣に考えて、考えた結果がこれですというようなような言い方をしていただく必要があります。
 長崎大の資料には出てきませんが、安全文化という言葉も使われることがあります。それも、聞こえはいいですが、じゃ、一体長崎大がいう安全文化というのは何ですか。何となく言葉がふわふわとしてしまいますが、長崎大学が考える安全文化はこれである、それを実現するためにはこういうことをしないといけないというアクションプランに結び付かなければ、単に安全第一と工場で書いたようなものであって、意味がありません。そこは真剣に考える必要があるだろうと思います。
 そういう意味で言うと、大学の中で反対している人もいるとのことですが、学内のコミュニケーションはどのように図られているのでしょうか。
【長崎大学】  学部等の教授会、役員懇談会、教育研究評議会、役員会といったプロセスは踏んでいます。そこにはなかなか届かない人がいるということですね。
【小松原委員】  ただ、そこは重要な話で、地域に対してコミュニケーションをとる以前に、学内のコミュニケーションをどう取っていくかという話もあると思う。多分、反対する人はいるし、危ないと言う人もいるかもしれないけれども、だからといって切り捨ててよいということはない。運用を開始した後で、この施設が学内で忘れ去られた存在にはならないようにする必要がある、学内で支持され続ける施設になる必要があるだろうと考えています。
【長崎大学】 長崎県と長崎市と長崎大学での三者連絡協議会というのを置いて、設置に係る地域の課題を検討して、それを乗り越えるための委員会という位置付けでやっています。その下に地域連絡協議会、住民が入る協議会を作っておりまして、10回開催をしていて、ただ、そこの検討も、例えば、BSL4ウイルスの感染者が市内に出たというときにどうしますかというところについては、具体的な話はまだこれからです。
 法律的には、長崎市がメインで動かないといけない話、感染症が起こったときの地域対策というのは、我々は協力する立場になっていますし、具体的にどういうことをやるべきか、というのは、感染研も住民といろいろお話をしながら地域対策もやっておられると思いますので、それに学びながらやるということですし、稼働後のことは余り具体的な検討まで至っていませんが、今の地域連絡協議会を幾らかモディファイしたものを設けて、会議は続けるというふうに、地元にも説明はしています。
【笹川主査】  今回、結論というか、バイオセーフティとセキュリティオフィサーに関しては、特別に考えた方がよろしいという御意見が多かったと思いまので、検討していただければ。
【長崎大学】  4月に立ち上げた拠点の中に、4部門作っておりまして、資料2-2の59ページにある施設・安全管理部門というのがあります。そこに部門長を置きますが、この人が、施設の運用に関して、安全管理の責任者ということになっていて、この方の任務と責任・権限とバイオセーフティオフィサーとの関係の作り込みがまだできていないと今思いましたので、それも含めて検討させていただきたいと思います。
【河本委員】  これはオペレーションですよね。プランニングがないということです。セーフティオフィサーがいて、監査します。いろいろ権限を持って仕切ります。例えば、この安全部門だと、これはオペレーションしかしませんから、プランニングはどこがやるのか、そこがこの体制の中に明確になっていないのではないかということです。だから、ここは実施部門になっていますということなのかもしれませんけれども、それをきちんと監査をして、それを受けて、プランニングをして、オペレーションに渡していくということが、ここを拝見しただけでは明確になっていないというのが懸念だということです。
【笹川主査】  ありがとうございます。
 時間もかなり押していますので、きょうまだ余り御発言いただいていない、特に今回、ソフトの面にかなり時間を費やしてしまいまして、前回はハードの面でもかなりいろんな御意見を頂いていますので、筧先生と加藤先生に少し御発言いただきたいですが、いかがでしょうか。
【筧委員】  この建物は、特に、恐らく建築費の構造から言って、躯体よりもはるかに設備にお金がかかる建物ですよね。ですから、一般論として、耐用年数が短いですから、つまり、建物を維持していくためには、その後お金がかかるということになると思います。ですから、先ほども御発言があった、更新費用だとか維持管理費用というのをどう見るのかというのは、大きい課題だろうなと思います。
【加藤委員】  セーフティも、セキュリティの話と同じで、河本先生がプロファイリングがまず必要とおっしゃいましたが、私は、専門業者に任せていいので、まずセーフティに関して、どんな事態が想定されるかという、想定書を全部作って、このとき、人が安全キャビネットに近寄り過ぎたとか、手を出したとか、そういったときにどれが漏れてくるとか、そういうときの対策はオーケーなのかとか、セーフティに関しても、シナリオをちゃんとお作りになった方がいいと思います。
 陰圧制御の話だと、隙間風で制御する話ではなくて、給排気のそれぞれ圧力制御でやる。設計者は分かっていると思うので、それでいいですが、川の流れみたいに、上流から下流まで流すようなイメージではなく、それぞれ4つの部屋があったら、4つ個別にきちんと制御できるようにしないといけない。産業用のクリーンルームだったら、パーティクルが発生したら、そのパーティクルのモニターというのは、設備と一緒に作るので、私だったら、モニタリングとか見える化と申し上げましたが、じゃ、そのパーティクルカウンターをどこに設けて、常時どういうふうにモニターするとか、そういう計画も一緒に立てられないといけない、ということを思います。
 パーティクルの管理で一番大事なのは、とにかく扱っていらっしゃる研究者の方とか、管理されている方が、パーティクルが見えないので、それを見えるようにする。見えるものは何かというと、パーティクルカウンターの数値だし、トレーサーガスの濃度だし、陰圧制御というのは手段なので、結果が大事だよというところの設備をきちんと計画の中に入れるのが、一般的な産業用のクリーンルームでやることが必要と思いますけ。
【笹川主査】  この点についても、お持ち帰りいただいて、可能な限り、次回具体的な案が出せるのであれば、お聞かせいただきたいと思います。
 あとは、春日先生は特によろしいですか。
【春日委員】  先ほど申し上げたことの趣旨がよく伝わらなかったところがあるような気がしますが、要するに、長崎大学として依拠できる根拠を、国としても、もう少しサポートすべきではないかというのが私の趣旨です。マニュアルを作るために、いきなり法律を参照するには、法律はちょっと遠すぎるので、その間に、マニュアルの各項目が根拠とできるような国としてのガイドライン、指針を準備することが必要ではないかと思った次第です。
 それは、感染研でも参照できると思いますし、今後、もっと複数のBSL4施設が国内の大学にできるとしたら、やはり共通に参照できるものとして役に立つと思います。そのために、海外の事例も参照できると思いますし、それから、条約のレベルでは、生物兵器禁止条約と、それを各国で運用している中でのいろいろな指針等がある国もありますので、そういう点も参照できるのではないかと思います。外務省の担当になっていますけれども。
【堀委員】  今、春日先生の御意見で、ひょっとして、法律と現場の間を埋める指針とかガイドラインというのは、今、結構医療施設であるのが、施設基準とか、運用細則とかいうのがあるので、恐らくそのあたりに、科学的なエビデンスに基づいた認可の仕組みというのを国がある程度担保していけば、そこの問題はクリアできますかね。それはどうでしょうか。
【春日委員】  現行の、さっき言いましたような病原体取扱いとか遺伝子組換えとかの一部の項目にバイオセキュリティの点を盛り込む形でもいいかとは思いますし、あるいは、現行のものを少し精査しないと分かりませんけれども、どうしても抜けている部分に関しては、新しく作るべきという解決も出てくるかもしれません。そこは私も全部を熟知しているわけではないので、いろいろ対応はあるかと思いますけれども、少し前向きに考えていただけるとありがたいと思います。
【笹川主査】  ありがとうございます。
【板倉審議官】  メインは厚労省さんになると思いますが、いかがでしょうか。
【宮川室長】  恐らく春日先生がおっしゃっている点は、法令に定められているものだけでは具体性を少し欠くものがあって、恐らくその措置を作りなさいというふうにしか法令では書いていないから、それと実際に長崎大学が現場でやるものとの間を埋めるようなものとおっしゃっているのだと理解します。
 それを国がガイドラインみたいなものを作るのかというのが、1つの検討するポイントなのかもしれないですし、感染研がこれまでやってきたものを参考にしつつ、長崎大学が組み上げていくときに、こういう場で確認をしていただくという、お手数をおかけすることになるのかもしれないですけれども、そういうふうなやり方というのもあるのかなとも思います。
 そこは、きょう頂いた御意見は踏まえて考えたいとは思いますけれども、感染研と大学とでは管理体制とかは違うというお話も何度も出てまいりましたので、そういうことからしても、横断的なガイドラインは作れるかというのは、よく精査してみないといけないという感じはします。
【平川委員】  1点よろしいですか。
【笹川主査】  ごく短くお願いいたします。
【平川委員】  監理委員会として、例えば、現地訪問などをやっていいただけないでしょうか。
【笹川主査】  それは是非予定して頂ければと思いますが。
【髙谷戦略官】  今お話出ました現地訪問を企画させていただきたいと思っております。先生方のスケジュールを次回と併せて調整させていただきます。
ここ一、二か月というよりは、大学、受け入れ側、それから、先生方の御都合を踏まえると、例えば、夏休みに実施するなど、そういうことも視野に入れながら、少し幅広いレンジで調整をさせていただきたいと思っておりますので。
【平川委員】  その際、是非、地域の住民の人たち、例えば、連絡会に入っている人たちとかでも結構ですので、監理委員会として、実際の住民の人たちの空気感というか、そういうのもやっぱり知った上で、我々としてもアドバイスできればと思いますので、是非、そういう機会も一緒に入れ込んでいただければと思います。よろしくお願いします。

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