資料2 これまでの意見の概要
これまでの意見の概要
※下線は第4回懇談会における意見
<拠点に関する施策全体に関する意見>
(ビジョン・戦略の重要性)
- 20年、30年後の日本は、少なくとも地方は全て再生可能エネルギーに変えるべきだと思っているが、例えば、そういうビジョンに向かってこれからどういう拠点を作っていけば、そこに到達するか、そういう 大きな観点で考える必要がある。内閣府がすべきことかもしれないが、将来の日本が30年後にこうあるべきだという形が文科省側からでもビジョンを提案できれば良いのではないか。大きなビジョンを持って、こういう拠点形成も含め、日本のサイエンスを動かしていくべき。
- まず、全体の総論があって、次に戦略があって、その中でどういうプログラムが必要かを考えてこれからの10年間を見据えた計画的なプログラムを作っていただきたい。大学の機能というのは、教育、研究、産学連携を含む社会貢献の3つなので、それらをどうやってサポートしていくのかという大枠を決めて、その中に各プログラムを位置づけ、相互補完するような政策が必要。
- 大学は、運営費交付金が減る中で、外部資金に頼らざるを得ない。大学の研究者は様々な外部資金を獲得するため、相当な時間を割いており、疲弊している。これは、文部科学省が様々なプログラムをそれぞれの担当の考えで実施しているのだろうが、中には思いつきのように感じるプログラムもあり、全体を統一するような考えはできていないのが一因ではないか。
- 具体のプログラムやプロジェクトを廃止するということではないが、事業の統合による改善、新たな考えで進めるべきではないか、という提言もこの懇談会から出せると良い。
- 大学進学率について、毎年0.3%ずつ大学生を増やしていくと、30年には1割増えた形になり、進学率55%になる。それでも別にそう高くはないのではないか。そういう意味で、質もさることながら、量をどうするのかという国の基本方針がないと、全体像がはっきりしない。
(効率性の弊害と多様性、独自性の重要性)
- 日本の大学を、例えば、科研費などの外部資金の獲得状況について、シェアが高い順にならべると、その割合が急激に下がっていく。他の指標でも同様。しかし、アメリカやイギリスはその下がり方が緩やかであり、日本の大学の層の厚さが急速に低下している状況だと思う。
- ヨーロッパにおいても、中小規模の機関補助を競争的にやるという形が多く出てきた。国際的な傾向だと思っている。これは、支援を集中した方が成果が効率化するという思い込みと、国際ランキングが政策に大きな影響を与えたのだと思うが、今それが行き詰っていると感じている。
- 企業も昔は幅を広げて、その連関性でやった方がいいと言われていたのが、20年ぐらい前から選択と集中と効率化が求められた。今はダイバーシティみたいなことで幅の広さをと言っている。研究も同じで、いかに多様性を維持しながら世界に向けて独自性を発揮していくかが大事ではないか。
- 一般的に日本の論文生産性について、比較的若い年代の生産性が高くないということが言われている。中国では、若手に競争のプレッシャーが相当かかっており、論文数がある程度ないと、昇進がほとんどできないような、しかもポジション自体がなくなってしまうような厳しい状況。しかし、長期的にみれば、それは必ずしもプラスではない。中国では、ポスドクみたいな人がすごく多く、その人たちが必死で論文の数で競争して、それで論文生産性があがっているところがある。拠点に関して、その問題をどう考えるかは非常に大きな問題。
- 日本も時限付で雇われている人が多くなっているが、日本の場合には、これが論文数に反映しているかというと、むしろ逆になっていて、かえって落ち着いて勉強できないので論文が書けないという意見もかなり聞く。拠点に関して非常に重要な点は、人事的に、どの程度安定的なポジションにするのか、どの程度競争的なものにするのかということ。
- 韓国の状況も中国とよく似ている。どういうデメリットが出ているかというと、一つは、教員が自分の業績だけに一生懸命になるので、大学院生への教育がとてもおろそかになっている点。教わっていなければいけないことを全然教わっていない大学院生が多い。それから、大きな研究というのをやっていたら、なかなか論文が書けないので、研究が小粒になり、報告書みたいな論文がとても多い点が挙げられる。日本がまねすべきことではない。
(人材育成の視点の重要性)
- 大学という組織は極めて特異な組織であるということをもう少し理解すべき。つまり、大学という組織は、常に新しい学生が入ってきて、そして、割と短期間、長くて10年以内ぐらいで出ていく、そういう循環を繰り返す組織であり、ほかに余りない組織である。なので、研究の強みというのは、常にそういう新しい学生の循環が起こることによって生まれている可能性が強い。企業も、国研も、大学との連携において一番望んでいるのは何かというと、大学の先生と付き合うことではなく、学生というのが魅力となっている。そういう点で、大学は研究のアドバンテージを持っているということを我々は考えるべき。
- 今一番問題なのは、大学院に進学する学生が明らかに減っているということ。これは、経済的な支援がないからだという理由はもちろんあるが、それだけではない。例えば文系の場合は、一番優秀な学生は学卒で企業に就職する。理工系の場合は、ほぼ工学系は6年教育というのが常識なので、修士までは行くが、そこからは、やはり優秀な学生は産業界に行く。したがって、博士課程に優秀な学生が残るというモデルが非常に苦しくなっているのが現実で、その状況は既に10年ぐらい続いている。研究力をどう定義されるかによるが、恐らく、今の状況が続けば、かなりガタガタになるだろうと思う。
- イノベーティブなアイデアを考えるのは人であり、ここに焦点を当てて欲しい。国民全体が、「今後の日本は、もう人しか財産はない」ということを納得してもらわないと、総額は増えていかない。今後、成長を引っ張っていくような人材に対していかに配分していくかという国民的な納得を得て、総額を増やすということにも気力を使っていかないと科学技術の発展は見込めないと思う。
- トップの大学にいる若手研究者は、地方大学に行くと、もう研究はできないと思っているため、研究者の循環がなくなってしまう。人の循環がないとアイデアも動かない。この課題をどうするかが、これからの大学の研究力を強化する際に重要。
- 若いポスドクの研究者の多くが任期付になっている。テニュアトラックを1人公募すると、そこに100人の応募がある。そういう状況を大学院生、学部の4年生は見ており、大学に残って研究者になるには相当の覚悟がいる状況。また、研究者が産業界に流れにくい状況もあり、最も強化すべき人材育成が脆弱化している。
- 博士課程(特に後期課程)の学生に対する経済的支援(奨学金等)の問題が非常に大きい。実際に優秀な人材がアジアに流出しているのも非常に大きな問題。学生が博士課程にどんどん進みたくなるようにすることが重要。
- 人材育成の点について、厳しい環境で競争させるのは非常に重要。一方で、我が国では、30代後半のポスドクをどうするのかということも、人材育成上の大きな課題。人材の育成の仕方を日本型で、もちろん海外の状況も参考にしながら、各拠点で工夫をしてもらうような提案を求めることが重要。
- 大学においても、機械のメンテナンスをする人がどんどん減らされている。人件費の削減により、技官あるいはURAも、サポート要員としてぎりぎりの数でやっている。数年後には、大型機器は残ったが、それをメンテナンスする技官はいないという状況になるのではないか。そういう人を含めたサポート体制が拠点研究の基盤的なものである。したがって、もちろん論文を書く研究者は非常に重要だが、それを支える人に若手研究者を活用し、任期が切れたらその後がないという状況は一番好ましくない。サポート体制・研究環境においても、人材育成の観点を含んだ提案をしてもらうべき。
- ある単位の拠点を効率的に運営するための人材(組織マネジメント)について、研究者の研究力と、その集団の組織運営については、きちんと整理をするべき。例えば国際化を助けるとか、外部資金を取ってくるとか、時間を確保するための補助人材といったような補助的な概念を超えて、新しく組織を運営するために、支援のみならず、推進していく研究経営のマネジメントがあるべきで、それは補完的なものではない。URAといった、いわゆる第三の職種という人たちが、大学の基本的なパッケージに組み込まれるべき。経営人材を考えると、既存の理事、副学長、事務局長以外にも、経営を考える人材が、時限的でない形で任命されるべき。人材育成という観点に経営人材を入れるべき。
- 従来であれば、技術系職員がやっていた業務の多くを、若手研究者が担っているということがある。技術系職員の人材育成の観点も将来の日本の研究基盤を考えたときに、忘れてはいけない点。
<研究拠点の厚層化の在り方に関する意見>
- 拠点事業を実施して、論文数は上がっているし成果もでているとのことだが、全体として、大学の世界ランキングは低下し、論文数も頭打ちになってきている。どこが間違っていたのかしっかり議論する必要がある。例えば、拠点の形成の仕方が国立大学の旧帝大に偏っているし、旧帝大で論文数が伸びても、全体に与える論文数や論文の質の差は、あまり変わらず、むしろ地方大学が落ちている可能性もある。
- 厚層化に関する施策を検討する際、RU11に対する施策とその次の層に対する施策は同じであってはいけない。RU11クラスの大学では、Ph.Dをとる学生が、質を担保された状態で一定数輩出されるような仕組みを考える必要がある。それに対し、J2クラスの大学では、研究インフラの劣化に対する支援が重要。ターゲットを分けて設定するべき。
(トップレベルの研究拠点)
- トップレベル研究拠点としては、成果が出ている学術研究の大型プロジェクトをどのように充実させるかが重要。本来であれば、毎年1件くらい新規に採択し、全体の予算も増額すべきだが、そうなっておらず、成果がでている拠点が伸び悩んでいる。
- WPIにおいては、教育機能という観点で考えた場合、博士課程の学生が研究という形で拠点に参加してくる形態に限られている。既存の研究科のように学生が在籍しているわけではない。そういう意味では、特区的・附置研的な構造になっている。したがって、大学全体のモデルになるのかというと、ガバナンスのある部分のモデルにはなるが、ほとんどの部局にとっては学生がいることが前提になるので、違いがあるのは事実。研究中心型教員と教育型中心の教員のようなことを、大学としても正式に認める方向で大学を改革するのが望ましいのか。日本の大学が本当にそれを目指してもいいのかどうかというのはよく考えるべき。WPIは、その意味では、研究中心型教員のところに、トップの大学院生が武者修行に行く場ということになっているので、これを大学全体のモデルに本当にできるかというのは疑問。
(トップに伍する潜在力を有する研究拠点)
- 日本の大学の論文数や研究費をべき乗則に当てはめて分析しグラフ化すると、日本は米英独に比べて急峻なカーブとなる。これは、日本は米英独に比べて大学間の格差が大きいことを示している。極端な集中は研究の発展を妨げると思う。比較した大学を日本のプロサッカーリーグになぞらえてJ1、J2、J3とすると、J2への支援が必要。
- J2にも鋭く光った研究がある。しかしJ2の部分を全面的に支援することが難しいとなると、21世紀COE的な大学の強みを生かすような拠点形成を支援すべき。仮に、21世紀COEのような拠点支援を行う場合には、例えば、RU11を除くなどして、J2がメインの支援対象となるようにすべき。
- J1にお金を出すことはあまり効果的ではないという理由を考える必要がある。同時に、J2にどの程度支援すれば、どれくらいの効果が生まれるということについても、ある程度整理しておく必要があると思う。
- J1に支援しても効率的ではないということまで言う必要はないが、J2に支援してもJ1と遜色ない効果が出ているということが、データで示せると良いのではないか。
- イノベーションの源泉は基礎にあるし、それは必ずしもトップの大学だけではない。
- 日本の大学の中間層を底上げしていかなければならない。全分野で底上げできれば、それに越したことはないが、それが難しいのであれば、拠点形成事業のようなもので、ある程度、選択と集中を行い、それぞれの大学の強みを伸ばしてくような方法になるのではないか。その際、上位層(RU11)を外すような制度設計が必要だが、競争的資金が競争力のあるところを外すという部分の理屈が難しいと思う。運営費交付金の重点支援の枠組みで、全学で世界と戦う大学以外を対象とすることは可能性としてあるのではないか。
- 大学を1層、2層、3層と分けて、あとは競争的資金で競争するというのは地方大学にとっては厳しい。法人化した時点で国から受け継いだ資産に差があるため、大学全体で一緒に競争しろと言われても地方大学に勝ち目はない。このため、地方大学は、とにかく焦点を絞って、強みのあるところに集中投資して、そこで競争的資金を獲得し、勝ちに行くしかないというのが現状。中堅層が弱いのを直すとすれば競争的資金では無理であり、運営費交付金の配分を変えるしかないと思う。
- 全国の大学で競争させても旧帝大が勝つ。本来世界と競争しないといけないのに、国内で競争しても仕方がない。旧帝大は旧帝大で競争し、地方大は地方大で競争すべき。拠点形成については、少なくともそういう競争をすべきだと思う。
- 運営費交付金の配分を変えるというのは難しい点もあると思うので、少なくとも今後の拠点形成では、トップレベルで競争するものとそうでないものをはっきりさせるべきだと思う。
- 競争させると旧帝大が勝つのは当たり前だというのは、各大学は実感として感じているはず。旧帝大は旧帝大同士で競争してもらい、旧帝大を除く大学で競争するというのはとても良い考え。大学の層の薄さが改善されて、日本全体の国際共著論文は確実に上がると思う。
(厚層化による我が国の研究力強化への効果をどこまで求めるか)
(大学全体の研究力強化との関係)
- 研究力をどう定義するかは非常に難しい問題。数量的なデータによる研究力の評価も一つの見方だと思うが、それだけで研究力は評価できない。近年、国際共著論文数が非常に重大だという議論もあるが、全分野が国際共著論文を書けば、研究の水準が上がるということはない。一律に政策展開して、何でもいいから国際共著論文を増やしましょうという政策はやめるべき。これまで研究力強化大学促進事業でURAとかIRというのを充実させてきて、外形的な数字によるデータの分析に加えて、研究の現場にいるURAが増えてきているので、そこからフィールドワークのような形で研究分野のそれぞれの特性をきちんと聞き出すということができるようになっている。そのデータを集めて、それと数量的データとを組み合わせるというようなことをやる、良いタイミングだと思う。
<研究拠点のイメージに関する意見>
(研究拠点の機能)
- 何を目的とするか、アウトカムをどう見るか、フォローアップをどのようにしていくかが重要。
- 単に拠点を作る、そこへ支援するということではなく、そこにはっきりとしたミッションを掲げ、それをどうフォローアップしていくかが大事。WPIはそのことを一つの実験として実施したので、学ぶべき点も多いと思う。
- WPIのミッションとして、イノベーションにコネクションするというのは不可能。大学の中に別組織を作って、そこでイノベーションに向けた取り組みを推進すべき。それが結果的に大学全体に変革を及ぼす力になり得る。
- J1、J2という議論も重要だが、補助する対象(組織)の在り方がどうあるべきかという議論も必要。
- これまでの拠点支援では、大学の中の組織に渡す形態をとっているが、大規模大学では、組織的な変化がほとんど起こっていないのではないかと思っている。支援対象となる組織や人について、どこを狙って、どこを変えていくのかということが非常に重要。
(組織・研究支援体制)
- WPIは組織のリフォームをかなり重要なテーマとしている。拠点長がリーダーシップを持ってやる、英語で事務を全部行うなど。
- WPIでは、内部で自由に議論できる場を作ろうということを常に心掛けていて、毎週金曜日はポスターを発表するなどしている。
(国際性)
- WPIでは、組織のリフォームとともに、サイエンスと融合研究と国際化をミッションとして掲げている。
<研究拠点の支援の在り方に関する意見>
- 拠点の課題として、拠点継続の困難さが顕在化してきている、連携不足による教育研究インフラの確保が困難となっている、有力大学に拠点が集中し多様性が収縮してきていることがあげられる。今後の方向性としては、既存拠点の改変・強化、資金規模の最適化、多様な中小規模の拠点形成を重視すべき。今後の方向性を踏まえ、主なコンセプトとしては、拠点事業の体系化、拠点の再編促進、ネットワークの構築を考えている。[CRDS]
- 拠点事業の体系化については、大規模拠点は縮小し、大規模新規拠点形成はトップダウンの分野特定型に限定する、中小規模の拠点形成を重視する、各大学の強みを生かす多様な研究分野への支援を重視する、広範囲の教育研究拠点に対する支援を充実することが必要。[CRDS]
- 大学の規模によっては、現場の教員が、研究拠点、教育拠点、イノベーション創出拠点を同時に担当しているケースもあると思う。この3つをうまく組み合わせて、各大学が特色を出せるようなやり方ができれば、現場も動きやすいし、論文の生産性も高まるのではないか。
- かつての全国共同利用施設で、現在、共同利用・共同研究拠点になり、うまくいっているところがあるが、それは、担当課がそういう拠点を人材育成の観点も見ながら長期間支援してきた部分が大きい。長い間実施している共同利用・共同研究拠点、大学共同利用機関の良い点や弱点を検証し、新たな拠点づくりに生かしていく必要があるのではないか。
(選定基準(どの程度の研究力を有することが必要か。))
- 必ずしも、TOP10%論文だけがイノベーションにかかわっているというものでもない。基礎的な研究を振興していく大学であれば、TOP10%論文の数にこだわる必要はないのではないか。
- 現場の研究活動に基づいて自発的に拠点となっていくものに支援すべき。研究者が研究しやすい環境が提供され、研究者の中で認められてこそ持続可能な拠点であるとすると、研究拠点にはお金も場所も大切ではあるが、研究活動という観点も考えた方が良い。そうすると、人社系など研究の態様によって、拠点の在り方も変わってくるのではないか。
- 伸びしろがある拠点はどこなのか、投資した場合に確実に伸びてくれる拠点はどこなのか、全国を見渡してどこに支援すべきなのか、どういう支援をすべきなのか、判断を誤ると全体の底上げにならなくなってしまう。その判断は非常に難しいが、例えば、大学改革を本気で進めている大学、中規模の事業をとって人材育成も含めて努力をしている大学、過去5~10年を見て、伸びしろが大きいと判断できるところ、などの観点を判断の材料とすることが重要だと思う。
(支援単位(例:附置研究所、センター等))
(支援形態)
- トップレベルの大規模な共同利用施設に、そのトップに伍するようなところが共同研究に加わる方法や全国にある中規模程度の施設をネットワークで結ぶ方法もあるのではないか。また、大型プロジェクトが上手くいっているなら、その連携型というのもあると思う。
- トップに伍する層においては、研究支援体制を一つの拠点で抱えようとすると、人件費が膨れ上がるので、共同化するということは一つのポイント。共同利用できるURA等を含めた拠点形成が必要。
- 拠点形成においてネットワークを重視していくべき。その際、大規模な共同研究、研究インフラの共有、URAや教員等の人材資源の育成・確保と流動化をバランスよく実施していくことが重要。[CRDS]
- 拠点の再編促進については、拠点の新陳代謝を促すため、既存組織の縮小・改変によって新たな拠点を創出するとともに、事業支援期間中に拠点内に承継教員のポストを準備し、拠点の継続性を高めることも重要。[CRDS]
(支援内容)
- 自由な発想で研究をやっていただいて、その中で、世界に先駆けた独自性のものを拾おうとすると、不確実性が高くなるのでリスクテイクが必要。運営費交付金とは別に、研究大学強化促進事業のような比較的使い勝手が良いものを、一定数の大学に対して同額規模で行えば、独自性も生まれてくるのではないか。独自性の観点から考えると研究者を信じて任せるしかないと思う。
- 運営費交付金に加えて、安定的で使い勝手の良い資金を増やしていく必要がある。
- 拠点、あるいは、大学全体の研究力までを含めて強化するためには、人に対する投資がどうあるべきか。これまでの取組の反省も踏まえて議論すべき。
- 附置研究所にいたことがあるが、もし学生に対するサポートが必要であれば、先生方が自らの身銭を切って、研究費から学生に出せば良い。出そうとしないだけで、出そうと思えば出せる。しかし、出していても全員来るわけではないし、博士というだけで学生は動かない。また、リーディングプログラムについては、先生が必ず半分は身銭を切ってサポートする学生しかプログラムに入れないというような制度にすべきであったと思う。どうすれば、一人でも多くの学生にサポートができるようになるのかということを考えた制度設計が必要。
- 例えば、国の支援は必要額の半分にして、残り半分は自助努力でやるというふうに、一拠点に対する国の支出を少なくし、採択する数を増やすということが大事。
(支援期間)
- 21世紀COEやグローバルCOEの支援期間は5年であったが、次も支援されるかわからないこともあって、なかなか大学に効果が蓄積されなかったのではないか。それでも、ある程度の効果は上がっているとは思う。韓国は、BK21が7年タームで、現在、第3ラウンド目。大体3年目にパフォーマンスのベンチマークははっきりさせておいて、それに達しなかったら中止となり、入れ替えるということをやっている。一見7年のタームだが、長ければ21年続いていくという形で、かなりストックされる仕組み。日本は、21世紀COEの採択件数がグローバルCOEで半分になり、更にリーディングで半分になった。これでは、大学における効果の蓄積という観点からは良くないのではないか。支援がなくなった部分を大学独自で維持しようとしたら、運営費交付金は減っているという状況になっている。運営費交付金の削減を止めるのが難しいのであれば、削減分は、21世紀COEとかグローバルCOEレベルの拠点支援という形で支援していくことが必要。
- 大規模拠点10億、中規模拠点5億、小規模拠点2億といったように、大学の希望によって金額規模も柔軟に選択できるようにし、将来を見据え10年規模で投資して拠点形成をするということが必要。
- トップに伍する層への支援では、資金の継続性、少なくとも10年単位の資金の継続性が必要。
- 拠点への投資を、研究費への投資ではなく、組織への投資と考え、運営費交付金ではないけれども、長期的な競争的資金を出すということが必要。仮に10年ということになれば、支援職員の人事構成も考えることができ、いろいろな工夫も可能となる。短期間になると、ある種の無駄遣いが生じ、拠点側、大学側に負担感が増える。多様性を確保する、長期的な落ち着いた研究ができる体制を確保するという大きな目標のためにも、競争的資金の長期化は、拠点への支援方策として重要。
- 継続性について、少なくともこの種の研究拠点は、10年のスパンでやっていただくことが重要。人を育てるのは1年2年じゃ育たないということも含めて、この種の拠点は7年ないし10年をスパンとして、余裕を持った計画を考えるべき。
(選定方法)
- 例えば、J1の大学も含めて70~80の大学から拠点型の提案を1つ出してもらい、その中から7~8割程度の大学を採択する、残った資金で追加の拠点を競争的に採択する、ということも考えられる。
- 附置研究所では、外国人大学院生に頼っている状況で日本人大学院生はどんどん減っている。日本の研究力を上げるには、優秀な日本人大学院生が博士号を取得しようという気にならないといけない。優秀な学生ほど修士でやめて企業にいってしまう。人を育てるところに投資すべき。
- J2の層は20~30大学程度なのか、あるいは40大学以上を考えるのかという厚層化の規模感を考える際に、アジアランキングは参考になるのではないか。
- 人材が多様であるということが発展には不可欠で、J3といった層も研究力強化という議論に入れて、日本の総力をあげるというのが大事。
- 日本の研究力全体を引き上げるために研究拠点を作っていくという施策においては、ピークをより高くするのも大事だが、同時に、裾野を引き上げていく、中堅層を厚くしていく、これも大事である。ピークを引き上げる方の施策がWPIだと思うが、将来的に20拠点を目指すというのも妥当な数だと思う。一方、中間層を分厚くするためには100拠点程度の規模が必要ではないか。
- 中間層の大学を強くしていくためには、大学によってかなり事情が違うので、研究支援体制や国際化についての一律の基準を設けるよりは、それぞれに創意工夫をさせ、公募によって良いものを採択する方法が良い。
- 個々の研究者のポテンシャルはもちろん重要だが、機関として研究拠点をどのように生かしていくかが非常に重要。トップに伍する層を育成するに当たっては、個々の機関の状況、強み、領域などが多様なので、それをいかに生かすかというのが重要。
特に公募をする際、条件設定をして画一的な事業設定をするとトップに伍する層は育たない。むしろ、大学の強みを前面に出す提案をさせて、その提案内容で評価するというのが必須。いかに内容を引き出すような提案をさせるかということが、その後の拠点が伸びるかどうかに大きく関わってくる。
- 本来、研究の原点というのは、やって楽しいということと、志を持っていること。現在は、競争的環境が行き過ぎている。そのような研究は長期的には非常に危険。研究は基本的に本人が楽しいと思っているということがベースにあり、志みたいなものがないと、やる価値はないと思う。トップに伍する層をランキングのような指標だけで評価するというところから離れる勇気を持つべき。それぞれの大学が非常に個性を持って提案してきたものについて、評価側が評価する能力を持てるかということが重要となる。鳥取大学や長崎大学の例など、地域の中でユニークな、しかも世界に通用する存在感のある研究をしている大学が多く存在する。ボトムアップの提案による大学の独自性をきちんと表現する必要がある。
(組織マネジメント)
- システムの整備だけでなく、実際の運用とそれを柔軟にやるというマネジメントがとても重要であり、論点に加えても良いと思う。
- シンガポール(南洋理工大学)では、採用した若手研究者に対して、最初のスタートアップ経費や研究時間へのサポートはもちろん、それに加えて、エクセレントな研究者に育てていくためのシニアの研究者のサポートが充実している。
テニュアに取るためには、厳しい審査があるが、審査する側が相当エフォートを割いている。専攻長レベルの研究者が、テニュアを取らせる、若しくは他大学に栄転できるように、いい論文を書かせるという部分で、研究者ならではの支援をしているというのが、非常に印象的。また、その際、役割手当などを支給するといった、大学全体を活性化するためのシステム作りというのがよくできている。
- 日本の場合、法人の枠を越えて研究をすることに対する事務体制や研究支援体制をどうするかということは課題。例えば鳥取大学の場合、大学自体としては、トップ層ではないかもしれないが、乾燥地研究センターは世界的なレベルで、アフリカから留学生とか研究者が来て、技術を持ち帰って、アフリカの農業に生かしている。しかし、それだけの来る人を支える事務・研究支援体制は難しいところがある。したがって、トップ層の大学や大学共同利用機関とどのように連携するかが課題となるが、今のところ良い枠組みがない。何か良いマネジメント体制が取れれば、もっとトップ層を生かせる。
<研究分野に関する意見>
(人社系)
- 人社系では、データの共有ができていないのが一番の問題。全国の大学が同じようにあるデータを電子化して共有できる基盤が必要。
- 人社系のように規模は小さくても継続的に研究、教育をすすめていくことが重要な分野も多くある。
- 人社系の中でも、法学部や文学部では論文よりも著書が重要。アメリカでも著書をトップパブリッシャーから出しているかが大事。
- 人社系は産学官が重要。官といった場合、国はあまり人社系を必要としていないかもしれないが、自治体はかなり必要としている。自治体の施策形成などについては、国立大学を中心に、全国の地方大学はかなり自治体に貢献している。人社系は、産学官、どれだけ社会に貢献しているかをベンチマークに入れていくべき。
- 現在、種々の競争的資金の評価が、基本的には理系の枠組みになっている。そうなると、例えば人間文化研究機構とか一橋大学のように、理系、医学・生命科学などの部門を持たない機関の評価が低くなる。そのような評価基準では、この基準は理系の基準なので自分たち(文系)とは関係ない、文系は競争しなくていい、と思われてしまう。これが一番問題で、文系も文系できちんと競争しなければいけない。文系は文系に合った枠組みで作る必要がある。
国際共著論文というのも大事ですが、国際共著著書でどれぐらい書けるか。そのような基準で評価すれば、文系だけの機関もきちんと評価される。文系もきちんと競争するということが大事。
<大学改革を踏まえた研究拠点の在り方に関する意見>
- 大学が各事業、施策を選ぶにあたって自主性を発揮することは重要であるが、各事業・施策にどのような関連があり、大学にとってどのように対応すれば良いのかということについて一定の方向性がどこかに示されていることが重要。
- ギロチンカットのような形の資金の断絶というのは、大学にとって大変厳しい。これに類した政策がずっと続いており、現在はリーディング大学院で苦しんでいる。目の前に卓越大学院構想がちらつき、指定国立大学という議論もある。これらをどう強調させて大学の将来を考えるかというのは大変困難。
- WPI自体がどういった効果を及ぼすかということだけではなく、むしろ、この事業が大学にどういう影響を与えて、少し長い期間での変化を大学に与えるのかということが重要な観点。
- WPIによって大学改革が進んでいるとは思えない。今後のWPIについて、何を課せば本丸に手が届くかきちんと考えるべき。WPIによって大学がどう影響を受けて、変わってきているか、を示していかないと論点がぼけてしまう。そういうことを考えてWPIを作ってほしい。地方大学に支援すれば、改革が起こる可能性が高い。
- 大学に拠点を形成する際には、大学におけるグランドデザインをもとに、大学内でのスクラップ&ビルドが必要。
- 拠点を、小さくても横並びで定着させるということは、一つの形だと思うが、この拠点という構想がそれを狙っているのかどうかは考える必要がある。流動的な組織が存在する空間を何か作るということが必要になっているのではないか。例えば教育についても、教育プログラムといえば良いのかわからないが、基本的には学部・大学院と必ずしも直結しない単位を作るということが、柔軟な社会的ニーズにつながる方法ではないか。しかし、現実的には、基本的な教員の帰属組織である研究科とか学部と独立し、ある程度流動的なことができる組織をどのように大学の組織の中に入れ込むことができるかというのは非常に難しい。個別の拠点を選ぶという問題と別の次元として、どういう位置付けで組織として大学の中に存在するのかという観点が必要。
<関連する施策に関する意見(過去の施策を含む)>
(運営費交付金)
- 運営費交付金を1%ずつ削減するというのは止めるべき。それがJ2だけでなく、トップ大学でもかなり大きなひずみになっている。
(共同利用・共同研究拠点、大学共同利用機関)
- ベンチマークをどう設けるかが重要。本来、大学共同利用機関や共同利用・共同研究拠点は、大学や研究者に対してどう貢献するのか、が問われなければならないが、研究力の方に力点が置かれると、大学や研究者にどのような貢献ができるのかというところには熱心にはならず、自分の研究にだけ熱心になるという部分が、少なからずあるのではないか。
- 大学共同利用機関について、第2期中期目標・中期計画期間は、各機構の中の各研究所の融合が課題であったが、それはある程度達成できたと思っている。第3期中期目標・中期計画の期間は、4つの機構の枠を超えて、一丸となって融合してやるべきことは多くあると思っている。一緒にやれることを別々にやっているところがあるのではないか。
- J2の大学の中にも、共同利用・共同研究拠点があるので、その中でうまく伸びてきている大学、そうでない大学について、良い点、悪い点があるのかを検証する必要があるのではないか。
- 共同利用・共同研究拠点では、高額な機械、大型機械、あるいは特殊な装置など、一つの大学では維持できないようなものを共同利用できるシステムを持っている。また、大学院生の教育、特に博士課程の教育に貢献している。そういった点においては、共同利用・共同研究拠点は、かなり機能していると思うので、新しく拠点を作る場合にも、共同利用・共同研究拠点と連携することが、無駄がなくていいのではないか。問題は、基盤経費がなくなってきており、大型装置を維持する人の人件費が出せない状況になりつつあるということ。
- 大学共同利用機関の在り方は、大学の研究に貢献するというのがミッション。大学側の課題設定を公募するということをミッションとして位置付ければ、トップ層も含めて、より機能していくのではないか。
共同利用・共同研究拠点については、非常に成果の挙がっているところには増額する、成果が上がっていないところは入れ替えるというような、メリハリをつけた評価をすべき。
(附置研究所)
- 国立大学附置研究所は研究費、運営費交付金が減っていて、基盤研究を維持するのが難しい状況。WPIでは、中外製薬と包括契約を結んで10年で100億の支援を受けている例があるが、こういうことはどこでもできるわけではない。
(21世紀COE、グローバルCOE)
- 21世紀COEは、上手くいかなかったという方もいるが、地方大学はこれを大切に育てて、これを生かして何かしようと努力をしていた。豊橋技術科学大学は21世紀COE、グローバルCOEをとっていたが、今でも1つのセンターとして十分利用されていた。上手くいっているところは、どのようにして大学が支援し伸ばしたかを調査する必要があると思う。
- 21世紀COEとグローバルCOEは、大学の研究の下支えをしたことと、大学院生に対する経済的支援ができたことの2つの点で重要だったと思っているが、その効果が何だったのかについては、検証したほうが良いのではないか。効果については、単に論文数だけではなく、大学院生がどこへ就職したのか、社会にどれだけ有能な人材を輩出できているのかが重要。
- 21世紀COEやグローバルCOEにおいて、人材をどう養成したかについて、拠点を作って博士課程の学生がどれくらいいたか、Ph.Dをどれくらい出しているか、参考データがあれば出して欲しい。
- 21世紀COEは274拠点、グローバルCOEでは140拠点、リーディングプログラムでは更に拠点数は減っている。これらの事業で学生への経済的支援をしていた大学が多く、これが終了したので今まで雇っていた学生が雇えなくなってしまっている。この状況を見ている学生は博士課程にいくことに不安に感じ、博士に進学しないという悪循環が続いていると思う。
<産業界との連携方策の在り方に関する意見>
- 産業界との連携というのは非常に大事。例えば、外国の共同研究の場合、共同研究の中には、人件費ということで大学院生のRAの経費も含まれるが、日本では難しい。共同研究といっても、おおよそ100万円から多くても300万円にすぎず、そこで教育的な効果を得るということは困難。また、長期的な研究成果を得るということも困難なので、現在の在り方は是非検討すべき。研究環境には、人が含まれるということが大事。長期的な教育も含めた形での支援が得られるようなシステムが整えられれば、研究も活発化できると思う。
- 産業界とアカデミア間で人が流動しないことが非常に問題になっているので、人が動くような仕組みも含めた提案があると良い。企業との共同研究が外部資金として入ることは非常に重要だが、同時に、若手が産業界に動き、また、産業界からアカデミアに人が来るような仕組みが含まれるような提案があれば良い。
産業界からの資金調達は極めて重要だが、それをマストにすると、そこに対応できない学術研究型あるいは文理融合型のところの提案が非常にしにくいという条件設定をしてしまうおそれもある。そうならないような柔軟性を持たせた方がよい。
- 産学連携がなじむタイプの研究とそうでない研究がある。企業の側から見て産学連携が難しい部分があるということを認識しておく必要がある。出口を見据えた基礎研究というタイプと、ピュアサイエンス的なもの両方を念頭に置く必要。
- 産業界の立場からすると、基礎研究に対しては、寄付講座のような形での支援に限られる。これが分野横断的な応用研究みたいになってくると、たちまち数十社集まる。普通の企業にとって、応用研究以外の分野で入り込んでいくというのは極めてハードルが高い。
以上