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資料1-1「研究力強化に向けた研究拠点の在り方に関する懇談会」とりまとめ(案)

研究力強化に向けた研究拠点の在り方に関する懇談会とりまとめ(案)


1.はじめに

  • 学術分科会の議論(平成28年8月)においては、「我が国の学術研究の研究力を強化するためにも、世界トップレベルの層の研究力を引き続き高めていくとともに、その手法・成果を活用し、トップに伍する潜在力を有する層を対象に特定分野で優れた国際的研究拠点の形成を図るべき。」とされた。
  • また、政府方針においても、「科学技術イノベーション総合戦略2016」(平成28年5月閣議決定)では、「世界トップレベルの研究拠点の形成に併せて、特定分野で世界に伍する国際的研究拠点を形成することで、国内外から第一線の研究者を惹きつける取り組みを促進する」とされている。
  • 「日本再興戦略改訂2016」(平成28年6月閣議決定)においては、「潜在的に高い研究力を有する地域の大学を中心とした20程度の拠点において、優秀な外国人研究者の招へいによる国際共同研究の促進や研究支援人材の配置等を行うことにより、世界に通用する研究分野を育成する。」、「世界から優秀な人材が集う研究拠点を構築する世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)を引き続き推進する」とされている。さらに、「ニッポン一億総活躍プラン」(平成28年6月閣議決定)においても、同趣旨の記述がなされている。
  • このような、これまでの審議会の報告等や学術研究・基礎研究の推進に関する政府方針を踏まえ、研究面で国際競争力を有する大学の層を厚くし、我が国の研究力を強化するため、目指すべき拠点支援施策の全体像や、その実現に向けた総合的な取組の在り方について、関係審議会における審議の参考に供するため、本懇談会において検討を行うこととした。



2.我が国の研究力の現状と課題と研究拠点政策


(我が国の研究力の現状と課題)

  • 先行きの見通しが立ちにくい大変革時代においては、従来の慣習や常識にとらわれない柔軟な思考と斬新な発想を持つ人材の育成・確保とともに、イノベーションの源である多様で卓越した知を生み出す基盤の強化が不可欠である。一方、大学等への基盤的経費の減少などによる研究環境の悪化は、学術研究・基礎研究の推進はもとより人材育成にも大きな影響を及ぼしているとの指摘がある。
  • 学術研究・基礎研究の成果を示す指標の一つである論文指標(総論文数や高被引用度論文数)が、我が国は横ばい傾向である中で、他国は拡大しており、相対的に低下傾向である。特に、その構造を分野ごとに大学別で見ると、日本の研究活動をけん引している大学群よりも、その層の厚みを増加させる潜在力を持つ大学群が著しく弱体化している。
  • また、世界で国際共著論文数の増加など、研究活動の国際化が進む中で、日本の存在感が後退している。国際的に注目される研究領域にも十分に参画できていない。
  • さらに、若手人材についても、博士課程進学者数の減少や望ましい能力を持つ人材が博士課程を目指していないという認識が、大学等の研究者の間で継続しており、将来の研究の中核を担う優秀な若手人材の育成・確保が急務となっている。また、ポストドクター等を含む若手研究者については、その多くが任期付き雇用であり、我が国の研究活動の実質的な担い手にも関わらず、そのキャリアパスの確立は未だ不十分である。
  • 我が国が常に多様で卓越した知を生み出してくためにも、我が国全体の研究力を高めていく必要があり、「研究費」や「人材育成」に関する施策の改革・強化が必要である。それに併せて、「研究拠点」に関しては、研究者の集積による知的触発や共同研究の機会の確保、国際化への対応促進、研究人材の流動化の促進などの効果があり、世界レベルの組織的な研究活動の厚みを質・量共に増やすための強化策が不可欠である。


(これまでの研究拠点政策の成果と課題)

  • 我が国において、研究拠点の構築に向けた方針が公式に示されたのは、平成4年の科学技術審議会、学術審議会の答申である。それ以降、多様な目的や制度上の特徴を持った各種の拠点事業が展開されてきた。主なものとしては、戦略的研究拠点育成(SCOE)(H13~H21)、21世紀COEプログラム(H14~H20)、先端融合領域イノベーション創出拠点形成(H18~)、世界トップレベル研究拠点形成(WPI)(H19~)、グローバルCOEプログラム(H19~H25)、橋渡し研究支援推進プログラム(H19~H23)、地域卓越研究者戦略的結集プログラム(H21~H25)、COI STREAM(H25~)等がある。
  • これら拠点事業の政策目的はいくつかあるが、本懇談会においては、大学の研究力の強化という観点から、その中から、特に21世紀COEプログラムや世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)等について、その成果や課題について検討した。また共同利用・共同研究拠点や大学共同利用機関、学術研究の大型プロジェクト等の共同利用・共同研究体制についても検討した。


(21世紀COEプログラム・グローバルCOEプログラム)

  • 21世紀COEプログラムは、我が国の大学が、世界トップレベルの大学と伍して教育及び研究活動を行っていくため、世界的な研究教育拠点の形成を重点的に支援し、国際競争力のある世界最高水準の大学づくりを目指すことを目的に実施され、大学改革の推進、大学院生を含む優れた若手研究者の育成、新たな学問分野の開拓や研究水準の向上などが図られてきた。
  • グローバルCOEプログラムは、21世紀COEプログラムをより充実・発展させるために、更に重点化し、産業界も含めた社会のあらゆる分野で国際的に活躍できる若手研究者の育成機能の抜本的強化と、国際的に優れた教育研究拠点の形成を図るため、平成19年度から実施された。
  • この両プログラムでは、大学の個性や特色に応じ、学際・複合・新領域も含めたすべての学問分野を対象として、国際的に優れた研究基盤の下で世界をリードする創造的な人材育成と研究プロジェクトを一体として推進することにより、人材育成・研究活動の両面で全国の各拠点で一定の成果が見られた。
  • 例えば、21世紀COEプログラムにおいては、拠点における博士課程学生の増加や、企業等の研究開発部門への就職者の増加に加えて、博士課程学生の学会発表や学術雑誌への論文発表数、教員の論文数の増加、共同研究実施件数の増加など、人材育成に加えて、研究面での成果が認められる。また、グローバルCOEプログラムにおいても同様な成果が認められ、さらには、大規模大学以外の大学における拠点を中心に、グローバルCOEプログラムにより推進した研究分野に係る学科/専攻、講座などが新設されるなど、プログラムの成果の定着が認められる。また、地方大学に内在する優れた研究力を具現化できるプログラムであるとのアンケート結果もある。
  • 21世紀COEプログラムやグローバルCOEプログラムについては、大学や拠点の規模の大小にとらわれず、我が国全体の教育研究力を強化する事業であったと言える。また、拠点の形成を通じ、国際的に優れた教育研究拠点として発展を遂げているものがある。
  • 一方、事業の終了に伴い、博士課程学生への経済的支援や若手研究者の雇用継続が資金面から困難となり、優秀な人材の育成・確保が停滞し、その後の博士課程学生のキャリアパス形成に影響を及ぼしたとの指摘がある。


(世界トップレベル研究拠点形成プログラム(WPI))

  • 世界トップレベル研究拠点形成プログラム(WPI)は、国際頭脳循環のハブとなる研究拠点の形成を目指した拠点形成事業である。事業開始から10年を経て、9拠点が形成され、これらの拠点は、外国人研究者比率が平均で40%を超え、産出論文の量・質ともに世界のトップレベルの大学や研究機関と肩を並べる世界トップレベルの研究拠点と評価できる水準に至っている。
  • 一方で、WPIによる補助金支援終了後の拠点の維持・発展に向けた方策は、重要な課題となっている。また、WPIを通じて得られた優れた成果がWPIの枠を越えて進んでいないことも課題である。


(共同利用・共同研究体制)

  • 我が国の学術研究の中核的なシステムである共同利用・共同研究体制は、大学の共同利用・共同研究拠点や大学共同利用機関を中心に構成され、全国の研究者の知を結集した効果的・効率的な先端研究を展開し、国内外の連携構築、新たな学問領域の創出などを推進する機能を有しており、大学全体の研究力を強化し、機能強化に資する点で、重要な役割を担っている。また、学術研究の大型プロジェクトは、最先端の技術や知識を結集して人類未踏の研究課題に挑み、ノーベル賞受賞につながる研究成果を創出するなど、欧米主要国においても極めて高い評価を得ており、世界の学術フロンティアを先導するとともに、我が国の学術基盤を強化するための重要な役割を果たしてきている。
  • 一方で、共同利用・共同研究体制の本質的な意義に立ち返り、研究者コミュニティに対する貢献度を更に確認していく必要があるほか、産業界との連携については、位置づけが必ずしも明確ではない、との指摘もある。学術研究の大型プロジェクトについては、国際協力で行われているものが多く、国際的な研究拠点としての役割を既に果たしているものもあるが、一部のプロジェクトについては、その進捗管理及び評価の在り方などが課題との指摘もある。


(拠点政策全体としての課題)

  • これまでの拠点事業においては、個々の拠点において優れた研究成果を上げるなど各事業の目的とする成果を上げている一方で、日本全体として見ると、多数の事業間の連携が不十分で、公募・審査・評価が複雑化しており、その評価者・実施者の双方となる研究者の負担の増加を招くなど、全体の研究力向上につながっているかの懸念や事業期間終了後の拠点継続の困難さ等が課題となっている。また、拠点間の連携が不十分との指摘がある。
  • また、近年、拠点事業の支援規模の大型化・重点化と支援拠点数の減少という傾向が見受けられ、国立大学におけるアクティブな研究者の分布と拠点事業の採択実績については年を追うごとに乖離が進んでいることを示唆するデータがあり、採択先が、一部の大学に偏り、地方にある大学等が固有の強みを伸ばすことが困難になっており、我が国全体の研究の活性化や、多様性の確保を阻害する要因となっているとの指摘もある。



3.今後の研究拠点政策について


(1)施策全体についての重要な視点


(ビジョン・戦略の重要性)

  • 30年後の日本のあるべき姿を見据え、諸外国も含めたネットワークの形成の強化など、研究力強化に向けた研究拠点の在り方を産学官全体で考えることが必要である。
  • また、大学の主な機能(教育、研究、産学連携を含む社会貢献)全体の機能を見据えた政策設計が必要である。さらに、大学の現状を踏まえ、新たな考えの導入が必要ではないか。


(多様性、独自性の重要性と効率性の弊害)

  • 米英独に比べ、我が国は、大学間の論文生産性、研究費の相対的分布に関して、トップとトップに次ぐ層に大きな差があり、研究面での大学のトップに次ぐ層の厚みが急速に低下している。企業もダイバーシティ(多様性)を求められているように、研究も多様性を維持しながら世界に向けて独自性を発揮していくことが重要である。
  • また、過度の競争性は、研究時間の減少など、研究環境の悪化を招き、論文生産性の低下や、大学院教育が疎かになるなど、長期的に見れば必ずしもプラスにならないと考えられる。競争的資金等により、我が国においても任期付で雇用されている研究者が増加し、短期的な成果や視点にとらわれ、中長期的な視野で行う独創的な研究や挑戦的な研究が行えないという意見や、自発的研究に専念できる研究環境が確保できないなどの意見も多い。競争性と継続性、安定性のバランスは、拠点の施策を検討する際の重要な視点となる。


(基盤的経費の重要性)

  • 我が国の大学は、基盤的経費により長期的な視野に基づく多様な教育研究の基盤を確保し、競争的資金により教育研究活動の革新や高度化・拠点化を図るという基本構造によって支えられてきた。拠点施策を機能させるためにも基盤的経費の確保は必須である。
  • 一方、大学においても、IR機能の強化等を図り、明確なビジョンや戦略を立てて、自らの役割を明確にした上で、優れた研究成果を上げている研究拠点の継続性を確保するためにも、当該戦略等を踏まえて学内予算配分することにより、その意義を最大化すべきである。


(人材育成・確保の視点の重要性)

  • イノベーティブなアイデアを生み出すのは人であり、人材育成・確保の視点は重要である。特に大学は、大部分を構成する学生が次々と入れ替わる特異な組織であり、新しい学生の循環に研究の強みがある。その中で、イノベーション創出の中核となる博士後期課程に進学する学生の減少は大きな問題であり、要因の一つである博士後期課程の学生に対する奨学金等の経済的支援の問題やキャリアパスの問題を解決し、「博士離れ」を防ぐことが必要である。
  • また、地方にある大学等における研究環境の劣化により、研究者の循環がしにくくなってきているとの指摘がある。卓越した研究成果の創出は若手研究者のアイデアが重要であることは明らかであるが、人材の循環がなければアイデアも生まれない。これらは大学全体の研究力を強化する際には重要な視点である。若手研究者の多くが任期付になっているなど、大学に残って研究者を目指すには相当の覚悟がいる状況で、最も強化すべき若手研究人材の育成・確保が脆弱化していることから、国民の納得を得て、今後の成長を牽引する人材の育成・確保を念頭に置いた拠点政策や予算の充実が必要である。
  • 大学においては、基盤的経費の減少などにより、技術系職員を含む研究支援者が減少し、その業務の多くを若手研究者が担っているとの指摘もある。技術系職員やURAなど、研究を支える人材の育成についても、拠点の研究基盤を考える際には重要な観点となる。特にURAについては、博士課程学生のキャリアパスの多様化や、研究者の研究時間の確保などの研究環境の向上という視点から大学の組織を考える上で、基本的に組み込まれ、その制度の普及・定着を推進する必要がある。


(国際化の視点の重要性)

  • 世界規模の頭脳循環により、イノベーションを起こす優れた人材の獲得競争が世界的に激化する中で、我が国が研究力を強化するためには、優秀な人材とその多様性を確保することが必要である。このため、拠点施策においても研究環境の整備を促進しつつ、海外の優秀な研究者を受け入れや、若手研究者の積極的な海外派遣を推進していくことが重要である。


(2)今後の研究拠点政策の在り方について 

  • 研究力強化に関する拠点や研究大学への支援施策としては、拠点単位で世界トップレベルの研究拠点を形成する施策、個々の大学の枠を越えた連携によって、国際的に特色や強みを促進する施策、研究マネジメント人材の確保・活用を基盤とした研究環境整備によって研究大学群を増強していく施策等が存在する。我が国の研究力強化のためには、前出のビジョン・戦略の観点、多様性・独自性の観点、若手研究者育成の観点、国際化の観点を含めた施策の有機的な連携が重要である。加えて、人材育成に関する施策、大学改革に関する施策等とも連携して運用し、各事業間での相乗効果を生んでいくことが重要である。
  • その上で、今後の研究拠点施策においては、研究面で国際競争力を有する大学を増加させ、我が国の学術研究・基礎研究の研究力を強化するためにも、世界トップレベルの拠点について、引き続き支援を強化し、研究力を高めていく必要がある。
  • 一方で、トップに次ぐ層の大学にも、特定の分野では規模が小さいながらも我が国の研究をリードする優れた成果を上げている研究拠点(以下、「特定の分野で世界レベルの研究拠点(仮)」という。)が全国に点在している。大学の層の厚みの急速な低下や極端な資源の集中は研究の発展を妨げる懸念があり、これらを活性化することで、人材の好循環・流動化を促進し、我が国全体の研究力強化に資することが必要である。
  • このため、世界トップレベルの研究拠点への支援の手法・成果も十分に活用し、特定の分野で世界レベルの研究拠点(仮)を対象に、国際競争力の強化を図るべきである。
  • また、これらの施策の推進にあたっては、これまでの拠点施策の課題を考慮すれば、大学の強みを生かす多様な研究拠点への支援、研究拠点のネットワーク化の推進などの視点が重要である。


(3)今後の世界トップレベルの研究拠点の在り方


(世界トップレベル研究拠点形成プログラム(WPI))

  • 世界トップレベルの研究拠点を形成するWPIは、今後も新規拠点構築を継続する。我が国の大学等の現時点での研究力等を総合的に評価し、最大20拠点程度の構築を目指す。
  • また、WPI拠点をはじめとする日本のトップレベルの研究拠点をブランド化・ネットワーク化する新たな枠組み“WPIアカデミー”を設け、成果の全国展開と最大化を図ることとしているが、同時に、研究大学強化促進事業等、相乗効果が見込まれる事業との相互連携を図り、より効果的・効率的な成果展開が望まれる。

(学術研究の大型プロジェクト等)

  • 学術研究の大型プロジェクトについては、最先端の大型研究装置等により人類未踏の研究課題に挑み、世界の学術研究を先導し、国内外の優れた研究者を結集し国際的な研究拠点を形成するとともに、研究活動の共通基盤を提供している。
  • また、産業界との協働による技術開発により、イノベーションの創出に貢献するとともに、ノーベル賞の受賞につながる画期的な研究成果の創出により、国民、社会の学術研究に対する関心、理解、支援に寄与するなど、その意義は大きく、引き続き推進していく必要性が認められるが、厳しい財政状況により、安定的な運営費の確保に支障が生じるような状況にもあり、プロジェクトの支援期間の明確化及び評価の徹底など、進捗管理の仕組みの強化が望まれる。
  • このような中、学術研究の先端性、多様性を担保するためにも、学術研究の大型プロジェクト全体の遂行に当たり、より多くのコミュニティが参画する体制の構築が必要である。コミュニティに開かれた運営の下、世界トップレベルの研究拠点や特定の分野で世界レベルの研究拠点(仮)と、大学共同利用機関や共同利用・共同研究拠点との連携により、個の枠を越えた組織間ネットワークを構築し、効果的・効率的な先端研究を展開すべきである。


(4)今後の特定の分野で世界レベルの研究拠点の在り方


(特定の分野で世界レベルの研究拠点(仮)のイメージ、ミッション)

  • 特定の分野で世界レベルの研究拠点(仮)については、トップレベルの研究拠点とともに、我が国のイノベーションの源となる知の拠点として、特定の研究分野で我が国をリードし、国際競争力を有する拠点を形成するとともに、拠点間を通じた人材の好循環サイクルを促進し、我が国の研究力の向上に貢献していくことが求められる。その観点から、当該研究拠点は、国内外の研究拠点とネットワークを強化し、新たな学問領域を生み出すことを含め、当該分野における我が国の研究を牽引していくことが必要である。大学においても、当該分野の研究を自らの強み、特色と位置づけ、若手研究者の活躍促進を研究活性化のための重要な要素としてとらえ、組織運営に取り組んでいくことが求められる。


(特定の分野で世界レベルの研究拠点(仮)の支援の在り方)

  • 支援拠点数については、候補となる研究拠点の研究力を精査しつつ決めていくことが必要である。その際、一部の大学に偏らず、多様性を確保することや大学のコミットメントを求めること等を勘案しつつ、検討することが必要である。
  • 支援対象の選定にあたっては、当該拠点の研究力を適切に評価する必要があるが、基礎的な研究を振興していく観点からすれば、TOP10%論文の数だけを絶対的な基準として扱うべきではなく、分野別ごとの科学研究費助成事業の採択状況など、多様な基準を基にする必要がある。その際、例えば、大学改革を進めている大学、人材育成も含めて努力をしている大学、将来性や発展性が見込める拠点、組織の枠を越えた取組の推進状況、他の研究拠点事業での優れた成果を挙げているなどの観点も重要であり、各大学からの提案を踏まえて採択すべきである。
  • また、拠点の運営とそれを柔軟に実行する組織のマネジメントも重要であり、そのような組織、研究支援体制が組めているか、さらに、地域のニーズ・課題を踏まえた連携等、社会貢献を考慮することが望ましい。
  • 特定の分野で世界レベルの研究拠点(仮)であることが第一であり、支援対象の分野は限定されず、全ての学問分野を対象とする。支援対象の選定にあたっては、特定の分野の研究拠点のみに偏らず、我が国全体の研究力強化を図る観点から、研究分野の多様性確保等について配慮することも必要である。
  • 支援の形態としては、単独の研究組織等だけでなく、地域の中核拠点となり、人材の好循環サイクルを促進していく観点から、ネットワーク型のものも認めていくことが考えられる。
  • 支援内容については、博士課程学生も含めた若手研究者の育成・確保、URAをはじめとする研究支援者の配置、国内外の優れた研究者が腰を据えて研究に専念できる高度な研究環境の整備など、拠点の規模や研究分野の特性に応じ、多様な取組を一体的に推進できる自由度の高い拠点形成の仕組みを構築することが必要である。また、拠点の規模や分野の特性によって金額規模も柔軟に選択できるようにすることが望ましい。
  • 研究分野の特性や、人材育成面など短期間で成果が現れにくいことなど、様々な諸要素を考慮し、より効果的に研究拠点が形成されるよう、5年程度ではなく、10年程度の期間で投資して拠点を形成することが重要である。


(共同利用・共同研究体制との連携)

  • 特定の分野で世界レベルの研究拠点の特色を伸張するとともに、大学共同利用機関や共同利用・共同研究拠点をはじめとする他機関とのネットワークを形成し、我が国の関連研究者コミュニティ全体で当該分野を先導することにより、世界の優れた研究者を惹きつける国際的に魅力ある研究環境を構築することが重要である。
  • 大学共同利用機関や共同利用・共同研究拠点では、最先端の大型装置や大量の学術データ、貴重な資料などを共同利用できるシステムを持っており、大学院生の教育、特に博士課程の教育にも貢献している。新しく拠点を作る場合には、研究者コミュニティと連携した機関間のネットワークを介して若手研究人材の好循環サイクルを実現するような観点も重要である。
  • 共同利用・共同研究拠点について、共同利用・共同研究システムによる国内外を通じた先端的な研究成果等を上げているところには予算上の重点支援を行い、成果が上がっていないところは拠点の認定更新を行わないというような、メリハリのある評価を行っており、そのような評価と新しい拠点施策を連携させることも重要である。


4.研究拠点施策の推進にあたっての留意点


(大学改革との関連)

  • 研究拠点施策が効果を上げるためには、各大学の大学全体の改革の方向性と連動することが重要である。このため、研究拠点施策が、これまでの各事業・施策とどのような関連があり、大学がどのように対応すれば良いか、判断しやすいようにしていくことが必要である。
    また、拠点施策を通じて行われたシステム改革の成果を大学全体に波及させていくという視点も重要である。拠点の形成、維持にあたっては、大学におけるグランドデザインをもとに、研究の進展状況を踏まえ、既存の研究組織の再編成も検討しながら、拠点を大学全体の中で位置付けることが求められる。


(大学の教育機能との連携)

  • 最先端の研究に触れることは、優れた人材育成の面からの効果も高いことから、研究拠点においては、関連分野の大学院教育との連携が望まれる。研究拠点の活動と同じ分野、又は関連する分野において、優秀な博士課程学生の育成のために卓越した大学院教育プログラムを形成することを検討している場合は、それとの連携を図っていくことが望ましい。


(優れた成果を上げている研究拠点の継続性の確保)

  • 我が国の研究力を高めていく観点からは、優れた研究成果を上げている研究拠点の継続性を確保していくことは重要である。このため、大学が円滑に自主財源による措置が可能となるよう研究支援期間は10年といった長期とすることが考えられる。
    また、研究拠点事業の評価を踏まえ、高い成果を上げた優れた取組について、補助期間終了後も継続的な取組を行うことができるような仕組みを構築することも有効であると考える。
    また、WPIアカデミーのような優れた成果のノウハウを展開させていくような施策を併せて推進していくことも効果的であると考えられる。


(産業界との連携)

  • 組織対組織の産学官連携が求められていることを踏まえ、産業界の知を拠点に取り込むなど大学と社会の知の循環を活性化させることが必要である。併せて、若手研究者が大学から産業界へ、また、産業界から大学へと、セクター間を移動するような流動性の促進が重要である。そのような観点から、産業界と連携し、分野の特性に応じた共同教育プログラムなどを設けることも考えられる。
    また、基礎的な分野の拠点であっても、研究シーズを産業界等に広く橋渡ししていくことが必要である。
    なお、産業界からの資金調達は極めて重要だが、それを必須にすると、そこに対応できない研究分野が存在するので、その点を念頭に置く必要がある。

(情報基盤の充実)

  • 研究拠点における研究力強化のためには、研究の基盤となるネットワークや学術雑誌等研究成果の流通を含む情報基盤の整備・充実が不可欠である。中でも、急速に増加するビッグデータが有する価値を十分に利活用するためには、我が国発の膨大かつ高品質な研究データを利活用しやすい形で集積し、産学官で共有・解析するデータプラットフォームの構築が重要である。自然科学分野においては着手されつつある状況に比べ、社会科学の分野においては、社会全体を網羅する大規模データによる実証研究が不可欠であるにもかかわらず、欧米や中国をはじめとするアジア諸国と比べても対応が遅れており、その構築が必要である。


5.おわりに 

  • 本懇談会は、昨年9月以来、○回にわたる会合を重ねてきた。
    研究拠点政策については、世界トップレベルの研究拠点について引き続き強化を図るとともに、その成果展開の最大化を図ることが重要であるとした。
    それに加え、我が国の大学については、諸外国と比較しても論文生産性、研究費の相対的分布で大きな差があること、近年の拠点施策が大型化・重点化していること等を踏まえ、全国に点在する、特定の分野で規模が小さいながらも我が国をリードする優れた成果を上げている研究拠点について、各大学における改革の取組や他の関連施策とも連携して支援し、国際競争力を強化することを提言した。
    研究面で国際競争力を有する大学を増加させ、大学間・拠点間の人材の好循環サイクルを促進することが、我が国全体の研究力向上のためには不可欠であると考える。
  • 研究拠点政策が効果を上げるためには、大学改革に関する施策を含め関連施策について有機的に連携させることが必要である。この点に十分留意して施策の実現を図ることを求めたい。
  • また、大学の研究力を強化するという観点から、研究拠点施策の内容にとどまらず、若手研究者や博士課程学生についての問題、基盤的経費の重要性、などについても議論し、言及している。
  • 今年度より第5期科学技術基本計画期間がスタートし、同時に第3期国立大学法人中期目標期間がスタートした。大学等をめぐる環境変化は一層加速している。このような状況において、大学の研究力を強化するためには、研究拠点施策だけでなく、上述のような重要な課題を関係審議会等において引き続き検討していくよう要望する。

お問合せ先

研究振興局振興企画課学術企画室

(研究振興局振興企画課学術企画室)