平成28年6月7日(火曜日)13時00分~15時00分
文部科学省 15階 15F特別会議室
(委員) 髙井主査,伊藤委員,田中委員,辻委員,西島委員,福山委員,藤井委員,山田委員,横山委員,吉田委員 (説明者) 理化学研究所計算科学研究機構(AICS) 宇川副機構長 (高度情報科学技術研究機構(RIST) 関理事長,平山センター長 HPCI戦略プログラム推進委員会 土居プログラムマネージャー
生川審議官,榎本参事官,工藤計算科学技術推進室長,阿部参事官補佐
(1)HPCI戦略プログラムに係る事後評価について
土居プログラムマネージャーより資料1-1, 1-2に基づき説明。質疑応答は以下の通り。
【田中委員】 どうもありがとうございました。
資料1-1と資料1-2と見させていただきまして,特に1-2を読ませていただきまして,分かりました。
1つ追加の質問をさせていただきたいんですけれども,これは多分,第2回だと思うんですが,2回か3回のときに,各戦略の分野,5分野がございますが,その分野の中に,研究課題がまた細分化されているんですが。
【土居プログラムマネージャー】 はい,分野によって。
【田中委員】 その計算資源の使用の御報告があったんですけれども,その中に,使用されなかった資源というのがありました。これは幾つかの研究課題に関してございましたので,この使用されなかった資源というのは,どういう性質のものなのかという質問と,それをうまくやりくりして,きっちり使い切る。例えば,研究課題の中でシェアするとか,あるいは,分野を超えてシェアするとか,そういうきっちり使う,効率的に使うメカニズムというのはございましたのでしょうか。
【土居プログラムマネージャー】 使用されなかったというのは,時々,途中のときにもチェックを入れたときにも出てきているわけなんですが,要するに,準備等々がなかなか思ったようにはかどらないというようなことだとか,実は,いろいろ進めてみたら,後でまとめてやった方が効率がよさそうだというようなことで,使用されないというのが幾つか出てきました。それをどのようにしたかと言いますと,その分野の中で,一番は,効率よくその部分を供出していただいて,やりくりしていただくというのが一番のあれでございます。
ただ,最後の最後になって,やっぱりできませんでしたというんで,次年度に回したいというのが出てきたようなこともたしかあったような気がするんですが,その場合には,もうにっちもさっちもいかないというようなことがあったように思っております。
【田中委員】 はい。
続いて,HPCI戦略プログラムに係る事後評価の素案について,事務局より説明。質疑応答は以下の通り。
【辻委員】 非常にうまくまとめていただいているかと思うんですけれども,課題の達成状況及び成果につきまして,できましたら,例えば,数値,データ的なものであったり,あるいは,このようなトップデータが出ましたというような話を入れていただくとしますと,よりこの営みが非常に効果的なものであったということが強調できるのではないかという気がいたしました。
以上でございます。
【阿部参事官補佐】 少し説明が少なく大変恐縮ですけれども,今の御指摘のところは修正させていただければと思います。
また,この後ろに,これまでこの会議で説明のあった資料を幾つか参考資料として入れていこうかと考えておりますので,そのあたり,また御相談させていただければと思います。
【髙井主査】 では。
【西島委員】 よくまとまっていると私は思います。
もちろん,この後に細かい説明があるということが前提ですけれども。細部について質問が2つあって,その細かい中には,例えば,企業コンソーシアムでは,何社ぐらい入ったということは,後の説明にあるのでしょうか?また、多くの企業というのは,何をもって多くのとか,コンソーシアムが形成されたという中身のことは後の資料で分かるようになっていれば,もうこれでいいと思いますが。そこは同じ。
もう1点は,「産業界においては,本プログラムでの先導的な研究開発は,5年から10年先に企業において実用することを念頭に研究活動に参画しており」という,ここの一文ですが,例えば,具体的にどういうことを想定しているのでしょうか?つまり,これを見たら,本プログラムでシミュレーションされたものが,5年,10年後に製品になるとか,どういう内容を想定しているのでしょう。
【阿部参事官補佐】 説明がここも足りていないかもしれませんが、先導的なアプリケーション開発,フラッグシップマシンである「京」でやっているシミュレーションを,企業の方で最先端のスパコンを導入し,「京」でやったシミュレーションや研究というものを実用的なレベルで使っていこうという場合に,タイムラグがこれぐらいだというような議論がございましたので記載しておりますけれども,御指摘のとおり少し説明が足りていないと思いますので,補足させていただければと思います。
【西島委員】 この先導的な研究開発というのは,プログラムそのものを指していて,このコンピュータのプログラムが5年,10年先に企業においてより適用されると,そういうことですね。
【阿部参事官補佐】 はい。
【西島委員】 ちょっと,私,誤解していました。その意味合いですね。分かりました。
【髙井主査】 では,ほかに,御質問,御意見。どうぞ。
【吉田委員】 意見になると思うのですが,今日,事前に送ってもらった評価案を含めて,若干違和感を持っています。
1つは,余りにも無謬性が見え隠れしていることです。先ほど,こちらの資料も頂きましたけど,「京」の現時点での評価部分に否定形を使っているのは1か所だけなんですよ。こういうことができなかったと書いてあるのは1か所だけなんです。だから,非常に読みづらい。現状の評価において「これができました」,「これができました」と書かれ,ポスト京の開発による課題解決についても「これもできます」,「これもできます」と書かれている。,これでは、一体何が現時点における課題であり、ポスト「京」の開発につながっていくのかという流れが,逆に分かりづらくなっている。
皆さんの御努力とか,今回の,私,初めて対応していただいた姿勢とかって,すごく高く評価しているのですが,今回,この中間報告書(素案)を見ても,ほぼ無謬ですと。私たちに何の誤りも問題点も反省点もないという文章にしか見えないのです。
そこで,もう少し率直に,今抱えている課題を明確にして,次につなげるという姿勢を表現する必要がある。実際,皆さん,今そうした課題への取り組みをやりながら,,運用段階に入ってからも課題解決に努力してきていらっしゃるわけですから,その辺をもう少し明確に整理された方がいいのではないかと思います。。
特に,評価委員会も終わりに近いと思うので,意見を言わせていただきたいのですが。これはもうこの「京」だけの話ではないんですが,戦略のブレークダウンが非常に抽象的で甘いなと,我々民間から見るとどうしても思ってしまいます。今回も感じました。
戦略のブレークダウンが不十分であるという1つの証左は,これを開発して運用にかかる段階で,今回やりとりをして,皆さんがいろいろ工夫してくださいましたけれども,評価基準を考えざるを得ないと言う事実です。実は,戦略を立案時点でブレークダウンがきっちりできていれば,具体的な評価基準がもっと最初から定まっていたはずなんです。今回みたいな抽象的な議論がここでは起こらなかったはずなんですね。先ほど言いましたように,定量的に,若しくは定性的に,この部分についてはこういう評価基準だというのが,実はこの開発計画作成段階でできていなければおかしいんだと。それが戦略のブレークダウンなのだと我々は思っています。評価基準,ベンチマーク,評価方法が明確になっていない状況では,戦略が精緻につくられているとはとても言えないと我々のビジネスの世界では考えられるんですね。
だから,今回も,お話をやりとりしながら,評価基準を定めていくという作業をしたわけですが,これについては,まだ不足していると思っています。特に産業分野,それから,公共的な成果という面では幾つか出てきていますけれども,科学技術研究において,我々の文化,文明,社会に対してどれだけのインパクトを与えて,それを科学研究の世界で評価できるかというところの指標は,やはり明確にはなっていないと。こういった基準をつくるということも,1つの大きな取り組みであり、課題であると思っています。
それなしで,このまま,現状の評価基準のようなレベルのままでポスト「京」の開発に走れば,また同じような議論が繰り返されるのではないかと考えています。決して産業面での成果だけや,医療等,地震等の公共的な効果だけを評価すべきだと僕は言っているのではありません。科学技術面での効果も評価すべきだと。だからこそ,評価基準を明確化する努力を今からしておかなければいけないと考えています。
それから,もう一つ,ここには書かれていないんですが,コンソーシアムの展開に関しては,非常に感心いたしております。皆さんの御努力を高く評価できるのではないかと思います。ただ,やはりこの前の委員会でも申し上げましたように,今回の中間評価委員会でも私一人が感じていたのだろうと思いますが,関係者だけによる,関係者での審議というふうな感じを私は受けています。我々は,科学技術分野だけではなくて,どんな組織においてもムラ社会というものはできやすいのですが,特にこういう大規模な公的資金を投入した公共的プロジェクトにおいては,それは極力避けるべきだと考えています。これは皆さんも御存じでしょうが,ドイツの原発政策では,今のメルケル首相が倫理委員会をつくりました。そのメンバーには,単なる科学技術研究の専門家だけではなくて,例えば,科学技術史の専門家であったり,宗教家であったり,倫理関係の専門家であったりというような専門家も入れています。
私は今回感じていたのは,産業的評価,人材育成での評価,それから,学術的評価の3つの軸の評価基準が必要だと思うんですが,これに関しては,もう少しその分野の専門家,計算科学や計算機科学以外の専門家,このプロジェクトを社会的な視点や学術的な視点からもっと客観的に見える方もコンソーシアムに日常的に入れるなり,こういった中間評価委員会に参加させるなり,違った評価の視点を導入すべきだと思っています。
特に科学に関しては,これは研究者の皆さんは御不満かもしれませんが,社会的な評価の視点というのは,科学技術者が,これは真実なんだ,これは事実なんだ,これは高く評価されるべきなんだと思っているのとは別に多元的な評価基軸を社会は持っています。例えば,税金の投入先として適当か,産業的に活用されているかいないのか、産業に活用されて良いのか否か、若しくは,これは我々文明社会に対して非常に有用な警鐘を鳴らしている研究なのか,否か,そうした多元的な社会の価値観に科学者が説明責任を負うのは当然だと思います。しかも,公的資金をこれだけ投入している以上,これは単なる政策的なマーケティングやパフォーマンスとしてではなくて,そもそも公的資金を投入した中で,科学技術研究を行っていく者としての責務であり使命だと思っています。
それに関して,今回,評価のための定量的なおかつ総括的な数字を我々は見ることができませんでした。だから,今回,人材の育成がうまくいっているかどうか,それから,確かに,コストパフォーマンスとして努力をされているかどうかというのも,個々の説明はあったのですが,総合的に評価するための数値の提示は我々は受けていないと,私自身は感じております。ですから,是非,ポスト「京」に向けて,そういった課題を抱えながら,それを乗り越えて,次にステップアップしていかなければならないのだという評価を,文部科学省も,理研や皆さんも,コンソーシアムの皆様も,ここは真摯に,本来は書き込むべきではないかというふうに考えております。
もう1点だけ言わせてもらうと,どうせ専門的な分野の議論ですから,あなた方素人には分かるはずがないでしょうという上から目線にどうしてもなりがちです。私たちは開発者であり,研究者であり,利用者であり,身内なのだと,そういう考え方で評価をしても,何ら社会的には意味がないと考えております。よりよいものを求めていくというエンジニアリングとか科学技術者の姿勢というのは非常に高く評価するのですが,対内的なムラ内部ではざっくばらんな議論ができても,ムラの外、つまり対外的になるとどうしても批判や否定を恐れて,無謬性を追い求めてしまいがちなものです。でも,結果的にそうした姿勢は逆効果になるのではないかと思っています。だからこそ,できるだけ分かりやすく,なおかつ,情報の開示の幅を広げて,理解を求めていくというところを更に向上させるべきであり、そうした姿勢からすれば今回の中間報告の書き方も,自ずからもう少し変わるのではないかと考えております。
非常に抽象的な指摘で申し訳ないんですが,どうしても今回,議事録にとどめておきたかったので,申し上げました。
【髙井主査】 どうもありがとうございました。非常に貴重な御意見で,非常に本質を捉えて,また,ポスト「京」に向けて,どういうふうに取り組んでいくかということを考える上で,非常に有意義な御意見だったと思うんですが。
山田委員の方から御質問ございますか。
【山田委員】 それの一例みたいなところで,ほとんどの文章は頭の中にすーっと入っていくんですが,一部分,ちょっと引っかかるようなところがあって,それはやはり何か抽象的な表現かなというところが一部あったんで,ちょっと指摘させていただきたいんです。
(2)の成果のところの,一番最後の丸印なんですね。それで,そこのところ,「各統括責任者のリーダーシップにより,本プログラムの予算範囲を超え,多くの参画企業との共同研究や他のプロジェクトとの連携が推進される体制が構築された」と。これ,一体具体的に何を表現しているんだろうかというのが,私にはちょっと。この文章が特に抽象的に映って,もう少し具体的に分かりやすく,一体何がなされたのかというようなところが,やはりできれば数値化したものが出てきた方がいいのかもしれませんが。とにかく,こういうちょっと抽象的過ぎて分からない表現が一部見受けられるというところが感じられました。
先ほどの吉田委員の御指摘のごく一部の具体例的な内容かと思いますが。
【髙井主査】 ありがとうございます。
私も,今御指摘いただいた(2)の成果の最後,「本プログラムの予算範囲を超え」というくだりが何を伝えようとしているのかがちょっと分かりづらいところかなというので,質問しようかなと思っていたところなんですが。もし今この場で御回答いただければ。
【阿部参事官補佐】 ここのところは,企業コンソーシアムのことを念頭に置いていまして,このプログラムで配分されている予算が直接行っているところではない,更にそれより外の広がりが体制として大きく構築されたというお話があったかと思いますが,それを念頭に記載しているところでございますが,御指摘のとおり分かりにくいところがありますので,もう少し具体的に記載できるようにしたいと思います。
【土居プログラムマネージャー】 ちょっとよろしいでしょうか。先ほどの吉田委員の最初の,戦略がないとおっしゃられた。
【吉田委員】 ないとは言っていません。ブレークダウンが不十分と。
【土居プログラムマネージャー】 ブレークダウンがという。実は,どこからどこまで初めのときに説明があったかというのは,私,承知していないのがまたいけない面がないとは言えないんですが,この戦略プログラムをつくるということに関しましては,かなりの時間をかけ,我が国がどういう分野を,やはり10年,20年先を見越したときに必要になるかということを,いろいろ調査研究等々も行った上で,絞り込みを何度もやりました。
やった結果,そこへ向けて,今度は,どこがやるかということで公募をしまして,そこへ応募された機関を幾つか統合してまで,3機関統合とか,2機関統合だとかして,最終的な5分野で。もちろん,全部通ったわけではございませんで,落としたところが多数ございますが。
そういうようなことをした上で,さらには,我が国として,その分野をどのようなことで考えているんだということを,こちらの方からも申し上げた上で,その実施の計画書を出していただく。したがって,そこには,今現在,それまでもそうですが,今現在は,要するに,どこまでできていて,それがこれをやることに従ってどこまでできるようになるかということは,提案書等々が明確に書いてあるんですね。それに基づいて,こっちがまたヒアリングを踏まえた上で,本当にできるのかとか,もっといくんじゃないかとか,そういうようなことをやって,最終的には,その中が分野によってサブが,さっきも出ました,7つあったり,5つあったり,大きく2つになったりするのは,結果として,ばらまきになってもらっても困りますので,その中でも絞り込んでもらうということをやった上で,そういうところを進めてまいりまして。さらには,そういうような全体のものが,本当にそういうような考え方でいくかということで,先ほどのメンバーのところにございますように,各分野に作業部会というのをつくって,ここで,アドバイザーですが,つくって,もちろん,具体的な時間配分等々までもやってもらっているわけですが。
したがって,多分,吉田委員のおっしゃっているようなことは,我々としたら具体的にやっていたつもりではあるんですし,やった証跡は残っているはずなんです。ですから,それをどこまでどのようにお示しするのがよいかと,こういう話になってくるんだと思います。
【吉田委員】 おっしゃるとおりで,実は,今の研究そのものの,各分野の研究のところのロードマップなり評価のことを言っているわけではないのですね。実は,スーパーコンピュータ「京」の開発そのもの,それから,もう一つは,全体運用,これ,組織づくりも含めてですね。そこの戦略のブレークダウン,評価基準のお話を先ほどさせてもらいました。
この一つ一つの研究について,この評価は皆さんの方で,当然,何回も我々,これまで説明を受けたように,きっちりされているなとは思っています。
【土居プログラムマネージャー】 「京」のとおっしゃるのは,どこの部分のことをおっしゃっているんですか。
【吉田委員】 要するに,計算機の開発,一千何百億かけたと。
【土居プログラムマネージャー】 いえいえ,全体が1,111億。
【吉田委員】 そうですね,全体が。それと,ランニングが毎年要っていますよね。この部分の全体の話であって,研究の部分の評価というのは,またそれはそれであるとするんですけれども,この事業,プロジェクト全体の話としてしています。
【阿部参事官補佐】 少し補足させていただきます。
今見ていただいているのは,あくまでHPCI戦略プログラム,アプリケーション開発事業の事後評価のところでございまして,本日この後に,この委員会で随分議論いただきました「京」の総合的な中間検証ということで,そちらの方に今の御指摘の部分も入っているかと思います。
【吉田委員】 そうですね。おっしゃるとおりなんですけど,アプリケーションのところだけ言っても,一つ一つの研究の成果評価ということではなくて,ここで出ていらっしゃるのは,その研究の成果を,アプリケーションの方の研究の成果評価をするためにということで,全体的にこういう運用をしてきましたという話に対しての評価をしなくてはいけないということですね。
【土居プログラムマネージャー】 はい。
【吉田委員】 一個一個の研究の,各分野の研究の進捗状況のチェックなり,最終の評価というのは,これはまた別途,それぞれ個別に書かなくてはいけないとは思うんですが,全体のこの運用部分についての話なので,先ほどのような話を申し上げたということです。
【土居プログラムマネージャー】 なるほど。
そうすると,私が事務局に伺いたいのは――事務局に伺うのか,髙井先生に伺うのかな,本来は。この資料3というのがございますね。「スーパーコンピュータ「京」中間検証報告書」というのが。これがスーパーコンピュータの意義及び価値というようなところから始まってきますが,これが,今,吉田委員の方からお話があった,スーパーコンピュータそのものに関する報告書になるんですか。
【阿部参事官補佐】 はい,「京」の報告書,今回の検証の報告書になります。
【土居プログラムマネージャー】 この2種類のものが出ていると。
【阿部参事官補佐】 正確に申し上げますと,この中間検証の報告書があって,それとは別といいますか,それと並行して,役所でやっております事業の評価として,戦略プログラムが終わりましたので,その評価をこの評価報告書,この様式に基づいて書いている。それと併せて,中間検証とはまた別に,「京」の方も,こういった同じような様式で中間評価というものを作っていくということになります。
【土居プログラムマネージャー】 なるほど,分かりました。
【吉田委員】 今回は運用の方ですよね。運用についても,総体的に私はそういう感想を持った,意見を持っているということです。
【土居プログラムマネージャー】 はい。
【髙井主査】 じゃ,よろしいですか。じゃ,福山委員。
【福山委員】 今,吉田委員と土居プログラムマネージャーからの話で,ちょっと齟齬がありました。実は,私,当初から理解が明確にできない。今ももう少し何か工夫があっていいんじゃないかと思っている点が,まさにそうです。つまり,「京」全体のオペレーションと,このHPCI戦略プログラムのオペレーション,確かに違うもの。その違いが,どういう位置付けで違っているかということが,ともかく分かりにくいんです。明快にしないと,議論が錯綜する。
確かに,今日のHPCI戦略プログラム,これは5つの分野でのいろいろな研究成果の話。ですけど,今日のお話でもありましたように,このHPCI戦略プログラムは,「京」の資源の半分を使っているマジョリティです。だから,話を聞いていると,「京」全体のアクションと極めて混同しやすい。外から普通に見ていたら,中の詳しいことを知らない人だったら,これ,「京」そのものだと思っても全く不思議はないです。そういう認識で意見交換が出やすいです。
実際,今日の,先ほどのHPCI戦略プログラムの事後評価結果云々のところでも,やはり「京」の全体のオペレーションとの関係でのコメントが入ってきているんですよ。
【吉田委員】 そうなんですね。最後に入っていますよね。
【福山委員】 で,成果云々,いろいろある。さっき吉田委員もおっしゃったように,そのときに,何にも問題がなかった,全てよかったよかったというふうに確かに書かれている。概ね。これはやはりいろいろ気になってきます。
具体的に申し上げます。成果,丸の4つ目,「研究開発体制については,多くの参画機関で構成された体制において,その役割分担と連携は概ね適切に機能した」と。これはどういう意味だろうか。本当だろうかと。
具体的に,更に言いたい。このHPCI戦略プログラムの中に,AICSが入っているんですよね。AICSの位置付けが,要するに,分かりにくい。推進委員会の中にはAICSが入っています。計画の方は入ってない。AICSがこの戦略プログラムの推進にどう関わっていたか。具体的に,研究成果の発表の際に,しばしばAICSの成果の中に,実は,分野で強調されているような成果がよく混ざっている場合があったと思います。私の誤解でなければ。そういう事実も踏まえると,更に分かりにくくなる。
確かに,今回,今まで議論しているのはプログラムそのものなんですけど,実は,背後に「京」全体のオペレーションの問題が見え隠れしている。その境目を付けられるものなら付けて,成果と課題。やっぱり報告書に課題が全然ないというのも,これは不思議ですよね。いろいろあったはずじゃないかと。そういうのを分けてきちっと書くと,さっき吉田委員が言われたように,これからどうすべきかということはより見えてきて,アクションターゲットがはっきりする。そうすると,外の人も,「それだったら,これは是非克服してください。やってください」という,そういう気になるんじゃないかなと,そういうふうに思います。
ということで,読んでいて,「京」全体のオペレーションとHPCIの境目があるんだったら,どこなのか。その際に,AICSがどっちに入っているのか,どうなのか。そういうことを考えたときに,先ほどのインダストリーとの応用とか何かは,それはいいんだと。それもあるけれども,大事な科学技術,日本のサイエンスのこれからに対して,どういう役割を果たそうとして,どこまで実現できて,どこが課題が残っているかとか,そういう記述はやっぱりあった方がいいんじゃないかと。それ,ないですよね。
幾つかごちゃごちゃになって話しましたけど。
【工藤計算科学技術推進室長】 どこからお答えしたらいいか分からないですけれども,まず1つ,報告書のフォーマットの関係を1つ申し上げますと,特に今議論しているこのHPCI戦略プログラム事後評価結果は,あくまでも国が委託して,各5分野において研究成果を出してくださいという,そういう内容の委託ですね。これに対して,どうできたかを切り出して。
【福山委員】 そのときに,AICSは全然関係ない。
【工藤計算科学技術推進室長】 AICSは関係ないです。そういう意味だと。
【福山委員】 前面には出ないですね。
【工藤計算科学技術推進室長】 前面には出てこないです。これはあくまでも国と,それぞれの大学を中心とした研究体制機関。先ほど,研究体制機関はうまくできたということに対して,いろいろ御疑念があったというふうに伺っていますけれども,これはコンソーシアムをつくるなり,それから,AICSは表向き出てきませんけれども,後で宇川副機構長から補足があると思いますが,例えば,OSの部分であるとか,コンパイラであるとか,ライブラリの構築,こういう点で,これは横串ですね。それぞれの研究課題に固有の問題ではなくて,横串に関わるものについては,ある程度AICSの方から技術的な参画というのもありました。
まず,この報告書のつくりのここの部分に関して申し上げると,これはこれで,1つのHPCI戦略プログラムという,我々の別事業ですね。「京」を大きなプラットフォームとして,その上に走っているある種の列車なりトラックの評価を,これだけ取り出して評価している,そういうものになっています。
【福山委員】 その段階だと,国全体での科学技術の活動の云々という,そういうのは論外になるんですか。
【工藤計算科学技術推進室長】 そういう話になってしまいます。というのが,すみません,誤解を招いているのが第一。
【吉田委員】 申し訳ないけど,評価案そのものが大混乱していますよ。これ自体が。これ,もう一回整理し直した方がいいんじゃないですか。
ただ,これとあれとは別だとずっとおっしゃるけど,別じゃないですって。インフラとして「京」があり,そのソフトインフラとしてほかのものがあるわけですよね。その中の一つのプログラムとして走っているということなんですよね。だから,全部,多分,総合的に影響があって,書かざるを得ない部分も出てくるのはしょうがないとは思うんですが。それも課題として出てくるのなら分かるんですが,こういう抽象的に無謬性に満ちた文章でさらっと書かれると,何が何だか分からなくて,しかも評価案の最後には,次世代スーパーコンピュータは必要不可欠だと書いて終わっている。一体,これは何を評価しているのかさっぱり分からないから。
【工藤計算科学技術推進室長】 こちらの話ですか。
【吉田委員】 そうそう。
【工藤計算科学技術推進室長】 こっちの,だから,今の戦プロのこの話ですよね。
【吉田委員】 そうそう。
【工藤計算科学技術推進室長】 そこで,更にもう一歩申し上げますと,この戦略プログラムは,ある種の,こういうプログラムをつくってくださいという我々の国からのオーダーがあって,それに対して,科学的にかつ社会的に必要となるプログラムをつくっていただいた。これは,まず専門評価委員会に,土居先生の下に専門的に評価していただいて,先ほど定量的なお話もありましたけれども,例えば,幾つかのプログラムの中で,気候・天候みたいなものの世界の中では,どれぐらいの規模で――規模感があるわけですね。全球でやれました。それまでは小さいレベルでやれていたのが,全球レベルでできて,それは何日間回すことができたとか,こういう科学的な世界の中での定量的な説明ができることもちゃんと評価しています。それをやった上で,プログラムとしてはそれぞれ国が求めるというか,もともとこの「京」において使うような,8万2,000ノードを使った計算ができたということを評価しているのが,まずこのペーパーのつくりになっています。ここまでがまず1つで。
もう一つは,この後,議論させていただこうかと思っておりますのが,資料3の方の特定拘束電子計算機(スーパーコンピュータ「京」)中間検証報告書になります。ここは,この後御説明しようかと思いましたけれども,むしろプラットフォームとしての「京」。先ほど,プラットフォームの上に,プログラムとして,列車としてのこの戦略プログラムが走っていると説明いたしましたけれども,プラットフォームとしての「京」がどういう役割を果たしていて,それについて,運用面において,これはある程度鉄道のアナロジーで言えば,鉄道運行会社がきちんと走らせることができるような線路を整備して,その上に乗っているダイヤグラムを作ってということができているかどうかという点を評価し,それについて,まだ足りない点,それは,この上に走ったプログラムが今後どう活用されていくのかということを含めて,この中に述べさせていただいております。
多少定量的な書き方の部分では難しい面がございましたけれども,今後,その辺のものも,これはまだ素案でございますので,入れさせていただこうとは思っております。
その前に,簡単に御紹介させていただくと,今回,この「京」の在り方というか,計算機というのは一体どういうものであったのかということの説明に加えて,ここの今の「京」の現状と,その現状に対する検証はどうであったかというのをまず書かせていただいて,それに対して,この委員会の中で御議論があった点を,今後の留意事項という形で,課題になっているのではないかということをそれぞれ記させていただく構成をパートごとに取っております。
その中でも,後で御議論いただければと思うんですけれども,例えば,この現状認識がそもそもおかしいのではないかとか,あと,今後の留意事項等の中に,これは課題という書き方をしてもいようかと思うんですけれども,ここにまだ足りていない点があるということでは,そこを述べていただくとか,そういうことを期待して,今回,こういう素案を提示させていただいているところではございます。
【髙井主査】 じゃ,ちょっとここでひと区切りします。非常に重要なポイントなんですけれども,次の議題に関係してまいりますので。
それで,我々の委員会としては,やることが2つあるわけですよね。1つは,今議題になりました戦略プログラムの事後評価の内容を確認させていただくということ。これはかなりケース的な内容になるのかなとは思うんですけれども,まず,そういう確認という作業が1つと,それから,後半は,これから議題になりますけれども,「京」の総合的な評価の中間まとめということですね。
ということで,密接に連携はするんだけれども,性格はかなり違うものであるというふうに我々は認識しております。とはいえ,今日頂いた素案については,何人からの委員からも御指摘ありましたように,やはり抽象的な表現が多すぎて,分かりづらさを増幅しているところがありますので。それで,なるべく数値的に書けること,客観的に定量的に記載して問題のないことは,積極的にそれは盛り込むべきだと思うんですね。付録に付けるだけではなくて,なるべく表に出した方がよろしいのではないかなと思います。
ということで,そういった見直しといいましょうか,引き続き検討が必要かと思いますので,本日頂きました議論を踏まえて,次回の評価案を引き続き検討を進めていきたいと思いますけれども,そういう形でよろしいですね。
【伊藤委員】 1点だけいいですか。
1点だけお願いしたいのは,一番分かりにくかったのは,主査の方からお話があったところの,分野1から5の資源配分がほぼ等しいというところがですね。中には,うまくいってすごく進行してしまったところとか,不足している,例えば,産業利用枠や一般利用枠で展開しているというところがあるんでしょうけれども,どうもその辺が納得性がちょっと足りないなという感じですね。最初はそういうふうに設計したとして,やはり進度が違うということはあり得るんじゃないかと思うんですが。
【土居プログラムマネージャー】 よろしいですか。
【髙井主査】 では,手短によろしくお願いします。
【土居プログラムマネージャー】 御覧になっていただければお分かりになれると思いますが,この3ページを御覧になっていただきますと,これが資源配分ですが,要するに,でこぼこございますよね。26年度までは。ですから,一番最初は,24年度ももうでこぼこがあるわけですが,基本的なところは均等配分をし,その後,重点配分と称して,それぞれのところから出てくるものをこちらも全部精査した上で,それで,どこにどの程度配分するかということをやっているわけです。
ですから,一番最初のところの24年のところは,青が一線になって斜線が出ますし,その次は,青が一線になって出ますというのは,これは均等配分をしているというのは,分野別で特段,要するに,何かに付けての優劣というのは分からんと,そういうところで差別すべきではなかろうということがありまして,そこから伸びているところが差別しているというようなことで御理解いただければと思います。
全部が全部,皆均等ではない。一番下は均等です。これは先ほども申し上げたように,こっちの赤でも書いておりますが,最終目標の達成に向けて,分野の裁量分を多くし,追加配分の申請に係る研究者の負担をなくす観点から,全部同じにしちゃったと。ただ,中で濃淡があるように,分野の中で任せたということになっております。
【伊藤委員】 それはダイナミックにやっておられるということですね。
【土居プログラムマネージャー】 はい。
【伊藤委員】 分野4なんていうのは,大体産業枠というか,一般利用枠の方にどんどん流れていくというか,そういう傾向があるんじゃないかなとは思うんですけれども。例えば,25年度では追加しても,26年度ではそこそこに収まるということになるとすると,重点課題としては,もう枠内でできるというようなことを表わしているのではないかとは思うんですが。そのことが先ほどの文章の中に盛り込まれているわけですよね。要は。
【土居プログラムマネージャー】 一般利用枠は無関係で。
【伊藤委員】 無関係ですよね。
【土居プログラムマネージャー】 はい。
【伊藤委員】 ですが,本プログラムの予算範囲を超えと書いてあって,しかも,例えば,HPCIを使っているのであれば,それは産業利用枠であるとか一般利用枠にリンクしているんじゃないかなというか,シフトしているんじゃないかと思っているんですが,そうではないんですか。
【土居プログラムマネージャー】 これ,違うんでしょう。違うんですよ。
【髙井主査】 そういう意味ではないですね。
【阿部参事官補佐】 このプログラムで割り当てられた計算資源は,資源としてその課題で使っています。ここで書いてある多くの参画企業云々というところは,予算はその企業さんなりが自分たちで出した上で共同研究をしていらっしゃるとか,そういったところを記載しているところでございますので,計算資源の話とは違うものでございます。
【榎本参事官】 御指摘いろいろありがとうございます。次回に向けまして,今日の素案の資料の更新を準備する際には,このプロジェクトに関しますプロジェクトマネジメント,どういう方針でやっているか,実際どうしたかということもきちんと説明をしたと思います。今日,そういったところを大分省略しておりましたので,そういった観点で,無謬性のような感じに見える観点もあろうかと思いますけど,ここに至るまでかなり厳しい議論を,各プロジェクトリーダー,そして,この議論していただいてきておりました戦略プログラム推進委員会,そのあたりでかなりきちんとした体系的な議論を組み立てていきながら,どこが挑戦できるかということでかなり詰めたところでございますので。そして,そうしたことを複数年間にわたってやりながら,どのテーマに重点を置くかということも,きちんとシステマティックな枠組みをつくってやってまいりましたので,そうしたお話をきちんとまず御説明することが必要かなと思いましたので,次回それを用意いたします。
【髙井主査】 では,その点,よろしくお願いいたします。
(2)「京」の総合的な評価検証について
理化学研究所と高度情報科学技術研究機構より資料2-1, 2-2, 2-3に基づき説明。
JASRI常務理事の田中委員より資料2-4に基づき説明。
質疑応答は以下の通り。
【髙井主査】
私からの質問なんですけれども,SPRUCの歴史の中で,最初は利用者懇談会ということで,20%の利用者が参加する。その後,新規ユーザーが会に参入しない状況になったということなんですが,その理由というのはどういうことが考えられたんでしょうか。
【田中委員】 その理由ですか。これは入らなかった人に聞いてみないと分からないですけれども。
【山田委員】 言いましょうか。これは,例えば,私のKEKの物構研も放射光施設を持っていて,全く同じことが起こるんですが,なぜこういうことが起こるかというと,それに入らなくても実験ができるからです。要するに,入ることのインセンティブが何かということが全然クリアにできていなかったというところが,多分,一番大きな理由だと思います。
【髙井主査】 なるほど。
【西島委員】 それもありますし,もう一つは,一般論かもしれませんけど,若い研究者の方が,会費を払ってこういうものに入るということに対して,どうなのというようなのがあるんですよね。だから,結局,これ,一番大きかったのは,会費をなくしたことでしょう。要するに。
【田中委員】 SPRUCは無料です。
【西島委員】 無料ですよね。そういうことなんですよ。
【髙井主査】 なるほど。
【西島委員】 私は最初からの会員で最初は会費を払っていました。ただ,私個人は,会費を払わないで運営することに対して,実は賛成はしていなかったんです。つまり,会費を払っている会員は,必ず会費を払った分だけ,どうなっているかという関心があり、本気度がある。,1,000円でも2,000円でも払うと,例えば総会に参加するし意見も言う。しかし無料会員では,はっきり言いまして,これは自動的にみんな入っているんですね。その結果として全員ユーザーが入っているというふうな形になっていますが,そのユーザー皆さんが本当に関心を持っているからではなくて,知らないうちに自分が登録になっているというか,どう言ったらいいでしょうね。私は,これはいいと思うんですよ,SPRUCで。ただ,私自身は,会員でない数が増えたということが本当によかったのかどうかという点については疑問ですけど,そのことは今日議論する気がないので。
【田中委員】 ここは議論じゃない。
【西島委員】 もう一つは,確かに,私も,これ,前も聞いたと思うんですけれども, SPring-8,JASRI,長い歴史の中で上手く運用されているとの印象です。ただ,スパコン「京」の方を保護するわけじゃないんですが,実際に専用ビームラインを自分たちでお金を集めれば作れるというものと,それから,大きな施設の部分の国家戦略として,あらゆる実測データを処理するというスパコン「京」が,必ずしもパラレルに行かれるわけではないんで,これをそのままスパコン「京」の運用に適用するのはかなり厳しいんだなと思った。
1点なんですけれども,これ,SPring-8とスパコン「京」と,同じ兵庫県の中ですよね。
【田中委員】 はい。
【西島委員】 ですよね。私なんかは,よくSPring-8を使った研究者は,必ず「京」で計算処理しているし,実測の前にはシミュレーションして,実測して検証しながら前に進むという,相互に使うことが相乗効果というのはよくいろんなところで言うし,私自身も,そういうふうにして実測から行った方で,両方,私は分かっているんですが。一般論から言うと,意外とこういうSPring-8でやるシンポジウムのときには「京」関係者は参加しないし,それから,計算科学と言っても分かる人がいないし。そういう意味での,さっき3者機関協力という,JASRI・CROSS・RISTが協力しているんだけど,これはあくまでもお互いに協力して使える効率業務だと思うんですが,そういうユーザー間のコミュニケーションのアップとか,そういう部分についての御努力って何か考えています?
【田中委員】 はい。今日はSPring-8の話をしているんですが,実は,SACLAの方で,「京」を使ってデータ解析をしたいという実際のニーズがあって,今日はAICSとも一緒に,実際にSACLAがある播磨から「京」の神戸をネットワークでつないで,SACLAで撮った,これはCXDI(Coherent X-ray Diffraction Imaging)というイメージングのデータを実際にSINETを使って「京」に送って,ジョブ,サブミットして計算させるということをやってみているんです。それはSACLAの中で出てくるデータは,大変データ量が多い。
テラバイトのデータが出てきて,イメージング,3次元を特にやるとそうなんですけれども,3次元の,例えば,タンパク質の立体構造を解析するということになると,大変なデータが出てきますので,まさにそういったときに「京」の力を借りたいというSACLA側のニーズがあって,そういう実際にAICSと一緒に作業したというのはあります。それはもう走った案件です。
【西島委員】 是非そういう部分を推進してください。SPring-8とJ-PARCは,結構そういう構造解析の方で一緒にシンポジウムをやっているんで,そういう活用を是非図ってほしいなと思っています。
【田中委員】 そういう意味では,SPring-8も,今日は御紹介しなかったんですが,住ゴムさんの方では,SPring-8とJ-PARCと「京」,共用法でコントロールされる施設を使って成果を出されていますので,実際にその部分も走っているところではございます。
続いて,「京」の総合的な中間検証中間報告(素案)について,事務局より資料3に基づき説明。質疑応答は以下の通り。
【吉田委員】 事前にも読ませていただいたんですが,やっぱりすごく読みづらいですね。先ほど,ずっと叙述的に書かれているのでというのもあるんでしょうけど。やはり我々の通常の常識からすると,評価分析書,もしくは,評価分析の報告書として我々が作る場合って,シンプルに申し上げると,まず評価項目は何か,評価対象項目は何かと。ここで言うと,各ページの丸印になるんでしょうか。(1)共用の促進についてというのは,多分,これは目標ですから,それのブレークダウンした評価対象の事業としては,丸印で書かれてあるぐらいのレベル感かなと思いますが。それに対して,先ほど申し上げたとおり,それの評価対象の評価基準って何なのと。具体的に評価基準,評価するためのベンチマークって何なのというのが明確に書いてあって,それに基づいて,3番目で評価し,分析するという,そこに記述があって,最終的に,その評価・分析の結果,新たな対応なり新たな課題が見つかったと。それに対して,先ほどまさしく言われたように,もしかしたら課題が広がるかもしれない,フィールドが広がるかもしれないけれども,そういった残った問題・課題,それに対してどう対応していくかって,普通のこの4つの書き方なんですよね。すると,非常に一つ一つの評価というのが明確になっていくと。それを最終的に各目標のレベルまで引き上げて,その総合評価としてこうでしたというと,それが我々にとって普通の評価報告書のスタイルなんですけど,そういうふうにはなかなかできない理由があるんですかね。
【工藤計算科学技術推進室長】 我々,かなり無意識に捉えて申し上げると,今の話は,それぞれ括弧の共用の促進について,研究成果の創出及び社会への還元については,恐らく,ある種の議論のカテゴリーとして見なしてしまっています。さらに,共用の促進についてという観点にすると,むしろ,今回これを皆さん議論していただいたときに,今後どうやったらもっと利用が広げられるのかというのが,我々としては欲しい答えになっていて,もともと,例えば,共用の促進になって,1,000人のユーザー,年間1,000人を置きます,これが1,000人に満ちませんでした,900人でした,じゃ何でそうなんですかという分析をするかというのを目途としていたかというと,それは必ずしもそうではなくて,我々が構築した仕組みにおいて,まず今であれば,1,200人ぐらいが使えていると。これをもっと増やしたらどうだろうかという話のときに,ちょっと分析的に,そこはまだ足りていない,つまり,どういう分野の方が使っていたとか,それはどういうことでそれが増えないんだろうかとか,その辺の分析までが今ちょっと及んでいないのが恐縮なんですけれども,恐らく,本当の意味でこの評価報告書に組み入れる,最終的にはですけれども,まだ中間段階だと認める,そういうものが組み入ってくると,次に我々が欲しかった答えに対する評価になるんじゃないかなとは思います。
【吉田委員】 行政事業レビューみたいに,外的にエクスキューズするための話を今しているわけじゃないじゃないですか。あくまで内部の中間評価であり,これはPDCAサイクルの一つだと思えばいいわけですよね。その中では,さっきおっしゃったような評価基準に対する考え方というのは,それは外部へのエクスキューズを考えると,そういう言い方になっちゃうかもしれないけれども,そこはあんまりこだわらなくていいわけで,当初こういうふうにブレークダウンして評価基準をつくっていましたというだけの話ですね。これは,まさしく言われたような詳細な分析を加えて,次の対応課題なり,もしくは,対応措置というのを考えればいいだけなので,そこは何ら意見も……。
【工藤計算科学技術推進室長】 そういう意味だと,我々もこの評価報告書が,ある意味,我々が政策のリフレーミング,これ自体の議論自体がリフレーミングに実は使わせていただいて,この報告書の体裁になっているんですけれども,次に何するかということが明らかになることが重要という。
【吉田委員】 いや,評価って全部そうですよ。評価って全部そうですよ。当たり前の話だ。
【工藤計算科学技術推進室長】 まあ,そうなんですけど。ただ,この指標のモラリティの違いみたいなのは,やっぱり今は感じています。
【西島委員】 善意に解釈すると,企業でやった場合には,そういうきっちり,要するに,波及効果に対する投資ということなので,そこを明確に書いて,幾らやって確実にやると,逆に言うと,企業の場合には,かなり確実なんで,国はそれを,企業が投資しないようなハイリスクかつハイリターンの不確実な部分に投資するのが国なので,そこは吉田委員の言っていることは一案ですが,一方においては,そのとおりなものが出てこないのが国の1つの特徴であるという,こういう,善意に解釈すればなりますよね。
それがきっちり出るんだったら,産業界が2,000億投資して,もっと成功させるかもしれませんから,そうではなくて,1,100って,計算科学でできない分のさっき言った広がりとか,そういう部分についてやると。そこに若い人を投入して,企業だったら,そんな萌芽的な研究には先行投資できないけれども,国がやった計算科学だから,萌芽的研究にも投資して,そこを文部科学省が重視する人材育成という事業の中で育てます。けれども,企業の場合には,それほど人材育成をに投資することなく,配置転換とかいろいろやりますけど,そこは5年間の中で,そういう波及効果を見るという部分をやるんで。吉田委員の言うのは,私も企業人ですので,まさしくそうであると思うんですが,そういうことを組み入れて書き上げる努力は必要ですけれども,それはなかなか難しいかなということも理解しているんですけどね。
【吉田委員】 そうですね。実は,その違いは十分おっしゃるとおりなんですけど,実は期待しているのは,ここの評価基準というところで,ひと工夫,ふた工夫,国は本当の知恵を使わなくちゃいけないんですよ。今までのいろんなこういう内部の評価なり,外部からの行政レビューのような中で,かなりステレオタイプの評価基準というのが求められてきたんですけど,実は,それではもう立ち行かないと思いますね。
特に,先ほどこちらの方のSPring-8の方はすごく参考になったんですが,やはり骨太な戦略哲学が最初にあるからこそというところがあるんですよね。だから,やっぱりグランドデザインがしっかり書けていて,それがブレークダウンされたときに,企業とは全く違う,ビジネスとは違う評価基準を皆さんがどう考えてプロジェクトをスタートさせていくかというところは結構重要なので,そこは,逆に言うと,期待感なんですね。こちらの方も答えを持ち合わせていないので申し訳ないんですが。
【工藤計算科学技術推進室長】 今のお話,非常に感謝させていただきたいんですけれども。我々が,少なくともこの議論の中でくみ取ってきているものは,やはり計算科学がまだ産業的にも――産業だけじゃない,アカデミアにおいても発展途上のものである。これは実験科学者において,なかなか計算科学というのがまだまだ受け入れられていない現状というのは確かにあるんですね。
我々が目指さなくてはいけないのは,計算科学で既存のものを覆っていったときに,どういう特異点が現われるのかというのを見ることを期待するという政策を打っているつもりです。したがって,その視点からすると,ユーザーを広げなくてはいけないわけです。ユーザーを広げるために必要なことというのがやれているかやれていないかということを今回気付いたということです。むしろ,そういう視点が必要だということが分かったので,今回,報告書のこの「おわりに」の前ですけれども,今後の重点課題等というのは,全部それに合わせた書き方を重点課題として抽出させていただいています。
【吉田委員】 今言ったこと,そのままさっきの項目で落とせるじゃないですか。
【工藤計算科学技術推進室長】 もう書いて。はい。
【髙井主査】 どうぞ。
【山田委員】 この中間評価の素案を読ませていただいて,非常にいいなと思ったことと,もうちょっとかなと思ったことがあります。
第1点は,計算科学とは一体何か,シミュレーションとは一体何かというところをやはりきちっと書かれたことは,これ,非常によかったと思います。シミュレーションをやって,問題を解決するんじゃなくて,その課題を更にいろんなものがあるということをきちっと認識するということは非常に大事で,それで,一方では,大型実験施設,SPring-8とかJ-PARCがあって,やはりその両方があることが,最終的には両方からのアプローチで最終的なものを目指すんだよということが,やはりどこかに出てこないといけないのかなと思ったんですが。
そのときに,目指す人材育成として,計算機科学と計算科学の両方に通じる人材育成という書き方がしてあったんですが,それはちょっと狭いのかなという気もしなくはないです。だから,この場ではそういう人材育成を目指されるんだけど,最終的には,例えば,計算科学に相対するものとして,例えば,実験科学という言葉を使うと,実験科学と計算科学の両方に通じるような人材育成がここから出せていくのかどうかという,そっちの方がむしろ大きい問題なんじゃないかなという気はしました。
そのときに,やっぱり最後に書いてあったことが非常に気になって,この「京」を使う新規ユーザーが年々減っていると。課題は増えているにもかかわらず,新規ユーザーが減っているというのは一体どういうことなのかという,そこの分析がやはり非常に重要かなと思いました。
【髙井主査】 ありがとうございます。
あと,いいですか。
【工藤計算科学技術推進室長】 ありがとうございます。
山田先生のおっしゃったことについて,恐らく,もう少し実態上のことは書く部分ってあると思うんですね。それは,先ほど西島先生からも言われたように,大型研究施設の何らかのシンポジウムをやったときに,じゃ,計算機の人は来ているのかという話はあったんですけれども,現実に来ている会もあります。私はそれに参加したこともありますから。特に物性研中心に,そういうことはありました。
ただ,そこから,山田先生がおっしゃるように,じゃ,計算機と実験の部分と本当に両方があって,どういう形で人材育成されているかとか,そういう議論はどう行われているかとかについては,まだ我々もフォローしきれていない部分があります。まさにその点については,今回,留意事項,今後の事項としてやっぱり書かせていただいて,どうやって具体的にやるかというのをまた少し考えていかないと,言いっぱなしになってはいけないかなとは思いますけれど。
【福山委員】 今,いろいろ御意見を伺ったところ,それに関して,やはり室長も強調されたように,今までの研究の進め方として,象徴的に実験と理論がある。計算機を使ってやる科学研究,これは第3番目の位置付けになるという。これは確かにそういうもの,従来の実験でもない,理論でもない,その両方と言うべきかもしれません。確かに,計算機を使ってやる研究というのは,新しいカテゴリーができつつある。それを肉付けをどうするかというのを誰も今明確に知っているわけではないけど,それをどうやって作っていくかということが,この「京」をどう,ないしは,ポスト「京」をどうやって持っていくかということの中心テーマだろうと。それは確かに,今までのサイエンスのすき間というか,その可能性を広げるという,結局,そういうことだろうと。
そのときに,その中身,具体的に中身が何だろうかと,いろんな考え方を整理する。明確な答えが今の時点で完璧に出てくるはずはないと思うんですけど,それを考えるということは今大事で,その中身を,可能性を広げる,そのためにやっぱりいろんな意見が出てこなければ,じり貧だろうと。そういう意味で,ひとたび計算科学の展開だったら,可能性をもう十分広げる,それがやはりユーザーをどれだけ取り込むかという,それは問題になる。
そういう観点で,この評価委員会の最初から私は混乱していて,御迷惑をおかけしたところはあると思うんですけれども。今ある「京」の半分の資源を使った戦略分野という活動と,「京」全体で新しい可能性を広げて,ユーザーを広げて,サイエンスのテーマをどうやってピックアップするかという努力との整合性がなかなか見えなかった。結局,そこに問題があったんだろうと。それはそれでいい。だけど,そういうのを踏まえて,この報告書の案に,そういうオーバーオールの新しい第3の研究推進のツールとしての計算科学,それで可能性がいろいろある,その可能性にどういうものがあるか,それをどう広げるか,そのためにどういう仕組みをつくるかという,それが明確に書かれれば,戦略分野の議論と,もっと大局的なここでの議論のごちゃごちゃがなくなって,整理されて,むしろ,逆に,両方の位置付けは明確になるのではないかと。それは今できますよね。
【工藤計算科学技術推進室長】 はい。恐らく,先ほど冒頭に申し上げたように,2つの報告書というか,トラックで上に乗っているものの報告はこう書かせていただいたという説明をしたんですけれども。実際,じゃ,戦略分野が,今,先ほど私は書いた視点を申し上げたんですけど,どう乗ってくるかというのは,書かせて頂いていたと存じます。
今,端的に申し上げれば,戦略分野は,「京」が生まれたときに,8万2,000ノードを使う計算機というのは,この世に「京」以前存在しなかった。これは生まれたときに,じゃ,どう使って,さあ,ユーザーに一般課題で使えと言ったところで,そんな巨大なものを使う人がなかなかできなかったという,ある種の境界があって,これをクリアするために,国の投資で,その8万2,000ノードを使った10ペタフロップスの計算ができる人たちをつくった,アプリケーションを作った。これを5年やって,今回それが終わったので,それは,先ほどの,問題を新たに広げるという点においては,この10ペタの計算ができるようになったということをもって,次の問題というのがどうやって探索につながっていくんだということに,つながっているかというのが1つあります。
あと,ポスト「京」との関連をちょっと先取って申し上げてしまうと,「京」と戦略5分野は,「京」ができる前に戦略5分野の方も走っていたという歴史的な経緯がありまして,実際にそれは「京」ができたときに,戦略のプログラムの一部の方々が大きな成果を上げられたんですね。ただ,それが,やり方としてやっぱり後付け的に起こったことだったので,ポスト「京」をやるときは,その反省を活かして,最初からアプリケーションとシステムの人たちをCo-designで,両方が協調して最大の成果が出るような形のチーム編成をしてポスト「京」を作ろうという形で,既にそれは進んできています。
したがって,戦略分野のある種の反省点,それから,生かし方というのも,実は,語ってはいないという面がある。この報告書の中で,それは語り切れてはいないんですけれども,恐らく,その部分をもう少し埋め込んで,さらに,戦略がここで終わった,5年間,この春で終わったことを踏まえて,産業界に,じゃ,次にそれを下方展開どうしていくのか,それから,他の科学分野にどう展開していくのかという点を,少し注文事項としてですね。既にできている部分もあるんですけど,なかなかできていないところもありますので,そこは注文事項として書き加えさせていただくことで,応えられるのではないかなと考えています。
【福山委員】 まさに,今おっしゃったような,全体のサイエンスを進める観点での大きな柱の一つのことを議論している。そのときに,歴史的に日本は大分遅れている,それを一所懸命やる,そのために戦略分野ができたという,そういう歴史的な経緯,それがこれからの次の時代につながるという,見事な成果を上げたという,そういう大局的なことが分かるような文章があって,そんな中で戦略分野云々とか。そうすると,吉田委員もさっき言ったしね。
【吉田委員】 そう,おっしゃるとおり。実は,最後に言おうと思ったんですけど。まさしく,先ほど何人かの委員さんの方がおっしゃったように,これの4ページのところがあっけないんですよね。特に,「はじめに」の最初の丸のところですね。だから,計算科学の現状と立ち位置と,これも世界的に見てですね。そのグランドデザインの中で,日本として何をしようとしているのかというところをしっかり書いていただけると,多分,本当にこの場だけじゃなくて,社会的に見ても,混乱はなくなるし,非常に浅薄な議論は減るんだろうと思うんですね。だから,そこから次のページ,余りにも饒舌な文章が続くんですけど,本当は,ここの部分にはっきりと,悩みながら書いているみたいなところも出しながら,しっかりと位置付けを書かれた方が,後の評価なんかも非常に分かりやすくなると思うんですね。なるほど,そういうことかって。
今までの,例えば,私が行政事業レビューなんかで聞いていた話だと,そこのところなしで,ほかの事業と同じような議論をするから,とてもよく分からないようになっちゃうんですね。だから,是非,グランドデザイン,先ほど来言っている戦略と言っていいのかどうか分からないですけど,現状,計算科学がどの立ち位置にいて,日本の現状がこうで,世界の現状がこうで,その中で今どこを我々がどっちを向いて動こうとしているのか,その中で何を悩み抜いているのかというところは,生々しくはっきりと書いた方が,非常に国民は理解していただけるんじゃないかと思います。
【福山委員】 いや,大変魅力的な文章で,歴史的な文章になりますよ。
【吉田委員】 なりますよね。
【福山委員】 確かに,そこですよね。そこがいろいろごちゃごちゃになっているから,位置付けが分かりにくかったということなんですね。逆に,それが分かれば,非常にすっきりして,次のアクションターゲットが見えますね。見えやすい。
【髙井主査】 ありがとうございます。
【吉田委員】 しかも,すごくダイナミックな話として国民がこれを捉えられれば,「京」に関しては,今まですごい瑣末な議論で来ているんですよ。だから,そうじゃないと,もっとダイナミズムのある,しかも,いいか悪いかは別として,非常に悩ましい大きな課題なんだというのが分かると思いますね。
(3)その他
今後のスケジュール等について,事務局より説明。
髙井主査より閉会を宣言
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