資料2-5 「京」の共用に関する評価および 「京」の今後に向けた意見・要望(スーパーコンピューティング技術産業応用協議会提出資料)

2016年3月11日
スーパーコンピューティング技術産業応用協議会

「京」の共用に関する評価および 「京」の今後に向けた意見・要望

1.  「京」の共用に関するこれまでの評価
● 「京」の実現により、自社では整備・利用できない、圧倒的な性能を持つハイエンドシステムの活用が拓け、これまで産業界では不可能だった大規模計算や大量実行が可能となった。
   ・これにより、中長期的な研究開発の方向性および手段の検証、10~15年先の自社計算機環境を想定した準備(設計製造サイクルへのシミュレーションの組み込み、実験との連携等)が実現できるようになった。
   ・上記利用においては、一部アカデミアの開発したソフトを利用した大規模解析等が非常に効果的であった。
●また、国内の計算資源を、アカデミアだけでなく産業界も積極的に利用し、そのための支援を受けられる環境が整いつつある。
   ・シミュレーションそのものの知名度が向上し、社内でもHPC活用への関心・理解が高まるとともに、ハイエンド環境を活用した高度人材育成への道筋ができつつある。
●産業利用への資源配分の少なさや申請手続の煩雑さ等、運用当初には問題のあった点についても、ユーザの意見を継続的に取り入れることで、次第に制度・運用が改善され、タイムリーな利用を含む利便性が向上している。

2.  「京」の今後に向けた意見・要望
(1) 「京」に最適化されたアプリケーションソフトの充実
● 「京」に最適化された、商用ソフト、OSS、アカデミアソフトの種類を更に増やし、アプリケーション利用環境を継続的に整備してほしい。
  ・アカデミアソフトについては、開発だけでなく、維持・改良のための仕組みの整備についても検討を望む。
   ・商用ソフトにおけるライセンスの利便性の向上(「京」以外のマシンでの利用を含む)についても継続してソフトベンダーと協議いただきたい。

(2) 産業界のニーズに応えるコンシェルジュおよびデータハンドリング機能の提供
●今後のHPC利用はますます高度化が進むため、産業界の多様なユーザニーズに応えるコンシェルジュ機能を提供してほしい。
  ・共同研究におけるマッチングを含め、産学連携を加速できる、アカデミアと産業界を一元的に支援する基盤として整備されることが望ましい。
  ・コンシェルジュによる支援基盤を産学交流の場と位置付け、産業界のシニア技術者やアカデミアのエキスパートを積極的に活用することで、社会や企業の課題を解決できる高度支援人材の育成・ノウハウの蓄積が可能となる。
※ なお、HPC入門的な利用者への支援については、各大学・地方の工業センター等とコンシェルジュ支援基盤との連携による対応が効果的な案の1つと考えられる。
●膨大な入出力データのハンドリングを容易にする仕組みを取り入れてほしい。
  ・例)アクセスポイントの拡充、プリポスト処理の充実 等
(3) 「成果公開・無償利用」の原則の維持
●産業利用であってもアカデミアと同じ研究開発目的の利用がほとんどであるため、利用料金については引き続き成果公開・無償利用を原則としてほしい。
●有償利用の拡充に当たっては、民間サービスとの棲み分けや国際的にも受け入れられる利用条件の設定等、慎重な検討が必要。
  ・但し、一部費用負担によってジョブ優先度を変える仕組みなどあっても良い。
  ・運用開始当初に比べると、「京」以外の計算資源も性能が向上しているため、利用料金の引き下げについても検討してほしい。
(4) 利用制度の継続的改善
●公募については、年1度の定期募集の頻度を増やすと共に、1年以上の長期利用期間や(単にノード時間ではなく)ジョブの多様な実行パターンにも配慮した資源割当てについて検討してほしい。
●その他の利用制度についても、引き続きユーザ視点での継続的な改善が望まれる。

(5) ポスト「京」および(第二階層以下)国内計算資源への波及・全体最適化
●ポスト「京」利用を早期に立ち上げるためには、「京」からの移行期間において、利用準備のための計算環境(同等のアーキテクチャの計算機、コンパイラ、ツール群等)が整備されると共に、関連情報が早期に提供されることが必要である。
●これまで挙げた要望については、「京」だけでなく、ポスト「京」や第二階層にも順次適用され、統一的なHPC利用環境が整備されることを期待する。

世界最高水準の計算機環境、先端的・革新的なソフトウェア、アカデミアと産業界をつなぐ支援環境などの整備が進むことによって、多様な産業分野におけるイノベーションを実現するオープンかつ持続的なHPC利用環境が構築されることを産応協は期待しております。

以上

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