資料7 競争的研究費改革に関するこれまでの議論

1.『我が国の学術研究の振興と科研費改革について(第7期研究費部会における審議の報告)(中間まとめ)』(平成26年8月27日 科学技術・学術審議会学術分科会)及び『学術研究の総合的な推進方策について(最終報告)』(平成27年1月27日科学技術・学術審議会学術分科会)における主な指摘

 (イノベーションの源泉としての学術研究とその役割について)

○ 我が国は、学術研究により生み出される知と人材をもって現在及び将来の人類の福祉に寄与するとともに、国際社会における存在感を発揮。この意味で学術研究は「国力の源」。このため、学術研究の振興は国の責務であり、学術界は役割を十分に認識し、社会からの負託に応える責任がある。
○ 学術研究が「国力の源」としての役割を最大限果たすためには、学術の現代的要請(挑戦性、総合性、融合性、国際性)に着目し、多様性を進化させることが重要である。また、次代を担う若手研究者をこのような観点で国際的なリーダーとなるよう育成することが重要である。

 (主な指摘事項)

○ デュアルサポートシステムについては、学術政策、大学政策、科学技術政策が連携して再生に取り組むことが必要。
○ 科研費について
(1)専門家による審査(ピアレビュー)、(2)あらゆる学問分野について研究者に対して等しく開かれた競争的資金制度、(3)研究者が自らの発想と構想に基づいて継続的に研究を進めることができる競争的資金制度、(4)研究費としての使いやすさの改善を不断に図ることの四点を堅持しつつ、以下のような論点を提示。
 ・分科細目表の見直しや大括り化、スタディ・セクション方式やプレスクリーニングの導入等の審査方式の再構築、種目の再整理等の科研費の基本的な構造の見直し
 ・重複制限の見直しや海外在住研究者の帰国前予約採択の導入等の優秀な研究者が自らのアイディアや構想に基づいて継続的に学術研究を推進できるような見直し
 ・学際・融合分野研究ネットワークの中での研究者交流と実力ある若手研究者の国際共同研究や国際ネットワーク形成の推進 等
○ 大学改革について
強みに結びつく水準の高い学術研究の多様性の推進や、教育・研究の卓越性や全学的なビジョン・戦略に基づく学内資源配分の最適化が必要。
○ 科研費以外の競争的資金について
研究現場に与える影響を考慮した制度新設や、イノベーションシステム全体の強化の観点から、制度全体を俯瞰し、バランスの取れた制度設計が必要(厳格で公正なサイエンス・メリットを前提とした審査・配分と成果評価、ポスドクの今後のキャリアパスの確保についての大学との対話や施策の展開、等)。
○ 間接経費について
  競争的資金による研究実施に伴う大学全体の管理費用として不可欠。競争的資金の拡充を図る中で、確保・充実するとともに大学において一層効果的に活用することが必要。 

2.戦略的な基礎研究の在り方に関する検討会報告書(平成26年6月27日)における主な指摘

研究総括による挑戦的な課題採択、組織・分野の枠を超えた研究体制の構築といった特徴があり、若手研究者などの挑戦的な研究の機会の場となっている「さきがけ」制度も有する「戦略的創造研究推進事業(新技術シーズ創出)」について、戦略目標の在り方に関する議論が行われ、以下が指摘されたところ。

 (総論)

○ 高度な知的基盤社会の構築・発展には、「知」(科学的知見)の創出の多くの部分を担う学術研究が重要であるとともに、国が目標を示すことなどにより、生み出された多くの「知」を社会的・経済的価値の創造に向けて発展させる戦略的な基礎研究も重要。戦略的な基礎研究は、用途を考慮することの中から、新たな「知」の創出にも貢献。
○ 各国で「知」を経済的・社会的価値の創造に結びつけるための施策が強化され、世界的な大競争時代を迎えた今、我が国において、高度な知的基盤社会を構築・発展させ、「知」を社会的・経済的価値の創造に着実に結びつけていくためには、戦略的な基礎研究に関する仕組みの進化が必要である。

 (主な指摘事項)

○ 戦略目標の策定は、「出口を見据えた研究」という趣旨に適うように、科研費成果情報やサイエンスマップ等を活用した研究動向の分析から始まり、分析結果等に基づき特定された研究動向に関する研究の進展について、研究者と産業界などの識者の参画を得たワークショップ等を開催した上で目標を決定するという「戦略目標策定指針」に沿って策定すること。なお、分析の際には研究活動の盛衰や新たな研究概念の登場、研究間の連携・融合の進捗などについて把握することが重要であるとともに、戦略目標は過度に先鋭化させないよう適切な粒度で設定することが必要。
○ 「出口を見据えた研究」の趣旨等を踏まえた「戦略目標策定指針」の策定・改定に関する検討の場を整備。毎年度、戦略目標に関し、指針に対する評価、戦略目標策定過程に対する評価、実施フェーズに対する評価を行い、これを踏まえて指針の改定に反映させるという政策マネジメントサイクルを確立。これを循環させるためには、この検討の場は常設とすることが必要。
○ 「出口を見据えた研究」が行われる上で最適な「研究者群」の形成を促すような事業運営に努めるべき。偶発的な発見(serendipity)の許容と、研究者のモチベーションの保持が必要。学術研究や「出口から見た研究」などの他の研究類型との関わり・交差も念頭に全体最適を図るような柔軟な運営が必要。例えば、「出口を見据えた研究」の推進主体である研究者と「出口から見た研究」の推進主体であるPM等との交流が必要。「出口を見据えた研究」を推進する研究者の目利きなどを行う人材の育成等が重要。

3.『我が国の中長期を展望した科学技術イノベーション政策について~ポスト第4期科学技術基本計画に向けて~(中間とりまとめ)』(平成27年1月20日 科学技術・学術審議会 総合政策特別委員会)における主な指摘

 (資金配分の改革に関する総論)

○ 大学及び国立研究開発法人の科学技術イノベーション活動に対する政府の資金配分は、基盤的経費と競争的経費のデュアルサポートによって実施されることが原則である。
○ しかし、近年の基盤的経費の減少は、人材問題をはじめとする、現在の科学技術イノベーション政策を巡る様々な問題を生み出す大きな要因の一つとなっており、このことが、競争的経費が果たすべき役割が十分に機能していないことにもつながっているとの指摘がある。
○ このため、基盤的経費、競争的経費の双方についての改革と充実を図るとともに、政府の資金配分に当たっては、両経費の最適な組合せが常に考慮されることが必要である。
○ それぞれの大学や公的研究機関において、基盤的経費と競争的経費とが、各機関の特徴に応じて有効に機関内で配分・活用されることが重要である。加えて、これらの機関が、民間企業からの資金を積極的に獲得し、財源を多様化していく取組も必要である。

 (主な指摘事項)

○ 大学及び国立研究開発法人のミッション達成には基盤的経費が不可欠。その充実を図っていくことが重要。
○ 競争的資金を含めた競争的な性格を有する経費全体を俯瞰し、
 ・「研究開発を主たる目的とする経費」(「研究型経費」)
 ・「大学等のシステム改革や教育改革の促進を目的とする経費」(「システム改革型経費」)に分類し、それぞれの事業の性格に応じた改革を進め、充実を図る。
○ 研究型経費について、
 ・類似の事業の整理統合を図りながら充実していく必要がある。
 ・間接経費は全ての研究型経費に措置されるべき。
 ・事業間の経費利用ルールの統一化などの取組も全ての研究型経費で導入されるべき。
 ・CSTI主導で、競争的資金の定義の拡大に向けた検討を行うことが求められる。
 ・研究情報や研究成果の一層の可視化や、事業間の府省を越えたシームレスな連携のための取組を推進する。
 ・経費の一層の効果的・効率的利用に向けた具体的取組(事業の審査・採択における共用設備・機器等の活用の要件化等)の検討等を実施する。
○ システム改革型経費について、
 ・事業目的の達成を担保できる仕組み(事業期間、予算規模、評価、基盤的経費による取組との関係等)を内在化することを前提とした上で、必要となる取組を実施する。
○ 若手人材育成の観点から、競争的経費における研究代表者等への人件費支出の一層の促進、人件費に関する競争的経費と基盤的経費の合算使用の在り方の検討、競争的経費の審査・評価において、雇用する若手人材の育成環境やキャリアパスの確保に関する観点の充実等を図る。

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科学技術・学術政策局研究環境課競争的研究費調整室

(科学技術・学術政策局研究環境課競争的研究費調整室)