平成30年4月13日(金曜日)14時00分~16時00分
文部科学省15階 15F特別会議室
中野座長、梶田座長代理、駒宮委員、酒井委員、棚橋委員、陳委員、徳宿委員、中家委員、初田委員、早野委員、松本委員、山中委員、横山委員
磯谷研究振興局長、岸本基礎研究振興課長、轟素粒子・原子核研究推進室長、山本加速器科学専門官、三原科学官
高エネルギー加速器研究機構 藤井教授
【中野座長】 ただいまより国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議素粒子原子核物理作業部会(第4回)を開会いたします。本日は、御多忙中のところお集まりいただき、誠にありがとうございます。
冒頭のみカメラ撮影を行いますので、御承知おきください。撮影希望の方はお願いします。
では、本日の出席状況について、事務局から報告をお願いします。
【山本加速器科学専門官】 本日は、全員の委員に出席いただいておりますので、会議は有効に成立しております。前回に続き、高エネルギー加速器研究機構教授の藤井先生にも御出席をいただいているところでございます。
私は、4月から素粒子・原子核研究推進室加速器科学専門官に着任いたしました山本と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。
事務局からは以上です。
【中野座長】 それでは続いて、配付資料の確認をお願いします。
【山本加速器科学専門官】 本日の資料につきまして確認をお願いします。
まず、議事次第に続きまして資料1、E‐XFELの概要資料、資料2、FAIRの概要資料、資料3、E‐XFELについての徳宿委員の御発表資料、資料4、FAIRについての早野委員の御発表資料、資料5が報告書(案)となっております。また、資料6、前回の報告書の別添資料、資料7、500GeVILCと250GeVILCの科学的意義の比較(案)でございます。資料8、今後のスケジュール(予定)、参考資料、第8回国際リニアコライダーに関する有識者会議議事録(抜粋)となっております。このほか、参考資料として机上にドッチファイルを置いておりますので、適宜ごらんいただければと思います。
以上、過不足等がございましたら事務局にお知らせいただければと思います。
以上でございます。
【中野座長】 ありがとうございました。
それでは、議題に入ります。本日の議題1では、昨年11月にリニアコライダー国際推進委員会、LCBから出された声明に例示された欧州X線自由電子レーザー、XFEL、反陽子・イオン研究施設、FAIRについて取上げ議論したいと思います。
LCBの声明において、この2つのプロジェクトはホスト国が主要な費用負担を行っているILCと同様の最近のプロジェクトの例として挙げられています。
本日は特に国際協力の観点から、2つのプロジェクトについて続けて御発表いただき、その後、まとめて質疑及びILCのケースについて議論の時間をとりたいと思います。
なお、12月の第8回有識者会議における関連議事録を参考資料として付けていますので御参照ください。
それでは、資料1、2について事務局から説明をお願いいたします。
【山本加速器科学専門官】 それでは、資料1、資料2をごらんください。この2つの資料につきましては、本部会の第1回目に一度お配りしているところでございますが、今回、委員から後ほど御説明いただく2つのプロジェクトにつきまして、高エネルギー加速器研究機構からも、また、今回のプレゼンの内容も反映いたしまして、最新状況にしたものをお配りしております。資料1は、特にコストの面など最新状況にしております。
資料2の方は、前回までは運転経費の見込みのところは記載がなかったところでございますが、今回、追記をさせていただいておりますので、その辺も含めて御参考いただいて、説明を聞いていただければと思います。
以上でございます。
【中野座長】 ありがとうございました。
それでは、次にE‐XFELについて徳宿委員よりお願いいたします。
【徳宿委員】 それでは、EuropeanXFELの状況と設立経緯ということで発表します。徳宿です。
2ページ目に行きまして、EuropeanXFELの概要はこれ1枚で済ませるつもりですが、下にありますように、直線のトンネルがありまして、その中にILCと同じタイプの超伝導の加速空洞を使った電子リナックがあります。DESYというドイツエレクトロンシンクロトロン研究所の敷地から始まっていまして、トンネル、最初の1.7キロぐらいのところまで電子加速器がありまして、そこで電子を17.5GeVまで加速します。その後、アンジュレーターを通しまして、そこで光に変換して、しかもこれがレーザー発信するように作られておりまして、ここで非常に波長の短いX線のレーザー光を使っていろんな実験をするシステムになっております。全体の長さが全長で3.4キロぐらいになっています。施設自体は、ハンブルク市とシュレスヴィッヒホルシュタイン州の両方にまたがっていますが、出発はハンブルク市から始まってシュレスヴィッヒホルシュタイン州の方に実験施設があるという形になっています。
これは12か国の国際協力で建設された施設でして、組織という意味ではドイツの国内法での非営利有限責任会社という形になっています。その運用の規定とかはコンベンションと呼ばれる最初に決めたもので決まっています。先ほど言ったような施設ということで、詳しい数字とかは資料1に書いてあるとおりです。後でまた述べますが、建設費が12億2万ユーロぐらい、運転経費は、今年から運転経費という形の支出が始まったはずですが、今年の運転経費が年間1億1,700万ユーロという形になります。建設割合負担は、2月現在でドイツ58%、ロシア27%、そのほかの国が大体1から3%ぐらいという形での費用分担をしています。後でパイチャートをお見せします。
どうやって物事を決定するかというのに関しては、最高決議機関というのはCouncilです、ここには加盟国1か国当たり最大2名までが出席するという形になりまして、拠出に比例した形での票数の投票権を持っています。ただし、最小貢献は1%ということで、1%以下の貢献の国はCouncilでの投票権がなくなるという形になります。重要なものによって票決の仕方が変わっていまして、全会一致と普通のシンプルマジョリティー、50%以上というもののほかに、ある特別な案件ではクオリファイドマジョリティーというルールがありまして、その場合には77%以上が拠出に比例した形での票数であって、77%以上が賛成して、かつ、株主の半数以上の反対がないというときだけ決まるというような、全会一致よりは緩いけれども、シンプルマジョリティーよりは高い案件というのもあります。それぞれどういうのがあるかというのもありますけれども、ここでは余り関係ないので省きます。そういう3段階があるということであります。
次のページに行きまして、先ほど座長からもありましたけれども、なぜここでXFELを議論するのかというと、昨年11月のICFAの声明の中で、250GeVのILCをサポートするという表現の一番下のところに、ICFAは日本のイニシアチブにより、ヒッグス・ファクトリーを国際プロジェクトとして日本が時宜を得て実現することを奨励しますというところにアスタリスクが付いていて、そこに、近い分野の国際プロジェクトの例として、ドイツのこれが挙げられていたからです。
その元になるのはLCBの方の声明なわけですけれども、LCBの声明、これも先ほど中野座長からありましたように、ここにも「最近の同様の国際プロジェクトの例では、ホスト国が主要な費用分担を行っています。」これはKEKの訳ですが、余りいい訳ではないと思いますが、「主要な」というのは「majority contribution」で、「主要な費用分担」という日本語を英語に直すと「major contribution」だと思います。majority contributionというのは、要するに50%以上という意味だと私は思います。となっていますというところに1と書いてありまして、XFELとかFAIRの例があると書いてあるということでこのトークになっているんだと思います。
その後のところも一応読んでおきますと、続いていて、「おのずと、土木建設やその他のインフラ建設コストはホスト国が責任を持ち、加速器建設については適切な費用分担がなされることが期待されます。これらの原則に基づいて、加速器をホストすることが明確に意思表示されれば、日本と国際的なパートナーとの交渉が開始されることになるでしょう。また、他国の関係者も、可能な貢献について、自国政府と有意義な議論を開始することが可能になります」ということがあるからだと。
だから、ここに書いてあるのは、最近の例ではホスト国が過半の費用分担を行っているという点についているということなので、その点がメインだとは思うのですが、こちらの付録の方にもありますように、昨年の有識者会議のときにLCBの議長である中田さんが来まして、ここがどういう意味なのですかというのに対して質疑応答がありました。彼からの発言としましては、ここに書いてあるように、LCBとしては、現実に考えたときに、今の段階ではドイツが前にXFELやFAIRのときにやったような原則に基づいて加速器をホストすることを、まず日本がそういうことをやってみたいんだということを提示するのが大事なのではないかというのが考え方ですということだったということです。
そのとき、私の方から質問もしたのですが、というのは、ILCのどういうガバナンスにするかというのを、PIPというドキュメントがありますが、そちらでは、XFEL、FAIRのやり方はILCには適さないとかあらわに書いてあったので、そう書いてあるのに、ああいう組織でやれという質問かという私の質問に対しては、そうは言っていないということですので、ガバナンスを、この組織をまねろと言っているわけではないということです。ということは何かというと、このEuroXFEL、FAIRの設立がどういうぐあいに行われたかというのを役割分担を含めてきちんとレビューするのが重要だと思いまして、その点を主要にした形で私のトークにします。
E‐XFELの始まりに関しましては、実はもうちょっとさかのぼらなくちゃいけなくて、TESLA proposalというのがDESYの方から2001年に出されました。このTESLAというのは今のILCと同じタイプの超伝導のリニアコライダーで、重心系エネルギー500GeVのを、このときにプロポーザルとして出しました。6分冊のTESLA TDRをお披露目しまして、それは500GeVのリニアコライダーのコストとして、その2000年当事の価格として大体3,000ミリオンユーロという形にした上に、これができたところに、更にこの加速器を利用して、XFELの施設もできますよと、それを加えると更に531ミリオンユーロになりますという形のTDRを作っています。このTDRのお披露目のコロキウムは私も参加しましたけれども、加速器の素粒子の方は99年のノーベル賞受賞者であるフェルトマン先生が話したのですが、彼のスライドはその頃よくあったプラスチックシートを使った手書きとほぼ同じようなものだったのですが、物性及び自由電子レーザーを使ってやる実験の方の発表は、今見ても遜色ないような非常にすばらしいアニメ付のスライドを使っていました。というところがあってか何か知りませんが、このTESLA proposalというのがドイツの学術審議会、Wissenschaftsratというところで審議されたわけなのですが、先ほど言いましたように、最初の提案はリニアコライダーがあったときにそれにくっつけると530ミリオンユーロだということだったけれども、別々に作ったらどうなるかというTDRを出せというリクエストがDESYは出されました。それを元に、TESLA XFEL supplementTDRというのをDESYが作りまして、次の年に提出するという経緯がありました。
それを元に、2003年の2月に、ドイツの文科省に対応するBMBFで表明がありまして、大臣表明が出ています。そのときにXFELだけではなく、ここに書いてあるとおりですが、いろんな大規模な研究施設に対してドイツは投資をするという形の表明をしました。全体で16億ユーロの投資を表明しました。そこに何点か書いてありまして、その1つがXFELで、文面はここに書いてあるように、読みますと、DESYは新しい自由電子レーザーを得る。この地に作るという理由で、ドイツは673ミリオンユーロの建設費用のうち、半分を支出する用意がある。ヨーロッパでの協力の議論を早急に進めて2年のうちに建設するかどうかを決定すると。建設には6年かかると。
次のところが、それと一緒にくっついていたリニアコライダーについては、まだ国際的に議論しているので、今決めることはしない、開発研究をすることは認めるというコメントです。次の早野先生の方でありますが、同じところにGSIについても書いてありまして、GSIはヨーロッパのパートナーとともに徐々に重イオン施設を拡充していき、ヨーロッパの先進物理センターとなる。675ミリオンのコストのうち、少なくとも4分の1は学校から拠出されるべきである。この2つだけではなくて、実はそのほかにも強磁場の施設とか大気圏探査の施設とか、そういうのも含めた形の声明が出ました。これは原文に当たろうと思ったんですが、ドイツのウェブページでも古くて出ていないので、その当事、ドイツの研究者が英訳したメールを私の方で日本語に訳したのがこの訳になっています。ということで、XFELで何を見本にするかというと、そういう形で大臣表明という形である程度の貢献範囲とどこに作るかを言って始めたというところがあると思います。
その後の設立の経緯ですけれども、この後ドイツがどうしたかというと、関係国の担当大臣に向けてドイツの研究大臣からメールが行きました。ここでは何を言ったかというと、お金を出せというのではなく、まずこういう施設を作りたいので、その作るための準備を、組織を作りましょう、そこに参加してくださいという形の要請の手紙を出したそうです。本物の手紙を見ることはできていませんので話だけでしか聞いていませんが。
先ほども言いましたように、お金を出せというのではなくて、プロジェクトの参加の要請でもなくて、協議の要請であるということがポイントです。
これが出ましたので、この協議をするためのMOUというのをこの後、締結をいたしまして、2006年時点で12か国が入っています。ただ、これはMOUを作る前から、既にコミッティー自体は進めていまして、すぐに2004年の時点でコミッティーが立ち上がりました。そこには、まず最初にこのような国の人たちが入ってきました。このコミッティーの下に、XFELをどういう組織にするか、ガバナンス体制をどうするかというグループと、物理と加速器のデザインを検討するのができています。その当事のトラペを持ってきましたので、それを基に説明を繰り返しますと、このInternational Steering Committeeというのを、大臣から大臣への手紙という形で、人を出してくださいという形で各国からメンバーを募って作りました。チェアはH.Schunckさんという人で、この人はドイツの文科省から来ていますが、数学者だそうです。この下にAdministration and Financial Issues Working Groupというのができまして、ここでどういう体制でどういう組織にするかというのをインターナショナルに議論したということです。サイエンスの方ももちろん議論しています。
それと同時に、実際にデザインをきちんと作り直すXFEL Project Teamというのを作るということをやりました。このようにして国際協力を始めたというのが1つのポイントだと思います。
前のページに戻りまして、組織の面をそういうぐあいにインターナショナルにやるとともに、DESYがホストするかたちで、場所を決めた形できちんとしたTDRを作るということをもう一度やりました。先ほど述べた事前に提出したTDRはTESLAのsupplementですけど、今度はEuropeanXFELのTDRというのを作って、そこに綿密なコストブックを作っています。
European XFEL Project Teamの役割は、要するに、2006年の7月15日までに、そういうTDRというのを作れということでした。実際に2006年の7月にTDRができて承認されました。それの下に、更に議論がありまして、2007年7月に正式にこれを作るということを表明するということをしています。でも、この時点でXFELの組織がまだできたわけではないんです。どういうものを作るかというのにある程度合意した上で、Preプロジェクトというものがスタートします。その中で会社を作るためのコンベンションとかをもう一度練りまして、最終的には2009年の10月に会社登記が終わりまして、2009年11月に、当初、10か国によるConvention調印というのがありました。後に、フランス、英国が――英国は、実は先月、最終的に参加しました。
どういう形での試案になったかというと、2009年のコンベンションには、このプロジェクトというのは、トータル、上限として1,082ミリオンユーロのものであると明記されています。それに対して各国が幾らずつ出しますというのが書いてありまして、その書いてある数字を元に100をこの1,082ミリオンユーロにして私の方でパーセントに作ったのがこのパイチャートです。その当時でドイツが54%、ロシアが23%、フランス、イタリア等が3%という形になっています。
各国がどういうぐあいにお金を出していったかというのはなかなかオープンな情報ではありませんで、その前にいつ・誰が・幾ら出したかというのは余り正式なあれではないんですが、話で聞く感じでは、2009年にこれを作ったわけですが、2006年までの間でドイツとしては結構残念だったのだと思いますが、欧州各国からの貢献表明というのは大体1から3%ぐらいで、なかなか半分に行かないという状態だったようです。それに対して、2007年にロシアが250ミリオンユーロの貢献をするということを表明して、特にその年の11月にプーチン・メルケル会談というのがヴィースバーデンであったのですが、そこでロシアがこれをやりますということをプーチンが表明するということもありました。ここでロシアが非常に大きなお金を出すことによって、最初に言ったような、ドイツがほぼ半分貢献という形のプロジェクトになることができたという形になります。その後でちょっとコストが高くなりましたので、シェアというのは少しずつ変わっています。1月現在のシェアはドイツ58%、ロシア27%、その他は1から3%です。
もう一つは、当然、イタリア、スペインも12か国に入っているのですが、コンベンションにサインはしたものの、まだ実は議会承認が終わっていないまま数年が続いていますので、まだ正式メンバーとは言えない状況にはなっています。ただし、イタリア、スペインも、ほぼこれに即した形での貢献はしております。
どんなところを貢献したかというのを話しておきますと、まず、用地確保を含めたサイトの準備費用というのは、ハンブルグ市、シュレスヴィッヒホルシュタイン州になっていまして、先ほどの約1000ミリオンの中には入っていません。1つだけコメントしておきますと、日本と違ってドイツは連邦制ですから、日本の国と県というよりは、もっと州が独立した形の組織であるということは念頭にしておいてください。ですので、こういう表現になります。各国の貢献の中にはIn‐kindの貢献と現金貢献があります。In‐kindについては特別委員会で、In‐kindとしてこれを認めるかどうかというのを審議します。最初だけじゃなくて、どんどん毎回議論しながら、In‐kindのものが増えていっています。
In‐kindにどんなものがあるかというのはウェブで公開されていまして、現在で全体の約50%はIn‐kind貢献だという形になっています。現在、全体に対して各国がどれだけ全体に貢献しているかは公表されていません。In‐kindの値は公表されているんですが、全体が幾らかというのが公表されていないので一番新しい絵は出せませんが、2010年の最初のアニュアル・レポートにだけ両貢献が書いてあるので、それを見せておきます。これが、各国がどれだけお金を出して、一番高いのがドイツで、ロシアが2番目というのが見えると思います。そのうちのIn‐kind分というのが青で書かれている形になります。特徴としましては、フランス、イタリアは100%In‐kind貢献になっています。ロシアはこの時点ではIn‐kind貢献がゼロだったのですが、その後、In‐kind申請していますので何件かありまして、現在、43ミリオンがIn‐kind貢献です。ですから、多分ロシアの総額は、2010年からよりはちょっと上がっていますけど、余り変わっていないと思いますので、この全体の高さは同じ程度倒して、今だったら4分の1ぐらいがIn‐kindでグラフが青くなっていると思います。
In‐kindの内容は何かというと、ほとんどが加速器とかフォトンビーム、実験装置のところのもので、そういう装置関連になっておりまして、土木建設をIn‐kind貢献しているという事実はありません。ですので、土木建設コストが責任を持つという体制ではなく、基本的にはXFELプロジェクトの中のお金で土木建設をやっているという状況だと思います。ただし、もちろんドイツがかなりのお金を分担していますので、ドイツが多く払っているのは事実ですが、European XFELはホストがIn‐kind的に責任を持って施設をやるという体制ではありません。ただ、逆にドイツの人たちに聞きますと、どうせほとんどお金を出しているのだからIn‐kindだと言ってあれば、もっと簡単に、いろいろ遅くなるときでもそこだけは進められたのでよかったのにという現場の声もありました。
予算の推移も、時間が来ていますので省略しますが、最初、先ほど言いましたように、コンベンションでは1,082ミリオンユーロという形になります。これはILCのTDRと同じようにリスクファクターといって、98%ぐらいの確率で、このぐらいまで、プラスここぐらいまでは収まるという形で書かれています。このコストは全て2005年の物価水準で、下のも同じ基準で書いてあります。コンベンションではこの数字だったのですが、コミットして全部合わせてもこれにはなっていなかったというのもあるのだと思いますし、リスクファクター分もありますので、最初はスタートアップバージョンといってグレードを下げたものでエネルギーを下げて、ビームラインを減らした状態で進めることにしました。そのデザインでのセンター値のコストエバリュエーションは938ミリオンだと。
その後、いろんなファクターがあったのですが、コストの増加が明らかになりました。ダウングレードするオプションも議論したのですが、最終的に2012年に、このスタートアップバージョンを維持することをCouncilで全会一致で決めまして、トータルの費用を1,082から1,150まで上げるという形にしました。これをどこの国が出したか、正確には把握していません。ただ、ドイツとロシアが増分を担当したことも確かです。あと、1%ぎりぎりの国があるので、先ほど言いましたようにトータルが上がっちゃうと何も出さないと1%を切るおそれがある国もあるはずなのですが、それで議決を失った国があるという話は聞いていませんので、1%のスレッショルドがこのせいで下がってしまう国はなかったのだと思っています。
その後、2005年にもう一度、このときには建設の終わりが1年遅れることが明らかになりましたので、その間の運転費用というのが当然掛かるわけです。それも含めた形で増資ということがありまして、これによってトータルの費用が1,220ミリオンユーロという形になりました。これで、資料1の方にもありますが、ロシア58%、ドイツ27%です。
この最後のアップにコメントしますと、当然、遅れたらその分費用が掛かるわけです。ただ、例えばCERNでLHCを作っているとき、LHCが1年遅れても、CERNは年間1000億円なわけですけれども、それをどんどん建設費に計上することはしないわけです。それに対して、XFELは単目的で、これを作るために作っている組織なので、当然、そのコストは上乗せしなくてはいけない。その間に使う人件費は全部上乗せするというので、この最後のコストアップはそういうこともあるので致し方ないかなという形です。その後、ビームが加速で来ていまして、現在ではユーザー実験が開始されております。
ということで、全体をまとめますと、要するに、XFELがどうやって始まったかということに関しましては、始めるときにはドイツ政府が場所と大体の拠出分を示して建設を表明する。その後でガバナンス体制とかを議論する組織を設置した上で各国と協議を始めたということが注目することです。In‐kind貢献に関しましては、先ほどからありましたように全体の50%程度で、ほとんどは加速器等のものです。土木建設をホストがIn‐kindするということにはなっていません。ただし、もちろんドイツがかなりの部分を出しているので、土木施設へのほとんどはドイツというのが事実だとは思いますけれども、ドイツが責任を持つという形の体制にはなっていないです。コストは上昇がちょっとありましたけれども、今、実験でのビームが出ているというところです。
僕に言わせれば、これは非常に順調に行ったプロジェクトだと思います。何がうまくいったかというと、XFELというのは単目的な施設なので、明確な目標があったのと、TDRとともに作った非常に綿密なコストブックという、何に幾ら掛かるというのができているのです。これを基にやっているので、20%ぐらいの増加はありましたけれども、きちんと作れたのではないかと思います。当然、ILCは大規模な施設ですが、この単目的で何を作るかというのが明らかという意味では同様で、TDRを基に綿密なコストブックもほぼできているような状況ですので、分担をこれからきちんと進められる計画であると思われます。
XFELの見本となる部分というのは、やっぱりガバナンスとコストシェアというのをこれからきちんと政府の指導の下に決めていくということが重要なのかなということが、この調査で分かりました。
以上です。
【中野座長】 ありがとうございました。
それでは、引き続いてFAIRについて、早野委員よりよろしくお願いいたします。
【早野委員】 それでは、引き続いてFAIRについて早野が御説明をいたします。
FAIRというのは、Facility for Antiproton and Ion Researchの頭文字であります。私は2009年から2015年までこれの建設母体となったドイツのGSI研究所の科学助言委員会の委員をやっておりましたということもありまして、きょうのお話はそれの経験も踏まえてのお話ということになります。
E‐XFELと非常に違うのは、これは単目的ではないということで、それによる複雑な部分や困難があります。FAIRは4つの柱を持っておりまして、1つは原子核物理、これも日本で言えば理研のRIBFという加速器が担っているような不安定核の物理を主としたもの、それから、原子物理及びプラズマ物理という2番目の柱、それから3番目が、これも原子核物理ではあるんですけれども、高エネルギー重イオン衝突による高密度バリオンマター、最後が、反陽子反応を用いたハドロン物理という、この4つの柱を持っています。
実は、これには前史があり、その前史があるということが重要なので、少しその話をします。もともと、1969年にドイツの重イオン研究所、GSIと称されるもの、これがヘッセン州の大学連合によって設立されました。現在は、ヘルムホルツ・センターの中の施設の1つということで運営されています。
当初の建設の目玉は、UNILACという、陽子からウラニウムまで加速できる線形加速器です。主な成果としては、元素の周期表に6つの新しい超重元素を付け加えるという成果がありました。
その後1990年に、この拡張と書いてある右側の方、陽子であれば5GeVぐらいまで加速できるシンクロトロンと、それで作った不安定核を分離する不安定核分離器、それから、それを蓄積する蓄積リングなどを建設して、不安定核物理をリードする国際的によく知られた研究所でありました。ただ、これは、国際的なユーザーは来ているけれども、完全にドイツの国内研究所です。
さて、このドイツの重イオン研究所をベースにして、更に拡張するのが、FAIRプロジェクトです。建設費ほぼ17億ユーロを、ドイツが70%、ロシアが18%負担する。あとはインド、スウェーデン、フィンランド、ポーランド、ルーマニア、スロベニア、フランス、そして、もしかしたらイギリスも参加するということで、今まであった施設、GSIを入射器として、陽子であれば30GeVまで、そしてウランまで加速可能なシンクロトロンを建設する。それを使って不安定核を生成し、不安定核物理をやる。それから、陽子の入射器を増強して陽子を加速し、反陽子を作り、15GeVまでの可変エネルギーの反陽子の蓄積リングに蓄積して、反陽子の消滅反応を使ったハドロン物理の実験をするということで計画が進んでいます。現在、2025年完成を目指して、建設中です。
さて、これはPhysics Today掲載の建設サイトの写真ですが、左側が既存のGSI研究所、そして、右側の地下にFAIRの加速器、上の丸いところにシンクロトロンを作る作業が現在進んでいます。
FAIRがGSIの将来計画として提案されたのが2002年です。そのときの見積りは6.75億ユーロで、先ほど徳宿委員から話がありましたように、少なくとも4分の1は外国から持ってきなさいということがドイツ政府から研究所に指導されました。その後、技術設計書を2006年に出してたときの見積額は11.86億ユーロと大幅に増大しました。その時点で、この下の表にあるように、15か国がこれだけのお金を我が国は出しますということを表明し、協定書にサインして、キックオフセレモニーをしました。このときの完成予定は、2015年だったと思います。
ところが、ほぼ2年後には、実は11.8億ユーロでは建設できないということが判明しました。ドイツ政府が、予算は増額できないと通告したため、計画自体を幾つかのモジュールに分解しました。もともとは、陽子であれば90GeVまで加速可能なシンクロトロンも作るという計画でしたが、それは後回しにするなど、モジュラー化した削減計画を策定しました。で、2010年にメンバー国がMSV、Modularized Start Versionというのにサインをして、2018年に完成予定ということで、もう一回仕切り直しをいたしました。
この下の表が、メンバー国がMSVにサインしたときの予算計画書で、ここでFirm Commitments、きちんと約束した、という金額総計がほぼ10億ユーロとなり、紙の上では計画として成り立つということになっていました。ただ、現在は、表の右の方にバツが付いた国は既に協定から離脱をしております。協定書のサインが、実はFAIRの場合は守られなかったわけです。
さて、2010年にメンバー国がサインをした段階でFAIR GmbHが設立されました。GSIは今までの国内計画をやってきた国内法人であり、国際計画をやるためには別法人の設立が必要であるというのがその理由です。全体で1,400人いる所員のほとんどはGSI法人の方が在籍し、FAIRの方の所長及び、そのマネジメント機構少数が、FAIR GmbHという、同じ敷地の中に作られた別会社に属するという、不自然な二重構造で計画がスタートいたしました。
しかし、地盤が思っていたよりは軟弱であるということが分かって、地下60メートルまでパイルを1,360本打たなければいけないということが判明したとか、福島原発事故があって、それによってドイツの放射線施設に関する安全基準が強化をされて、それの対策のために設計をやり直さなければいけないというようなことがありまして、コストが10億ユーロから13億ユーロぐらいに増大し、建設計画も大幅に遅れることが分かりました。そこで、ドイツ政府が2014年に介入し、建設中断という事態になりました。そして、2015年の初頭に、当時のCERNの所長だったホイヤー氏を委員長とする外部レビューを行いました。外部レビューの結論は2つ、1つは、GSIとFAIRという2つの会社の統合。2つあることによってマネジメントコストが不必要に高いということです。その方向に向かって統合作業が進んでいるはずなんですが、きょう現在、いまだに別法人です。
それから、原子核物理、原子物理、高エネルギーの原子核物理、反陽子を使った物理という、4つの柱のプライオリティー付けをしました。原子核物理と原子物理を優先し、次が高エネルギー原子核物理、最も優先度が低いのが、反陽子を使ったハドロン物理と評価されました。これは、どのくらい物理の成果が上がるかを主に評価したことにはなっていますが、反陽子を使ったプロジェクトが不足金額に近く、切りしろにしやすかったという事情もあるやに聞いています。
外部レビューが行われた2015年には、反陽子はカットやむなしということで、各国政府も関連予算を凍結しましたが、メンバー国の研究者が強く反発をしました。その結果、メンバー国が予算13億ユーロを上限とする約束で、3億ユーロ近い不足分をFAIRのシェアに比例して負担することで合意しました。
2017年に改めて仕切り直しということで、FAIRの言ってみれば2回目の起工式というのが行われまして、2025年の完成を目指すということになっています。
FAIRはILCのモデルかというと、様々な意味でXFELとは違いまして、モデルとはちょっと違うなと私個人的には思っています。1つは、これはもともとは国内計画としてGSI研究所の将来計画として立案されたもので、国際的に作ってくださいと外から言われて作っているものではないということがあります。ただ、ドイツの政府から、主として予算上の理由で国際プロジェクトであることが求められ、国際プロジェクトになりました。ホスト国の支出、全体の70%ぐらいの支出ですが、ほとんどは土木建設費で、メンバー国の負担は主としてin‐kindです。
それから、ホスト国のマネジメント負担は高く、実は1国でやった方が楽なのではないかという現場の声がかなりありました。コストの見積りが当初甘過ぎたとか、マネジメントが余り上手じゃなかったとか、様々な問題に、外的要因も加わり、当初の予定が10年以上遅れています。
GSIとFAIRとの関係というのは、物理及びプロジェクトの規模でいうと、旧東大原子核研究所とJ‐PARCの関係に近いかなということを私は個人的には思っています。ただ、J‐PARCは国内計画でありましたので順調に建設が終わりましたが、FAIRも、もし国内計画でやっていたらば、既に完成していた可能性は高いのではないかと、これも現場の声であります。
その他、in‐kindで納入される物品が、ホスト国の各種法令にのっとった装置になっていなかったことによる、マネジメントコストの増大や、仕様書、契約書、法務、などを英語でできる人材が不十分で、主に加速器建設の研究者がこれらをやっているという実態がありました。
そういうことで、FAIRはほぼ同じ時期にXFELと同じ土俵の上からスタートして今に至っているわけですけれども、計画が4つコミュニティを束ねて進んできたプロジェクトであること、もともとが国内研究所の拡張計画というところからスタートしていて、強い国際的な要請があってスタートしたものではないということがあり、規模的には似ているけれども、今のILCの議論に、FAIRは余り参考にならないというのが私の意見です。
以上です。
【中野座長】 ありがとうございました。
それでは、お二人の御発表について、御意見、御質問等をお願いいたします。何かございませんでしょうか。
どうぞ、駒宮委員。
【駒宮委員】 この6ページにございます「CERNのHeuer所長(当時)を委員長とする外部レビュー」をやったと書いてありますが、そのホイヤーさんにメールで尋ねたところが、FAIRはやはり早野先生のおっしゃるとおり、余りILCの参考にはならないのではないかと、全く同じことをおっしゃっていました。
彼が言うには、FAIRのレビュードキュメントというのは一般公開されていないんで、見せることはできないと。しかし、自分としては次のようにまとめると。まず1つは、レビュー前はプロジェクトマネジメントがほとんど存在しなかったと。それがそもそもの問題であると。プロジェクトマネジメントにおける緊迫感がなくて、プロジェクトの中の異なるグループ、先ほどあった実験グループでしょう。それの間、それから異なる階層間のコミュニケーションがほとんどなかった、それに欠けていたということですね。
もう一つは、中でもシビルコンストラクションが非常に混乱していたと。彼の言葉でいうとメッシーだと。要するにコストの増大とか計画の遅れ、そのようなものはほとんどシビルコンストラクションのマネジメントが悪かったことによるというのが彼の結論です。
それからもう一つ、サイエンティフィックな競争力なんですが、これはFAIRが走る時点、ですから2025年ですが、それと数年前、これは数年前から計画していたんですが、それに比べると、明らかにサイエンティフィックな競争力が下がっているというのが問題だと。しかしながら、加速器とか測定器に関しては非常にグッドシェープであるというふうに。このFAIRの問題をベースにして、ILCとFAIRを比べるのは間違っていると彼は言っています。
ILCの物理的意義というのは、この先も変わらないでしょうしというのは、我々は常にHigh‐Luminosity LHCをベースにして、それを前提にして話しておりました。ですから、FAIRとは明確に違うと。それからILCのマネジメントは、ホストとスケジュールの面に関して、現時点での準備を見ても、計画とコスト両方が深く注意を払われているように見えるというのがホイヤーのコメントです。
以上です。
【早野委員】 同意します。
【中野座長】 どうぞ。
【陳委員】 徳宿さんに質問があるんですけれども、XFELでドイツ連邦教育研究省の大臣が各国政府に準備委員会みたいなのを作りましょうと。そのときに、ドイツとしては、半分支出用意があると、こう言っているんですが、仮に協議委員会の中で各国の拠出がほとんどなくて、ドイツが半分を大きく上回る、それこそ7割も8割も出すという事態になっても、ドイツは作るというふうに宣言していたんですか。
【徳宿委員】 それはみんな興味があることで、聞きたいところですけれども、でも、この場合は幸いロシアの大きな貢献もあったので、それを問題にしないで進められていってたということで、もしこれがなかったときにどうなっていたかというのは、はっきりしたことは分かりませんというのが、まず最初の回答です。
私が聞いた限りで、公式な発表は何もありませんので、私が聞いた感じでの雰囲気だという形の発言をしてよければ、それを言いますが、2つ、いや、3つ可能性があったと思います。1つはやめるですね。もう一つは規模を更に低くする。それは当然、ドイツの比率は更に増えることにはなりますけれども、トータルのコストを下げて進めるということです。先ほども言いましたように、もともと20GeVを17.5にして、途中のコストオーバーランで14と考えたわけです。XFELの場合には、ある程度エネルギー下げても何とかなるというところはありますので、そっちの方向を更に進めた可能性はあると。
3つ目の可能性としては、もし余り貢献がないんだったら、もう国際施設というのはやめて、国内の施設として、外国からはIn‐kindで貢献するというオプションもあったのではないかという話は聞いています。ただ、それを聞いたのはDESYの人で、DESYは、陳さんは御存じだと思いますが、HERAという加速器を作ったときは、組織はDESYですけれども、加速器については半分外国からIn‐kindをもらったというのがあります。それと同様の仕組みに戻すという可能性はあったのではないかという話はありました。ただし、これは全部起こらなかったので、しかも、ドイツ政府がどう考えていたかというのは分かりません。
【陳委員】 もう一ついいですか。私、この間3月にこのFAIRをやっているGSIも行ったんですけど、相当古い施設なんですけれども、XFELとFAIRとILCの大きな違いは、ドイツの計画の場合、両方とも既存の研究所、施設があって、そこに隣接する形で物を作ってあるわけですよね。だから、ある程度のインフラストラクチャーなりがありまして、そこのセクレタリーとか、いろんな機材を使ったりということができる。だけど、ILCの場合は、もっとずっと人里離れたところに作るわけですから、どっちかというとSSEに近いような感じになると思うんですが、1個の方が、この2つの例を出してきたというのは、そういう観点もあるんですかね。何かもうちょっと、きちっと既存の施設を使う形でやった方がいいんじゃないかという。
【徳宿委員】 それは書いてないので何とも言えません。ただ、XFELに関しましては、もちろんDESYが近くにあったというか、DESYから始まっているし、FAIRの場合が、ほとんどがGSIとオーバーラップあると言っているように、加速器でやっている人は、かなりDESYの人もやっているのも確かですけれども、でも、クライオモジュールの組立てはフランスのSaclayでやっているとか、そういうぐあいに、あちこちを転々しながらやっていたのも確かだとは思いますので、近くになければいけないというメッセージではないのじゃないかと思います。でも、分かりません。
【早野委員】 今のに関連して、FAIRとGSIの関係というのは、ずっと長年、所内で問題になっていまして、要するにGSIに本籍があってFAIRの仕事もしているというような人にとっては、今動いている既存の施設でどれだけ研究をしてもいいかということが常に問題になる。建設にかけるエフォートと、それから今、既存の加速器を動かし続けて、それによって何かの研究をするというエフォートのエフォート率をどう管理するかとか、それはずっと問題になっていまして、実はその管理はうまくいかなかったと思っています。
【中野座長】 ほかに御質問、御意見ないでしょうか。
なかなか質問も意見も言いにくいような感じですね。徳宿さんの発表から、組織とかガバナンスとか、そういうものをまねろと言っているわけでもないということも明らかだし、FAIRの例に至っては、ILCと全く関係ないということもおっしゃられているわけで、この場に中田先生いらっしゃらないんで聞けないんですけど、一番の疑問はLCBの声明に、なぜこの2つの例が出てきたかということで、一体何のためにこの2つの研究所の話が出てきたかというところは、多分、皆さん、ひっかかっているところだと思うんですが、LCBに関わっていらっしゃる駒宮先生から一言。
【駒宮委員】 この多分最後のところに、観山さんと中田さんの問答集があるんですが、これを見ていると、かなりいろんな誤解があるんですね。といいますのは、XFEL、FAIRを出してきたというのはどうしてかというと、ホスト国がイニシアチブを持って、主導権を持って、それで主導する国際プロジェクトだと。だからホスト国が主導して始める、そういう国際プロジェクトだと。それで、そのホストが値段の半分以上を出しているという、その2つの点です。そういうものの例として、この2つを出してきたんです。ですから、マネジメントとか何とか、そういうことで出してきたんじゃないんです。
そのホスト国のイニシアチブというのは、前というか、500GeVのときは、それほどきつく言われていなかったんですが、ホスト国のイニシアチブって、これは当たり前の話で、どんなプロジェクトも、ホストをやる国というのは、きちんとしたイニシアチブを持たなきゃいけないというのは当たり前の話なんだと。ただ、500GeVと250GeVの場合で違ってきたのは、お金のシェアが違ってきた。というのは、お金のシビルコンストラクションと、それから加速器のハイテクな部分ですね。これの減った率ですね。この率が相当違うんです。ですから加速器の方は500GeVから250GeVになることによって半分になるんですね。ちょうど半分になる。ところがシビルコンストラクションの方というのは半分になり得ない。大体これは6割ぐらいです。そこのところが問題になるんです。そうしますと、全体の割合として、ホストの持分、シェアというのは増えてしまうわけですね。ですから、そういう点で、ICFAで前、バレンシアのときにはホストは大体50%と言ったのが、50%よりちょっと増えると、60%ぐらいになる可能性があるというので、それが1つの理由でもって、FAIRとかXFELを出してきた。大体60%ぐらいになります。という意味もあると思います。
以上です。
【中野座長】 どうぞ。
【横山委員】 ちょっと理解の確認のために、駒宮先生や皆様に確認したいんですが、多分、この観山さんとか中田先生とのやりとりは、このILCの委員会が始まってからしばらくの間モデルとなったのがITERプロジェクトであったことが原因だと理解しています。250になる前はITERプロジェクトを例として、予算分担の議論を進めてきたということが背景にあって、それが続いていると思います。
それでLCBがどうしてこういうふうに出してきたのかというと、今までの議論を拝見するに、やはりホスト国がイニシアチブを持ってやるということは、ITERプロジェクトから随分と大きな方針転換になっていると理解しました。だからITERをこれまでのモデルにするのは妥当ではなくて、それとは違うホスト国がコントリビューションを主に引っ張っていくような形として、この2つのプロジェクトが事例に挙がったのかなというふうに拝見しました。それぞれの適性などについては、きょうの話でもよく理解できたと思います。
あと、少し陳先生からの補足ですけれども、最初の2015年頃に、グリーンフィールドに作ることの危険性については、実は近藤先生からSSCの事例が紹介されました。失敗の分析をしたレポートがあって、要因は3つあった。1つはグリーンフィールドに作ったこと、2つ目は経営のマネジメントの体制が悪かったこと、3つ目は加速器の設計が途中で変わったことでした。陳先生御指摘のように、グリーンフィールドに作ることのリスクというのは、議論する必要があるのかなと拝聴いたしました。
【中野座長】 初田委員。
【初田委員】 前回の委員会のときに近藤さんが話されて印象に残っているのは、SSCの失敗の大きな要因の1つが、何もないところに加速器を作ろうとしたことだということでした。
それから、観山さんと中田さんのやりとりの資料の中の観山さんの観点に、私は共感しました。4ページ目の真ん中あたりですが、500GeVのときと250GeVのときでは大きく印象が違うという点です。500GeVのときは国際プロジェクトというイメージが非常に強かった。前回の委員会のときは、私もそういうふうに理解しており、今回の250GeVも同様と思っていました。しかし、それは誤解であって、250GeVの場合は、むしろ日本が大半を主導するものと理解すべきであるようですね。しかし、それに対する日本の当該コミュニティの覚悟というのが、これまで頂いた資料の中のどこに書いてあるのかよく分かりませんでした。250GeVのレポートにはサイエンスのことはたくさん書いてあるんですけれども、そのような点はどこに書いてあるのでしょうか。
【駒宮委員】 すいません。
【中野座長】 どうぞ。
【駒宮委員】 多分、前のときも、ITERをモデルにしたということはどこにも言ってないと思います。国際ということはもちろん言ってます。国際なんだけど、もちろんホストというのはイニシアチブを持たなきゃいけないというのは、それはどんなプロジェクトでもそうなんです。その点を強く言うか言わないかというだけの話で、それはだから昔から、そんなめちゃくちゃには変わってないと思います。
【中野座長】 どうぞ。
【徳宿委員】 やっぱりイニシアチブという言葉が人によって違うのと、少し混乱しているのだと思いますけど、ホストが何のイニシアチブをとらなくちゃいけないかというと、ホストがイニシアチブをとって、どういう国際組織にするかの議論を始めるということをやるということが大事で、それをFAIR、XFELのときもドイツ政府はやったのだというのが私の報告です。
だから、ITER方式にするのかしないかとかいうのは、やると決めたところでXFELのときにはできた最初のワーキンググループの中で、きちんと決めればいいことなのです。でも、それをやるには、まず最初にホストが、そういう形で、とにかくこれを作るから、どういう形の体制をとるかというのは、ここで議論しようよと言って始める、そこのイニシアチブをホストがとるのが重要だというのがメッセージだと私は思います。
ILCの方のドキュメントでも、PIPという、Project Implement Planというドキュメントがありますが、それにも最初に明確に書いてあるのは、ILC側としては、どんなガバナンスをとるかというのを決めるものではない。これはあくまでも政府が決めるものであるが、今の状況で考えると、こういうパターンがあるというような書き方をしながら、ITERに近い方を持ってきているわけです。ですから、そこのイニシアチブは、やると決めたときに、ホストの国の政府が議論しながら進めていくところなのではないかと思います。
【初田委員】 よく分かりました。つまり500GeVのときと何も変わっていないんだということをおっしゃっているのですね。
【駒宮委員】 そうです。
【初田委員】 ということは、この資料の4ページで、中田さんが「そうかもしれません、確かに。」と述べられているところも誤解であるというふうに理解すればいいですね。
【駒宮委員】 ちょっと、ここ、まだちゃんと読んでないので。
【初田委員】 この文章は重要だと思いますよ。
【中野座長】 意見というかコメントなんですけれど。はっきり言って、この2つの計画、余り関係のない2つの計画を出してきて、そういうこともというときに、2つの捉え方があると思うんですよね。だから1つは、ILCの計画、十分、計画進んできて、機が熟したので、もうそろそろ組織のことについて、みんなで国際的に考え始めましょうと、そういうことをきちんとやってきた、そういうプロジェクトもあるので、そういうフェーズに入ってくださいという、そういうメッセージというのと、もう一つは、やはり日本がかなりここで頑張らないと、国際的にはなかなか協力という決断はできないですよと、だからそろそろ日本が決断しなくちゃいけないという。
【駒宮委員】 そうです。両方です。
【中野座長】 両方ですか。
後者に関しては、少し心配するのは、今あえてそれを言っているのは、国際的な求心力、下がっているんじゃないかと。だから危機的な状況にあって、今、日本が今まで以上に頑張らないと、このプロジェクト自体がなかなか国際的に認められないというか、協力できないという状況になっているんじゃないかという心配があるんですけど、それについては何かコメントはないでしょうか。
【駒宮委員】 それはそういう心配はないと思います。ヒッグスファクトリーになって、より現実味が増したと、物理のフォーカスも、きちんと前よりはフォーカスされているというので、求心力はむしろ上がっているんじゃないかと思います。
【中野座長】 どうぞ。
【徳宿委員】 多分、海外の研究者からの意識としては、今、ボールが投げられたというところで、打ち返されるのは日本政府からなのだという印象なのです。だからFAIRとXFELで、全く違うと言っていましたけれども、私のところでありましたように、全く同じときにドイツ政府が認めたのですね。僕のところでは言いませんでしたが、XFELのときには、このInternational Steering Committeeを作りましたけれども、同じときにFAIRも作っている。両方同じでやって、特に何度も合同でやっています。という形で、インターナショナルな研究所を作り上げるというのは、XFELとFAIR、実は同じようにやってきた。ということは、LCBが言っているメッセージの1つなのだと思います。だから、そういう形で進めてくださいと。今ボールはこちらに投げられているので、何らかのこういう形のアクションが始まらないと、何も進みませんよというのが現在の状況なのだと思います。
【中野座長】 それもちょっと不思議で、そこまで求心力が高まって、そこまで国際的な期待が高まっているんだったら、日本政府というか、日本だけに任せるでしょうかと思うんですよね。もし、日本が進めないと決めたら、それでいいんですかというのが聞きたいことで、国際的なコミュニティは。本当に大事なことで、高エネルギー物理で次のフォーカスというのがヒッグスの精密測定で、これはもう国際的に、どこの国がやるというんじゃなくて、本当にやらなくちゃいけないことだったら、日本だけに判断を任せるだろうかという、素直な疑問です。
【駒宮委員】 また私が答えるんですか。
【中野座長】 ええ。そうですね。
【駒宮委員】 ほかの国はほかのプロジェクトがあるわけですね。例えば、CERNはHigh‐Luminosity LHCをやらなきゃいけない。ただアメリカはSSC失敗した後、かなりハイエナジーフィジックスがスケールダウンして、ニュートリノをこれから本当にやってくんだというのがあるんですね。結局、だからILCを現実的にできるのは日本に作るしかないわけです。そういう意味で、ほかの国は日本に対して大変期待しているわけですね。だから、そこのところは、別にほかの国が自分のところに持ってこない、持ってこられないという客観的ないろんな事情があるので、やはりここは日本で頑張ってほしいということだと思います。
【中野座長】 ほか、何か御意見ありませんか。
【陳委員】 1つ。
【中野座長】 どうぞ。
【陳委員】 私の感じでは、このLCBとICFAと少し分けて考えるんで、LCBはあくまでもICFAの下の1つのパネルにしかすぎないので、ステートメントの大きさとすればICFAの方がはるかに重要だと私は思うんです。
ただし、そのLCBのが、私もよく理解できない。先ほどの駒宮先生の話と重なるんですけれども、今回のLCBの話の中では、シビルコンストラクションのコストはホスト国が全部持ちなさいと、その他の加速器建設の部分をみんなでシェアしましょうという話になっているんですよね。先ほどの話だと、250GeVに落ちたことによって加速器の建設コストは下がったけど、シビルコンストラクションの方はほとんど下がってないと。でも、その分は全部日本が負担しなさいという話になっているように聞こえるんですが、500GeVだったときはLCBの中でそういうような話になっていたんですか。ICFAのLCBの中で。
【駒宮委員】 うん。そういう話になっていました。
【陳委員】 なっていたんですか。
【駒宮委員】 ええ。シビルコンストラクションはホスト国がやって、そうじゃないハイテクの部分がありますよね。その部分は応分に負担するということになって、そうすると、それを勘定すると、大体ホスト国は50%だというのがあったわけです。今、ですから、このシビルコンストラクションの割合が増えたので、全体のお金は60%に減りましたが、そのうちでシビルコンストラクションの部分というのは増えたわけですね。そうすると、だから日本のシェアも増えたわけです。
もちろん、ハイテクの部分を日本が全然やらないというのであれば、もっと少ないですけれども、日本だってやはりハイテクの部分をやりたいわけですね。そうすると、そのハイテクの部分を応分に負担してやると、そうすると50%よりは増えるということでございます。
【中野座長】 ちょっと考える時間も必要な感じがするので、先に進ませていただきたいと思います。この件については、まだ引き続き意見交換したいと思います。
それでは、次の議題ですが、次は報告書(案)についてです。前回の会議では、議論のポイントをまとめた資料を基に議論いただきましたが、その際の議論を踏まえ、梶田座長代理、三原科学官、事務局とも相談し、資料5、6、7を案として作成いたしました。まず、事務局から内容についての説明をお願いいたします。
【轟素粒子・原子核研究推進室長】 資料5を、まずごらんください。素粒子原子核物理作業部会報告書(案)について御説明いたします。
前段の部分は、今回の検討に至る経緯を記述しております。第1段落が、平成26年から27年に、500GeVILCについて議論いただいた経緯、第2段落は、その後、国際研究者コミュニティが計画を見直し、昨年11月に250GeVILCとする提案を公表したことを受けまして、当作業部会が再度設置された経緯について記述しております。
続きまして、1ポツとして、欧州合同原子核研究機関(CERN)における実験結果について記述しております。
以下、本文を中心に、重要な部分を読み上げながら説明させていただきます。
1つ目、前回報告書及び「これまでの議論のまとめ」においては、ILCの性能、得られる成果等については、CERNが設置する大型ハドロン衝突型加速器(LHC)におけるエネルギー増強後の13TeVLHCにおけるII期実験の結果に基づき見極めることが必要とされている。
LHCの実験スケジュールについて、13TeVによるII期実験は当初2015年から2017年とされてきたが、その後、2018年まで延長されている。当作業部会において、2017年末までのLHCにおける実験結果を確認したところ、様々な成果はあるものの、標準理論を超える新粒子(強い相互作用をする超対称性粒子の可能性がある粒子)・新現象(暗黒物質や余剰次元)の兆候は捉えられていない。
更に、これまでの実験結果から、LHCにおいて、II期実験が続く2018年末までに新粒子や新現象が観測される可能性は低いことが判明しており、前回報告書において示されている以下のシナリオについては、(3)13TeVLHCで新粒子や新現象が観測されない場合、となる。ただし、250GeVILCについては、当初計画の500GeVILCから衝突エネルギーが半減したことから、内容については修正を要する。
続きまして、2ポツ、250GeVILCの科学的意義について御説明します。
2つ目の丸で、前回報告書におけるILCの目指す科学的意義を再度掲載しまして、その整理に沿って250GeVILCの科学的意義について具体的に記述しています。
その下の丸ですが、(1)ヒッグス粒子やトップクォークの詳細研究によるヒッグス機構の全容解明で標準理論を超える物理を探索。これにつきましては、計画見直し後の250GeVILCでは、350GeVの衝突エネルギーを必要とするトップクォークは生成できないが、ヒッグス粒子の生成断面積が最大化されることに加え、13TeVLHCで新粒子の兆候が観測されず250GeVILCでのヒッグス粒子の精密測定に有効場理論が利用できることが明らかになったことから、ヒッグス粒子の精密測定の実現可能性が明確になったといえる。
250GeVILCによる実験が最も優位性を有するのは、ヒッグス粒子と素粒子の結合定数の精密測定である。ヒッグス粒子は潜在的に標準理論に含まれる通常の相互作用をしない新粒子と結合し得る性質があり、暗黒物質や通常の実験では検出不可能なものとも相互作用すると考えられる。結合定数を高い精度で測定し、標準理論からのずれのパターンが見い出されれば、新しい物理の性質に関する情報が得られる。その結果が今後の素粒子物理学が進む方向性に示唆を与える可能性がある。例えば、暗黒物質の正体やヒッグス粒子が真の素粒子かどうかなど、現在の標準理論では説明が困難な課題に対し、ヒッグス粒子の結合定数の精密測定が、その解明の端緒を与える可能性がある。
一方、500GeVILCから250GeVILCと規模を縮小することにより、前回報告書において、ILC計画における重要な課題の1つとして挙げていたトップクォークの精密測定は、衝突エネルギー350GeVが必要であることから、250GeVILCでは実験が不可能となる。同様に、ヒッグス粒子の三点結合(1つのヒッグス粒子から2つのヒッグス粒子ができる反応)の測定は衝突エネルギー500GeVが必要であり、250GeVILCでは実現が不可能となる。
(2)超対称性粒子などの新物理の探索及び発見された場合その詳細研究についてですが、この(2)については、前述の2017年末までのLHCにおける実験結果から、当初計画の500GeVでは到達可能なエネルギー領域で新粒子を発見できる可能性は低く、見直し後の250GeVILCでは、新粒子を発見できる可能性は更に低くなる。500GeVILCにおいて期待されていた強い相互作用をする超対称性粒子については、LHCでの実験結果から、1.5TeVから2TeV以下に存在する可能性は極めて低いと考えられ、ステージングも含めたILC計画における科学的意義の範囲には入らないと考えることが妥当である。
したがって、新粒子の直接探索については、TDRにおいて採用されている超伝導加速技術では、衝突エネルギーが明らかに不足するため、新しい技術開発も視野に入れて、将来的に検討していくべき課題である。
(3)その他(暗黒物質や余剰次元)というところでございますが、(3)については、質量欠損法という間接的な探索方法をとるため、250GeVILCにおいても、その意義は変わらないといえる。
続きまして、3ポツ、250GeVILCのシナリオ(13TeVLHCの結果を踏まえて)について、記述しています。
まず、前回報告書における500GeVILCのシナリオについて、(3)の13TeVLHCで新粒子や新現象が観測されない場合の部分を抜粋した上で、中段の丸以下でございますが、この前回報告書における(3)のシナリオについては、13TeVLHCの結果を踏まえた当作業部会の議論を踏まえ、250GeVILCの科学的意義の観点から、シナリオについて、以下のように修正される。
13TeVLHC結果を踏まえた250GeVILCのシナリオ(科学的意義の観点)。
方針。ヒッグス粒子を精密測定し、標準理論を超える物理の解明の端緒となる事象が観測されれば、その結果が今後の素粒子物理学が進む方向性に示唆を与える可能性がある。また、LHCでは標準理論を超える新粒子の兆候を捉えられていないことから、ILCにおける新粒子の直接探索による発見の可能性は低い。なお、トップクォークの精密測定を行うためには350GeV以上の電子・陽電子衝突エネルギーが必要であり、250GeVILCでは実施しない。
効果。標準理論からのずれが観測された場合は、そのずれの大きさとパターンから、標準理論を超える物理の方向性と関連する新物理のエネルギースケールが明らかになる。
最後、4ポツのところですが、欧州XFEL、FAIRの実例。これについては、先ほど御議論いただきました内容を踏まえて、文案を追記させていただきますので、次回に併せて御議論いただければと思います。
続きまして、資料6をごらんください。前回、第3回の作業部会で御議論いただきました表の1枚目ですけれども、この1枚目については変更ございません。
続きまして、資料7をごらんください。資料7については、前回の御議論を踏まえて修正をしております。
主な修正点ですが、一番左の欄ですね。解明される物理についてですが、これはILCにおける重要度順に並び替えさせていただいております。
それから、隣の実験における観測量についてですけれども、特にヒッグス粒子の結合定数の測定の部分については、様々な測定量があるということでしたので、そこを増やさせていただいております。
その隣、実験の可否の部分ですけれども、前回は丸、三角、バツという曖昧な表記をさせていただいていたんですが、より正確に書くということにしております。
その隣、科学的意義の変化についてですけれども、一番上の部分ですね。(1)ヒッグス粒子精密測定による新たな物理の探索の上の部分ですけれども、前回は上がったと変わらないの両論があるということで、両方に書かせていただいたんですが、前回の御議論を踏まえますと、これは上がったというところで落ちついているかと思いますので、上がったのみにマークを付けさせていただいております。
以上でございます。
【中野座長】 ありがとうございます。
それでは、この報告書(案)について、御意見、それからコメントをお願いいたします。
松本委員から。
【松本委員】 幾つか気になるところがあるんですけど、一番気になるのは、2についての内容説明、3ページの新粒子探査についてです。これは私の専門でもあるので。
最初に、多分これはLHCの結果を受けて、こうこうこうであるという説明についてですが、1個目の「(2)については」から始まる文章と「500GeVILCで期待されていた」というのが、同じこと、同じ内容をごっちゃにして言っている感じがして分かりづらいというのが1つ。ここで最も大事なのは、LHCの話を前々回していただいたときに、LHCの結果、1.5TeVから2TeVの間に、強い相互作用をする新粒子の発見はなかったし、これからもなさそうであるという事実(を述べる)ことだと思います。それに対してILCで測ろうとしている新粒子は、そいつらではないんですね。それでは何かというと、強い相互作用をしない新粒子で、これは前回とかで議論した資料6に関係していて、典型的な超対称模型では7分の1以下の質量を持ちます。ここは前部会で結構議論になったところですが、典型的な超対称性模型というのは2種類あって、1つはカラーを持った強い相互作用をする粒子の7分の1ぐらいに出てくる典型的な超対称模型、もう一つはカラーを持った粒子にはかかわらず、大体エレクトロウィークスケールぐらいに一番軽い粒子が出てくるものです。この2つの例があるので、つまり7分の1と書き切られると困るということで、たしか「以下」になったんですね。2年以上前の話ですけど。それを踏まえると、2で言わなければいけないことは、LHCで2TeVから2.5TeVの間に強い相互作用をする粒子はいなかった。その結果、その7分の1というと幾つですか、とにかく500GeVILCでもきつくなってきますし、250GeVILCでもきつくなってきて、それを探査するためには、言ってみれば(加速器を)エクステンションしなきゃいけないという事実が1つ。もう一つの例は、いつも(新粒子が)200GeV程度であるので、これは最終的にLHCでは感度がない新粒子発見(の項目)に含まれることですけれども、それは引き続きまだ発見の可能性があると、この2つということをきちんと書かないと、かなり誤解を与えてしまうんではないかと思って、発言させていただきました。
【中野座長】 ありがとうございます。ILCで探すのは、強い相互作用する超対称性を見る必要はないので、そのことについてはきちんと書いて。
【松本委員】 そうですね。ちょっと誤解を与えると思います。
【中野座長】 そうですね。このままでは。
【松本委員】 2種類あるということだと。
【中野座長】 はい。
【駒宮委員】 いいですか。
【中野座長】 初田委員、手を挙げられていたので、順番でいいですか。
【駒宮委員】 はい。
【初田委員】 3ページの一番下の丸のところで、新しい技術開発も視野に入れて将来的に検討していくべき課題であるという文章がよく分かりませんでした。衝突エネルギーが明らかに不足しているので、技術開発をして何ができるのか。それから4ページの二重枠の中の方針の最後、250GeVILCでは実施しないという言葉の主語がないので、誰かが実施しないという意味なのか、実施できないと言っているのか。
【中野座長】 最後の方は実施できないですね。
【初田委員】 できないですね。
【中野座長】 はい。エネルギーが足りないんでできない。
最初の方は、これは浅井先生の発表の中にあったかと思うんですけれど、1TeVでも足りないんじゃないかという話があって、同じトンネルを使うんだったら、新しい加速原理というようなものも。
【初田委員】 そっちの方。
【中野座長】 ええ。そっちの方ですね。だから加速の方法自体を、もっと革新的なものを研究して、同じ長さでもっと高いエネルギーというものも考えた方がいいんじゃないかということを取り入れております。
【駒宮委員】 今のところなんですけれども、このところを読むと、要するにステージングしても新しい粒子なんか出てこないんじゃないかということを言っているんですよ。それは全くおかしい。それは、もちろん1.5TeVとか2TeVの重い粒子というのはeプラスマイナスだったらできません。しかしながら、それに対応するスーパーシンメトリックな粒子とか、ほかのそういうLHCでは発見するのが難しいような粒子というのは、当然、ステージングされた後にサーチするような、そういうものだってあるわけです。だから、この言っていること全体が、特にこの2つ目の丸のステージングも含めたILCにおける科学的意義の範囲には入らないと考えることが妥当である。これは当然、強い相互作用をする粒子は、それは当たり前ですよね。でも、ここで言っているのは、そんなことじゃないわけですよね。要するに、それに対応するカラーを持たない、強い相互作用をしない超対称性粒子は、当然、ステージングされたら、それの範囲に入ってくる可能性あるわけです。それ、当然探すわけです。だから、この文章はおかしいと思います。
【中野座長】 ええ。この文章はおかしいと思います。この文章は直します。そうですね。
もちろん、その可能性というのは、いつでもあるんですけれども、一方、精密測定するということを決めた際に、特に250GeVで探している範囲には新しい粒子がないということを仮定して有効場理論を使っているわけですから、新粒子もあるし、有効場理論も使えるという、その両方が成り立つというのはなかなかないだろうというのはあると思います。
ステージング、次、何TeVにするかというのも、もちろん含めて、新粒子の可能性を議論しないといけないと思うんですけれど、少なくとも500GeVですよね。500GeVのところでは、250GeVと比べて飛躍的に新粒子の発見の可能性が高くなるというような、そういう見込みが成り立たなかったので、今、250GeVの計画があるんではないかというふうに考えますが、それはどうなんでしょうか。
【駒宮委員】 それは要するに程度の問題ですよね。できるかできないかというのと、それとできる可能性があるというのとは話が全然違うわけです。できる可能性はあるわけです、当然。
それから、もう一つ、スーパーコンダクティングも、どんどんどんどんグラディエントというのは上がる可能性あるわけですよね。ですから、スーパーコンダクティングでも1TeV以上に行ける可能性って当然あるわけですよね。
今のいろんな、ここで言っている、この新しい技術開発って一体何を言っているか分かりませんが、プラズマ加速だとか何とか、そういうことも含めているんでしたら、それはおかしいと。
【中野座長】 いや、もちろん、プラズマ加速も入っていると思いますが、ここに書いてあるのはTDRにおいて採用されている、その超伝導加速技術ではということですので、超伝導加速技術が更に発展するということは新しい技術の中に入っていると思います。
【駒宮委員】 分かりました。
このところは、要するに、超伝導加速器のILCで達することのできるエネルギーというのは、将来の技術開発で、当然、TeV領域に達することが考えられるわけですね。新しい加速器技術も視野に入れて、将来に検討する可能性を残すということは書いてもいいですが、でも、これだと、そうしないと何か新しい物理が出ないような、新粒子が探索できないような、そういう感じになっているんですね。だから、それはやめてほしいと思います。
【中野座長】 表現については工夫したいと思います。
松本委員。
【松本委員】 多分、500GeVの場合と250GeVの場合で、新粒子探査について、どれだけ影響があるかということを言わなきゃいけないはずで、2番目で超対称性模型の探査だと、7分の1のシナリオは、もう確かにできない。もう一個の方はできるんだけど、500と250でどういう違いがあるのに答えなきゃいけないと思うんです。それが実は、一番軽いのが大体200GeVぐらいにあると思われていて、そうすると500あったらペアプロダクションできるけど、250ではできない。ただし、最近発展がありまして、実は間接的にそういった粒子が作る輻射補正の兆候は見える。250で。まず、それを確認してから、もしあったら500に行けばいいじゃないかという議論は成り立ちます。
【中野座長】 その輻射補正というのは、いわゆるヒッグス粒子の結合定数じゃなくてですか。
【松本委員】 この場合は、電子、陽電子から、例えば、ミュー粒子ペアへの輻射補正とか、ボトムクォークペア、いわゆる標準模型の素粒子への。
【中野座長】 分かりました。
【松本委員】 だから、500GeV作ったら、いきなりペアプロダクションしてくれるんですけれども、250でもきちんと兆候が見えて、なかったら、もうそれ以上進んでもしようがないですし、あったら、またどうしようかという話が進むと思います。
【中野座長】 そういう意味では、250GeVで走れば、ある程度、兆候というようなものが見えるという。
【松本委員】 そうです。だから弱い相互作用を見つけて、ダブルフォースを見つけるみたいな感じです。
もう一つ。
【中野座長】 どうぞ。
【松本委員】 今度、3番の方ですが、これ暗黒物質等に関して。これこそ僕の専門なので、是非お話をさせていただきたいんですけど。ILCの250が本当にダークマター、暗黒物質探査にどれだけ役に立つかということを一通り全部調べてきました。それは意味があります。(ILC250は)4つの種類のダークマターに感度があって、レプトン、つまりエレクトロンとかミューオンとか、そういうのに親和性を持つダークマター、もう一つは、ヒッグスとCPが破れている相互作用を持つダークマター、もう一つは軽いダークマターで、最後の1つは、さっき言った超対称性粒子のときとかぶるんですけれども、弱い相互作用、弱い力を感じるダークマター、この4つがILCが、他の全ての暗黒物質の実験、LHCや地下実験、宇宙観測を含めて、それでもILCが必要になる領域です。
具体的にILCでどういうプロセスで見なきゃいけないかというと細かになるんで、端的に言いますと、かなりの部分はヒッグスの希少崩壊を見ることになります。例えば、ヒッグスからダークマター2つとか、ヒッグスから媒介粒子へ崩壊し、更にその媒介粒子がミューオンペア等に崩壊する。だからヒッグス・ツー・4ミューオンとか、そういう感じですけれども、そういうプロセスを非常に感度よく測る必要があって、それはILCが非常に得意であると。そうすると、ヒッグスを作ってくれさえすればいいので、250と500で感度はそう変わらないというのが結論です。だから記述を変える必要はないんですけれども、一応、コメントさせていただきました。
【中野座長】 簡単に言うと、どう言ったらいいか、リアルなダークマターを作れる範囲にダークマターがあれば、実のヒッグスからそれにディケイするというのが増えるし。
【松本委員】 普通起こるんで。はい。
【中野座長】 それより重いところであったら、ループの影響で、いろんな希崩壊というものが可能になるという、そういう……。
【松本委員】 そうです。ダークマターが軽ければ崩壊してくれますし、重ければ、ダークマターが作る輻射補正を見ると。
【中野座長】 輻射補正、あるいはそれを介した……。
【松本委員】 介した。そうです。何か……。
【中野座長】 4レプトンみたいな。
【松本委員】 4レプトンとか、そうですね。はい。
【中野座長】 はい。
【棚橋委員】 すいません、よろしいですか。
【中野座長】 ちょっと待ってください。こういう順番でいいですか。それでは、どうぞ。
【棚橋委員】 今の話に関連してですが、やっぱりこの4ページの一番上のところは、私、違和感がありまして、まず、「(3)については」となっているので、(3)を見ると、その他で、別に暗黒物質だけじゃないので、かなり暗黒物質にフォーカスしていっているのは違和感がある。
もう一つは、これ250GeVと500GeVを比較している話なんだと思うんです。250GeVでも、かなりいいところは行くというのは、今、松本委員がおっしゃられたとおり、そうだと思うんですが、500GeVの方が、やっぱりいいんですよね。なので、変わらないというのは、ちょっと強弁が過ぎるかなという感じがするので、「それほど悪くならない」とか、何かちょっと表現を工夫していただく程度の方……。「変わらない」と言われると、ちょっと、「変わるでしょう」というふうに言いたくなります。その2点。
【松本委員】 そうですね。
【中野座長】 座長、座長代理とか、その辺のあたりも、この辺のところは議論がありまして。はい、どうぞ。
【梶田座長代理】 ついでにもう一ついいですか。すいません。これは聞きたかったんですけど、(3)では、暗黒物質や余剰次元って、余剰次元があるんですが、これについて、LHCの結果を受けて、今、250GeVでどのくらい意味があることができるのか教えていただければと思うんですが。
【松本委員】 これは具体的に全部調べたわけではないんですけれども、余剰次元模型自身の魅力がなくなっているんじゃないかというのが1つ、すいません、それは素直に。だけども、LHCでは見づらい余剰次元の、いわゆるカルツァ・クライン・エキサイテッドステートとかには相変わらず感度がある。
具体的には、最近ですと、ゲージヒッグス・ユニフィケーションモデルという、細谷さんがやられている仕事がありますけれども、それはやっぱりリニアコライダーでの探査が非常に重要であるという発表が、ついこの間ありました。だけど一方で、確かにLHCでも作れるような余剰次元模型は、まずはILCは作れないです。そういう感じで違います。
【棚橋委員】 もう一つ、補足していいですか。
【中野座長】 はい。
【棚橋委員】 あと、ヒッグスに関係するんですが、余剰次元だとラディオンという余剰次元方向をスタビライズする粒子が必ず必要になるので、ラディオンはヒッグスとミックスして、ヒッグスのいろいろな性質を変えてしまいますので、ヒッグスの精密測定をすることによって、ラディオンに関するバウンドは非常によくなるはずです。
【松本委員】 すいません。
【中野座長】 それは結合定数の方ですか。
【棚橋委員】 結合定数のそれに見えます。
【藤井教授】 補足していいですか。
【中野座長】 はい。
【藤井教授】 今のラディオンの話に関しては、私の最初の発表のときに区別できるモデルの中に入っています。
【棚橋委員】 多分、そっちの方が大きい。
【松本委員】 大きいです。ラディオンは確かにILCの専売特許に。
【駒宮委員】 すいません、いいですか。
余剰次元なんですけれども、余剰次元の探索方法って2つありまして、1つはモノジェットとかモノフォトンを探すんですね。それに対応して、逃げてるグラビトンがいるんですね。カルツァ・クライン・グラビトン。それに対してだったら、シングルフォトンとかシングルジェット、これが1つです。
もう一つはバーチャルにカルツァ・クラインのグラビトンを飛ばすというのがSチャンネル。それはプリシジョンメジャメントがすごく効くんです。そうすると、だから、エナジーモーメンタムテンソルも全てカップルするんで、だからEプラス、Eマイナスからガンマガンマに行くような、そういうプロセスも核運動量の角度分布が変わってきたりするんですね。だから、そっちはEプラス、Eマイナスでもろにできます。それはプリサージメジャメントです。
【中野座長】 それは250GeVも500GeVも変わらないですか。
【駒宮委員】 変わらないことはないですけども。
【中野座長】 余り変わらない。
【駒宮委員】 もちろん高いエネルギーの方が若干いいですけれども、バーチャルプロセスですから、どっちでもできます。
【松本委員】 余り変わらないみたいですね。なぜかというと、標準模型の過程とニューフィジックス、BSMの過程の干渉効果を見ているんで、それ自身を見るよりは減りが、変わらなさが弱い。日本語がおかしいかな。多分、受け取ってくれると思って。
【中野座長】 先ほどの場合と同様に、ちょっと表現を工夫いたします。
【松本委員】 そうですね。変わらないんだけど、意義が失われるほどは変わらないというのが正しい言い方だと思います。
【中野座長】 はい。
【駒宮委員】 すいません。
【中野座長】 どうぞ。
【駒宮委員】 先ほどの「(2)について」というところに戻らせていただきたいんですけれども。ここで、要するに、ステージングというか、ハイエナジーのアップグレードの話があるんですが、最近、ステージングという言葉はLCCでもLCBでも使っておりません。もうステージングという言葉はやめました。というのは、もう250。このプロジェクトは250GeV、こう来てる。あとはアップグレードなんですね。アップグレードに関してなんですが、要するに、新粒子の直接探索に必要なエネルギーは、250GeVILCと「High‐Luminosity LHCでの実験でより明確になると期待される」という言葉をここに入れてほしいと思います。よろしいですか。
【中野座長】 アップグレードの必要性というか、アップグレードの見込みについて。
【駒宮委員】 必要性というか、だから、ええ。そうですね。
【中野座長】 見込みですね。
【駒宮委員】 見込みです。
【中野座長】 だから、既にここで新しいスケール、エネルギースケールとか、いろんな言葉が出てますけど、それを……。
【駒宮委員】 ここで言ってるのは、そんなことはやっても意味がないということを言っているわけですよ、ここで。そんなことはないんだということを言いたいわけです。
【中野座長】 意味がないとは言っておりませんので、誤解のないように変えたいと思います。
三原科学官。
【三原科学官】 ちょっと戻るんですが、先ほど松本先生のお話で、輻射補正で250でも見えるという話で、申し訳ないことに、ちょっとそこを見落としていたんですけど、これ、どなたかの発表資料に。
【松本委員】 浅井先生のトラペ、あと発表のときに質疑応答で入ってきたと思いますけれども、今回の部会の第2回で発表された。その場所を示せということですね。
【三原科学官】 大丈夫です。あとは確認いたします。
【松本委員】 いいですか。そこの、多分リファレンスの方に入っているのかもしれません。
【駒宮委員】 資料17の46ページです。
【松本委員】 はい。だそうです。
【三原科学官】 そうすると、松本先生の今のお話とか今の議論を聞いていると、資料7のところで、(1)、(2)、(3)、(4)というのが左に、ILCにおける重要度順と並べてカテゴリーがあるんですけれども、(2)と(3)の……。
【松本委員】 入れ替えた方が、多分現在は正しいかなという感じはするか、あるいは資料6の上での資料7ですね、多分順番としては。資料6は、多分ヒッグスの精密測定についての意義で、もう一個は、要は、(2)と(3)をコンバインして、超対称性粒子、暗黒物質の新粒子という意味だから、ひっくり返すかコンバインした方がいいんじゃないかと僕は思います。
【中野座長】 なかなか悩ましいところで。
【松本委員】 悩ましいところだから、いろんな方法が。
【中野座長】 駒宮先生のおっしゃるように、将来アップグレード新粒子探索というのがILCの重要度で。
【松本委員】 魅力の1つだとか。
【中野座長】 高いところにあるんだったら、250GeVではこのままですけれども、重要度順としてはキープということもあると。
【松本委員】 だから、250GeVとして考えるならば、ひっくり返した方がいいんじゃないかなという。
【中野座長】 そのとおり。
はい、どうぞ。
【駒宮委員】 ちょっとどんどん進んじゃってるんですけど、私はもっと前の方に幾らでも文句言いたいところがあるんです。
例えば2ページの一番下なんですけれども、これは「(1)について、計画見直し後の250GeVILCでは、350GeVの衝突エネルギーを必要とするトップクォークは生成できないが」と、こんなネガティブなことを最初から書かれちゃうと困りますよ。こんなネガティブな文句を真っ先に書くという神経が私には全く分かりません。
この350GeVのことは、あと2つ丸を行くと、350GeVのことがちゃんと書いてあるんですよ、(1)についてとして。だから、こんなところに書く必要はありません。これは消してください。
で、これはヒッグス粒子やトップクォークの詳細研究って両方書かなきゃいけないという、そういうお気持ちから、多分ここにトップクォークというのを出したんだと思いますが、そうだとしますと、(1)について、見直し後の250GeVのILCでは、ヒッグス粒子の詳細研究に関しては、ヒッグス粒子の生成断面積が最大化されることに加え……と続きます。よろしいですか。
【中野座長】 納得したわけではないですけど、おっしゃることは分かります。
【駒宮委員】 それから、あとですね。
【中野座長】 続けてください、どうぞ。
【駒宮委員】 あともう一つ、丸2つ下なんですけど、「一方、500GeVILCから250GeVILCと規模を縮小する」の「規模を縮小する」という表現が私は気に入らないです。というのは、ダンピングリングとか何とか規模は別に縮小していないわけですね。これは「エネルギーを下げることにより」ですね。
それで、ここで大事なのは、このトップクォークの精密測定とヒッグスの三点結合とどっちが大事かというと、やっぱりヒッグスの三点結合の方が大事なんですよ。それはどうしてかというと、トップクォークの精密測定で質量がありますね。これはLHCでも相当正確に測れるんです。
その証拠として、浅井先生のファイルの17。私、来る前にちゃんとチェックしたんですけれども、34ページです。ページが横に薄く書いてあるので見えにくいと思いますが、34ページというのがあるんです。そこに「真空の安定性」と書いてあります。そこで、この小さく赤丸を書いたのがILCでのヒッグスマスのプレシジョンが14MeV。それから、High‐Luminosity LHCでのトップのマスのプレシジョンが0.3GeV、300MeVの倍なんです。これはこんな小さいんですよ。このぐらい小さかったら、もうステーブルなのか、それともメタステーブルなのかほとんど分かるんですよ。
だから、これをもう一回、ILCでもってエネルギースキャンでやるというのは余り意味がないんです。
【中野座長】 それはもう十分理解しておりまして、それが表のところでもトップクォークの質量の精密測定は重要度が一番下にして……。
【駒宮委員】 いいですけれども、もうちょっとエクスプリシットで書いていただきたいんです。例えばHigh‐Luminosity LHCでの、ですから、私のプロポーザルは、まず最初にヒッグスの三点結合は不可能になるというのを先に書くということです。その次にトップクォークの精密測定は衝突エネルギーが350GeV必要であることから、250GeVでは実験が不可能となる、これは当たり前ですよ。これをその次に書くと。それで、そこのところに脚注といたしまして、High‐Luminosity LHCでのトップクォークの測定精度は標準理論の真空安定性の検証が可能な程度に向上すると考えられるので、ILC350GeV近くでのエネルギースキャンによるトップクォーク質量の精密測定の物理的意義は下がるというのを脚注に書いていただく。
それから、もう一つは、多分、トップクォークの精密測定というのは、1つは350GeVにおけるトップクォークの質量の測定ですね。もう一つは、多分500GeVでのトップクォークの精密測定というのもあるんですか、これは。それもここには入っているんですか。
【中野座長】 どこにですか。
【駒宮委員】 今の、一方、500GeVILCから250GeV何とかというところ。ILCにおける重要な課題の1つとして挙げていたトップクォークの精密測定はというやつですね。
【中野座長】 それは入ります。
【駒宮委員】 入る?
【中野座長】 はい。
【駒宮委員】 入る?
【中野座長】 入ります。
【駒宮委員】 入るんであったら、これもやっぱり、一方、500GeVでのトップクォークとZボソンの結合の精密測定は、本来は複合ヒッグスモデルを同定できるが、まずはILC250GeVでヒッグス保存が複合モデルであるかどうかを、正しいか判断するべきであるというのを脚注として書く。
【中野座長】 脚注をどこまで詳しく書くかというところもありますし、それから、詳しく書いたからどこまで正しく伝わるかというのがあるので工夫したいと思いますが、基本的には表のところで書いてあるとおり、トップクォークの物理というものの意義に関しては下がったと考えておりまして、それもあって250GeVでの建設が好ましいというか、望ましいであろうというロジックになっております。
だから、書き方によってネガティブとかポジティブとかあるかもしれないので、そこはみんなで合意がとれる形でまとめたいと思いますけれども、内容としては同じです。
【駒宮委員】 分かりました。
それから、4ページの下の四角の中なんですけれども、13TeVLHCの結果を踏まえた250GeVILCのシナリオというやつです。ここの方針で、最初のヒッグス粒子の精密測定うんぬんはよろしいのですが、その次の「また、LHCでは標準理論を超える新粒子の兆候を捉えられていないことから、ILCにおける新粒子の直接探索による発見の可能性は低い」、これは方針でも何でもありません。方針のところにこういうただ単なるネガティブな言葉を入れるというのは非常にまずいです。これは消してください。
その代わりに、先ほど松本委員がおっしゃったようなことをここに入れると。もちろんヒッグスのプリサイズメジャメントが一番大事です。でも、新粒子発見というのももちろんできるわけですから、それについてもここに軽く触れるということをやっていただきたいと思います。
以上です。
【中野座長】 どうぞ。
【徳宿委員】 僕も駒宮委員の言っている箇所は、やっぱりちょっといろいろ問題があるので、少し改良してもらう方がいいと思います。
それのほかに、ちょっと全体に関わるところで2つ確認したいのですが、1つは事実の認識をはっきりさせたいのです。先ほど駒宮委員も言いましたように、LCBもICFAもステージングということは言っていないのですね。ステージングというのは何かというと、500をやるのに、まず250をやるというのがステージングだと思うのだけど、そういう表現はどこでも言っていません。250GeVのILCをやると言っています。
ステージングという言葉が何に書いてあるかというと、このテクニカルドキュメント及び物理のドキュメントには書いてあるわけです。これらは全部サプリメントなので、500GeVのILCのドキュメントに対して250だったらどうするか、どうなるかというのを書いたドキュメントだからここには書いてあるのが当たり前ですが、ステージングでやりますということはICFAの表現にもLCBの表現にもありません。ですので、そこは書き方を変えた方がいいと思うのですね。
そうすると、具体的にどこかというと、例えば1ページ目の2段落の真ん中ぐらいですね。だから、ILC計画はこの「初期」という言葉が要らなくなります。ILC計画は衝突エネルギー250GeVとする提案に変更された。フットノートは全く要りません。これは今言ったように、スタートして、将来的にアップグレードするものとしているという言い方はしていませんので。もちろん、アップグレードができるとは言っていますが。ですので、多分この2つはない方がいい。
同じことが2ページの黒白逆になっている2の真ん中の下のところです。ここも「段階的に実施することを前提として再定義し」というのも、多分事実に合っていないんじゃないかと思います。だから、第一段階は要らなくなりまして、LCCは衝突エネルギーを250GeVとする計画と定めた。これにより、建設コストを大幅に引き下げ、ILC計画の目標をより焦点を絞ったものにすることができるという形に直すのが認識として正しいのではないかと思います。
ほかにももしかするとあるかもしれません。この視点はちゃんとはっきりしておかないと、さっき言ったように、最初にできないからとかいうときのほかのところの書きぶりにも影響すると思いますので、ここはそういう形にしてもらえればいいんじゃないかと思います。
【中野座長】 分かりました。2点注意しなくちゃいけないことがあると思っていて、1点は、やはりILCは500GeVでずっと議論されていて、250GeVというのは、この作業部会のフェーズだと、この作業部会で初めて250GeVというのが議論されたと。
これは有識者会議に報告しなくちゃいけないんですが、報告するときに、いやいやILCって初めから250GeVでしたと言ったら多分通らないと思うんですね。だから、ある程度の説明はまず必要だと思います。
【徳宿委員】 だから、最初のところで250GeVとする提案に変更されたと書いてあるわけです。
【中野座長】 もう一つは、やはり……。
【徳宿委員】 元は500だったがと書いておくのは構わないと思いますが。
【中野座長】 はい。もう一つは、やはりILCの1つの売りというか、円形加速器と違うところが、将来同じ施設を使ってエネルギーを上げていけることなので、250GeVでピリオドというふうに書くと、それはそれでまだILCの魅力のうちの1つを消してしまうことになるので。
【徳宿委員】 それは、後の方でそう書いといてあげればいいのではないかと思います。
【中野座長】 だから、最初のところで初めからアップグレードするつもりであるとか、そういうことは書く必要はないと思いますが、その2点は気を付けて……。
【徳宿委員】 今の書き方だと、500が重要だと思われるのですが、多分、LHCの結果を受けた上で、500に行く理由というのは多分ほとんどなくなっているわけで、600かもしれないけど、400かも――600と400と500で500かと言われると分からないけど……。
【中野座長】 先ほどの松本委員の話だと400はあり得るような感じだったんですが、それも含めて250GeVできっちりいろんな測定をして、もしエネルギーを上げる場合は、ちゃんと見込みがあるエネルギーに250GeVILCの結果を見て上げていくという、そういうシナリオだと感じています。
【徳宿委員】 だから、250GeVから上げていくわけで、上げていく先は分からないというのが今回の……。
【中野座長】 いや、上げていく先が分からないというよりは、250GeVできっちり測れば、上げていく先も分かる可能性があるという、そういうふうに受け取ったんですが。
【徳宿委員】 そうだと思います。という意味では、500というのは、とりあえず今の提案の中にはないということなのだと思います。
【駒宮委員】 すいません、あともう一つは、High‐Luminosity LHCの結果とコンバインするということですね。それが非常に重要だと思う。例えばトップのマスとか、いろんなことがHigh‐Luminosity LHCで出てくる可能性があるので、それと250GeVILCの結果をコンバインして、それで将来、どこのエネルギーにいくかを判断するということです。
【横山委員】 よろしいですか。
【中野座長】 どうぞ。
【横山委員】 申し訳ありません。5ページ目の一番上のところなんですけれども、きょうのXFELとFAIRの実例を受けて、1つ目の丸が、「国際的な経費分担の例として」と始まっているんですね。
先ほど、徳宿先生から御指摘があったのは、いやいやICFAがお示ししているのは、まずは国際的な協議を始めるために日本政府からのお答えが欲しいというのがICFAのご依頼であるというふうにも伺えましたが、一方で、やはり土木工事は日本分担でというようなことは幾度も出てきている。そこの行き違いがまだ余り解決されていないように思います。それはこちらで臆測するのではなくて、やはりICFAに問いただして、なぜこの2つの例を出してきたのかという直接的な答えを頂いた方がはっきりすると思いますので、是非そうされてはどうかと思います。
それと関連してなんですけれども、このドッチファイルの9のファイルのところを御覧いただくと、この体制及びマネジメントの在り方の検証に関する報告書というのがございまして、徳宿先生と中野先生と私も出させていただいておりましたが、例えば3ページ目のモデルを見ていただくと、M3というプレ研究所のモデルはITERが採用されています。ここで山内先生が御報告されて、随分議論になったのを記憶しています。あるいは14ページ目を見ていただくと……。
【駒宮委員】 どこの?
【中野座長】 何番ですか。
【横山委員】 ドッチファイルの9のところでございます。体制及びマネジメントの委員会がございまして、この9のファイルの報告書の3ページのM3というところに、プレ研究所のモデルをいろいろ議論したんですけれども、ここにITERモデルがございます。あと、14ページの丸4、国際的な経費分担の例として、このときはITERだけではなくてALMAにも来ていただいます。ITERやALMAというのは、土木の割合がILCと比較して小さく、分担が応分にできる形態の実験なので、いま議論されている分担とは随分と違うわけなんです。土木をホスト国が持たなきゃいけないというのは加速器に特有なことであって、ほかの分野ではそういうものではないという事例として、分担の方法がいろいろ議論されました。
最後の28ページを御覧いただくと、高津先生という元ITER理事会議長という方にも来ていただいて、いろいろと面白い話も伺っております。
ということで、一部の部会ではずっとITERをモデルにして議論してきたというのがやはり事実ですので、なぜITERからほかのモデルになったのかというのが整理されないと有識者会議には理解されないと思いますので、その整理はいろんな形でされるといいと思います。
【駒宮委員】 すいません。ITERをモデルにしたということはあり得ません。
これを見ていただくと、例えば3ページの図はスズキ先生が作った図なんですけれども、どういうふうにこの、初期においては、M4というところから、M4というのは研究機関の合意でもって、それでMOUでもってやると。これがだからどういう方向に発展するかというのは、ここにはどっちに発展するとも書いていないわけです。
【横山委員】 M3かM5に発展して、そのうち、M3はITERモデルというふうにございます。
【駒宮委員】 でも、M5も書いてあるわけですよ。
【横山委員】 M5もありますね。
【駒宮委員】 ええ。だから、これはITERモデルに特化したわけじゃないわけですよ。これは、もちろん議論にはITERも入ってきたし、LHCも入ってくるんですよ。だから、そういういろんなモデルに関して議論しましたけども、ITERをILCのモデルとしたことはございません。
【横山委員】 LHCでもいいんですけど、じゃあ、LHCじゃなくて、なぜFAIRとXFELになったのかという、それはどこの、予算配分なのか、それともイニシアチブをとるというところなのか、そのイニシアチブの解釈はどこをポイントにしたらいいのかというのは、やはり全員で共有される必要があると思いますので、確認をお願いしたいと思います。
【駒宮委員】 そうですね。おっしゃるとおりです。
多分それは、ICFAじゃなくてLCBだと思います。というのは、FAIRとXFELを最初に出してきたのはLCBの文で、それを単にICFAは踏襲しただけですから。
【中野座長】 これはこちら側から問い合わせるということでよろしいですか。
【駒宮委員】 はい、お願いします。
【棚橋委員】 すいません。
【中野座長】 どうぞ。
【棚橋委員】 さっきの駒宮委員の話で質問があるんですが、トップクォークの質量測定の重要性が随分下がっているというお話だったと思うんですが、関連して、LHCで300MeV、0.3GeVで測定されるということを説明されていますけれども、これはいわゆるポールマスというやつなんですか。それとも、MSバーマス?
【駒宮委員】 そこははっきりしていませんが、High‐Luminosityの頃になれば、ちゃんとその頃はMSバーを測れるのではないかということではないかと思います。だから、関連付けると。要するに……。
【棚橋委員】 このあたりは理論の発展がちょっとよく分かってないんですけれども。
【駒宮委員】 僕も分かってません。
【棚橋委員】 もしもこれがポールマスで0.3GeVということであれば、やはりILCでトップクォーク質量、MSバーマスを測るというのは一定の意義があると思いますので、ちょっと意義がないとまでおっしゃられると違和感を感じました。
【駒宮委員】 いや、意義がないとは言っていません。意義が下がったと。
【藤井教授】 今のにコメントいいですか。
この300MeVと言っているのは、QCDの権威であるアンドレ・ホワンさんという方が、最近、LHCでのトップマス(トップ質量)測定の研究を結構やられているんですけれども、そこで、今現在はまだちょっとスペキュレーションで、本当にできるということではないんですけれども、感触として300MeVぐらいに将来的には、ショートディスタンスマス(短距離質量)の精度として。
【棚橋委員】 ショートディスタンスマスとして。
【藤井教授】 300MeVぐらいが達成できるんじゃないかということを言っておられます。
【棚橋委員】 分かりました。
【駒宮委員】 ありがとうございます。
【中野座長】 少し報告書(案)と表の方に戻りたいんですが、次回、いろいろ御意見を頂いたものを反映させて、もう少しブラッシュアップしたものを持ってこようと思いますが、大体このような構成と量というのでよろしいでしょうか。
どうぞ。
【徳宿委員】 よろしいですか。多分、本文の方の議論にも関係があるので、今、表となったので、表の方でちょっとコメントがあるのですが、表の7で、各項目は専門家の人にいろいろコメントしてもらえばいいと思うのです。大体いいとは思いますが、つまりこの表は、左2つに物理のことをやっていて、その次に500GeVで何ができて、250GeVで何ができて、それで科学的意義と書いてあるのですが、これは私は逆だと思うのですよね。ということで、私としては、表の書き方をちょっと変えて、最初の2つの項目の次は科学的意義の変化が来るべきだと思います。で、最後に補足として500GeVと250GeVでどう違うかということ。
つまり、何が起こったかというと、LHCの結果を受けた結果、やっぱりヒッグスの科学的意義が上がったんですよ。トップクォークについてはもちろん十分だけれども、比較的下がった。つまり、物理に対して科学的意義の変化が先に来たということが分かるように、そちらを先に書いていただいて、それが500GeVと250GeVでどうなっているかというのを次に書いた方が、論理的に何が起こったかというと、科学的意義がLHCでどうなったかによって250GeVの提案が出てきているので、ここはそういう論理なのではないかと思います。
そういう論理だということを認識して合意できれば、この文章の方ももうちょっと書き方が変わるのではないかと思うのです。
【中野座長】 文章というのは備考の方ですか。それとも前の……。
【徳宿委員】 いや、本文の方です。本文の書き方とも関係すると思うので。
【中野座長】 なるほど。表で、科学的意義の変化と実験の可否という縦の欄を……。
【徳宿委員】 ひっくり返す。
【中野座長】 ひっくり返す。これはいいアイデアだと思います。それで、そうしたときに、星取り表で問題というか、違和感があるところはございませんでしょうか。このまま移してよろしいですか。
【轟素粒子・原子核研究推進室長】 すみません。一般の方も含めてわかりやすく議論する必要があるんですけれども、例えば新粒子直接探索の意義はLHCで見つからなかったので、新粒子直接探索の科学的意義は下がっているという話になりますよね。そういう話になるんですか、今のお話というのは。
【徳宿委員】 ILCで探索する範囲でということですね。だから、250GeVでいいやと科学者は思ったわけです。
【轟素粒子・原子核研究推進室長】 そういうふうに理解するわけですか。
【中野座長】 確かにいいやと思って変えると、次の別の問題が出てくるかもしれないので、慎重にやった方がいいかもしれないです。
【徳宿委員】 右と左を変えたことによって書き方が変わると、星の位置が変わったりするのがあるかもしれませんけれども。
【中野座長】 やってみて駄目だったら元に戻しますので。
【中家委員】 同じ、ほぼ似ていることなんですが、僕自身も混乱するのは、科学的意義と書いたときに、250GeVと500GeVを比べているのか、それとも時代が変わって、新粒子が発見されなかったことによって変わっているのかが、表も曖昧ですし、実はこの本文もそこが結構曖昧で、ごっちゃになって使っている感じがするんですね。徳宿委員が言ったみたいに、多分、科学的意義は、LHCで新粒子がなかったということで1つの変化が起こって、その変化の後で500GeVと250GeVというのは実はほとんど変わらない物理意義を持っているんだよというのが多分、高エネルギー研究者会議からの提案になっているんですけれども、それがごっちゃになって書かれているので、非常に読みにくい形というか、僕自身がどっちだと思うんだろうと判断するのが結構いつも迷うんですけれども。
【中野座長】 500GeVから250GeVに変わったことによる変化というのはないです。500GeVというのはあくまでも参考であって、ここで可否と書いてあるのは、急に500から250に変わったので、その経緯を知らない人にとっては非常に分かりにくいであろうということで比較が書かれていますけれども、科学的意義というのはあくまでも、今、到達可能というか、技術的に可能なILCでできる研究の科学的意義をLHCの結果を踏まえた上で判断したらどうなったかという理解です。
【中家委員】 だから、両方ですよね。
【中野座長】 両方です。
【中家委員】 そういう意味では。
【中野座長】 両方で、ほとんどの場合、250GeVで足りるということですよね。
【中家委員】 なるほど。何かこれ、先ほど使い方によっては500GeVから250GeVでいろいろなものが悪くなったようにも混乱するんじゃないかなという感じがするので。
【中野座長】 分かりました。その混乱はないようにした方がいいかな。
どうぞ。
【山中委員】 ついでに、この表ですけれども、見直し後に期待される成果の科学的意義が変化したというのも分かりにくい表現で、だから、13TeVのLHCの結果によって科学的意義がどう変化したかというふうにはっきりした方がいいんじゃないですか。
【中野座長】 すぐに約束すると、また何か問題が起こるかもしれないので、約束はしませんが、考えます。結構、いろいろなファクターが絡んでいて難しいので、1つ分かりやすくすると、1つが分かりにくくなるということがあるかもしれないので、慎重にやりたいと思いますが、できるだけ正確に伝わるようにしたいと思います。
どうぞ。
【山中委員】 文章の方もそうなんですけれども、全体を通して、駒宮委員が言われたように非常にネガティブな印象があって、負け惜しみで250GeVにしているような感じが出るんですね。そうじゃなくて、今まであちこち探さないかんと思っていたのが、LHCの結果によって、そこまでしなくていいよ、ここに集中すればいいんだということが分かったと。だから、そこをやるんだというような、もうちょっとポジティブな、積極的な書き方ができるんじゃないかなと思いました。
【中野座長】 分かりました。
どうぞ。
【早野委員】 本質と全く関係ないんですけれども、「GeVILC」ってスペースもなしに書いてある、これを全面的に全部直して、できれば全角ではなくて半角で書いてほしいという。
【中野座長】 分かりました。
【早野委員】 極めて読みにくい。一体何のことを言っているのかと思いますので。
【中野座長】 全くそのとおりです。
【駒宮委員】 「13TeV LHC」はちゃんとなっているのにね。
【中野座長】 ほかに御意見ないですか。もう少し時間をとりたいと思います、せっかくですから。次回、できるだけいいものを持ってきたいと思いますので、いろいろ御意見を頂けると非常に助かります。
【藤井教授】 資料7の表ですけれども、(1)のヒッグス粒子結合定数の測定というところで、ゲージボソンのところで(W以外)というは多分要らないんじゃないかと思いますけれども。ヒッグスのW崩壊は測れるので、むしろWフュージョン(W融合反応)のヒッグスプロダクション(ヒッグス生成)のクロスセクション(断面積)が低いということで、それがリミットして、ヒッグスの全崩壊幅がちゃんと決められないというのが、当初、250GeVだと困難かなと思われていた理由ですけれども、その部分が有効場理論で解決したということで、ヒッグスからWへのブランチングレシオ(分岐比)自体はかなりいい精度で、250GeVでも測れるので。
【中野座長】 それは有効場理論を使ってですよね。
【藤井教授】 いや、じゃないです。じゃなくても、ブランチングレシオ(分岐比)自体は完全に実験的に決められるものだから。測れるのはクロスセクション・タイムス・ブランチングレシオ(断面積かける分岐比)で、クロスセクション(断面積)は反跳質量法でヒッグスの崩壊を見ずに測れてしまうので、それで割り算するだけですから、ヒッグスからWへのブランチングレシオ(分岐比)は完全にアンビギュイティーなく、正確に測れます。
【中野座長】 ちょっと混乱しまったんですが、500GeVから250GeVに変えてもよくなったのは、何がよくなったんでしょう。
【藤井教授】 だから、それ(分岐比)をカップリングコンスタント(結合定数)に焼き直そうとすると、ブランチングレシオ(分岐比)というのは全崩壊幅分の部分幅ですから、部分幅が知りたくて、部分幅がカップリング(結合定数)の二乗に比例しているわけですから、カップリング(結合定数)を決めようと思うと、全崩壊幅を知らないと、ブランチングレシオ(分岐比)から焼き直せないわけです。その全崩壊幅を決めるためには、Wフュージョン(W融合反応)のクロスセクション(断面積)の精度が250GeVだと統計的にリミットされるかなというのが当初言われていたことなんですけれども、新粒子が軽いところに余りなさそうだということが分かったことによって、有効場理論が使えるようになって、その問題が解決したと。
【中野座長】 じゃあ、W以外というのを消して、精密測定にはWフュージョンを含めた測定による全崩壊幅の測定が必要であったが、それはという形で書いておけばいいですか。
【藤井教授】 そうですね。そういうふうに書いていただければ正確だと思います。
【中野座長】 分かりました。大丈夫です。
【駒宮委員】 それは備考ですね。
【藤井教授】 備考のところです。
【中野座長】 どうぞ。
【松本委員】 少し時間があるという話なので、ちょっと細かいですけれども、3ページのヒッグス三点結合に関して。
【中野座長】 3ページ。報告書の方ですか。
【松本委員】 報告書。テーブルではなくて。これは多分、2年前の部会のときにどなたかが話していたと思うんですけれども、ヒッグスの三点結合の精密測定は、500GeVだとやっぱりちょっと難しくて、30%とかそのぐらいで、一応ステージングという概念があった頃の話をしているので、もしここにその文章を入れるなら、少なくとも衝突エネルギー500GeV以上が必要ということになると思います。
【中野座長】 ありがとうございます。
【松本委員】 あと、最後に1つ。一番最後の4ページのシナリオですけれども、方針のところですけれども、前回の報告書で、また、ILCはLHCで検出が困難なタイプの新粒子にも感度があるため、これらの新粒子の探索も行うというのは多分共通しているので、そのまま使うことができるんじゃないかと思います。だけです。
【中野座長】 ちょっと分かりにくくならない程度に書きます。やはり250GeVにしたというところで、新粒子が出てこないと言っているわけですから。
【松本委員】 そうですね。だから、新粒子の探索を行うんだけれども、500GeVから250GeVにしたことによって、確かに多少感度が落ちているけれども、意義は保ち続けるみたいな感じだと思います。
【中野座長】 ちょっと工夫させてください。
【松本委員】 はい。
【初田委員】 資料5の最初の前文ですが、初めて読む人には背景が分からないような気がしました。当初は、初期衝突エネルギー500GeVとして議論してきた。ところが、LCC、LCBにおける審議を経て、250GeVという提案があった。しかし、なぜ250GeVという提案があったのかの背景が全く説明されていません。実際には、コストのこととRun2の実験結果を基に250GeVが提案されたということなので、それをきちんと書いた方がよいのではないでしょうか。
【中野座長】 詳しく物理の中身を書く必要はないけれども、物理的な理由とコストの面の理由の2つで250GeVという提案がされたということを書けばいいですか。
【初田委員】 ええ。それが妥当かどうかということをこの委員会が議論するのであると。
【中野座長】 どうぞ。
【中家委員】 先ほど僕が言ったことに戻るんですけれども、報告書の場合に、1番が実験結果についてLHCの現状だと。2番のときに、いきなり250GeVILCの科学的意義に行くんじゃなくて、ILCの科学的意義として、最後の方に500GeVと250GeVの違いみたいな形でまとめるとまずいんですかね。先ほど言った2段階ある……。
【中野座長】 いろいろあるんですけれども、今までのこの場での意見のかなりの部分は、もう250GeVになったんだから、250GeVについて書きなさいということになっていると。500GeVとの比較というのも、今まで500GeVで話が進んでいたので、全く抜くわけにはいかないんだけれども、あくまでも250GeVILCの科学的意義であるとか、方針であるとか、そういうことについて説明するということに近付きつつあると思うんですが、それでよろしいですか。ILCの意義というのは、もちろん250GeV、500GeV関係なくあって、例えば精密測定というのはそれであって、そのときに、さて、どのエネルギーで、今の状況を踏まえた上で継続するのはいいでしょうといった250GeVですとか、そういうのは出てくる、そういう持っていき方もできると思うんですけれども、ここはそれをやるとちょっと分かりにくくなるかなという感じがします。
【中家委員】 あともう一つ、3番の250GeVILCのシナリオで、前回報告書の500GeVILCの13TeVで新粒子がなかった場合だけを抜粋してこう書くと、非常に付録的に見えていまして、前の報告書のときは、ドッチファイルの7の22ページ目に13TeVLHCの成果を踏まえたILC等のシナリオで、これ、ゴールデンシナリオとして13TeVLHCで新粒子が発見された場合に力点を置いて書かれているので、3番目になると、効果とかも余り具体的でなくて、チャーミングに映っていないんですけれども、もしこの報告書だけを独立に作る場合には、差分だけじゃなくて、もうちょっとちゃんと書いた方がいいのかなと。例えば効果に関しても、藤井さんが出されていたように、いろいろな模型の証明というのが超対称性粒子とか複合粒子などの兆候を観測できるとか、何かもうちょっとポジティブな書き方ができるんですけれども、今だと、前からの差分みたいな形でしか書いていないので。前は差分なんですけれども、3番の前に1番、2番があったので、それなりにそこを読んできての3番だったと思うんですけれども、違うのかな。いや、何かやっぱり分かりにくい形にはなっているなと。
【中野座長】 どうぞ。
【轟素粒子・原子核研究推進室長】 今の御指摘のところは、むしろ2ポツのところでしっかり書き込んでいただいてはいかがでしょうか。この作業部会はあくまでも前回あった議論をベースに今回それがどう変わったかというのを見ているということがありますから、3ポツの部分は、要素をそんなに変えずに、ヒッグス粒子とトップクォークの精密測定がどうなったのか、新粒子の探索がどうなったのか、アップグレードの話はもう検討しないということで消すという話だと思うんですね。効果のところも、精密測定のところから来る成果は書きますけれども、新粒子の発見というのは可能性が低くなったので消えているというシンプルな形でお示ししないと、今回の新提案が前と比べてどうだったのかというのは分かりにくいと思います。いろいろな科学的意義があろうかと思いますが、それは2ポツのところで、分量を書いていただいてもいいと思いますので、しっかり書き込んでいただければと思いますが、いかがでしょうか。
【中野座長】 皆さん、言い足りないことないでしょうか。よろしいですか。
30分ほど超過いたしましたが、それでは、本日の意見を踏まえて資料の修正を行い、次回、更に議論したいと思います。
以上で本日の議題は終了となります。
最後に事務局から連絡事項があります。
【山本加速器科学専門官】 本日の議事録は、後日、委員の皆様にメールにて内容確認をお送りしまして、その後、当省のホームページで公表させていただきますので、御留意いただければと思います。
また、次回の日程は、資料8にございますとおり、5月16日水曜日14時からの予定になっております。会議は2時間ですけれども、延長の可能性を考慮いたしまして、時間は17時まで確保いただきますようお願いいたします。
以上でございます。
【中野座長】 それでは、本日の会合を終了いたします。ありがとうございました。
―― 了 ――
研究振興局基礎研究振興課素粒子・原子核研究推進室