平成30年2月5日(月曜日)10時00分~12時00分
文部科学省3階 3F1特別会議室
中野座長、梶田座長代理、駒宮委員、酒井委員、棚橋委員、陳委員、徳宿委員、中家委員、初田委員、早野委員、松本委員、横山委員
磯谷研究振興局長、板倉大臣官房審議官(研究振興局担当)、渡辺振興企画課長、岸本基礎研究振興課長、轟素粒子・原子核研究推進室長、吉居加速器科学専門官、三原科学官
高エネルギー加速器研究機構 花垣教授、高エネルギー加速器研究機構 藤井教授、東京大学 浅井教授、ドイツ電子シンクロトロン(DESY)研究所 ヴァイグレン主任研究員
【中野座長】 少し早いですが、全員そろわれたようですので、ただいまより、国際リニアコライダーに関する有識者会議素粒子原子核作業部会を開会いたします。
本日は、御多忙中のところ、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
冒頭のみ、カメラ撮影を行いますので、御承知おきください。撮影希望の方はお願いします。
では、本日の出席状況について、事務局から報告をお願いいたします。
【吉居加速器科学専門官】 御報告します。本日は、山中委員が所用により御欠席でございます。12名の委員に出席いただいておりまして、定足数の7名を満たしておりますので、会議は有効に成立しております。
また、本日の議題について御発表いただきますため、高エネルギー物理学研究者会議、ILC 250GeV Higgs Factoryの物理意義を検証する委員会委員長、東京大学素粒子物理国際研究センターの浅井センター長、それから、ドイツ電子シンクロトロン研究所(DESY)理論グループのゲオルグ・ヴァイグレン主任研究員にも御出席いただいております。
前回御発表いただきました内容に関する質疑について、高エネルギー加速器研究機構教授の藤井先生、花垣先生にも御出席いただいております。
事務局からは以上でございます。
【中野座長】 それでは、続いて、資料の確認をお願いいたします。
【吉居加速器科学専門官】 それでは、続きまして、資料の御確認をお願いします。資料1は、本日御発表いただきます浅井センター長の資料、資料2がヴァイグレン主任研究員の資料、資料3が今後のスケジュール、参考資料1がILC250GeV Higgs Factoryの物理意義を検証する委員会報告書、参考資料2がLHC Run2のこれまでの結果を踏まえたILCの科学意義とILC早期実現の提案となってございます。
このほか、参考資料としまして、机上にドッチファイルを置いております。このドッチファイルでございますが、内容を新しくしましたので、目次だけおめくりいただければと思います。
前回の第1回のこの会議の資料を踏まえまして、まず、ILC計画の見直し関係の資料が1から7、それから、この有識者会議の報告書が8から10、目次の2ページ目に参りまして、以前のTDRから始まりました当初計画の関係の資料が11から14、それから、日本学術会議から平成25年に頂きました所見が15、それから、前回発表いただきました花垣先生の御発表資料が16番でございます。前回発表いただきました藤井先生の資料は1番に入っておりますので、会議中、適宜御参照いただければと思います。
以上、不足がありましたら、お知らせ願います。
以上でございます。
【中野座長】 ありがとうございました。
カメラ撮影はここまでとさせていただきます。
それでは、議題に入ります。前回に続き、250GeV国際リニアコライダーの物理の意義について、お二方から御発表いただきたいと思います。
まずは、我が国の高エネルギー物理学研究者会議における議論について、昨年6月にILC 250GeV Higgs Factoryの物理意義を検証する委員会報告書をまとめられた東京大学素粒子国際研究センターの浅井センター長から御発表いただきます。参考資料1が報告書、参考資料2がそれに基づく声明ですので、併せてご覧いただければと思います。
それでは、浅井センター長、よろしくお願いいたします。
【浅井教授】 どうも皆様、おはようございます。それでは、ILC250GeV Higgs Factoryと物理意義を検証する委員会の報告というのをやらせていただきます。
何で私におりてきたかといいますと、基本的に私がノンポリだからでございまして、いろいろな立場とか、自分が推進している研究とか、いろいろありますけれども、そういうもの抜きにして、こいつは適当に楽しいことをやってくれるだろうという理由で私が選ばれた次第でございます。したがいまして、私が委員を選ぶ際には、宗教色の薄い方を選択的に選びまして、楽しい議論をさせていただきました。
テーマといたしましては、ILC250が建設されたときの2040年頃の物理を議論しようという議題であります。何で2040年かというと、今いろいろな計画がアプルーブされたり、アプルーブされ掛かってきております。そういう結果が出るのが大体2040年頃でございまして、ILC250も、もしここでアプルーブされますと、2040年頃にいろいろな成果が出ると。これを全て併せて、2040年頃にどんな物理理論像が得られるかということを議論しようというテーマであります。
それで、先ほども言いましたけれども、ILC250だけの物理成果ではございません。LHC、ハイルミ、これはもう既にアプルーブされております。さらに、SuperKEKB、Neutrinoの実験等もアプルーブされております。重力波、その他、レプトンフレーバーなど、いろいろな実験を加味しまして、それにILCを加えて何が分かるのかということを議論しました。同時に、ILC250と500の比較を行いまして、どんな差があるのかということにつきまして、議論いたしました。
2月の終わりぐらいから6月の初めぐらいまで、大体6回……、6回じゃないです、9回行いまして、報告書の日本語版を高エネルギー委員会に上げました。英訳いたしましたものをLCBに提出して、アーカイブの方にも登録してあります。
三つの方面から議論を進めていきました。一つ目の方向としましては、ヒッグス、あと、Wもそうですけれども、スタンダードモデルのプレサイズメジャーメントから、新しい物理で何が言えるのかということを1個目の観点にしました。二つ目の観点は、物質と反物質の非対称性について、リニアコライダーで何が言えるのかということを議論しました。三つ目としましては、暗黒物質の解明であります。それについての報告。最後に、コンクルージョンというわけでございます。
まず、一つ目、ヒッグスの精密測定という観点からお話しいたします。
これは、Wフュージョンプロセスなんですけれども、そのリニアコライダーがもともと500だとか、高いエネルギーがフェイバーだった一つ目の理由としましては、このプロセスが極めて重要でありまして、最初のうちは、モデルに依存せず、ILCだけで精密にヒッグスの測定をするということが前提になっていました。それなので、このWが、ヒッグスがWWに壊れて、このWのプロダクションプロセスも含めまして、このトータルフルーエンスですね。これがプロダクションセクションをブランチフラクションで割ることによって得られると。
ところが、このWをZに置き換えるプロセスだとか、WとZの対称性ですね。これ、SU2の対称性なんですけれども、これ、実はLHCでも精密に測定することができますし、LEPでも正確に測定することができましたし、リニアコライダー250でも十分精密に検証することができる。
なので、実はこのZとWとsymmetry、これはCustodial symmetryといいますけれども、このCustodial symmetryを使いますと、例えば250GeVでドミネントになるこのプロセスを使って、Zからヒッグスができる。このヒッグスがWに行く、このブランチフラクションで、ここの部分とここの部分の関係というのは、これを用いますと正確に測定することができるようになるわけです。なので、ILC、LHCだけでなくて、LHCやほかの実験も加えると、非常に精密に測定することができるようになります。
その一つの例としましてまとめましたのがこれであります。いろんなカップリングが書いてありまして、これ、左側、この右側を見ていただけますと、これはLHCだけだったときの測定精度であります。大体4パーセント、いいもので4パーセント、フェルミオンとの結合というのは大体10パーセントぐらいの精度で決めることができます。
一方、これにILC250GeVができますと、それにLHCとかいろいろなものの結果も加味していますけれども、その結果を加味すると、大体1パーセントぐらいの精度で測定することができるようになります。したがいまして、このLHCだけのときよりも、ILC250ができることによって、精密測定が大体精度が10倍ぐらい高くなることができます。
例えば、ここを見ていただけると、トップの湯川結合というのはこれはLHCの結果をそのまま使えますし、ミューオン、第2世代へのミューオンへの結合定数とかも、ヒッグスγγなども、LHCの結果を使う。これが、比較したものでありますけれども、ここ、さっきも申し上げましたけれども、ヒッグスγγだとか、ヒッグストップトップだとか、ヒッグスμμだとか、LHCが得意なものはLHCに任せればいい。
すみません、この絵は測定精度で、縦軸がパーセンテージです。横軸がどんなプロセスかを表してありまして、濃い赤色の方は250GeVの結果、この肌色の方は500GeVの結果でありますけれども、これを見てお分かりのとおり、250作ろうが、500作ろうが、ほぼ同じ精度であります。したがいまして、250で、このヒッグスという観点からいきますと、十分であるということがこれを見ても分かると思います。
これが1点目でありまして、2点目も、この世代、チャームだとかヒッグスだとかについての測定も行うことができるようになりまして、ジェネレーションの理解が多分進むことができます。
Total width及びInv.Widthは1粒子の測定に極めて重要でありますが、残念ながら、LHCではこれは測定できませんので、ILCで重要な役割、ILCが重要な役割を果たします。
後から言う細かい話というのはこういった数字は一切使いませんでして、基本的にゲージボソンへのカップリングとフェルミオンのボトム、トップ、トップの代わりにチャームを使いますけれども、チャーム、アップタイプクォークのレプトンへの結合定数の比だけを使って、研究を行います。比を使うことによって、いろいろなシステマチックエラーがキャンセルアウトすることができますので、これが大体1、2パーセントぐらいの精度で決まりますので、これを使って、後の議論を行います。
さらに、ILC250を使いますと、まず、ヒッグスが本当にエレメンタリーパーティクルなのか、コンポジットネスなのかということを調べることができまして、ヒッグスの大きさが、コンポジットだって大きさがありますから、大きさが10のマイナス4乗フェムトメーター、10のマイナス19乗メートルですけれども、それよりも大きかったらコンポジットだということが分かります。
さらに、もう一点、ヒッグスのCPの測定に関しましては、大体3.8度までの測定精度があります。これにつきましては、次の第2章でお話しいたします。
では、何でこんなに細かく精密に計りたいのかと。決して我々はパーティクルデータブックを厚くするために精密に測定したいわけではなくて、何のために計るかというと、それは新しい次のビヨンドスタンダードモデルのプロセスを見つけ出すためであります。
今、例としてお話ししますのはスーパーシンメトリーであります。スーパーシンメトリーがありますと、普通のスタンダードモデルのパーティクルに加えて、スーパーパートナーが存在します。どうやってSUSYを探すのかというと、探し方は大きく分けて4つあります。
一つ目の探し方は、このカラーを持ったスクォークだとかグルイーノだとかを探すと、直接探すというのがやり方でして、これはLHCが最も得意とすることであります。
二つ目の探し方としましては何があるかというと、このエレクトルウィークのゲージーノを探すというやり方があります。エレクトルウィークゲージーノとこのスクォーク、グルイーノとの違いで何が大きいかというと、カラーがあるかないかの差もあるんでけれども、一番大きな違いは縮退です。ライテストニュートラリーノとこれらは基本的には縮退しやすい性質を持っています。なので、LHCでこれらを直接探すことは、ある特殊例の場合を除きまして、かなり難しくなります。そういうのに大きな役割を果たすのがリニアコライダーであります。
ただし、例えばピュアヒグジーノだとか、ピュアウィーノだとか、100パーセントヒグジーノだとかウィーノになったときにはこれ、LHCで調べることができまして、実際どのぐらいまでいくかというのは後でお話しいたします。なので、これはLHCでもできますし、ILCでも重要な役割を果たすことができます。
そして、もう一つ大事な役割というのは、このスタンダードモデルになりますけれども、この2ヒッグスダブレットの部分を直接探すということになります。
なぜ、こんなにいろんなやり方でやるんだというと、実はSUSYを探す上で四つの質量スケールが存在します。
一つ目の質量スケールというのはこのスフェルミオンのマスのスケールです。今のヒッグス125GeVを考えると、恐らくこのスフェルミオンのマススケールというのは10TeVを超える非常に高いところにあるんではないかと思われております。
二つ目のマススケールというのはこのゲージーノのマススケールです。このゲージーノのマススケールというのは、ある理論を仮定すると、このスフェルミオンとのこういうのを関係付けられますけど、これ、理論にスペシフィックになってしまいますので、理論からちょっと離れて考えると、ある意味、スクォークとはインディペンデントに考えられる。これは今のところ、10TeVより軽いだろうと思われています。何でかというと、暗黒物質のこともありますし、GUT、グランドユニフィケーションのプレディクションから、こいつらは10TeVより軽いのではないかと思われております。これが二つ目のパラメータ。
三つ目のパラメータがこれです。こいつらの質量です、重いヒッグス。スーパーシンメトリーだとか、いろいろなものというのはヒッグスダブレットが2個以上存在しないといけなくて、その重い方のヒッグスダブレットの重さもフリーパラメータですと。もちろん、モデルを仮定すると、これとこれというのは関係付けることができますけれども、モデルを考えなかったら、細かいモデルを考えなかったら、これとこれはインディペンデントですから、これ、独立に研究するということは大事であります。
四つ目のマススケールというのはこのヒグジーノのマススケールです。これはSUSYのブレーキングスケールではないんですけれども、ゼロではないということは分かっているので、何らかのマススケールがあるというわけで、この四つのパラメータが探す上で。リニアコライダーの差のヒッグスの精密測定というのは、実はこれの測定に極めて重要な役割を果たします。
次のページの絵ですが、いろんな色がありますけれども、これ、何かといいますと、横軸は、先ほどお話ししました2ヒッグスダブレットの重たい方のヒッグスの質量であります。一方、縦軸は何かというと、二つのヒッグスがありますから、二つのヒッグスの真空気体重の比です。我々、タンジェントβと呼んでいますけれども、このタンジェントβが縦軸にプロットしてあります。
タンジェントβが大きくなりますと、実は重たいヒッグスとタウの結合が非常に大きくなります。したがいまして、そういうところはLHCが極めて得意とするところでして、この300フェムトバーンインバースを掛けると、ここよりこっちはLHCでヒッグスのタウタウを発見することができますし、ハイルミで3,000フェムトバーンインバースを掛けますと、このラインよりこっち側につきましては発見することが可能になります。
一方、リニアコライダーは何かというと、ヒッグスの軽い方のヒッグスですね。軽い方のヒッグスの測定の精密測定のずれを検証するわけで、この色は何かというと、いろいろなパラメータのうち、リニアコライダー250GeVでずれが検証できるパラメータの割合を示しています。大体この黄色い色だと七、八割のパラメータが検証可能になっています。
当然、重くなっていきますと、そういう効果というのは見えなくなってきますので、大体1.5TeVだとほぼ100パーセントですし、2TeVぐらいまでいくと、ざっくり半分ぐらいまで調べることができるということで、このMA、タンジェント、MAですね、MAが1.5から2TeVぐらいまでをILC250で完全に探ることができるようになる。
なので、2040年頃、どうなっているかというと、まず、これにつきましては、先ほども言いましたけど、2TeVから3TeVになります。ここはどのくらいまで行きますかというと、これはLHCが得意とするところで、これ、LHCのハイルミのイクスペクテーションですけれども、横軸にグルイーノの質量みたいな、広域の質量を取って、縦軸にライテストニュートラリーノの質量を取っておりますけれども、大体、LHCが軽かったら、3TeVぐらいまでLHCは感度ありますし、例えば1TeVぐらいのライテストニュートラリーノだと、2.5TeVぐらいまでの感度があります。
一方、このエレクトリックゲージーノですけれども、もし完全に縮退していたとしますと、チャージド、チャージーノとニュートラリーノが完全に縮退していたとすると、ウィーノでは800GeVぐらいまでLHCで探すことができます。ヒグジーノに関しましては250GeVぐらいまで探すことができます。
これ、現在の提言です。これは我々が行ったことなんですけれども、実は完全に縮退すると、長い寿命になりますので、LHCでも探すことができるようになります。ただし、ちょっとでもウィーノの成分が混ざってしまって、縮退が解けてしまうと、LHCでは測定することができなくなりますので、こういうときはリニアコライダーが重要な役割を果たします。
SUSY、嫌いだぞという方が多分この中にたくさんいると思いますけれども、何で私がSUSYの例を出したかといいますと、SUSYというのはこちら側、右側があって比較的見付けやすいことはあるんですけれども、この左側に関して言えば実は見付けにくいんです、かえってスーパーシンメトリーは。SUSYの効果というのは実はこのヒッグスダブレットへのエフェクトって小さいので、ほかのモデルに比べて小さくなりますので、SUSYがある意味、いいベンチマークになって、SUSYで見えるものだったら、ほかのものでも見えるというわけで、例えばほかのものだったらどのぐらい見えますかというのをまとめたものがこれです。SUSYだったら、さっきも申しましたけれども、1.5から2TeVぐらいだったのが、ほかのモデルだと3TeVとか、3から7TeVぐらいまで検証することができますので、ある意味、SUSYというのは一番やりにくい。だから、口の悪いやつなんかは、SUSYが生き残った一つの理由としては、影響が小さいから、スタンダードモデルに与える影響が小さいから、いまだに生き残っていると言う方がいるくらい、SUSYというのは難しい。それもこうやって見付けることができます。
さらに、実は、これ、大事な点でして、発見だけではなくて、何かずれがあったときに、後ろにどんなモデルがあるのかということを実は吟味することができます。スーパーシンメトリーがこのタイプでして、これは何かというと、タウへの結合定数が上がって、ボトムへの結合定数も上がって、残りは下がるというわざなんですけれども、それ以外、例えばいろいろなモデルがありまして、ニュートリノと標準モデルのヒッグス、ニュートリノに質量を与えるヒッグスと標準モデルのヒッグスが対になっているようなセットのときは全部一律下がったとか、そういういろいろなモデルのパターンがあるんですけれども、それについても、こうして何かずれがあったときに吟味することができる。これが一つ目、ヒッグス。
これについて簡単にまとめますと、このILC250にハイエムエッチイーやベレなどの結果を加えて、ヒッグスのプレシジョンメジャメントを行いますと、次の物理の試験に関しまして、大体2から3TeVぐらい、完璧に決めることができます。これは次世代の実験、FCCだとか、ハイエナジーLHCだとか、フューチャーILCだとか、次のエネルギースケールがどこにあるべきかということを決めることができます。
これ、もう一つ、大事な点なんですけれども、ILC250を造りましょうということをやはり、来年行われます欧州戦略会議、ヨーロピアンストラテジーというところまでにはっきり示さなきゃいけない。そこで何が作られるとかというと、日本がヒッグスファクトリーをやるんだったら、LHCというのはヒッグスファクトリーよりもむしろもっともっとエネルギーの高い方向を目指そうと、LHCの高エネルギー化へのこれ、インセンティブになりますので、これは素粒子、高エネルギー業界全体にとっての利益になります。
今、LHCというのは、実はヒッグスファクトリーの役目も担わなきゃならないし、エネルギーフロンティアとしての役目も担わなきゃならないという、ある意味、両面作戦を要求されていて、これはミッドウエーと同じでして、両面作戦をやると必ずつまずきますので、そういう意味で、こういう、何ていいますか、ヒッグスファクトリーがあるということは非常に重要なことであります。
次、電弱対称性の破れに関してですが、KEK B-Factoryで、クォークのCPの破れが小林益川行列であることが分かりました。しかし、小林益川行列のCPだけでは実はこの宇宙に物質しかないということを説明することはできないということが分かり、もちろん特殊なモデルを考えるとできますけれども、一般的には、小林、益川さんのCPだけでは、物質・反物質の非対称性は作れないというのが今の一般的な認識であります。
したがいまして、新しいCPの破れの種というのが必要になってきまして、その種となるものというのは大きく分けて二つあります。
一つは、下から行きますけれども、レプトジェネシスシナリオと言われていて、これはニュートリノのCPです。ニュートリノのCPが起源となって物質・反物質を作って、BマイナスLが保存するから、結果としてバリオン数が宇宙に残るというシナリオであります。
一方、もう一つのシナリオ、これ、バリオンを直接エレクトロウィークの電弱スケールで作ろうという、作りますという考え方もありまして、このために必要となるのはヒッグスが非常に大きくCPをやるというのではなくて、なおかつ、強い一次の相転移がなければならない。
この二つが主に物質・反物質の起源として考えられております。もちろん、アフレック・ダインというか、キューボールダーとか、そういうもので第3の可能性でバリオジェネシスを説明するモデルもありますし、アヤノ先生などがやられていますけれども、CPTの破れから物質・反物質の対称性を破るという話もありますけれども、その辺まで行くと、かなりオッズが上がってしまうかなというのが個人的な意見であります。
では、それでどうするか。レプトジェネシスのシナリオですけれども、まず、これは余りILCは関係ないんですけれども、今、ニュートリノ、T2KでCPの破れが見え掛かっている。本当かうそか、まだ分かりませんけれども、本当かうそかというのは、統計的に有意であるかはまだ分かりませんけれども、もしこれが統計的に本当に有意になってディスカバリーになったとすると、ある意味、レプトンのCPの破れのサジェスチョンになります。残念ながら、イグザクトに今計れるCPと、高いエネルギーでのCPというのは直接は関係ないんですけれども、やはり何らかのこれはサジェスチョンになりますので、そういう意味で、T2KでCPが見えるというのは、ある意味、これを示唆することになります。
もう一つ大事なのは、ニュートリノレスダブルβDKの発見です。これがあると、レプトンがマヨラナであって、ニュートリノがマヨラナであって、レプトン数が非保存になりますので、ここから、これは決定的な証拠になるんですけれども、残念ながら、2040年頃までにこれに明確な道筋を付けられるような実験は今のところないです。
もしこのシナリオで行くとするとどうなるかというと、これはT2Kに依存するところが非常に大きいんですけれども、このシナリオで行くとするとどうなるかというと、やはり重たい右巻きニュートリノの存在、これ、カミオカの最近の結果とこのシステムとで、シーソーメカニズムで質量がニュートリノより軽い質量が得られているということです。
こういう高いエネルギーの存在、なおかつ、高エネルギーが存在し、ゲージ群が存在するということは、GUTのある意味示唆になります。GUTがあるということは、今のエレクトロウィークの数字スケールの、エレクトロウィークのスケールがありますので、これを説明するには、やはりスーパーシンメトリーのシナリオというのが非常にフェイバーになってきます。
このシナリオで行きますと、例えばGUTというのはSUSYは10TeV以下ですし、先ほどお話ししましたILC、LHCでの検証というのが極めて重要になっていきます。あと、SUSYもあって、右巻きニュートリノもありますから、フレーバーの実験も大事になってきますし、このGUTがあるということは、ハイパーカミオカンデによるプロトンディケイの探索というのも極めて重要な役割になってきます。もちろん、このニュートリノの実験というのもこれについて極めて重要になる。ある意味、総力戦のシナリオなんですけれども、こういう。これ、実は我々にとってはゴールデンシナリオでして、ずっと基本的にはこのシナリオを信じて今までいろいろなことを行っています。
二つ目のシナリオとしましては、これ、エレクトロウィークバリオジェネシスのシナリオなんですけれども、これは何かというと、二つ、先ほど大事ですという話をしました。一つ目は、まず、ヒッグスがCPを破っていて、なおかつ、それによって物質を作らなければいけないわけです。
それがどうなっているかというと、次のページになりまして、これ、横軸が何かというと、ヒッグスのCPの測定、CPの破れです。だから、ここがCPがマックスに破れて、自分のパイのところがマックスに破れていて、このゼロのところがCPの破れがございませんというところになります。ILC250だと、CPの破れというのが大体3.8度ぐらい、精度で測定できます。これ、どこにあるか分かりませんけれども、もし仮にあったとして、例えばこれくらいと、ここにあったとして、すると、3.8度というのはこれくらいの幅。
一方、CPを破るためには、2個、最低でもヒッグスが必要になるので、2ヒッグスダブレットになります。だから、2ヒッグスダブレットになりますので、結合定数にずれが生じます。これはタウへの結合定数のずれを例に取っておりますけれども、これも大体1パーセントぐらいの精度で測定することができますので、どのくらいのところに測定した、これは点はどこでもいいんですけれども、測定できるわけです。
このクロスするところがちょうどバリオンのアシンメトリーを説明できるかどうかということを吟味することができるわけです。これで、もしこれがちょうどこのラインに乗ったとしたら、一つ目の関門はクリアされることになります。これがこの絵でいうところのここです。
これはEDM、エレクトロンやミューオンのEDMでCPが破れているわけですから、ヒッグス起源と。なので、吟味することもできるようになります。これがこの左のものであります。
もう一つ大事なのは何かというと、こうしてできたバリオン数の破れが、今の宇宙でも残ってなきゃいけないんですね。この今の宇宙に残すために、実は、このエレクトロウィークシンメトリーブレーキングが強い一次の、いわゆるギャップを伴うような強い相転移でなければならない。
その絵がこれでありまして、普通、スタンダードモデルの相転移だと、一次にはなりません。なおかつ、一次だけじゃ駄目で、大きいギャップを伴うような一次の相転移でなきゃいけないので、実はSUSYの簡単な2ヒッグスダブレットモデルに入れただけだと、うまく説明することができません。だから、もっとたくさんシングレットを入れたりだとか、そういうことをしない限り、これはなかなか難しいです。
これ、横軸は何かというと、その2ヒッグスダブレットのヒッグスの質量です。縦軸は結合定数、これはカッパーで、パウエル結合で書いてありますけれども、ILCだと1パーセントぐらいで測定することができます。このラインですね。このラインがちょうどできたバリオン数をこのまま残してくれるラインなんですけれども、基本的には結合がずれます。どのぐらいずれるかというと、これ、数字としてはヒッグスの3点カップリングですけれども、3点カップリングは今測定できませんので気にしないでください。例えば1パーセントぐらい測定できますので、ずれが分かるわけです。
なおかつ、実はこれ、もう一つ別の方法で検証ができまして、宇宙空間にその重力波の測定ができるようになりますと、実はこういう相転移の泡みたいなものが膨張するプロセスによって生じる重力波というのも検証することができるようになります。
なので、これがこっち側で、ILCでこのどっちかも否定されてしまったら、基本的にはやはりこっちのシナリオをフェイバーすると。そのためには、T2KでCPがきちっと計れるということも大事なことであります。
こういうわけで、では、物質・反物質の起源と新現象についてまとめてみたものがこれです。LHCができて、ヒッグスのCPを計ったり、結合定数を測ったりして、いろんな裏を取ったりして、このバリオジェネシスのシナリオが正しかったということが分かったとしますと、実は結合、ヒッグスが簡単な2ヒッグスダブレットじゃなくて、もっともっといろんなものが付いている可能性があります。なので、そういうものが非常に結合が強くなってきますので、10TeVから1,000TeVぐらいのところでいろんなヒッグスの何かポールが出てくるような変な世界になります。
一方、これらが否定されて、なおかつ、T2KでCPの破れなんかが見えたりしますと、基本的にはこのレプトジェネシスのシナリオになります。このレプトジェネシスのシナリオだと、10の11乗だとかGUTだとか、非常に高いエネルギーの示唆になりますので、先ほども申しましたけれども、10TeV未満のSUSYの探索やプロトンディケイ、レプトンフレーバーバイオレーションなどが非常に重要な役割を果たします。この二つともなかったときというのは、後でお話ししますけれども、いわゆるナチュラルネスという概念が少し具合が悪くなると。
これ、高いエネルギーに向かってどうなるかというと、このレプトジェネシスのシナリオというのはこれ、いわゆるSUSYのシナリオでして、これ、縦軸に結合定数の逆数を取ってあって、横軸にエネルギースケールを取ってあります。今、我々が見ているのは、大体1TeV、テラエレクトロンボルトぐらいですけれども、この辺を見ているわけです。この辺にスーパーシンメトリーが10TeVぐらいまでにあると、非常に高いスケールで力の大統一があって、恐らくこの辺のスケールに右巻きニュートリノが存在して、なおかつ、プロトンディケイもここにあってというある意味、ゴールデンシナリオになるわけです。
一方、エレクトロウィークバリオジェネシスのシナリオというのはどうなるかというと、基本的にはスタンダードモデルの世界に広がっているんですけれども、その1TeV、10TeVから1,000TeVぐらいのところに2ヒッグスダブレットがいたり、シングレットがたくさんあるわけです。なおかつ、それらの結合が非常に強くなりますので、結合がブローアップしてしまいます。ここから先というのは、ある意味、我々は下からは見えない世界なので、この辺というのは随分我々とは違うイメージの世界だと思っております。
なので、先ほどの絵にCPの破れを加えたものがこれであります。CPの破れが観測されますと、基本的には、先ほども申しましたけれども、ア・フューTeVから、1,000TeVぐらいまでに、次のエネルギースケールが存在するということが分かりますので、1,000TeVやれるかというのは難しいですけれども、次のエネルギースケールが決まるようになるわけで、ILC250とハイルミLHCなどで、次のエネルギースケールが決めることができるようになりますというのが1点目であります。
もし、CPの破れもなかったりしますと、ある意味、今、我々にとって唯一存在しているスケールというのは電弱スケールだけになります。なので、この電弱スケールというのが一体どうやってできたのかということを分からないままになってしまうわけですね。
今まで物理学というのはどういう進歩をしてきたかというと、何らかの新現象が見つかったときに、その新現象を説明する原理原則というのはほぼそいつと同じスケールにあるというのが今までの物理学の進歩です。だから、物理学はボトムアップしてきたわけです。だから、こうやって何らかの発見があったら、それを説明する原理原則もすぐそこにあって、それに向かってこうやって少しずつ下から上に積み上げるように、物理学というのは進歩してきたわけです。だから、ナチュラルネスってみんな鼻で笑いますけれども、実は物理学の基本的なコンセプトです。そうやって我々は積み上げてきたわけです。それをある意味、否定することになりますので、これは非常に大きい問題になります。
これは決して負け惜しみで言っているわけではありません。だから、ナチュラルネスで何も見えなかったらどうするんだと言われるんですけれども、何も見えなかったら、これはこれですごく実は大きい前進でありまして、この電弱相転移というのは、結局、暗黒エネルギーだとかと一緒で、ナチュラルネスのない現象である。少なくとも10倍以上はエネルギースケールが高いところまで何もないことが分かるわけですから。
実はこういうことというのはほかにも観測されています。例えば暗黒エネルギーですよね。暗黒エネルギーというのは、ナイーブに考えると60桁違うんですよね。60桁違うものどうやって説明するのかというのが暗黒エネルギーでありますし、インフレーションも実は、どうやってああいう特殊なポテンシャルを作るのかという問題があるわけなので、実はこの電弱とともに、インフレーションだとか、暗黒エネルギーだとか、これ、全てバキューム、真空に関わる物理であります。だから、こういう真空に関わる物理というのは、実はエネルギーが自然に説明できないことをある意味、示唆する三つ目の証拠になるわけで、ここまで来ると、恐らくこのバキュームというのは我々が考えているようなナチュラルネスでは説明できないんだろうということになるわけです。なので、これらにつては、このボトムアップ型の研究からいわゆるトップダウン型への研究をしていかなきゃならないということが分かるようになりましたというわけです。
最後に、暗黒物質でありますけれども、暗黒物質って大きく分けて二つあって、一つは、アクシオンのようなタイプのやつか、もう一つは、WIMPと呼ばれているマッシブなものがあります。WIMPには主に三つのパターンがあるんですけれども、一つ目のパターンとしましては、これ、普通我々が考えているのが電弱の電荷を持っているヒグジーノだとかウィーノというやつで、こいつらがピュアな場合はLHCで非常に強い制限を与えることができますけれども、ちょっとウィーノの成分が混ざったりすると、ILCが重要な役割を果たします。
今、我々、SUSYではないんですけれども、別の何らかの電荷を持ってないようなパターンの場合も十分考えられまして、それがボソンなのか、フェルミオンなのかといういろんなパターンがあります。
これ、どんなことが分かるかというと、これ、ILCでヒッグスのインビジブルディケイを使うとどのぐらい分かるかというと、63GeVより軽い粒子については全部強い制限を与えることができるわけです。これ、何か縦軸、横軸、全部併せてあります。なので、LHCができたらどうなるかというと、このラインをこちらにそのままシフトして考えていただければ。これ、現在の暗黒物質探索を表していまして、横軸が暗黒物質の質量を表していて、縦軸がクロスセクション、フェルミオンとのクロスセクションを表しております。フェルミオン、原子核ですね。原子核との断面積を表しています。
今付いている制限というのはここら辺、この緑色のこの実線の制限より上はないですよということが分かっています。
これを見て分かりますけれども、ILCというのは大体ここら辺より下は全部おろす、チェックすることができる。何が大事かというと、実は軽くなると、直接探索するのが難しくなります。軽いので、これでは直接探索ってどうやるかというと、暗黒物質が降ってきて、ゼノンだとかの物質を蹴飛ばすわけです。それを測定するんですけれども、これらが軽くなってくると、ハンチョウが小さくなるので、測定が難しくなります。だから、実際、軽いところにはいっぱいアノマリーがあります。アノマリーが大事だと言っているわけではなくて、それぐらい実験が難しいから、適当なクレームをたくさん付けているわけです。でも、こういうのを全部リニアコライダーではチェックすることができる。
では、2040年に暗黒物質探索はどうなっているのかというと、これがここより下はILCでカバーすることができるようになる。ピュアヒグジーノだと、LHCはここら辺まで吟味することができますし、ピュアウィーノだと、1TeV近くまで、LHCで吟味することができます。
一方、直接探索は、これ、ZEPLINとか、ゼロのテンの今の連中の将来系ですけれども、この辺ぐらいまでカバーすることができます。あと、だから、この辺ですね、この辺が残ると。この辺は、多分、CTAなど、間接実験で吟味することになるんではないかと思っております。
それで、最後、コンクルージョンですけれども、まず、一つ目のコンクルージョンとしましては、これはそのまま書いてあるものをコピペしただけですけれども、まず、ハイルミLHCの成果をより実りあるものにするために、250GeVとの同時期の実験が望ましい。これ、サイエンティフィックな理由としましては、やはり何らかのエクセスがあったりとか、お互いの知識をこうやって交換することによって、研究って質が高まってきますので、そういう意味で大事ですと。
もう少しうがったものの見方をしますと、例えば、LHCで2040年に何もなかったと、何かあったときを考えますと、そのときに、ヒッグスファクトリーを造ろうといっても、人は集まりません。当然、その新現象の発見の方向に人が流れてしまう。そういうこともありますので、やはりこの同時期の実験が望ましい。逆のパターンもそうです。
新しい物理のスケールが分かっていない。今、LHCで新しい物理の現象が発見されていませんので、テーゼは、ヒッグス粒子の精密測定において、ILC250は500に十分比肩できる精度、500造ろうが、250造ろうが、ゴールは一緒ですというのが二つ目の結論です。
三つ目の結論は、ハイルミLHCやSuperKEKBなど、もちろんニュートリノも含めてですけれども、それらと併せて、2、3TeVぐらいまでに確実な発見ができるようになりますし、物質・反物質の非対称性の起源を解明することができるようになります。
そして、これ、四つ目が極めて重要な点でありますけれども、リニアコライダーの一番いい点は何かというと、これ、エクステンダビリティです。アップグレードの可能性を持っているというのがリニアコライダーの利点でありまして、では、どこにアップグレードすべきかという話ですけれども、これはもう何らかの新現象が見つかったら、次はその新現象にやはりフォーカスすべきであるというわけです。だから、500とか言わずに、もっと高いエネルギーで新現象があったら、そこにターゲットすればいいわけです。そんなこと、今の技術ではできないと言いますけれども、今の技術で2040年の計画を縛る必要はありません。なので、やはりそこは重要な点であります。
二つ目の点は、もし、この何もなかったときのシナリオですね。この右側のシナリオだと。このシナリオのときには、やはりこちらにフォーカスすると。こちら側のシナリオだと、こちら側のシナリオだったときには、やはりこのエレクトロウィークシンメトリーブレーキングを精密に測定していかなきゃならないわけです。
なので、そういうときにはどういうアップグレードシナリオがいいかというと、やはり500GeVと1TeV、両方できるようにするということが大事で、何でかというと、実は、500GeVだと、HHH、ヒッグスのセルフカップリングがポジィティブな干渉をしますし、1TeVだとネガティブな干渉をして、精密に測定することができません。これ、実は1点だけで計っても、あまり精度に関わりませんので、2点で計ることというのは極めて重要であります。
なので、アップグレードのシナリオとしては、こういうものを考えております。
最後になりますけれども、一体、君らはいつまで加速器を要求するんだときっとこのサイドの方は思われていらっしゃると思われますけれども、やはり本質的な問題って何かと。これ、僕が個人的に上げた本質的な問題ですけれども、まず、一つ目は、この物質がどうやってできたんだろう、物質・反物質の起源、これはBファクトリーのモチベーションでもあります。プロトン、力の大統一ですよね。これ、プロトンディケイというのはこれ、ハイパーカミオカンデの一つのモチベーションでもあります。暗黒物質を解明する。インフレーション、暗黒エネルギー、この辺ですよね。更にもっと進むと、時空って何で誕生したんだろうとか、量子重力というものにこれらが僕は本質的な問いだと思っています。
この本質的な問いに、LHCだとかILCというのはこういうふうに、外堀からきちっと攻めていくわけです。LHCというのは、こうやってアームは長いですけれども、多少取り残しをすることがあります。このまま行きますと、我々は日本もこのLHCから撤退せざるを得ないような今、経済状況なんですけれども、それは何とぞよろしくお願いいたします。
ILCができますと、もうこれはもう、ぺんぺん草一本も生えないくらい、きちっと周りを全部支配します。これだけではやはり駄目なんですよね。なぜか、ゴールは非常に遠いので。
こういうゴールを直接調べるために、やはり空挺師団みたいな役割をするのも大事でありまして、例えばハイパーカミオカンデとかT2Kというのは、これ、GUTだとか、物質の起源でね。こういうスペシフィックな問題にある意味、ピンポイントに人を落としていくわけですよね。これはすごく有効なやり方ですけれども、時々、橋は遠過ぎてしまったりしますので、そういうのでやはり全部やらなくてはいけないわけです。
というわけで、どうもありがとうございました。ちょっと長くなってしまいましたけれども。
【中野座長】 どうもありがとうございました。
予定の時間、かなりオーバーしているんですけど……。
【浅井教授】 すいません。
【中野座長】 このまま質疑、省きますと、独演会になってしまいますので、御意見、御質問等ありましたら、受けたいと思います。ありませんでしょうか。初田先生。
【初田委員】 前半で2ヒッグスダブレットの話をされましたね。
【浅井教授】 はい。
【初田委員】 そこでは、重い方のヒッグス粒子は2TeVぐらいの辺りを想定しているということを言われていました。一方、後半の電弱バリオジェネシスのところでは、一次相転移をひねり出すためには、重い方のヒッグスの質量が、200GeVあたりを想定されているように見えます。
【浅井教授】 はい。
【初田委員】 この2つの値が1桁も違っているんですけど、その整合性はどうなっているのでしょうか。
【浅井教授】 純粋に、2ヒッグスダブレット1個だけ持ってきて……、いや、違う、2ヒッグスダブレット1個じゃなくて、2個ですね。ヒッグスダブレットを2個持ってきて、SUSYみたいな一番簡単なモデルを仮定すると、1個目の軽いものは125ですけれども、もう一個というのは250ぐらいより軽くないといけなくなる。そうでないと、強い一次の相転移を起こせないので、せっかく作ったバリオジェネシスも残すことはできません。だから、今それはかなり除外されています、普通。
なので、さっき申し上げたのは、その250、もう少し重たい2ヒッグスダブレットでもいいんだけれども、代わりに、シングレットを加えたりだとか、そういうことをしない限り、エレクトリックバリオジェネシスのシナリオというのはやはり難しいです。
【初田委員】 非常に不自然だということを言われているのでしょうか、それとも、あり得るということを言われているのでしょうか。
【浅井教授】 簡単なSUSYの今考えているモデルでは起こらないです。だから、シングレットを加えなきゃいけません。ただ、シングレットが自然か、不自然かというのは人によって言い方が違います。
【初田委員】 衝突エネルギー250GeVと500GeVの比較についてお聞きします。ヒッグスの精密測定のところで棒グラフがあって、250GeVでも500GeVにひけを取らないと議論されています。 250GeVのところでの主要なプロセスの一つであるZZヒッグスなどでは、 500GeVにしたときよりむしろ精度が良くなるというようなことは無いのでしょうか。
【浅井教授】 250の方が精度が良くなるものというのは、一つは、250の方が断面積が大きいんですよね。なので、基本的には、同じルミノシティだったら、250の方が精度は高くなります。上へ行くほど、断面積が小さくなっていきますので、例えば500だと半分ぐらいになってしまうはずなので、例えば、その代わり、逆にエネルギーを高くすると、どうしてもリミッタンスの関係でルミノシティが増えますから、その両方を加味すると分からないですけれども、これは同じルミノシティを仮定しています。
【中野座長】 ほかにございませんでしょうか。どうぞ。
【陳委員】 一番最後に、今から20年後のエネルギーアップグレードに関しての話があったんですけれども、これはルミノシティに関してはアップグレードの必要は余りないんですか。
【浅井教授】 ILCの方ですね。
【陳委員】 ええ、ILCの話です。
【浅井教授】 ILCのルミノシティアップグレードですか。僕はないと思っております。もうほとんどシステマチックで決まってしまうので、むしろ、もしエネルギーを変えずに、いろんなオプションがあるんだったら、やはりポラリゼーション。ポラリゼーションのオプションを増やすことによって、いろんな吟味ができるようになりますし、フォワード、バックワードアシンメトリーのずれた部分の忘れ物ですけれども、ずれたままになっていますし、いろんなシステマチックエラーをコントロールするのは基本的にはポラリゼーション。だから、もしエネルギーを上げられないんだったら、ポラリゼーションを頑張った方がいいと思います。
【中野座長】 どうぞ。
【松本委員】 完全に100パーセントヒッグシーノのLHCにおける探査で、二百数十GeVまで探査可能と書いてありましたけど、どのプロセスでそれが可能なのでしょうか?
【浅井教授】 どういうプロセスかというと、エレクトロウィークジェネシスで、クォークと反クォークからヒグジーノができて、ヒグジーノが、チャージドヒグジーノですけれども、チャージドヒグジーノがニュートラルヒグジーノに行って、パイオンに出すプロセスで、それだと、いわゆるロングリムドです。ロングリムドのウィーノの結果をそのまま、インタープリケーションしまして。
【松本委員】 ただヒグジーノの場合は、ウィーノのときより質量差にかなり大きなコレクションがスタンダードモデルより得られるので、ディケイレングスが3-4センチ、あるいは1センチぐらいになってしまうので、どうでしょうか?
【浅井教授】 今、どのぐらいのディケイレングスでやっているかというと、ウィーノのナイーブなディケイレングスというのはこれはやはり200Mevぐらいの……。
【松本委員】 そうですね。
【浅井教授】 粒体と仮定していますので、センチ弱です。それがガンマーファクターの分で大体5、6センチぐらいまで伸びているという感じでやっています。
ヒグジーノは、それに比べて、やはり3分の1ぐらいで。
【松本委員】 3分の6センチということで、2センチですね。これは見えますか?ディスアピアリングチャージトラックサーチで、とは思うんですけが、2センチの場合に検証できるんでしたっけ?
【浅井教授】 一番最内層が2センチからあるんですけれども、3層要求すると、8センチになります。
【松本委員】 ですよね。
【浅井教授】 だから、ガンマーファクターであとは稼ぐしかないです。
ただ、トリガー掛けると、トリガーは1パーセントぐらいしか掛からないですけど、トリガーでハイエナジーリジェクトに掛けますから、反対側のやつでブーストされるんで、基本的にはトリガーの条件で見ると、そう。
【松本委員】 大きいγのときを集めるということですね。
【浅井教授】 そこで1パーセントになってしまうと。
【中野座長】 ちょっとLHCの議論になってしまっています。
【浅井教授】 申し訳ありません。
【早野委員】 ILC250が建設されたときの物理を語るという枠組みでお話をされましたが、最後のところで、「LHCを続けるためのお金も」ということも御発言になりました。全体としてリソースが限られているときは、普通はプライオリティをどこに置くかという議論をしますが、今回はそれを無視した議論をなさいました。仮にどこにプライオリティを置くか、という議論をされると、結論は変わるんでしょうか、変わらないんでしょうか。
【浅井教授】 すごく大事なことだと思います。やはりプライオリタイズというのはしなきゃならなくて、ただし、ここで言えるのは、我々がお願いしている額に対し、このハイパーカミオカンデやLHCというのはそれよりも1桁以上上の話なので、もちろん、こういう言い方をすると怒られるかもしれませんけれども、文科省でクローズするようなお金ではありません。だから、やはりそういう意味で、これは別で議論しなきゃならないことだと思っております。
そういう意味で、全く同じ土俵で議論しろと言われたら、少なくとも今あるものの方がやはり優先されるべきだと思います。ただし、これ、明らかに違うソースの話なので、そこはプライオリタイズするのはやっております。
【中野座長】 ちょっと話はILCに戻したいと思いますが。
ここでの250GeVのお話聞いて、やはり前回議論していたときと一番違うのは、新粒子探索とか、そういうことはもう一切なくなって、精密測定にもう集中されていると。これ、やはりハイルミのLHCで何も、ハイルミというよりは、13TeV、14TeVというそのエネルギーアップグレードでなかなか何も見えなかったということは反映されていると思うんですけれども、そういう理解でよろしいですか。
だから、高エネルギー業界として、やはり新粒子探索というのはなかなか難しい。運が良ければ見つかるかもしれないけれども、ここは戦略としては精密測定でもっと高いエネルギーから物理のずれを見るところに集中した方が得策であるというところで、こういう計画が出てきたんでしょうか。
【浅井教授】 半分正しくて、半分あれかなと思いますのは、例えば、LHCは、まだたかだか2TeVぐらいまでしかやっていませんから、今から3TeVぐらいまでありますし、GUTだとか、暗黒物質を考えると、そろそろ見えてもおかしくない頃なんで、そこについては、LHCは今からだと。
ILCに関して言えば、何でかというと、500GeVを作って行えるというのはたかだか200、300GeVぐらいなんです、新粒子。200、300GeVぐらいまでに新粒子があるかという問いに対しては、かなりネガティブに考えなきゃいけないと。それがLHCの結果になります。
LHCのもう一つの結果というのは、やはりウィーノの暗黒物質を規定した。これは非常に大きいインパクトなので、だから、やはりもう思い切り重たい暗黒物質を考えなくてはいけなくなって、今、どんどん、大型化していますけれども、やはりそういう意味で、LHCのインパクトというのは物すごい大きかったと。だから、変な200、300GeVの粒子探索に巨大なコストを掛ける必要はないというのがLHCの結論です。だから、500造っても仕方がないですよという結論ですよね。
【中野座長】 どうぞ。
【酒井委員】 面白く聞かせていただいたんですが、どうも何か総力戦のような感じがするんですが、前回議論したときに、500GeVのある種の優位性みたいなものから、建設が始まれば、人の流れみたいなのも変わってという議論もしていたような気がするんですが、そういうことは今回は余り期待できなくなるという感じですか。
【浅井教授】 ハイルミとパラレルに走れば、できると思います。何でかというと、ハイルミというのは基本的には既存のシステムですから、もちろん、マグネットを借ります。ただし、これ、マグネットの人材であって、キャビティの人材ではないので、そういう意味で、別のリソースです。
フィジシストに関しましても、基本的にはたくさん、もしゼロから作ると、とても多くの人が必要になってきますけれども、基本的にはハイルミというのは今あるものへのアップグレードなので、ハイルミと同時期に作るというのは、リソースの観点からも重要です。
逆に、もしハイルミが終わって、FCCだとか、次のプロジェクトが動き出しているときに、リニアコライダーを立ち上げようとすると、これはマンパワー的には僕は大変になると。
【中野座長】 ほかにございませんでしょうか。はい。
【棚橋委員】 ヒッグスのプレシジョンの方にフォーカスされたお話をされたと思うんですが、そのヒッグスのプレシジョンで、ILCの精度が出たとして、その次に目指すべきエネルギースケールがどのくらいの精度で求まるかということに関しては。
【浅井教授】 精度ですか。だから、2、3TeVぐらいまでにあるということが分かっても、それが100GeVなのか、何なのかというのは……。
【棚橋委員】 すいません、どのくらいの大きさのコライダーを造らないと、直接見えないかというのが。
【浅井教授】 それは分かると。それ、だから、どういう技術を使うかですよね。だから、2、3TeVだったらこういう技術、クリップでもきついかもしれないですよね、3TeVになったらもう。なので、そこはどういう技術を使うかというのは、ある意味、それが見えてくる。
【棚橋委員】 例えば10TeVになることはないと。
【浅井教授】 10TeVになることもあると思います。例えば、10TeVまででも、例えばですよ、ウィーノで暗黒物質を真に受けて、それで、サーマルにできていると思うと、ウィーノの質量って3TeVですから、そうすると、ウィーノを作ろうと思うと、次のコライダーで6TeVということになっちゃいます。だから、10TeVではないにしても、それくらいのエネルギースケールになってしまうということで、やはりそれは今の技術を持ってするのは僕はナンセンスだろうなと思っています。だから、新しい技術というのは絶えず考えていかなきゃいけない。
【中野座長】 よろしいですか。
では、どうぞ。
【三原科学官】 きょうのお話の中で、右側のシナリオだった場合、要するに、もうヒッグスの精密測定をやったら、全て今の標準模型の予想どおりで、全て合っていた場合というのは、そうだとしても、例えば500GeVに行くと、また別な効果が見えるかもしれないというお話もあったと思うんですが、一方で、例えば電弱対称性の破れを調べよと思うと、今、低エネルギーでのフレーバー物理の方で総力戦でいろいろやっているものがあって、その結果が出てくることもあるわけで、そうすると、例えば500GeVの拡張をする必要がないというような結論が出ることもあるんでしょうか。
もう一つ気になったのは、ヒッグスの3点カップリングを500に行くと測れるんですけど、例えばそれはLHCからも結果が出てくることがあって、結局、250をやっていろいろ調べていくと、500GeVでやる必要はないというような結論が出る可能性というのもあるんでしょうか。
【浅井教授】 それはあると思います。500GeVの一つの大きなメリットというのは何かというと、まず、トップの質量ですよね。トップの質量に関しましては、LHCで恐らく0.3GeVぐらいまで測ることができます。もちろん、そこから先のアキュラシーが要求されることもありますけれども、現段階ではそれは考えにくいと。
もう一つ、エレクトロウィークの電弱精密測定をしようと思うと、やはり250に比べると500というのは利点はあります。HHHカップリングの話、しました。
ただし、やはり1TeVまで入れない限り、HHHについてはきちっと分からないだろうなと思いますし、HHHに関してはハイルミLHCは今のところなしになります。これはヒッグス二つというのは普通にヒッグス二つできるプロセスが圧倒的に多いです。だから、ヒッグスが二つ干渉しているというのを見なきゃならなくて、それはなかなか大変です。
LHCでヒッグス二つというのはやめないとできるんですよね。だけども、それがヒッグス1個からぽんとヒッグスが2個できているというのは見るのは大変ですので、これは難しいです。
【中野座長】 ありがとうございました。
それでは、この質疑の時間を終わりたいと思います。
引き続きまして、ドイツ電子シンクロトロン研究所理論グループのゲオルグ・ヴァイグレン主任研究員から、御発表いただきたいと思います。
ヴァイグレン主任研究員は、ヒッグスの物理や、LHC及び将来加速器における新しい相互作用などの研究を御専門とされています。今回の250GeV国際リニアコライダーの物理の意義について、理論物理学が御専門の立場から御発表いただきたいと思います。
それでは、ヴァイグレン主任研究員、よろしくお願いいたします。
【ヴァイグレン主任研究員】 本日は、御招待いただきまして、ありがとうございます。こちらでお話しできることを大変光栄に存じます。
本日の私のお話のタイトルは、250GeVでのLHCの物理のポテンシャルという内容です。こちらがきょうの話の概要ですけれども、まず、簡単なイントロダクションをしまして、その後、フィジックスプログラムについてお話しいたします。
それから、250GeVのLHCのフィジックスプログラムと500GeVを比較した場合に、どのような特徴があるのかということをお話しいたします。
まず、この250GeVのLHCがヒッグスファクトリーになるということですけれども、その理由は、250ですと、このZ粒子とともに発見されたヒッグス粒子の大量生産をするための理想的なエネルギーだからです。
そして、大量に生成されるヒッグス粒子、これは恐らく50万ぐらいになるのではないかと予想しておりますが、それによって、非常に高い精度でヒッグスの特性を決定することが可能になります。
そうすると、様々なことに関して、大きな進歩が可能になると思います。例えば、自然の基本的な法則に対する私たちの理解も進むでありましょうし、また、宇宙の進化についての理解も進むことが期待されます。
さらに、ヒッグスによって、宇宙の暗黒物質へのアクセスが提供される可能性があります。さらに、この250GeVのLHCですと、暗黒物質やそのほかの新しい粒子を発見する大きなポテンシャルがあります。
では、まず、このヒッグス粒子と素粒子の質量の起源についてお話ししたいと思います。
まず、2012年、LHCにおけるヒッグス粒子の発見は、非常に大きな科学的なブレークスルーでありましたし、また、私たちの理解についての新しい時代が始まりました。
この発見が、この真空のノントリビアルなストラクチャーがこの発見によって確立されました。これがこの宇宙における最も低いエネルギーステートと言われているものですけれども、さらに、このストラクチャーがヒッグスフィールド、あるいは、ヒッグスポテンシャルによって起こされています。
素粒子の質量の起源は、この真空の構造と関連付けられています。この素粒子の質量は、ヒッグスフィールドとのインタラクションから起こります。
そして、まずはこの現時点で私たちが理解しているものですけれども、まず、この真空の構造を起こすヒッグスポテンシャルが実際にどこから来るかということはまだ分かっていません。そして、この自然がどのような形態のポテンシャルを選んだかということも分かっておりませんので、それを解明するためには、更に実験が必要です。
粒子物理学のスタンダードモデルは、このヒッグスポテンシャルのこのミニマルな形を使っております。つまり、一つのヒッグス粒子がこの素粒子であるという形を使っています。
LHCのヒッグス粒子に関しての結論ですけれども、結果ですけれども、現在は不確実性があるものですが、その結果はスタンダードモデルの予測と整合性があります。ただ、そのほかの様々な可能性もあり得ますし、それが非常に異なる基本的な物理に相当する可能性があります。
したがって、新しい粒子を発見しましたけれども、まだそれに関する物理が理解されていません。そして、この既知の粒子とそのインタラクションの説明はありますけれども、その背景となっている、基礎となっているダイナミクスについてはまだ分かっていません。
したがって、今の私たちの理解というのは、超伝導のケースと類似していると思います。超伝導の場合は、最初の現象に関する説明が得られましたけれども、それがギンツブルグ-ランダウ理論と呼ばれているものです。しかし、本当の意味での理論というのは、BCS理論によって達成されました。
ここで少し超伝導と比較してみたいと思いますが、超伝導は1911年に発見されました。それがこのギンツブルグ-ランダウ理論というものですが、それが1950年に確立されて、超伝導の現象論となっております。これは超伝導の巨視的特性を説明することには成功しました。
ただ、その後、1957年にBCS理論が出てきました。BCSというのは、このバーディーン、クーパー、シュリーファーの頭文字を取っているものですけれども、これが、その背景となっている基本的な物理の微視的理論となりました。これがこの二つの電子のスーパーペアを説明していて、更に理解を深めることができましたし、さらに、この理論がこの巨視的なパラメータを説明しました。
現在の素粒子の質量の起源についての私たちの理解というのは、超伝導に関してはこの巨視的な理論であるギンツブルグ-ランダウ理論のレベルに相当すると思います。つまり、BCS理論のような背景となっている基本的な物理の理解がまだありません。ただ、その理解ができれば、自然の基本的な法則の面で大きな進歩が実現すると思います。
したがって、このように大きな影響が考えられるわけですけれども、現時点ではまだどの方向に向かうのかが分かりません。
様々な方向性が考えられます。例えば、もっとたくさんのヒッグス粒子が見つかる可能性もあります。そうすると、新しい事項のシンメトリーにつながる可能性がありまして、アインシュタインによる相対性理論が発見されてから100年以上たって、新しい時空のシンメトリーが分かる可能性があります。
もう一つの可能性ですけれども、ヒッグス粒子の基礎構造が分かって、ヒッグスは素粒子ではないということになった場合、自然の新しいインタラクションにつながる可能性があります。現在、四つの力が分かっていますが、5番目の力が発見される可能性があり、これは私たちの理解に革命を起こすことになります。
さらに、このヒッグスセクターのパターンについて、その特性について理解を深めて、そうすると、空間に新たな次元があるということが証明されることにつながる可能性もあります。さらに、ヒッグスとこの暗黒エネルギーとの関係ですけれども、この宇宙がたくさんあるパラレルユニバースの一つでしかないということにつながることも考えられます。
では、ここでは、ILC 250GeVのフィジックスプログラムの詳細について少し触れたいと思います。これを追求するということは、近代科学の最も重要なチェンジの一つだと思いますし、そのためには、ヒッグスファクトリーが理想的な設備だと思います。
また、このゴールデンチャンネル、このヒッグスからこのZHへのゴールデンチャンネルは250GeVで最もよく探究できると思います。そして、このチャンネルですと、崩壊の仕方からは独立してヒッグス粒子を顕出する可能性があります。
そうすると、このヒッグスの生成プロセスとかヒッグスの崩壊、分岐比の測定として絶対的なモデルに依存しない測定につながります。そして、それが素粒子の質量を生成するための重要な物理を発見する際に必要なインプットを得ることが可能になります。
250GeVのILCですと、大きなポテンシャルが提供されます。新粒子とか新しい物理を発見する大きなポテンシャルとなります。
こちらですけれども、ゴールデンチャンネルです。Zがあって、このヒッグスの崩壊を見なくても、このヒッグスを検出することができます。
Zからのきこの崩壊分岐比が分かりますので、このLEPコライダーから分かりますので、そうすると、この方法は、この生成されたものの断面図の絶対的な測定をする方法につながりますし、また、ヒッグスの分岐比も測定できます。しかも、1パーセントという精度で測定できます。したがって、ILC250は、このハイルミLHCに比べて、量的にも質的にも大きな改善となります。
こちらに幾つかの事例が出ております。この様々なモデルとILCのプレシジョンを比較した場合のその結合のずれですけれども、この四つの例がこちらに出ておりますけれども、こちらのモデルはハイルミLHCがリーチできる範囲外のものです。
例えば、このヘビー数字ですけれども、5パーセントのデビエーションがあるのが解決できますし、2ヒッグスダブレットですと、10パーセントのデビエーションでありますので、この今までのその問題が解決されます。
下の図ですけれども、ヒッグスが素粒子でない場合ですけれども、このように結合を見ますと、2パーセントから6パーセント下がっていますけれども、これもILCによって確立される可能性があります。
そして、最後に、このヒッグスとラディオンのミキシングの場合ですけれども、この1から2パーセント下にシフトしていますけれども、全体としては、ただ、一つだけフルオンですけれども、10パーセントのずれがあります。このように、この1パーセントレベルの精度のあるILCですと、背景となっている基本的な物理の様々な状況に対して、大きな感度で区別することができます。
さらに、ILCですと、新しい粒子の生成の発見の可能性もあります。例えばヒッグスが暗黒物質やそのほかの新粒子に崩壊します。
そして、ILCの感度はこのダークマターへの崩壊について、0.3パーセントのブランチングレーシオまで感度があります。そして、さらに、そのほかのブランチングレーシオについても、精度のある測定で精密な測定で補完的な情報も提供することが可能です。
したがって、このダークマターに崩壊することもありますけれども、ダークマターを生成することもあります。その際はヒッグスがメディエーターとして、この暗黒物質の生成に関わるわけですが、この図にあるこの方向であり得ます。それによって、LHCに対して更に補完的な感度を提供することができます。
さらに、この追加的な軽いヒッグス粒子の生成の可能性もあります。これが想定としては全てのヒッグス粒子の結合の事情はスタンダードモデルの値になると想定されていますけれども、このスタンダードモデル用のカップリングとともに、この新たな追加的なヒッグスステートで強く結合が抑制されているわけですけれども、テバトロンとかLHCによる対策から比べると、この制約がされなくなります。
それがこちらに出ておりますけれども、こちらの青い部分がこのLEPサーチから除外されていたものです。また、黄色と赤のところがILCでカバーできる新しい領域です。
では、次のテーマですけれども、250GeVと500GeVのILCのフィジックスプログラムを比較しております。このILCのフィジックスプログラムの中心ですけれども、500GeVまでのエネルギーのものに関しましては、250GeVのエネルギーステージで実施できます。
そして、250GeVでのILCから得られる結果は、より高いエネルギーでのプログラムにとって重要です。
さらに、ヒッグスフィジックスですが、ILC500はヒッグス結合の決定に関しまして、量的な改善を提供します。ILC500での弱い粒子融合チャンネルですけれども、それがアクセス可能になり、そうすることで、トータルのヒッグス幅の決定が改善されます。
こちらがその新たなプロセスの例です。
それでは、次に、250GeVを超えて、ILCの物理計画はどういうものであるかということについて申し上げたいと思いますけれども、まず、第1に、ILC500、若しくは、ILC550でも結構ですけれども、このttHの生成チャンネルを作ることによって、ttHの結合を直接測定をする、より精度高くLHCよりもすることができるということにつながってまいります。そして、更に重要な点でありますけれども、これはILC500の場合におきましては、ヒッグスの自己結合、いわゆるHHHですけれども、この測定が可能になるということで、これを実現することによって、ヒッグスポテンシャルの決定に重要な役割を果たすことになります。
次に、トップクォークの物理についてですけれども、ILC350におきましては、このトップクォークの質量の測定については量的にも質的も、LHCに比べますと、かなり改善をするということが想定をされております。そして、また、LHCにおきまして、このトップフィジックスのプログラムにつきましてはエネルギーレベルが500GeVというふうになりますので、こうなりますと、新しい物理の影響がどのようなものであるのかということを新たに確認していく、そういった可能性が生まれることになります。
では、ILCにおけますトップクォークの質量の測定についてでありますけれども、現在、LHCにおきまして、このトップクォークにつきましては、その質量の測定がかなり高い統計的レベルにおいて生成をされているということは事実でありますけれども、一方で、非常に大きなシステマチックな不確実性の影響を受けているということがあります。いわゆるモンテカルロ質量と言われるものでありまして、これはトップクォークの質量が理論的に精度を持って確立をされているものに対して、そのような状況にあるということであります。したがって、現在はLHCにおきましてはこの状況を改善しようという取組が行われているところです。
一方、ILCに関しましては、この50Mevの段階におきまして、これまでにない精度をもって測定をするということが可能になってまいります。そして、これらの質量につきましては理論的にはしっかりと確立されたものであり、こういった内容をトップクォークの質量値として算出をし、理論的な予測に基づいて、同じ非常に高い精度でもってそれを行うことができるようになります。
次に、新しい素粒子の探索についてでありますけれども、キネマティックリサーチを中心に行うことによって、新しい素粒子を探索するセンシティビティが高まることになります。
こちらの表ですけれども、これはジム・ブラウが作成をしたものでありまして、ここの表の中にあるものをどのようにして解釈をすればいいのかということがあります。ご覧いただいておりますように、項目といたしましては、様々な物理目標に対して、500、350、250がどのように対応できるのかというのをチェック項目として表示をしたものです。
この表を作ったジム・ブラウさんに、私、直接お問合せをさせていただいたことがあるんですが、そのときにブラウさんのおっしゃったことは次のようなものでした。この表の中にチェックが入っている数そのものについては、それぞれのプログラムが異なるエネルギーレベルにおいて実行されますが、そのプログラムの意義、意味というものを測るものでは、測るものとして使ってはならないと言っていました。
この表に関しまして、私の方から幾つかコメントを付け加えさせていただきたいと思いますが、まず、第1に、このようなテーブルの形式をまとめようとすると、必ず余りにも単純化し過ぎてしまうという傾向があるという点です。そして、二つ目でありますけれども、実際にどのようにこの物理関係のテーマをグルーピングをするのか、そして、どういった量を作るのかということに関しては、ここに記載をされている以外にも様々な可能性が考えられ得るということです。
このテーブルに記載をされているものは、様々な項目がありますけれども、そこでチェックをされたものの相対的な重要性について、必ずしも全ての情報を提供しているものではないということ、そして、それがゆえに、単にチェックの入った数を計算するということだけでは不十分だということです。
ただ、この表のフォーマットを使うというふうに想定をした場合におきましても、私の認識におきましては、250GeVを使ってILCを動かすということは、すなわち、この表の中でチェックの入っていない項目も含めて、全ての項目に対応できるものであるというふうに認識をしているということであります。これはLHCなどと協力をすることによって可能となるものです。
私がこの表をどのようにチェックできるかということについて示したものがこのとおりでありまして、このグリーンでチェックをさせていただきましたけれども、その中でも特に重要なのが一番上にありますヒッグス結合についての正確な測定です。
その精度のあるヒッグス結合についての正確な測定は250GeVでできるものでありますけれども、併せて、LHCと組み合わせることによってできる項目が存在をしているということがここにも記載をさせています。例えばgHWWなど、ヒッグス結合の正常化について、さらには、このヒッグスカップリング、トップクォークに対するヒッグス結合、それから、自己結合などにつきましてはLHCと協力をして実現できることであります。
ほかの項目をごらんいただきましても、LHCだけでできるものというのもございますけれども、LHCとILC250を組み合わせてできる項目があります。
例えば、まず、この項目ですけれども、ヒッグス結合の正確な測定についてですが、こちらは250だけではなく、350、500も実行できるものでありまして、特にILC250にとっては集客的な任務ということになるもので、必ず実行していかなければならないものであります。まさにILCによける物理プログラムのコアになるものでありまして、非常に大きな重要性を持つもの、そして、ILC250こそがこういった測定をできる特定の能力を有していると考えるものです。
それ以外にも、幾つか紹介をさせていただきたいんでありますけれども、一つ一つ紹介をさせていただくことは省かせていただきます。議論、質疑応答の中で、もし何かございましたら、コメントをさせていただきたいと存じます。これらの項目については、まさにLHCと協力をしながら、ILC250GeVが実行できる二つのものがシナジーを発揮できる分野だと考えております。
こちらのスライドですけれども、これもLHC、ILC250で共同で実行できるものでありますが、例えば拡張ヒッグスの状況、それから、スーパーセメタリー、ダークマターなどの探索に関してであります。ILC250はこの分野におきまして、20年前のコライダー、LEP2と比べましても、20年前のものでありますけれども、大きな改善をこの分野で見ることが可能であります。
では、結論です。ILC 250GeVについての物理的な論拠というものは極めて強力であると。
250GeVにおける物理プログラムについてでありますけれども、偏極ビームを活用することによって、自然の基本法則についての理解を更に深め、そして、LHCにおける測定結果を補完するものにつながっていくということであります。そして、LHCとILCの活動、そして、その調査結果の相互作用によって、今後その結果を更に先へ進めることができる、それぞれが個別で動くよりも、更に大きな成果を上げることができます。
ILC 250GeVを迅速に実現をするということが、今申し上げたようなシナジーをより積極的に活用する上で不可欠だと言えます。ICFAが以下のような声明を発表しておりますが、その内容を私は全面的に賛成をするものであります。すなわち、ヒッグス粒子の精度の高い測定、調査を行う観点から、非常にすばらしい実例を示すものであり、そして、ILC、LHCとそのアップグレードに関して、補完的な役割を果たすプロジェクトであるというふうに言っております。また、日本のHEPのコミュニティにおきましても、ILC 250GeVの重心系のヒッグスファクトリーを造るということは非常に魅力のある物理的な目標であるというふうに言っております。
ILCが高いエネルギーレベルの達成をするその拡張性を有しているということは、円形型に比べますと、非常に有利な点となっております。ILC250の結果に基づいて、今後、高いレベルのエネルギーのプログラムを構成をしていくことが可能です。
最後のスライドになりますけれども、このスライドは皆さんに配付をされているものの中には入っておりません。このスライドでありますけれども、これは素粒子物理学欧州戦略の改訂の準備に伴いまして、ドイツで開かれました未来のEプラスEマイナスコライダーに関するワークショップというものが開かれたものでありますけれども、KETというのはドイツ素粒子物理学委員会であります。そこの声明、結論といたしまして、このような記載がされております。
ILCは、本ワークショップでいろいろな側面について議論をされた、そして、ILCは、現段階において、技術的に成熟段階にある唯一のプロジェクトである。したがって、このプロジェクトは国際共同、国際社会において議論されているとおり、日本において設置をし、そして、緊急性を持って実現をしていくべきものである。本ワークショップの結論として、このプロジェクトは我々の強力な指示を得るものである。
御清聴、ありがとうございました。
【中野座長】 ありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明に関し、御意見、御質問、何かありましたら、よろしくお願いいたします。酒井先生。
【酒井委員】 私は素粒子物理が専門分野ではございませんので、間違っているかもしれませんが、スライドの21ページに戻っていただけますか。チェックマークの数が異なっていますが、もし相乗効果なしに、ILC500GeVを建設していたとしたら、そのチェックされた物理はそれだけで達成できるということでしょうか。
【ヴァイグレン主任研究員】 500GeVでのことをおっしゃっていますか。
【酒井委員】 250では、トップヒッグスのカップリングの精密測定以外、LHCの結果が必要で、つまり、そのチェックされたものを達成するにはそのデータが必要と……。
【ヴァイグレン主任研究員】 ほとんどの場合、ILC250GeVで何を行うか、LHCで何を補うかがあります。例えば、拡張したヒッグスセクターについてですが、ILC250GeVでは、発見の可能性があり、LHCでも同じく発見の可能性があります。ただし、これら二つの発見の可能性は異なる位相空間でのものです。なので、ILCが全ての場合において、LHCを必要としているわけではありませんが、LHCができないところをILCが補っているということになります。
【酒井委員】 違った視点から質問させてください。LHCでの相乗効果を500GeVで行ったとすると、どのような新しい物理、結果が出てくると予想しますか。
【ヴァイグレン主任研究員】 ILC500でですか。
【酒井委員】 このような作業部会を2、3年前に開催した際、今まで500で測定することが必要と言われていたのに、今の話ですと、250とLHCを組み合わせることでこの様々なところにもチェックを入れることができると。
【ヴァイグレン主任研究員】 ILC250がコアのヒッグスのこの測定をしますけれども、500はさらに改善することができます。特に500が新たに追加できるのがヒッグス結合の精密度に関して、センシティビティを上げることができて、それが250ではできません。
そのために、こちらに一つ、このヒッグスセルフカップリングについては括弧を入れているわけです。
【中野座長】 どうぞ。
【徳宿委員】 同じスライドですけれども、2点ありまして、1点なんですが、私もただこのピックをカウントするべきでないというのは全くそのとおりだと思います。250GeVに関しましては、大きなピックがあるように、やはりこのヒッグスというのは非常に重要であって、それがILC250の重要なポイントだと思っています。
ただ、後のところに関しましては、LHCのシナジーが大事であるということも私は非常に重要、そのとおりだと思いますけれども、ほとんどの部分はLHCの方からのインプットが大きな効果を持っていると考えますが、そのような考え方でよろしいでしょうか。
【ヴァイグレン主任研究員】 おっしゃっていることについてはほぼ同意をさせていただきますけれども、しかし、つまり、多くのこの物理目標に関しましては、LHCの方が貢献度が大きくなるだろうというふうには想定はできます。
しかしながら、これまでも申し述べさせていただきましたように、LHCとILCについては非常に相互補完性が高いということであります。特にILC250につきましては、新しい素粒子、軽いものについての発見を様々なスペクトラムにおいて行っていくということに関しては大きな強みを持っていると。この辺りにつきましては、LHCは強みを有していないというふうに考えております。
【徳宿委員】 もう一つなんですけれども、そこの出典として、ジム・ブラウの2017とありますけれども、これは実はもともとの出典はもっと前で、2015年の表ですよね。つまり、この表を作った時点では、LHCのRun2の結果というのはまだはっきりしない状態で作った絵であるということと、それから、この比較はLHCは全く関係なく、ILCの単純な三つのエネルギーでの比較という図であって、今、Run2の結果が出てきたときに、書き方、ピックが間違ってはいないと思いますけど、各項目というのは結構変わってくるような気がするので、このもともとの2015年の表をそれほど強く議論する必要はないのではないかという気は私はします。
【ヴァイグレン主任研究員】 はい、おっしゃるとおりです。これはもともとは2015年のもので、それ以降、LHCも多くの進歩をしましたけれども、ILCにも新しい開発がされておりますので、250についても多くの発展、開発がその後されておりますので、おっしゃるとおりだと思います。
【中野座長】 私からの提案なんですが、15分まで会議を延長したいと思いますが、皆さん、よろしいでしょうか。では、そのようにいたします。
次の質問。駒宮先生。
【駒宮委員】 質問ではないんですけれども、この表は何を測れるかという表なんですね。先ほど、浅井先生がお話になったのは、どういう物理をできるかという話なんですね。やはりベースになっているのは、物理なんですね。だから、その物理をベースにして、こういう表を作るべきだと思います。
それから、例えば、350GeVでのトップクォークのメジャメントですね。それは比較的昔は重要だと思われていたんですが、LHCでのトップクォークの質量がかなり正確に測れるようになったのではないかというのがあって、それをわざわざ350GeVのリニアコライダーで測るという重要性がそれほどなくなったと思いますね。
それから、500GeVでトップクォークペアのレフトハンドとライトハンドでのメジャメントをやると、いろんなコンポジットのモデルが分けられるというのがございましたけれども、それも、やはりヒッグスファクトリーのところで、SUSYの方か、コンポジットの方かということをきちんと最初にフルサイズメジャメントで目星をつけてから、その後にできることで、プライオリティとしてはそんなに高くないものだというふうに考えています。
以上です。
【中野座長】 コメントでしたので、引き続き、質問を受け付けたいと思います。
【ヴァイグレン主任研究員】 一言申し上げてよろしいでしょうか。
【中野座長】 どうぞ。
【ヴァイグレン主任研究員】 この点については確かにおっしゃるとおりだというふうに思います。まず、ヒッグス関係のものの調査を行って、次の段階に進んでいくということだろうと思っております。こちらの方のスライドにもご覧いただいておりますように、このトップクォークの質量の測定については、個人的に申し上げて、まだまだLHCのレベルについては満足をしておりません。もちろん、LHCにおきまして改善をする努力を図っていくというところで、これはILCの方が登場するまでやっていくということになります。その中で、どの程度、その辺がうまくいくのかどうかというものはまた別の問題としてありますが。
【中野座長】 中家先生。
【中家委員】 ヒッグスファクトリーの物理の重要性というのはよく分かったんですが、ドイツでのEプラスEマイナスのワークショップで、ILCは重要だと、チャイナのヒッグスファクトリーについては言及しないのはなぜですか。
【ヴァイグレン主任研究員】 このドキュメント、全部で四つの部分から成っておりまして、一つが、EプラスEマイナスコライダーが必要であるということ、なるべく早く実現する必要があるということです。二つ目ですけれども、ILCです。ILCを強く支持しているということが書かれております。その後ですけれども、CLICとサーキュラコライダーについて触れています。特にサーキュラコライダーがZポールで高いイルミナシティで測定することという部分がこの後半で書かれています。
【中野座長】 初田先生。
【初田委員】 物理の観点で二つ質問があります。まず、ダークマター粒子の生成の重要性について強調されておられましたが、浅井さんのお話にはそれがあまり強調されていなかったように思うので、お二人のお話の整合性が少し分からなくなりました。ダークマター粒子の生成がどれくらい重要なのかというところをもう少しお話し頂きたく思います。それから、偏極があるとどういう物理が一番よく分かるのかについてもう少しお聞きしたく思います。
偏極からどのような観測が得られるとお考えですか。
【ヴァイグレン主任研究員】 最初の質問を100パーセント理解できておりませんが、この分岐の割合が0.3パーセントの正確さに変わったことをおっしゃっていますか。参考になるものが提示されていないと。
【初田委員】 ご発表のなかで触れられていたダークマターに対するヒッグス粒子の崩壊についてお伺いしたいと思っています。浅井先生のご発表の中では、特に言及されていなかったようでしたので。どの程度重要な部分になりますかというのが私の質問です。
【ヴァイグレン主任研究員】 このダークマターが一体何によって構成をされているのかということはまだ分かっておりません。可能性といたしまして、弱い、いわゆるマッシングパーティクルと弱いインタラクションを起こしているというふうな可能性がありますし、また、ヒッグス粒子の50パーセント、半分ぐらいなのかというようなところもあります。どういうふうな形で構成をされているのかということがよく分かっていない。
そして、また、このダークマターへの崩壊等についてのプロセスに関しては目に見えないものでありますので、先ほども申し上げましたように、従って、この分岐比が0.3パーセントというのは非常に重要な意味合いを持つのではないかということであります。ダークマターがどういうものであり、ダークマターの質量についてもよく分かっていないということがありまして、この125GeV法で行ったものをベースにして進んでいくということ、その意味におきまして、そのダークマターのどのように崩壊をしていくかということは、分野については非常に潜在力、可能性の大きなものがあるのではないかというふうに見ておりますし、私自身、個人的にも非常にその分野についてはわくわくして期待をしているところです。
偏極ポラリゼーションについてでありますけれども、このILC250におきましては正確な測定をするということを目指しておりまして、この二つのビームをどのようにして測定をしていくのかということ、そのためにはスピンの方向性というものを確認をしていかなければなりません。こういった形をすることによって、また新しい物理への貢献ができるものだと考えております。
【中野座長】 最後に、短い質問を一つ。お願いします。
【早野委員】 DESYにおられるということで、今日の御発表と直接は関係ない質問をさせていただきます。
DESYは2001年に31億ユーロでテスラ・リニアコライダーを提案し、結局は12億ユーロのXFELを建設するに至ったわけなんですけれども、その歴史を踏まえて、このパネルに何か個人的に助言されたいことがあれば、お聞きしたいと思います。
【ヴァイグレン主任研究員】 それについてですけど、今の私たちが知っている情報があって、当時、リニアコライダーを造っていれば、すばらしかったと思います。これからもう20年待つことはなかったと思います。
が、しかし、XFELをヨーロッパで造って、それも予定のスケジュール内で予算どおりにできました。これはこのILCのテクノロジーがすばらしかったということを表しているものだと思いますし、キャビティのマスプロダクションができるということがこれで分かりましたので、それは非常に成功した事例としてよかったと思います。
【中野座長】 以上で、本日の議論は終了となります。
前回はCERNにおける現在の研究の状況、また、ILC計画の見直し内容について御発表いただき、議論しました。本日は、お二人の方から、250GeV、ILCの科学的意義について御発表いただき、議論いたしました。本作業部会の趣旨である250GeV ILCの意義については、おおむねいろいろな御意見を伺うことができたのではないかと考えます。
次回の第3回では、これらを踏まえ、500GeVから250GeVに見直されたILC計画の科学的意義について、ポイントを整理し、それを基に議論を深めてまいりたいと思います。次回もどうぞ御協力をよろしくお願いいたします。
本日御発表いただきました浅井センター長、それから、ヴァイグレン先生におかれましては、お忙しい中、遠路、御協力いただき、誠にありがとうございました。
最後に、事務局から連絡事項があります。
【吉居加速器科学専門官】 御連絡します。本日の議事録は、後日、委員の皆様にメールにて内容確認をお送りし、その後、当省のホームページにて公表させていただきます。
次回の日程は、資料3にございますとおり、3月1日木曜日の10時からでございます。次回は、今ほど座長からも御説明がございましたように、これまでの御発表と議論を踏まえまして、科学的意義のポイントとなる点を整理しまして、それを踏まえて議論いただきたいと考えております。
以上でございます。
【中野座長】 それでは、本日の会合を終了いたします。ありがとうございました。
―― 了 ――
研究振興局基礎研究振興課素粒子・原子核研究推進室