国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議 体制及びマネジメントの在り方検証作業部会(第2回) 議事録

1.日時

平成29年4月7日(金曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. 国際研究機関への共同参画の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

観山座長、徳宿座長代理、飯嶋委員、伊地知委員、市川委員、川越委員、佐藤委員、高津委員、田中委員、中野委員、永宮委員、山本(明)委員、山本(均)委員、横山委員

文部科学省

関研究振興局長、板倉大臣官房審議官(研究振興局担当)、渡辺振興企画課長、岸本基礎研究振興課長、轟素粒子・原子核研究推進室長、吉居加速器科学専門官
三原科学官

5.議事録

【吉居加速器科学専門官】  それでは、定刻になりましたので、よろしいでしょうか。
 開会に先立ちまして、事務局より御連絡いたします。
 本日の会議は公開としております。本日はプレス2社から撮影の希望がございましたので、冒頭の撮影を許可したいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【吉居加速器科学専門官】  ありがとうございます。それでは、撮影希望の方、お願いします。
 よろしいでしょうか。それでは、撮影についてはここまでとさせていただきます。
 それでは、観山座長、よろしくお願いいたします。

【観山座長】  それでは、国際リニアコライダーに関する有識者会議体制及びマネジメントの在り方検証作業部会第2回を開催いたします。本日は御多忙のところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 では、本日の出席状況等について事務局から報告をお願いいたします。

【吉居加速器科学専門官】  御報告いたします。
 本日は、14名全員の委員に御出席いただいております。定足数を満たしておりますので、会議も有効に成立しております。
 お手元の座席表の裏に委員の名簿がございますが、その名簿の中で、伊地知委員、高津委員、横山委員におかれましては所属等の変更がございましたので、資料には新しい所属、役職名を記載しておりますので、お知らせをさせていただきます。
 また併せまして、このたび事務局に異動がございましたので、御紹介させていただきます。
 4月1日付けで基礎研究振興課長から振興企画課長に就任しました渡辺でございます。

【渡辺振興企画課長】  1つ席が移りました。引き続きよろしくお願いします。

【吉居加速器科学専門官】  同じく、生涯学習政策局生涯学習推進課長から基礎研究振興課長に就任しました岸本でございます。

【岸本基礎研究振興課長】  よろしくお願いいたします。

【吉居加速器科学専門官】  事務局からは以上です。

【観山座長】  それでは続いて、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【吉居加速器科学専門官】  お手元の資料を御覧ください。本日の資料は全部で4点となってございます。資料1が、本日御発表いただく川越委員の資料、資料2が飯嶋委員の資料、資料3が三原科学官の資料、資料4が今後のスケジュールとなってございます。このほか参考資料としまして、机上にいつものドッチファイルの資料を置いておりますので、適宜御覧いただければと思います。不足等がありましたら、お知らせ願います。
 以上でございます。

【観山座長】  それでは早速、議題に入ります。
 前回は、主に国際研究機関とその準備組織の在り方について、これまでの研究者コミュニティにおける検討状況を高エネルギー機構の山内機構長、東大の駒宮センター長からそれぞれプレゼンテーションを受け、議論いたしました。
 本日の議題は、国際研究機関への共同参画の在り方についてでございます。本日は、これまで国内外の大型プロジェクトに参加されていた御経験から、まず、国際研究機関への共同参画の在り方について川越委員から、次に、大規模国際共同プロジェクトにおける共同参画の在り方について飯嶋委員から、続いて、スイス・ドイツにおける大型加速器施設を利用した素粒子物理研究について三原科学官から発表いただきます。各委員の発表後にそれぞれ質疑応答の時間を設けますので、よろしくお願いいたします。
 それではまず、川越委員、よろしくお願いします。

【川越委員】  こういうタイトルでお話しさせていただきます。九州大学の川越です。私は、今日の3人の発表のうちのトップバッターということで、割とゼネラルな話から始めさせていただきます。
 今日の話で求められているのは、国際研究所、大型加速器を持った研究所と実験グループとの関わり、それから実験グループがどのような運営体制で実験に臨んでいるかということだと思います。研究所と実験グループとの間には、このICFAのガイドラインという、1980年に制定され、少しずつアップデートされてきたものがあります。後ろに資料として英文が載せてありますが、ここには、その要点のみ意訳したものを1ページにまとめております。
 まず第1に、加速器を持つ実験施設で行われる実験について、実験の選考、あるいは複数の実験がある場合にはそれらの優先付けについて、研究所が責任を持って行うということです。次に、実験の選考と優先付けをするときの指標は、まず実験の科学的意義、それから、その実験が実際に技術的に可能かどうか、実現できるかどうか、そして、その提案をしてきた実験グループの能力、さらに、必要となるリソース、人であり物であり、あるいは資金であり、そういったリソースをきちんと持ってこられるかどうかということです。これらのことから判断がされます。
 実験を選ぶとき、あるいは優先付けをするときに、その実験に参加するチーム、普通は複数の国からチームが参加して実験グループが構成されますが、それらのチームの属する国や研究機関がどこであるかということは指標と関係なく、選考、優先順位付けに影響すべきではありません。それから、研究所で実験を行うわけですが、実際にどのように実験を運営していくか、あるいはどの部分を研究所が担当し、どの部分を実験チームが担当するかということは、研究所と各国研究チームのリーダーの間の合意に基づきます。このとき、もちろん国際的な関係があるわけですが、もし既に2国間あるいは多国間で協定等が交わされていれば、それに基づいて合意されるべきであると書いてあります。
 それから5番、これは割と重要なことですが、加速器を運営する研究所は、その運転経費、電気代といったものの負担を実験グループには求めるべきではないというのが、これまで1980年から続いてきた合意です。例えばCERNのLHCなどもその合意に基づいて運営されています。ただし、2011年の改定のときに、この下線を引いた部分が加えられました。世界的かつ大規模な施設の場合には、加速器運転経費等の負担についても、プロジェクトの承認前にその割り当てについて参加するパートナー間での合意が必要であるという部分です。これは、少し分かりにくいですが、将来ILC等のさらに大きな国際的な施設ができた場合に、この加速器運転経費等についてもホスト国以外からの分担があり得るということを示したものです。
 6番は余り関係ないと思うので、ここでは省略させていただきます。
 コライダー実験とは何ぞやということをもう一度、改めて御紹介します。コライダーというのは粒子と粒子をぶつけて実験するのですが、装置としては加速器という部分と実験装置あるいは測定器と呼ぶ部分に大きく分かれます。加速器の方はホスト研究所が建設、運転、維持管理を行う、実験の方は世界から集まる研究チームでグループを作って、自主的に運営するというふうに、非常にやり方としては異なっているという点を、まず御承知ください。私がこれから話すのは主に実験の方です。
 実験の方は何をするかというと、衝突で生成した粒子群を検出、測定、記録、この図のように記録して、それを解析して物理成果を出すということで、そこまでが実験グループの役割です。最先端技術を用いた測定器が命であって、それは世界最先端のものをます。そのとき、測定器の製作、建設については各国のチームが分担し、得られる実験データについてはメンバー全員が平等に使うというのが了解事項となっています。測定器はいろいろなパートに分かれるのですが、基本的には持ち寄りで作る、いろんな国が分担して作る、それらを組み合わせるということになります。ただし、もちろん共通部分もありますので、その部分は参加チームが提供するコモンファンドで賄うということになります。
 実験計画期間は、このように3段階に分かれると思います。まず実験計画の立案、それから測定器を開発設計する、またその実験グループを作っていくというのが実験の計画期間となります。加速器計画がゴーとなり、実験が研究所に認められれば、いよいよ測定器の製作、建設ということになります。測定器の各部品、いろいろな測定器を作って、それを現地に持ってきて建設する、それから物理データの解析の準備をする、これが第2段階に当たると思います。例えば、この後お話があるBelle II実験などは、今この最終段階に来ています。そしてその準備ができれば、いよいよ運転、実験開始ということになって、測定器の運転、維持管理、さらには将来に向けたアップグレードを行います。データを取って、データ解析、物理解析を行い、成果を発表するということになります。これが大体我々がやっていることです。LHCの ATLAS実験などは、今まさに、この実を刈り取る運転の時期になっています。
 ここに、1970年代からの大型コライダーと、日本が組織的に参加した国際共同実験を示してあります。SLAC、フェルミラボ、それからブルックヘブンは重イオンの衝突させる原子核の実験ですが、これらがアメリカのコライダー実験となります。色としては、青色がレプトンコライダー、電子陽電子コライダー、それからオレンジがハドロンコライダーです。こちらには、ドイツあるいはCERNで行われてきたコライダー実験が書いてあります。電子と陽子をぶつけた実験のHERAというのがありまして、これは特に色を違えて書いてあります。日本の方はずっとレプトンコライダーという伝統がありまして、TRISTANから始まってKEKB、それからSuperKEKBと続いています。
 かつては同じタイプの、例えばレプトンコライダーが同時期に存在して競争するという時期がありました。ところが、コライダーがだんだん大きくなってきて、同タイプのものは同時期には世界に1つしか持てない、そういう状況になってきています。さらに、コライダーが大型化することによって、時間的にも実験期間が長期化しています。
 実験の規模を図で示したのがこれになります。JADEは1980年代、OPALは1990年代の実験で、Belle IIは今から始まろうという実験ですが、参加国もだんだんに増え、研究機関も増え、参加人数も、これは論文に載る人数のことですが、このようにどんどん伸びて大きくなっている。それから、これはハドロンコライダー実験ですが、UA1、CDF、それから今現在のATLAS実験、こちらの方も本当に倍以上のペースで伸びています。このように実験グループが大型化してきておりますが、それに伴って、グループの運営体制が非常に高度に成熟してきたというのがきょうのテーマの1つです。
 例として、今世界最大と言っていいATLAS実験の構成、運営体制について簡単に紹介いたします。まず、ポリシーとして4つ大事なことが掲げられています。まず、民主的に運営すること。それから、方針を決定する議決機関とスポークスパーソンを代表とする執行部は分離する。それから、なるべく組織は小さくする、これはなかなかうまくいかないところですが、なるべく小さな組織が望ましい。それから、ずっと同じ人が同じことをやるのではなくて、きちんと任期を設けて運営体制を作るということになっています。
 これがATLAS実験の運営体制です。それぞれの項目については次のページに言葉で説明してありますが、この図の方が分かりやすいと思うので、このまま説明させていただきます。こちらの方がコラボレーションボード、今そこにいる徳宿さんがチェアをされていますけれども、これが方針を決める議決機関です。執行部の選挙を行ったり、重要な決定を行うのが、この議決機関の役割となっています。実際の実行部隊としては、まずスポークスパーソン、すなわち研究グループの代表が選任されて実験グループの顔となり、実際の実行部隊を統率してリードします。その下に、この人を助ける執行部がいて、さらにこの部分に示すように、本当にいろいろ幾つも役割が分かれて、実際の実験を担当する組織があります。測定器を分担して担当するグループ、実際の実験の運転をする、トリガーであるとか、あるいは計算機であるとか、様々なことを担当するグループが幾つもあって、実験が運営されております。
 この図全体が1つの組織なのですが、それぞれの箱の中に書いてある名前は、その箱の組織の代表者であって、一つ一つがきちんとした組織として運営されています。例えば、パブリケーションコミッティーというのがありまして、実験の成果を出す、論文をまとめる、あるいは研究発表を学会で行うとか、そういうことについてもきちんと運営管理がされています。論文を出すときには、学術誌以上の厳しさで、この研究グループ内で審査がされています。
 ATLAS実験の中にATLAS日本グループというのがあって、重要な貢献をしています。これに参加しているグループは大きく分けて3つの流れがあって、もともとCERNでOPAL実験をしていたグループ、それから元々アメリカで、中止になってしまったSSCの実験をやろうとしていたグループ、それからドイツのDESYで実験をしていたグループ、これらのグループに新規参入を含めて、今16の研究機関が参加しています。LHCではもう一つ、CMSという大きな実験もありますが、日本のリソースを集中するために大規模に参加するのはこのATLAS実験ということになっています。それ以外にALICE実験というのもありますが、こちらは原子核の実験です。
 ATLAS日本グループもきちんと運営体制を作っておりまして、現在は、KEKの花垣さん、東大の浅井さんの2人代表という体制を作っていて、特に予算獲得に責任を持って、日本のビジビリティーを高めるために戦略的にきちんと方針を立てて、研究を推進しています。実際これまで、そして現在も非常に重要な貢献をしていて、ソレノイド磁石や、重要測定器として、一番内側の方のシリコン測定器、一番外側のミューオントリガー検出器、そしてハイレベルトリガーというもので貢献しています。それから、先ほどの役職表にもありましたが、ATLAS実験グループ内でも重要な役職、物理解析の様々な役も含めて、様々な重職に就いています。この写真は、測定器建設の例として、ミューオントリガー検出器、非常に巨大なものですが、これを日本、イスラエル、中国の研究者、エンジニアで完成させたというものです。国際協力の良い典型例として認められているものだと思います。
 大分時間を使ってしまいましたが、ここで、ILCについては今どうなっているのかということをお話しします。2007年にまず3つの測定器の提案があって、その後、2009年にGLDとLCDがまとまってILDになり、SiDというアメリカを中心とするものはそのまま残って、さらにもう一つの提案がありました。2009年に、LoIという意思表明書が出た後に、それを基に当時のリサーチディレクター、山田作衛先生によって、このうちILDとSiDをそのまま進めてもよいという評価となり、今は2つの実験がILCで行われるもの想定されております。
 ILCにおける実験が今どのような状況にあるのか、どのように進めるべきかということがPIPの第12章に書かれております。このページには、そのうちの最初の3章だけをまとめました。まず、今ある、例えばCERNのLHCで行われている実験のような世界規模の国際共同実験グループで普通に行われているように、ILCの測定器建設、物理研究も行われるべきであるということです。そして、今認められている2つの測定器は、プロジェクトが認められれば、実際の実験チームになるであろうということです。2番目は、ILC研究所はまだ存在しませんが、もしそれができれば、こういった実験の提案を評価し、その進捗状況を監督する仕組みを有するということです。通常、PAC、プログラム・アドバイザリー・コミッティーと呼ばれる組織ができて、評価を行うものと思っています。それから実験グループへの参加は、ほかの実験と同じく全世界のコミュニティに開放されるべきということです。加速器建設とは直接関係しません。それから、ILCの測定器グループは自主的に運営、統治を行うということです。研究所はそれをサポートするという立場です。
 研究所は実験グループへの支援を直接には行いません。もちろん研究所が物理グループを持ち、そのグループが実験に参加するということはありますが、直接は貢献しないということです。ただし、測定器に共通なインフラなどの部分については人員等の提供を行うということになっています。
 ILDグループ、SiDグループというのはまだ準備段階でありますけれども、既に運営体制を築いております。ILDグループは22か国、71機関、400人以上で組織されており、これらの数字はILCが実際にゴーになれば爆発的に増加すると考えられます。既にこういった執行部組織、それから議決組織ができていて、それから測定器、物理研究、ソフトウエアに関する組織も既にできています。図を見て分かるように、日本の研究者はこの中でそれぞれ重要な役割を担っております。
 もう一つのSiD測定器グループというのも、これはアメリカを中心とするグループですが、こういった組織ができております。こちらの方には日本からは東京大、東北大学が参加しております。
 これが最後のページになります。ホスト国の実験に対する役割というのはどういうものかということです。まず実験グループというのは、既にある国際的なグループと同様に、こういった民主的な運営、それから政策決定と権限の分離、あるいは、なるべく組織を小さく、それから任期はきちんと設定するということです。今ある実験とほぼ同じような仕組みで運営されるというふうに期待されているし、実際にもうそれを始めております。ホスト国となった場合、その国が期待されるであろう役割としては、まず加速器を運営することになるので、その加速器と測定器に関するインターフェース部分、ここに幾つか例を挙げましたけれども、こういったことに貢献する。それから、重要測定器に集中的な貢献をする。ただし、これはこういう部分に貢献することが決まっているわけではなくて、実際にどこがどう担当するかというのは実力によって決まります。それから、データ解析センターというものに対する貢献も要求されるというふうに思われます。
 最後に、日本のビジビリティーを高めるにはということですけれども、これはこの後、飯嶋さんからのお話もあると思いますが、ここに私が考えていることを幾つか挙げました。ばらばらにやるのではなくて、ある程度日本の研究機関が意思統一をもって、リソースを戦略的に集中投資する。優秀な人材をきちんと集めてきて、各々がきちんとビジブルな活躍ができるようにする。それから、もちろん若手研究者の教育等も重要になってきます。こういったことをよく検討していくことが必要だと思います。それから、大きな実験で大学等の小さなグループがどうやってビジビリティーを示すか。これは問題であり、重要な検討事項になると思います。特に大学スタッフや大学院生は、実験現場になかなか長くいられないので、うまくやる仕組みが必要だと考えております。最後のページは、自分が今考えていることも含めてまとめさせていただきました。
 以上です。

【観山座長】  ありがとうございました。それでは、ちょっと時間が少なくなってしまいましたが、議論の時間を持ちたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

【伊地知委員】  時間も限られていて、ちょっと細かくなるので、もしかしたら後で資料等で補足いただければとも思うのですが。7ページの図にあったところでお伺いしたいのは、プレナリー・ミーティングとあったのですが、これは機関であれば、その権限や任務は何であるかということと、コラボレーション・ボードというのは議決機関であるということなのですが、それとの関係はどうなっているのかと。

【川越委員】  ちょっと最初のところ聞き取りにくかったのですが、議決機関と、どこの関係でしょうか。

【伊地知委員】  プレナリー・ミーティングとコラボレーション・ボードとの関係。
 一通り申し上げます、済みません。それぞれの構成員はどういう方で、その構成員は誰がどのように選任するのかということと、あと、そのストラクチャー、体制自体はどこでどのように決定されたのかということと、あと、お話しいただいたことが、Revised ILC Project Implementation Planningのチャプター3との相違というのがあるのだとすれば、どういうものなのか。あと、一番最後のスライド、15ページは、恐らくチャプター5との関係かと思うのですが、そのチャプター5との違いがもしあるとすればどこかと。
 ちょっと多くなって、可能な範囲で。いろいろあったのですが。

【川越委員】  ATLASの運営組織については徳宿先生も非常に詳しいのですが、このコラボレーションボードのメンバーというのは参加研究機関から原則1名、投票権も原則1名ということになっています。非常に小さいところはクラスターと称して、幾つかの大学とが連合で1票という場合もありますが、基本的には1研究機関が1票ということで、このコラボレーションボードは構成されます。
 プレナリーミーティングというのは、基本的にATLASに参加する人間なら参加できる、あるいはビデオで聞けるというものです。ここでは議決はされないと認識されております。いろいろな情報を皆さんに公開する、あるいはディスカッションを行います。ただし、いろいろな議決はコラボレーションボードが行うということだとと思います。
 徳宿さん、何か補足があればお願いします。

【観山座長】  今のに関連して、議決と言われましたけれども、例えばこのATLAS実験というのには膨大な予算があって、それに各国とか各研究機関がいろいろな形で、インカインド、キャッシュで、コントリビューションしているわけですよね。その額は一定ではないわけですよね。

【川越委員】  一定ではないです。基本的に、多分目安としては、例えばオーサーリストの割合で、とかあるかもしれませんが、必ずしもそれに従っているわけではありません。

【観山座長】  それなのに、それに参加する方、極端に言えば大きいところも1票だし、小さいというか、ある程度のところも1票と、そういうのが民主的というのか、ちょっとポリシーがよく分からないんですけれども。

【川越委員】  それはグループによって違うと思います。それについては世界的なコンセンサスがあるわけでなくて、ATLAS実験ではこうしているということであって、ほかの実験ではほかのやり方があろうかと思います。

【永宮委員】  それに関連してですけれども、この実験の方法というのは。僕は非常によく理解できるんです。しかし、加速器に対するコントリビューションが、国によってまた違った方策があるわけですね。それとこれと必ずしもカップルする必要はないと思うんです。加速器のグループの組織図というのはいつか示されることになっているんですか。次回とか次々回とか。実験グループというと、もう出来上がってからの、ある意味では個々の実験グループの問題ですが、加速器もやっぱり非常にきちんとした組織を作らないとできないですよね。

【轟素粒子・原子核研究推進室長】  前回のPIPのご説明の中で、加速器本体の組織図はなかったと思いますが、研究所全体の運営という中で、そのコンセプトは示されていたと承知しています。

【観山座長】  だから今回は、私も再認識したんですけれども、実験グループという、研究所ができた後にどのような形で国際的な共同実験チームを作るかとか、そういう話にある程度限定されているところなんですが、今言われたとおり、そもそも研究所を作るときのコントリビューションとか、そこでの意思決定というのも大きな議論にはなろうかと思いますので、それはまたいずれ議論したいと。

【川越委員】  今日の話は完全に実験側だけの話で、例えば加速器の方で、幾ら、どういう割合でお金を分担したかとは関係なくて、今ここで、先ほどのお金をどう分担するかというのは、あくまでも実験装置、あるいは実験の運転費、実験を運営するための様々なリソースをどのように分担するかということです。それについては、先ほど言ったように人数比というのが目安にはなるけれども、必ずしもそれに厳格に比例しているわけではありません。

【観山座長】  どうぞ。

【中野委員】  1つの衝突点に2つの検出器、つまりSiDとILDがあるというのがかなり特徴的だと思うんですけれども、研究面以外の体制とかマネジメントの面で、そういう2つのディテクター、測定グループを持つメリットとデメリットというのを簡単に教えていただけたら。

【川越委員】  そうですね、1つは、やはりこれまでの実験で、例えばLHCでいうならばATLAS実験があって、CMS実験があって、ヒッグス粒子の発見にしても、両方で同じところに同じ信号が見えたというのが重要なポイントでした。

【中野委員】  ただ、それは衝突点が別で、別だから同時に走れるけど、衝突点が1つなら同時には走れないですよね。

【川越委員】  はい。違った測定器で、ルミノシティを平等に分配して実験することになります。ただし、2つ測定器があれば、その部分、入れ替えの時間等もありますし、そのためのキャリブレーション等の問題もあるので、その分のロスはあると思います。

【観山座長】  どうぞ。

【山本(均)委員】  それに関連してですけれども、1つのメリットというのは科学的なクロスチェックで、それから、1つの測定器が処理している間にもう一つが走れるということがあります。ただしILCの場合というのは、先ほどお話ありましたように、2つ測定器があるからといって、ルミノシティが2倍になるわけではない。同じルミノシティを原則2つの測定器で分けるので、同じルミノシティに対してコストが上がるというデメリットはあります。それから実験ホールの大きさも大きくなりますし、だからそういう意味での測定器が2倍になることと、それから実験ホールなどのコストが上がるというデメリットがあるということです。

【中野委員】  体制面についてお聞きしたいんですが、近頃は実験がどんどん大きくなって、人数がどんどん増えていっているんですけれども、やはり、どこまでも大きくなれないというか、原子核もどこまでも大きくなったら壊れてしまうので、余り巨大になり過ぎないというような、そういう工夫が働いているとか、そういうことはないですか。ビジビリティーの問題もあったんですが、1つでやるよりも2つやった方がビジビリティーを保ちやすいとか、参加する人を増やしやすいとか、そういうことはないんでしょうか。

【川越委員】  現時点ではそれもあるかもしれません。例えば今、SiDはアメリカ中心のグループですが、アメリカからILCへの参加者を増やすという意味では、SiDは非常に大きな存在になっています。

【観山座長】  では、こちらから。

【徳宿座長代理】  今のに関連しては、やはりちょっと違うタイプの検出器で複数やるというのはある程度重要なことがあって、同じ形のディテクターを2つ持ってくる場合には本当に無駄になるわけです。だからILCの場合でも、川越委員の話でありましたように、2つあったのが1つにマージされたというのは、比較的似たようなところはマージされていますし、ATLAS実験も、始まる前は2つの実験があったのを、一緒にしてやったらどうかというのが、審査委員会とかでのレコメンデーションが来て、統一するという方向であったと思います。その上で、やはり物が違うものがあることによって、系統誤差とかが違うというメリットはあるので、必ずしも1本にするわけではないけれども、そういう努力はされていると思います。

【観山座長】  佐藤さん。

【佐藤委員】  こういう組織に余り明るくないので、基本的な質問で申し訳ないんですけれども、オーガニゼーション、組織とあるんですが、各方々は基本的に自分の大学、自分の組織に所属しているわけですよね。ここのオーガニゼーションというのがサラリーを払ってというわけではない。

【川越委員】  基本的には皆さん自分の、ホームインスティテューションに所属しています。

【佐藤委員】  ですからオーガニゼーションといいますけれども、普通、研究所や企業でしたら、その国の法律の裏付けがあるオーガニゼーションなんですけれども、特にそういうものはなくて、いわゆる共同体という形でやっているという認識でよろしいんでしょうか。

【川越委員】  それでいいと思います。

【佐藤委員】  ですから非常に高度な組織なんですよね、きっと、共同体、自分たちでルールを決めてということで。日本の会社というのはやはりプロジェクト体制というのがすごく苦手で、どうしても自分の組織の方を向いてしまうというのがあって、こういうものがすごくうまく機能していて、この中での成果というのが自分の組織の中でもしっかり認められるという流れができているとすると、すばらしいことだなと私は思いまして、科学だけではなくて、こういうもののスピンアウトというのも、社会に対するスピンアウトというのも重要なことではないかと思いました。

【観山座長】  目的意識が共有されているので、これに参加してある程度のコントリビューションをしないと、成果が自分たち、共有できないということから、こういう組織が、基本的には学術的には同じような組織でしているんですが、ちょっと最後に1つだけ。この箱の中のメンバーというのは、どうやって決まるんですか。

【川越委員】  箱の中のメンバーとはどれを指していますか。

【観山座長】  例えばチーフだとか、いろいろ、代表とか書いてありますよね。これはどうやって決まる。

【川越委員】  基本的には全部選挙です。

【観山座長】  選挙。

【川越委員】  はい。研究グループ内から何名かノミネートされて、その中から3名程度に候補を絞って、それでコラボレーションボードで選挙をするというのが基本です。

【観山座長】  なるほど。これはなかなかすばらしいというか。
 ほかに。

【市川委員】  ATLASの組織を見せられていたんですけれども、ILDがどういうふうにしようとしているのか。特に実験は、非常にきつい部分と、それから最後の解析の楽しい部分があって、そこの負担を平等にする工夫とか、そういうことについて何かILDというのは。

【川越委員】  ILDの方は、例えば具体的にどの国のグループがどこを担当するかもまだ決まっていません。もちろんどこがどこをやりたいとかいう希望はいろいろありますけれども、まだ予算の裏付けもないわけですし。だから今は比較的、割と大きな研究機関に、例えばこういった部分が集中する傾向があります。なかなか大きい研究所とかでないと、今のILCに専任でできるところは割と少ないということもあります。ただし、ここにあるように、この人たちが比較的、こういった部分にこういうことをしたいという意思表明の1つでもあろうかと思います。とにかく、どこが何を担当するところまでは決まっていないというのが現状です。

【市川委員】  ただ、日本がもしホスト国としてやっていくんだとすると、ありがちなのは日本が結構しんどいところをやって、おもしろいところは、というのはいかにもありがちだと思うので、すごく戦略を持ってやらないとだめだと思うんですけれど。だから今から考えておかないとまずいと。

【川越委員】  もちろん日本としては、今のところは、このうちのバーテックス、それから、TPCが採用されればTPC、カロリメーター、この全部かどうかは分かりませんけれども、そのうちの幾つかに貢献するつもりで準備を進めてはいます。

【市川委員】  でも検出器って全体のことがあるではないですか。個々のはそれぞれが自由にやればいいと思うんですけれど。そういう組織というのはどこで決まっていくんでしょう。多分、今は……。

【川越委員】  分担をどう決めるかですか、全体をどこが担当するかですか。

【市川委員】  全体としてちゃんと動かそうとすると、かなり労力を割かなければいけない人が多人数になりますよね。そういうのをきちんと国際的に平等にシェアするという仕組みを早い時期に考えておかないといけないとかということはないんですか。

【観山座長】  それがそもそもマネジメント。

【川越委員】  平等になるかどうかは分かりませんけれども、やはりその部分が多分、ホスト国はある程度は負担しなければいけないのかなと僕は思っています。それは個人的見解ですが。

【観山座長】  それはマネジメントではないですよ、健全な。

【川越委員】  そうですね。

【観山座長】  と思いますけれども。
 では最後に、どうぞ。

【山本(明)委員】  少しだけコメントですけれども、LHCの場合も、実験に対して、ホストであるCERNが大体20%ぐらいというのを1つの目安として持っていますが、その場合はCERNがサポートすると。だからマネジメントの中のガバナンスを実験グループに対してするというよりは、実際にそれだけの大きなものを建設するためには、こういう各研究所、大学からの組織体だけではやはり動かない、本当の土台になるようなところはホストの研究所がサポートするというのが1つの考え方としてあって、恐らく現在のILCの中でもそういう議論がされております。

【観山座長】  永宮先生が言われたとおり、研究所そのものをどうやって作って、どういうポリシーにするかというのも大きな議論の観点だと思います。ありがとうございました。
 ちょっと時間が押していますが、それでは続きまして、飯嶋委員、よろしくお願いいたします。15分でお願いします。

【飯嶋委員】  名古屋大学の飯嶋と申します。こういうタイトルで、Belle II実験の経験からということでお話をさせていただきます。
 これは前回のリマインダーですけれども、前回の資料5のこの部会における論点というところで、国際研究機関を我が国に設置する場合の国内における実施体制の在り方の検討ということが課題になっているわけですが、そこで私の話では、我々が今、KEKで進めておりますBelle II実験での経験を基に、大規模国際共同プロジェクトにおける国内体制の在り方について述べたいと思います。
 後で紹介しますけれども、このBelle II実験というのも日本がホストする国際共同実験でありまして、規模感でいいますと、ILCが例えば約3,000人の実験グループになるとすれば、このBelle II実験は現在750人ですので、多少違いはあるんですけれども、オーダーは変わらないということで、その経験をILCに外挿することは意味のあることかなと思います。そこで、この実験の運営や、そこでの課題を精査しまして、検討の材料としていただければいいのではないかというふうに思っています。それから特に、私は大学の研究者としてやっておりますので、その観点から、巨大なこの国際共同実験で大学のグループが埋没することなく独自性と主導性を持って参画できるということを重視したいと、個人的にはやはり考えております。
 Belle II実験ですけれども、これはKEKです。1999年から稼働しておりました前身のKEKB加速器というのがありまして、それが世界最高の衝突性能、ルミノシティを達成したわけですが、そのルミノシティを40倍に増強したSuperKEKB加速器というのを使う実験です。この衝突点に、今準備が進んでおりますけれども、Belle II測定器というのが設置されます。ちょっと下の方が消えておりますけれども、2017年度中に衝突実験を開始しまして、2018年度には最終的な形態での本格的な実験を開始する予定であります。今現在建設を進めているBelle II測定器ですが、来週にも、一部を除いてほぼ完成しまして、加速器のビームラインがこちらの方にあるんですけれども、そこにロールイン、移動させる作業というのを来週予定しております。
 このBelle II実験で何をやるかということも、この機会に簡単に紹介させていただきます。一言で言えば、我々の住んでいる宇宙というのが物質優位の世界になっているわけですけれども、それがどのようにして生じたのかということが1つの研究の重要なテーマです。これに関しては、前身のBelle実験で、この小林益川理論という、粒子と反粒子の違いを予言した理論の検証というのを行って、それがノーベル賞につながったということは皆さんも御存じかと思います。ただ、これはいわゆる標準理論という枠内での説明がなされたというだけでありまして、本当に宇宙がどうやって物質優勢の世界になったかということは、もっとこのビッグバンに近いエネルギーの高いところにさかのぼって現象を見てみないと分からない。というわけで、このBelle II実験の目標というのは、この標準理論を超える新しい物理の発見と、それによってCP対称性の破れが、粒子と反粒子の対称性の破れが実際どう起こるのかとか、未知の素粒子、これは暗黒物質の候補ですけれども、そういったものへの理解につなげようというものです。
 この実験を行っているBelle IIコラボレーションですが、この世界地図にありますように23か国・地域から、101の研究機関、日本、アメリカ、アジア各国、オーストラリア、そしてヨーロッパ、そういったところから総勢で750人の研究者が参画する国際共同実験です。ここにそのメンバー数の内訳がありますが、ヨーロッパですと、例えばドイツが100人、日本は一番大きなグループになっていて、日本からは13機関が参加、ここにあるような大学が参加しています。
 これを見て分かりますように、私なりに約4分の3と書いていますが、よく見るとほとんど5分の4ですけれども、海外からの参加となっております。日本においてこれだけ多くの外国人研究者が日本に来て研究をやっているという意味では、非常にまれな例だと言っていいかと思います。
 川越さんの発表にATLASの場合のことが紹介されておりましたが、このBelle IIの運営組織がどうなっているかということをかいつまんで紹介しておきますと、まず実験代表者、スポークスマン、これは現在ハワイ大学のトム・ブラウダー氏がやっております。これをリーダーとして、研究を進める組織としては、検出器のグループ、データ管理を行うグループ、検出器の運転をつかさどるところ、ソフトウエアの開発、データ処理をするコンピューターを動かしていくところ、データ解析から物理成果を抽出する物理解析グループというので構成されているわけですが、やはりこれだけの大きな組織になりますと、しっかりしたマネジメントのシステムというのが必要になってきます。
 Belle II実験の場合は、コラボレーションの重要なポリシーの決定、それから重要事項の承認というのは、参加する研究機関の代表者で構成されますインスティテューショナルボードというところで決定されています。ただ、実験で進める上で生じるいろいろな問題、それについては機動的に意思決定をしていく必要がありますので、ここにエグゼクティブボードというのがありまして、ここで議論を行って、それをスポークスマンに助言をする。それから、この下にあるような各研究チームのリーダーもここで任命しています。
 それから、今、外国人が代表者になっているわけですけれども、やはりそれを進めていく上ではKEKのマネジメントとの連携も必須になってきますので、KEKのスタッフが、プロジェクトマネジャーあるいはファイナンシャルオフィサーとして予算管理を行う。後で、MアンドOファンドという、コモンファンドのようなものの運用について簡単に紹介しますが、それについてもこのファイナンシャルボードというところで、その使い方を決めています。
 それから、左の方にありますのは、割と今日的な意味合いで重要になっていますアウトリーチでありますとか、またダイバーシティとか、そういうものを議論する委員会であるとか、研究成果の発表というところで国際会議におけるスピーカーの選考を行う委員会。ここには書いていませんけれども、これからデータ解析が本格化しますと、やはりパブリケーションコミッティーというものがこれから追加されてくるかと思います。
 Belle IIの測定器ですが、この絵にあるようなものになっておりまして、ルミノシティを上げたことに対応するために、前身のBelle測定器の各コンポーネントの性能改良を国際協力で進めています。7つのサブ検出器から構成されております。詳細は省略しますが、この建設に当たっては、KEKは加速器の建設と運転、測定器構造体やサブ検出器に共通するデータ収集系などのインフラ整備に責任を持ち、各検出器コンポーネントについては参画する研究機関、これはKEKを含みますが、MoUに基づいて持ち寄る形態、いわゆるインカインド・コントリビューションというので行っています。
 それから、共通する検出器を運転、維持していくために必要なお金、それを運用する基金、MアンドOファンドと呼んでいますけれども、それをやっています。用途は、測定器の運転維持費、それから秘書さんなどの人件費、それから測定器を動かす電気代、超伝導ソレノイド電磁石がありますけれども、それの運転経費、あと測定器に使うガスの経費であるとかアウトリーチの経費などをそこから出しています。負担、分担に関しては、KEKが半分を分担して、残りは博士号を持った研究者の数に比例させて分担するというシステムになっています。
 Belle II実験というのは、こうした国際共同実験のマネジメントに基づいて進んでおりまして、そういう意味では、実績が日本においても積み上がっているというふうに言ってよいかと思います。
 あとコンピューティングというのも近年の高エネルギー実験では非常に重要で、加速器、測定器と並んで第三の重要な柱というふうに認識されています。実際にBelle II実験におきましても、得られる大量のデータはKEKの中央計算機の処理能力を超えています。大体毎秒1.8ギガバイトのデータが生成され、大量のディスクやCPUコアが必要になります。これはKEK1か所で賄えるものではなくて、高速ネットワークでつないだ分散処理、いわゆるグリッドコンピューティングというのが必須になっています。右にありますのは、これはまだデータ提供していませんので、今はシミュレーション事象の生成というのを行ってやっております。それで各所のコンピューターがどのように稼働しているかというのを示しているものです。
 このコンピューティングと、それに伴うソフトウエアの開発というのは、やはりデータ解析から物理成果を抽出してくるところで、そこの指導力にやはり直結するものでありまして、ハードウエアの場合はホスト研究所に資源が集中してきますけれども、データ自体はむしろ世界中にばらまかれて、分散していくものでありますので、そこできちんと日本人の研究者が指導性を発揮していくという意味では、しっかりしたコンピューティングというのも必要になると私は思います。
 ここで、では日本人の研究者がどういうふうに参画しているかです。ここに示しますように、例えば、一番真ん中からいきますと崩壊点検出器、SVDと呼んでいますけれども、そこには東大、IPMU、東北大とKEKが参加し、その外側の中央飛跡検出器には大阪市大、それから核物理研究者のコンソーシアムというのがありまして、この人たちが参加しています。粒子の種類を識別するTOP検出器というのとA-RICH検出器というのがあるんですが、そこには名古屋大、首都大学東京、新潟大、千葉大、東邦大の研究者、一番外側のカロリメーターについては奈良女子大が参加している。あと、検出器だけではなくて、先ほど言いましたコンピューティングに関しても、各大学が計算機を持ち寄る形で貢献していまして、これはシミュレーション事象で、事象を生成した、色分けは各地域の貢献度を示しているんですけれども、緑で一番上に載っているのが日本の貢献で、きちんとしっかりした貢献をしています。
 こういった参画をする中で、これは日本だけでやっているわけではなくて、各国の研究者と一緒にやっているわけで、そこでビジビリティーを発揮するというのはそんなに容易なことではありません。中には大学の研究室で、TOP検出器というのは全く新しいアイデアで作られている、新しいタイプの装置でして、ちょっと手前みそになって恐縮なんですけれども、それを独自に考案して建設を主導しています名古屋大の例であるとか、あと東大のIPMUには、半導体検出器を製作するクリーンルーム、ファシリティーが整備されていまして、そこに研究者が集まって製作して、それをBelle検出器に持ち込むという形でやっています。そういった例もあります。
 以上Belle II実験について紹介させていただきましたが、この実験は日本がホストする大型国際共同実験としておおむねうまく進行していると思います。ですので、ILCではホスト研究機関が、いわゆる全国共同利用研ではなくて、国際研究機関になると、規模も4倍強に増えていくと考えられるわけですけれども、Belle II実験での実績を生かして進めることが可能だというふうに思います。
 一方で、やはり大学研究者が指導性を発揮する上で改善すべき点というのも、私見ですが幾つかありまして、それを紹介させていただきます。1つ目のポチは、日本人研究者、大学のビジビリティー。やはりプロジェクトが大型化してきますと、大学の個々の研究室レベルで目に見える貢献をすることは容易でありません。資源を研究所に集中することで効率的な面もありますけれども、国際共同実験においてはどうしても大学が埋没しかねないというところがあります。あと、インカインド・コントリビューショで進んでいるわけなんですけれども、各国は特定のサブ検出器、Belle IIの場合には、例えばドイツであれば崩壊点検出器、PXDと言われているものであるとか、残りのヨーロッパの国はSVDと呼ばれているところ、アメリカはTOPとか、そういうふうに資源を集中投下してきます。それに対してホスト国は、やはり、先ほどの川越さんのお話にありましたように、インターフェースが必要になるとかいうことで、全てのサブ検出器に人を分散させがちなわけですけれども、それをやるとビジビリティーが逆に薄まりかねないというところもちょっと考慮していくべきこと。逆に言いますと、それだけ十分なマンパワーが必要だということです。
 それから、マンパワーだけではだめで、研究支援体制と言語の問題というのがあります。やはり、これは日本の研究所の特質もあるのかもしれませんけれど、テクニカルサポートです。例えば現場でクレーン作業をやるとか、物を作っていく上でのいろいろなテクニカルサポートです。それから事務的支援というのが必ずしも十分とは言えないし、あったとしても英語対応が不足になってしまって、例えば現場で物を組み上げていくときに、クレーン作業など、いろいろなことを結局日本人が間を取り持ってやらないといけないとか、インカインドで物が運ばれてくるんだけれども、成田の税関から電話が掛かってきて、日本人の研究者が成田まで出掛けていくとか、そういう細かいことが日々起こる。それで大学を含む日本人研究者がサポート業務に忙殺されるという傾向はやはりあります。その辺は市川さんなんかも大分経験されていると思うんですけれども、それから、大学院生の教育です。やはり研究所と大学ということでミッションが異なります。ただ、研究所のスタッフもやはり高い専門性を持った物理研究者ですから、一緒に大学院生を教育できるフレームワーク、例えば連携講座などはもっと強化して、研究所のスタッフの教育機会も増やした方がよいと思います。特に加速器、それから最近の最先端の半導体、電子回路、それからコンピューティングもそうですけれども、なかなかこういう専門性の高いところというのは大学だけではできないというところがあると思います。
 それから、大学の国際化。これは、5分の4が外国人で、大量の外国人がKEKに来ているわけですけれども、残念ながら皆さん、KEKでの仕事が終わったら、成田から帰ってしまいます。それは非常にもったいないことだと僕は思っていて、そういう外国人研究者が来日するメリットというのを、大学も含めたコミュニティレベルでの国際化につなげられないかということはあると思います。事例として、これも手前みそで恐縮ですけれども、名古屋大では研究大学強化促進事業というので、この重フレーバー素粒子物理学国際研究ユニットというのをやらせていただいていまして、今、私をリーダーに、外国人の客員教授、それから外国人の特任准教授と、あと特任教員であるとか協力研究者というのを入れた、それから英語対応がきちんとできる事務職員、そういうので構成されるユニットというのを動かしています。常勤の外国人は1人増えただけなんですけれど、やはり留学生のメンタリングというのは確実にうまくいきますし、それから教育にも、大学院生の研究指導、それから学部の講義にもコミットしていただいていまして、大学での英語教育であるとか、そういうところにも活躍いただいています。

【観山座長】  先生、ちょっと急いでいただけると。

【飯嶋委員】  すみません。それで、こういうふうにうまくいっていると思うんですが、今後の大規模国際共同実験におけます国内の協力体制としては、こういう研究所と大学の研究センターが連携したコンソーシアムというのを構築してはどうかと考えました。研究所以外の大学にも、先ほどの例にありましたような検出器を製作する拠点、それで検出器を導入していく、あるいは実験で得られたデータを解析するネットワーク、そういうものを構築して、リアルタイムに解析できる体制を作る。それから、研究所と海外研究機関というのがありますが、こういう矢印だけではなくて、大学との矢印、こちらに来ている外国人研究者を環流させていくというのもあるし、大学を通して参加していくというようなことも可能かと思います。それから、研究所と大学内での人事交流による大学院教育です。やはりそこの研究、実験で得られた研究成果を情報発信していく、これも大学が大学の近辺のコミュニティに積極的にやっていくということで、大学のビジビリティーも確保されるし、あと得られた科学成果というのは、ほかの分野、例えば理論研究や宇宙の研究などにどうできるのかということを、そういう知的探究をやっていくというのは大学でむしろやっていくべきことかなというふうに思います。
 すみません、長くなりました。最後まとめますけれども、3つにまとめてみました。読み上げません。以上です。

【観山座長】  どうもありがとうございました。それでは、どうぞ。

【横山委員】  大変成功されていると拝見しているんですが、お教えいただきたいことは、コラボレーターがどういうふうに順調に、現在の750人まで増えられたのかというのを、競合相手との関係で少し理解したいと思います。初期のBelle実験ではPEP2が走っていて、そことの競争になって、日本が見事勝って、PEP2が早くにシャットダウンしたと記憶しています。その際、例えばアメリカからのコラボレーターの流入があってコラボレーションの人数が大きく膨れたのかどうか。あるいは、今は同じサイエンスを目指すLHCbが走っていますが、そちらのコラボレーターとの競合があるのかどうか。むしろBelleの方が先に走っていたから、Bをやりたい人たちはこちらの方に先に集まっていて、Belleの方が非常に有利なコラボレーターを集められているのかどうかという点をお伺いしたいと思いました。
 といいますのは、ハイルミノシティ、LHCとILCが今後どうやってコラボレーターを獲得していくのかというときに非常に参考になるかなと思いまして、よろしくお願いいたします。

【飯嶋委員】  まず、横山さんおっしゃられたように、元々はBelleとBaBarという実験グループがありました。双方がスーパーBファクトリーというのを最初はやろうとしていたわけですけれども、競合相手の、これはイタリアで建設をやろうとしていたわけなんですが、その計画が途中でストップしまして、その研究者がこちらの方に流れてきたというのが1つ、外国人研究者が増えたことの要因です。もう一つは、ドイツがこれだけ入っています。これはやはり、崩壊点検出器で一番中央にある検出器、そこに関する専門性を彼らが有していて、彼らはそれを実際リニアコライダーに使おうということで開発を進めていたわけですが、その部隊が大挙してこちらに来たというのが2つ目の大きな要因かなというふうに思います。
 それとLHCbとの競合関係ですけれども、2つともサイエンスとしては同じテーマを掲げておりますけれども、やはり実験手段が違います。こちらは電子陽電子で、比較的バックグラウンドの少ない状況で実験をやる、向こうは陽子陽子衝突で、バックグラウンドは少しきついけれども、大量にB中間子が生成されると。お互いにメリット、デメリットのあるところでして、そこで競合がうまくいっているということだと思うんですけれども。

【観山座長】  永宮さん。

【永宮委員】  たくさんありますが、1つか2つだけにします。お金の話なんですが、僕は昔ブルックヘブンで、PHENIXという実験を立ち上げた頃、これはもっと少ない400人ぐらいのグループですけれども、それだと、外国のお金を導入すると、アメリカがマッチングファンドとしてお金を工面してくれて、大体50-50にするように努力しました。これは古い話だから、もう今は通用しないかもしれない。それで、Belleの場合ですが、人数は5対1で2割が日本となっていますが、ファンディングも5対1になっているんですか。

【飯嶋委員】  そんなことはないと思います。加速器についてはやはり日本ですし、測定器についても……。

【永宮委員】  加速器は別の課題です。

【飯嶋委員】  加速器は別として、測定器の方も、ちょっと今、ちゃんとした数字はないんですけれども……。

【永宮委員】  分かりました。それでは、ILCではどういうプリンシプルというか、どういう感じで動くんでしょうか。ホスト国とホスト国でない、大体の分担ですけれども。

【川越委員】  それは測定器に関してですか。

【永宮委員】  はい。測定器に関して。

【川越委員】  それは、ホスト国とかは今のところ関係なく、参加チームが、例えば先ほどみたいに目安は人数で、それを目安としてお金を持ち寄ることになると思います。ホスト国だからたくさん出すということにはならないと思います。

【永宮委員】  そうすると、全く新しいスタイルになっていくんだと僕も思うんです。我々がやっていた時代とは違って。ホスト国以外のところから、物すごいお金を集めて検出器を作るのは、非常に大変な作業だと思うんですよね。それが全体の9割が外国の寄与にもなったら、やはりかなりしんどいことになる。しかし、分かりました、大体。

【山本(明)委員】  議論はやはり、先ほども申し上げましたように、2割程度はホストインスティテューションになる。ILC研究所相当が、ホスト国ということにもなると思いますけれども、屋台骨になるような、基盤になるようなところをサポートするという点は前提にはなる。ただ、それ以上のことはやはりしないですよということもかなり明確に言っていて、加速器の側と、ないしは研究全体の話と、ILD、SiDの協議の中ではきちんと、実験グループが人もお金も皆さんで持ち寄って、基本的には8割レベルのことをきちんとマネージするというのが前提だと思います。そうでいいんですよね。

【観山座長】  やはり整理するといいと思います。今日はできないですけれども、全体の報告書を書くときに、今言いましたように、加速器というか研究所の方のコントリビューションと、それからマネジメントの責任とどういう分担になるのか。それから個々の観測機器に関して、先ほど紹介あった2つのものについては、言ったらどのようなコントリビューションで、どのような平等性なのか、それとも責任なのか、マネジメントどうなるのかというのを少しまとめていないと、共通認識がなかなか得られないので議論の前提があれですが、ちょっと聞くと非常に、何ていうか民主的なような気もするけれども、反対に言うと、割とコスト少なく参加してマネジメントをとると一番コストパフォーマンスが高いのではないかというふうに聞こえてくるので、多分そんなことはないと思うので、だからそこら辺の本質がまだよく我々見えていないところもあるので、少し整理した方がいいと思います。

【飯嶋委員】  多少このプロジェクトは、元々はBelleという、一応日本が大半を占めていた国際共同実験が母体になってスタートしているという歴史的経緯もあって、その後外国人がどんどん増えていったというところで。

【観山座長】  だから非常に好ましいのは、日本の非常にすばらしいアイデアというか学術的な部分に対して海外の研究者が集まってきて、なおかつそれは人でもあり、マネジメントでもあり、資金でもあるというのが望ましい姿だと思うんですけれども、日本的なプレゼンスを高めるという面では。ただ、それはなかなか、我々の期待に応える部分もあるし、応えていない部分もあるんだと思いますけれども。

【飯嶋委員】  一流の人が集まってくるというところでは成功していると思うんですけれども、それに伴って資源が全部きちんと来ているかというところは、ちょっと検討が必要かと思います。

【観山座長】  はい。ほかには。あと1つか2つ。
 どうぞ。

【佐藤委員】  研究者の取り合いというか、いろいろなところで同じような研究をやる場合に、その資源のそれぞれのプロジェクトでの取り合いという話がちょっとありました。例えば10ページでいろいろなディテクターを作られているわけですけれども、こういう特殊なものに対応するメーカーというのは意外と重なってしまうのではないかという気もします。そういうものがうまく各プロジェクトの中で共有してコントロールされているかということをお聞きしたいと思います。それから、今回Belleのディテクターマグネット、ソレノイドそのものは作り直さなかったですが、やはりATLASですとかBelleですとか、かなり特殊な技術を要する磁石を、SiDでもそうなんですが、作っていかなければいけないんですが、我々も海外からいろいろなお話を頂いても、なかなかそれがうまく、事情で受注できないこともあって、そういうことができる特殊な技術者というのがだんだん年をとってきてしまうという事情もありまして、是非、加速器もディテクターもそうなんですけれども、メーカーに対するマネジメントということも考えていただければと思います。国内だけで考える必要はなくて、世界的にどういうふうにサプライチェーンを確保していくかということを是非考えていただけたらなと思います。なかなかうまく自分たちでキープしていくというところが難しいところもあって、よろしくお願いいたします。それはディテクターもそうかなというふうに思います。

【観山座長】  一般的に、しかし国際協力の場合にはインカインドが多いですよね。そうすると、各国は各国にあるメーカーにインカインドで持っていくというのが一番やりやすい形で、ただ、それがキャッシュが集まっていれば、国際的に一番安いところで、一番技術力あるところで作るのですが、なかなかそこら辺の兼ね合いが難しいのが。
 どうぞ。

【山本(均)委員】  確かにインカインドで、それぞれ各国のグループがアイデアと、それからお金を持って、また集まって、例えばセントラル・ドリフト・チェンバーなら、幾つかのインスティテューションが集まってやるんですけれども、実際にどこから買うかというときには、もう本当に世界中探します。それでテストをして、例えば浜松の半導体であるとか、ヨーロッパの半導体であるとかテストをして、やはりベストなものが、また会社として信用のあるところというのをやはりとりますね。だからその辺のことというのは、インカインドだからその国というわけではないです。

【佐藤委員】  ですから1社に固まってしまうということが起こらないかなというところが。

【山本(均)委員】  そういうことも時々ありますけれども、例えば浜松みたいに非常に優秀な会社というのは、あらゆるところから発注されるというようなことにもなります。

【観山座長】  ほかにいかがですか。よろしいですか。
 ちょっと時間も押していますので、最後に少し時間があればまた戻りたいと思います。それでは、三原科学官、お願いいたします。3時には終わりたいので、よろしくお願いします。

【三原科学官】  三原でございます。よろしくお願いします。
 今までのお話は、実験グループの中でどういうマネジメントが行われているかとか、あるいは前回はラボのレベルでどういうマネジメントが行われるか、あるいは行われるべきかというような話があったと思うんですけれども、きょう私はこういうタイトルで話をしようと思います。何を報告しようと思っているかというと、ラボ同士がどういう力学でもって動いてきたか、どういう研究を進めるべきかということを、どういうふうな方針で、あるいはどういうふうな話し合いでもって決めてきたのかというのを考えるための材料として、こういう報告をしてみたいと思います。
 これが目次でして、最初に、きょうはスイスとドイツの大型加速器を持つ研究所を取り上げますが、その御説明をした後に、それぞれの研究所でどういう研究が行われてきたのか等御説明して、最後にまとめを述べたいと思います。
 一応きょうのお話は、ここに名前を挙げてある方々にインタビューしまして、その方々からの情報に基づいてお話を作ってあります。最初が、DESY元所長のアルブレヒト・ワグナー氏、それからPSI、これはスイスの国立の研究所です、こちらの所長を務めておられ、かつその後ETHの学長も務められて、スイスの大学からどういうふうに研究者をサポートし、研究所で研究を行えるような環境を作ってきたかというのに非常に豊富な経験をお持ちのラルフ・アイヒラー氏と、それから、PSIのほぼ初期の頃から現在に至るまでずっと研究を続けてこられているクラウド・ペティジャン氏と、最後に山田作衛東大名誉教授で、先ほどもお名前が出てきて、ILCでも随分御活躍をされた方ですけれども、きょうはこの山田作衛さんにはDESYにいた研究者として、DESYでどういう研究の移り変わりが起こったのかということを教えていただくためにインタビューをさせていただいたことをご報告します。
 最初に欧州と言いましたが、特にCERNに地理的に近いスイスとドイツを取り上げまして、きょうはこの3つの研究所のお話をしたいと思います。CERNについてはもう既にいろいろなところでお話が行われていますので、あえて詳しく述べることはいたしませんが、現在、陽子陽子衝突型加速器のLHCでATLAS、CMS実験、あとはALICE実験、LHCb実験等、大型の実験が行われている研究所であります。
 同じスイスの国の中に実は、比較的大きな加速器を持った研究所としてポール・シェラー研究所というのがございます。場所はチューリヒ郊外の、ドイツとの国境近くでして、こちらには大強度陽子加速器であるサイクロトロン、それから放射光施設と、最近になってフリーエレクトロンレーザーの施設も建設して、スイスの国がほぼ100%ファンディングをサポートして、研究を進めている研究所があります。
 もう一つは、今までも話が出てきましたDESY研究所でして、ハンブルグにあります研究所で、これはキャンパスのレイアウトですけれども、ごらんのように幾つも小さな加速器があって、かつ、大きな点線で描いてありますけれども、これがHERA加速器です。ここで多くの素粒子物理の研究がやられてきましたが、現在はキャンパス内では主にヨーロピアン・フリーエレクトロンレーザーを使った研究が始まろうとしていますし、それから放射光施設のPETRA3、PETRA4を使った研究というのも行われております。
 これは現在の姿でして、要するにCERNではLHCが行われ、DESYではXFEL、PETRA、それからスイスではサイクロトロン、SLS、FELというのが動いているわけですけれども、どういう力学でもって、こういうそれぞれの特徴を持った研究が行われるに至ったかということをきょうは御紹介したいと思います。
 これは、それぞれの研究所でどういう加速器を建設してきたのかという年表であります。一番左がCERNで、真ん中がDESYで、右がPSI、PSIは昔はスイス・インスティテュート・オブ・ニュークリア・スタディー(SIN)と言われていまして、要するに半分は原子力の開発研究をやっていて、半分が素粒子物理の研究をやっていたんですが、あるところで名前をPSI、ポール・シェラー・インスティテュートという名前に変更して、現在に至っています。
 歴史的に見ると、CERNというのは陽子加速器を使った研究というのを主に進めてきました。57年、59年と加速器を作り、さらに76年にはSPS、スーパー・プロトン・シンクロトロンを作り、その後、衝突モードで運転することで、83年にW、Z粒子の発見というのが行われています。一方、DESYはこれと対照的に、基本的には電子加速器を使った研究というのをやってきまして、川越さんのお話にもありましたように、DORIS加速器を使った研究が先駆的です。その後直ちにPETRA加速器というのを開発しまして、常に電子陽電子衝突型加速器を使った研究というものを進めてきたんですけれども、ここのW、Z粒子の発見という、これは物理の歴史の中で非常に大きなイベントだったわけですけれども、これが起こった後にヨーロッパで大きな転換が起こりました。
 それがここに引いてある点線なんですけれども、この後何が起こったかというと、CERNの方では、それまで進めてきた陽子加速器による研究というのをそこでやめて、新たに、LEP、つまりは電子陽電子の衝突型加速器を建設するということを決めます。そしてその建設をして、89年には実験を開始して、その後そのLEPからLHCへとつながって、現在の高エネルギーフロンティア実験の主役を担っている研究所というふうになっています。
 一方、DESYは、それまでずっと電子陽電子でやっていたんですけれども、電子陽電子加速器がCERNの方に行ってしまったので、DESYで何をやるかといったときには、ほぼ同じ時期に行われたのが、先ほど川越さんの話にも出てきましたように、HERA加速器による素粒子実験です。電子あるいは陽電子と陽子との衝突型加速器を使って、陽子の精密な構造を調べるというような研究が行われてきました。その後、TESLAプロジェクト、これはリニアコライダーで、ヨーロッパでのリニアコライダープロジェクトと、XFEL、フリーエレクトロンレーザーのプロジェクトというのが始まったんですが、最終的にドイツ政府によって認められたのは、こちらのXFELの方だけで、現在DESY研究所ではXFELを使った研究というのが進められようとしています。
 一方、非常に地理的に近いところにあるPSIなんですけれども、CERNとの関係というのはなかなか複雑でして、最初に陽子加速器を74年に作ります。これはエネルギーの低い加速器で、ただし強度が非常に高いという加速器を作り、世界に3つできた中間子工場のうちの1つとして研究を開始します。PSIの非常に特徴的なのは、この加速器を使って延々、ずっと今に至るまで研究を続けているところで、この加速器を使いつつも、いろいろなことをやってきました。非常に特徴的なのは、加速器の運転を始めてほぼ10年後には陽子線治療というのを開始して、現在、ヨーロッパの陽子線治療の中心的な研究所となっています。それから、この陽子加速器を使うだけではなくて、一方で放射光施設を作ったり、最近になってフリーエレクトロンレーザー施設を作ったりして、スイスの中にあって、CERNという研究所が同じ国の中にあるんですけれども、非常に特徴的な加速器を備えることで研究を進めてきている。特に素粒子物理に関しては、CERNと競合することなく、CERNが高エネルギーのフロンティアを目指して研究を進めているのに対して、PSIは大強度の加速器でもって高強度のフロンティアを目指した実験を進めているというふうになっています。
 DESYにおける研究というのをもう少し詳しく見てみると、DESYのキャンパスで行われている研究というのは、実はここに書いてある研究が主な研究でして、このうち素粒子物理の研究というのは1つだけで、ALPSという実験だけです。ただ、DESYにも当然素粒子の研究をしている研究者がおりまして、その方々は何をやっているかというと、LHCやIceCube、Belle、Belle II、CTA、ILCといったように、ほとんど全てがDESYの外で行われている研究です。ただし、DESYはこういう施設を持ち続けることで、加速器を建設し、運転する技術というのは常に所内で維持しているという状況を保ちつつあるというふうに伺っております。
 もう少しDESYの研究を詳しく見てみると、国立の研究所で、年間予算はおよそ231ミリオンユーロです。現在はフォトンサイエンス、それから加速器の科学、素粒子物理の実験的研究というのは、先ほど言いましたように主に研究所の外でやられていますが、こういう研究を進めています。先ほど年表のところでお話ししましたけれども、ある時点で、電子陽電子をやっていたDESYが電子陽子加速器にスイッチして、CERNが陽子陽子で、陽子を使った研究をしていたのが、電子陽電子というふうに変わったように、常に相補的な関係を維持していて、直接同じ種類の加速器を建設して対立するということは行わずに、建設を行ってきたという歴史があります。
 特徴的だったイベントというのは、CERNがLEPを建設したとき、DESYはHERA加速器を建設して研究を進めていくということを決め、DESYはそのHERA加速器の研究を進めるときに、ほぼ同時に既にもうTESLAプロジェクト、XFELプロジェクトというのを将来計画として据えていて、それにうまくつなぐように研究を進めてきています。
 こういった、どちらの研究所でどういう研究をするのかというのは、ヨーロッパでは常にECFAで話し合いが行われてきたというふうに聞いています。ただ、そのECFAで決断が行われたわけではなくて、常に話し合いが行われて、最終的な決断というのはあくまでそれぞれの研究所が決断をして、研究所が国に対してファンディングを要求する。そのファンディングが認められると研究を開始するというスタイルで、それぞれの研究所は加速器研究を進めてきたというふうに聞いております。
 HERAプロジェクトというのをもう少し詳しく見てみますと、ここでは3つの国際共同実験が行われました。先ほどから少し話がありましたけれども、加速器の建設というのは基本的にホスト国が全額サポートするということなんですけれども、このHERAの加速器の建設に関しては実は少し違っていて、HERAモデルというものが採用されました。これは11か国がHERAの加速器の建設の全体の20%を負担して、インカインド・コントリビューションでもって加速器の建設に協力をしたというふうに伺っております。これをやる際に、国同士で決して条約を結ぶことはなく、MoUレベルの合意でもって建設を成し遂げたと、非常に効率的に加速器を建設した例だというふうに聞いております。ただし、こういうふうなことをやる際には、これは、このILCに関していうと恐らく人材のところで話があったと思うんですけれども、こういう形で加速器を建設しようとすると、サイエンスをやる人間、研究者、それから加速器の技術者等は、やってきて、ここで建設するという分には全然問題はなかったんですけれども、長期間にわたって自分の所属する研究所からDESYに来て、ここの建設にコントリビュートするというようなことが起こると、どうしてもやはりアドミニストレーティブな問題が多かった。それを解決するためにかなりの労力が必要だったということを聞いております。
 こういう加速器をドイツで建設する際に、当然ドイツはCERNにお金を供出して、そこで素粒子の本道と言われる電子陽電子加速器の研究が行われるわけなので、こういう加速器をドイツで建設することに対して何か反対のような意見があったのかどうかということをお聞きしたところ、実際には、そういう議論は当然あったんだけれども、やはりこういう加速器を作る技術というのをローカルに持ち続けていくことというのが非常に重要視されたので、国からの承認も得られて、加速器の建設を行うことができたというふうに聞いています。また、先ほども言いましたけれども、このHERAプロジェクトの先にTESLA、それからXFELという将来プロジェクトがはっきり見えていた。これはDESYが持っている技術に基づいて、こういう研究も可能であるということが示せたということが非常に強かったというふうに聞いております。
 当然、研究所がこういう大きなプロジェクトを進めるときには、ほかの分野との競合もあったそうなんですけれども、その点はドイツ国内のサイエンスカウンシルで議論して、TESLA、XFELプロジェクトというのは特に非常に高い評価を受けていた。ただし、財政的な面でTESLAプログラムというのはアプルーブされずに、XFELだけが現在残っているというふうに伺っております。
 これがHERAモデルを説明した1ページのパンフレットで、こういうふうに非常に詳しく述べられた書き物もありますので、是非ごらんください。詳細はきょうは御説明いたしません。
 それから、もうPSIにおける研究について、残った時間で少し紹介したいと思います。PSIには、74年に建設されたサイクロトロン加速器施設がございます。ここにあるのがサイクロトロンです。590MeVと、比較的低いエネルギーの加速器ですけれども、陽子ビームの強度が非常に強くて、大強度の陽子ビームを供給できる施設となっています。この加速器を使って、素粒子実験としては現在もう2つしか行われていません。1つがミューオン実験と、それから中性子の電気双極子モーメントを測る実験、この2つだけが主に行われて、あとはミューオンソースでμSRを行うための施設と、それから、こちらにあるのが、中性子を供給して、中性子による物質科学を進めるための施設というのが運転されている。それ以外には、既に紹介しましたように放射光施設とフリーエレクトロンレーザーというのがあり、非常に特徴的な施設として陽子線治療も行っています。
 それと、PSIは加速器を持っているんですけれども、加速器を使わない研究というのも最近は盛んに行われていまして、スイスは再生エネルギー研究に非常に力を入れているので、これに多額の予算を割いていたり、それから歴史的に原子力の研究というのも今も続けていたりしています。
 これがPSIの現在の予算の割り振りで、ちょっと小さくて見えませんけれども、特徴的なのは、PSI研究所ができた最初の頃というのは、最初に言いましたように、ほぼ年間予算の半分が素粒子研究のために使われていましたが、現在素粒子研究というのは縮小されて、本当にここの研究所でしかできない研究だけを進め、あとはほかの研究を進めるという方針をとっておりますので、現在素粒子物理に使われている予算というのは8%まで縮小され、ただし非常に特徴的な研究を行うということを実現しています。
 あと、PSIが歴史的にいろいろな計画を立てては実現せずに、現在の研究につながったという例がこちらに書いてありますけれども、少し細かいのできょうは省略させてもらって、1つ強調したいのは、CERNというのが同じ国の中にありながらも、こういう独自性のある研究を続けてこられたというのは、方針を大強度フロンティアの素粒子研究というところに置いて、そういう研究を進めているということに重点を置いてやってきたからだというふうに伺っております。
 これは既に申したようなことですけれども、スイスの国内にCERNとPSIという2つの加速器を持つ研究所がありますが、当然スイスはCERNに対して、加盟国として年間30ミリオンスイス・フランを供出しているんですけれども、聞くところによると、CERNは実際には80ミリオンスイス・フランをスイス産業に支出しているので、スイスの国にとっては、このCERNというのは、もうあるだけで非常にありがたい施設だと、かつ、そういう研究所がありながらも、独自に自分のところで技術を保ち続けるためにPSIという研究所を運営して、そこに年間400ミリオンスイス・フランの予算を投入しているというふうになっています。ただし、そこで行われる素粒子研究というのは非常に絞ったものだけを行って、ミューオンの実験と中性子の実験だけが行われていて、それ以外の研究というのをより盛んに進められるようになってきています。
 PSIは、こういう非常に特徴的な研究を進める、どうしても国の中にCERNという研究所があるので、そこで大々的に素粒子の研究をするのではなくて、特徴的な素粒子の研究だけを進めつつ、かつ、さらに独自性を高めるために、PSI研究所というのは企業との関わり合いというのを非常に積極的に取り入れることに力を注いでいるというふうに聞いています。こういうことをやりつつも、やはり加速器技術を維持しているということは、新しい施設を作るときにやはり必要になるということと、かつ加速器の技術、それを維持してくることというのは、人材育成にとっても非常に有益であったというふうにアイヒラー所長はおっしゃっておられました。こういう観点からも加速器技術を維持して施設を運営していくことというのは非常に重要で、そこでできる研究というのを、常に新しいものを探し続けて運営していくことで、ラボの独自性を持って大きな科学的成果を出し続けることに成功しているというふうに聞いています。
 最後にまとめですけれども、御存じのようにヨーロッパというのは、この大型加速器を使った素粒子研究で非常に大きな成果を上げてきました。現在、その中でも高エネルギーフロンティアの素粒子実験というのは、もうCERNに集約されて行われているというのは御存じのとおりだと思います。きょうはスイスとドイツについて報告しましたけれども、その周りにある加速器を有する研究所というのも、CERNとの関係をうまく保ちながら、かつ独自の技術でもって、自由電子レーザー施設や大強度の陽子加速器施設等をもってオリジナルな研究を続けることで、高エネルギーフロンティア素粒子とは違う形で研究を進めてきております。
 加速器を作るときというのは、常に、そこでどういう研究が行えるかというのが重要なんですけれども、インタビューした方々の皆さんおっしゃったことは、どういう加速器技術が使えるのかというのに加えて、これが使えて、それがどういうふうに将来展開できていくのかということも考える必要があると。こういう意味で、常に加速器技術をそれぞれのラボが持ち続けていることは重要で、そういうことがあるおかげで研究の多様性を持って、将来にわたって独自性を維持したまま研究を続けることができるだろうというふうにおっしゃっておられました。
 きょうは3つの研究所を取り上げましたけれども、特にDESYとCERNという2つの大きな研究所の関係というのは、そこでどういう研究を進めるべきかということに関してはECFA、ここでもっていろいろな議論が行われて、それぞれの研究所がそれぞれの国に予算要求をして実現するという形をとってきました。このやり方はこれからも大きく変わることはないでしょうし、やはり科学者コミュニティの間で話し合いを行って、そこでどういう研究を進めるべきなのかという合意を得た上で研究が進められていくべきだろうというふうに考えています。HERAの実験についてきょう紹介しましたが、ここでは加速器建設に関してHERAモデルというものが採用されて、多国チームでもって加速器を作った最初の例で、MoUに基づいて非常にうまく加速器の建設を成功された例だというふうに思います。
 最後に、これもインタビューした方々皆さんおっしゃられたことですけれども、CERNというのは最終的にLEPを作り、それからLHCに行き、今はHigh-Lumi LHCに動こうとしているけれども、こういう非常に大きな加速器施設の建設が行え、かつ将来計画を明確に作れたというのは、やはり条約に支えられた安定的な予算の確保というのが可能だった、これが非常に大きな要因であっただろうというふうに皆さんおっしゃられておりました。ただし、こういう条約を作ることはそれほど容易ではないよというのは皆さんコメントしてくださいまして、これはやはり60年に及ぶ歴史の中で作られたものですので、前回、山内機構長の方からもお話がありましたけれども、どういうマネジメントでもってILCラボを、研究所を立ち上げていくのかというところは、CERNは非常にいい例ですけれども、必ずしもそれに倣ってできるわけではないだろう、それほど簡単なことではないということを、今回インタビューした皆さんからコメントとして頂きました。
 以上です。

【観山座長】  どうもありがとうございました。

【永宮委員】  三原さんにちょっと申し訳ないけど、CERNというのとDESYと2つ挙げられたので、この2つは非常によく練られたものだと思うんですけれども、CERNというのはそもそも多くの国が集まって作った研究所なんですよ。だから日本にそういうのを作ったところで、どこに作るかなんかも決めながら、アジア全体で協力して作っていくCERNみたいなのはあり得ると思うんですが、ILCの場合、僕はDESY型に近いと思っているんです。要するにインターナショナルプロジェクトとしてスタートして、分担割合をある程度決めて、それでDESY型を、もう少し負担割合なんかを変えながらやる。
ドイツの場合は、DESYを作った後、ドイツの政府は大体インターナショナル型にするようにしたんです。そうすると、クオリティーコントロールというのが一番重要になって、僕の知っているGSIというのでは75%ドイツ、25%外国という割合ですが、そういうのを元々協定してしまうと、土地代なんかが上がったりすると、それは全部ドイツ分になって、結局、他の国はもっと払わなければいけないとか、そういう事態が起こるんです。いずれにしろ、GSIの建設がかなり遅れているのは、やはりクオリティーコントロールがうまくいっていないからなんですね。これは、僕はILCのときに重要な課題になってくると思うんです。

【観山座長】  ほかにいかがでしょうか。

【中野委員】  ICFAと、それから研究機関と政府という3つのところが非常によく協調してというか、それぞれの役目果たして進んでいるというので感銘を受けたんですけれども、こういう大きなピクチャーというか、次に何を作るか、どういう分野に進むかという大きなピクチャーを立てているのはICFAというので間違いないんでしょうか。

【三原科学官】  これはインタビューした方々皆さんおっしゃっていたんですけれども、どこで議論をするか、どこでオフィシャライズするかというのはECFAあるいはICFAだというふうにおっしゃっておられました。ただし、それまでにやはりプライベートなコミュニケーションというのが非常にたくさん行われていて、それがあった上でICFA、ECFAでの話し合いというのが行われたというふうには聞いています。

【中野委員】  分野の壁とか機関の壁とか、いろいろなものを越えないといけないですよね。

【三原科学官】  そうですね。

【中野委員】  それはどうしてそういうことが可能なんでしょうか。

【三原科学官】  分野の壁というのは大体、1つの国の中に大体起こることがほとんどです。要するにこれだけインターナショナルにプロジェクトを進めているというのは、基本的に素粒子物理しかないので、分野間の間でいろいろな議論が起こるというのは、それぞれの国で起こっていたというふうに聞いていますけれども、それはそれぞれの国が持っているサイエンスカウンシルでもって決断をしていた。例えばTESLA、XFELというのはドイツの中で非常に高い評価を受けていて、それはサイエンスカウンシルでもトップレベルの評価を受けていたんですけれども、最終的にゴーサインが出なかったのは、財政的な問題で出なかったというふうに聞いています。そういう分野間のいろいろな問題の解消というのは、それぞれの国のレベルでサイエンスカウンシルが責任を持って解いていたというふうに聞いています。

【観山座長】  今のは非常に、インタビューとかをされて、よく分かりましたけれども、例えばこれをILCの形に戻していくと、ILCができたとしても、適切な国内の加速器研究機関が必要だと思われているということですか。

【三原科学官】  私の意見として、この調査をした結果として、やはり財政的に今の状況を維持したまま新しい研究所を作るのは難しいだろうと。それはDESYの例を見れば分かるように、DESYはあるプロジェクトをとめながら、次のプロジェクトを開始する、HERAが終わったときに次にTESLAをやろうとし、XFELをやろうとしたというふうに、あるプロジェクトをターミネートすることで、次のプロジェクトを開始するということが起こってきた。ただし、全部をやめてしまうと、それぞれの研究所が培ってきた技術というのが全てなくなってしまいますので、加速器の技術として維持していくことは非常に重要だけれども、どのプロジェクトを進めていくのかということは常に議論をしながら決めていかないといけないというふうに思っています。

【観山座長】  国際研究機関ですぐさま大学院教育とか、そういうものはなかなか難しいので、もちろんそういう場合もありましょうが、ある程度の国内施設というものの必要性みたいなものは分からないでもないけれども、一方で、例えば研究者だとかマネジメントがそういうふうに、言ったらホストもやって、ほかの研究機関を支えるだけ、人材とかお金だとか、それからマネジメントに関わる人だとかというのが可能でしょうか、日本の場合。

【三原科学官】  例えば研究者の例について見ると、DESYで今行われている研究を見てみると、ここにありますように素粒子の研究をしている人たちというのはいるんですけれども、例えば外の研究所に行って研究をしている。DESYでずっとやってきた高エネルギーの実験というのが終わって、CERNでLHCが始まると、DESYの職員でありながらLHCでの研究に参加して、そこで研究を進めるという、こういうスタイルでももちろんやっているので、例えば今高エネ研というところで仕事をしている人たちが、ILCラボができたときに、高エネ研に籍を置いたままILCで仕事をする、研究を進めるというのは常にあり得るというふうに思います。

【観山座長】  それは十分考えられるんだけれども、では、その高エネ研が維持できるかと。

【三原科学官】  今と同じ規模でというのは難しいかもしれないですね、それはどこまで……。

【観山座長】  DESYなんかはどういうふうにやっているのかなと。

【三原科学官】  DESYは、素粒子の研究を縮小したんだけれども、それ以外にこういう新しい研究、新しい施設を作ることで、研究所としての規模は保ちつつ、研究する内容を変えていきながらアクティビティーを保つということをやっています。

【観山座長】  ドイツには放射光とかという装置は、DESY以外にはないんですか。

【三原科学官】  放射光の施設を持っています、DESYは。

【観山座長】  DESY以外にはないんですか。

【三原科学官】  DESY以外にもありますけれども、ドイツにあるのは、代表的なのはDESYにある施設ですね。それと、最近できたフリーエレクトロンレーザーというのは非常に特徴的な装置で、ヨーロッパに今1台しかない。

【観山座長】  違う分野の人が随分入ってきて、今のDESYを支えているという。

【三原科学官】  そうですね。元々素粒子の研究所としてDESYは出発したんですけれども、現在DESYのキャンパス内で行われている素粒子の研究、実験というのはこの1つだけでして、それ以外は、ほかの研究と加速器の開発というのが行われている。

【観山座長】  はい、どうぞ。

【中野委員】  DESYの例もそうなんですが、PSIもそうで、少しだけ残してあるというのがみそというか、それがうまくいっている理由の1つではないかなと思うんですが、多分SLACなんかだったら、もう素粒子物理はやっていないですよね。だから完全にとめてしまう、そこで縁が切れてしまうというようなところがあるんですけれど、やはり素粒子とか原子核で出てきた研究所で、役目を変えていっても、素粒子と原子核の部分が少し残っていて、そういうことに対する研究所の中での理解とかそういうのを保っているということは、うまくいっている理由の1つなのではないかと思うんですけれども、どうでしょう。

【三原科学官】  これはちょっと手前みそなところがあるんですけれども、やはりやっている実験が非常にいいというのがあって、その研究は非常に絞られて行われているんですけれども、これはアイヒラー元所長がおっしゃっていたんですが、素粒子の研究者あるいは加速器の研究者というのは、本当に必要なものを自分たちで作り出す文化というのを常に持っている。例えばPSIの中には生物の研究をしている人たちがいるんですけれども、生物の研究をしている人たちが新しい研究をしようと思っても、装置がないと、そこで諦めてしまうんですが、素粒子の研究者あるいは加速器の研究者というのは、ない装置を自分たちで作ろうということを非常に精力的にやっています。そういう意味で、素粒子研究あるいは加速器研究の文化というのを、ほかの研究分野にスピンオフしていきたいと、そういう意味で素粒子の研究者、加速器研究というのをラボで続けていくことで、これが100年、200年続くかどうか分からないですけれども、ラボのアクティビティーを保つために非常に重要だというふうにはおっしゃっていました。

【永宮委員】  ちょっとよく分からないけど、そう言っておられるのは、高エネ研では、例えばJ-PARCやスーパーBなんかにかなり人が行っていますよね。そういう人を残しておきたいのか、増やしておいた方が将来いいのかという感じの議論ではないですか。DESYの人、加速器の人をどんどん物質科学とか何かに転向してもらって、それで新しい芽を作っていくというのは、それは重要ですよ。だけど今、我々が問題にしているのは、高エネ研を軸にILCをどうやって作っていくかということではないですか。ものすごく広く大きいものを新しく作るわけではない、人数的にもお金的にも。

【観山座長】  ほかの分野から集めてこなければいけない。

【永宮委員】  そういう工夫というか、減少する方向ではなくて、やはり増やす方の工夫はどういうことになるのかというのが、余り聞かれないんだけれども。

【観山座長】  田中委員。

【田中委員】  ちょっと本筋からずれてしまうかもしれませんけれども、御報告に若干違和感がありましたので、コメントさせてください。
 高エネ研さんの事情はよく分かりませんが、世界的に見ると、全ての高エネルギー物理の研究所の経営は非常に苦しく、存続が大変な状況なのですね。生き残りを懸け、フォトンサイエンスの方にDESYもSLACも転身せざるを得なかったというのが現状だと思います。許されれば彼らだってもちろん高エネルギー物理にしがみついていきたかったのだろうと思いますが、世の中の状況を鑑みると、そういう選択肢はなかったということで、今に至っていると思います。
 高エネルギー物理分野の影響力は非常に強く、その影響がいろいろなところに様々な形で残っております。DESYのヨーロピアンXFELは、ある意味でそのネガティブな影響をまともに受けて、今日、大変な状況にあるのが現実ではないかと思います。CERNとDESYの関係は、ILC研究所を日本に作った時に、KEKを残すということを想定した場合に、そんなにいいモデルになるとは思えないです。全然違うのではないかと思います。

【永宮委員】  全然違う組織を作るということですか。

【田中委員】  そうではなくて。

【永宮委員】  そうかもしれないね。

【田中委員】  ILCと今のKEKがどういうふうになっていくのかというのが、私には具体的にイメージできないのですが、先ほどの御意見はどちらかというと、KEKを残しながらILCを作っていくというふうに聞こえました。

【三原科学官】  きょうお話ししたかったのは、決して、これがいい例なので、このとおりにやるとうまくいきますよというのではなくて、今のDESY、今のCERNでこういう研究が行われるに至った経緯は、こういう力学が働いて、DESYは今オンサイトでやっている素粒子の研究というのはなくなってしまっていると、CERNで集約してやっていると。

【田中委員】  元々素粒子実験をやられていたエンジニアとか研究者の方も、かなりフォトンサイエンスの方に流れてきていて、もちろん一部は残っています。だけど、そのポーションというのが今後どうなるかというのは、そんなに先行きは明るくないと思います。

【観山座長】  そろそろ時間ですが、あと1つか2つ。

【山本(明)委員】  徳宿さんと同じかもしれないですけれども、事実としてCERNとDESYの関係、それからDESYとKEKの関係で、きょうの御報告の中にも出てきたことは、DESYがフォトンサイエンスの方に研究所としてはかじを切ったのは確かで、そして大きなマシンはフォトンの方に使われていて、素粒子としてのマシンはなくなっている。その代わりに、素粒子の物理実験のグループは非常に健全に残っていて、残っているというか、大切にされていて、CERNにも非常に大きな力を出して、CMSとATLASに人を出されているでしょうし、それからKEKのBには世界の中で最大の人数を送っていらっしゃるという形で、素粒子の方々が非常に世界をリードする仕事をDESYとしてされていることも確かなので、そういうことは1つのモデルとしてはあるかもしれないので、参考にしていただければと思うんですが、徳宿さん、何かきっとあるかと。

【徳宿座長代理】  ちょっと2つがミックスされているとは思うのです。 というのは、CERNとDESYとの関係というときにはこの何十年もの間の協力関係のことで、それとDESYが最近高エネルギーをやめてフォトンの方に力を入れたというのは、多分2つ独立して考えるのがよく、CERNで何かをやったからDESYで高エネルギーがとまったというものではないというのがあります。そこは2つ、まずきちんと分けた方がいいと思います。
 それで僕の方からは、観山座長からありましたマネジメントが両方あって大変だということに関して言いますと、やはりCERNの所長がどういうところから来ているかというのを、これまでのも見てみるといいと思うのですが、DESYの所長あるいは副所長をやっていた人が移ってきて、そこでまた非常に大きな転機を起こしているということが数あります。かつ、それはほかのところも同じで、ある国のラボラトリーをやっていた人が移るという形があって、やはりそういう意味でも各国の研究所というのは、マネジメントを作るという意味でも非常に有効です。特にCERNが陽子マシンから電子マシンに転換したときもDESYの所長が移ってきたとかいうところもありますので、そういう意味でも、人材という意味では各国の研究所というのは非常に無視できない状況だと思います。
 僕はきょうの三原さんの話で、やはりPSIに400ミリオンスイス・フランも今予算が出ているというのは非常に驚きました。そういう意味では人材育成がかなりやられているということだと思います。

【観山座長】  どうもありがとうございました。残念ながら時間になりましたので、是非もう少し議論を続けたいところでありますけれども、本日の議題としては終了いたします。
 最後に事務局から連絡事項、よろしくお願いします。

【吉居加速器科学専門官】  申し上げます。本日の議事録につきましては、前回同様、後日、出席委員の皆様にメールにてお送りしますので、御確認いただければと思います。その後、文科省のホームページにて公表させていただきます。
 次回の日程につきましては、資料4にございますとおり、4月24日月曜日13時からを予定しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。第4回以降の日程につきましても、その資料4のとおり予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
  以上でございます。

【観山座長】  それでは、どうもありがとうございました。本日の会合を終了いたしたいと思います。
 どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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