(参考1)これまでの報告書等における人材に関する記述

○ 日本学術会議「国際リニアコライダー計画に関する所見」(平成25年9月30日)

2 審議依頼を受けた各事項に関する検討
(3) ILC 計画を我が国で実施することの国民及び社会に対する意義
 1 文化としての基礎科学
 ・ILC 計画の社会的意義としては、当該分野における我が国の国際貢献や、青少年や市民の基礎科学への関心の増進を通じた次世代科学・技術人材の育成、といった事柄が想定される。これらの事柄に対する価値観が国民の間でどれだけ共有されるかが鍵となる。

(4) ILC 計画の実施に向けた準備状況、建設及び運営に必要な予算及び人的資源の確保等の諸条件
3 人的資源の確保
 ・ILC計画を我が国で実施する上で最も重要なのは、10~20年スケールで計画を主導するリーダーたちである。国際プロジェクトであるから、リーダーの国籍は問わないという考え方もあるが、我が国で実施するからにはやはり日本人がリーダーシップを発揮する態勢を整えるべきである。ILCの設計・建設、並びに、そこでの高エネルギー物理学の研究展開を長期にわたって国際的に主導するに相応しいリーダーたちが誰の目にも明らかとなることが望まれる。

  ・建設期には1000人規模の加速器関連研究者・技術者(エンジニア)・技師(テクニシャン)の参画が必要と見込まれる。仮にKEKの加速器研究者・技術者(エンジニア)を総動員したとしても300人程度であり、国内の人材だけでは大幅に不足していることは明らかである。海外からの優秀な人材を、計画のどの段階でどの程度動員できるかの見極めが極めて重要である。

3 総合的所見
 2 ILC 計画の我が国での実施の可否判断に向けた諸課題の検討
 ・ILC の我が国への誘致の判断には、本回答が提示する諸課題や懸念事項について十分な調査・検討が行われ、建設、運転、高度化、最終処理にわたる経費の全容とその国際分担、人材や管理運営体制の問題など課題事項に対して明確な見通しが得られることが必須である。調査・検討と並行して海外主要国・地域の研究機関や資源配分機関との協議を行い、国際分担等に関する見極めを行うべきである。

 ・検討すべき重要課題として、(5)建設期及び運転期に必要な人員・人材特にリーダー格の人材などがある。ILC を我が国に誘致することの是非を判断する上で、これらの課題について明確な見通しが得られることが必要である。 

○国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議「これまでの議論のまとめ」(平成27年6月25日)

2.これまでの検討結果の概要
 (2)技術設計報告書(TDR)の検証
 ・コスト増加のリスクとしては、現時点での最適な状況を選択した場合の見積りとなっており、結果として見積りに余裕が少ないこと、建設等における不測の事態や人材の雇用等に関する検討が不足しており、コスト増の要因になりうること、等が挙げられる。

 (3)国際協力
 ・新たな国際研究機関を設置する場合、人材の確保、人件費にも留意が必要であり、国際協力の在り方に関する十分な検討が必要である。

4.建設及び運転期において必要となる人材の確保・育成に関する検討
 ・ILC計画は、非常に多くの部品を国際協力により製作し、一つのシステムに組み上げる計画であることから、複数の拠点で製作された個々の部品について、所定の性能を有する装置に組み上げることができる高い技術力を有する人材を多数確保することが必要である。

 ・作業部会における議論では、大量の構成品の製造に対応可能な多くの人材を確保する見通し建設監督を行う人材の確保及び育成方策についての見通しのほか、国際協力により研究を推進する際のマネジメントを行う人材を確保する方策について見通しを得ることが重要であると指摘されたところである。

 ・これらを踏まえ、我が国を中心とした建設・運転・マネジメントにおける人材の確保・育成の見通しについては、別途作業部会を設置して検証を行うことが適切である。

○技術設計報告書(TDR)検証作業部会報告(平成27年3月)

2.技術設計報告書上のコストのリスク要因や技術上の課題
 ・ILC 計画の検討に際しての前提は以下のとおり(TDR及び本部会でのヒアリングによる)
 2 建設開始までには準備期間(4 年程度)を設け、技術的課題の解決及び必要な人材を養成することが必要であること

(1)コスト面でのリスクに関する課題
 ・5 国際的な枠組みを構築する上では、その枠組みに応じた事務管理コストが必要となってくる。特に新たな国際研究機関を設置する場合、研究機関で技術者等の人材の雇用を行う(海外の研究機関の多くは建設に関する人材の多くを機関が雇用)等により、追加の費用が必要となるため、実際に必要な人件費がTDRで試算された人件費(全体建設コストの1/5)を超過するおそれがあり、留意が必要。

(3)建設・運転・マネジメントにおける人材確保に関する課題
 ・1 建設時に必要となる技術者の確保方策について見通しを得ることが必要。特に大規模な精密機器の製造では、製作や搬入された個々の部品に多少の不具合があったとしても、中核研究所において適切に対応して所定の性能を有する装置に組み上げることができる高いレベルの技術力を有した人材を多数確保することが必要

 ・2 短期間での要素機器製作プロセスの大規模化に伴う人的・技術的課題の検証が必要。具体的には、加速空洞等の構成品の大量製造に対応可能な多くの人材を確保する見通し(約1万6千個の加速空洞を6~7年で組立てることが必要)、及び建設監督を行う日本の研究者の確保及び育成方策に関する見通しを得ることが必要。

 ・3 調達やシステム組み上げ時に必要な体制が確立できるかについて、十分に明確な見通しが必要。特に各極分担で加速器を製作する際に、中核となる研究所の役割が重要になる。技術開発などの準備段階においても、事務的な協力体制を構築することが必要。

 ・4 ILCを加速器システムとして熟知し、実現に向けた研究開発を的確に推進できるプロジェクトリーダーを置くことが必要。国際研究機関の少ない我が国において、国際機関の組織構成や、マネジメント人材をどのように確保するのかの検証が必要。国際機関の組織の在り方を踏まえたマネジメントを行う人材の登用の仕組みについて検討が必要。

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