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国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議素粒子原子核物理作業部会(第1回) 議事録

1.日時

平成26年6月24日(火曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省15F特別会議室

3.議題

  1. ILCに関する有識者会議素粒子原子核物理作業部会の議事運営等について
  2. 素粒子標準理論の現状と残された課題について
  3. 国際リニアコライダー計画の概要について
  4. 今後の議論の進め方について
  5. その他

4.出席者

委員

梶田座長,中野座長代理,岡村委員,小磯委員,駒宮委員,酒井委員,清水委員,棚橋委員,徳宿委員,中家委員,初田委員,松本委員,山内委員,山中委員,横山委員

文部科学省

小松研究振興局長,山脇大臣官房審議官(研究振興局担当),安藤振興企画課長,行松基礎研究振興課長,大土井素粒子・原子核研究推進室長,成相加速器科学専門官

5.議事録

【成相加速器科学専門官】  時間となりましたので,これから国際リニアコライダー有識者会議の素粒子原子核作業部会を開催させていただきたいと思います。
 本日はお忙しい中,お集まりいただきまして,ありがとうございます。
 国際リニアコライダー計画につきましては,このたび,文部科学省に国際リニアコライダーに関する有識者会議を設置しまして,国際リニアコライダー計画について,必要な検討を行うことといたしました。
 その中で,世界各国で検討されている素粒子原子核物理分野の将来構想を踏まえつつ,ILCの科学的意義について検討を行う本作業部会を設置し,専門的に議論を行うということが有識者会議の方で決定されました。
 その第1回会合の開会に先立ちまして,事務局の方から2点ほど連絡事項がございます。
 1点目,本会議の座長でございますが,有識者会議で指名されました東京大学宇宙線研究所長の梶田先生にお願いしております。どうぞよろしくお願いいたします。
 また,委員の選考につきましても,有識者会議で作業部会の座長に一任されたところでしたので,梶田先生との相談の上で,このメンバーでお願いしたというところでございます。
 それから,2点目,後ほど,本会議の議事運営等について議題とさせていただきますが,座長とも相談の上で,本日の会議は公開としたいと思っております。
 本日,プレスの方から撮影の希望がございましたので,冒頭の撮影がございましたら,許可したいと思います。
( 撮影 )
【成相加速器科学専門官】  ここまでとさせていただきたいと思います。
 それでは,梶田座長の方に進行をお願いしたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
【梶田座長】  
 それでは,これから国際リニアコライダーに関する有識者会議素粒子原子核物理作業部会第1回の会合を開会いたします。
 本日,御多忙のところ,お集まりいただきまして,どうもありがとうございます。
 先ほど紹介ありましたけれども,本会議の座長を務めます梶田です。この作業部会において,皆様とともに,このILCに関する科学的意義について検討していきたいと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。
 
 では,本日,出席いただいております委員の皆様及び文部科学省から出席者について,事務局より紹介いただければと思います。
 第1回ですので,委員の皆様には,紹介されましたら,一言ずつ挨拶をお願いしたいと思います。
【成相加速器科学専門官】  本日御出席いただいております委員の皆様を御紹介いたしたいと思います。
 まず,法政大学,岡村委員でございます。
【岡村委員】  岡村です。どうぞよろしくお願いします。私,観測天文学をやっております。
【成相加速器科学専門官】  それから,高エネルギー加速器研究機構の小磯委員でございます。
【小磯委員】  小磯でございます。よろしくお願いいたします。私は加速器を専門にしております。
【成相加速器科学専門官】  東京大学,駒宮委員でございます。
【駒宮委員】  駒宮です。よろしくお願いします。
【成相加速器科学専門官】  それから,理化学研究所,酒井委員でございます。
【酒井委員】  酒井です。原子核物理学の実験をやっておりました,というか,やっていたことがあると言ったらいいのかもしれませんが,今はどちらかというと,運営に携わっております。よろしくお願いします。
【成相加速器科学専門官】  東北大学の清水委員でございます。
【清水委員】  清水です。電子光理学研究センターから参りました。そこにはリニアアクセラレータもあります。分野は原子核です。どうぞよろしくお願いします。
【成相加速器科学専門官】  続きまして,名古屋大学の棚橋委員でございます。
【棚橋委員】  棚橋と申します。よろしくお願いします。専門は素粒子理論です。
【成相加速器科学専門官】  高エネルギー加速器研究機構の徳宿委員でございます。
【徳宿委員】  徳宿です。よろしくお願いします。高エネルギー実験で,CERNのLHCでのアトラス実験をやっております。よろしくお願いします。
【成相加速器科学専門官】  大阪大学,中野委員でございます。
【中野委員】  中野です。よろしくお願いします。原子核物理学実験で,特にハドロン物理学をやっております。
【成相加速器科学専門官】  京都大学,中家委員でございます。
【中家委員】  中家です。素粒子実験で加速器を使ったニュートリノ実験,T2K,及び,その将来計画を推進しています。よろしくお願いします。
【成相加速器科学専門官】  理化学研究所,初田委員でございます。
【初田委員】  理化学研究所の仁科加速器センター,初田です。専門は理論物理学,主に原子核やハドロンの理論研究をやっております。
【成相加速器科学専門官】  東京大学,松本委員でございます。
【松本委員】  松本です。専門は素粒子理論で,暗黒物質の研究をしています。どうぞよろしくお願いします。
【成相加速器科学専門官】  高エネルギー加速器研究機構の山内委員でございます。
【山内委員】  KEKの山内でございます。専門は高エネルギー物理学で,長年,Bファクトリー実験をやっておりました。よろしくお願いいたします。
【成相加速器科学専門官】  大阪大学,山中委員でございます。
【山中委員】  山中卓です。J-PARCでK中間子の実験をやっております。よろしくお願いします。
【成相加速器科学専門官】  最後に,東京大学,横山委員でございます。
【横山委員】  横山でございます。現在は科学コミュニケーションの研究・教育と,広報のマネジメントを東大理学部で担当させていただいておりますが,ニュートリノ実験の出身者ということもあり,先生方には各方面で大変お世話になっております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
【成相加速器科学専門官】  続きまして,文部科学省からの出席者を御紹介いたします。
 研究振興局長の小松でございます。
【小松研究振興局長】  研究振興局長の小松でございます。いろいろとお世話になりますが,どうぞよろしくお願いいたします。
【成相加速器科学専門官】  研究振興局担当審議官の山脇は所用によって遅れております。
 振興企画課長の安藤でございます。
【安藤振興企画課長】  安藤でございます。よろしくお願いいたします。
【成相加速器科学専門官】  基礎研究振興課素粒子・原子核研究推進室長の大土井でございます。
【大土井素粒子・原子核研究推進室長】  担当の室長の大土井でございます。何とぞよろしくお願いします。
【成相加速器科学専門官】  それから,基礎研究振興課長の行松の方も所用でちょっと遅れております。
 以上でございます。
【梶田座長】  どうもありがとうございました。
 では,第1回の作業部会の開会に当たり,小松局長より一言御挨拶を頂きたいと思います。よろしくお願いします。
【小松研究振興局長】  
 本日,お忙しいところをお集まりいただきまして,まことにありがとうございます。御挨拶というか,第1回でございますので,ごくごく簡単に,ポジションだけ,御説明をさせていただきたいと思います。
 ILC計画そのものは,私どもとして,宇宙創成の謎を探求するという非常に意義も夢もある計画だというふうに捉えて,それにどのように向き合うかということが課題になっているわけでございますけれども,他方で,多くの方からも御指摘があり,また,自明のことでございますが,極めて多額の経費が掛かるということもありまして,世界的に見ますと,真の国際プロジェクトとして各国の協力が必要でございますし,それから,財源や人材の確保といったような面も相当よく詰めないといけないということもありまして,この計画のフィージビリティについて,どのように明確化していくかということが非常に大きな課題でございます。これを乗り越えていかないと,その先になかなか行かない。
 そこで,世界的な状況を見渡してみますと,ヨーロッパではCERNのLHCを現在高度化する,あるいは,長く使うというようなことが進んでおりまして,この研究成果には留意をしていかないといけないだろうと。それから,アメリカの方も,ちょうど先月末ですか,P5のレポートを公表しております。
 ほかの国の動向もありますけれども,具体的に今申し上げたような動きがある中で,それを踏まえながら,我が国の素粒子原子核物理分野の将来をどのようにしていくかということを議論していく必要があるわけでございます。
 翻って我が国でございますけれども,KEKや大学において,現在進行中,既に着手している研究もございますし,今後の研究の構想などもございます。そういう意味では,素粒子物理学全体として,様々な研究がございますので,これらを踏まえながら,ILC計画の意義とか,あるいは,位置付け,そういったものについて,関係研究者の皆様で御検討を頂くということが重要だと思っております。
 皆様にお集まりいただきましたのは,日本学術会議等の提言も含めまして,ILCについて政府としても検討を進めていくわけでございますけれども,その中でも,この分野の学問的・研究上の状況,あるいは,その位置付けをよくもんでいただくということが必要だということで作業部会が立ち上がったということから,皆様にお集まりいただきまして,活発に忌たんなく御議論いただきたいと,そういうことを期待しているということでございます。
 今日,棚橋先生,駒宮先生にも,まず,いろんな状況を御説明いただくように伺っておりますけれども,今申し上げました観点から,大変御多忙の中,当分御助力を頂くということになろうかと思いますので,どうぞよろしくお願い申し上げます。
【梶田座長】  どうもありがとうございました。
 では,引き続きまして,事務局より,配付資料の確認をお願いいたします。
【成相加速器科学専門官】  本日の資料について御確認をお願いいたします。
 1点目が,「ILCに関する有識者検討会議素粒子原子核物理作業部会の設置について」でございます。2点目が,「ILCに関する有識者検討会議素粒子原子核物理作業部会議事運営規則(案)」でございます。3点目が,「作業部会における論点(イメージ)」というものでございます。4点目が,作業部会今後のスケジュールのイメージでございます。5点目が,「素粒子標準理論の現状と残された課題」という棚橋先生のプレゼン資料,6点目が,「国際リニアコライダー研究の概要」という駒宮先生のプレゼン資料でございます。
 
 そのほか,机上に配付しております青色の冊子でございますが,1点目が,「国際リニアコライダー計画に関する所見」,昨年9月30日,日本学術会議回答,2点目が,「学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想のロードマップ」,3点目が,ILC立地評価会議の「立地評価結果」,これは平成25年の公表されたものです。4点目が,「CERN(欧州合同原子核研究機関)の概要」,5点目が,「素粒子物理学における欧州の未来戦略」,欧州戦略の概要でございます。6点目が,米国素粒子物理学プロジェクト優先順位付委員会の報告書の概要でございます。同じく,7点目として,報告書の本文として,英文のものを付けさせていただいております。8点目が,ILCに関する今後の検討の進め方についてということで,5月に開催しました国際リニアコライダーに関する有識者会議の中で決定された検討の進め方に関する資料でございます。
 以上,不足の資料がございましたら,お知らせ願います。
【梶田座長】  よろしいでしょうか。
【駒宮委員】  すみません。この資料に将来計画検討小委員会の答申も入れた方が良い。アメリカとヨーロッパのがあって,日本のがないというのはおかしい。
【梶田座長】  分かりました。では,事務局の方で,次回の委員会以降,入れていただくようにお願いいたします。
【成相加速器科学専門官】  分かりました。
【梶田座長】  それでは,議事に入ってよろしいでしょうか。
 議題の1としまして,本会議の公開の在り方等,議事運営の方法等につきまして,まず,事務局の方から説明をお願いいたします。
【成相加速器科学専門官】  それでは,資料2の運営規則案について説明させていただきます。
 第1条で,この作業部会の議事の手続その他,作業部会の運営に関しては,この運営規則の規定するところによるとしております。
 第2条で,「この作業部会の会議は座長が招集する」。2項で,「座長は,作業部会の事務を掌理する」。3項で,「座長が作業部会に出席できない場合は,あらかじめ座長の指名する委員が,その職務を代理する」としております。
 第3条で「作業部会は,作業部会委員の過半数が出席しなければ,作業部会を開くことはできない」。第2項で,「作業部会は,関係機関に対して必要な協力を求め,調査・検討に参加させることができる」と。3項で,「作業部会は,必要があると認めるときは,参考人を招いて意見を聴くことができる」としております。
 第4条で「作業部会に属する委員が作業部会を欠席する場合は,代理人を作業部会に出席させることはできない」としております。
 第5条で「作業部会は原則として公開する。ただし,座長が会議を公開しないことが適当であるとしたときは,この限りではない」と。第2項で,「前項ただし書の規定により作業部会を公開しないとした場合は,その理由を公表するものとする」としております。
 第6条で,「座長は,作業部会における審議の内容等を,議事概要の公表その他の適当な方法により公表する。ただし,座長が審議の内容等を公表しないことが適当であるとしたときは,作業部会の決定を経てその全部又は一部を非公表とすることができる」としております。
 第7条で「この規則に定めるもののほか,作業部会に関し必要な事項は,座長が定める」としております。
 運営規則の案については以上でございます。
【梶田座長】  ありがとうございました。
 ただいまの説明につきまして,何か御意見,御質問等ありますでしょうか。よろしいですか。
 それでは,本会議の議事運営につきましては,資料2のとおりで決定させていただきます。
 座長代理につきまして,運営規則第2条第3項に基づき,座長が指名するとなっております。つきましては,私の方からの指名ということで,中野委員にお願いしたいと考えております。では,よろしくお願いいたします。
 
 それでは,次の議題に入りたいと思います。
 まず,本作業部会でどのような議論やまとめを行うかについて,参加者で共有したいと思います。
 この作業部会では,素粒子分野だけでなく,他の分野も見ながら,素粒子原子核物理における将来の方向性とILCの位置付けを取りまとめることとなっていると考えています。そのため,検討の際の論点と今後のスケジュールについて,まず,事務局にイメージを作成してもらいましたので,事務局の方から説明をお願いいたします。
【大土井素粒子・原子核研究推進室長】  それでは,お手元資料の資料3と4に基づきまして,私の方から説明させていただきます。
 まず,資料3でございます。この作業部会における論点のイメージとしまして,まず,1.として,素粒子物理上の解明すべき課題に取り組むためにはどのような研究が適当であるかというところで,あくまでも素粒子物理全体の中でのフォーカスとして,まず,視野を広げたいと思っております。
 次の2.の方で,その研究につきまして,将来の素粒子にとってどのような科学的な成果が期待できるのか,また,その成果の重要性はどのように位置付けられるか。関連研究施設としてLHCがございますけれども,高度化後のLHCで予想される研究成果を踏まえまして,更に新しい成果が期待できる計画としてはどういうものが想定できるかと。
 3.におきましては,特にILC計画で期待される成果は何であって,その確実性がどう評価されて,その成果というものは素粒子物理上でどのようなインパクトを持つかということについて御議論いただければと思います。
 また,各国の将来計画,FCC,CLIC,これはいずれも欧州の計画でございます。中国のCEPC,これは中国の電子・陽電子コライダーの計画でございますが,こういったものも一応構想としては存在しております。それらに比べて,十分な科学的な優位性があるのか。他の将来計画の可能性も踏まえながら,国内のコミュニティでの議論,あるいは,広範囲な合意が得られそうか。あとは,他国からの人材の集積が可能かという点につきましても最終的には触れたいと思っております。
 資料4に移らせていただきます。当面のスケジュールのイメージでございます。
 本日6月24日に第1回を開催いたしまして,7月,8月,9月はそれぞれ1か月に1回ずつぐらいのイメージで開催することを考えております。次回におきましては,欧米における将来計画,P5レポートの内容でございますとか欧州戦略につきまして,紹介,共有した上で,先ほどの論点をベースに御議論いただきたいと思っております。
 第3回につきましては,フレーバー物理,あと,第4回に書いてありますニュートリノもできれば第3回にまとめてしまいまして,フレーバー物理,ニュートリノについて現状を共有した上で,御議論いただく。
 第4回につきましては,ニュートリノの代わりに,宇宙線物理学とか天文学とか,そういったもう少し広いところの動向につきましても把握した上で,ILCの科学的な意義や役割について御議論いただきたいと思っております。
 以降,審議状況を踏まえながら,日程調整させていただきますけど,事務的には以下のようなスケジュールを考えているところでございます。
 以上でございます。
【梶田座長】  ありがとうございました。
 今紹介いただきました論点につきまして,いろいろとお考えがあるかと思いますので,まず,質問等,その他,何かあれば,お願いします。では,初田先生。
【初田委員】  作業部会の名前は素粒子原子核物理作業部会となっていますが,資料3の項目1,2では,“素粒子物理上の解明すべき課題”とか“将来の素粒子物理学にとって”となっていて,どこまでを素粒子物理学と呼んでいるのかが余りはっきりしません。
 低エネルギー原子核物理学と高エネルギー素粒子物理学というのは,はっきり分けて議論することができると思いますが,例えば,欧州の未来戦略のこの資料5にありますように,LHCなどでは,高エネルギー原子核物理学と素粒子物理学というのは一体の部分もありますので,高エネルギー原子核物理学と素粒子物理学をどのようにこの委員会で切り分けて議論するのかについてイメージがはっきりしないので,そこを教えていただきたく思います。
【梶田座長】  ありがとうございます。いかがでしょう。まず事務局の方からあらかじめ何か。
【大土井素粒子・原子核研究推進室長】  実はそこの境界につきまして,事務局の方では,まだ不勉強でございまして,しっかりと切り分けてございません。ただ,ことILCに関しましてはやはり規模が大きゅうございます。人的な資源の面からも,ほかの分野の参画がどの程度得られそうか,あるいは,そこにおける科学というものに,ほかの分野の協力がどこまで必要,可能なのかという点も含めまして,やはり触れざるを得ないのではないかということでございます。
 そこの境界条件は,現時点においても,まだぼやけている状況でございます。
【初田委員】  では,ILCを中心に考え,その周辺で関係する分野については必要に応じて考慮していくと思えばいいですね。
【大土井素粒子・原子核研究推進室長】  はい,そうでございます。
【初田委員】  分かりました。
【梶田座長】  ほかに何かありますでしょうか。はい,お願いします。
【清水委員】  私も同じような感じを抱いたのですけれども。素粒子原子核物理作業部会という名前ですね。やはりそこがちょっと気になっていまして,私自身の解釈では,素粒子と原子核はこれまでずっと一緒にやってきたと,そういう観点で一緒に検討しようということだと思うのですけれども,最初の座長の説明によりますと,素粒子分野及びその他という人たちに集まってもらってということを言っていますので,やはりその辺が,素粒子原子核と言った場合に,別に排除するような話ではなくて,どういう観点でこれに取り組むかと,少し議論があった方がいいのではないかという気がします。
【梶田座長】  ありがとうございました。特に事務局の方から何かありますでしょうか。
【大土井素粒子・原子核研究推進室長】  おっしゃるとおりで,どこまでの境界条件にするかということにつきましては,例えば先ほどの資料4にございますとおり,どこの分野の動向について,今後,話を聞いていくか,共有していくかという点につきましても是非,御議論いただいて,御意見を頂ければと思っております。
【梶田座長】  ほかにありますでしょうか。はい,お願いします。
【酒井委員】  研究について全く意義ないということは余りないでしょう。そうすると,相対的な評価をするとともに,いろいろなバウンダリーコンディションを考えた上で議論するのが,この作業部会の役割でしょうか。そういう意味からは,いろんなバウンダリーコンディションを考えるということでしょうか。それとも,絶対的な,アブソリュートな意義を議論するのでしょうか。どなたかがそれを言っていただけると,有り難いのですが。
【梶田座長】  なかなか難しいかと思いますけどね。
【酒井委員】  そのアブソリュートな意味でしたら,ここにおられるかなりの人が,物理的意味については余り疑ってないのではないかと思います。しかしながら日本国の置かれている立場とか,いろいろなバウンダリーコンディションを考えたときには別ですよね。
 もう一つ,ついでに言わせていただきますと,文科省がこの計画を視野に入れているということでこの作業部会を始めたという理解でよろしいでしょうか。文科省がこのプロジェクトを推進されるという意味で。
【大土井素粒子・原子核研究推進室長】  まだイエスもノーも言っておりませんけれども,当然ながら,ILC計画というものの存在を認知し,その必要な議論を進めるか,進められるか否かについての議論を行うために,ここの場を設定したということでございます。
【梶田座長】  どうぞ,お願いします。
【山中委員】  ちょっと関連するのですけれども,その意義ということを評価するときに,例えば予算の割にとか,お金でノーマライズするような,そういう議論もここでやるのか,あるいは,単にもう科学的な意義だけをここで議論すればいいのか,そこはどうなのですか。
【梶田座長】  事務局,お願いします。
【大土井素粒子・原子核研究推進室長】  予算的なバウンダリーは,今後検討していきます。ただ,人的な資源に関しては,バウンダリーは結構明確に出てくるのではないかと思っています。ILC計画をやる際に必要な人員,あとは,それに参画できそうな研究者,技術者,そういった面においては最終的にはバウンダリーが設定できるんではないかというふうに考えております。
【梶田座長】  いかがでしょうか。ほかに何かありますでしょうか。はい,お願いします。
【山内委員】  今の話と関係するのですけど,人に関してバウンダリーははっきりしているということでしたが,それはやはりお金で何とかなるという面もかなりあるわけです。
 ですから,どういう段階でも構わないのですけれども,既存の研究計画,これは物理に限りませんけど,いろんな研究計画が走っているのとは全く別枠に予算が青天井で用意されるという性格のものなのか,それとも,そうではないのかというところは,やはりどこかの段階でこういう境界条件で考えなさいということは,文科省の方からおっしゃっていただく必要があるのではないかと思います。
【大土井素粒子・原子核研究推進室長】  はい,おっしゃるとおりでございまして,別枠の設定が仮にされた場合であっても,国庫はやはり一つでございますので,財政状況などから当然導かれるべき解というものがあるのではないかと思っております。ちょっと検討させていただきます。
【梶田座長】  はい,お願いします。
【中野座長代理】  何かどんどんその議論になっていくような気がするのですが。そのお金が出た後,そのお金をどう使うか。今,プロジェクトにお金が出て,たくさんポスドクを雇ったけれども,プロジェクトが終わるとそのポスドクが行き場がなくなるとか,そういうことがありますよね。
 だから,ILCというのはその規模からいってインパクトが非常に大きいと思うのですけれど,どのようなお金の使い方をすべきか,というような点も,この作業部会で話し合う範囲に入っているのでしょうか。ILCを進める仕組みとして,今の既存大学とか研究所とか,そういうものが行っている運営だけで済まないかもしれないです,規模からいって。
【大土井素粒子・原子核研究推進室長】  現実においてはそこまで明示的にはこの作業部会のフォーカスには入れておりませんでした。どちらかというと,ILCの科学的な意義,こういったものがほかの分野と共有できるか,そういったことを一番の主眼にしております。
【梶田座長】  では,すみません,最後ということでお願いします。
【駒宮委員】  作業部会は2つございますよね。その2つの切り分けはどうなっているか,お教えください。
【大土井素粒子・原子核研究推進室長】  お手元のファイル側の方の資料8,最後の資料でございます。先月5月に開催いたしました有識者会議の本会の方での資料でございます。
 1枚おめくりいただきまして,横長のずらずらといっぱい書いてございますものが,日本学術会議が昨年出しましたILCに関する検討結果の報告書の中から,指摘事項をピックアップしたものでございまして,それを踏まえまして,次のページ右上のところにありますような素粒子原子核の作業部会と技術設計書の検証作業部会という2つを作りました。
 本作業部会,素粒子原子核の作業部会の方につきましては,ILCの科学的意義の共有化,あるいは,コンセンサス形成ができるかというふうなところの論点でございます。
 もう一つの技術設計書検証作業部会の方につきましては,コストの検証,それを主眼に置いて当面は進めておきたいと思っております。ですので,向こうの方は計画のフィージビリティ,こちらの方は科学的な意義,ざっくり言えば,そういう形に整理をしております。
【駒宮委員】  ありがとうございます。
【梶田座長】  他にもいろいろとあると思いますけれども,この段階でひとまずこの議論について終わりにさせていただきまして,次に進ませていただきたいと思います。この件につきまして,もし時間があれば,また改めて議論をしたいと思います。
 では,次に,ILCの研究内容に関して議論を行う前提としまして,現在の素粒子原子核物理学における研究動向について,素粒子理論の観点からお話を伺いたいと考えています。
 そこで,棚橋委員から,理論分野の立場として,標準理論でどこまで分かったかを俯瞰いただきながら,将来の方向性について説明を頂き,皆さんで議論をしていただきたいと思います。
 では,よろしくお願いします。
【棚橋委員】  名古屋大学の棚橋です。
 私は素粒子標準理論の現状と,その残された課題がどういうものがあるのかということについて,私の観点からお話ししたいと思います。これは割と理論屋個人個人によって観点が違うので,私のバイアスが掛かっていることを御承知おきください。
 まず,標準理論についてなのですけれども,ざっくり言って,標準理論で大切なのは,対称性と保存則,それから,くりこみ可能性の考え方だと思います。中身としては,「強い相互作用」,「弱い相互作用」,「電磁相互作用」を記述する理論で,この図に示すようにクォークとレプトンが素粒子として導入されている理論です。対称性としては,電子の安定性を保証する電荷保存則の対称性,あと,陽子の安定性を保証するバリオン数保存則,こういう保存則と対称性が非常に需要な役割を果たしている。
 あと,保存則と並んで,もっと大切なのがゲージ対称性です。その次のスライドにあるように,標準理論でいろんな相互作用があるわけですけれども,その相互作用,我々が既に知っている相互作用については,全てゲージ相互作用というローカルな対称性が規定しています。このローカルな対称性が規定しているということと,あと,くりこみ可能性というのを課すと,実は素粒子標準理論というのは,非常に少ないパラメータで多くの現象を記述できるすばらしい理論になっています。
 ですので,こういうくりこみ可能性,ゲージ対称性というのが標準理論を理解する上での一つのキーワードになると思います。
 最初に,その一つのひな形としては,量子電磁気学,QEDがあります。これはくりこみ可能なゲージ理論の大成功の例です。朝永-Schwingerがくりこみというのを発明したわけですけれども,一番の大成功は電子の異常磁気能率だと思います。電子の異常磁気能率,これはSchwingerが1948年に計算したのですけれども,この量子補正が,電磁気学,量子電磁気学の予想とぴったり実験値が合ったことがQEDの確立に貢献した。
 これが現状でどうなっているのかというと,2008年にハーバード大学グループが電子の異常磁気能率に関して,これだけの高精度の結果を与える。これは実験結果です。それに対して,先ほどのSchwingerの計算は2次摂動だったんですが,一昨年度,ついに10次摂動までの計算が完成して,この精度がついに10桁を超えるという何か大成功の例になっています。
 この理論というのは,結局のところ,電子の質量というパラメータと,あと,QEDの結合定数ですね。ファインストラクチャー・コンスタント,この2つだけの量がギブンパラメータでいろんなものが計算できるという極めて予言能力の高い理論になっている。それが現状で,この理論の立場でこれだけの精度で成功しているというのが1つの大成功の例になっています。
 この成功の例,理由ですが,まず,パラメータが少ないというのがあげられます。なぜパラメータが少ないのかというと,ゲージ対称性ですね。全ての相互作用,フォトンとの相互作用,電磁場での相互作用は電荷という保存量を決めると規定されてしまう。その電荷が,陽子であろうが,電子であろうが,電荷というものが,その中身がどういうものであろうが,電荷が決まれば,相互作用が決まってしまうという非常に有り難い性質があります。
 もう一つはくりこみ可能性です。くりこみ可能性が何を意味するのかというと,その次にイフェクティブ・オペレーターがここに書いてあるのですけれども,実はくりこみ可能性を仮定しなければ,QEDの背後に,普通のミニマルな相互作用以外に,電子とフォトンの間でこういう形の相互作用を書くことができます。
 この相互作用は直接,電子の異常磁気能率に寄与する相互作用なわけですけれども,実は,先ほどのくりこみ可能性の議論から,この前の係数が必ずなぜかニューフィジックスのスケールの,2乗分の1で抑制されているかがわかります。
 逆に言うと,先ほど,10桁の精度で実験と理論が合っていると言ったのですけれども,ずれたとしても,もともと理論的にはカットオフ2乗分の1の大きさでしかずれないと保証されている。なので,ニューフィジックスに関して,あったとしても,とてもインセンシティブになっているので,実験と理論の一致というのが非常にうまくいくと,そういう理論の構造になっています。
 実際,これ,Λ(ラムダ)について,先ほどの1がどのくらいのスケールを与えるのかというと,1TeV程度になってしまうので,その現状を1TeVまで何もないというのに関して,全くコンシステントな値になっています。これが少なくとも電磁気学が成功した理由だと思います。
 まとめると,ゲージ対称性,くりこみ可能性のおかげで,量子電磁気学という枠組みは,実は背後にあるファンダメンタルな理論の詳細によらず,低エネルギーでの成功が保証された枠組みになっていました。
 翻って,量子色力学の方を考えます。これは強い相互作用の理論なわけですけれども,歴史的には強い相互作用は,湯川先生が1935年に核力を記述する場の理論として提唱されました。核力を湯川先生が提唱されたときには,ここに「spin 0」と湯川先生が書いていらっしゃいますけれども,スピン0の場の理論です。スピン0の場の理論で,ゲージ相互作用でも何でもない理論なので,いろいろな大きさの相互作用を理論的には書き下すことができます。そのパラメータをチューンして,核力を記述したということだと私は理解しています。パイオンの質量はこうならなきゃいけないということが逆に分かったわけですね。
 実際,この予言に基づいてパイオンが発見されて大成功したわけですけれども,その後,強い相互作用に関してはパイオン以外のいろんなハドロンの発見が続いて,Particle Zooと言われるような状況が1953年以降に出現しました。そこで,湯川理論の背後の物理というというのを考える必要が出てきました
 これを,いろんなアイデアが出てきた後に最終的に救ったのがやはりゲージ理論,くりこみ可能なゲージ理論という立場です。それがQCDですね。QCDはSU(3)というゲージ対称性を持つようなローカルなゲージ理論です。先ほど言ったみたいに,くりこみ可能なゲージ理論では,パラメータはクォークの質量とQCDの結合定数の2つしかない。クォークはいろいろ種類がありますけど,クォークの質量と結合定数しかない。いろんな様々なクォークがありますけれども,その様々なクォークの結合,グルーオンとの結合は全てゲージ対称性が規定するという意味で,非常に予言能力の高い理論になっています。
 この理論の中で,ハドロン,先ほど出てきたパイオンはクォークの複合状態として出てくるわけですけれども,その計算をどうするかというのが問題になりますが,これらは,ラティスQCD理論の進展,あるいは,高エネルギーのハドロン衝突,プロトン・エレクトロン散乱とかはパートンで記述できると,そういう理論的進展があって,現在ではQCDは非常に成功を収めています。
 その成功の例としては,様々な方法,タウの崩壊とかラティスQCDのフィット,Deep-Inelastic Scatteringの実験,e+e- annihilationの実験,Zpoleのフィットの実験等で,先ほど説明した単一の結合定数をいろいろな方法で測定されていることが挙げられます。そのいろいろな方法で測定されている結果が,全てコンシステントに0.12前後という値に落ち着いているというわけで,これはQCDの非常に大きな成功の例に他なりません。
 QCDの非常に注目すべき性質としては,この結合定数がスケールによって変わっていくランニングカップリングという性質があるわけですけれども,それに関しても様々な実験が非常に精度よく示している。このように,ほぼ1つのパラメータしかないQCDという理論が非常にうまくいった歴史があります。
 先ほど言ったParticle Zoo,いろんなハドロンが出てきたというのは,現状では格子QCDがこれらのハドロンのスペクトラムがかなり計算されていまして,多くのハドロンの質量が現実と格子QCDの予言がこの精度で合っていることが分かっています。このように非常に少ないゲージ理論のスキーム,パラメータの少ないゲージ理論のスキームが,Particle Zooの問題を解決する上で大成功を収めた例になりました。
 その次に,いよいよ電弱相互作用,今もっともわからない部分です。この電弱相互作用に関しては,SU(2)×U(1)のゲージ理論で記述されます。これはやはりゲージセクターに関してはパラメータが少ない理論です。WボソンやZボソンがゲージボソンとして導入されるわけですけれども,この質量を獲得させるためには,対称性の破れというメカニズムを起こす必要があるというのはよく知られていることだと思います。
 この理論の中で,先ほどの電子の異常磁気能率に相当するような輻射補正のパラメータは何かと,それがどのぐらい精度よく検証されているのかというのが問題になるわけですけれども,典型的な例としてPeskin-竹内パラメータというのがあります。
 Peskin-竹内パラメータ,これ,Zボソンの様々な性質から計算できるようで,ちょっと説明が大変なので,ここでは詳しい説明は避けますが,このパラメータは基本的には量子補正のパラメータです。
 この量子補正のパラメータが標準模型の予言とどのぐらい実験が合っているのかというのがここで描いた図です。これが2013年版のG fitterというグループの図なのですけれども,今の場合,ヒッグスボソンの質量が分かる前は,ヒッグスボソン,スタンダードモデルの予言値はヒッグスボソンの質量の関数としてこのような振る舞いをすると,質量,ヒッグスボソンが重くなるとこうずれていくというふうに分かっていました。
 それに対して,実験値はこの辺り。ヒッグスボソンが軽いことをフェイバーしていたわけですけれども,後で説明するように,ヒッグスボソンはどんぴしゃり,この理論が予言するところに出ましたので,現状で標準模型の予言する輻射補正パラメータは実験値を完全に再現しているという状況になっています。QEDの成功に近いことがここで実はもう既にここで起きています。
 あと,もう一つ重要なのは,これ,ゲージ相互作用なのでいろいろなゲージ結合がユニバーサルになることが予言されます。Zボソンに関しては,電弱精密測定の実験で,非常に高い精度でユニバーサリティーが成り立っていることが知られています。
 Wボソンの方に関しては,フレーバーを変えるカレントを媒介しますので,Wボソンがどのようにフレーバーを変えているのか,クォークフレーバーを変えているのかという実験によってユニバーサリティーの性質が検証されています。これはBファクトリー等の実験です。
 様々なWボソンが媒介するようなフレーバーを変える中性カレント等の実験から来るフィットが,このユニタリティー三角形の図の上で,なされていて,それらは全て単一のこの点でマージしています。これはWボソンがゲージボソンである,ユニバーサリティーの性質をもつということに関する非常に強い証拠になっています。逆に言うと,Wボソンが媒介する以外のフレーバーを変える相互作用は現状でほとんど見つかっていないということを意味しています。
 いよいよヒッグスボソンですけれども,ヒッグスボソンが,先ほど,軽いところに理論的にはフェイバーされていたという話をしました。実際にヒッグスボソンが非常に軽いところに見つかったというのが2012年に起きたことです。この図は見にくいですけれども,そのときの「PHYSICS LETTERS B」の表紙です。ATLASとCMSという2つの実験で,それぞれコアシステントの126GeV近辺にヒッグスボソンを見つけたと。
 この現状ですけれども,まず大事なことは,電弱精密測定,先ほどのPeskin-竹内パラメータのフィットの結果と矛盾しない質量を持つヒッグスボソンが現れた。これ,標準模型の大成功だと思います。
 あと,標準模型は,ヒッグスボソンが様々な素粒子とどういう結合をするのかということを規定してくれるわけですけれども,現状のATLAS実験等の結果を見ると,これはヒッグスボソンの例えばWボソンとの結合,あと,トップクォークとの結合を縦軸に書いて,横軸をWボソン,Zボソンとの結合を横軸に書いたときの,ループ補正まで含めたフィットです。
 現状で見ると,この辺りとここがフェイバーされていますけれども,この辺りというのは標準模型の予言値,1,1というのと完全にコンシステントの領域なので,測定されたヒッグスボソンの性質も標準模型と一致しているということが言えると思います。
 これまで,標準理論は非常にうまくいっていたという話をしてきました。次に,ヒッグス粒子の発見がどういうインパクトがあったのか,説明したいと思います。
 QCDのときに説明しましたように,結合定数はエネルギースケールとともに変わっていきます。素粒子標準理論の特にヒッグスに関係する重要な結合定数は,ヒッグスの4体の相互作用,結合定数です。これは,λ(ラムダ)が正であれば,ヒッグスのポテンシャルが遠くの方で正になっていることを意味する量です。
 先ほどのヒッグスボソンの測定値,126GeVというのが決まりましたので,それを使って早速,イタリアのグループが,高エネルギーでこのヒッグスボソンの結合定数がどのように変化するのかということについて標準模型を使ったスタディを行いました。
 この図が何を意味するのかというと,高エネルギーでヒッグスの4点の相互作用が10の12乗GeVぐらいのところですね,負になっているというわけで,真空は遠くの方でこのように上に持ち上がってくれていないので,現状の素粒子標準理論の範囲内では真空は準安定,ないしは,不安定ということが結論付けられます。これ,もっと軽かったら,本当に完全に不安定なのです。
 現状はどのようなバウンドになっているのかというのがその次のスライドです。これ,実際にその宇宙年齢よりも長い年齢を持つような不安定真空であれば,準安定と言われて問題ありませんので,先ほど出てきたヒッグス質量の予言する標準模型が準安定なのか不安定なのかというのは非常に重要な問題になります。
 計算結果は,少なくとも2ループのイフェクティブポテンシャルの計算結果は準安定というのを示しています。ただし,実は,これを見てもらうと分かるように,トップクォークの質量とヒッグスボソンの質量,あと,QCDの結合定数の不定性が無視できません。特に,実はトップクォークは,真空を不安定にする方向に働くので,トップクォークの湯川カップリングを決定するというのは非常に重要なのですが,その不定性がこのぐらいあるという状況になっています。
 というわけで,実はこういう標準模型が非常に高エネルギー場で正しいと仮定したときに,本当に我々は準安定な真空に住んでいるのか,あるいは,ひょっとしたらこの辺のステーブルな真空に住んでいるのかということをちゃんと分かるためには,今言ったパラメータですね,ヒッグスボソンの質量,トップクォークの質量,QCDの結合定数α(アルファ)sの精密な測定というのが今後重要になると考えられます。
 これまで標準理論の成功についてざっとオーバービューしましたが,まとめます。
 標準理論のパラダイムですね。このパラダイムが非常に重要だと思います。くりこみ可能なゲージ理論というパラダイムで,これまで標準理論は成功を収めてきました。くりこみ可能なゲージ理論ということで,パラメータが非常に少ない。非常に少ないパラメータで様々な実験結果が再現できる。輻射補正もぴったり合っているという状況になっています。
 逆に言うと,このくりこみ可能というのは物理屋にとっては非常に厳しい状況になっていて,量子電磁気学での異常磁気能率のところで説明したように,くりこみ可能性のせいで,新しい物理が高エネルギーにあっても,低エネルギーではインセンシティブになっています。低エネルギーの実験で大きな効果は期待できないという状況になっています。
 そういう意味でいうと,そのヒッグス粒子を含む標準理論というのは検証されてワンセットで決まったわけですけれども,高エネルギーにまだ何があるかは分からない状況になっています。
 ヒッグス粒子の発見によって標準理論の予言する素粒子が全て発見されて,そこで出てきた結果というのを標準理論がどこまでも正しいと思うと,今のところ,我々の住んでいる真空というのは準安定真空で,ずっと置いておけば真の真空に崩壊すると,ずっとってすごい先ですけれども,そういうことが予想されます。
 MH,mt,α(アルファ)s,これ,ヒッグス質量,トップクォーク質量,α(アルファ)sを高精度に測定することによって,ヒッグスポテンシャルに関する更なる状況が得られるというのが現状だと思います。
 
【棚橋委員】  ここまでが標準理論の現状,私の目から見た現状をお話ししました。
 残された課題,解けてない課題にどういうのがあるのかというのは,山のようにあります。例えばニュートリノ質量,これまで,ニュートリノ質量を全部ゼロだと,標準理論では仮定されていましたが,実際にはニュートリノには質量と混合があります。これがマヨラナ質量なのか,ディラック質量なのかによって,必要となる標準理論の拡張がきまります。
 あと,今まで説明しませんでしたけれども,幾つかの測定結果は標準理論の予言と食い違うものがあります。その他,宇宙暗黒物質,バリオン・反バリオンアシンメトリー。さらに,インフレーションが宇宙背景放射の観測で確実にあることが分かっていますけれども,そのインフレーションがどういう起源によるものかが分からない。
 理論的に不満足な点としては,パラメータが多過ぎるということ,パラメータの微調整が必要というような問題が指摘されています。
 まず,ニュートリノなのですけれども,これも分かっています,あることは。あることは分かっているので,標準理論に入れてしまってもいいんですが,標準理論にまだ入れられてない理由は,これがマヨラナなのかディラックなのかが分かってないので,どういうラグランジアンを書いていいか分からないということです。
 一旦,ラグランジアンを書けると,標準理論のパラメータになります。ただし,これは標準理論を超える物理を考える上で,NormalなのかInvertedなのか,あるいは,CP violationがあるかどうかというのは非常に大きな示唆を与えるので,この研究はとても重要です。あと,標準理論の予言とのずれが見つかっている例としては,ミューオンの異常磁気能率です。ミューオンの異常磁気能率の理論計算には,これはハドロンの効果がかなり利いてきますが,ここでは萩原さんたちが評価された数字を使います。これをブルックヘブンの最新の実験と比べてみると,標準模型の予言と3.3シグマのずれがあります。この3.3シグマというのはかなり大きなずれです。なおかつ,このずれの絶対値なのですが,大体電弱ゲージボソンによるループの効果とほぼコンパラ,ないしは,多いくらいなので,ナイーブに考えると,ニューフィジックスは電弱ゲージボソンと同じようなスケールにあると,数百GeVぐらいのスケールにないといけないということを示唆しているので,これは非常に面白い手掛かりになります。
 ただし,これは実はハドロンの効果の不定性がどのくらいあるのか,特に,light-by-light scatteringの効果等によるハドロンの不定性があるので,その辺がどうなるかが今後注目すべきところだと思います。
 あと,ダークマターなのですけれども,ダークマターもこれはあることが確実になっています。左に描いた図は,ダークマターによる重力レンズ効果を示した図です。これ以外の観測もたくさんあり,大体宇宙の組成の4分の1がダークマターであることが知られている。
 このダークマターが素粒子かどうかというのが大問題なわけですけれども,素粒子だとすると,標準模型の中にはこのダークマターの候補物質がいませんので,標準模型を超える新模型が確実に必要だということになります。
 そうしたときには,そのダークマターが弱い相互作用をするか,あるいは,もっと弱い相互作用しかしないのかというのが問題です。これは標準模型を超える物理を考える上での大きな手掛かりと考えられています。
 あと,バリオン数の非対称なのですが,後で説明するように初期宇宙でインフレーションが確実に起きたことがわかっています。インフレーションが一旦起きると,宇宙は完全に一旦空っぽになります。空っぽになってから物質ができるわけですけれども,物質,反物質が同じ量だけできてしまうと,最終的に物質だけあって,反物質がないという現実の宇宙を説明できませんから,どこかで物質,半物質の非対称が存在しないといけません。
 そのためには,サハロフの3条件があって,非平衡,平衡から逸脱せねばいけないわけですけれども,標準模型での126GeVの質量をもつヒッグスでは非平衡にはなり得ませんので,標準模型を超える物理が確実に必要となります。そのときには十分な大きさのCP対称性の破れも必要になりますし,バリオン数の破れもそれ以外で必要になることになります。というわけで,ここも確実に何かが必要だというセクターです。
 あと,インフレーションです。これ,WMAPの観測,その前のCOBEの観測からそうなんですが,宇宙背景放射ですね。この揺らぎがインフレーション模型の予言するぴったりの値に出てきたということで,インフレーションが確実に起きていることが分かります。
 問題はいつどのようにして起きたのか。いつという問題なのですけれども,それに関しては,去年,今年か,BICEP2が新しい結果を出して,重力波揺らぎ,重力波起源のBモードというのを観測しました。
 BICEP2の結果が正しいとすると,これは非常に重要で,インフレーションが起きているときに,重力とそれなりに強く結合している。そうでないと,このように大きなBモード偏極はおきない。重力と強く結合するためにはエネルギーが高くなきゃいけないというので,インフレーションが起きているときのインフラトンのポテンシャルが,大体GUTスケールの値にならなきゃいけないという非常に強い制限をBICEP2の結果は示しています。
 これ,非常に強くて,GUTスケールぐらいのところでインフレーションが起きているということです。ただ,非常に初期にインフレーションが起きていることを示唆していると私は理解しています。多分,間違っていたら,松本さんが訂正してくれると思います。
 これは何を意味するかというと,再加熱温度も高いということです。再加熱温度が高いと,先ほどのバリオンアシンメトリーに関しては非常にインパクトがあって,このぐらいの再加熱温度になると,いわゆる福来・柳田のレプトジェネシスというシナリオが非常に有望視されることになります。
 普通はレプトン数の破れが起きるシーソースケールが高いので,すごく再加熱温度が低くなると,レプトジェネシスはうまく行かないのですが,仮にBICEP2が正しく,再加熱温度が非常に大きいことが決まると,福来・柳田のレプトジェネシスはとても有望になります。
 あと,パラメータの微調整問題ですね。ここから先は多少コズメティックな問題になりますが,階層性問題と言われている問題があります。これは,何なのかというと,標準理論の範囲内で,実はヒッグスポテンシャルの二次項には大きな輻射補正が存在する。この大きな輻射補正というのはくりこみ可能な理論なので,くりこんでしまえば理論的には全く問題ないんですが,それでも,ベアのパラメータ,ここでいっている裸のパラメータというのをどのぐらい調整しないといけないのかというこの気持ち悪さの問題というのがあります。
 どのぐらいの気持ち悪さであるのかというのを,Koldaさんと村山さんが定量化してくれたのがこの絵です。どのぐらいのファインチューニングが必要なのかというので,10%のファインチューニングが必要,1%のファインチューニングが必要というので,ヒッグスボソンの質量が126GeVぐらいだと,10%のファインチューニングを許容すると,標準理論のカットオフスケールは2TeV以下ぐらいになります。
  あと,先ほどのParticle Zooですね。1953年にParticle Zooという問題が起きたという話をしました。現在で,実はParticle Zooの状況と似た状況が起きています。つまり,クォーク,レプトンが3世代も存在するというのは,Particle Zooといってよい状況だと思います。ハドロンの世界のときにパラメータがいっぱいあったというのが問題だったわけですけれども,標準模型では,たしかにゲージ相互作用の部分に関してはパラメータは少ないですが,ヒッグスの湯川カップリング,クォーク,レプトンの質量というのは任意に調整できるパラメータです。という意味で,非常に多くのパラメータが出てくるというのが現在のコズメティックな問題と言えると思います。
 最後に標準模型を超える物理の候補ですが,これはたくさんの可能性があります。これをすべて紹介していく力は私にはありませんし,多分時間もなくなっていると思いますので,ここでは幾つかの,特に階層性問題を解決する上での人気のあるシナリオを紹介します。
 1つは,最も人気があるTeVスケールの超対称性があると考えられているシナリオです。これが非常にいいのは,ダークマターまで含めて,説明できる模型であるということと,SUSYの破れまで含めて,具体的に模型が書けるのがいい点です。あと,今回は大統一理論については説明しませんでしたが,それとも相性が非常にいいです。電弱精密測定の結果とも矛盾しません。
 問題点は,パラメータの数が非常に増えてしまう。Particle Zooがもっと増えてしまうというのがチャレンジです。あと,ヒッグスの質量が126GeVということによって,超対称パートナーの質量がどうしても重くならざるを得ないという傾向があります。
 次に,Composite Higgsについて。まず,ヒッグスボソンを南部-ゴールドストーン ボソンだと考える立場があります。これは一番大きなチャレンジは何かというと,くりこみ可能な具体的な模型を誰も書いてないことです。そういう意味で,何か低エネルギー有効理論を用いた解析にならざるを得ないので,本当にこれが正しいのかというところが理論的にはいつも問題になります。
 あと,テクニカラー理論です。この理論がいい点は,全て,素粒子質量の起源まで含めて,全部,くりこみ可能なゲージ原理で説明できる可能性がある模型であるいう点です。くりこみ可能なゲージ理論という最初の標準模型を作ったときのガイディング・プリンシプルそのとおりなので,まず,これはそういう意味では面白いです。
 ただし,問題は,単純に模型をつくると,先ほどのPeskin-竹内パラメータの測定結果と矛盾してしまいます。また,大きなトップクォーク質量を説明するのも非常に難しい。そういう現象論的チャレンジがいっぱいありますが,これもゲージダイナミクスがどうなるのかが分からないので,その方面の研究は重要だと思います。
 いずれの場合においても,ヒッグスセクターというのは必ず拡張されます。標準模型のヒッグスボソンは,ここの図で説明するように,いろいろな素粒子とその質量に比例した結合をしています。
 ところが,今説明したSUSYに関しても,コンポジットヒッグスに関しても,テクニカラーに関しても,ヒッグスボソンは存在しますけれども,その結合はこれから確実にずれます。ですので,このずれというのをどのぐらい精密に測定するのかというのは非常に重要だと私は考えます。
 実験的に解明する手段に関してざっと書きましたけれども,これ,いっぱいあってお話しできませんし,多分,私の得意とするところでもないと思いますが,まず,確実にTeVスケールに,何か新しい素粒子物理があるだろうということが,少なくとも先ほどの階層性問題は示唆しています。
 そういうことを考えると,TeVスケールの物理を直接探索するようなLHCの高性能化,ILC,CLIC,FCC等が非常に重要になると思います。
 あと,それとは別に,ニューフィジックスがあるとすると,その効果というのは必ずカットオフ分の1でサプレスされます。ということは,希現象と,つまり,まれにしか起きない現象って非常に重要になります。
 あと,ニュートリノに関しては,先ほど説明した福来・柳田のレプトジェネシスのシナリオというのは,レプトンセクターでのCPの破れが重要になりますので,レプトジェネシスが有望になっている状況では,ニュートリノ質量と混合の精密測定によって理論への示唆を与えてくれることが有力視できると思います。
 あと,ダークマターの探索。
 最後に書いてありますけど,私が実はとても重要だと思っているのは,既に知られているヒッグスとかトップクォークとかWボソンだとかの精密測定ですね。先ほど説明したみたいに,これらのパラメータは標準模型を超える物理からだと確実にずれます。そのずれを押さえることによって,どのスケールまでに何がなきゃいないのかというのを確実に押さえられるという意味で重要な研究だと思っています。
 少しオーバーしたかもしれませんが,以上です。
【梶田座長】  ありがとうございました。
 それでは,意見交換,あるいは,質問等をお願いしたいと思います。はい,お願いします。
【初田委員】  今後議論することになるであろうことに関係する質問なので,今すぐに答えていただく必要はないのですが,標準理論の微調整を回避する有力な仮説として超対称性があるので,それを見つけるのがLHCの使命の一つであったのだと思います。
 でも,見つからなくて,僕も先ほど,TeVスケールのSUSYのところで,もともとそれは超対称性を導入することによって微調整が防げるということであったはずなのだけれども,結局,棚橋さんが30ページに書いておられるように,観測されたヒッグス質量を説明するためには超対称性があっても微調整がやっぱり必要だという,そもそものモチベーションがなくなってしまったような感じがするのですが。
 この意味で,ILCを作るときに,結局のところ,何がガイディング・プリンシプルになるのか,たくさんモデルがあるけれども,特に有力というものはないというのが現状認識であると思えばよいのか,というのが1つ目の質問です。
 それから,精密測定というときに,どの程度の精密測定をILCで行えばよいのか。もう核心に入ってしまっている感じがしますが,そのあたりを聞かせてください。
【棚橋委員】  私自身は非SUSYの研究を主にしていますので,この御質問への私の返答には多少バイアスがかかっているかもしれません。コズメティックな話であるのは確かだと思います。しかし,どのぐらいまでのファインチューニングを許容するのかというので,10の30乗のファインチューニングは許容しないけれども,1%ならいいかなというのであれば,まだSUSYはかなり希望のあるシナリオの一つだと私は感じています。
【初田委員】  確信でないと,希望なのだということですか。
【棚橋委員】  もしもファインチューニングを10%までしか許さないとすると,かなり難しい状況になっているというのが私の理解です。よろしいでしょうか。
【初田委員】  あと,2番目の質問についてイメージがつかみたいのですが,精密測定というのは何をもって精密測定と言っているのでしょうか。例えばヒッグスの質量をどこまで押さえたら精密測定と言うのでしょうか。
【棚橋委員】  ヒッグスに関して,精密測定があるといいと私が思っているのは,ヒッグスとWとの結合,ヒッグスとZとの結合,ヒッグスとトップとの結合,むしろ,ヒッグス質量よりもヒッグス結合の方が重要だと思います。標準模型とのずれを考えるときに,標準模型ヒッグス以外の粒子との混合が必ず入ってきます。ヒッグス結合の精密測定をすることによって,そのミキシングパラメータに関する上限を出すことができます。ナイーブに考えると,重いヒッグスの質量分の1くらいの混合が,必ずあるので,そのミキシングをどこまで押さえれば,重いヒッグスの質量に関する制限を導くことができます。
 これに関する定量的な話は,今日は準備しておりません。
【梶田座長】  では,松本先生。
【松本委員】  一応,超対称性の弁護をするわけではないのですけど,僕はありとあらゆる模型をやった一人なので答えさせていただきます。超対称性を考える一番大きな理由は,電弱相転移がなぜ起こったかに答えるためだと思います。それが一番大事です。ファインチューニングが何だかんだというよりは。
 もともとは,棚橋さんが言ったように,例えばテクニカラーであるとか,南部-Goldstoneボソンのシナリオというのは何か別のストロングダイナミクスがあって,そいつがコンファインして破れて,その結果,エレクトウィーク・シンメトリーが更に破れるという構造を持っている。
 超対称性の場合も全く同じで,超対称性があって,そいつが破れて,そいつがトリガーになってエレクトウィーク・シンメトリー・ブレーキングが起こると。つまり,なぜエレクトロウィーク・シンメトリー・ブレーキングが起こるのか。起こらないと,我々は死んでしまうわけですけれども,それをきちんとしようというときの1つの道が超対称性であり,コンポジットヒッグス模型であり,あるいは,それがもうプランク・スケールまで飛んでいってしまったような,最近,盛んに議論されている理論,ということになっています。
 それらを区別するために,ヒッグスの性質を細かく見るのが非常に大事であるという論理で,それが定量的に何%ぐらいかというのを,実際に例を示していただけるのだと思います。
【梶田座長】  では,岡村先生,最後で。
【岡村委員】  BICEP2のチームの解析は,銀河系の中で起こる偏光の推定がちょっと間違っているので,まだ確実と見ない方がいいと聞いているのですが,それは正しいですか。
【棚橋委員】  ちょっと私も専門外なのですが。
【松本委員】  正しいと思います。つまり,何かシグナルというか,偏光を見たのは確かです。その偏光が本当にインフレーション由来のものであるのか,あるいは,ダストとか,普通のアストロフィジックスによるアクティビティのせいであるか,その区別がまだ付いていない。つまり,バックグラウンドの評価がまだできていないからです。
 ただ,これは面白いことに,あと少ししたらブランクが来まして,いつ,11月といううわさですけど,そうしたらはっきりすることだと思います。
 それに関して1つだけコメントしていいですか。
【梶田座長】  では,本当に最後ですね。
【松本委員】  これ,結構大事なことだと思うのですけど,棚橋さんがスライドで,我々は準安定な真空に住んでいるのか,安定に住んでいるのかという話をされました。もしBICEP2を信じると,準安定に我々が住むことはできません。なぜかというと,準安定に住んでいるときに,BICEPの示唆するような非常に高いスケールのインフレーションが起こると,全部安定な真空に落ちてしまうことが分かっているからです。だから,そうすると,本当に精度よく測ることが,ものすごく標準模型を超える物理の理解に必要になってくるということだと思います。
【梶田座長】  ありがとうございました。
 いろいろと御議論あるかもしれないのですけれども,先へ進ませていただきたいと思います。
 かつ,ちょっと議論が十分ではないかと思うので,もし何か御意見等あれば,会議終了後,事務局まで連絡いただきますようお願いいたします。
 では,続きまして,本題でありますILC計画について,これまでの経緯や,計画が目指す物理と意義,それから,LHC実験の成果との関連,ILCに関する国際的な研究者コミュニティの動向について,駒宮先生の方から説明をお願いしたいと思います。
 では,よろしくお願いします。
【駒宮委員】  東大の駒宮と申します。私,先ほど,自己紹介のときに何も話さなかったんですけれども,私の専門は素粒子物理学の実験でございます。
 実は今日,私のお誕生日なので,皆さん,お手柔らかにお願いいたします。
 まず,ILCの概要から行きます。これが文科省から与えられた課題で,計画の経緯,目指す物理,LHCの物理との関係,ILCに対する国際コミュニティの動向ということで,全部を30分で話すのは難しいので,2つずつまとめました。計画の経緯と国際コミュニティの動向。
 まず,リニアコライダーの歴史をさっと行きます。
 1980年代にドイツのDESY,日本のKEK,SLACなどで,リニアコライダー加速器を技術開発と物理・測定器の検討が始まりました。1991年に日本でJLC-1レポートというのが出ました。これは非常に早い段階でレポートを出しています。このときは何しろジャップスタートでHiggs-factoryから始めるというものでした。
 1990年代になりまして,加速器技術は,超伝導(コールドキャビティ)のTESLA,あと,ここら辺があるのは全部,超伝導以外を使うものですね,常伝導(ウォームキャビティ)を使う。これらが乱舞して,収拾が付かない状態になりました。
 そこで,我々は,せめて物理実験だけでも,それは加速器技術のディテールによらないので,国際組織を作ろうということになりまして,1998年にWorld-wide-studies of physics and detector for LCsというのができました。
 その後,Global Science Forumというのがございまして,その中で,High Energy Physics Consultative Groupというのがあって,ここで最終的には閣僚級の声明が出ました。
 その次,2002年,ILC Steering Committeeというのができまして,これはこういう大変な事態を何とか収拾させようということです。
 その後,2004年に国際技術諮問委員会というのができまして,ここで超伝導RFをMain Linacの技術に選択しました。ですから,常伝導ではなくて超伝導を選んだということですね。その後,2005年にGlobal Design Effortというのができまして,ここで本格的に国際的に設計が始まりました。それのヘッドがBarry Barishで,日本からは山本先生とか横谷先生なのかが入って作ったわけです。
 その後,まず,測定器の方もやはり,幾つかあった測定器のうちから2つを選ぶということをいたしました。
 最近の動きですが,これはヒッグスがまだ見つかる前ですね。2012年,一昨年の3月に,将来計画検討小委員会答申というものが出まして,ここでリニアコライダーとニュートリノと,この2つが将来計画として非常に重要だというのが出されました。
 もうヒッグスがすぐに見つかるということになって,ILCの戦略会議と,戦略をきちんとしないといけないということで戦略会議を結成して,それから,7月にヒッグス粒子が実際発見されまして,10月にはILCを日本がホストして,Higgs factoryから段階的に推進するという案ですね,ステージングプランと一般に言われているものですけれども,それを拡大高エネルギー委員会というので承認いたしました。それで,その年の12月に,Technical Design Report,技術設計書ができまして,それをレビューに回したということですね。
 それからすぐ後,これは昨年の2月に,ICFAの元にLinear Collider Boardというのができて,それから,Linear Collider Collaboration,これが実質的な設計チームですね,それが正式に組織されました。このLyn Evansという人がそれのヘッドですね。村山さんがdeputyと。
 昨年の6月にTDRのレビューが終わりまして,TDRが公開されました。5月から9月には日本学術会議の専門委員会が開かれて,リニアコライダーに関する議論がされました。
 これが現在の研究者による推進体制で,これが実質的に働く部分ですね。これ,リニアコライダー・コラボレーションと申します。リン・エバンスと村山さん。
 その下に物理ディテクター,それから,ILC,これはCLIC,これは将来の加速器。これももともとCERNでやっていたのですが,CERNもこの大きな流れの中に入れるということで,このCLICも同時に検討するということにいたしました。ただし,これはR&Dの推進です。私はこれをオーバービューする役目でして,リニアコライダー・ボードの議長ということです。
 国際コミュニティのコンセンサスについてお話しいたします。
 まず,ヨーロッパはEuropean Strategyというのが,これ,昨年まとめられまして,そこでは日本の研究者コミュニティが日本に,ILCをホストするということで頑張っているのは非常にウエルカムであると,ヨーロッパの研究グループもそこに是非とも参加したいということを言っております。日本が早く議論できるように何とかしろということですね。
 アジアもほとんど同じでございます。
 アメリカは,昨年,Snowmass processというのを,これはコミュニティの合意を得るためのプロセスなのですが,これはHigh Energy Physicsのそういうプロセスを約1年間やりまして,それを経て,P5,Particle Physics Project Prioritization Panelという,5つPが付くパネルがございまして,そこに昨年の終わりに渡されて,ここで議論をして,5月末に答申が出されました。
 ここでは,米国というと自分の国のことばっかり言っているのですけれども,これは今までにないグローバルな視点に立った答申なのですね。そこが非常に前とは違うところで。それから,もう一つは,物理に根ざしていると。まず,この4つのドライバーというのですか,こういう物理を出してきて,それにどういうふうにいろんなプロジェクトが当てはまるかということをきちんと議論したのですね。これはリニアコライダーに関して,LHCに関してでございます。
 そのすぐ後に,これはDepartment of EnergyとNSFが管轄して,このP5というパネルを作ったわけでございますけれども,そこのJim SiegristというHigh Energy Physicsの部長のスライドなのですけれども,これがP5での(ILCの)推薦文です。
 「Motivated by the strong scientific importance of the ILC and the recent initiative in Japan to host it, the U.S. should engage in modest and appropriate levels of ILC accelerator and detector design in areas where the U.S. can contribute critical expertise.」と。最後に,「Consider higher levels of collaboration if ILC proceeds.」というので,ここで常に文科省の人たちが問題にするのは,このmodestというのは一体何かと。
 Modestしかお金が出ないのかということをおっしゃっているのですが,これは実はアメリカは,このILC予算というのはほとんどゼロにしたのですね,一旦。それをリダイレクトすると,要するに,持ち直して,もう一回やり直すのだということで,これはmodestになっていると。
 それから,もう一つ,このところにappropriateというのは,要するに,サイトスペシフィックなR&Dとデザインをやるのだということですね。
 それから,もう一つ,この最後のこれが重要で,もしリニアコライダーが進むことになったら,もっとハイレベルのコラボレーションをするということなのです。ですから,これだけを見て何だかんだ言われてもいけないので,これが極めて重要です。
 これは昨年の11月に日本でこのリニアコライダーのワークショップをやりました。これは東大ですね,もちろん,日本の主導というので非常に期待が集中しております。でも,何しろグローバルプロジェクトですので,世界中でやるというのが基本です。
 ここからはILCで目指す物理とその意義ということで。
 まず,素粒子物理学の最重要課題という点です。我々が一番直面しているのは,電弱相互作用の破れの背後にある物理の解明です。これが超対称性か,又は,先ほどおっしゃった複合ヒッグス模型かと。これは大きな分岐になります。
 それから,相互作用の大統一です。こういうものがあるかどうか。
 それから,暗黒物質。これは実際存在するので,これは,これの素粒子物理学的な解明ですね。
 それから,宇宙の加速膨張。これはもちろんインフレーション,それから,真空のエネルギー,こういうものとの関係。
 やはり一番重要なのが重力相互作用をいかにして理論に組み込むか。これは超対称性とかそういうのにひょっとしたら関係するかもしれない。
 我々がここでやりたいことは,標準理論を超えていかなる方向に進むかと,これを発見されたヒッグス粒子をプローブとして使うということですね。それから,もう一つは,新粒子・新現象の直接発見を狙う。これを精密測定で行って,発見を物理の原理まで高めるということが我々の使命だと思っています。
 我々は,今言ったように,大分起点に立っています。要するに,この電弱相互作用の破れが,スーパーシンメトリーのような,フェルミオンとボソンの対称性を持っているか。若しくは,複合ヒッグスのような,いわゆるフェルミオン一元論みたいなものですね。これ,ゲージボソンは多分フェルミオン一元論に入ってないかもしれませんけど。
 それで,リニアコライダーというのはこれに関連する暗黒物質ですけど,暗黒物質は両方から出てきますから,これと,それから,これとこれ,ここら辺を全部やっつけるというのがILCだと思います。
 最終的には,スーパーシンメトリーあったら,大統一を経て,多分,量子重力があって,これもやっぱり何かそういうスーパーストリングみたいなのにくっつくだろうと。ここから先は分かりません。何しろ,こいつをやるということですね。
 何しろ,Energy FrontierのColliderにはe+e-とPP,この2つがありまして,これ,普通,相補性と言っているのですけど,私,相補性という言葉はあんまり好きではないです。やはりこれは相乗効果,両方ともできないところをやるのではなくて,両方ともできるところも全部やるというのが相乗効果の相乗効果たるゆえんです。
 電子・陽電子のコライダーというのは,電子・陽電子の衝突というのは素粒子同士の衝突であり,余分な粒子が出てこない。バックグラウンドが低い。それから,予言も正確であると。理想的な測定器を設計できて,高性能の実験が可能であると。
 ところが,円形のコライダーでは放射光によるエネルギーロスが非常に大きいので,リニアコライダーが不可避になっています。
 陽子・陽子の場合,陽子は複合粒子で相互作用が非常に複雑で,非常に高い放射線のもとで実験をしなきゃいけない。また,バックグラウンドが非常に高い。これに打ち勝つような測定器技術が必要であり,高度なデータ解析能力も必要とする。
 これは実験的にこの相乗効果というのは,今までの歴史を踏まえるとこれは非常に当たり前で,最初,電子・陽電子のコライダーでもって,トップクォークのマスを予言したんですね。これは電弱相互作用の過程を非常に精度よく測ることによって,トップマスが予言できます。
 これは予言して,このちょうど真ん中に,ずぼっと次に,これはPPバーですね。これはハドロンコライダーのTEVATRONで,トップの非常に正確なマスが測られて,そうしますと,こっちのダイアグラムも分かるので,次にこのヒッグス効果,ヒッグス粒子の効果が分かるようになりますね。
 そのヒッグスの非常に正確な効果が分かるようになって,今度はLEPで,低い方からは直接探索で,高い方からは,この非常に高精度な電弱データの理論によって,ヒッグス粒子のマスが非常に狭い範囲に押し込められたと。それをまさにLHC,今度はe+e-からまたPPに行って,LHCで発見した。それを今度は,その全貌を明らかにするのがILCであるということです。ですから,まさにハドロンコライダーとe+e-コライダーの相乗効果というのが今までずっとあったということですね。
 その一つの例は,LHCでのヒッグスγ(ガンマ)γ(ガンマ)ですね。これはバックグラウンドが非常に大きいです。ですから,ヒッグスがγ(ガンマ)γ(ガンマ)に崩壊するものだけをここで取ってくるというのはそんなに簡単ではございません。
 これがリニアコライダーの方で,リニアコライダーの方はバックグラウンドというのはそれほど大きくなくて,こいつがシグナルですね。これ,実はヒッグス,見てないです。これはこのμ(ミュー)+μ(ミュー)-だけを見て,ヒッグスは全く見てない。こいつのリコイルマスですね,これを測って,これの反跳の質量というのは計算できるので,それを計算するとこうなると。ここに長い,ちょっと長いテールがあったのは,これはイニシャル・ステート・ラジエーションといって,この,こいつがフォトンを出したり,その前にビームシュトラールングといってフォトンを出したりするやつであるので,若干こうなっています。
 次,ヒッグス粒子ですね。ヒッグス粒子は真空と全く同じ粒子数を持つ粒子で,もともと宇宙初期ではポテンシャルがこんな形だったのが,こんなになっちゃったと。それで,真空というのは何しろポテンシャルが一番低いところなので,ここに例えばあったとすると,対称性が破れる。それが自発的対称性の破れですね。
 こういうポテンシャルの形にどうしてなるのかというのは教科書に書いてないです。それは,例えば超対称性があるとこの状態を実現できるという予言もございます。ですから,この背後に物理が存在するわけです。
 ILCというのは,ヒッグス粒子の研究をHiggs-factoryとしてやる。それによって,質量の起源,それが真空の構造と関係あるということを見るのだというのが,最初の目的ですね。
 リニアコライダーの場合にもヒッグスの生成プロセスというのは,Zとヒッグスと一緒にできる。これがcenter of mass energyが小さいからですね。center of mass energyが大きくなると,今度はWWフュージョンでヒッグスを作る,こういうプロセスがだんだんドミナントになっています。
 これがヒッグス粒子の結合ですね。これはATLAS/CMSと比較しております。これはオプティミスティックな場合とペシミスティックな場合という,何かよく分かりませんが,これは多分両方ともそれをやっていると思います。
 ここから先はリニアコライダーですね。これは通常のリニアコライダーですけど,アップグレード。それから,これはうんとアップグレードして1TeVを入れた場合ですね。これはルミノシティをちょっと増やした場合ですね。ですから,ほとんど全部のものがパーセント以下で分かるのですね,精度として。一番重要なのが例えばbbとかWとかZ,ここら辺のものはほとんどもうパーセント以下で分かります。パーセントというか,0.何%。
 そのヒッグスの結合パターンのずれで,例えば標準モデルだったら,これ,全くぴったりです。ちょっとトップが悪いのは,これは550GeVまでcenter of mass energyを上げると,こいつはもう小さくなるのですが,これは今,center of mass energyの最高値を500GeVとしています。将来先に,キャビティの性能がよくなったりしたら,550GeVまで行く可能性がありますので,そうすると,これはもっとうんと小さくなると。
 これが超対称性の場合ですね。この場合もそれほど差は大きくないのですね。ア・フュー・パーセントです。これはこういうパラメータを使っておりますが,これはティピカルなパラメータを使うと,ア・フュー・パーセント。これは当然LHCでは見えません。それから,この複合ヒッグスの場合も,ティピカルのパラメータを使うと5%以下です。
 こういういろんなパターンを見て,この次,どういう方向に素粒子物理が向かうかというのは,いろんな粒子とのカップリングを全部精査して,それで分かるということでございます。
 例えば,スーパーシンメトリーとか何とかいうと,重いヒッグスが存在するのですね。これが重いヒッグスの質量です。LHCはこの左上,これをエクスクルードしたのです。これはアップグレートした後です。これがリニアコライダーでできる領域です。ここから下がもうLEPでエクスクルードされている領域。だから,非常に大きな範囲をこのリニアコライダーでカバーできるのです。
 次はヒッグスの自己結合。これはなかなか難しいので,多分,10%のオーダーで分かると言っていますが,これは現在,詳細の研究中でございます。
 これが分かると一体何がいいかというと,相互作用の破れの解明,ヒッグスポテンシャルの形状,それから,将来的には電弱エネルギースケールでの,宇宙のバリオン数の生成ですね。これと関係ある。
 ですから,こういうヒッグスと何ら関係ないような,バリオン数生成,これはCPバイオレーションですね,そういうものに関係しているということです。
 それから,次は,先ほど棚橋先生がおっしゃったトップクォークの質量ですね。これが,多分,LHCは0.5GeVと非常にオプティミスティックなあれだと思いますが,リニアコライダーでは0.1GeVぐらいでトップのマスが分かると。そうすると,これがうんと小さくなって,真空のスタビリティというのが分かるようになる。
 これで,何しろ今一番利いているのはトップのマスなのですね。その次利いているのはヒッグスのマス,その次,多分利いているのはα(アルファ)sですよね。α(アルファ)sの方が利いている。でも,ヒッグスとα(アルファ)s,両方ですね。ですから,これがトップクォークのマスを精査することによって分かる。
 それから,もう一つは,トップクォークとZボソンの結合の精査。これはスーパーシンメトリーなどと区別できるだけではなく,複合粒子モデルなどをいろいろ分離できるわけですね。ですから,トップクォークというのはあんまり面白くないと思ったのですけれども,やってみるといろんなことができると。これがLHCでの精度ですね。
 これはちょっと300fb-1の場合しかなかったので,3,000fb-1がなかったということで,これ,300ですけれども,何しろリニアコライダーはほとんど点だということです。この精度で分かると。この精度で分かれば,どこかにいれば,何か分かるだろうと。
 その次,ダークマター。これは先ほど棚橋先生がおっしゃったように,これは一番新しいPlanck衛星の結果ですが,何しろ,我々の知っている物質というのはたった5%,暗黒物質,それから,暗黒エネルギーというのがあると。暗黒物質というのは,宇宙の質量の80%以上を占めると。これらは,暗黒エネルギーも暗黒物質も,最終的には素粒子物理学で解明させるべき,解明されるべきであると。
 宇宙の暗黒物質というのは,これは昔からこの銀河の周りを回る星の速度で,そういう暗黒物質の存在というのは分かっていたわけですね。もしかして暗黒物質がなかったら,下がっちゃうわけですね,速度は。でも,だらだらと非常に遠くの方まで速度が行っていたということで,何かこの中に光らない物質がいると。それをダークマターと言ったわけです。
 これは暗黒物質というのは実は銀河の造られる種になるということですね。ですから,暗黒物質が最初に集まって,そこに普通の物質が降り積もって,それで銀河になったということですね。暗黒物質の起源である素粒子を発見して,それを精査する,これを加速器で発見して精査すると。それをすることによって,暗黒物質の生成のメカニズムを解明して,それから,現在の暗黒物質の密度というのを予言できると。
 もちろん,ほかの物質,ほかの粒子から暗黒物質が崩壊してできた場合はちょっと違うかもしれませんけど,その場合は若干補正があるかもしれませんけど,何しろ,密度を予言できるというのはすごいことです。
 その1つの例として超対称性がございます。超対称性というのは,全ての粒子にスピン2分の1違った超対称性パートナーがあるということですね。若干,ヒッグスのセクターは若干増えるのですが,この暗黒物質の候補というのはこのゲージ粒子ですね。このニュートラルなゲージ粒子,それから,ヒッグス粒子のパートナー,これらが混ざったものであると,それの一番軽いものであろうというふうに考えられています。
 スーパーシンメトリーというのは幾つもの問題を解決できますが,これは先ほど棚橋先生がおっしゃったので,省略いたします。
 何しろ,ILCでは,暗黒物質の粒子を低い方から攻めると。ハドロンコライダーの方は比較的高い,高い方から攻める。彼らは要するにカラーを持っている粒子がいっぱいできるんで,高い方から,カラーを持っている粒子の方が大体重いので,高い方から攻める。リニアコライダーの方は,何しろ,低いやつか,低いやつの一発上ですね。そういう粒子がペアでこういうふうにできると。それを見つけるということです。
 一番ひどい場合は,2つともダークマターの粒子ですから,こいつらは見えない。フォトンを一発出して,こいつらを2つ出す。ですから,フォトンを一発つかまえて,それで反対側に何か粒子がいないかどうかというのを見ると,こういうこともできるということです。
 これは超対称性に対する感度ですけれども,これはLHCで,これがLHCのアップグレートしたときですね。ですから,gluinoのこれは質量に全部換算していますけれども,大体2.3TeVですね。これがBino LSP,これ,いろんな場合について,勝ったり負けたりしているというわけですね。この場合は多分LHCの方が有利です。ほかの場合はILCの方が有利と。
 スーパーシンメトリーの発見後,発見の後,要するに質量と結合というのを非常に精度よく測ると。こういうスーパーシンメトリーの粒子というのはこういうのが混ざっていますから,このまじりというのをきちんと解いて精査して,それは質量とカップリングが分かれば精査できるので,そういうことをやると。
 それから,もう一つ,このダークマターの粒子とその次に重い粒子,この質量差が非常に小さい場合というのは,これはもうほとんどハドロンコライダーでは見えないです,LHCでは。この場合でも,リニアコライダーでは,ここから出てくるフォトンを使って精査できるということです。
 最終的にはこういう大統一みたいな,これはこの3つのカップリングを,これ,ラージハドロンコライダーで測ったgluinoのマス,それから,リニアコライダーで測ったチャージーノマスなどがどうなるか。うんと高いエネルギーに飛ばして,本当にこういうふうになるかどうか,そういうのも検証できるということです。
 まとめでございます。リニアコライダーは,ILCは,昨年,技術設計書が完成して,国際組織,Linear Collider Collaborationによって工学設計へと進んでおります。ILCはグローバルプロジェクトとして進んでいきます。ILCはクリーンな実験環境で,ヒッグス粒子をプローブとして,TeVスケールにおける標準理論を超える大分岐点の方向を見極めて,大統一やプランク・スケールでの物理を俯瞰して,それで,ヒッグス粒子の全貌を明らかにすることです。
 それから,トップクォークの精査によってヒッグスポテンシャルの安定性を調べて,それから,標準理論を超えるモデルを識別すると。それから,標準理論では説明ができない暗黒物質を形成する素粒子を探索して,発見の暁には精査して,暗黒物質を解明する。
 これらは,LHCやHL-LHCでの成果を凌駕するものでございますが,リニアコライダーが共に走ることによって,多くの相乗的な知見が得られるというわけです。
 以上でございます。
【梶田座長】  ありがとうございました。
 それでは,今頂きました説明に基づいて,何か御議論,意見交換,お願いします。
【中野座長代理】  ほかの実験と比べて,やはり,ヒッグスの結合定数,精密測定することによって,標準理論を超えるモデルが必要だというだけではなくて,どういうモデルかということが知れるというのが非常に大きいと思うのですが,やっぱりティピカルなパラメータによるとというところが非常に引っ掛かっていて,そのティピカルというのはどれぐらいティピカルなのだと。それで,もしそのずれが全く,その部位が,今目標としている精度で見られなかったら,それはニュースなのかどうか,それ自体がやはり一つの発見なのかということをお願いします。
【駒宮委員】  非常にいい質問です。例えばこのスーパーシンメトリーの場合,ここで言っているティピカルなパラメータというのは,これはこの大きなこれで見ていただくと分かるんですが,大体700,ここら辺ですね。ここら辺のことを言っております,700GeV。ですから,ほかのこういうモデルも多分そういうところを言っております,こういうやつ。
 だから,ほんとにティピカルなパラメータです。そんなに厳しくは攻めておりません。
【梶田座長】  はい,お願いします。
【中家委員】  今のとちょっと関係するのですが,やっぱりLHCのフェーズ1が走ったときに,超対称性が見えないということで,今のこのもともとティピカルだと考えられた超対称性のパラメータが大分厳しくなったというのがいろんな理論家の人の意見だと思います。もう来年,再来年には13TeV,14TeVが走ったときに,このティピカルなパラメータというのはLHCで精査されないのですか。
【駒宮委員】  これはこのとおり,精査されません。
【中家委員】  ILCの時代に……。
【駒宮委員】  これは精査されません。このパラメータに関してはですね。スーパーシンメトリーに関しては,大体gluinoのあれが2.3TeVぐらいですから,これはもちろんスカラークォークが重い場合で,いろんな場合があるので,スーパーシンメトリーというのはパラメータがいっぱいあって,それから,なおかつ,スーパーシンメトリーブレーキングというのでまず分かれますよね。それから,スーパーシンメトリー,その中でもパラメータがいっぱいありますよね。
 だから,どこにどうなるか分からなくて,要するに,LHCで発見されれば,いたということが分かるけれども,見えなかったと言って,いないということではないわけですよ。見えないという場合は2つあって,ほんとにそこにいないのか,若しくは,実験的に見えないのか。これが本当にはっきりとはよく分からない。
 だから,うんとハイルミノシティでもってどのぐらいできるかというのはやはりきちんとやっていただくというのは非常に重要だと思いますよ,LHCでは。
【梶田座長】  ほかに。お願いします。
【山中委員】  今のに関連してなのですけれども,LHCで精査されないのだとしたら,そのティピカルかと,そのパラメータをだーっと動かすと,先ほどのスプリッティングみたいなのが,ほんとにどれだけ動くのかというプロットは今ありますか。
【駒宮委員】  どういうプロットですか。
【山中委員】  だから,先ほど,超対称性と例えば複合ヒッグスのモデルで違いが見えるとありましたが。
【駒宮委員】  これは例えばこれはMAで,ほとんどMAとMH+-とMHというのは縮退しているのですけれども,これ,タンジェントβですね。ほとんどこの2つのパラメータなのですが,もう一つパラメータがあって,それはヒッグスとのカップリングのAというやつですね。そのパラメータをいじることによって,こいつは少し変わってきます。でも,本質的には変わりません。
 だから,ヒッグスに関して,これに関しては結構パラメータが少ないのですが,スーパーシンメトリーに関してはよく分かりません。いろんなパラメータがいっぱいあるし,SUSYのブレーキングの方法というのもいろいろなものがあるので,それのもちろんかなり否定されている部分もあります。ゲージメディエーションなんていうのは否定されていますからね。だから,今残っているそういうものの中でも,やはりパラメータが非常に大きいですね。
 それから,マスが結構近いと,厳しいです,LHCでは。だから,そこら辺のところはどうなのか分からないです。実際にLHCでやった後でも,ここでひょっとしたら見つかるという可能性だってもちろんあるわけです,もっと軽いところに。それは分からない。
【梶田座長】  はい。
【中野座長代理】  真空の不定性というか,ヒッグスのポテンシャルの安定性についてなのですけど,このような不安定なわけがないので,トップクォークの質量を精密に測って,不安定だということが分かったら,何か必要だということが分かるわけですよね。
【駒宮委員】  そうですね。
【中野座長代理】  そういう意味で,ほかのビヨンドスタンダードモデル,狙っている実験と同じだと思うのですけど,ここでの説明ではその複合ヒッグスのスケールを決めるとありますけれども,ほかのシナリオでは救えないのですか。だから,ここで多分精密測定することによって,いろんなことが分かると思うのだけど,例えば真空は不安定だと,今の理論の枠組みでは不安定だということが分かったら,それを救うのは複合ヒッグスしかないのか,それともほかの。
【駒宮委員】  いや,もちろんほかのもあると思います。
【中野座長代理】  いっぱいあるわけですか。
【駒宮委員】  あると思います。
【中野座長代理】  この場合は何が救うかは分からないけど,何かが救わなくちゃいけないということが分かる。
【駒宮委員】  この場合はね。それを,例えばヒッグスのいろんなメジャメントをやったり,直接探索をやったり,それから,LHCの結果と合わせたり,いろんなことを総合的に見て,どういう方向にこれからの素粒子物理学が向かっていくかというのが分かるということですね。
【梶田座長】  ほかには。はい,お願いします。
【酒井委員】  物理の話はいろんな広がりがあるし,個人的には精密測定は,好きなのですが。
 ちょっとシニカルな質問をさせていただくと,これだけ意義あることは国際共同で進めると。それしか解がないと思っているわけですよね。そうだとすると説明されたアメリカのP5の結論でアメリカがやるとなぜ言わないのだろうか。 自分勝手なことしかやらないアメリカなので,国際協力でやると言いそうなものだが,でもやらない理由があるのですよね。どうしてでしょう。
【駒宮委員】  大変いい質問です。それは,アメリカが最初そういうふうにやろうとしたのです。やろうとしたのだけど,うまくいかなかった。それ,今から5年ぐらい前に,それを実際やろうとしたのですね。アメリカの場合というのは予算の勘定の仕方が普通の勘定の仕方ではないのです。インフレーションとか,それから,何とか,全部入れるのですね。それから,コンティンジェンシー。そうすると,膨らむのです。そのお金で普通勘定しているのです。
【酒井委員】  何を言っているのか。
【駒宮委員】  ちょっと待ってください。それで,ここで言ったお金とそれとは随分違ったわけですね。それでもってアメリカのDOEに持っていったところ,これは大き過ぎると,あなたたちが言っているのとは違うではないかということで,アメリカはそのときの課長さんが左遷されて,それで終わっちゃったのです。1回終わったのです。
 だから,それから立ち直って,それから我々は必死になってそれを立ち直らせようとしまして,いろんな努力をして,それでこのP5があって,P5で少し上がってきたということになります。
【酒井委員】  でも,なぜ自分たちでやると言わないの。
【駒宮委員】  アメリカのことを僕に言われても困ってしまう。
【酒井委員】  だって,正しい見積りをしたところと,違う見積りのところを比べたというのは何かちょっとロジカルにおかしいような気もするけどね。
【駒宮委員】  いや,ロジカルにおかしいといわれても,私はそういうふうに聞いております。
【梶田座長】  はい,お願いします。
【横山委員】  「近頃の動き」というスライドで,2010年にILCを日本がホストするという提案が,拡大高エネルギー委員会が承認されたということが書かれてございますが,この点について社会との観点から質問します。
 こうした国際的な動きの中で,日本が自ら手を挙げるきっかけになったことと,及び,この時期になったことは東日本大震災後と復興予算との関連がございますか。
【駒宮委員】  多分,復興予算とは関係ないです。復興予算と絡めると,非常に面倒くさいことになるので,これは復興予算とは絡めないということにしたのです。
【横山委員】  では,なぜこの時期に日本にホストするという提案が出て承認されたのでしょうか。
【駒宮委員】  それはまさにこのヒッグスの発見ですね。ヒッグスの発見が7月にあって,その後の物理学会でこういう提案をしようと思ったら,ちょっと待てと一部の方々が足を引っ張りまして,それから,幾つか,何回かいろんな話合いをやって,この拡大高エネルギー委員会というのを開いて,そこでこういうのを承認していただいたという経緯でございます。
【梶田座長】  そろそろ予定時間なので,最後でお願いします。
【山内委員】  簡単な質問なのですが,23ページにヒッグスのずれのパターンという図があるんですが,これは2,700インバースfbをとったときに1シグマまであると,そういう理解でいいですかね。
【駒宮委員】  そうです。1シグマです。
【山内委員】  それ,5シグマでエクスクルーズできている点はほとんどないというふうに見えますけど,それ,正しいですか。
【駒宮委員】  はい。
【山内委員】  5シグマで標準理論からずれているのをはっきりする点はほとんどないというふうに見えますが,それ,正しいですか。
【駒宮委員】  そんなことはないと思いますね。
【山内委員】  23ページです,次のページ。
【駒宮委員】  非常に重要なのはこいつですよね。
【山内委員】  ええ。
【駒宮委員】  これ,ちょっと横棒がずれていますが,これ,多分0.3%ぐらいなのです。だから,これ,3%なので,これ,10シグマです。
【小磯委員】  その絵は,こちらの紙の資料とちょっと違っているのですが。
【駒宮委員】  失礼しました。それが違うのは,このトップクォークの図が間違っていて,資料は実は,もともとはこの図だったのですね。これはこのトップクォークを,550GeVに,ちょっとエネルギーを上げると,トップクォークのこのプレシジョンがずっとよくなるのですね。これを見せてしまった,これをそこに入れてしまったのです。だから,これはうそなので,大変申し訳ございません。
 それで,急きょ,それが分かったので,こっちではこれに差し替えたということでございます。申し訳ございませんでした。
【小磯委員】  ということは,500GeV以上のところに行くと,非常に効率よく成果が得られる可能性があるとおっしゃっている。
【駒宮委員】  500GeVより,ちょっと上げるとね。
【小磯委員】  ちょっと上げると。
【駒宮委員】  ちょっと上げるというのは,要するに,これ,500GeVに行ったときですから,今から例えばグラディエントがそのくらいまで,10%ぐらい上がっているとか,そういう状況だったら,もちろんできます。でも,本当にこのトップクォークのカップリングの精査が,それだけの,そういうグラディエントが上がるということがなかったら,お金に匹敵できるかというのはしっかりと議論しなきゃいけないことだと思います。でも,多分,そのグラディエントが上がればできると思います。
 以上です。
【梶田座長】  いろいろと御議論はあるかと思うのですけど,一応ここでひとまず収めさせていただきたいと思います。
 それで,多分,御意見等あれば,事務局の方へ別途出していただくということでお願いいたします。
 それで,この2つの説明を踏まえて,改めて論点や今後のスケジュールについて,皆さんの方から御意見を伺いたいとは思うのですけれども。少なくとも,先ほど最初にありましたように,資料3の論点のイメージでもいろいろと御意見ありましたので,これについても,今日の意見を踏まえて,適宜アップデートを頂くということで考えていきたいと思います。
 ほかに何か特に本日の議論を踏まえまして,御意見等ございますでしょうか。よろしいですか。
 では,本日の議論はこれで終了とさせていただきたいと思います。
 最後に事務局の方から連絡事項がありますので,お願いいたします。
【大土井素粒子・原子核研究推進室長】  事務局でございます。1つ確認でございますけど,駒宮先生,この今日の資料を文部科学省のWebサイトに掲載するのですが,差し替えたバージョンで掲載されますか。
【駒宮委員】  そうしてください。お願いします。
【大土井素粒子・原子核研究推進室長】  では,すみません,ファイルを送っていただければと思います。
【駒宮委員】  お願いします。
【大土井素粒子・原子核研究推進室長】  あと,資料3に,先ほどの論点のイメージでございますが,引き続き,先生方,お気づきの点がありましたら,メールでお知らせいただければ,次回の会合にアップデートして使いたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
 次回,また日程調整を別途行わせていただきますけれども,例えば,欧米の現状について,御説明,御報告いただければと思っております。特に先ほどの説明等でございましたとおり,CERNのLHC,この動向はやっぱり非常に気になるところでございますので,これにつきましては,彼らが持っている将来計画でありますとか,今,LHC,アップグレード,その後でどういうふうな動向があるかという点につきましては,先ほどの自己紹介の際に,唯一,LHCで実験していると言われた徳宿先生にお願いをしたいと思っております。
 あとは,P5レポートにつきましても,また,別途御説明,御報告をさせていただきたいと思っております。
 また詳細につきましてはメールで御連絡さしあげます。以上でございます。
【梶田座長】  ありがとうございました。
 ほかに特になければ,これで本日の会議を終了ということでよろしいでしょうか。はい。
【岡村委員】  次回がいつになるかぐらいの当初アイデアはないんですか。
【大土井素粒子・原子核研究推進室長】  7月の下旬をイメージしております。
【岡村委員】  下旬だけ。
【大土井素粒子・原子核研究推進室長】  すみません。またメールベースで御相談させていただきます。申し訳ございません。
【梶田座長】  では,どうもありがとうございました。
【大土井素粒子・原子核研究推進室長】  あと,資料を後で郵送しますので,もしも重たいと言われる方は,残して帰っていただければと思います。

―― 了 ――

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-- 登録:平成26年09月 --