戦略的な基礎研究の在り方に関する検討会(第1回) 議事録

1.日時

平成26年4月22日(火曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省16階 科学技術・学術政策研究所会議室
〒100-8959 東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 戦略的な基礎研究に関する現状整理について
  2. 戦略的な基礎研究に関するファンディング施策について
  3. その他

4.出席者

委員

大垣座長、有信委員、大隅委員、笠木委員、近藤委員、角南委員、竹山委員、辻委員、中小路委員、西尾委員

文部科学省

小松研究振興局長、山脇大臣官房審議官(研究振興局担当)、安藤基礎研究振興課長、岩渕基礎研究推進室長、浅井基礎研究推進室長補佐

5.議事録

【浅井室長補佐】
 定刻を過ぎました。このたび研究振興局として、戦略的な基礎研究の在り方に関する検討会を設置し、水道技術研究センターの大垣理事長に座長をお願いいたしました。
 それでは、大垣先生、お願いいたします。

【大垣座長】
 それでは、ただいまより戦略的な基礎研究の在り方に関する検討会の第1回を開会いたします。本日は、大変御多忙の中お集まりいただきありがとうございます。座ったままで失礼いたします。
 私が今紹介にありましたように、本検討会の座長を務めます公益財団法人の水道技術研究センターの大垣でございます。このテーマが戦略という言葉と基礎研究という文科省にとっては大変重要なキーワードが2つも入ってまして、かつ様々な他の政策等がある中で、この戦略的な基礎研究の在り方というものをどう議論したらいいかということで、むしろなかなか難しい課題ではありますけれども重要な課題ですので、委員の方々、是非よろしくお願いをいたします。
 なお、本検討会は原則公開としております。
 では、本日御出席いただいております委員の皆様、及び文部科学省からの出席者について、事務局より御紹介をお願いいたします。第1回ですので、委員の皆様は紹介されましたら一言ずつ御挨拶をお願いいたします。手短にお願いいたします。

【浅井室長補佐】
 それでは、まず本日御出席いただいております委員の皆様について御紹介します。
 東京大学監事、有信委員でございます。

【有信委員】
 有信です。よろしくお願いします。
 私は今東京大学で監事をやっておりますけれども、人生の大半はずっと東芝という民間企業で主として研究開発に携わってまいりましたので、その分の知見をお役に立てればと思っております。よろしくお願いします。

【浅井室長補佐】
 科学技術振興機構研究開発戦略センター上席フェロー、笠木委員でございます。

【笠木委員】
 笠木でございます。有信さんと逆で、私は人生の大半を大学で過ごしておりまして、バックグラウンドは機械工学でございます。現在は、JSTの研究開発戦略センターというところで科学技術政策立案のお手伝いをしております。よろしくお願いいたします。

【浅井室長補佐】
 神戸大学大学院工学研究科教授、近藤委員でございます。

【近藤委員】
 近藤でございます。よろしくお願いいたします。
  私、神戸大学で研究するとともに、理化学研究所の横浜研究所の方でもチームリーダーとして研究を行っております。そういう意味で、ちょっと大学とそういった研究機関、少し違うところもあるし、そういったところを日頃感じてはおります。それから、日頃はどちらかといったらこういう研究費を取る側なんですけれども、そういう中でもいろいろと考えているところはございますので、何かお役に立てればと思っております。よろしくお願いいたします。

【浅井室長補佐】
 政策研究大学院大学教授、角南委員でございます。

【角南委員】
 角南でございます。
 専門は科学技術イノベーション政策ということで、最近はハイリスクな研究開発をどうやって国が支えていくかというようなことを、欧米の例を見ながら我が国でどういう検討ができるのか研究会としてやってきました。引き続きよろしくお願いします。きょうはちょっと学内の会議でどうしても出なきゃいけなくて、途中で退席いたします。失礼いたします。

【浅井室長補佐】
 早稲田大学理工学術院先進理工学部教授、竹山委員でございます。

【竹山委員】
 早稲田大学の理工学部の竹山と申します。よろしくお願いします。
  専門は生物工学、バイオテクノロジーです。今回の戦略的という言葉が非常によく多様に使われる、出口が重要視される分野ですが、基礎が非常に大事だという思いがいつもあります。今回は、勉強させていただきながら現場に近いところから発現させていただきたいと思います。よろしくお願いします。

【浅井室長補佐】
 朝日新聞社オピニオン編集部記者、辻委員でございます。

【辻委員】
 朝日新聞の辻でございます。私は、記者として科学技術関係を担当してまいりました。外から見る立場です。どうぞよろしくお願いいたします。

【浅井室長補佐】
 京都大学学際融合教育研究推進センター特定教授、中小路委員でございます。

【中小路委員】
 中小路でございます。よろしくお願いいたします。
 バックグラウンドは、コンピューターサイエンスとコグニティブサイエンスで、ヒューマンコンピューターインタラクションという、人間と技術の関わりのところをデザインするような研究をしてまいりました。現在、京都大学でデザイン学という、社会問題をどのように解決していくかを新しい学問領域として立ち上げるというところにおりまして、政策をどのように研究プログラムに落としていくかのデザインとしても、研究テーマとしても興味のあるところです。よろしくお願いいたします。

【浅井室長補佐】
 大阪大学大学院情報科学研究科教授サイバーメディアセンター長、西尾委員でございます。

【西尾委員】
 西尾でございます。私はデータベース関連の情報科学系の研究をいたしております。現在、科学技術振興機構で研究主監を務めておりますが、その職務の中でERATO、さきがけ、それからCREST等のグランドデザイン的なことを協議しております。そのような観点から、この委員会におきましていろいろな議論ができますことを期待しております。どうかよろしくお願いいたします。

【浅井室長補佐】
 なお、大隅委員は諸事情により、多少遅れて出席されるという御連絡を頂いております。また、阿部委員、片岡委員につきましては、本日欠席の御連絡を頂いております。
 それでは、文科省側も御紹介させていただきます。
 研究振興局長、小松でございます。

【小松研究振興局長】
 小松でございます。後ほど御挨拶させていただきます。よろしくお願いします。

【浅井室長補佐】
 大臣官房審議官(研究振興局担当)、山脇でございます。

【山脇審議官】
 審議官の山脇です。よろしくお願い申し上げます。

【浅井室長補佐】
 基礎研究振興課長、安藤でございます。

【安藤課長】
 安藤でございます。よろしくお願いします。

【浅井室長補佐】
 基礎研究推進室長、岩渕でございます。

【岩渕室長】
 岩渕です。よろしくお願いします。

【浅井室長補佐】
 なお、私は、基礎研究推進室室長補佐の浅井と申します。よろしくお願いいたします。

【大垣座長】
 それでは、第1回の検討会の開会に当たり、小松局長より一言御挨拶を頂きます。
 よろしくお願いいたします。

【小松研究振興局長】
 失礼いたします。
 本日は、お忙しい中お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
 御挨拶といいますか、一言趣旨説明だけをさせていただきたいと思っております。私どもの担当しております分野では、いわゆる運営費交付金や私学助成のような基盤的経費と、それから競争的な経費との中で、デュアルサポートのようなことをどのようにしていこうか考え、よりよいものを求めていつも努力をし、また正直言えば少し苦心もしているという現状でございます。
 今の政府の動向からいたしますと、比較的見えやすいといいますか、社会の身の回りの応用開発に近いところについてどう力を入れるかというのが最近盛んに論じられております。一方、科学技術・学術審議会では、学術の基本についてどのように考えて、支援していくかということについても場が設けられて、議論が今盛んに進められております。
 全体を考えますと、開発研究からそれを有効に進めるために、より基礎の方に少しずつ移るというのは、これはこれで分かりやすいわけでありますけれども、他方で、自由な発想でボトムアップでやっていく学術研究から応用開発の方へ、応用開発という言い方もちょっと正確ではないんですけれども、一つの目的なりを設定したような研究の方へどのように連絡がつけられるかということについては、しっかり検討してみないといけないと考えているところでございます。そこで、先ほど自己紹介にも少しお話がございましたように、様々なバックグラウンドを持たれている科学技術に関係の深い方々にお集まりいただいて、その辺を整理したいと考えている次第でございます。
 2点申し上げますが、1つはそういう意味ではこの会議の全体的な目標に関することでございますけれども、こちらにつきましては、例えば実際の支援手段ということになりますと、科研費といったようなもので、優れた研究成果がたくさん出てくるわけですけれども、そういったものを広く見渡して探索をすると、基礎学理の方に行くものというのもあるでしょうし、それからいわゆる技術イノベーション的なものに行くものもあるでしょうし、そういったものの中で、技術イノベーション的なものに行くような形、最近の言葉で言うところの出口を見据えた研究。出口もいろいろ多義的なんですけれども、そういった最近の中心になっている議論での出口を見据えた研究というようなことを考えたときに、説得力ある方法、あるいは効果的な方法で自由な基礎研究からつなげられていくようなファンディグなどの仕組みについてどう考えるかということを議論していただきたいというのが根本的な趣旨でございます。これには、内閣府などで最近新制度などがいろいろできておりますけれども、こうした新制度との関係も考えながら、限られたリソースをできるだけ最適に現場にとってより効果的に配分する、あるいは社会的に理解の得られる方法で配分する、そういった問題の整理の仕方を何とかしていきたいということが趣旨でございます。
 もう一点は、大垣先生にお任せをいたすわけでございますが、本日は最初でございますので、戦略性と基礎研究といった今私が申し上げましたようなところに係る現状の整備、それから行政の支援施策としてはファンディングのことが中心になりますので、その前提の在り方について少し皆様方の御議論、御見識をお伺いしたいと思っております。その中で、私どもが、今持っている情報をとりあえず整理して御提供申し上げたい、これが本日の趣旨でございます。
 どうぞよろしくお願いいたします。

【大垣座長】
 ありがとうございました。
  それでは、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【浅井室長補佐】
 本日の資料は、資料1-1から資料4-2までと、参考資料1から6までとを用意させていただいております。過不足ございましたらお申し付けください。

【大垣座長】
 よろしいでしょうか。
 それでは、議題に入る前に、事務局より本検討会の方向性及び今後のスケジュールについて説明をお願いいたします。

【岩渕室長】
 お手元、資料2を御用意いただければと思います。資料2番、「戦略的な基礎研究の在り方に関する検討会の方向性及び今後のスケジュール」です。
 方向性につきましては、ただいま局長から御挨拶申し上げましたとおり、用途を考慮したような基礎研究の進め方、特にファンディングや研究環境整備について、施策の基本的な在り方を御検討いただくということが、この検討会全体の方向性ということになっています。

 今後のスケジュールとしては、委員の皆様には事前に御連絡を申し上げておりますとおり、4回程度の開催を予定しています。本日から始めまして、次回は5月8日。これはファンディング施策あるいは研究環境整備施策のそれぞれの戦略性についての個別の議論。第3回で少し第1回、第2回の議論を取りまとめるような議論をしていただきまして、第4回で可能でしたら、検討会の方向性を報告のような形でまとめていただくための議論をしていただきたいと。我々としては、この4回の検討会の成果を踏まえて、平成27年度、次年度の予算編成の要求の参考にさせていただきたい、あるいは平成27年以降の戦略の策定に実際に活用させていただきたいと思っています。以上です。

【大垣座長】
 ありがとうございました。
 それでは、議題の1に入りたいと思います。議題1の戦略的な基礎研究に関する現状整理につきましては、まず事務局より資料について御説明いただき、その後で委員の皆様から御意見を伺いたいと思います。
 それでは、事務局より説明をお願いします。

議題1:戦略的な基礎研究の在り方に関する現状整理について

【岩渕室長】
 資料の3-1と3-2について御説明を申し上げます。戦略的な基礎研究に関する現状の整理という資料です。
 戦略的な基礎研究の在り方の検討を始めるに当たって、事前に委員の皆様と意見交換をさせていただき、そもそも基礎研究における政府の役割とは何なのか、あるいは基礎研究を進めていく上で必要な政府の戦略とはそもそもどういうものなのか。あるいは、そうした戦略を考えていく上で、今後の検討課題とはどういうものなのかというあたりを、まず最初に全体像を示した方がいいのではないかという御指摘を皆様から頂いておりましたので、1枚紙を作成してみました。これを基に少し御議論を、御意見を頂ければと思っています。
 まず、資料3-1の1枚紙の上の方から御説明申し上げます。基礎研究における政府の役割という点です一番上の四角い部分です。基礎研究につきましては、その成果は論文などの知識という形態をとるわけです。基礎研究のそもそもの定義、OECDのFrascati Manualで言います基礎研究の定義とは新しい知識を得るための活動ということです。その成果は知識、論文ですので、これはいわゆる経済学で言うところの公共財、対価を払わなくても誰もが同時に使えるというような、公共財としての性質を有するということで、これは市場を通じた供給は困難であるということが言われてはいるわけです。したがいまして、基礎研究の振興ということは、基本的には民間セクターというよりは、政府の役割であると一般的に言われているわけです。
 また、2つ目の丸のところですが、応用研究というのは、これもOECDのFrascati Manualで言いますと、知識の利用というものを特定の目標のために行うということですので、用途が特定性があるというところが応用研究の特徴なわけです。応用研究につきましては、したがいまして、用途にニーズを持つ者、企業等が想定されるわけですが、が実施するというのが基本であろうと思われるわけです。ただ、ニーズを持つ者というのは、例えば安全保障のような形であれば、公共セクターがこのニーズを持つわけですし、水道なども典型的に政府が供給する財ですけれども、いずれにせよニーズを持つ者がこの応用研究を遂行するというのが基本です。しかしながら、市場の失敗と申しますか、外部経済の存在があったり見通しの悪さなどがあって市場が十分に機能しないという場合があるわけで、こういう市場が失敗し十分に機能しない場合においては、政府の関与が期待されまして、外部経済、共通基盤技術、インフラ技術、見通しの悪いハイリスク研究などの場合については、政府の役割が期待されるということです。
 この検討会におきましては、この中で基礎研究のところを扱うということですが、この基礎研究の中でも特に基盤となるような学術研究のところについては、学術分科会等の場でも既に議論をされているところですので、この検討会の議論の対象とはせず、ここでは主として根本原理を追求するとともに、用途を考慮した研究、いわゆる用途を考慮した基礎研究の部分について焦点を当てていきたいと考えています。
 右側に、ストークスによる研究分類という4象限の絵が描いてあるかと思います。これは1997年にストークスによって分類された研究を分類する割と一般的な国際的に言われている手法です。縦軸は根本原理を追求する活動であるかそうではないのか。横軸の方は用途を考慮した研究であるのかそうではないのか。こうした形で4つの象限に分けて研究を分類するということが行われているわけですが、学術研究あるいは大学の典型的な研究というのは赤いエリア、純粋基礎研究、ボーアの象限の研究であるというふうに言われるわけです。また、企業の技術開発というのは、通常エジソンの象限といいますか、右下にあります純粋応用研究という象限であるわけですが、この検討会では、その右上の象限、用途を考慮した基礎研究、パスツールの象限の研究というところに特に焦点を当てていきたいと考えています。
 左側に点線で囲んでおりますが、用途を考慮した基礎研究におきましては、これはストークスの定義上明らかなとおり、純粋基礎研究と純粋応用研究の性格を併せ持つというようなものでございます。根本原理を追求するとともに用途を考慮するということでございます。
 したがいまして、併せ持っている観点から、2つのアプローチがあるのではないかということで、アプローチ1、2というふうに書かせていただきました。用途を考慮した基礎研究はおおよそ2つのアプローチがあろうと。アプローチの1つ目は、「出口を見据えた研究」ということで、これは純粋基礎研究から展開し、用途を考慮するに至ったような研究であるということです。研究者の自発意思に基づくという純粋基礎研究の性格に基づきながらも、社会経済的な観点、社会経済的な価値観、用途を見据えながら行われる基礎研究であるということであり、主体は研究者ということになるわけです。
 他方、エジソンの象限からパスツールの象限に至るような研究もあろうと。これはアプローチの2番ということで、「出口から見た研究」と書かせていただいています。純粋応用研究から展開し、根本原理を追求するに至るというような研究の種類です。直面する明確な課題の解決のために必要な研究を行うというような性格を有するものです。これは、主体は研究者以外ということになろうかと思います。
 用途を考慮した基礎研究に必要な政府の戦略ということを真ん中ぐらいに書かせていただいておりますが、こうした用途を考慮した基礎研究におきましては、この推進に当たって何らか政府の戦略が必要であると考えております。この戦略というのは2つのアプローチごとに若干違うものが必要ではないかということで、我々の整理を書かせていただきました。まず、出口を見据えた研究に必要な戦略はどういうものかといいますと、ここに書いておりますとおり、推進主体は研究者です。研究者はそもそも根本原理の追求というものを目指す、そういう職種。この研究者が持つ画期的な発想と、社会経済的な価値観とか用途、こうしたものをすり合わせる、つなげるというファンクションが恐らく必要だろうと。このつなげるという機能、あるいは政策の意思、こうしたものがいわば政府の戦略と言えるのではないかと考えておるわけです。
 他方、用途を考慮した基礎研究の中でも、出口から見た研究に必要な戦略は若干趣が異なるのではないかと思っております。出口から見たタイプは、用途がそもそも特定されている研究でありますので、本来的に公共財かどうかというのはおのずと明らかではないということです。あえて政府が、この用途が特定されている研究を推進すべき理由や適切な推進方法、政府の関与の方法といったことについてきちんと整理をする必要がある。こういう意味で、政府の関与の在り方を戦略として明確化する必要があるという意味で、この出口から見た研究には政府の戦略が求められる。今申し上げた出口から見た研究に必要な政府の戦略というのは、おおむね純粋応用研究、エジソンの象限の研究に政府が関与する場合のロジックと共通的と思っています。
 以上のようなことが、我々の整理です。
 これらをふまえ、今後の検討課題として、次のようなことがあるのではないかと一番最後に書かせていただきました。この場におきましては、近年注目されている用途を考慮した基礎研究、パスツールの象限の研究に求められる政府の戦略とは何か、政府の政策とは何かということを検討していただくことが非常に大事。特に、出口を見据えたタイプの研究につきましては、純粋応用研究とは違う、固有の戦略が必要となりますので、検討を深める必要があると考えております。本検討会の最大の検討事項であろうと思っております。
 検討の軸としては、これはまた後で御説明をしたいと思いますが、例えば、研究者の画期的な発想をどうやって発掘するのか。特に、大きな社会的インパクトを与えるような画期的な着想というのはどう発掘するのか。そのための制度設計はどうすればいいのか。あるいは、社会経済的な価値を見据える際に、考慮すべき観点というのはどういうものか。日本の強み、弱みの分析、社会経済の展望の仕方、こうしたもののやり方はどうあるべきなのか。最後に、研究者による根本原理の追求という活動と、社会経済的な価値の創出という活動が両立するような制度設計でないと、この出口を見据えた研究というのはうまくいかないということで、その両立可能な制度設計というのはどういうものであるべきか。雑駁ですが検討の軸としてあるのではないかと書いています。
 もっとこういう観点があるのではないかと、その辺の御意見を様々頂ければと思って作成させていただきました。以上です。

【大垣座長】
 ありがとうございました。
 先に、大隅委員がいらっしゃいましたので、ちょっと一言お願いします。

【大隅委員】
 申し訳ありません。遅くなりました。東北大学の大隅です。どうぞよろしくお願いいたします。

【大垣座長】
 今、事務局から先ほどの基礎研究の中身の説明といいますか、構造を説明いただきました。そしてまた戦略とは何を考えているかということも御説明いただきました。
 それでは、ただいまの説明を頂いた内容に関しまして、御意見を頂きたいと思います。予定では30分ほどはとっておりますので、どうぞ御自由にお願いしたいと思いますが、いかがでしょう。

【有信委員】
 名前の順番でこっちからいっていいですか。

 今の話を伺っていると、やっぱり定義から入るからかなり難しくなるなという感じで、現実に行われていることの例を少し拾ってみて、ちょっと見方は違うんですけれども、例えばクラインというスタンフォードの教授が例えばトヨタ等における研究開発のやり方の研究でかなり突っ込んだ研究をやっているんです。その結果がクライン・モデルという形で、モデルばっかりもてはやされているんですけれども。そのときに言ったのは、やっぱり開発軸と研究軸とは延長上にあるものではなくて、全く独立してある。つまり、開発のプロセスで、実際に必要なミッシングリングというか、必要な知識を得るための研究にまた入っていくと。そのときの研究というのは当然ベーシックな研究もあり、ここで言うappliedと言われているような研究もある。
 そういうような見方をされていて、現実的に振り返ってみると、例えば岩崎先生がやった垂直磁化という新しい現象は、実際にさんざんそれで研究がやられたんだけど、結局日の目を見なくて、最終的にやっと日の目を見たのはジャイアントマグネティクス、GMRという全く別の新しい原理によってハードディスクドライブの装置を作ろうというときに、ジャイアントマグネティックレゾナンスという現象と、それからパーペンディキュラーの、垂直磁化マグネティクスと組み合わせることによって今のハードディスクドライブが実現したという経緯があります。したがって、ここで言われている基礎研究は、ずっと時間をかけてほかの新しい原理と結びつくことによって日の目を見るという例もある。
 それから、もう一つは、例えばジャイアントマグネティックレゾナンスという原理を使ってハードディスクドライブを作ろうとしたときには、通常ある材料だとマグネティックレゾナンスのMR比というのが全然現実的に使い物にならない。つまり、SNがものすごく悪くて。それで材料探索の研究から始めていくわけですね。それから、実際にそれをハードディスクドライブにしようと思うと、様々な技術革新がないとディスクにはできないというプロセスがある。
 何が言いたいかというと、一つはいわゆる基礎的な研究というのと開発というのが、単純に線上で延長上にあるものではないということと、それから開発のプロセスで、やっぱり基礎研究も必要になるので、そこのところを配慮しなければいけないということと、基礎研究が時間が掛かるというのは、研究をやっている時間が掛かるのではなくて、むしろそれが実現して役に立つのに時間が掛かるという、その辺を勘違いをして、単純に研究時間が長いものが基礎研究だというふうに考えがちなんだけど、もちろんそういう場合もあるんですけどね。そういう場合もあるんだけれども、そうではない、必ずしも一般的にそういうことは言えないということをやっぱり注意して、その中でその戦略性ということのレベルをきちんと考えていかないと間違えたところに行ってしまう。もう少し有効に、アピール性の高いものにできるんじゃないかという気はしますけれども。

【大垣座長】
 ありがとうございます。
 では、角南先生。

【角南委員】
 済みません、もう出なきゃいけないので。
 有信委員が言われたみたいに、この定義というのはある意味で基本的には実態どれぐらいの意味があるかということです。例えばプリコンペティティブリサーチというのはアメリカでは政府が積極的に関わるべきエリアであって、コンペティティブリサーチは市場に任せて政府がやるべきでないという考えがありますが、これは後付け的にできてきたんだと私は思っています。この市場の失敗と政府の失敗のバランスは、経済学的な理論の中ではまだしも、実際の政策になってくると非常に複雑な問題になります。それと、後で多分実際にファンディングの制度設計の議論のときに出てくると思うんですが、ここでもっと重要な視点は、研究者と政府の間でコントラクトを結ぶということなので、コントラクトの中身がどうなっているのか。これは我が国においては非常に難しい問題を抱えていると私は思っています。
 最近NIHの研究で、研究者のセレンディピティ、つまり偶然性が重要な研究を支えていて、それをNIHはうまく制度に取り込んでいるというのです。国に求められているのは、実はそういう設計をうまくやることです。
 大きな未知の山を登っていく研究であれば、シェルパのようにPMと研究者が一緒に歩んでいくような仕組みというのを我が国も持つときにきています。それがもしかしたらここでいう戦略性と基礎との関係というところのもう一つの視点かなと思っています。

【大垣座長】
 ありがとうございます。
 どうぞ。

【中小路委員】
 御説明いただいた内容の中に3つコンセプトが出てくると思うんですね。出口ということと、用途ということと、社会的経済価値。お伺いしている用途が見つかれば、それは出口で、そこには社会的経済価値があってっていう、何となく暗黙のイコールで使われているように思うのですが、昨今の、特に技術を見てみるとそうではないと思うんです。例えば、用途があればすぐ出口かというと、使っていきながら何年か後とかに効果が出てくること。ツイッターの用途は短いショートメッセージを書くことですが、あれが5億人分が集まったときに使えるいろいろな効果があります。出口というのは、その効果が出てきたときに初めてじわじわ見えてくるものであり、また、そこに今度は社会的経済価値を見いだすか否かは、別の問題です。
 そのときに用途、Use-inspired basic researchから用途という言葉を多分チョイスされているんだと思うんですが、「使う」という言い回しもそぐわない状況が多くなっていると思います。そこらじゅうにプロダクトがあって、人間は、「使っている」とは思っていないけれども、何だか人間と親和性があって人々の暮らしがよくなっていく。で、そういうことを見据えた上で、日本はそこで世界を牽引していけばいいと私は思います。気配りとか空気が読めるとかいう文化なので。そうすると、出口とか用途とか社会的経済価値ということの3つをぐにゃっとしたままこれを戦略的に進めることは余り効果的でないように思います。どの部分を本当に推したいのか。一般的に考えますと、社会的経済価値は経済産業省が支援する研究がすることじゃないのかなと思います。出口というところと用途で、用途という言葉のチョイスも余りアカデミックから見ると何だかちょっと居心地が悪い。何が主語で、誰がユーズするのかがよく分からない。そういう意味で、このUse-inspired basic researchって、取っ掛かりとしての考え方はいいと思いますが、もうこれを超えたモデルや用語を文科省なりこの場で作り出して、アメリカなり世界に教えてあげるなり何なりするぐらいの気概で、せっかくのこういう機会なのですればいいんじゃないかなと思います。

【大垣座長】
 ありがとうございます。
 どうぞ。

【西尾委員】
 御説明いただいたことを、別の見方からするとどうなのかということで発現させていただきます。以前から思っていることですが、純粋な応用研究というエジソン型というのは、多分、経済産業省が推進していますNEDOとかが該当するように思います。その場合は、プロジェクトの推進において学理として新規なもの、あるいはオリジナルな根本原理とかの創出はなくてもよいのではないか、と思っております。襲来から知られている原理や研究成果をベースに、いろいろなアイデアを寄せ集めてでも最終目標にとにかく行き着くことが求められる研究開発であると考えております。それに対して、純粋基礎研究というのは、自らの発想で行うものであり、オリジナリティが絶対的に要求されるものと考えております。
 それに対して、今回、特に議論の対象であるパスツール型というのは、目標の与え方、戦略をどう与えるかということは、非常に大きな課題ですけれども、一旦、その戦略目標が与えられたときに、その目標を達成すると同時に、プロジェクトを推進した結果としてオリジナルなアイデアであるとか、新規性を持った成果が最終的に出てくることが問われると考えております。以上のような見方をしますと、三つの型の相違を論じるときには有効であると思います。

【大垣座長】
 ありがとうございます。
 ほかに。笠木委員。

【笠木委員】
 まず、現在の国際情勢からいうと、国ごとに本当に競争が厳しくなっていて、OECDの議論などでも、これからはやはり国が前に出ていかないといけないと変わってきている。今までは産官学の3つのセクターが協力してやりましょうという、ソフトな関係だったのですけれども、むしろ国が相当前に出てイニシアチブをとらないといけないと。あるいは、そういったことが国家間の競争になっている気配があるのですね。御承知のように、アメリカでいうと、DOEとかNIHとかDARPAという組織が動いていて、ヨーロッパですとHorizon2020が始まります。そういう中で見えてくることに照らして、我々が描いていることは、大学の基礎研究に発して、イノベーションが起こって経済成長があり、そしてそれが社会的なサービスにつながるという、リニアモデルではないとは思ういますが、それにしてもその姿は単純すぎるのではないかと思っていまる。したがって、出口といったときの出口が何なのかということは、この検討会で是非詰めておかないといけないのではないかと思います。
 例えば、iPhoneはよく知られているように、タッチスクリーンとか、加速度センサーとか、GPSとか、そういう基盤技術は、アメリカでもDARPAをはじめとした基礎研究が創りだした。そういう成果を集めて、いわばテクノロジーブレンディングを起こして、人がどこでもつながっていたいというようなニーズとマッチングさせたわけです。そういう技術の組合せとニーズとの出会いがあって初めてイノベーションが起こっている。日本で言うと、典型的なのは交通系のプリペイドカードですね。もともとFeliCaというすばらしい技術があったけれども、それを応用してニーズにつなげたところで大きな波及効果を生んでいるんですね。ですから、これからのイノベーションや経済成長が、もちろん素朴な基礎研究の成果が種になって、それが成長してというパターンもあり得るのですが、それ以外のパターン、スキームが非常に重要になってくる時代ではないかという気がするんですね。ですから、そういうことにも貢献するような基礎研究の在り方と、国が相当前に出て引っ張る形をどうやって作るかということも、本検討会で議論されるとよいと思います。
 それから、これから出口を議論するときに肝腎なことは、この言葉が現場の研究者に分かるかということですね。つまり、出口から見据えたということと、出口から見たという言葉の違いが、研究者の側からすると、なかなか理解し難いところがあるのではないかと。現状でも、いろいろな研究開発事業が文科省はじめ各省で走っています。私自身も経験がありますけれども、現場の研究者にすれば自分がやりたい研究の方向は決まっているわけですね。あるいは、自分がある種のシーズを持っていて、これを大きく広げたいということは考えている。そして日々、研究公募を見ているわけです。そこで、どこに自分の研究、やりたいことが一番はまりやすいかということで判断し応募するんですね。したがって、そうなると出口を見据えたも出口から見たもほとんど区別がつかないという状況が起こり得る。ですから、JSTで進めているいるCREST・さきがけ等にしても同じ悩みを持っていて、恐らくPDとかPOの人たちはある種の意識を持って取り組むのですが、参加する人たちにはその違いが見えない。ですから、この点もきちんとした議論をすべきだと思いますが、最終的にそれが研究者にとって十分メッセージとして分かりやすいものでなければ、結果的には機能しないのではないかと思います。これも是非ここで議論を進めるべきだと思います。以上です。

【大垣座長】
 ありがとうございます。
 どうぞ。

【近藤委員】
 はい、どうも済みません。
 今の一番最後のところからなんですけれども、本当に多分出口を見据えたと出口から見たは分からなくて、多分研究者が唯一思うのは、自分が何か持っているシーズ、オリジナルな考え方があって、それが今言われている、この求められているところにフィットしていると思えば多分出口を見据えたと言うし、ポテンシャルがあるだけ、何かいろいろこういう開発を、こういうところが求められているというけれども、ポテンシャルがあるからそこに何とかジャンプしていこうというような感じで、多分現場の人たちはそういう形で挑戦しようとするというような形はあるんですけれども、本当にどういう形でというのが多分結構間ぐらいでいろいろなことになっている気はします。現場的にはすごくさっき御指摘あったみたいに必ずしもはっきり区別はされていないというのは事実だと。
 最初の方でも御指摘ありましたけれども、実際にこういう研究を進めていくという、やっぱり重要なのは柔軟性じゃないかと思うんですよね。柔軟性を担保する仕組みといいますか、先ほどシェルパという言葉、僕もいいなと思いましたけれども、やっぱり途中でいろいろ変わっていくわけですよね。やってみたらいろいろ新しいことがあって、そういう中で柔軟性を担保するということと、その中で研究者をどう結合させて、単に1人の概念で、1人のものだけで本当に出口を見据えた、あるいは出口というふうに持っていけるかというのがあって。多分国際共同研究も含めて、どう研究者をうまくつないでいくかという設計ですね。だから、柔軟にやって、かつ研究者をうまくつなぐことによってどう発展させられるかという仕組み。単に1人の研究者が全部できてしまえばそれは問題ないんですけれども、多分多くの場合、そういうところまでいかないんじゃないかなと。というか、新しく研究者同士の結合の中で、柔軟な結合の中で多分いろいろなものが生まれてくるんじゃないかなというのは非常に思う。そういうところの設計が重要かなと思います。
 それと、この検討の中で、研究者の発掘ということと領域の発掘。政府が支援するときに個人を支援するのか領域的なところでいくのか。どちらの研究もそうなんですけれども、それでどういう形でそれを発掘していくかというところも、そこをクリアにしていくのも重要かなと思ったりいたしました。

【大垣座長】
 ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。
 大隅委員から、どうぞ。

【大隅委員】
 済みません。きょうのメンバーの中で余り生命科学系の方が少ないようなんですけれども、ここの枠組みの中では余りそっちは関係ないという感じなんでしょうか。まず質問で、私の立ち位置というか。

【岩渕室長】
 分野にかかわらず。

【大隅委員】
 分野にかかわらずということでよろしいでしょうか。

【岩渕室長】
 あらゆる科学技術を。

【大垣座長】
 あらゆる基礎研究ということで。

【大隅委員】
 分かりました。
 そうしますと、私自身は生命科学の分野におりまして、学生さんなどに常々基礎研究、応用研究というお話をするときに、whyの研究と、それからhowの研究という言い方をするんですね。whyの研究というのは、例えば2012年にジョン・ガードン卿とそれから山中先生が同時にノーベル賞受賞ということになったんですけれども、ガードンはもともとはカエルの子が何でカエルなのかということのwhyを追求するために、当時まだDNAが、遺伝情報というのは肺炎双球菌で分かったぐらいのレベルだったので、本当にその脊椎動物でもそうなのかということを知るために、核を移植して、おお、なるほど、それはやっぱり核の中に遺伝情報があるんだというのが最初の研究だったわけで、そこは全くwhyだったんですね。それが、じゃあ例えば非常にまだすごく若い段階の、卵割してまだそんなに進んでない段階の核を使ってできたんだけれども、もっとオタマジャクシぐらいまで分化して発生を進ませて、それでもそうやった核が使えるかということで、今度はだんだんwhyがhowの方に変化していった。
 自分の研究の中で生命科学は特にwhyとhowのところの区別とか切り分けというのは難しいんじゃないかということを申し上げたいんですけれども、山中先生の場合には、クエスチョンの置き方としては、もうどちらかというとhowで、どうやったら細胞を若返りさせることができるだろうかというふうな、比較的howに軸足を置いた形にしていて、4因子を入れたらできますと。こうすると、今度は、じゃあなぜ4因子を入れるとそういうことが起きるのかということで、またそのhowがwhyに戻ったりするということで、余り私たちが、私は医学の分野に今いるのである程度用途とか出口とかそういったことを病気との関係ということで意識をしながら現場にいますけれども、特に理学部系の生命科学をやっている方たちにとっては、自分のやっていることがwhyでやっているんだけれども、それをどうやってhowにつなげていくような出口というものをどう考えるかというときに、それをどうやってそういう知識を得たらいいのかとか、そういったことがやっぱり足りない環境にあると思うんですね。日本の場合は、それは例えば大学の教育が非常に縦割りだとかそういったところも影響しているのかもしれないので、やっぱりインキュベーションの場とかプラットホームを作って、whyからhowにつなげていくようなところというのが考慮されないと難しいのかなと思いながらお話を聞いておりました。以上です。

【大垣座長】
 ありがとうございます。
 どうぞ、お待たせしました。

【竹山委員】
 私のは、バイオテクノロジーという分野で、今お話に出たwhyとかhowとかを考えるための横串的立場にいます。実際問題として、基礎研究をやっている研究者もいらっしゃいますし、実用化研究の研究者もいます。縦割りというお話が今出ましたけれども、確かに縦割りで交流が少なかったりする場合もあります。ですので、異分野研究の進展をよく把握しながら、シーズ同士をドッキングさせ新しい研究を展開していく、仲間を増やしていくということにも注力しています。昨今、異分野の融合が当たり前になっている中でまだまだうまくいっていないところも多いと思います。とはいっても、日本の中のいろいろな研究環境の中で雑多な状態があることは良いと思われることもあるのですが。横串だけではバランスが欠けてしまうということと、深みがなくなるということですね。
 先ほどのお話の中で出口論ということがあったと思います。余りにも出口にこだわるために、多くの研究者が研究費申請書を書く段において、そのときの社会若しくは国のトレンドに沿った方向を出口として書き加える傾向があります。「出口を見据えて」というのは、タイムスパンにいろいろありますね。数年で出口にたどり着くという研究もあれば、5年先だったり、まだまだ萌芽的なものまで幅が広いと思います。一方、「出口から捉えた」となると、例えば新エネルギー開発の研究では、LCA等の計算をしつつ、実用化研究の議論がされています。エネルギー効率の目標値等などのクリアすべきミッションがあって、マテリアルはこうしようかとかプロセスはこうしようと、実用化研究を展開しています。その中で、出口側から基礎研究に注目して、必要なシーズを見いだす際に、基礎研究も行うことがあります。ですので、出口から、出口を、という2つのアプローチは、現状として混在していて、どちらにでも、研究の軸足を変えることができるように研究者はフレキシブルに対応していると思います。本日ので議論では、ストークスによる研究分類を取り上げるなど概念的な現状整理のお話が多いと感じます。何となく、学問的な解析ぼくって生々しさがありませんね。多分そのうち紹介されるのでしょうか。
 今回話し合われている内容というのは、今までも多くの会議で討議が繰り返されていることのような気がします。その都度、何かしら結論がその委員会では出されているはずだと思います。その結論をもって、毎回何か新しいプログラムの策定が行われてきていると思います。例えば、今回、内閣府主導のImpact,SIPなどプログラム作成では、相当討議がされたと聞いています。戦略は、何が悪くて何が良かったかなどの現状解析をした後、必要なコンセプトを入れた上で、将来展望を考えながら作り上げていかなくてはならないかと思います。今回は1回目ということなので、具体的な現状認識よりも全体的な視点ということならばよいのですが。よろしくお願いします。

【大垣座長】
 ありがとうございます。
 ほかに。よろしいですか。
 ないようですので、今の話にありましたように、何か大雑把に説明をまとめちゃうと、余りまとめちゃうといけないんですが、科学技術研究の特性という、科学研究、基礎研究の特性があって、それのためにはミッシングリングが生まれたりなんかするわけで、テーマは新しいテーマが生まれ。そうすると柔軟性が必要で、そういう運用の仕組みが必要なんじゃないかというのは、何人かの方から出てきましたね。
 もう一つは、出口とか用途とか、主に出口ですけれども、社会経済的なもの自体が非常に複雑な時代になって、価値観もいろいろある。その中でどうやって新しいイノベーションを生むかというと、単純な1つのシードから生まれるのではなくて、複雑なシードの融合だとかいうところから生まれてくるのではないかと。そのためには、研究者の結合だとか研究所の柔軟性の確保とか、いろいろなことが必要だというようなことがいろいろと出ていたんではないかと思います。まだこれから議論することですけれどもね。

【岩渕室長】
 次回以降、資料の作成の参考にさせていただこうと思う点が多々ありました。生々しさが足りないというのは、1回目ですのでお許しいただきまして、もう少し詰めていきたいと思います。この場は、4回しかないので、戦略そのものを作るという議論よりは、戦略を作る上でこういう視点から今後文科省は作るべきであるとか、戦略のつくり方は、こういうプロセスをたどるべきであるとか、そういうメタな議論を頂けると、この検討会が終わった後の文科省の取り組みに実際に生かしていけると思います。実際に生データを見ながら戦略を作り出す、これはまた別の仕事になりますので、戦略の作り方の次元で御指導いただければ有り難いです。また、笠木先生から政府の役割が極めて重くなってきているという話がありましたが、他方で市場の失敗と同様に政府の失敗もあるということを政府の人間としては自覚しないといけないと思いました。我々が過度な戦略を設けて、基礎研究の在り方を過度に誘導するようなことがあっては、得られるべき効果も得られないので、国がどこまで関与すべきなのか、あるいは国といっても、政府が単独で何か戦略を作るということではなく、産学官の連携というか、いろいろなプレーヤーが巻き込まれた形で戦略を作る。その戦略を作る者は誰なのか、作るそういうオケージョンをどう設計していくのかということもまたこの戦略作りのレシピの一つかなということで、その辺も少し考えを整理したい。

【大垣座長】
 1つちょっと加えますと、笠木委員も言っておられるし、ほかの方も言っておられたけれども、出口とか言葉でこれが研究者の方に伝わらないといけない。分かりやすさということが必要で、戦略を実行する上でもそういう言葉の定義なり、使い方をうまく作らないといけないという御指摘が……。

【岩渕室長】
 はい。そこも肝に銘じつつも、また同時に思うのは、研究者の方が、自然とプロポーザルを書いて、自発的な意思に基づいて研究をすると、社会経済的価値が自然と達成されているような、そういう制度にしないといけないのかなと。これは出口か、これはこういう政策意図だと非常に正確に理解しながらやらないとできないような制度設計では間違いではないかという感じもあります。実際の制度の作り込みの議論をまた次回以降資料を出していきたいと思います。宿題だと受け止めさせていただきます。

【大垣座長】
 よろしいでしょうか。何か特に。次の議題でも御議論いただければと思います。
 それでは、続きまして、議題2の「戦略的な基礎研究に関するファンディグ施策について」に移りたいと思います。議題2につきましても、議題1と同様に、まず事務局より資料について説明を頂き、その後、委員の皆様から御意見を伺いたいと思います。
 それでは、お願いします。

議題2:戦略的な基礎研究に関するファンディング施策について

【岩渕室長】
 はい。資料の4-1と資料4-2の2枚の紙で御説明をさせていただければと思います。
 まず、資料4-1から。「戦略的な基礎研究に関するファンディング施策について」ということで、先ほど、戦略的な基礎研究、用途を考慮したパスツール型の研究の概念を御説明しましたが、こうした研究領域に対して、ファンディングを政府が行う上で、そのファンディング施策はどのようにあるべきかということで、作成させていただきました。これは、具体的な事業で申し上げれば、文部科学省におきましては、独立行政法人科学技術振興機構、JSTの方で、戦略創造研究事業という制度がございまして、この中でパスツールの象限に対応した研究費のファンディングという制度を設けさせていただいております。このファンディングの議論は、JSTの戦略創造事業の具体的な運用、例えば戦略目標の設定方法、こうしたものに反映させていただきたいと念頭に置きながら、作成させていただきました。
 今申し上げた用途を考慮した基礎研究、パスツール型の研究を議論するに当たっては、何らかの政府の戦略が必要であるということです。用途を考慮した基礎研究というのは、先ほど御提案申し上げましたアプローチの整理によれば、出口を見据えた研究と出口から見た研究というふうに分かれてくるわけで、出口を見据えた研究に関するファンディングの仕組みとしては、今申し上げましたJSTの戦略的創造研究事業がある。これは、本検討会の主たる関心事項ということになるわけです。
 一方で、出口から見た研究というファンディングについては、革新的研究開発推進プログラム、ImPACTでありますとか、戦略的イノベーション創造プログラム、SIPといったものが、新しい制度として総合科学技術会議を中心に、今般設立されてきたところです。
 出口を見据えたタイプの戦略創造事業というのは、どういうものなのかを、左側の赤い升の中で書いていますが、これは現在行っている事業、戦略目標をトップダウン、定め、これを見据えて行う研究。この研究について、大学等の研究者から提案を募りながら、組織の枠を越えた時限的な研究体制の下で研究をしていただく。これが、今、行われているJSTの戦略創造研究事業ということでございます。トップダウンで戦略目標を定めるというところに、出口を見据えたという趣旨が含まれているということでです。
 これは、研究者が主体となって提案がなされるという制度であり、しかしながら、科研費等との違いで言えば、社会経済的な価値を有する目標、出口を見据えた研究であることが挙げられます。
 一方、右側が出口から見た研究に関するファンディング施策とは、どういうものなのかを整理をしたものです。今般始まりましたImPACT、革新的研究開発推進プログラム。これは、日本版DARPAと称されていたこともあります。DARPAというのは、安全保障で、公共、社会ニーズを解決するための研究と。しかしながら、基礎研究まで踏み込んでやっていこうという課題解決型の研究ファンディングの仕組みです。これからある種の着想を得て行われているのが、このImPACTです。
 まず、総合科学技術会議がテーマ、解くべき社会課題というのを設定し、その社会課題を解くための研究提案を求めるということです。その際に、ImPACTの場合で言いますと、研究者による提案を求めるのではなく、総合科学技術会議が設定したテーマ、課題について最も知見を有するプログラムマネジャー、この課題の解決に関心を有する者としてのプログラムマネジャーが応募するという設計になっているわけです。
 課題解決のための仕組みということで、研究者が主体ではなく、PMやPDという方が主体となって、このプロジェクトが運用されるという点がImPACTの特徴です。したがいまして、赤いタイプのファンディング施策と、青いタイプのファンディング施策というのが、今、日本に存在するわけですけれども、赤いタイプのものは研究者が主体、青いタイプのものはPM、研究者でない課題を認識している者が主体であるという大きな違いがある。
 また、着想の起点としても、研究者が主体という場合でありますと、すぐれた研究者の発想というところが起点になって、そこから目標を目指していくということであり、青いタイプの研究ですと、まず直面する課題の認識からプロジェクトメイキングが始まり、そのためにPMが研究者を集めていくというアプローチになっている。こういう2つのアプローチの下で基礎研究が行われており、この検討会では、左側の赤いエリアのファンディング施策の在り方についての具体的な制度設計について、御議論いただきたいと思っているわけです。
 この赤も青も、どちらも革新的なイノベーション創出を目指して行われる研究であるという点では、共通的と思っているわけです。続きまして、資料の4-2番に移らせていただきます。
 ただいま申し上げた出口を見据えたタイプの基礎研究について、戦略を立てていく必要があるわけです、その出口を見据えたタイプの研究に必要な戦略の策定プロセスを、どのように制度設計すればいいのかが、大事な課題です。ですから、資料4-2は、この戦略の策定プロセスについて、今、我々が考えていることをまとめさせていただいたものです。
 出口を見据えた研究に係るファンディング施策である戦略創造については、STEP1、2、3のような形で、戦略目標を定めていくべきではないか。戦略ビジョンと申しますか、戦略目標を定めていくべきではないかということで、整理をさせていただきました。
 まず、STEP1でごすけれども、我が国の研究動向及び世界の研究動向の俯瞰というところが、出口を見据えた研究の戦略策定の第1段階ではす。出口を見据えた研究の定義から明らかなとおり、まず、すぐれた研究者の着想、発想が存在することが、この戦略的基礎研究の原点ですので、当然すぐれた着想を探さないといけない。そこから、目標策定のプロセスは始まらないといけません。
 これを、なるべくエビデンス・ベースドで、我が国の研究動向や世界の研究動向を俯瞰するという活動が必要です。世界でもSciSIPといった、科学政策のための科学も大分進行しており、エビデンス・ベースドでサイエンスのホットスポットを探すということが大分手法としても出てまいりました。
 例えばということで、右側の方に、世界の研究動向の俯瞰と書かせていただきましたが、サイエンスマップといった手法が、今、出てきております。これは、文部科学省の科学技術・学術政策研究所で開発している手法ですけれども、世界の文献情報、WEB of Scienceの情報なども用い、共引用関係などを分析することによって、注目される研究領域の動向を把握することができるということで、文献学的に、網羅的に、ホットリサーチエリアを探すための手法です。こうしたサイエンスマップを分析することにより、世界的な研究動向ということが把握できる。
 他方、左側の升は、我が国の研究動向の俯瞰ということです。例えば、科研費などで得られた成果を、どのように把握するのか。その中で、すぐれた着想がどこにあるのかを探していくことが極めて大事なわけです。科研費のデータにつきましては、科研費データベースのような形で、今整備がなされておりますので、こうしたものをうまく取り込むことにより、我が国の国内の基礎研究の成果、科研費の成果を網羅的に参照できるようにする。
 その中で、キーワード分析などを行うことによって、最新の我が国の科学技術の研究動向が可視化できるようになる。ビッグデータの分析手法などを用いて、我が国の芽吹きつつある研究者の画期的発想を抽出できる。
 こうした道具立てが今、想定されており、なるべくこうした道具を使いながら、エビデンス・ベースドで芽吹きつつある研究者の画期的な着想を把握し、世界の動向との乖離や関係というものも見いだしたい。
 その上で、戦略策定の第2段階、STEP2として、最先端の研究者等の知の糾合というプロセスを想定しているわけです。STEP1では、エビデンス・ベースド、客観的な分析ということですが、論文分析だけで、サイエンスのフロントラインが明らかになるわけでもないと考えております。エビデンスだけでは捉え切れないサイエンスの最先端の動向を専門家、有識者、第一線の科学者の知見によって俯瞰するという仕組みが必要だろうと考えております。
 例えば、JSTには、笠木先生がいらっしゃる研究開発戦略センターといった組織がございます。こうしたところに、第一線の研究者、有識者がお集まりですので、STEP1で得られたような論文の動向、世界の研究動向の俯瞰結果を見ていただきながら、足りない部分や解釈、こうしたものについて御意見を賜るということが必要ではないかと考えております。
 特に、論文動向の俯瞰のSTEP1だけですと、論文というのは、いわば二、三年前の研究のフロントラインですので、最先端の情報ということには、なかなかならないわけですので、そうしたタイムラグを埋めるという意味でも、STEP2のような仕組みは必要です。
 あるいは学術の最先端の動向ということであれば、例えば、日本学術振興会に学術システム研究センターのような組織もございますので、そうしたところにおられる先生方の御意見を、何らかの形でお伺いしながら、最先端の研究動向を抽出するということで、STEP1、STEP2のプロセスを経ることによって、我が国のすぐれた研究の着想はどこにあるのかを見極めたいと考えております。
 その結果、STEP3に至るわけですが、ここが実は一番難しいところであると思っております。STEP3として、こうして得られた科学的な価値と社会経済的な価値の創出を両立するビジョンを抽出するというプロセスが必要になってくるということです。出口を見据えた研究でありますから、これが必要になるわけです。
 STEP2の結果を踏まえて、注目すべき研究動向に関する研究者と産業界などのユーザーとの対話を行っていただいて、研究を起点とした、将来の社会像を描くようなプロセスを実施する。これが「未来創発型邂逅プロセス」です。「未来創発型邂逅プロセス」という用語自体は、研究開発戦略センターの吉川弘之先生のお言葉から拝借しているわけですけれども、こうした中で、ワークショップや、インタビューのような形で、科学者とユーザーの対話をしていただくというセッティングを行って、最先端の着想を有する研究者の着想を、ユーザーの目線から広げていただく。研究者自身も、ふだん意識していないようなニーズの芽について、気付きを得るような仕掛けを、ここで設けたいわけです。
 この具体的なプロセスについては、今、研究開発戦略センターの皆さまとも相談をしているところですので、次回以降、またお示しできればと思いますが、こうした対話のプロセスの中から戦略が見いだされていく。その戦略というのは、研究者による根本原理の追求と、社会経済的な価値の創出が両立可能なビジョンを抽出するということが期待されており、こういうSTEP1、2、3という形で、出口を見据えた研究に関する戦略を策定するという見取図を、おおむね描いてみたわけです。こうしたことでいいのかどうか。こうしたプロセスが、更に必要ではないか。あるいは、このプロセスについては、こういう問題点があるのではないかという点につきまして、様々な御批判、御意見を頂ければと思います。
 以上です。

【大垣座長】
 御苦労さまでした。それでは、ただいまの説明に関しまして、御意見を頂ければと思います。具体的なファンディング施策とか、戦略ビジョン策定のプロセスの体系化等に関して、まだ抽象的な段階ではありますけれども。
 はい。笠木委員、その後、有信委員。

【笠木委員】
 この4-2の資料に、具体的なイメージが描かれていますが、岩渕室長とは何度か御議論させていただいていますし、このプロセスと似たようなことを、昨年度、私どもの研究開発戦略センターで1年間かけて試行したこともあって、そのことも踏まえて、コメントさせていただきます。
 先ほど、出口ということについて、この場の議論を通じて、もう少し我々が概念を共有した方が良いのではないかということを申し上げたのですが、改めて伺っていると、結局、これは社会的な課題のことを言っているのかと思います。つまり、出口というものの捉え方なのですが、第3期科学技術基本計画では、いわゆる重点推進4分野、推進4分野といって、あれは領域毎にある種の課題を含んでいると考えたと思うのですね。
 最近のImPACT、SIPで言うと、ImPACTは比較的大きく課題を捉えていますよね、ライフとか、インフラとか、エネルギーとか。SIPは、実は、各テーマを見ると、かなり大きな粒度のものと、小さな粒度のものが混ざっています。そういう意味で、SIPはどういうレベルの出口を見て進めようとしているのか分かりにくいと思っています。そこで、御提案になっているスキームで言う出口については、これは実は社会的課題の捉え方の大きさという観点だと思いますが、それをもう少し、今後、ここで議論しておく必要があるのかという気がいたしました。
 その上で、2番目ですけれども、出口となる課題の探索、設定、このプロセスが、私は非常に大事だと思っています。ごく少数の研究者のある種の価値観を基に出てくるテーマで引っ張ろうとすると、当然それは無理があるし、公的事業として社会的に正当化されないと思います。
 我々の経験で言うと、やはり専門家、あるいは研究者、科学者であるけれども、自分が背負っている属性など、そういうものを脱ぎ捨てた、そういう個人が集まって、系統的な作業をすることが望まれます。どうしても個々人の偏りは拭えないわけですが、そういう個人が集まれば、偏りが中和されて、客観的な判断に近付くことができると思っています。これは、研究開発戦略センターで経験していることなのですが、まさしくそういうことができるという印象は持っています。
 ただ、そういうプロセスを、資料4-2の1、2、3で、具体的に、どこの誰が、どれぐらいの時間を掛けてやるのかということを、今後、詰めていただく必要があって、このままだと、まだそこが十分見えていないですね。
 今まで、いわゆる戦略目標については、文部科学省の方で、毎年省内の検討を経て、決めておられたのですけれども、それも外から見れば、複数のテーマが挙がる中で、なぜ特定のテーマが当該年度の戦略目標になったかというところが、よく分からなかったわけです。そこで、今回の提案を進めるために、最終的な戦略ビジョンにたどり着く一連のプロセスで、どこで、何を、どういうふうに決めるかということをデザインするために、もう一歩突っ込んだ議論が必要と思います。
 最後に3点目ですけれども、推進体制を従来どおりの、ある領域設定で公募してやるのか。ある程度、コアメンバーを指名してやるのか。あるいは、この場合はPD、POでしょうか、その人たちをどういうふうに選ぶのか。具体的には、研究が動きだしたときに、PDとかPOの手腕が効果を持ち得るのか、先ほど申し上げたように、とにかく研究が動き出してしまうと、個々の研究者は全体の趣旨を忘れがちなので、それをPDなりPOの人がいかにして思い出させることができるか。今のところ、恐らく予算を少し増減するくらいしか、細工ができないですね。
 それ以上のことをやると、先ほど研究者と国の関係ということに言及がありましたが、難しいところがあるのです。しかし、現状のままでは、PDの手腕だけで全体をある方向に向けていくということは、非常に難しい状況が生まれるということも事実だと思うんですね。
 現状のCREST、さきがけでも、そういうことが出ているので、それを克服できる、ある種のスキームがあり得るのかどうかということは、検討に値すると思います。

【大垣座長】
 はい。ありがとうございます。
 では、有信委員。

【有信委員】
 最初に、CRESTとSIP、ImPACTの話をしたいと思いますけれども、CRESTというのは、私の理解では、基本的に言うと、研究リーダーのリーダーシップの下で、ある程度の幾つかの研究チームとか、研究テーマが選ばれて、その中で組織をされていくという意味で、研究リーダーのリーダーシップが非常に重要なやり方だと思いますし、SIPとかImPACTというのは、どっちかというとプロセス重視で、PMとかPDの運営というか、マネジメントに懸かっていると。これも、逆に言うと、研究テーマが変えられないのであれば、結局はCRESTみたいな形になってしまうかなという感じなんですね。
 基本的には、リーダーシップを発揮しながら、予算配分を決めるんだけれども、それが変わらなければ、多分、あとは引っ張っていき方だけの問題になるので、むしろ、ここで言うPMが、さっき角南委員が言ったシェルパのような役割を果たすようなマネジメントが可能であれば、そういううまい回り方をする可能性はあるんだけれども、それに比べて、このSTEP1、2、3というのは、どちらかというと、例えばCRESTとかSIP、ImPACTがトップダウン的なアプローチに比べて、こちらはボトムアップで、実際に、既に戦略というのは、現に様々なデータの中に埋もれている中から、本当に戦略性のあるものを抽出していこうというやり方だと思うんですね。
 これに関して言うと、科学技術政策のための科学というプロジェクトが文部科学省で進んでいて、その中で、実際に政策オプションを作るというプロセスに極めて近いやり方になっているので、できるだけ、余りダブらないように、むしろ、ユニークさを発揮するような形でやるといいと思うんです。
 さっき笠木委員は、多分、私の理解で言う戦略プロセスという言い方をされたんだと思いますけれども、課題そのものは、かなり自明なわけですよね。一番抽象的に言えば、ライフイノベーションとか、グリーンイノベーション。幾つかの日本の持っている課題、あるいは世界の持っている課題というのは、もう自明な課題があるわけで、その課題を克服するために、様々な研究が行われているんだけれども、そのときに、では、戦略はどの位置に行くべきかというと、基礎研究ということと結び付くならば、あるいは基礎研究が知識を獲得していく、そういう性格のものであるとすれば、どのような知識を獲得するべきか。つまり、その課題を克服するために、どういう知識が欠けているのかということを、やはりきちんと見ていかないといけないと思うんですよね。
 そういう意味で、例えばここで言うSTEP1、2、3とうまく結び付ける中で、やはり今の基礎研究というのは、何も1個だけあるわけではないんですよ。何かの課題を解決するために必要な基礎研究は1つだけではなくて、たくさんあるはずなんです。つまり、幾つか欠けている知識を、どういうふうに糾合していくかというところを、戦略的にきちんと見るべきだと。具体的に戦略としてどのレベルのことを設定しなければいけないかということは、まだ十分言えないんだけれども、さっき笠木委員が言われていた、いわば課題が明確になればいいというのは、戦略が明確になればいいと、私は置き換えて聞いていましたけれども、そういう意味合いだと思います。

【大垣座長】
 はい。

【岩渕室長】
 ImPACTにおいてはPMが主導するわけですが、PMの下で走るテーマについては、途中で入れ換えできるような設計になっているものと承知しています。

【有信委員】
 それがうまく機能すればいいと思う。

【岩渕室長】
 プロジェクトマネジャーですから、一応、そこはうまく機能するように制度設計がなされており、その点は違うという感じがしております。

【有信委員】
 分かりました。はい。

【大垣座長】
 はい。ほかには。では、よろしいですか。西尾委員。

【西尾委員】
 まず、こういう形で戦略ビジョンが今後策定されていくということは、現在の戦略目標の決め方と比べますと、私は非常な前進だと思っていますし、大きな改革になるのではないかと思います。ただし、笠木先生がおっしゃいましたように、どこの誰がこのプロセスを主導していくのかというところが、非常に難しい課題であると思いますし、そこをどういう形で制度設計するかによって、御提案のプロセスがうまく機能するかどうかということにも大きく関わるのではないかと思います。
 そこで、STEP1のデータマイニングとか、ビッグデータ解析に関しては、私の専門分野として深く関わっているところですけれども、このような方法で戦略性を出すとしたときに、単にあるデータの出現が非常に多いからということではなくて、隠れた特徴をいかに抽出ということが大事なところでして、データ解析技術として高度なものが要求されると思います。そのようなことからも、当該分野の専門家が参画する必要があると思います。
 それと、戦略ということについては、これは国として産業上どこを強くするというようなことではなく、STEP1において研究動向の俯瞰を行い、STEP2で研究者等へのインタビューをするということは、日本の科学技術の振興において、世界の研究動向を踏まえて、どういうところに力点を置いて推進したら国としての科学技術が強化されるという視点の戦略と考えてよろしいですね。例えば、DARPA方式とかになると、国の産業の振興とかが、先ほどお話のあった「出口から見た」というときに重要視されていると考えますので、このような質問をいたしました。い

【岩渕室長】
 まさに、今、おっしゃった……。

【西尾委員】
 もう一つ、追加でよろしいですか。
 それと、ビジョンの与え方なのですが、科学技術振興機構の研究主監を務めていまして思っていることとして、このビジョンのもとで推進されるプロジェクトがさきがけ、CREST、ERATOだとすると、このビジョンの与え方が、どの程度の詳細度なのか、あるいは具体的なのかというようなことは、結構大きな問題であると思います。例えば、さきがけのような若い世代が推進するプロジェクトですと、余り細かい目標ではなくて、大きな目標の下で推進した方がより効果があると思います。
 一つの事例ですが、さきがけプロジェクトが開始された頃は、まだ戦略目標そのものがありませんでした。ですけれども、その頃のさきがけプロジェクトは、後で考えてみますと大きな成果を得ております。そういうことを考えたときに、ビジョンの与え方として具体的にどのレベルにするのかというのも、結構重要なのではないかなと思います。

【岩渕室長】
 先ほど来、目標の粒度の話になっているわけです。この産業をやるのか、どの産業をやるのかということが、ここで議論しているものなのかと言えば、この産業か、あの産業かというのは、恐らく経産省が旗をふるような出口から見た研究で扱う話だと思います。
 他方、もう少し粒度を大きくしたところで、産業競争力を高めていくといった点は、多分、戦略的な基礎研究の在り方としては入ってきていて、どのぐらいの粒度の目標を置くのが最も効果的なのかということは、今後、ここで議論していただければと思います。そういう意味で、産業競争力の観点も当然意識はするわけですけれども、細か過ぎる粒度でないものということを考えるのが、課題ではないかということです。
 あと、ビッグデータのところですが、JSTの中には、ちょうど情報の部門があり、このデータベースを処理する専門家の集団もあります。そういうところで、今ファンディングマネジメントデータベースを作っておりますので、これがキーワード分析などをして、ビッグデータから意味が引き出せるかというのを、今、試行実験中ですので、こうしたものも、この後の会議で御説明できればいいかなと思っております。

【大垣座長】
 今、西尾委員の御質問みたいな形で、戦略が科学技術戦略の議論という使い方なのか、戦略ビジョンというと、ビジョンの方ですよね。ちょっとその言葉の使い方としては、戦略ビジョンというのは、粒度を問題にするようなものをそう呼んでいるわけですか。そこだけ、戦略ビジョンというものの使い方なんだけれども。

【岩渕室長】
 2つあると思っています。そもそもこういうプロセスで戦略を作るというのも戦略でありまして、この過程で導かれる1つ1つのビジョンもまた戦略ということです。2つの言い方がごっちゃになっていて、分かりにくい点がございました。戦略というのは、単に産業競争力のことだけを考えるのではなくて、多分、国として追求すべき価値ものも入ってくるかもしれません。

【西尾委員】
 それで、最後、もう一点だけいいですか。

【大垣座長】
 はい。

【西尾委員】

 STEP3の科学的な価値と、社会経済的な価値の創出を両立するというのは、結構難しいということですけれども、社会経済的な価値というときに、どちらかというと、それによって日本がビジネスとして大きな発展を遂げるというような意味で捉えてよろしいのでしょうか。
 それは違うと思います。産業界において大きな経済的なプロフィットを得ていく上での社会経済的な価値ということと、例えば、東日本大震災からの復興というような大きな社会的な課題を解決していくこととは、方向性が異なると思います。ここでの、社会経済的な価値というのは、社会的な課題の解決というようなことも考えてよろしいのでしょうか。

【岩渕室長】
 とにかく両立しないといけない。科学的な価値追求をする研究者のモチベーションと、その方に目指していただく社会経済的なターゲットというのは両立しないといけない。課題の設定によっては、それがうまく両立しない可能性があって、両立しなければ、この制度は成立しません。ここには単に「社会経済的な価値の創出」と書きましたけれども、どういうものを設定すれば、うまく機能するのかというところが、まさに悩んでいる点になっております。

【西尾委員】
 分かりました。どうもありがとうございました。

【大垣座長】
 実は、ビジョンという言葉は、COIでもビジョンを前面に打ち出していて、あれで言うと、「Happiness」というビジョンがありまして、要するに粒度というか、概念の大小がいろいろありますので、少し詰めていかないと分からないという御指摘です。
 中小路さんは、特によろしいですか。

【中小路委員】
 最初に申し上げたとおり、「出口」という言葉と、「社会的経済的価値」という言葉と、「活用」、「利用」、使うということとイコールではないと思いますので、そもそも、それをはっきり定義し直して、使い分けない限り、この言葉のまま話し合っても、ちょっと混乱するだけだなと思います。

【大垣座長】
 はい。ありがとうございます。
 はい。どうぞ、近藤委員。

【近藤委員】
 まず、先ほど、一番最初に笠木先生が言われたとおりだと思うんですね。このやり方は非常に大きな前進。私も、定量的なところを入れながらというところで、透明性も上がるし、とてもいいと思うんですけれども、どこのSTEPも、かなりプロフェショナルに難しい。今のをデータマイニングして、そこからデータを抽出すると。私たちも、バイオテクノロジーで、少しそういうこともやるんですけれども、コンピューターの出力から意味のある結果を、最後は人が目で見てみたいなところもあって、そこはやはり、幾ら進歩しても非常に難しい。
 それから最後のところの社会の経済的な価値との両立というのは、インタビューをしたり、何となくやることは分かるんだけれども、誰が、どういうふうにやるというときの、誰ですよね。多分、人とか、それができる人がいないと、結局、このプロセスが非常にいいのは、多分間違いないと思うんですけれども、どこが責任を持つのか。しかも、これは1から3まで、ある一貫した仕組みの中でやらなきゃ駄目ですよね。
 ですから、その仕組みの提案というか、どういう形のものが考えられるのか。多分、これ自体が、ある程度継続的に、例えば失敗もあるでしょう、成功もあるでしょうというところのデータを蓄積したり、一番最初のデータが解析してやったことが、どういうふうに生きてきたかとか、それを蓄えて、進化させていく。要するにPDCAみたいなサイクルを回すようなものを含めた仕組みの提案と。
 私が普通に考えても、非常にこうだろうなと思うところまで、先ほどの中身の難しさはありますけれども、ビジョンとか、あるいは出口とか、そういう問題はあるとしても、どうやったらこの仕組みを回せるという、仕組みの検討というのが入ってこないと具体化しないし、ここで抽象論だけをやっても、何も起こらないという気がするんですね。
 ですから、多分、今の詰めるところは詰めなければいけないという議論、いわゆる概念の議論と、それから、最初に笠木先生が言われたように、誰が、どこで、どういう形でと。しかも、全部かなりプロフェッショナルが必要で、その人材育成もしなければいけないし、PDCAも回さなければいけないという感じのものだと思います。そこを、例えばCRDSがやるのか、どこがやるのか、どうするのかということも含めた具体的な施策も検討しないと、多分空論で終わってしまう気がするということは、少し思いました。

【岩渕室長】
 STEP1、2、3につきましては、次回、もう少しブレークダウンしたものにしたいと思いますけれども、おおむねプレーヤーとして想定している部分はあります。もちろんSTEP1、2、3全体を回すのは、政府の戦略という以上は、政府たるところの文部科学省が全体を見ながらやるわけですが、それぞれ専門的な知見が必要であって、我が国の研究動向の把握という点について言えば、JSTの中のデータベースの部隊を含めた力を使って、この俯瞰活動をやろうとしています。ファンディングマネジメントデータベースの整備、こうしたものを、今、企画しています。またサイエンスマップ、世界の研究動向の俯瞰という点で言えば、科学技術・学術政策研究所で、論文情報の俯瞰の手法を持っていますので、その知見を使っていく。
 あるいは、STEP2の「最先端の研究者等の知の糾合」というところで言えば、まさに研究開発戦略センターの有識者の集合であるとか、あるいは可能であれば、学術システム研究センターのような、学術の動向が全体に俯瞰できる方の御知見も伺いたいですし、もちろん、文部科学省内のもろもろのリソースも使って、文部科学省としての意見の集約にも使っていきたい。
 最後のSTEP3のところは、実は非常に難しくて、悩んでいるところではあるんですが、この手法自体、価値を両立させるようなビジョンの作り込み、邂逅のプロセスというのは、研究開発戦略センターでも、過去1年間、吉川先生の下でやられている取組もありますので、そこの手法をうまく活用しながら、実際に回していくのは、恐らく文部科学省とJSTのタッグで、それぞれのビジョン作りをしていくということだと思います。ちょっと、このSTEP3のところは、非常に悩ましいところだなと思っております。

【近藤委員】
 そうですね。それと、全体をつなぐところが、今、御説明があったとおりで、パーツはいいものがあると思うんですね。全体をつないだり、これは多分、全体が流れて初めてという中の、そして、それがまた、流してみたらいろいろ問題があって、フィードバックで、PDCA的に回していかなければいけないとか、その全体の絵というか、それを主導する形とか、それも含めてあると、非常にいいのではないかなと。

【岩渕室長】
 まさに、今の点も非常に大事な点なので、重ねて申し上げますと、この全体の絵の設計について、我々文部科学省の行政官だけで決めるというのは、極めて難しい課題です。この検討会を開催していること自体の意味も、この絵のブラッシュアップ、こういうものについて、きちんとしたものを築くために、ここで議論いただいているという面もあります。また、これを一度作ったら終わりではなくて、恐らく毎年、毎年、こういう戦略を回していく必要がありますので、このプロセスで欠けている部分というのは、一度、今年の夏に作った後も出てくると思います。これをスタンディングで、このプロセスの妥当性があるのかどうかというのを見ていただく機能が、恐らく必要です。文部科学省の行政官だけでこれを回すのではなくて、例えば科学技術・学術審議会のようなところで見ていただくのか、どうなのかということは、いろいろな方と相談しないといけないですけれども、なるべくそういう外の目を通した形で戦略が作り続けられていくことにしたいなと、こういう方向性で、夏、その取りまとめをしていきたいと思っております。

【大垣座長】
 近藤さん、仕組みですね。

【近藤委員】
 仕組み作りですね。

【大垣座長】
 はい、どうぞ。

【竹山委員】
 今の話の続きになりますが、いろいろとお話を伺っていて思うことは、実際にやってみないと分からない部分が余りに多い、ということです。通常、何か事象があったら、まず現状解析をし、課題を抽出する。それに対して方針、戦略を作り、実践し、そして、評価をして、それをフィードバックするというのが、必要だと思います。この中で、例えば経済的な価値を評価するときに、個人、地域、社会等の環境によって変わることが考えられるので、それを考慮して、判断するのかも重要だと思います。
 作ったプログラムの評価は、そこからどの程度論文や特許が出たかとか、産業・社会へどのくらい貢献したかなどで評価していますね。しかし、さっき近藤先生がおっしゃったように、研究戦略を考えるには、プログラムの評価のフィードバックのやり方をよく考えて価値という点とともに、討議する必要があると思います。様々な新しいプログラムが作られる中で、なぜ、今、私たちはこういう話合いをしているのか。参考資料でお出しいただいていた、「日本の大学における研究力の現状と課題」をちょっと見させていただいていると、弱いところは、国際共同論文ということが見えてきます。単純な1つの方針として、国際共同を促進するようなプログラムをもっと出すという話になりますね。もう既に、たくさんの国際共同プログラムが行われてきていますが、評価側に立ってみた経験からと、必ずしも共同の論文が多いとは思えません。いろいろメスを入れなければならないところも多いと思います。論文数の点で比べると、日本のランクが下がっていていますが、独自での発表数は日本の方がランクは上ですが、国際共同論文数が少ないことからランクが下がっています。論文数は、ある意味、簡単に戦略が出るのかもしれません。中国は別格ですが、日本も教員数を増やす、研究者数を増やす、ポスドク数を増やす。そうすれば、当然のごとく、論文数は普通に上がるわけですね。
 そういう戦略が必要なのかどうかということなど、具体的な話は、今ここでする必要はないとは思いますが、解析、方針と戦略作り、それからの、フィードバックが重要ですね。その中に、ここでは抽象的に「価値」という言葉で書かれていますが、それをどう考えるかも重要だと思います。

【大垣座長】
 価値が多様な中でどうするかということになりますね。

【竹山委員】
 はい。

【大垣座長】
 ほかに御意見は。

【笠木委員】
 もう一回、いいですか。

【大垣座長】
 どうぞ。

【笠木委員】
 先ほど御議論のあったSTEP3の「科学的な価値と社会経済的な価値の創出を両立」ですが、私はこれでよいと思います。現在、国際的にも、科学技術政策や研究開発政策の評価は、科学的なインパクトと、経済的なインパクト、あるいは社会的なインパクトということで、よく語られるんですね。それから、戦略的基礎研究で、基礎と言っているのは、恐らく科学的インパクトは欠かせないということを言っているのだと思います。そして、このSTEP3のところで、書くとすれば、「社会」と「経済」の間に「・」を入れて、両方というより、どちらかということと理解する、例えば、地球環境問題というのは社会的な意味合いが強く、すぐさま経済的な価値には結びつきませんが、長期には経済的な価値にたどり着くと思います。 一方ある種の新しい技術やシステムの創出から新しい産業が興るということは、むしろ経済的インパクトが大きく、そういう違いはあると思いますけれども、ここでおやりになる意味では、科学的なものと、社会・経済的なものの両立というのは、条件として良いのではないかと思います。
 ただし、社会的、経済的なインパクトをどう図るかということは、御承知のように非常に難しい話で、これも国際的に、今いろいろな意味で課題になっているけれども、進んでいないという状況にあると思います。
 それから、先ほど比較にあったSIPとImPACTを見ると、SIPの方が、まさに出口から見ていて、場合によっては、既存の技術の少々の改善程度でも、ブレンディングテクノロジー的なもので解決できるかもしれないわけです。 それで、SIPが必ずしも基礎研究のところまで戻ることを条件にしているのかどうか、ImPACTの方が大きな領域を設定して、その中で新しい基礎科学的な発見に基づいたものでを目指しているので、明らかに科学的なインパクトを狙っているということで、そこは違いがあります。そうすると、むしろImPACTと、今回の提案との差がどこにあるかということが、先ほどのプロセスも含めて、よく御検討いただいて、提案していただけると、いいのではないでしょうか。
 それから、と簡単なことですけれども、このSTEP1、STEP2あたりで、学協会をうまく使えないかという気がするんですね。最近は、国の科学技術戦略に寄与したいと思っている学協会も少なからずあって、それぞれは1つの研究領域の固まりですけれども、余り我田引水的な話ではなくて、きちんと議論しているところもあると思います。ですから、そういうところとうまくパイプが合ったら、大いに参考になるのではないかという気がします。

【大垣座長】
 はい。

【岩渕室長】
 そういう点で言いますと、STEP3のところでは、業界団体の寄与みたいなものがあると、更にいいのかなという感じも受けました。

【大垣座長】
 はい。よろしいですか。
 ほかには、御意見いかがでしょうか。

【大隅委員】
 よろしいですか。

【大垣座長】
どうぞ、大隅委員。
【大隅委員】
 今、笠木委員がおっしゃった、最後の学協会絡みのところなんですけれども、既に22期ですか。学術会議の方で、「マスタープラン2014」というのが発出されたところですよね。そういったものは、実際にどんなふうに関係するのか、ちょっと私は、その策定のところの委員をやっていたので、相当な思いをして、西尾先生もそうなんですけれども、ステップにステップを重ねてやってきたというところが確かにあるんですね。
 それで、その全てがこういったところにはまるかというと、それは、そうではなくて、学術会議が行うものですから、一応、それぞれの学協会、必ずしも学協会だけではないんですが、科学者コミュニティーをベースにした、ボトムアップの提案ということで、その中で、加速器のような大型設備が必要なところもあるでしょうし、そうではないところもいろいろあるんですけれども、何らかの形の提案ということでまとめているので、そういったものも、せめて御一読は頂きたいと思いますし、場合によってはヒアリングをしていただくとか、そういったことも御検討いただけたらいいのかなと思っております。

【西尾委員】
 大隅先生に言っていただきましたので補足させていただきます。日本学術会議としては、「マスタープラン2014」を学術のコミュニティーの総意として、大型研究計画の重要なものとして位置づけております。それらの各大型研究計画がここで言う「戦略的な」というところにマッチするものなのか、しないものなのかについては、さらなる判断が必要だと思いますけれども、日本学術会議が学術の大型研究計画として採択した計画は全て、先般、発出しました「マスタープラン2014」の提言に掲載しておりますので、よろしくお願いします。

【大垣座長】
 STEP1に入るか、STEP2に入るか分かりませんけれども、入ってきてもおかしくはないし、重要な情報ですね。
 ほかには、どうでしょうか。特によろしいですか。辻委員は、特によろしいですか。

【辻委員】
 戦略目標はこれまで、省内での検討で作られてきたということですが、恐らく、多少のエビデンス、多少の最先端の研究者の知の糾合、そして多少のビジョンもあって作られてきたんだと思います。それをきちんと表に出して、透明なプロセスでやろうというのは、非常によいことだと思います。
 一方で、笠木先生もおっしゃったように、誰がどうやるかが重要だと思います。例えば、ビジョンということですと、必ずしも合議ではなく、合議を超えたものが出てきてほしい。無論、エビデンスは必要ですが、必ずしも合議でないところから出てくる知恵をどう取り入れていくのか。
 全体のことを話すような場面でも、御自分の分野のことをお話になる方が多く見受けられるのですが、それを超えて、日本の将来のために何が大事なのかを出していけるか。日本の科学コミュニティーにとってもチャレンジであり、かつ意味の大きいことだと思いますので、是非、うまく機能する仕組みができていけばいいなと思います。

【大垣座長】
 ありがとうございます。ほかには、よろしいでしょうか。

【小松研究振興局長】
 ちょっとよろしいですか。

【大垣座長】
 はい、どうぞ。

【小松研究振興局長】
 今日は、いろいろと御意見を頂きありがとうございます。
 まず、前半部分でございますけれども、理念的なことも、少し多く、生き生きしていない部分があるのではないかという御批判がございました。
 それで、理念的なことにつきましては、定義論とか、語義の話に行きがちなんですけれども、趣旨としては、いきなりお金とか、仕組みの話から入るというのは、それはそれで危険なこともありますので、一度、お集まりの皆様に、在り方論と言いますか普遍的な在り方を整理した上で、仕組みとかの議論に入った方が健全であろうと思ったところです。コンパクトにまとめる関係上、若干粗いところがあるかもしれませんけれども、そちらの方の哲学を整理するというのがメインではありません。それに、行政のものですから、そういったことをある程度押さえながら、基本的には、実際の支援に当たり、機能するフレームワークの在り方などをメインに、いろいろとお知恵を貸していただくということでいいのかなと思っております。
 次に、後半については、もう少し具体的に、いろいろとものすごく示唆に富んだことをおっしゃっていただきましたので、次に生かしたいと思います。事務局が言うのは少し乱暴かもしれませんが、今日のお話にも出てきたんですけれども、要するに、研究開発、あるいは研究というものの資源が、ほかもそうですけれども、非常に制約がきついために、出口を見据えるか、出口から見るかみたいなことは、余り研究現場では関係がなくて、それよりも、一応自分の研究が進められそうなリソースがあれば、まずはとにかくそのリソースを取って先へ進めるということが、現状としてあるだろうというお話がありました。
 これは、私どもとしても、かなり切実に感じているところでございます。ある意味、そうやって幾つか並んでいるリソースの中から、工夫をして取っていただくというのも、研究を進められる方の作戦という面ではあると思いますが、他方で、そのことによって、予算事業はどうしてもルールがありますので、こういう形で研究を進めたいということについては、そのルールによってフラストレーションが生じ、予算の側からすると、そのルールに照らすと不足が生じるという意味で、何となく全体が中途半端になって、これでいいのだろうかという、支援政策と研究現場との間の乖離というか、感覚的に不足感があるというのを、ものすごく感じております。
 それを埋める部分を何とか作れないかなと。しかも、それが国民的に納得のできるような、先ほど辻先生がおっしゃられましたけれども、見えるような形で、何とかできないものかなというのが後半の趣旨でございます。
 先ほど来、御議論していただき、なるほどと思いましたけれども、「戦略」とか「ビジョン」、それから「社会的課題」と「科学技術振興」、あと「出口」、そういった幾つかのキーワードが、少し飛び交っていて、誰の目から見た戦略なのかとか、そういうことがはっきりしていない面は、中小路先生からも御指摘頂きましたが、確かにあると思います。最初に申し上げましたように、余り厳密に細かい言葉の定義まで議論することはメインではございませんけれども、ちょっとその辺の示唆を頂きましたので、それを併せて、次回、仕組み的なところへ、つまり現実に即したような形に、差し支えなければ、少し展開して、御議論の材料に供させていただければ大変有り難いと思います。

【大垣座長】
 ありがとうございます。
 今、小松局長のコメントに触発されるわけではないんですが、やはり、先ほどありましたけれども、理念もきちんとやらないといけないし、仕組みの議論もしないといけない。仕組みに即した理念があって、理念に即した仕組みがないと、今度、仕組みだけ動き出してしまうと、いろいろな経済上とか、予算の具合とかで、変質していくことがあったかに思いますので、是非、この理念の面でも、きちんと押さえておく必要があるかなと思いますね。
 それから、先ほどの2番目の話題で、双方が不本意というか、不満足のような形が生まれている。実は、それは見方の問題で、最初の頃、意見が出ていましたけれども、運用を柔軟にしていただければ、最初のテーマとは少し違うことをやることに関して寛容であるとか、そういうことがあると、不満も減りますし、ギャップがあるという感じも減るのではないか。それで、長期的な目で見ればという部分もあるのではないかと思いますが、そういうことも含めて、きょうはいろいろな御意見が出ましたので、ありがとうございました。
 何か、特に加えるべき御意見ございますか。
 はい。どうもありがとうございました。それでは、事務局で、再度検討を続けていただきたいと思います。
 それでは、最後に、事務局より連絡事項がございましたら、お願いいたします。

議題3:その他

【浅井室長補佐】
 次回の戦略的な基礎研究の在り方の検討会の開催日時について、御連絡させていただきます。検討会の第2回につきましては、既に御案内させていただいておりますとおり、5月8日(木曜日)13時から予定しております。
 なお、机上にございます資料につきまして、郵送を御希望される場合は、あらかじめお伺いしております郵送先にお送りさせていただきますので、机上に置いたままにしていただければと思います。
 以上です。

【大垣座長】
 はい。ありがとうございました。
 それでは、これをもちまして、戦略的な基礎研究の在り方に関する検討会、第1回を閉会いたします。本日は、どうも長時間、熱心な御審議、ありがとうございました。

お問合せ先

研究振興局基礎研究振興課

宮澤(内線4120)
電話番号:03-5253-4111(代表)、03-6734-4120(直通)
ファクシミリ番号:03-6734-4074
メールアドレス:kiso@mext.go.jp