資料1 戦略的な基礎研究の在り方に関する検討会 報告書(概要)(案)

戦略的な基礎研究の在り方に関する検討会 報告書(概要)(案)

1.はじめに

○高度な知的基盤社会の構築・発展には、「知」(科学的知見)の創出の多くの部分を担う学術研究が重要であるとともに、生み出された多くの「知」を社会的・経済的価値に向けて発展させる戦略的な基礎研究も重要。戦略的な基礎研究は、用途を考慮することの中から、新たな「知」の創出にも貢献。
○戦略的な基礎研究システムの進化に向け、国は意義の明確化とその概念整理、より効果的な仕組みと透明性の確保といった課題に取り組むとともに、国民に対して、戦略的な基礎研究の意義・仕組み・効果を明確に発信することが必要。
○大局的・長期的な視野で研究開発システム全体を俯瞰し、基礎研究を起点としたイノベーションを創出する方策等を検討するため、検討会を開催し、本報告書をとりまとめ。

2.戦略的な基礎研究に関する整理

○「用途を考慮した基礎研究」を、研究者が主体となって研究の進展により実現しうる未来社会の姿を見据えて行う「出口を見据えた研究」と、プログラム・マネージャー(PM)等が主体となって現在直面している明確な課題の解決のために行う「出口から見た研究」といった2つのアプローチに整理。
○我が国では、イノベーションを、短期的経済効果をもたらす技術革新としてとらえた「出口から見た研究」の議論は活発に行われているが、「知」を社会的・経済的価値に結びつけていくためには、「出口を見据えた研究」に最適な施策立案の仕組みも確立する必要があり、本検討会では、「出口を見据えた研究」の議論を深化。
○この「出口を見据えた研究」は、民間企業が行う研究開発とは一線を画し、公共的・普遍的な性格をもつ新たな「知」を得るための活動であることから、政府が積極的に推進し、役割を果たしていくことが必要。
○「出口を見据えた研究」の推進主体は研究者であるため、研究者の持つ発想と社会的・経済的価値の創出をつなげるために、政府の戦略が必要。

3.「出口を見据えた研究」の在り方

○戦略的創造研究推進事業(新技術シーズ創出)における戦略目標が「出口を見据えた研究」の趣旨を踏まえて策定されることを担保するため、(1)「戦略目標策定指針」を制定。また、戦略目標等に係る評価に基づき、繰り返し策定指針が改善されていくものとするため、(2)政策マネジメントサイクル(PDCAサイクル)を確立。

(戦略目標策定指針)
○戦略目標の策定は、「出口を見据えた研究」という趣旨に適うように、国内外の基礎研究を始めとした研究動向の体系的な分析から始まり、分析結果等に基づき特定された研究動向に関する研究の進展が社会・経済にどのような影響をもたらすかの推量に至るよう、次の手順で行うこと。なお、戦略目標は過度に先鋭化させないよう適切な粒度で設定することが必要。
【Step 1】データベース技術を駆使した科研費成果情報の分析等による国内動向の俯瞰及びサイエンスマップによる文献書誌学的情報の分析等による世界動向の俯瞰
【Step 2】最新の研究動向に関して知見を有する組織・研究者に対する意見聴取を行った上で注目すべき研究動向を特定
【Step 3】ワークショップ等により、研究者と産業や公共などの様々なニーズに関する知見を有する識者との対話を実施し、科学的価値と社会・経済的価値が両立可能な戦略目標を決定

(政策マネジメントサイクルの確立)
○「出口を見据えた研究」の趣旨等を踏まえた「戦略目標策定指針」の策定・改定に関する検討の場を整備。毎年度、戦略目標の策定に関し、指針に対する評価、戦略目標策定過程に対する評価、実施フェーズに対する評価を行い、これを踏まえて指針の改定に反映させるという政策マネジメントサイクルを確立。これを循環させるためには、この検討の場は常設とすることが必要。

(「出口を見据えた研究」実施の考慮事項)
○「出口を見据えた研究」が行われる上で最適な「研究者群」の形成を促すような事業運営に努めるべき。
○偶発的な発見(serendipity)の許容と、研究者のモチベーションの保持が必要。
○学術研究や「出口から見た研究」など、他の研究類型との関わり・交差も念頭に全体最適を図るような柔軟な運営が必要。特に、イノベーションを結実させる観点からは、「出口を見据えた研究」の推進主体である研究者と「出口から見た研究」の推進主体であるPM等との交流が必要。
○JST全体として「出口を見据えた研究」を推進する研究者の目利き人材を育成することが重要。

4.今後求められる取組み

○文部科学省は、本報告書において定められた戦略目標策定指針に基づき、平成27年度戦略目標の策定を進めるとともに、戦略目標を策定した際には、本検討会に策定結果を報告し、適切に戦略目標が策定されたか、指針に改善すべき事項はないか等について検討。
○平成27年度以降は、科学技術・学術審議会に戦略的な基礎研究の運営・評価等のための検討の場を設け、戦略目標策定指針の改定、戦略目標の策定経過の評価等を実施。

お問合せ先

研究振興局基礎研究振興課

基礎研究推進室長 岩渕(内線4250)、基礎研究推進室長補佐 浅井(内線4344)、基礎研究・機構係長 春田(内線4386)
電話番号:03-5253-4111(代表)、03-6734-4120(直通)
ファクシミリ番号:03-6734-4074
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