ポスト「京」で重点的に取り組むべき社会的・科学的課題についての検討委員会(第4回) 議事要旨

1.日時

平成26年7月24日(木曜日)16時~18時

2.場所

文部科学省東館3階3F2特別会議室

3.出席者

委員

小宮山主査,土居主査代理,城山委員,住委員,関口委員,瀧澤委員,土屋委員,土井委員,平尾委員,樫根喜久氏(内山田委員代理)

文部科学省

岩瀬政策評価審議官,山脇大臣官房審議官,安藤振興企画課長,下間参事官,川口計算科学技術推進室長,田畑情報科学技術推進官,遠藤参事官補佐

オブザーバー

(理化学研究所計算科学研究機構)
宇川副機構長,石川プロジェクトリーダー,佐藤副プロジェクトリーダー,牧野副プロジェクトリーダー,富田副プロジェクトリーダー

4.議事要旨

(1)第3回委員会における委員からの主な意見等について

川口計算科学技術推進室長より,資料1に基づいて第3回委員会における委員からの主な意見と対応について説明。

(2)ポスト「京」で重点的に取り組むべき社会的・科学的課題について

川口計算科学技術推進室長より,資料2に基づいて第3回委員会での議論を反映したポスト「京」で重点的に取り組むべき社会的・科学的課題(案)について説明。

【小宮山主査】  本日の議題の一番中心的なところですので,各委員から御意見を伺いたいと思います。どなたからでも結構ですので,お願いします。
【平尾委員】  前回もコメントさせていただいたが,公的な資金を費やして進められるプロジェクトにおいて,その課題設定は社会的期待に応える観点が必要であるということ,そして,基礎科学,基礎的な研究であれば,私たちが持っていた従来の自然観というものを覆すような挑戦的な課題であるべきだということを言いました。その観点からそれぞれの課題にコメントされてブラッシュアップされたのが今日出されたわけですが,課題1から課題9に関しては,そうした観点から考えても,重点的課題として取り上げることがふさわしいのではないかという気がしている。
 もう一つの観点になるが,「京」のただの延長というか,サイズを大きくしたり,時間発展をより長くしたりというだけの成果だけではつまらないわけで,ポスト「京」でしかできないというか,「京」の100倍近い能力を持つもので初めて取り扱う課題というものを取り上げるべきだと思うし,その意味では,課題13は,今後,発展が望める分野であるため,是非課題としては取り上げるべきではないかと思っている。一部,「京」での成果もあり,十分見通しがあるのではないかと思う。
 また,最近,「京」はGraph500というベンチマークテストで世界一になった。Graph500は,演算性能ではなく,ビッグデータのような解析にどれだけの能力を発揮するか,そういう指標であるが,ポスト「京」でも,当然,「京」の後継機を作るわけなので,「京」のいいところを更に伸ばしていこうという思想があるでしょうし,最近,注目を集めているビッグデータやデータマイニング,あるいはソーシャルグラフの解析ということに関しても,ポスト「京」も十分機能を発揮すると思うので,そういうことが非常に重要になってくる社会的課題,これにもポスト「京」は非常に有効であると思っているので,課題11も是非取り上げていただきたいと思っている。
 課題10の分野連携課題について,もともと実は計算科学やシミュレーションは,学際的な学問です。どの分野のシミュレーションも,基本的には多元空間での最適化問題を解いているわけであり,分野によらず共通の視点,共通のアルゴリズムがある。そういう意味では,計算科学やシミュレーションは,サイエンスに横串を刺すようなもので,言ってみれば新しい科学の核になり得るものと思っている。この分野連携というものは,正直,かけ声だけではなかなか進まない。そのため,トップダウン的に課題設定をするということが非常に重要だと思う。分野連携は,当事者たちの強い意志がないと進められない。その意味では,こういう形でトップダウン的に設定することはよいと思っている。実は,「京」のときも,皆さん御存じのように,UT-Heartという心臓のシミュレータがあり,これは言ってみれば,いろいろな分野の人たち,工学,理学,数学,医学等が集まって,分野連携で,マルチスケール・マルチフィジックスを実現したもの。分子のレベルから心臓をシミュレートして,医学の現場でも使われるような非常にすばらしいもので,もちろんそのことも重要だが,マルチフィジックスやマルチスケールはこうすればできる,分野連携をやればできるということを示したということも,UT-Heartの非常に大きな成果ではないかと思っている。課題10番のサブ課題に関しては,もう少し検討する余地があるのではないかと思うが,トップダウン的にこういう分野連携をやるべきで,こういうシミュレーションの分野でやるということは非常に有効であるため,是非取り上げていただきたいと思っている。
【小宮山主査】  1つ質問ですが,課題10のトップダウンでの分野連携というのは,サブ課題A,B,C,Dというテーマが基礎科学のフロンティアとしてトップダウンで与えられると,それが分野連携でないとできない課題だから分野連携が促進されると,そういう話でしょうか。
【平尾委員】  サブ課題に関しては,選択肢はいろいろあると思うが,重点課題として,その1つとして取り上げる。今の委員会で,国がこういう分野をきちっとやりましょうということ。
【小宮山主査】  極限への挑戦という分野。
【平尾委員】  はい。そういう意味のトップダウンということです。
【小宮山主査】  分かりました。
【川口計算科学技術推進室長】  御指摘のとおりで,この課題の議論をしたときには,それぞれのアイテムについて,例えば破壊とカタストロフィというものをアプローチしていくときには,今までそれぞれでやっていたようなところを組み合わせないとこういう問題はできないのではないかというところもあり,考えさせていただいているところです。
【小宮山主査】  分かりました。ほかに御意見いかがでしょうか。今の御意見は,重点課題9件と萌芽的な課題で行っていくということに対するポジティブな御意見でした。
【土井委員】  13の課題に整理していただいたというのは,非常にいいのかなと思う。
 多少細かいことですが,2点ありまして,資料2の6ページのところで,それぞれどれくらいの計算資源量を必要とするかということがまとめられおり, 1EFLOPSの15%程度という形で前提が書かれているが,個々の課題の説明のところでは書いてあるところとないところがあり,これは統一して書いた方がよい。
 2つ目は,平尾委員からも御指摘のあった課題10の四つのサブ課題について,まだこれから検討が必要だと思うが,例えばもしサブ課題Dの量子力学のような話があったときに,たしかImPACTでも量子計算機の話があったと思うが,そういう意味で,もしこの課題が選ばれるのであれば,そういうところとの連携などを考えることも必要だと思う。
【住委員】  萌芽的課題とあるのはよいと思うが,決まったような印象,指定されたような印象を与えることを危惧する。具体的なプロポーザルや,もっとそういうものを見ながら決めていくものだったと思う。今現在,「京」を用いている分野については,その実績で考えることができるが,課題10,11,12,13のように本当に新しい分野については,これだけをやるというふうにとらわれてしまわないようにしないといけない。脳のようなマルチフィジックスで分野が決まった部分はよいが,サブ課題A,B,C,Dと書かれると,それが単なる例示ととられないで,これを実施するという印象を与えることは,今の段階では好ましくないのではないかと思う。よくよくその辺のところを書かれた方がいいと思う。例示が本当の例示だということを強調する必要があり,もっと具体的にはいろいろな可能性があり,提案を受け付けるというふうに書く必要がある。
【川口計算科学技術推進室長】  住委員の御指摘のとおりと思います。これは課題10に限らず,ほかの課題もある程度,必要性,有効性,戦略的活用の観点というものをサポートする意味として,こういう内容として考えられるということはありますが,実際に提案を受け付けるときには,これは1つの例であって,必要性,有効性,戦略的活用というものを満たす中でもっとよい提案があるのであれば,それは受け付けるということだと思いますし,その中で課題10は特に間口が広いテーマですので,そこはきちんと例示であるということは明記するようにしていきたいと思います。
【小宮山主査】  今の御指摘は大事なところ。特に萌芽的課題のところは何かいいアイデアが欲しい分野。ほかにはいかがでしょうか。
【土屋委員】  産業界の立場からすると,全体的に我々の意向を反映していただいていると思います。また,私どもは製薬企業ですから,日本に適した高付加価値で省エネルギーの医薬品産業の発展という観点から,ポスト「京」を役立てられるようにしていきたいと思っています。
 先ほどからのお話にもありますが,フロンティア的な位置付けで,将来を見据えた特に重要な分野に取り組んでいる際に,それぞれの分野で成果を出すということになると,各分野に計算資源をどのように配分していくのかについては柔軟なマネジメントが必要です。そのためには,その資源配分を調整する機能が,非常に重要になってくるのではないでしょうか。
 また,産業界の立場からは,産業界の参入の在り方を明確にしていただくことをお願いします。すなわち,企業の連合が重点課題の受皿になって,産業の発展につながる取組を進めることが実効性につながるので,業界団体を活用した橋渡しをうまく進めていただければと思います。
 最後に,フラグシップシステム以外も含めた計算資源全体を最大限に活用できるようにする取組も並行して進めていただきたいという点を,創薬への応用という観点からお願いします。
【平尾委員】  実は,「京」があらわれて非常に大きく変わった点は産業界のスパコン利用です。これまではそれほど,一部の業種ではいろいろな形で使われていたが,これだけ広い分野でスパコンを使うようになったのは「京」が初めてだろうと思う。それも,例えば製薬会社や自動車業界では,コンソーシアムをそれぞれ組んで,あるところまでは一緒にやり,その後は競争という体制が組まれている。恐らくポスト「京」ではそれがもっと進んで,いろいろな業種に広がっていくと思っており,産業利用は非常に重要なことだと思っているので,そういう観点で是非ポスト「京」も活用できればと思っている。
【小宮山主査】  課題それぞれの検討はかなり進んだと思うが,例えば,脳科学は間違いなく最先端の一つである訳だが,実際には何をシミュレーションすることになるのか。脳といっても,例えば,ニューロンを電気回路のようなモデリングをするのか,ポスト「京」になると何ができるようになるのか。
【牧野理研AICS副プロジェクトリーダー】  脳科学の専門家ではないですが,説明させていただくと,どういうシミュレーションができるようになっているかという話は,実は幾つかのレベルのシミュレーションが考えられます。つまり,神経細胞を単純化して扱って,一番大きい方のシミュレーションでは,ニューロンをかなり論理回路に近いレベルで扱うようになって,霊長類の脳を丸ごと,人間の脳の10分の1程度の,数十億ニューロンを扱うということになると思います。
【小宮山主査】  それはどういうモデルなのか。モデル化はどうするのか。
【牧野理研AICS副プロジェクトリーダー】  どちらかというと,信号として捉えるという感じのものです。
革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクトでは,全ニューロンの結合自体を,もちろん実験的に脳内のニューロンの結合自体を決定しようということが一番大きなテーマです。測定手法をまず開発して,それによってマーモセットぐらいの,霊長類ぐらいのかなり大きな脳に関して,実際の脳にある回路そのものを取り出そうということがこの革新のプロジェクトの最終的な目標となっています。したがって,実際にそれをある意味ベースにして,そのレベルのシミュレーションを行うということになると思います。より詳しい情報は,机上配布資料の方に記載があると思います。
【小宮山主査】  ほかにいかがでしょうか。前回までに御指摘いただいた点はできる限り反映したわけですが,特にほかにはございませんでしょうか。土居主査代理,何かございませんか。
【土居主査代理】  委員の皆様の御意見を頂いたものが反映されていると思っています。重点課題9課題と萌芽的課題4課題という構造で,萌芽的課題については,具体的にどのように,誰が,今現在どこまでできているのをポスト「京」ではどこまでいくのかということを含めて,検討していっていただいて,その精査に基づいて本当にポスト「京」が必要なのかどうかということを決める必要があろうかと思います。
 また,資料2の6ページの計算資源量ですが,今のところは概算で求めているわけですが,具体的な検討が進んだ後で,精密なところを決めていくためのものだと理解してもらう必要があると思います。
【小宮山主査】  ありがとうございます。ほかにはよろしいですか。それでは,基本的にはこの重点課題9課題と萌芽的課題4課題という構造で,いずれも非常にオープンな課題であるということ。特に課題10,11,12,13は相当オープンにした方がよいということが委員皆様の御意見で,いずれも非常に魅力的なタイトルなわけですが,一体何をどうモデル化して何が分かるのかという話は,サイエンスの分野の人は少なくとも大体分かって,素人にもそれなりに理解できるような表現が必要だと思う。
【川口計算科学技術推進室長】  御指摘いただいたとおり,萌芽的課題については,今後,調査研究を通して,具体にどういうことをやっていくのがよいのかということを精査していきたいと思います。

(3)報告書について

川口計算科学技術推進室長より,資料3に基づいて本委員会で取りまとめる報告書の概要について説明。

(4)その他

川口計算科学技術推進室長より,資料4-1に基づいてポスト「京」のシステム開発の状況について説明。

【小宮山主査】  本委員会で議論して決定していただくというものではなく,直接関連するところの報告を頂いたということですが,御質問があればお願いします。
【住委員】  まず,プロジェクト名称にコンピュータか何か,フラッグシップ-2020というとどうしても普遍的な名前であり,どこでも,どの業界でもそういうものはあり得るため,非常に混乱するのではないかという気が若干するので,計算科学フラッグシップ等,限定的なものをつけた方がみんなのためにはよいのではないかという気がする。
 一つ聞きたい点として,チップの開発等が含まれているが,日本のメーカーでは作れなくなっているのではないかという疑問があり,そういうところは海外に完全にチップのところから全部任せるということなのか。
【石川理研AICSプロジェクトリーダー】  チップは,論理的な回路を開発していくという話と,実際に製造するというのは,一社が全部行うのではなく協業するという形に変わっています。全部行っているメーカーもありますが,それ以外のところは分かれているわけです。そういう意味では,日本の企業が半導体製造を持たなくなったからチップが作れなくなったというわけではありません。
【関口委員】  本来,こういうプロジェクトをやっていくということは,もともとの計算科学の強化があり,それから産業への応用や最近のビッグデータ活用のようなものがあり,3つ目の大きな狙いとしては幅広いコンピュータ産業の裾野を広げるといった育成のためのミッションがあると思うが,そういうミッションを達成する形に今の形でなるのかどうなのか。確かに半導体の開発は続け,やめるのは製造の方だが,本当は製造も含めてコンピュータ産業を強化できる形にできればもっとよかったのではないかと思うが,いかがでしょうか。
【石川理研AICSプロジェクトリーダー】  どうしてもCPU,アーキテクチャー,ハードウェアの部分に関しては,どこか一社にならざるを得ませんが,それ以外のところ,ストレージ系や特にシステムソフトウエアのあたりというのは,別に一社である必要はなく,国際連携ということも資料の中にありましたが,それだけではなく,国内のベンダー,ほかのいろいろなベンダーとも一緒にやっていくという体制を作っていきたいと思っています。そういう意味で,日本のベンダーと一緒に日本の技術というものを育てていきたいと考えております。
【小宮山主査】  今,製造とデザインするところ,発注するところが分かれてきているというのは国際動向ですね。それはそのとおりだが,最先端の設計と製造はそれこそコデザインが必要になる。そこは技術屋が密に議論しながらやるといった,そういうスタイルなんでしょうか。
【石川理研AICSプロジェクトリーダー】  どの時期に最先端のテクノロジーが使えるかというのは,企業と企業の間でNDAを結んで,非常に議論を細かくやっているところだと思います。
【城山委員】  資料4-1の5ページ目あたりに出てくるコデザインの話で,どう体制を作るかという話と,本委員会で議論している研究開発体制の話は,かなり重なってくるところだと思うため,そこはある程度お互いに相通じる形で書く必要があると思う。
 また,資料4-1の7ページ目のところで,恐らく,システム設計の観点から言うと,社会的・科学的課題にちゃんと応えてくださいということが一点目で,同時に,個々の課題に応えるだけではなく,課題に応えることで共通インフラとしての計算機が国際競争力のあるシステムとしてある程度寄与することが求められるという二点が書かれていると思う。本委員会では,基本的には社会的・科学的課題を洗い出す作業をしているという位置付けになると思うが,この国際競争力という話に全く触れなくてもよいのか。つまり,細分化して社会的・科学的課題はたくさんあるということではあるが,ある意味では,システム開発して使っていくことによって,ある種の社会にいろいろな課題横断的に寄与する話というものがあって,国際競争力というものはそういうものの社会的に一番関心を持たれている事項であり,そういう意味で言うと,本委員会でも,課題に分断するのは大事だが,横断的な社会的な課題という側面もあるので,そこを完全に切り離していいのかなというところだけ若干気にかかる。
【小宮山主査】  抽象的には分かるが,具体的な懸念点はどのあたりでしょうか。
【城山委員】  考慮事項として国際競争力があるということを,本委員会でも触れておくことは意味があると思う。つまり,最後はシステム検討ワーキンググループでまさに検討していって,どの課題を解決することと国際競争力は,場合によってはトレードがあることもあり得て,その判断はそこでしていくと思う。しかし,そのときにシステム設計の段階になって突然国際競争力という評価基準が出てくるというよりは,むしろ,こういうところでも多少システム競争力という評価基準があるというのを述べておいてもよいと思う。
【小宮山主査】  テーマと関連させて。
【城山委員】  はい。したがって,個別のテーマではないが,こういう国費を投じるシステムを設計するときには,そういう課題横串的なある種の社会課題というのもある。
【小宮山主査】  社会課題かどうか分からないが,平尾委員が先ほど話したような,計算機科学は横串的な意味があって,共通の方法論があって,全体として発展できるというような話は,一つの側面としてはある。
【城山委員】  そこはまさに科学的知見を横断的に,横串的に進めるという話で,これはもうちょっとベンダーをどう巻き込むかみたいな話に絡んでくる話だと思うが,産業としては競争力という意味での横串の側面という話もあると思う。
【住委員】  その点に関して聞きたいが,単にフラッグシップだけではなく,ほかのもあるはずで,そうすると,例えば一段下がった部分のスパコンは,現実的にはほとんど商用マシンを買うことになると思う。そうすると,フラッグシップと違うところのメーカーのスパコンを買ってきたら全然違うということにならなくて,整合性を持っていくようになるものなのか。
【石川理研AICSプロジェクトリーダー】  今,コデザインでいろいろと一緒にやっていこうと,一緒にやっていくというのは,計算科学の方々と計算機科学の方で一緒にやっていくといったところで,いろいろとアルゴリズムを含めて変更しようと,踏み込んでやろうとしていますが,その結果というのは,今回のポスト「京」に限らず,ほかにも有効になると考えています。
 また,システムソフトウエアでほかのベンダーと一緒にやっていくという意味は,開発したものがほかの商用マシンでも動作するということを想定していまして,それによってほかのベンダーが新たにシステムソフトウエアスタックを開発しなくてもいいと。かつ,ユーザーから見ると,同じ環境がほぼ提供できるということになると考えております。
【小宮山主査】  住委員の心配はないということですね。
【石川理研AICSプロジェクトリーダー】  完璧にないというわけではないですが,ないようにしようとしているということです。
【住委員】  ユーザー側で言うと,機械が変わるときにものすごく大変だというのは非常に困るが,ただ,そこがユーザーとのコデザインということを強調されると,違うベンダーが違うユーザーとコデザインをやったら違うようにならないかという危惧が若干,コデザインのところはよく分かってないので,ユーザーがどういうふうになるのか分かってないのでそういう危惧を持つので,その辺もよろしく考えていただきたい。
【川口計算科学技術推進室長】  また違う切り口のお答えになるかもしれませんが,資料4-1の1ページ目に三角形の図を描いていますが,ここでフラッグシップがあって,その下にフラッグシップを支える特徴ある複数のシステムというのがあり,これはこの下に書いてあるHPCI計画推進委員会の今後のHPCI計画推進の在り方に関する検討ワーキンググループにおいても,まさにこの下のレベルはどういうものなのかということも整理しています。大きくは4つの分類があるかというので,1つはフラッグシップと同じアーキテクチャーできちんと橋渡しができるシステム,フラッグシップがカバーできないようなちょっと変わったアプリケーションをカバーするようなシステム,PCクラスターのようなPCを集めたものというボトムアップからの発展系のシステム,あるいは全く新しいシステムといった幾つか多様性の中でのカテゴリーがあると思いますが,そういう中でそれぞれのスーパーコンピュータが日本全体の中でフラッグシップとの関係でどういう役割になっていくか。そういう整理はまた今後,取り組んでいきたいと思っています。
【土居主査代理】  城山委員の御指摘に関して,この場で扱った社会的・科学的課題はもう重々御存じの上での御指摘だと思いますが,要するに,世界最先端の結果を求めるためであると。ものづくりのところは明白に,我が国のものづくりの国際競争力を強化するのに貢献しようということですので,ここで取り上げている課題そのものの解決がそれこそ国際競争力といいますか,世界最先端のものとまとめていっていただけると思っています。
【城山委員】  最終的にはもちろんそういうことだと思う。住委員の御意見にもつながると思うが,それぞれの課題でユーザーなり何なりとコデザインをしていくと,多分いろいろな要求要件が出てくる。しかし,システムとしてどうするかということは,選択をむしろ統一的にしなければいけない場合があると思う。そういうトレードオフというのはあり得る。したがって,国際競争力も,もちろん個々の課題を解決することが国際競争力に寄与することは間違いないが,個々の課題を解決してやるという部分と,ある意味では汎用的なシステム,それ自体としてどういうふうに競争力にそれが寄与するかという話と複数の寄与の仕方があるので,そこはうまくいけば,もちろんそれにこしたことはないし,多くの場合はそうだと思うが,場合によっては,そこはコンフリクトというか,トレードオフの判断というのをシステム設計の際にはせざるを得ないこともあるので,そういう可能性もあるので別立てで立てておくという必要も潜在的にはあるのではないかなということです。
【土居主査代理】  分かりました。それはそのとおりだと思います。前回の委員会で,内山田委員が心配されて,全ての要求を満たす,そういうアーキテクチャーができると思ったら大変だという御意見があったわけですが,どこかでコンフリクトが起こる,あるいはデシジョンしなければいけないということが当然出てくると思います。また,先ほどのデザインと作る者との関係ですが,デザインを国としてきっちり力を持っておくということが重要で,作るところはどこでもいいとは言いませんが,そのところだけは,デザインだけは手放さないということが国としての力を維持するものだと理解しておりますので,それをそのまま進めていただくという形になっているのだと思います。
【小宮山主査】  ほかにはいかがでしょうか。
【土井委員】  少し細かい話になってしまって恐縮ですが,資料4-1の3ページ目のシステムと開発の概要のところで二点質問させていただきます。
 一点目は,システムソフトウエアが国際的に通用するということを目指していると思うが,米国と協力しながら開発というところは,日本で先に作って,それから一緒にやりましょうといっても多分うまくいかないので,ある程度早い時期から協力してやっていかないといけないと思うが,その具体的なイメージはどういうイメージを考えておられるのか,という点。
 二点目は,資料4-1の3ページ目の右側のシステムソフトウエア群というブロックが書かれていて,細かい話だが,電力制御機構のブロックが一番下のハードウェアのところにさわらないようなものになっているが,これはこういう想定で正しいのかどうか,という点。
【石川理研AICSプロジェクトリーダー】  二点目から回答します。書き方ですが,ハードウェアのところまで電力機構の記載がかかってもかまわないですが,単に部分的にOSの一部に電力制御機構が入るのでというつもりで記載しただけの話です。実際,電力機構の機構そのもの自体はOSの中に入れておかないといけないため,ちょっと分かりにくいですが,また修正したいと思います。
 また,最初の御質問については,アメリカとの協力は既に今年6月のISCというドイツで行われた国際会議でDOEと文科省の間でシステムソフトウエアの研究開発に関する共同研究の取決めの調印が済んでいます。2年程度前からその話は出ており,既に我々とDOE傘下のアルゴン国立研究所の間では,OS,通信ライブラリ,ランタイム系のスレッド等,そういったところで既に締結前から話をしていて,実際に協力して研究開発は進めてきています。どこまで幅を広げてやっていけるかという点は,まだ今後やっていかなければいけない話ですが,地道に進めてきています。
【小宮山主査】  ほかに御質問ございますか。では,どうもありがとうございました。

川口計算科学技術推進室長より,資料4-2に基づいてポスト「京」で重点的に取り組むべき社会的・科学的課題とこれに関するアプリケーション研究開発体制,及びポスト「京」のシステムについてのHPCIコンソーシアム提言について説明。

【小宮山主査】  御意見はございますか。ありがとうございました。
 最後に1つ質問ですが,フラッグシップ-2020という名称は決定でしょうか。
【山脇大臣官房審議官】  実際の計算機の愛称については,完成時点でもう一度公募などで決めるという形で考えています。これから進める,例えば政府内で説明するときに,ポスト「京」プロジェクトというよりも,このプロジェクト名としてこういう名前を使いたいと考えています。ただ,政府内で言うとしても,フラッグシップだけで通用するかという問題もあるので,考えながら進めます。
【小宮山主査】  分かりました。

小宮山主査より閉会宣言

お問合せ先

研究振興局参事官(情報担当)付計算科学技術推進室

電話番号:03-6734-4275
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