ポスト「京」で重点的に取り組むべき社会的・科学的課題についての検討委員会(第3回) 議事要旨

1.日時

平成26年6月19日(木曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省東館3階3F2特別会議室

3.出席者

委員

土居主査代理,内山田委員,大隅委員,住委員,土井委員,林委員,平尾委員

文部科学省

小松研究振興局長,安藤振興企画課長,下間参事官,川口計算科学技術推進室長,田畑情報科学技術推進官,遠藤参事官補佐

オブザーバー

(理化学研究所計算科学研究機構)
宇川副機構長,石川プロジェクトリーダー,富田副プロジェクトリーダー

4.議事要旨

(1)第2回委員会における委員からの主な意見等について

川口計算科学技術推進室長より,資料1-1に基づいて第2回委員会における委員からの主な意見と対応について説明,資料1-2に基づいて第2回委員会での議論を反映したポスト「京」で重点的に取り組むべき社会的・科学的課題の選定方針について説明。委員からの質問,意見は特になし。

(2)ポスト「京」で重点的に取り組むべき社会的・科学的課題について

平尾委員より,資料2-1に基づいてポスト「京」で実現を目指しているコンピューティングについて説明。川口計算科学技術推進室長より,資料2-2に基づいてポスト「京」で重点的に取り組むべき社会的・科学的課題(案)について説明。

【土居主査代理】  12の課題候補に関して説明してもらいましたが,より詳細な説明が机上配付資料にありますので,適宜参照いただければと思います。資料2-2の2ページ目にありますが,議論の論点として,委員の皆様方には必要性の観点,有効性の観点,戦略的活用の観点から見て,ここに挙げられた課題候補は適切なのかどうか,例示が適切かどうか,ほかに適切な研究開発内容が考えられないか,ほかに課題候補があるかといったような観点から,御意見を頂きたいと思います。
【住委員】  少し全体が分かりにくいところがあるため説明していただきたいが,課題1から課題12というのは,具体的な例として出されていて,重点課題としたときはここから削って選ぶという意味なのか,それとも,この課題1から課題12が重点課題としてあるという意味なのか。
【川口計算科学技術推進室長】  事務局としては,いろいろな検討を進めて,ここで挙げている12個の課題は重要なものと思っていますが,委員の皆様から見て,まだそういう段階ではないだろうというものがあれば,また検討していくところはあると思っています。
 その上で,留意事項に書かせていただいたのは,計算科学ロードマップでは,ここで挙げている重点課題候補に限らずいろいろ多くのテーマを挙げていますが,それらはポスト「京」として重点的に取り組むものだけではなく,「京」でも行っていますが,一般利用で実施していくものであったり,ここまで大規模ではないといったものは当然ほかの大学等のスーパーコンピュータ,これも当然これからどんどん性能がアップしていきますが,そういうところで実施していくものもあるということを記載させていただいています。
【住委員】  一般的に計算資源はあればいいというのはみんなそうだと思う。課題選定ということを考えると,例えば今何もやってない,しかし非常に大事という課題がぽっと出てきて,では実際に取り組めるのかという話がある。後で資源の配分の話もあるが,ポスト「京」ができたときには実施し始めるということであれば,少なくとも,今相当程度「京」でも使用して実施していなければ,すぐには実施できないと思う。そういう意味で,現実的な要求としてポスト「京」が動いた瞬間に成果が一年目から出てくるということはどこかで考えた方が良いと思うが,どういうスケジュールで考えているかが分かりにくい。これから課題を選定していくに当たって,今まで実施しているものと全く無関係にあるというふうに見えてしまうことは現実的ではないと思う。
 また,課題11には非常に違和感を覚える。これから公募にかけていろいろな課題を選ぶということであれば,基礎科学の発展は公募課題として合っているような気はすると思うが。
【川口計算科学技術推進室長】  住委員の御指摘のとおりで,課題1から10まではこれまでの積み重ねもあり,ある程度ポスト「京」でもできていくだろうというものになっています。課題11と課題12は確かに性格が違っていて,ポスト「京」というのをやるのでこういうことに取り組んでいってはどうかというものです。ただし,御指摘のとおりで,本当にそういうふうにできるのか,実施体制が組めるのかという点は,もう少し検討していかなければいけないものではありますが,将来の可能性ということで,こういう課題も大事かと考え,挙げさせていただいています。
【平尾委員】  三つの観点が議論の論点であるが,この論点とは違う観点から少し話をさせていただきます。これから先も真理の探究,そうした科学研究というものは今後も尽きることなく進められていくだろうと思っているが,同時に,これからの科学技術というものはやはり社会の中の,社会のための科学技術でなくてはならないというふうに私は思っています。特に我が国は東日本大震災からの復旧であるとか,あるいは防災・減災,あるいは高齢化問題に伴う医療問題であるとか,あるいはエネルギー問題,非常に難しい問題,課題を抱えているわけです。こうした問題に応えてほしいという要望が,国民から科学技術に対して期待がかけられていますので,私はポスト「京」のプロジェクトのように多額の公的なお金を投入するプロジェクトでは,そうした社会の期待,国民の期待に応えられる観点というものを入れないといけないと思う。これは科研費のようなボトムアップの資金とはやはり違うのではないかという気がする。
 そういう意味で,12個の課題を並べて見てみると,多くのものはそういう社会の期待に応える,あるいは今課題となっているものを挙げられているといって良いと思う。問題はやはり基礎科学のところだろうと思う。私はもともと基礎科学出身であり,基礎科学を除外するわけではなく非常に重要だと思っているが,基礎科学のところでは本質的な,自然の本質に迫るような基礎的科学でないといけないし,すぐに役立たなくても実用に行かなくても,私たちの持っているこれまでの自然観であるとか物質観であるとか生命観であるとか,そういうものを覆すような,そうした自然の本質に迫るようなものであるかということがやはり観点になるのではないかという気がしている。
 例えば課題9の宇宙の基本法則と進化の解明,これは戦略プログラムで実施している分野5に相当するところを,その成果を発展的に実施しようということで,私は意味があるのではないかと思っているが,課題10と課題11に関してはもう少し内容を練った方が良いのではないかという気がしている。特に,課題10の生命の起源の探究は,言葉としては非常に良いかもしれないが,これが実際に取り組めるものかどうか。実際問題として,私も星間分子を扱ったことがあるが,それからまだ生命に行くには少し距離があり過ぎるのではないか。課題10で言われていることは,例えば課題9の方に入れるなど,個々の分野の発展がまだ望まれているところであって,本当にここで連携して実施できるのか,成果は出るのかということに関して,まだ少し距離があるのではないかと思う。
 また,もう一つの観点として,これだけパワフルなスパコンができるわけなので,そうしたスパコンが出てくることによって新しく生まれてくる分野というものがあると思う。それは重要視しないといけない。課題11のところにも出てくるような,スパコンが発達したおかげで可能になるようなサイエンス,例えばカタストロフィやノンリニアな現象等は,これはまさにそういうところに当たるし,脳科学というものもまさにそうではないかと思う。既に「京」でも脳科学のことを世界最高レベルのシミュレーションで実施しているが,こういうものはポスト「京」でチャレンジすべき課題の一つとしてあり得ると思う。欧米で,今盛んに日本と同じようにエクサスケール,現状のペタからエクサに向かって何をやるべきかということを本当に科学者の間で議論されていて,多くのものはここで課題1から課題12までに挙がっているものと重複するところが多いが,二つ異なっているのがある。一つは脳科学,もう一つは燃焼。この二つが独立して,これから追求すべき課題である,こういうふうなパワフルなスパコンを使って解決すべき課題であるということなので,そういう観点も少し入れて,もう一度このあたりを検討した方が良いと思う。
【土居主査代理】  御意見を頂くということを先にさせていただければと思います。ほかにはいかがでしょう。
【大隅委員】  今,脳科学のことが挙げられましたので,その続きのことで少しお話させていただきます。課題11の中で,四つあるサブ課題の一つとして脳科学というものが位置付けられている。机上配付資料の111ページというところが相当するが,既に「京」時代にそれなりに実績がある。また実際に,脳科学分野が今非常にホットになっていて,新しいテクノロジーで,例えば神経細胞が本当に幾つあるのかを実測できるのではないかというふうな時代に来ており,さらに参画する研究者が増加している。例えばだが,生命の起源を探求しようという科学者の人口と脳科学研究者の集団の大きさを考えたときに,この四つの中で,ほかを私が知らないからなのかもしれないが,脳科学にとってこのポスト「京」が必要な時代になっているのではないかと思う。
【土居主査代理】  平尾委員からもありましたが,また新たな脳の十年のような感じの計画として取り上げられているようなところが他国でも見られますので,このあたりはまたじっくり考える必要があると思う。ほかにはいかがでしょうか。
【林委員】  防災・環境問題で二つの課題が挙げられていて,一つは地震・津波,もう一つは観測ビッグデータを活用した気象と地球環境の予測の高度化。IPCCのレポート5において,やはり地球温暖化は事実であるということになり,あとは幅がどのくらいかということで,海面上昇は確実にこれから数世紀続くであろうし,それによって結局は耕地が減り,それから飲み水も減り,その間に人類は100億人に達してということもある。GEO,DIAS,あるいは東大のEDITORIA等,いろいろな環境について,水のシミュレーションの研究者たちがやってくれる連携に期待している。そのアウトプットとして,グローバルなサステナビリティ・ディベロップメントへの脅威を可視化・定量化するようなことも是非実施していただいたら良いのではないかと思う。干ばつというと,今でも問題だと言われるが,それがもっと大規模化して私たち自身も食べるものがなくなってしまう。逆に光合成等,全く新しいものへ依存していかなければ,あるいは社会そのものが変革していかないと人類の生存そのものが危ぶまれるということもあるので,サステナブル・ディベロップメントに関わるようなもののインデックスや,あるいはパラメータとして,水と食べ物,あるいは耕地等も計算の中に入るのではないかという感触を持ちました。
【土居主査代理】  極めて重要な観点だろうと思います。ほかにはいかがでしょう。
【平尾委員】  今,林委員からありましたが,今年の二月にイギリスのロイヤルソサエティーとアメリカのナショナル・アカデミー・オブ・サイエンスが共同で論文を出して,地球の温暖化に関して人々に啓もうと警告を出しているが,この温暖化というものは要するに人間の活動のせいであると。今すぐにCO2のエミッションというか,排出を止めても,実は産業革命前の炭酸ガスの濃度に減らすには数千年掛かると。このままいくと,本当に海水が今以上に酸性化して,例えばサンゴであるとか貝であるとかいろいろな生態系に非常に大きな影響を与える。もちろん海面が上昇することもそのとおり。これをどうするかというのが非常に大きな問題であるという警鐘を鳴らした。新しいものに更に価値を付けていくということも必要だが,現在のものを守っていくということに関しても次のスパコンが大いに力を発揮しなければいけないという気がする。
 それからもう一点,別の観点で。先ほど脳の行動の説明をしましたが,脳は観測の方が非常に進歩している。これはスーパーMRIという11.7テスラの非常に強磁場のMRIができ,本当に多面型のMRIができて脳の活動が非常に良く観測できるようになった。シミュレーションの果たす役割は,まずはウエットの実験に比べれば少し従になるかもしれないが,これから先にはシミュレーションの役割は非常に大きくなるものがあると思う。
 また,先ほど川口室長が人工知能のところでdeep learningの話をされていたが,脳の研究と工学的な人工知能は少し方向性は違うが,お互いに刺激をし合って情報交換していけば非常に良い分野を確立できるのではないかという気もするし,脳科学だけではなく,もし考えるならばそういう人工知能も一緒に考えて一つのテーマとしてまとめることはあり得るのではないかという気もする。
【土居主査代理】  なかなか擦り合わせが難しい面が出ないとも限らないですが,何か一工夫要るかもしれませんね。ほかはいかがでしょう。
【住委員】  ここで取り組むべき課題を検討しているのは,ポスト「京」の開発に予算を使って,何のためにやるのかということに答えるためだと思うが,もう一つ,やはりそれと同時に現場の研究者的に考えると,具体的なスケジューリングの問題と,それからどれぐらいの計算機の資源量があるかという点は非常に大事なポイント。ものすごく総花的になっている。何でもできると宣伝すると,結局マシンタイムが回ってこないでストレスが非常にたまるということは過去に繰り返されている。みんなが応募して選ぶのは良いが,具体的な,例えばどれぐらいの計算リソースで何課題ぐらい選ぶといったことも,今の段階から出していった方が良い。実施体制が過剰な,夢を描いているようなものがあり,大丈夫かという感じがしないでもない。やはり早い段階で具体的なこと,どう現実的に考えても,今の「京」で実施していることとリンクして次に備えるということをやらない限りは難しいと思う。そのあたりの移行というか段階を明示的に出すことが良いと思う。
【土居主査代理】  前回の委員会でも,住委員から御心配があり,今実施していることが切れて,新たに全部始めるのではないかというような御心配をされていましたが,基本的にはそういうことではなく,積み重ねでいくものが大多数だろうと思っていますし,また先ほども,新たに,要するに突然出てくるようなものにも対応しなければいけないというようなところの双方を踏まえて,いつまでにどういうようなものを狙っていくかということを最終的にはまとめる必要があろうかと思っています。すべてを実施しようとしても,いかにポスト「京」でもこれだけのものは実行できないと思いますし,まだこれら以外にもやらなきゃいけない,実行したいというものが山のようにあるわけですから,その辺は更にこれらを絞り込んだ方が良いのかどうなのかということまでを含めて考えていただければと思います。と言いますのは,これらは我が国として重点的に取り組むべきという戦略課題になるわけですので,そういう意味では,何をどのようにということを含めた上でどれとどれを重点的にやろうと,どういうことをやろうということをより詰めていく必要があろうかと思います。そのあたりまでも御意見いただければと思います。
【平尾委員】  現状の「京」は,総計算資源の半分を,トップダウン的な戦略プログラムで利用して,五つの分野で使っている。五つの分野があり,それぞれの分野で四つぐらいの課題を実施している。したがって,二十程度の課題が実施されていることになる。それ以外に,ボトムアップ的な一般課題で30%程度を利用している。この中には,産業利用という枠もあるが,そこでは研究者の方でテーマを出していただいて,それをピアレビューし,採択されたものが使うという形になっている。
【土居主査代理】  それでは,先に,資料3について事務局から説明していただいた方が良さそうですね。

(3)ポスト「京」の計算資源配分の考え方について

川口計算科学技術推進室長より,資料3に基づいてポスト「京」の計算資源配分(案)について説明。

【土居主査代理】  ポスト「京」では,説明があったとおりの利用の仕方を考えているということです。もう一つ,住委員から御心配があったように,こういうような枠を考えていても,ポスト「京」ができたときにすぐに実行できるか,すぐ成果が出るのかというようなことも重要なことだと思っています。
 「京」の場合には,あるところまではできるだけ早く,国民に対して「京」というものの存在感を分かっていただけるように,できるだけ早く成果が出せるものというようなことを考えて,加速枠といったようなことも割り当てて進めているというような経緯もあります。したがって,ものによってはじっくり構えてもらわなければいけないもの,あるいは,ものによってはこんなことができたというようなことを国民にアピールできるようなものといったことを考慮しながら進めてきてはいるつもりではありますが,なかなか難しいところもあります。
 政策対応枠10%程度が加わっているのは何かというと,「京」に対しも,内閣府の方から昨年の夏ごろに,防災関係で急きょ使えないかという打診があり,利用したということがありました。その際,戦略プログラムに対して少ししわ寄せが出たというようなこともありましたので,今後,各府省がどのような考えで来られるかということとも関係しますが,やはり政策対応枠というものはそれなりに考えておく必要があるだろうということで,この原案ができている次第です。
 これも踏まえた上で,これに対しても御意見いただいても結構だと思いますが,取り組むべき課題に関しても,さらなる御意見をいただければと思います。
【川口計算科学技術推進室長】  先ほど,どれぐらい計算資源を使うのかという話がありましたが,資料2-2の各個表に,ポスト「京」の全系を使ったとしてこの課題でどれぐらいの時間がかかるかという想定の数値が記載されています。ただ,御指摘のとおり,合計値は書きませんでしたが,恐らく全部足すと,ポスト「京」の計算資源を使っても超えてしまうといったところもあり,そこは確かに課題がいろいろあっていろいろやっていくという点も大事ですが,いろいろやっていけばやっていくほど,一つあたりの計算資源は減らさざるを得ないというところが少し悩ましいところではあるというふうには思っています。
【住委員】  私が痛切に感じているのは,具体的に実施していくところのプランニングが弱いということ。特に,今度の場合にコデザインを考えているが,アプリケーション側でどれぐらいポスト「京」に向いているかということや,従来はアプリケーション側では計算機ができたらそれを最大限使えば良いということだったが,従来よりももっと準備する段階から,恐らく計算機科学者だけのレベルではなく,もう少しユーザレベルという部分までも実施できる体制作りも考えていった方が良い。そういうポスト「京」の計算機を実現する体制の問題を考えた際に,当然今の「京」にしわ寄せが行くはず。今のリソースを使ってテストしながらやっていかない限り,次のソフトの見込みがつかないと思うので,それも含めてそういう移行のプランニングが必要だと思う。
【平尾委員】  住委員の御指摘はそのとおりで,これは「京」のときの反省だろうと思う。「京」ができる以前にグランドチャレンジの形で,ナノテクノロジーやライフサイエンスでアプリケーション開発を重点的に実施し,もちろんそれらのアプリケーションは「京」のときに生かされていますが,「京」が動き出してすぐにそれらのアプリケーションを用いて大きな仕事ができるような体制になっていたかというと必ずしもそうではなかった。確かに今私たちがいる計算科学研究機構にしても,「京」の完成と同時にできたということで,それ以前の準備期間がなかった。したがって,住委員の御指摘のとおり,ポスト「京」が動き出す前かすぐに,とにかく課題が実施できるように,そういう体制を十分準備しておくべき。私たちもそういうような形を次のポスト「京」のときにはとりたいと思っている。ポスト「京」は2019年度には一部動き出して,2020年から供用が開始されると思うが,2019年度にもし一部でも動き出したときには,直ちに幾つかの課題を実施できる,そのための準備をしておかないといけないと思っているし,前回と違う点は,計算科学研究機構が既にできていて,開発主体である計算科学研究機構に計算科学の研究者もいて計算機科学の人たちと一緒に,あるいは戦略分野の方々と一緒になってやっているので,大分状況は違うと思う。また,戦略5分野は,5年間でそれぞれの拠点が随分強化され,あるいは人も増え,人も育成され,基盤ができていると思う。これはこれからも大事にしないといけないと思うが,そういう基盤が既にもうできているわけなので,それと一緒になって開発主体として計算科学研究機構がやっていけば,ポスト「京」が動き出すと直ちにいろいろな課題を扱えるのではないかという気がしている。
【土居主査代理】  「京」とポスト「京」の間に空白期間があく。その空白期間をどうやってしのぐかといったいろいろな点が出てくる。戦略プログラムは平成27年度末で終わるということで空白ができてくるため,そういうようなことを考えた上で,いろいろな観点から詰めていかなければいけないと思います。コデザインに関して,詳しいアルゴリズム等々は出ないで,大体こういうようなものだとすると,計算科学専門家とするとこういうようなものだろうというようなことで,それを反映したような,今度はアーキテクチャにというようなことで,主としてここで選んだ課題を重点的に扱えるような,全部が全部とは必ずしもいきませんが,アーキテクチャをということと,アーキテクチャの方からの制約を受けたときにこちらがどうなるかというようなこと等々を進めていっていただくということがコデザインとして重要だということで考えていただいている。そういう点も踏まえて,我が国として重点的に扱うものを選んでいただきたいと思っています。それにふさわしいアーキテクチャを持ったポスト「京」が出来上がるということに向かっていきたいということです。
【土井委員】  いろいろ議論がありましたが,まだ理解できない点は,コデザインというときに,10課題を選んでその一つの課題の中にまた更にサブ課題がある,そういうような状態で,例えば一つの課題の中に四つのサブ課題があったとすると,全部で40のサブ課題があることになる。その40のサブ課題の方たちと,実際にハードウェアやシステムソフトウェアを設計する方たちとのコデザインというのは,どういうふうに具体的に進めるのかというイメージが分からない。そのあたりはどういうふうに想定されているのか。
【石川理研AICSプロジェクトリーダー】  課題が決まった後,その方々と相談しながらベンチマークアプリケーションというものを決めていきたいと思っています。いろいろな応用分野がありますが,計算するという立場から見ると手法が同じであったり,計算と通信の挙動からすると同じようなものであったり,あるいはファイルI/Oの仕方がどうかという点をきちんと相談していけば,恐らくベンチマークアプリケーションをある程度絞っていけるのではないかと思っています。もちろん40という数を我々の方で実施することはできないため,相談しながら決めていけたらと思っています。数を限定するということです。
【土井委員】  き憂かもしれないが,「京」のときには途中でアーキテクチャが変わった。最初はスカラーとベクトルという統合したマシン,アーキテクチャだった。そういう意味で言うと,いろいろ議論している間に,考えている想定したチャレンジのプログラムとアーキテクチャがどうも合わないという話になってくるということもありうる。そのあたりは余り心配しなくて良いという段階なのか。実際にどの程度アーキテクチャに影響があるのか,コデザインでどれぐらい変わるのかというのがよく分からない。
【石川理研AICSプロジェクトリーダー】  ポスト「京」では汎用型のものを作っていこうということを考えていますが,全部が全部まんべんなくユーザが満足できるというものはちょっと難しいと思っています。また,重要な点として,2020年以降早い時期に成果をどういうふうに創出していくかという観点で,アプリケーションの人たちと相談していく。その中で,計算機の方がアプリ側の要求する能力を十分出せないというものもあるかもしれないが,そのときは計算手法をもう一回見直してもらうことや,あるいは問題サイズをもう少し考えてもらった上で意味のある時間内に終了するように考えてもらうといったところで一緒に決めていくということを考えています。現実的に,アーキテクチャが変わるのかという話は,あり得ないというわけではないと思いますが,必ずしも全部がフリーなわけではないということは御理解いただけると思います。
【土居主査代理】  「京」のときは,汎用とベクターを7対3ぐらいのところでネットワークでつなぎ,その両方をうまく使うような課題が今後出てくるという想定の下にやったわけですが,いわゆるキラーアプリと称するようなものがないということと,つなぎが弱かったということで,いろいろベンチマークをやってもらったがなかなかうまくいきそうにないため,理研側に考え直してくださいということを提案し,理研側で検討されているときに,メーカー側が降り,汎用の方だけで進んだという経緯があります。あのときもいろいろと平尾先生を中心にアプリケーションを三十幾つ用意していただいて,ベンチマークをしてもらいながら進めていったという経緯があり,その意味では,コデザインの半分ぐらいのところは行った訳ですが,今回はもっと密に実施しようということですので,全面的にないとは言えないというようなことはあろうかと思います。
 ほかにはいかがでしょう。
【内山田委員】  重点的に取り組むテーマというものと,そのテーマからフィードバックをかけてどういうポスト「京」を作るのか。今回の重点的に取り組むテーマというふうに説明されているもの一つ一つがかなり特殊な問題を解こうとしていて,そのために要求されるパフォーマンスやアーキテクチャは,例えば演算速度をものすごく要求されたり,あるいはバッファリングの性能をものすごく要求されたり,外部I/Oがばく大に要るといった,極論するとそのテーマによってオーダーメードでコンピュータを作らないといけなくなってしまう。用心していただきたいのが,全部のテーマの要望を取り入れて,そのアンドでくくっていくととんでもないような,あり得ないようなコンピュータになる危険性も持っているので,そこは恐らく計算機工学や,これまでスーパーコンピュータの開発を行ってきた経験もあるわけなので,そういう中でこういうことを頭に置きながらアーキテクチャがとんでもないものにならないように作って,その中で今度はユーザ側がそういうものを使ってどうやってこのテーマがやれるかということをもう一回考えるようにしないといけない。
【土居主査代理】  そのとおりだと思います。
 細かい点ですが,資料2-2の10ページにITERの炉心設計に貢献とありますが,ITERはITER用のスパコンを持っているはずだと思いますが,どうなりましたか。
【川口計算科学技術推進室長】  ITER自体はたくさんの国が入っていますが,日欧プロジェクトの中で使っているというところです。それはそれで使っていますし,これも特にITERに貢献とは書いていますが,それだけでもなく,核融合炉の原理という意味ではもっと幅広いいろいろなテーマ設定があるかということでは考えています。青森にITERのスパコンがありますが,1.2ペタフロップスぐらいで「京」よりも小さく,そこではできない問題ということかと思います。
【土居主査代理】  なるほど。ありがとうございました。
 いかがでしょうか。もう一度確認させていただきますが,課題1から課題10までは,計算スケールは別にして,現在「京」でこれらの基となるようなものは実施されている。そして,課題11と課題12が新規のもの。先ほど,住委員からの御指摘もありましたが,課題11はややあやふやな感じがしないでもない。課題12はある意味において,システムダイナミクスのようなことで,新規に実施しようと考えているこというもの。
【川口計算科学技術推進室長】  机上配付資料の方には,「京」でどこまでできているかということも併せて記載させていただいています。その辺を見ていただくと,「京」での達成状況というものがある程度は見えてくると思います。
【平尾委員】  私は,課題11の考え方は非常に重要で,特にシミュレーションは分野横断的なものであり,いろいろなアルゴリズムの論理にしろ,いろいろな分野で使われている共通の軸があるため,うまく組み合わせれば良いと思うが,もう少し見直した方が良いと思う。もう少し的を絞った方が良いのではないか。
【土居主査代理】  的を絞った方が良いと思います。
【土井委員】  課題11の課題名で,基礎科学のフロンティアの次に付いている「知の衝突と共創による複合現象の理解」について,何が知の衝突で共創で複合現象の理解なのかというのが分からない。このサブタイトルはどれくらい考えてこの課題に反映されているのかが良く分からない。
【川口計算科学技術推進室長】  ポイントとしては,単に基礎科学のフロンティアというと何でもありということになるため,課題11では幾つかの分野,今までの学問領域だけではできないような横断的なものを取り上げてみてはどうかということです。資料にも記載していますが,サブ課題はあくまでも一例であって,もしかしたら横断的で新しいものを作っていくというものはほかにもあるかもしれません。一方,先ほど議論もあったとおり,ここで提示したものについても,もう少し内容を練った方が良いと思います。課題11については,何を科学的課題として捉えるかというものの一つの提案として,こういういろいろな分野にまたがっているということで新しい科学を作っていくということを,一つの科学的な課題,目標として取り上げてはどうかということで,挙げさせていただいています。
【土井委員】  課題10と課題11については,「京」からの有効な,「京」での示唆を生かしていくというものではないため,必要性の観点や有効性の観点というところがどうなのかが問われると思う。そういう意味でいうと,成果をどういうふうに捉えていくかということは,新しいことをやろうとすると難しいと思う。新しいことはやるべきだと思うが,その新しいことの成果や必要性をいかに分かってもらえるようにするかということも,テーマを検討する上では必要だと思う。
【土居主査代理】  サブ課題についてはあくまでも例示で,今後の公募により決定するものであるが,例示として,きっちり読み取ってもらえるような例示かどうかが重要。
【住委員】  例えばある特定のトピックを並べただけでやろうとすると,非常に狭いと反発が出てくると思う。ある意味で課題としての出口がきちんと見えていなければ駄目なものはこの課題で,そのほかにもっと新しい可能性のものを考えているというような書き方をする必要がある。したがって,こういうふうに並べてしまうといろいろな話になるため,そういうことを考えた作りにした方が良い。また,ボトムアップ的なものもとるが,ポスト「京」のような大型マシンを使うものでなければ駄目ということは強調する必要がある。計算機があるからやるとなっては困るため,そのあたりはうまく意味が分かるような書き方をした方が良いと思う。例示は本当の例なのか,意図があるのかということをみんな考えるし,それこそテーマの重さが違ったりすると臆測を生む可能性があるため,その点はよく注意する必要がある。
【川口計算科学技術推進室長】  課題11,課題12については,更に御意見を踏まえてもう少しきちんと整理していきたいと思います。
【平尾委員】  ただ単なる「京」からの延長で,「京」よりもより速くやより大きく,より精度を上げた課題をやるというだけではつまらない。「京」よりもはるかにパワフルなマシンができるわけなので,それによって新たにできることもある。「京」である程度のことしかできなかった,しかし,ポスト「京」だとこういうこともできるというところも是非取り上げていきたいという気がする。
【土居主査代理】  そのとおりだと思います。
【平尾委員】  課題10の惑星系の課題は,例えば課題9と一緒にならないのか。宇宙の進化,基本法則の中に入るような気がする。もし生命の起源をどうしてもやりたいのであれば,課題1や課題2の生命科学に入れるということではどうか。私は課題10が一つの独立した課題としてあり得るということは,ほかの課題と比べるとどうかという気がする。
【住委員】  私も平尾委員の意見に賛成で,研究テーマとしては面白いと思うが,少しレベルが違うような気がする。
【川口計算科学技術推進室長】  その点についても検討します。
【土居主査代理】  補足ですが,平尾委員から説明いただいた資料2-1のもともとの意図は何かといいますと,小宮山主査から,基本的に国民がポスト「京」,「京」もそうですが,ポスト「京」が出てきたらこういうことができるだろうなというようなことで,こういうことができたらいいなというようなことがそれぞれ出てくるに違いない。そのときに,そういうことはポスト「京」でなくてもできるといったことや,あるいはそれは当然ポスト「京」でなければできないのでそういうことも考えているんだということがクリアになるようなことも考えておいてほしいということで説明していただいた。ポスト「京」で,当然そんなものは当たり前かのごとく考えていないと突き放すようなことだけは勘弁してほしいということで,平尾委員に説明していただいた。
【大隅委員】  少し細かいレベルの話だが,やはり課題10の中身が気になる。サブ課題のA,Bというあたりは,惑星自身の進化と多様性ということか。サブ課題Bが宇宙における生命誕生の普遍性と特殊性。これは例えば物質創成,課題9のサブ課題Bとはまた違うレベルということなのか。つまり,恐らくどういうふうに課題を切るかということだと思うため,もう少し組合せができて,課題全体の数を例えば12から10ぐらいに減らすなど,そういったことができるのではないかと思う。
【川口計算科学技術推進室長】  先ほど平尾委員からも御意見ありましたが,洗い直したいと思います。
【土居主査代理】  ほかにはいかがでしょう。それでは,次回のときにまた御意見を頂いて,次回で最終的なところに向かっていくというようなことにさせていただきたいと思います。その中には,資料3の計算資源配分もこういうことで良いかという点も併せて考えいただいておいた方が良いと思いますので,よろしくお願いします。

(4)その他

田畑情報科学技術推進官より,資料4に基づいて今後の進め方について説明。

土居主査代理より閉会発言

お問合せ先

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電話番号:03-6734-4275
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(研究振興局参事官(情報担当)付計算科学技術推進室)