ジャーナル問題に関する検討会(第1回) 議事録

1.日時

平成26年3月26日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省15F特別会議室

3.出席者

委員

浅島主査、安達委員、加藤委員、佐野委員、白石委員、竹内委員、谷藤委員、田村委員、永井委員、林委員、引原委員
(発表者)関川大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE)運営委員会委員長、熊渕大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE)事務局長

文部科学省

(事務局)小松研究振興局長、下間参事官(情報担当)、長澤学術基盤整備室長、その他関係官

4.議事録

ジャーナル問題に関する検討会(第1回)

平成26年3月26日

 
【長澤学術基盤整備室長】  おはようございます。時間になりましたので、ただいまよりジャーナル問題に関する検討会を開催させていただきたいと思います。
 私は、文部科学省の事務局を担当している長澤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 本検討会は、様々な問題を抱えておりますジャーナルに関わる諸問題を検討するために、研究振興局長の私的諮問委員会という形で設置させていただいています。
 経緯等につきましては、また後ほど御説明させていただきますけれども、まず委員の先生方の御紹介をさせていただきたいと思います。
 委員の先生方の資料はお手元の資料1の2枚目にございますけれども、まず右手から、情報学研究所の安達先生。

【安達委員】  安達でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【長澤学術基盤整備室長】  科学技術振興機構の加藤委員。

【加藤委員】  加藤でございます。よろしくお願いいたします。

【長澤学術基盤整備室長】  千葉大学の竹内先生。

【竹内委員】  竹内でございます。よろしくお願いいたします。

【長澤学術基盤整備室長】  日本学術振興会の浅島理事。

【浅島委員】  浅島です。よろしくお願いします。

【長澤学術基盤整備室長】  名古屋大学の佐野先生。

【佐野委員】  佐野でございます。よろしくお願いいたします。

【長澤学術基盤整備室長】  横浜市立大学の白石先生。

【白石委員】  白石でございます。よろしくお願いいたします。

【長澤学術基盤整備室長】  物質・材料研究機構の谷藤室長。

【谷藤委員】  谷藤でございます。よろしくお願いいたします。

【長澤学術基盤整備室長】  慶應義塾大学の田村先生。

【田村委員】  田村でございます。よろしくお願いいたします。

【長澤学術基盤整備室長】  日本動物学会の永井事務局長。

【永井委員】  永井でございます。よろしくお願いいたします。

【長澤学術基盤整備室長】  科学技術・学術政策研究所の林委員。

【林委員】  林です。よろしくお願いいたします。

【長澤学術基盤整備室長】  京都大学の引原先生。

【引原委員】  引原と申します。よろしくお願いします。

【長澤学術基盤整備室長】  事務局でございますけれども、まず研究振興局長の小松でございます。

【小松研究振興局長】  小松でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【長澤学術基盤整備室長】  情報担当参事官の下間は若干遅れておりますが、後ほど出席いたします。
 それから、私、長澤でございます。
 本日は、説明者といたしまして大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE)の関川委員長、熊渕事務局長に御出席いただいているところでございます。

【関川JUSTICE運営委員会委員長】  関川でございます。よろしくお願いします。

【熊渕JUSTICE事務局長】  熊渕でございます。よろしくお願いいたします。

【長澤学術基盤整備室長】  それでは、議事に先立ちまして、小松研究振興局長より一言、御挨拶させていただきたいと思います。

【小松研究振興局長】  このたびは、先生方に大変お忙しいところにこうした検討委員会の委員に御就任をお願いいたしましたところ、お引き受けいただきまして、誠にありがとうございます。それから、開催が年度末の大変お忙しい日になったんですけれども、御出席を賜りまして、厚く御礼申し上げます。
 この会は、そうそうたるメンバーの皆様方に私どもの局の非常に理論的な背景と実践的な方向とを含めていろいろ検討していただくという位置付けでお願いするわけでございます。問題意識といたしましては、日本では学術研究そのものとしては大変優れたものがたくさん行われておりますけれども、その成果の発信、流通の強化促進は世界的に見ても、社会との関係においても、あるいは学術研究そのものの進展の面でも非常に重要な課題になっている。これが問題意識でございます。その場合に、研究成果が論文としてジャーナルに掲載されるという形が主流で世の中に出ていくわけですけれども、よく知られておりますように、ジャーナル購読料が高騰化する。一種、メカニズムとしてそうなっていることもあり、そうすると各大学や研究機関では予算がなかなか追い付かない。
 それから、この問題が日本だけではなくて各国共通になっておりますので、世界的に研究成果の流通をどうやって確保していくかという動きの中で、オープンアクセスを推進しようという動きが強まっているわけですけれども、最初に申し上げました問題意識の部分と、世界の流れを見極めながら、それと共同してどう取り組んでいくかということがあるだろうと思っております。
 日本では、研究力と比較した場合に、この面で相対的に弱点があるというか、損をしているという言い方でもいいのかもしれませんが、そういう指摘もあります。私ども行政を担当する者として、一方で国家財政が物すごく厳しくて、ぎゅうぎゅう縮んでいくという厳しい中で、他方、こういった問題にはちゃんと取り組んでいかなきゃいけないので、どのように取り組んでいくか、まずは現状もちゃんと把握しながらその方向性について御議論、御審議いただいて、それを私どもの行政に一生懸命反映させていただきたいという考え方でございます。
 これに基づいて、この委員会の構成なり進め方等をこの後、少し御説明させていただきまして、今日は有り難いことに関川先生、熊渕さんにおいでいただいておりますので、まずそこのお話を中心に現状を把握していただきたいと思います。
 大変重要な会議でありますにもかかわらず申し訳ありませんが、私どもはちょっとばたばたしていて、出たり入ったりいたします。大変失礼をいたしますが、お許しください。
 本日及び今後、どうぞよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。

【長澤学術基盤整備室長】  続きまして、本検討会の趣旨、運営方法につきまして、事務局から御説明させていただきたいと思っております。
 本検討会の設置の趣旨は今、局長から申し上げましたとおりでございますけれども、資料1のとおり掲げておるところでございます。研究成果の流通において重要なジャーナルの在り方ということで、毎年、継続的に値上げが続いてございますけれども、特に大学の財政負担を考えますと、これを維持することは非常に難しくなってきていることは皆様方、御承知のとおりだと思っております。これをどう考えるかは国としても考えないといけないわけですけれども、先生方にも御意見を頂いて発信していきたい。
 オープンアクセスの確保は、世界でG8の科学技術大臣・アカデミー会長会合においても議題として取り上げられております。そういった流れの中で、実際に緊急性が高い内容、ジャーナル問題を考えていきたい。
 検討事項は2に掲げてございますけれども、ジャーナル流通の現状、課題及び対応策は本日、御議論いただきまして、また次回以降はオープンアクセスへの対応、その他のジャーナルに関しての課題としては、3月13日の日本学術会議のフォーラムでも必要性が議論されておりました日本発のリーディングジャーナルの育成といったものの課題に対しても御議論いただいて、方向性をまとめて発信していきたいと考えておるところでございます。
 設置期間は今年の7月いっぱいで、夏前までに集中的に審議させていただきたいと思っておるところでございます。
 特に購読料の問題につきましては、配付資料の中で、参考資料として一番最後に、昨日、25年度の学術情報基盤実態調査の結果を報道発表した資料を付けさせていただいております。後で御参考として御覧いただければ大変有り難いと思っているんですが、この中で5ページの真ん中辺にグラフがございまして、電子ジャーナルの総経費と平均経費というところの下の表を御覧いただきますと、国公私立大学の総経費の合計が23年度は218億円でしたが、24年度は227億円で、約10億円、4.5%も必要経費が増えている現状でございます。こういった形でどんどんジャーナルの購読に係る経費の負担が各大学で大きくなっていることが明らかなデータで見てとれることもございますので、改めてしっかりと検討していきたいと考えているところでございます。
 2ページは先ほどの委員の名簿でございます。
 資料2が議事運営についてでございます。あらかじめの決め事としましては、第2条におきまして、この検討会の会議は主査が招集する、3番目で、主査代理を置いて、主査があらかじめ指名する者がこれに当たるという形にさせていただいております。
 書面による調査審議が第3条でございまして、そういう審議ができることにさせていただいております。
 第4条の会議の扱いは、原則公開でございますが、場合によっては非公開とすることもできるという内容にさせていただいてございます。内容につきましては当然、契約内容などデリケートな問題もあるんですけれども、やはり内容を広く知っていただくことが必要だと考えているところでございます。
 議事録の公表につきましても、議事録を作成して公表させていただきたいと思っております。
 第6条は定足数でございますが、過半数が出席しなければ会議としては成立しないという形にしておるところでございます。
 これが設置の趣旨と議事運営でございますけれども、この辺につきまして何か御質問等ございますでしょうか。
 特によろしければ、次に本委員会の主査につきましては、あらかじめ日本学術振興会の浅島委員にお願いできればと思っております。主査代理につきましては主査が指名することになっておりますので、御指名につきましてお願いできればと思っております。

【浅島主査】  主査をさせていただく浅島です。よろしくお願いいたします。
 主査代理につきましては千葉大学の竹内先生にお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 では、そういうことで進めさせていただきます。

【長澤学術基盤整備室長】  ありがとうございます。
 議事運営につきましても御了承いただいたということで、ここからは公開にさせていただきたいと思いますので、傍聴者の方に入室していただくことにさせていただきたいと思います。

(傍聴者入室)

【長澤学術基盤整備室長】  では、浅島先生、よろしくお願いします。

【浅島主査】  まず、事務局より配付資料の確認及び傍聴登録等についての御報告をお願いいたします。

【長澤学術基盤整備室長】  配付資料につきましては、お手元の議事次第のとおりでございます。資料1から4までと、参考資料として昨日、報道発表いたしました平成25年度の学術情報基盤実態調査の結果報告がございます。また、机上資料として、オレンジ色の冊子は、学術情報基盤作業部会におきまして平成24年7月に出しました審議のまとめで、オープンアクセスの推進等につきまして議論しておりますので、お配りしておるところでございます。何か漏れ等がございましたら、事務局までお願いしたいと思います。
 本日の傍聴者につきましては、21名の方から傍聴希望を頂いております。
 以上でございます。

【浅島主査】  それでは、これからヒアリングに移りたいと思っております。本検討会では、研究成果である論文発表の場として重要なジャーナルに関わる諸問題について検討することになっておりますが、まず現在の大学のジャーナル環境についての理解を深めるために、大学図書館コンソーシアム連合の熊渕事務局長より、現状について御説明をお願いしたいと思っています。事務局長、お願いします。

【熊渕JUSTICE事務局長】  それでは、説明させていただきます。配付資料と同じもののスライドを用意していただきましたので、スライドで説明させていただきます。まず大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE)についてですが、JUSTICEはJapan Alliance of University Library Consortia for E-Resourcesの略で、電子ジャーナル等の電子リソースに係る契約、管理、提供、保存、人材育成といった活動を大学図書館が一体となって行っていくための組織です。
 主な事業は資料に書いてあるとおりですが、会員は大学、大学共同利用機関、省庁大学校等で、平成25年度末で502館です。国立機関が大学数より多いのですが、共同利用機関も入っているためです。もともと2000年以降、国立大学、公私立大学それぞれがコンソーシアムを組織して出版社とのいろいろな交渉に当たってきたわけですが、これを一元化して、大学図書館が一体となって活動する必要があるということで、その二つのコンソーシアムを一つにまとめて、国立情報学研究所と連携、協力しながら活動する体制が整備されて平成23年4月に発足した組織がJUSTICEです。
 運営は運営委員会が行っておりまして、今回、運営委員会の関川委員長と、事務局の責任者として私が陪席させていただいております。
 実際に本日のテーマでございます電子リソースの購入・利用条件に関して、実際の交渉や大学等の状況についてお話しさせていただきます。
 これは、先ほど25年度版公開の紹介がございました学術情報基盤実態調査の結果報告を経年変化で見たグラフです。単位は異なるのですが、冊子体の購読タイトル数の線が下がっていて、電子ジャーナルの利用可能なタイトル数は、2000年頃から急激に上がってきています。冊子を中止しながら電子に移行してきている状況です。
 実態調査では平均利用可能タイトル数が紹介されていますが、JUSTICEで行っております大学に対する調査をもとに、1,000タイトルごとに分布を示してみたものです。2011年、12年、13年という3年分で、経年変化としてはさほど大きな違いは見当たらないと思いますが、象徴的なのは、利用可能タイトル数が非常に少ないところの分布と、非常に多い1万タイトルを超えているところの分布が大きく、それ以外は平均的に分布しているということです。
 実際に電子ジャーナルはどういう契約をして利用できるかということですが、昔からの冊子の流れでいえば個別のタイトル契約というものがあり、これはもちろん電子についても同様で、1冊ずつ選んで購読していくことが可能です。
 価格高騰という点で問題視されているのがパッケージ契約だろうと思います。出版社の全ての雑誌あるいは分野ごとの雑誌をまとめたパッケージという形で契約するものです。タイトルごとの単価という点では1冊ずつ買うよりは非常に安いのですが、全体としてはそれなりの金額を支払う必要があります。パッケージを契約している間だけ使えるものもありますし、契約を中止しても契約期間中のものは使える、あるいは昔から購読していたものだけは契約を中止しても使えるなど、いろいろなケースがあります。
 それから、論文単位でのペイ・パー・ビューという利用もあります。出版社によっては、機関単位であらかじめ何ダウンロード分という形でお金を払っておけば、一件一件お金を払うより安いという提案もあります。
 毎年、契約するものは割と新しいものですが、出版社は電子ジャーナルサービスが始まる前の雑誌を電子化してバックファイルという形で別に売っています。それを別に購入することになります。買い切りの場合もありますし、毎年利用料を払って利用するケースもあります。
 直接ジャーナルの出版社からではなくて、アグリゲータという言い方をしていますが、いろいろな出版社のジャーナルを分野ごとに横断的に集めてきたパッケージの利用契約を結ぶものもあります。原則として、エンバーゴと言われていますが、ジャーナルの発行後すぐに使えるわけではなくて、発行されてから一定期間は使えません。例えば1年たった後のものが使えるというものです。通常は出版社からの直接提供ではありませんので、契約している間は使えますが、契約をやめた後は一切使えなくなるケースが多いです。
 こういったいろいろな利用契約があるわけですが、出版社が実際にコンソーシアムに提示してくるのは、大学にとって何らかのメリットがなければ駄目だろうと出版社も考えますし、出版社にとってもある程度メリットがあるものということで、パッケージ契約ということになります。今までこれだけの金額で購読をしていて、大体それと同じ金額で全部見られるというのは、大学にとってはアクセス環境の整備になりますし、出版社にとっても一定額以上の収入は確保できていくわけです。もうこれ以上は購読機関が増えないだろうという出版社はそれを維持する方向に向かうと思いますし、これからまだまだ市場を拡大したい、いろいろな大学に利用してもらいたいという場合には、今より契約数が増えたら安くなるという形の提案になります。全体としては、出版社は今以上の収入を確保してくるということです。そういうモデルは特に日本に限らず、世界各国共通に提案されていますし、一大学で契約しようが全体でまとまって契約しようが、考え方としては同じです。
 では、そういうパッケージはどういうふうに値段が決まるのかということです。この辺がなかなか不透明と言われているところでございます。今でもありますけれども、当初は過去の購読実績、例えばこれまで何タイトル購読していて、幾ら払っていた、それと同額あるいはプラスアルファをすれば全て読めるという価格体系でした。今まで購読していたものを引き続き購読することが前提で、契約をやめた場合には購読という扱いで契約していたものだけが使えて、それ以外は使えなくなるという条件です。
 そこから少し発展して、価格としては今まで払っていた金額程度で全部使えるということは変わらないのですが、契約が終わった後も契約していた期間のものは全部使えるという形に変わってきています。
 過去の購読実績と大学の規模や現在の利用状況は必ずしも一致しないので、そうではない価格モデルも出てきており、例えば大学の規模に応じて価格を設定するものがあります。大学の研究度合い、具体的には論文投稿数を基準にするケースもありますが、今のところ、これだけを条件にして購読額を決めてくるケースはないと思います。
 利用実績に基づく価格体系もありますが、使った分だけ払うのは非常に合理的だという考え方もある一方、年々コンテンツが増えて利用が増えていけば価格も上がっていくという危険性もはらんでいます。
 こういったいろいろな要素を組み合わせて大学を階層に分類して価格を決める場合や、個別に何タイトル以上買えば割引があるという場合や、先ほど申し上げましたように、更に購読機関が幾つ以上になれば割引があるという形の提案も多いです。
 パッケージ契約の仕組みは、過去からずっと説明されてきていますが、改めてA大学、B大学という二つの典型的な例という形で示してみました。全ての雑誌を購読する場合、タイトル単位で積み上げていった場合には積み上げていった価格が全雑誌を購読した場合の価格で、大学の規模にかかわらず同じになるでしょう。パッケージの価格は通常、今までの購読実績等で決まり、大学の規模等ともそれほど大きく変わりはないと思います。大規模大学はたくさん払い、小規模大学は比較的少額で、もともと利用できなかった部分も利用できるというのがパッケージ契約です。この例では2,000タイトルあるという形ですが、例えばA大学が今2億円払っているのを、1,000タイトルでいいからといって1億円になるかというと、もともとの考え方がこれまで500タイトルに対して払っていた分で良いというものですから、1,000タイトルにしたところで1億円にはなりません。B大学についても同様で、もしやめてしまうと、もともと取っていた50タイトルに払っている金額と今とがさほど変わらないので、それ以下のアクセス環境になるという状況をはらんでいるモデルです。
 大学側としては、できれば可能な限り多くのタイトルを利用したいということがあります。散々言われていることですが、購読経費として負担する額をこれ以上増やすのは無理で、むしろ減っていく傾向にあります。今のようなパッケージ契約で全タイトルを維持していくしかない中で、それに対して値上がりがあることに対する不満は強いです。パッケージの中には当然、利用しないものもありますが、いつの間にかパッケージのタイトルが増えて価格が上がることや、逆に、今までパッケージで利用できたのに利用できなくなってしまうものが出てきたり、その利用できなくなったものを別に購読しようとすると別の出版社に対する新たな負担が発生することも問題です。
 ただし、出版社側の言い分ももちろんあります。可能な限りたくさん利用してもらいたいというのは、大学側の利用したいという部分と一致するところです。しかし、学協会も多分同様だと思いますが、出版社はボランティアで発行しているわけではありませんから、一定の収益は確保する必要があるということです。また、先ほどの図で見ていただきましたように、Big Dealというパッケージ契約は、もともと必要で購読していたタイトルの金額プラスアルファで今まで取っていなかったものを全て見られるというものですから、その中に要らないものがあったとして、それは不当に販売しているということではないという考え方です。
 大学にとっての不満である、途中でタイトルがなくなるということは、出版社が勝手にやっているというよりは、むしろ学協会との出版契約によって、学協会がその出版社から発行してきたものを、違う出版社と契約し直すため、その出版社からは利用できなくなるということで、実は学協会がそういう選択をしているということです。これは交渉の中でも散々出てくる話でして、この学会のタイトルが増えたので価格も上がりますという話は常に出てきますし、その中には残念ながら日本の学協会の名も出てくるという状況です。タイトルがどんどん増えるのは、それだけその分野のニーズがあって論文が集まってくるからだという言い方になってきます。
 世界的にこういう状況が続いていて、結局は価格上昇に対する抑制というところで頑張って交渉しているのが実態です。
 JUSTICEにおける出版社との交渉についてですが、契約自体はそれぞれの大学が行っております。JUSTICEは何をやっているかといいますと、大学に対する標準的な提案を交渉して、それを会員館にお知らせしているということです。交渉の中身は、価格だけではなく、いろいろな条件も含んだものになります。我々事務局と運営委員会の委員、交渉のために設けている作業部会の委員によって交渉を行っております。交渉の相手としては、現在、国内、国外を合わせて60社以上で、その中で合意に達しないケースももちろんありますが、むしろ出版社側がメリットを感じないと提案を取り下げてくるケースが多く、50社を超える程度の出版社と合意に達しています。直接会って交渉しているのが100回前後です。電話や電子メールでやりとりすることがこれよりはるかに多いのですが、そういった回数は含んでおりません。
 日本の大学全体とも言って良いかと思いますが、JUSTICE会員館の電子リソースに対する支出の割合は、出版社に対する電子ジャーナルが4分の3程度、アグリゲータを入れると8割程度になります。残りはバックファイルを少し買っているのと、データベースの契約で、電子ブックはまだまだ少額です。
 支出の割合としては出版社に対する電子ジャーナルの割合が非常に多いのですが、実際の利用タイトルを見たときに、出版社・発行元からの直接の契約による利用とアグリゲータを通したジャーナルの利用では、国公私で分けてみたところ、国立大学は半数以上が出版社との契約によって利用できているのですが、公立、私立を見ますと、実は半数以上がアグリゲータとの契約によってたくさんのタイトルを利用できているというのが実態です。この辺りは、経費と需要との関係で選択されてきているものと思われます。
 出版社、版元別に支出の割合を見てみますと、出版社の上位15社で全体の7割程度を占めています。先ほど電子ジャーナルで4分の3程度という話をしました。出版社15社の中にはジャーナルだけではなく電子ブックやデータベースも提供しているところがありますから、そういった支出も含みますが、15社で7割近く、残りの多くはデータベースその他ですので、かなりの部分が大きな出版社への支出にかかっているということです。
交渉を行ってきた成果としては、直接交渉で今より安くするというところは世界的に実現できていないのですが、価格上昇の抑制はできてきています。利用可能なタイトル数は増えてきていて、パッケージ契約の効果も大きいのだとは思いますが、大学間の情報格差をある程度は是正できたということが挙げられます。交渉の限界としては、価格上昇の要因そのものは取りのけていないということがあります。あくまでも購読モデルに対して価格上昇を抑制していくという対症療法的な活動です。そうは言っても、電子ジャーナル等の総額は、先ほど実態調査では二百数十億という話がありましたが、電子ジャーナル購読のために冊子の購読を維持しているものやデータベースなども含めて300億弱になり、その1%でも3億円になりますから、やはりそれなりの効果はあります。世界的にこういった価格交渉の限界を踏まえた上で、何とか購読を維持しながらオープンアクセス等を推進していくというところに向かっているのが図書館コンソーシアムとしての状況です。
 電子ジャーナルパッケージの価格以前の問題として、ジャーナルそのものの価格上昇が一定の割合で昔からずっと続いているということがあります。それに比べて、実は大学図書館の資料購入費は減少してきているというのが傾向としてありますし、大学の総経費に占める資料費の割合も減少傾向にあります。値段は上がっているのに予算は減っているということです。その中でどういう形でジャーナルを契約していくのかを大学が選択していくというのが、今の状況です。
 昨今、電子ジャーナルの価格問題が大きく取り沙汰されるようになったのは、この為替レートの問題であろうと思います。ユーロなど過去にも上がっていた通貨もあるのですが、リーマンショックがあった辺りからずっと円高に転じていて、価格の上昇は続いていても、円高が続いてきたことで支出としては抑えられてきたというのが、ここ数年の状況でした。急激な円安に転じていますので、円安が進んだ分だけ支出が大幅に増加しているのが、今非常に問題になっているところです。
 なぜ雑誌価格は高騰し続けるのかということでよく言われているのが、出版社側からの理由としては論文数の増加でして、毎年数%上がっているということです。それだけの論文の流通が購読型のジャーナルにかかっている分、購読のコストもかかるということです。それから、市場の特殊性ということが挙げられ、どこどこ出版社の何々という雑誌はそれしかないわけですから、競争相手がいません。そのジャーナルが欲しいとなれば、その出版社と契約するしかないということです。モラルハザードということもあるのですが、全体としては、やはり商業出版社への依存が続いているという状態があると思います。これは、先ほど学協会の例も話しましたけれども、論文流通の部分を学協会が商業出版社に委託しているのであれば、そうしたコストも入ってきますので、高くなっていくということがあります。
 そうした状況で、これから我々がどういう方向に向かっていくかというと、大学はこれ以上、ジャーナル購読に経費はかけられないでしょうが、かといって、パッケージをやめたときに極端にアクセス環境が劣化するということは避けたいですから、可能な限り現在に近い利用ができる形で、それは今よりは減るということではありますが、それでも購読金額を少し下げられるといった、大学側に選択の余地が広がるようなモデルを、出版社と交渉しているところです。
 こうした傾向は世界的にどこも同じでして、パッケージの維持ができなければやめて、自分のところの予算で可能な限り購読できるものを選択する形に切り替えているということです。大きな大学はもともと購読タイトルが多いため、それなりに何とかなるというケースもあるのですが、中小規模になると、二千や一千というパッケージの中で、もともと購読できていたのは何十という程度です。そうした大学は、やめてしまったら大きく環境が変わるので、そういったところをどうやって緩和していくかということがこれからの課題と思っております。
 購読型の雑誌への投稿が増えている一方で、オープンアクセス化の話が出てきていますが、オープンアクセスについては、商業出版社もビジネスモデルとしてとっくに手掛けておりまして、APCを払ってオープンアクセスジャーナルに投稿して掲載してもらうというモデルも既に多数存在します。そういったオープンアクセス誌に論文が流れるので購読モデルは減るかというと、全然減っていなくて、むしろそちらの投稿数も増えています。両方に経費が掛かっていて、どちらも増えてきているということです。結局、購読料はこれ以上増えないので、研究費からの支出が更に増えているという状況だろうと思います。
 同じジャーナルの中で、APCを払ってオープンアクセスにするか、購読料を払って購読してもらうかを著者が選択できるモデルもあるのですが、APCを払っているのに購読料は下がらないという、何となく二重取りされているのではないかという疑念は常に付きまとってきます。 APCを機関でまとめて負担すると割引があるといったモデルも出てきてはおりますが、実際問題として、恐らく日本の大学では、まだまだ各研究者がAPCをどこにどう支払っているかという状況もつかめていないだろうと思います。今後、知らない間にどんどんAPCの支出も増えていって、気が付くと出版社に対する支出がどんどん膨らんでいるという状況も考えられます。
 資料では、その他の活動も幾つか紹介しておりますが、これは後ほどお読みいただくとして、一番最後の国際図書館コンソーシアム連合(ICOLC)については少し紹介しておきます。
 これは、日本だけではなくて世界各国の図書館コンソーシアムが集まったコンソーシアムのコンソーシアムのようなものです。年2回、春と秋に国際会議が開かれていますので、日本からも毎回出席して、各国のコンソーシアムと情報交換をしたり、そこでの人間関係を基にその後もいろいろな情報交換を行ってきております。世界各国が同じ問題を抱えているのが実態でして、頑張っても頑張っても値上がりは続いているので、どうやってそれを抑えるか、いよいよもう契約できなくなれば、どうやって別の形に移行していくかという問題は、図書館側としては同じであろうと思います。
 以上が全体の概観です。個別の大学の状況については、委員の皆さんがいらっしゃいますので、そちらからお話が伺えればと思います。
 以上です。

【浅島主査】  どうもありがとうございました。
 そうしましたら、意見交換は後でまた行いますけれども、今の熊渕事務局長の説明に対して、もしも御質問、御意見等があれば述べていただきたいと思います。もしあれば、よろしくお願いします。
 どうぞ、永井委員。

【永井委員】  結果的にはこの委員会の一つの議題になるかなと思うんですが、まず一つは、アメリカで論文が出ているんですけれども、今の購読料はもともとは冊子の金額にベースがあるわけですよね。電子ジャーナルではない。そのこと自体が問題であると欧米で今、言われていまして、最初は電子ジャーナル価格の計算ではなくて、最初に持っていた購読料を払えばたくさん見せるよというSD21で、そういう話をどうするのか、日本も考えなければいけない。つまり、彼らの言いなりにならずに、もちろんたくさん見られるようになったのでしようがないんですけれども、本当の購読料、今の電子ジャーナルの購読料が本当に適正な価格なのかは、もう少し図書館側から計算された方がいいと思います。学協会側は、電子ジャーナル出版によって価格が下がったとは言いませんけれども、冊子体を印刷しないというのは全然違う話です。しかも、XMLを海外で作ると非常に安い。そんなにエルゼビアのジャーナルが高いとは思えないんですね。そこが一つ。
 もう一つは、今、熊渕さんがおっしゃったAPCの負担をどうするかという問題がすごく大きくて、それは学協会の出版にも関わってくることなので、やっぱり少しここで検討しなきゃいけないのかなと思います。
 三つ目は、先ほど小松局長がおっしゃったように、たくさんのいい研究が出ていて、すばらしいプロダクションが出ているにもかかわらず、日本のジャーナルがなぜ駄目なのかという根本的なこと。すいません。学協会なので、その立場で言わせていただきますが、
UniBio Pressのジャーナルは当初、33大学、買われていたんですが、今年は14まで落ちました。毎年毎年、キャンセルをされる。それはしようがないと思いますけれども、100万円するわけではないんです。たった十万、十二万ぐらいの金額で、6タイトル入っていたら、1年間の購読料は1誌2万円じゃないですか。
 ここはまたさっきの話と真逆の話になるんですけれども、どうして日本のジャーナルを冊子を買っているような感覚で買ってくれないんだろうと。それはもちろん私たちのパフォーマンスが悪いということかもしれません。しかし、もう一つ考えなければいけないのは、ここが一番の命題であるかもしれないですが、日本の学術をどこが守るのかということだと思います。つまらないジャーナルを買えとは言いません。研究者が必要じゃないジャーナルを買ってくれとまでは言いませんけれども、本当に自分たちのジャーナルを自分たちの力で出そうと努力していること。もちろんJUSTICEはすごく私たちを助けてくれているとは思います。頂いているお金は170万円ぐらいですね。しかし、170万円です。幾つかの心ある図書館員の方が買い支えてくださっていることは分かるんですが、私たちのことだけじゃなくて一つの例として出したんですが、日本の買うに値するジャーナルに対して
JUSTICEがどうされるのかは、是非とも意見を聞きたいなと思います。

【浅島主査】  もしよかったら、今の件について。

【熊渕JUSTICE事務局長】  まず最初の「もともとが冊子の体系から」という話ですが、従来型のモデルは冊子にこれだけ払っていたものを引き続き支払うというモデルですが、そこからの転換がいろいろ図られてきている中で、今、我々ももちろん、電子の新しい価格という話は出版社としております。ただ、例えば電子だけ、あるいは電子ジャーナルのパッケージの価格といったときにどういう価格体系になるのか、いろいろな積算の根拠はあるわけですが、いろいろやってみた結果、結局のところ、大学によっては安くなるけれども、大学によっては高くなるということが出てきます。世界的に既にパイロットやシミュレーションということが行われているのですが、図書館、つまり購読料を出す側からすると、高くなるところは絶対に反対するわけです。安くなるところはもちろん安くしてほしいのですが、結局、両者が存在することでモデルの転換がなかなか進んでこなくて、行き着くところは、今まで支払っていた金額をベースにしてどう考えるか、というところに戻ってしまうというのが現状としてあります。多分日本でやった場合も同じだとは思うのですが、大学によってはもしかしたら安くなるかもしれませんが、大学によっては何倍にもなるというケースが出てきます。そこを本当に覚悟してやるのであればできますが、現状からすると難しいだろうと思っています。

【永井委員】  分かりました。ありがとうございます。

【浅島主査】  どうもありがとうございました。
 まだあるかと思いますけれども、続きまして、本日、御出席の各大学の関係委員の方々から、各大学の状況について簡単に御説明をお願いしたいと思っております。
 まず、京都大学の引原委員、お願いします。

【引原委員】  京都大学の状況を御説明させていただきます。
 どこの大学も同じでして、Big Dealの価格が非常に上がっているので、大学の財務との関係で電子ジャーナルを切れないかという本部からの要求があるわけです。片や研究者の方々は、Big Dealで一旦、際限なく見られる状況になっていますので、そこから抜け出せない状況なんです。その一つの問題は、うちの大学の場合は、各電子ジャーナルに対して補助金的な扱いで、100%を出すわけではなくて、例えば50パッケージであれば、全体の予算を50パッケージで割って、共通経費を割って、それを各雑誌に提供していたわけです。残りを皆さんが払う。その場合ですと、補助金行政と同じでして、結局は皆さん、抜け出せなくなるんです。
 そういうことで、昨年度まで2年ほど検討いたしまして、来年度から5パッケージだけを共通経費でサポートする、それに対しては際限なく使えるという状況にしまして、残りは各ユーザーを探して、そこに対して課金する。ただ、そのやり方をするには大学内の認証システムを立ち上げないといけなくて、ちょうどそういうタイミングでしたので、認証システムで各部局あるいは研究室がどれだけ使っているかを全部調査し、その調査に基づいた数字と価格、各雑誌のインパクトファクターその他を加味して、どれを読むか、どれを契約するかを研究者の先生方に決めていただくというプロセスに、今入っています。
 来年度と言っていますのは、やっぱり急激に変えるわけにいきませんので、徐々にそういう方向に持っていきまして、今の全学的な認識としては、その上で、例えばエルゼビアほかの大きなパッケージをどう見るかの検討をこれから始めます。もう調査しましたけれども、例えばエルゼビアに関して言えば、その価格でどれだけ読めるかは分かっているわけですけれども、実際に読んでいる量を見ますと3分の1から半分にいかないんです。その契約だけにしたら大体同じ価格になるわけですけれども、読まない雑誌は本当にゼロなんです。読んでいるといえども、年間に五アクセス、六アクセスで、一論文当たりの価格が非常に高い状況になっている。そこまで要るのかという状況が数字として見えてきています。それに合わせて皆さん方にもう一度見ていただくということを、要するに研究者が自分が必要なものを自分たちで決めるという体質を、今作っています。
 出版社が我々が読むものを決めるわけではないわけです。ただ、今の形は、出版社が決めてきて、これをどうぞ、学会が入れましたからどうぞと言っていますけれども、それは我々が本当に読みたいものかどうか。その学会を入れ込むことを研究者がやっているわけですから、そこがジレンマになっているわけですね。だから、変な言い方ですけれども、自分たちの権限をどこに持っているか、選ぶ側が我々であるということをもう一度、取り戻さないといけないというのが、我々の今の考え方でございます。全学のお金としては限界がありますので、それを超えないように今、動いています。

【浅島主査】  どうもありがとうございました。
 次に、名古屋大学の佐野委員、お願いします。

【佐野委員】  名古屋大学でございますが、昨年の円高が始まる前から、電子ジャーナルについては学内で議論をしてきました。当時の状況はまだ円高が進んでいませんでしたが、このままでは持続可能なモデルにはなっていないということで議論してきて、どうするかというと、とりあえず名古屋大学の場合は、電子ジャーナルに関しては各部局の負担が主でして、その4分の1ぐらいを本部サイド、図書館サイドでサポートするというモデルでやっていましたが、他の大学の状況を考えると、もう少し本部サイドのサポートを手厚くしていいんではないかという論調で総長と交渉を始めました。基本的には、名古屋大学のこの5年間ぐらいのモデルを示して、2.5億円ぐらいの上昇になるということで総長と交渉した結果、総長が経営判断をしっかりされました。
 判断の妥当性などはともかくとして、我々の大学のリーダーとしての総長がしっかりとした経営判断をしたということを私は非常に重く見ていて、一つは大学の学術の特徴がこういうものであるから、こういう雑誌は本当に必要なのかということをしっかりと言われました。もう一つ、今後ずっと2.5億円伸びていくとなると助教が50人雇える、私はそちらを取りたいと総長が言われました。その経営判断が非常に重くて、それでは、この従来のモデルはもう無理であろう。そうすると、具体的にどのような形で進めればいいかを学内で議論して、メジャーなパッケージをやめることを決断いたしました。
 それで、実際にはパッケージをやめるとなると2,000タイトルから三百から四百タイトルぐらいになってしまいますが、それでどの程度の形になるか、最終的に先生方に数回のフィードバックを行って、従来のダウンロードからのカバー率を出しますと、2,000から三百五十から三百六十タイトルに減らしますと58%ぐらいのカバー率で、もう4月から契約を済ませていますので、本当にわずか1週間後から、そのカバー率の下で契約した形での電子ジャーナルの閲覧になっていくという形でございます。
 日本の大学は、ある意味で文科省が非常にうまく指導されていて、まさしく国土の均衡ある発展と同じで、全ての大学に対して一つの目標、計画の下に、我々は一出先機関として教育の実施をしてきたわけですが、それが災いとなって、どの大学もほとんど特徴がありません。私もこの間、アメリカの大学に行ったときに、名古屋大学の図書館の特徴は何ですかとずばっと聞かれたんですが、答えられませんでした。特にアメリカや中国の大学は、世界において、その大学なり、その学術なり、あるいはその図書館なりの特徴をしっかりと出そうということをやっていますので、大学間連携もうまくいっているんですね。日本の大学は、大学間連携をしたくても、全く特徴がないですので、しても余り意味がない。僕は、我々の総長がされたような大学の経営判断や大学の特徴が、今回の電子ジャーナル問題を契機に大学内で盛り上がり、あるいは文科省内で盛り上がり、大学が今後、グローバル競争の中でサバイバルしていくための議論になってくれたらいいなと思っているんです。ですから、今回は、非常に苦しいですが、いいチャンスだと位置付けて学内で議論を進めている状況でございます。
 以上です。

【浅島主査】  非常に貴重な御意見、どうもありがとうございました。
 次に、千葉大学の竹内委員。

【竹内委員】  竹内です。
 先ほどの熊渕さんの資料の15ページを見ていただくと説明がしやすいんですが、引原先生あるいは佐野先生から御説明があったのはA大学と書いてあるパターンの方だと思うんですけれど、千葉大学は研究論文の発表数と研究費の投入額で見た場合に日本でも一番経済的な研究を行っている大学、つまり金のない大学であることがはっきりしておりまして、このパターンでいうとB大学に該当します。Big Dealという批判の多いタイプの契約形態に関しましては、それを今すぐにやめることが情報アクセスへの非常に大きな障壁になると考えております。例えばアクセス数を見てまいりますと、某社のパッケージの場合、いわゆる非購読誌と言われる、経費の若干の上乗せでアクセスが可能になっているタイトルへのアクセスが占める割合は、このパッケージへのアクセス全体の40%を超えています。ですから、今、もしも個別タイトル購読に切り替えた場合、その部分が完全になくなって、なおかつ個別タイトルの価格が上がっていますので、私どもで購読できるタイトル数とそのタイトルで保障できるアクセス数は、先ほどの佐野先生の御発言にあった58%と比べるともっと小さい数字になってしまいます。その部分を大きく減らしてしまうことについて、大学としての独自の経営判断として考えた場合には、私どもでは現時点としてはBig Dealの維持を選択せざるを得ないというか、私どもの現在の大学の方針である研究大学としての研究力を維持していくことを考えた場合には、それしかないということになるだろうと思います。
 学内の経費の負担方法ですが、私どもは主要な電子ジャーナルを「学術基盤資料」として全学から予算を集めて維持するという形でして、大学本部の負担分は全体の10%にも達していません。基本的には、各部局、つまり研究者がどうやって千葉大学の研究力を維持していくかという検討の中でジャーナルの買い方を決めているのであって、今後、ジャーナルの価格がかなりの割合で上がっていくことは説明しておりますが、もちろん大学の規模が違いますので佐野先生のところのような額で上がっているわけではなくて、一定のパーセンテージ、例えば20%上がるとかいう話をするわけですけれども、今のところは、各学部を代表して議論に参加された先生方は、本部の負担額を増やしてほしいとおっしゃりながらも、今回の値上げに関しては我々が頑張るしかないという意見を頂いていて、次年度に関しては当期のパッケージのキャンセル、見直しはしないという結論を得ています。
 ただ、このことが、先ほど熊渕さんの資料の中にもありましたけれども、Big Dealを維持するために他の学術雑誌の購読を中止せざるを得ないという状況を導いているのは事実です。トータルの額はなるべく増やしたくないということがあります。そうすると、キャンセルを検討する対象としては、大きいものはみんなで買っているからやめられない。一旦やめてしまうと、これは二度と維持できない。でも、小さいものだったら、一旦やめても、部局の努力でまた復活できるかもしれないといった考えが働いて、先ほどの熊渕さんの説明にあったような判断を各大学でしているところかなと思います。
 以上です。

【浅島主査】  どうもありがとうございました。
 次に、横浜市立大学の白石委員、お願いします。

【白石委員】  私どもは公立大学で、地域に教育と研究、医療を届けている大学です。電子ジャーナルの契約でいいますと、基本的には大学本部が負担しております。
 本学では以前、電子ジャーナルなど学術雑誌の購入額が減額となった時期がありましたが、その後円高もあって順調に契約タイトル数を伸ばしてきたところに、今回の円安が直撃したという状況でした。昨年春の時点で本体価格と合わせますと大体3割ぐらい価格上昇が見込まれ、予算金額に対して数千万円の不足見込額となり、私どものような公立大学では大変な事態と認識されたことから、全学で対応策を議論いたしました。その対応策ですが、電子ジャーナルの契約を、今回はパッケージまでは踏み込めなかったのですが、個別タイトルについては一つずつ教員の先生方に御検討いただきましたところ、1タイトルだけ契約しないことになりました。残りの不足見込額は、大学本部からの補助と、先生方に御協力を頂き、例えば冊子体のタイトルを点検する、製本も先送りするなど様々な細かな経費の節約をいたしまして、2014年1月からの契約に関しては前年とほとんど同じ契約ができました。
 つまり現時点では何とか対応できたということなのですが、非常に問題視しておりますのが、本体価格が5%程度、毎年、上昇していることです。これが中長期的には非常に重要な課題だと思っています。この五、六年は円高によって何とか埋め合わせをしてきたのですが、本学では電子ジャーナルに係る予算が1億円を優に超えるような規模になっていて、例えば1億円であれば5%の価格上昇で500万円、2億円であれば1,000万円ということで、先ほどは2.5億円というような金額のお話があったわけなのですが、これが複利式にどんどん膨れ上がっていくのは大学の経営として望ましいものとは言えません。
 そこで、今回の円安と本体価格の値上がり分への対応について、電子ジャーナルの契約タイトルの選定方法を変えていくということを学内で議論を始めました。具体的には、他の大学でも例があるようですが、「コアジャーナル方式」の導入を検討しています。これは、まずはコアになる、教育と研究にどうしても必要なのだというタイトルを教員の先生方に選んでいただいて、そのコアジャーナルについては中長期的に契約していく、それ以外のタイトルについては経済環境や大学予算の状況によって契約を検討するという方式を採らざるを得ないという方向性です。つまり、今年は前年並みのタイトルを確保できましたが、これからはそれが難しい状況も考えられます。それが教育と研究にどういう悪影響を与えるのかという懸念を持っています。
 先ほどのJUSTICEからの御説明の25ページで、なぜ本体価格が値上がっていくかという御説明があったわけですが、論文数の増加で流通コストが増大するというのは、電子ジャーナルの場合はどういうメカニズムなのでしょうか。市場の特殊性として価格決定力が出版社側にあることから価格上昇は世界的な流れだというお話もありましたけれども、ユーザー側の交渉力を更に高めるなど、私たちも教育と研究を守るために努力していかなければならないと考えております。
 以上です。

【浅島主査】  どうもありがとうございました。また非常に有益な示唆でした。
 最後に、慶應義塾大学の田村委員にお願いします。

【田村委員】  慶應の場合には、予算の立て方が今のお話と随分違っております。慶應はキャンパスが六つありまして、各キャンパスに予算は配分されてはいるものの、図書館予算としては6キャンパス全体で運用しております。それに加えて、三田キャンパスと日吉キャンパス、つまり人文社会系と教養のキャンパスについては、学部予算という形で学部にも図書予算があります。これは要するに教員用の図書の購入は学部が決定するというものでして、意思決定の主体が複数ある、運用がちょっと難しい仕組みになっています。
 ただ、学部予算にしても図書館予算にしても、年間の予算はきっちり決まっています。先ほどからのお話ですと、共通経費と部門経費があって、部門経費は各部門が予算全体の中から電子ジャーナルに関する費用を捻出ということで、いろいろ全学で検討された上で出されるんだと思うんですけれども、慶應の場合には、図書館予算と学部予算がそれぞれ固定になっていて、ここ何年かはずっと同額で推移しております。そして、図書館予算については図書館に執行がゆだねられています。当然ですけれども、その中に教育に関わる部分もあれば、研究に関わる部分もあることになります。そうしますと、今回の電子ジャーナルの問題は、学部予算と図書館予算の中の研究に関わる部分の予算をどのように考えて配分していくかという話になります。
 悩ましいのは、図書館予算については図書館がイニシアチブを取って配分などを考える権限も責任もあるため、今回のような急激な価格高騰のようなことがあったときには、図書館の側から塾長あるいは理事会に方針を説明し、考えを共有しようと努めない限り、既に配分した予算以外のものは出せないよという中で対処していかなければいけないことになってしまいます。
 学部予算は慶應独自なのかなと思いますけれども、図書館予算については、かなりの私立大学が慶應同様その中に教育と研究を全部含めて賄うようにしているのではないかと思います。そういう私立大学は、慶應もそうですし、当然、図書館予算の中に電子ジャーナルも含めて考えておりますので、あらかじめ決められた予算以上にお金を出すことが非常にやりにくいというか、かなりの議論がないとできないことになります。今回は、慶應の場合前年度からの値上げ分が数千万円になります。来年度、2014年度分は契約がもう終わっておりまして、何とかなったのですけれども、再来年度は、今の図書館予算、学部予算の中では賄えないということもはっきりしております。もちろん、例えば和図書の購入予算を削れば賄うことはできるんですけれども、そうしたら、電子ジャーナルのために教育に関わる予算を切っていいのかという話になって、図書館としてはそれは絶対にイエスとは言えない。そういたしますと、研究にかける予算で従来、配分してきた範囲の中で何とか賄っていこうということになる。そうしますと、価格上昇分を賄う予算は出せません。
 他方、先ほど竹内先生がおっしゃっていましたけれども、研究力を維持するために電子ジャーナルに関わる予算は必要なんだというもう一つの考え方がございます。これも理事には申し上げているところで、こちらの方針では、国立大学の皆さんがやっていらっしゃるように研究費の中から一部、電子ジャーナルに関わる予算を充当していただくことが考えられます。電子ジャーナルではないんですけれども、一部のデータベースについてはそういう形でお願いして、研究費から出していただいております。ただ、常に言われるのは、どこまで研究費から追加の支出をすればいいんだ、際限がないじゃないかということで、この場合でも追加支出の中止について、どこかで決断をしなければいけないだろうということになります。
 現在、慶應としては、どれかのパッケージ契約を解約するということで、どのパッケージ契約を解約するか、解約した後の措置をどのようにするかについて、もう検討に入っております。そうせざるを得ないと考えています。研究費から補てんしていただく可能性もまだ完全に消えたわけではないんですけれども、図書予算の枠の中で考えていく方式を踏襲する限りは、どこかでやめるという決断をせざるを得ません。
 仮にパッケージ契約を解約するとしますと、今度はタイトル・バイ・タイトルとペイ・パー・ビューを組み合わせるという契約方式に変わることになります。タイトルの選定が大変になるわけですけれども、試算すると、現在の慶應で、しかも値上がり分を吸収させなきゃいけませんから、それで考えると、契約できるタイトルは、パッケージ契約で利用できているタイトルの10分の1くらいになってしまいます。それでもせいぜい値上がり分を抑えられるだけ、そんな状況になっている。だから、それでいいのか、それで慶應の研究力は維持できるかという議論が必要になります。
 特に問題なのが若手研究者への影響です。ペイ・パー・ビューになると、その費用はそれぞれの教員が持っている手持ちの研究費で賄うことになると思いますが、そうすると、そういうものを持っていない大学院生など慶應としてこれから頑張ってほしい人たちが、自腹でも切らないと読めない,犠牲を払わないといけないような事態になることが大変に困った話だと思っております。先ほど熊渕さんがモラルハザードということをおっしゃいまして、そこの部分は一面であるんですけれども、自由にダウンロードできる環境があることが研究者にとってどれほど快適な環境か、そこの利便性はできれば維持してあげたいなとは切に思っております。ただ、背に腹は代えられないというのが解約の一番大きい理由です。
 解約を考慮する別の動機があります。ここまできたからには、図書館が責任を持って預かっている予算を一回、研究者に戻して、どうしましょうかと相談するのも良いのではないかと考えています。具体的には、10分の1くらいになってしまうタイトルをどのように選んでいくか、それでは賄い切れない部分をどのようにして支出していくかということを、研究者に、研究者自身の問題として考えていただこうと思っております。エンドユーザーである研究者に、自分たちの問題であることを理解し、対処策を考えていただくことで、円安の危機を今後の図書館運営に生かしていく途につなげてゆきたいと思っています。
 以上です。

【浅島主査】  どうもありがとうございました。
 今、各大学の現状と少し今後の見通しも含めて語ってもらったときに、非常に厳しい状態にある。それを今後どのようにしていくかは、この委員会の大きな責任、ある面でいえばなぜこの検討委員会を開いたかという意味でもあります。例えば、先ほど名古屋大学の佐野先生がおっしゃったような、総長のリーダーシップの下に、Big Dealとの関係は、パッケージはとにかくもうこれ以上は持たないということになってきたという意味での選別もあるでしょうし、慶應の田村先生が今、言われたようなBig Dealとのパッケージ化に合わせて今後、やめなきゃならない可能性もあるとなると、やはりBig Dealの関係者の方々にも適正な価格を示してもらうことが非常に重要でありまして、研究者、大学自身が、皆さんが本当に日本の学術の向上と平等化、みんなが見られるということをしていかないと、どんどん日本全体の学力あるいは学術がレベルの下がっていく可能性もあるんです。その辺のことからいって、我々は今、どのようにするのが一番いいかを検討していきたいと思っています。先ほどのJUSTICEの御説明と各大学のいろんな御事情を聞きましたので、これからはこれまでの内容を踏まえて、現在のジャーナルの購読の抱える問題への対応について全般的な意見交換をしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。何かあれば。どうぞ。

【佐野委員】  一つだけ。先ほど永井さんから冒頭に、なかなか日本のジャーナルが買ってもらえないという話がございました。大変重要な話なんですが、それがグローバルなデータベースに載っかっているジャーナルかどうか、インパクトファクターが付いているかどうかの2点をお聞きしたいんです。

【永井委員】  今の先生の説明は、ある特殊なジャーナルのことを言っているのか。うちのジャーナルのことでよろしいですか。

【佐野委員】  永井さんのところ。

【永井委員】  まず、これはSPARC Japanによって支援されたタイトルで、名古屋大学にはずっと購読していただいております。本当にありがとうございます。
 当初は「Zoological Science」という動物学会の私どものジャーナルだけがインパクトファクターを持っていたのですが、BioOneというプラットフォームを使うことによってトムソン等にはインターナショナルなジャーナルとしてのある種のお墨付きをもらえたところもありまして、次々とインパクトファクターを取りまして、今、残り2誌が取っていないけれども、あとは取ったという状況がございます。あとの2誌も今、トムソンと継続交渉中でして、これは私が情報研から当初、2年間、支援を頂いたものですから、私がやらなければいけないことは、まずインパクトファクターのないジャーナルに必ずインパクトファクターを取ろうという目標があったので、取れれば全部のジャーナルがインパクトファクターを持っているということだと思います。
 先生の言葉に逆にこちらが聞きたいことなんですが、例えばBioOneという私どもが連携している相手方と最初に一緒にやったときは、インパクトファクターがないジャーナルもいいよと言われたんですね。ところが、今度、日本のジャーナルが私たちと参画したいといっても、インパクトファクターがないとノーなんです。Association of Research Librariesの理事がそう言っているそうなんです。やはり、図書館としてはそうだということなんでしょうか。

【佐野委員】  はい。それは研究者の動向にあるんですが、特にバイオ・ライフサイエンス系ではインパクトファクターをすごく重視していて、付いていないものには基本的に研究者は投稿しないという形になっています。したがって、逆に永井さんのところのジャーナルのインパクトファクターを編集局がいかに上げるかを戦略的に考えなくちゃいけない。基本的にはインパクトファクターは前年あるいは2年前の引用件数で決まってきますので、簡単なのは、1月号に著名な人のレビューを載せるという作戦が一番いいやり方です。

【永井委員】  もちろんです。もうそれを10年、やってきているわけです。そうしないと。ただ、すごく厳しいのは、バイオサイエンス系は、またここでエルゼビアの名前を出すと申し訳ないですけれども、非常にエルゼビアのジャーナルが強い。それで、私たちは対エルゼビアになっちゃうわけですよね。何が問題かというと、エルゼビアは、インパクトファクターが高いという以上に、投稿料を払わなくていいわけです。うちも別に投稿料を取っていないんです。ところが、一つ、3年前に「Zoological Science」が投稿料を取ることをしたんです。途端に半分です。つまり、私たちがゲストとして、クライアントとして迎えなければいけないライフサイエンス系のジャーナルに投稿する研究者は、エルゼビアのジャーナルの作法が正しいやり方なんですね。そういう問題もある。

【佐野委員】  そういう囲い込みが起こっているのが現状なんですが、それでも、一旦やめてしまうと、今までの中で日本の学術が、特に最近、出てきている新興国に対して非常に劣勢に立っている原因がそこにあると思います。一言で言えば、日本の学術が、特に自然科学においては、この15年で10%ぐらい論文数が減ってきているのは皆さん御承知のとおりです。この理由は何なのかということ。一方で、中国はもちろん数倍増していますが、アメリカも飛躍的に、50%ぐらい論文数を伸ばしています。もともとのベースが物すごい高いレベルにあっても、なおかつ50%伸ばしている。この理由が何なのかをよく考えなきゃいけない。
 そこには、一定の出版のストラテジーがあります。一つは、いかにいわゆる学問、学術の選択と集中をやるかが大学経営の中であります。例えばハーバードは、ライフサイエンス、バイオ系に特化しているんですね。もう物理なんか捨てたんです。もちろん教育はやっていますよ。だけども、個々の研究者が勝手に物理の研究をやるのは勝手だけれども、大学の基本方針としてはもう物理に自主財源は投入しませんということをやっているわけです。日本の大学はそれができているか。だから、全部の学術を支えようとする。その結果、貧弱な財政がますます貧弱になっている。中国、韓国のジャーナルの出版の仕方は非常に参考にしないといけない。日本は脱亜入欧して、結局、自分たちのジャーナルをどんどん捨てていって、欧米のジャーナルに乗っかったんです。その結果、今があるんです。まさしく中国や韓国はここ10年ぐらい、脱亜入欧じゃなくて自分たちのジャーナルをしっかりと出すようにしてきて、それを戦略的にやってきていますから、Web of Scienceに載っけたりするのも地域性が重要視されますので、イーストアジアの幾つかのジャーナルは、もう日本のものが入れなくなっています。

【永井委員】  でも、この間、ちょっとはっきりトムソンとけんかをしたのですが、爬虫両棲類学会の日本のジャーナルを入れないで、全く訳の分からないものを入れている。それは、もちろん中国の戦略だと思うんですね。では、一概に中国、韓国のやり方をすればいいかというと、それには余り賛成はできません。特に、Web of Scienceからリジェクトされて削除されたジャーナルはどこから出ているかというと、ほとんど中国、韓国じゃないですか。それは自誌引用しているのでね。そういう問題を見ながら、私たちはどうするか。

【佐野委員】  ただ、イーストアジアのスタンダードを獲得しちゃっているジャーナルも中国、韓国にあるわけです。日本のジャーナルがほとんどもう排除されている状況もあります。そこはやっぱりまねというか、戦略的に考えないといけない。

【永井委員】  先生がおっしゃっていることはすごくよく分かります。日本のジャーナルがどうするかだと。

【佐野委員】  そうです。全くそのとおり。

【浅島主査】  では、どうぞ、安達先生。

【安達委員】  このワーキンググループで議論すべきことを浅島先生に整理していただきたく存じます。今の御議論のように日本のジャーナルをどうするかという問題がこのワーキンググループのテーマであれば、そのように御指示ください。私は、先ほどからの議論を聞いておりまして、欧米と同じような形で学術文献を確保し、研究力を維持するかが本日の主たる論点で、その中で電子ジャーナルの価格の高騰の中で日本の大学がどのようにしていくのかが主な論点だったと思っておりまして、論点が少しずれてきたのではないかと思います。そのような点をまず整理していただければ有り難いです。

【浅島主査】  この委員会は、各大学におけるジャーナルの購読が非常に高騰化して、非常に危機に陥っているのをどう打開するかが一つの問題です。それを共有するときに、どのような方法の仕方があるか、つまりこれから日本として学術を本当にどうするかということと、電子ジャーナルを含めて、図書館も含めてどういう対応をするかを共有していくことが第1点。
 第2点は、これから、今、言ったようなBig Dealにどのように対応していくか。一つは、彼らは営業目的で、例えば利益さえ上がればいいということだけでもなくて、やっぱり学術そのものを考えるところも多いと思うんですね。言えば、そこのところの良心あるBig Dealとの間に、我々はどのような新しいモデルを作っていくかがあります。
 そして、今日、大学図書館のJUSTICEに来ていただいたのは、では日本の大学、研究所も含めて、今後、一体どういうふうにして日本のジャーナルを育てていくかがあります。ですので、今日は、各大学の状況あるいはJUSTICEの方法の現状を聞きながら、今後、日本のOA(Open Access)の在り方について我々はどう考えていくのか、最後のところでは、各学協会がどういうジャーナルを出していくことによって本当に日本の学術を世界の中で担保できるかという仕組みを考えるのが、この委員会のミッションだと思っています。
 それゆえ、今のような話の中でいえば、ここにはいろいろな問題が含まれていまして、先ほど慶應大学も京都大学も名古屋大学も言いましたけれども、各大学は自分たちの中でクローズしているので全部、買わざるを得なくなっているけれども、それではもうパンクし始めているし、既にパンクした。そうしたときに、各大学それぞれが特徴あるものを作るとしたときに、それを日本の学術として見たときに、どういうお互いの環境を持っていくことが今後の日本の学術を向上できるかをここで考える。ですので、ある面では非常に重たい課題を、我々が世界の中での日本の学術の立ち位置と出版社との関係をどういうふうに持っていくかがあるわけです。まだいろいろな方向性や回答があるわけではないけれども、それを考えていって、我々がお互いに協力しながら考えていくことが実は重要なことなのです。今までは各大学の自主性に任せていたところがあるけれども、それではもう太刀打ちできなくなってきている。円安とBig Dealのジャーナルの高騰という中で、各大学が購入できるタイトルはもうどんどんどんどん減少の方向にいっているので、これでは日本の学術や研究の高いレベルは守れないわけです。その中で一体どうするかを我々がちゃんと示して、それを文部科学省の中で考えていただいて、我々が提案して、それは国の力としてどういう方向に持っていくかを考えていくということです。
 ですので、今の安達先生の質問はこのミッションと非常に結び付いていまして、永井委員と佐野委員のお二人の間のやりとりは、ある面では個々の問題でありながら、一つの今後の在り方についても問題点を洗い出しているとお考えいただければと思っています。
 はい、どうぞ。

【谷藤委員】  物材機構の谷藤です。私は多分、今日、ここに研究所の図書館という立場で呼ばれたと認識しておりますので、あらかじめの議題にはなかったようですが、少し発言をお許しください。
 研究機関の場合、例えば私ども物材機構は、基礎研究から応用までを網羅する10の研究機関で研究独法図書館コンソーシアム(JNLC)というのを結んでおりまして、いろいろと情報共有をしております。JUSTICEに比べればずっと小さなサイズですけれども、日本の基礎研究を支えるという意味では大変重要な機関が、先日、特定にも選ばれた独法も含め、含まれております。そういう意味で、そこから出てくる声、あるいは実際にこの価格上昇に対する対応に関しては、はるかに厳しい判断を迫られています。つまり、基礎研究に影響があってはならない、優秀な若手研究者に来ていただけるような魅力ある研究機関でなければならない、世界に高い質と競争力をもって対応していかなければならない、知財を生んでいかなければならないというミッションがはっきりしていますので、そのためにどのような研究資料が必要で、どのような状態であること(研究情報インフラ)が最低限必要なのかをこの1年間、議論しました。タイミング良くというべきなんでしょうけれども、為替の急変によって高度な判断を急に決断を迫られた例として、皆さんと情報共有したいと思います。
 結論からいうと、パッケージ単位は到底維持できないということです。既に他の大学の図書館例で出ましたけれども、パッケージを維持するためには何かをキャンセルしなければなりません。ひとつのありがちな解決は、日本のジャーナルをキャンセルすることです。残念ながら、図書館にとって日本のジャーナルがよく見えないことにも起因します。内容の良しあしではなく、お金に詰まってくると優先順位を決める過程で大胆なことをしなければならなくなるので、そうせざるを得なくなるという例があります。
 脱パッケージが何を意味するかというと、研究資料をタイトル数の規模で判断するのではなく、ジャーナルという単位で判断し、あるいはそのジャーナルに載った有用な論文がどれだけあったのかという粒度が小さいレベルで検討、議論しなければならないことを意味しています。それを研究する人たちに、これが最適な回答であると図書館が示すためには、当然に、科学者を相手にしていることもありますので、論文単位でどれだけ使われているか、あるいはどの研究領域に使われているか、その単価を掛け算するとどの程度の支出の規模になるのか、研究ユニットごとに若手が主体なのか、あるいはシニアの研究者で小規模に行われているのか、研究のスタイルはいろいろありますので、このような多様性を踏まえて、横断的な調査、分析をして提示する必要があります。その結果として、物材機構の場合は外国2社を除き全てのパッケージを解除したという経緯があります。これは物材機構だけではなく、コンソーシアムに参加するほかの機関でも、パッケージをやめて単体契約に移る対策が講じられたと聞きます。
 先ほどJUSTICEの例で少し触れられていましたけれども、注目すべき傾向として、学会がオープンアクセスバウチャーを発行し、学会が出しているどのジャーナルでもいいから、そのジャーナルにあなたの論文をオープンアクセス出版したかったら、お得な回数券を使ってくださいという前買い回数券とジャーナル価格をセットにした販売モデルが登場しています。研究する発信現場から見ると、オープンアクセスで発信されている方が読まれる確率が高いし、同時に私たちはキャンセルもしているわけなので、キャンセルしている雑誌で自分の論文が読めないという事態が今後もっと増えていくという深刻な問題がありますので、このモデルが価格上お得かどうかという話と、研究発信の効果としてどういう効果を生むのかを併せて考えておかなければならないということです。今回は見送ったのですけれども、私どもの場合ですと約30社と年間契約しておりまして、その30社のうち1社だけにそういう契約をすることが、公平であるべき研究基盤において公平感が損なわれないのか、成果普及を支援していることになるのかどうか、よく分からないという議論があります。つまり、A学会だけに出したら、オープンアクセスにも出せるし、自分の研究費からの支出でないこともあって、何となく得な感じがするという印象もあって、インパクトファクターもさることながら、自分の研究をどの方向に向けて効果的に発信するのかが研究のマネジメントの中で重要になってきていると認識しています。
 これは図書館にとって真剣に考えるべきオープンアクセスの波及問題と認識しています。なぜなら、背景を知らない人にとって理解することが難しいですし、数字で見せてすぐ分かる性質のものではないことに加えて、日本の中でそれを統計的に調査した結果が出ていませんし、何を判断の根拠にするのかという点すら、コンセンサスがない状態といえます。最終的には予算の規模になるんですけれども、これについては限界を超えた先として、
Big Dealも大事という機関もあるでしょうけれども、Big Dealではなくジャーナルの単位、論文の単位、論文のライフタイムという単位で研究に最適な方法を考えることは多分、研究機関だけではなくてオールジャパンで考えていくべき視点なのではないかということで、あえて発言いたしました。

【浅島主査】  今の谷藤委員の考え方は非常に重要でありまして、今、我々がやっているのは日本の学術をどのようにして今後、発展させていくか、あるいは必要とするジャーナルをだんだんと購入できなくなるときに、それを下支えするときにどのような方法ならばいい方向性を見付け出せるか、まさにそういうことで今日は議論しているわけですので。
 では、竹内先生。

【竹内委員】  先ほど来の安達先生の問題提起と谷藤委員のお話などを聞いて思ったことを少し申し述べたいと思います。
 基本的に、ジャーナルの問題を図書館の立場で関わって議論するときには、日本で行われているというか、あるいは各機関で行われているべきかもしれませんが、研究に必要な研究資源をどのように最適に提供できるかという視点でまず議論することが重要であって、その部分がなければ、日本の雑誌が買えないことがどうなのかという議論をしても、ほとんど意味がないと私は思います。ですから、恐らくこれまで報告をされた先生方、特に引原先生、佐野先生の御報告の根幹にあるのは、各大学の研究を支えていく上で必要な研究資源を、合理的、あるいは最適といえるかどうかは難しいところがあるかもしれませんけれども、提供していくための環境をどういう形で維持していくのかがまず大きな課題なのだということであって、そのように整理して議論していくしかないのではないかと思います。その中で、もしもオープンアクセスの問題が出てくるのであれば、オープンアクセスという方向を今後、展開していくとすると、日本の学術研究を支えていくことを総合的に考えた場合にそれが合理性を持つのかどうかを考えられなければならないし、Big Dealが一方的に悪ではないと実は私は思っているので、Big Dealというチョイスはどういう条件だったらどのような大学にとっては得なのかといったことを議論していくべきだろうと思います。今日はここでいろんな大学の事例の報告がありましたが、分かってきたことの一つは、各大学の経費の準備の仕方からタイトルの決定の方法まで相当ばらばらだということだと思います。ですから、そういったデータをきちんと取って、ここで議論できるベースを共有していくことが、まずは大事なのではないかと思います。

【浅島主査】  安達先生。

【安達委員】  竹内先生がきれいに整理してくださったわけですが、一方、大学図書館は、そのような問題が冊子体の時代からあったことから、相互協力などを行い大学を超えたネットワークとして活動が広がってきたと認識しております。
 私どもNIIとしても、そのような図書館の動きがどうすればきちんと進むかという観点からお手伝いをしようとしてきたわけですが、少し振り返って申し上げたいことがございます。私どもはそのような問題に対してセーフティネットをどのようにして作っていくかを考えてきまして、その中で過去10年間、機関リポジトリの活動を行ってきましたし、またバックファイルの共同購入、出版社がなくなったときのためのCLOCKSSのような国際連携を行ってきました。更に昔に遡ると、国立大学には外国雑誌センターというものがありまして、それぞれの大学の特徴に沿ってコレクションを確保するというセーフティネットを作ってきましたが、電子ジャーナルの世界になったことや法人化を経て、それがよく分からなくなっていることもあります。まさにセーフティネットでして、つまりそれぞれの大学が特色を出されるのはそれで良いのですが、それで完結しない、あるいはそれにうまくはまらないような教育研究支援活動をどのようにして全体で支えていくかという仕組みを、電子資料の上でどのように作るかというのが課題だと思います。
 その中で、竹内先生御指摘のとおり、また引原先生がおっしゃっていたとおり、データがないとこれはできない。オープンアクセスというのは、直面している雑誌の価格の高騰に対してどのように対応するかが基本的なきっかけで起こったものでして、先日の浅島先生が主宰されたシンポジウムは大変有益なシンポジウムでありました。大学ではありませんが、ドイツのマックス・プランク研究所がどのようにしてエルゼビアと交渉してきたかという話を赤裸々に聞くことができましたし、幾つかの問題も指摘されています。
 まず、白石先生も疑問を呈されましたが、Big Dealで論文数が増えているのかという問題があります。これに対して、少なくともマックス・プランクで投稿しているエルゼビアやシュプリンガーへの投稿論文は増えていないといっておりました。また、別の議論として、オープンアクセス雑誌が若い研究者が投稿する論文を吸収するところになっているという紹介もありました。このようにとにかく、データを持って交渉しないことには価格の高騰について戦えないわけです。図書館の立場として各大学におかれましては、種々の論文に対してどのようなアクセスをしているのか、そしてそれに払う対価が妥当なのかというデータを把握した上で交渉しなければならない段階になったと思います。
 JUSTICEのプレゼンに関しまして、一研究者の立場から少し違和感を覚えるのは、投稿する研究者、特に論文を生産することを強く求められている若手の研究者に対してどのように説明していくかという視点が全く欠けていて、とにかく出版社が売ろうと持ってくるものをいかにうまく買うかという話だけになっている点です。例えば谷藤さんが言われたように、オープンアクセスジャーナルの出現の結果、バウチャーのようなものが出てきますと、従来はどの雑誌に投稿するかは研究者が決めることができたわけですが、この場合機関としてはこの雑誌に投稿した方がいいと強制することになるわけです。このようなこととペッキング・オーダーのような話と相まって、問題は非常に複雑になります。その中で、オープンアクセスを進めることが、価格高騰に対抗する唯一の手段であると考えられているのだと思います。イギリスなどは一番先鋭的に国としてそれを進めており、具体的な制度として研究者に押し付けてきているわけです。そのような状況の中で、我が国がこの問題に対してどのように対処するかは、今述べたような制度設計と密接に結び付いているわけでして、先ほど言いました従来の学問の自由にも関わってくるような点に関しての議論も必要なのではないかと思います。
 以上です。

【浅島主査】  では、引原先生、お願いします。

【引原委員】  ちょっと情報提供させていただきたいんですけれども、RU11で電子ジャーナルの問題を検討するグループを作ることになって、私はその主査をさせていただいています。現実にそのワーキンググループがグループとして動いているかどうかは別にしまして、1月に一度お集まりいただき、海外の調査をしようということを企画させていただきました。ただ、これは研究強化資金等を使って、各大学の持っているお金の範囲内で行けるところを調査できればしてくださいという、任意な調査になっています。そのことをあらかじめ御理解いただいた上でちょっと御報告したいと思います。
 RU11の中で、11大学のうち5大学は賛同していただいて、調査していただいています。佐野先生も別の形で行かれたんですけれども、情報を十分取っていただいています。その中で私自身が行ったところについてお話しします。日本の大学の規模からいえば、例えばスタンフォードに行っても規模がもう全然違いますし、そういうところへ行ってすごいですねと言っても仕方がないわけで、例えば国立大学である京都大学一大学が予算が倍になったらどうなるか、同規模だったらどうなるか、あるいは国立大学がコンソーシアムを組んだらどうなるかという観点で3大学に行っています。
 その一つは、ワシントン州立大学は京都大学の二から三倍の予算規模を持っていて、文系を持った大学ですけれども、そういうところがどういう電子ジャーナルの運営をしているか。カリフォルニア工科大学は京都大学と予算はほとんど一緒ですけれども、学生数は非常に少なく、非常に特化した大学で、そういうところがどういう戦略を持っているか。UCLA、カリフォルニア大学関係で、特にオープンアクセス関係でどういうふうにして運営しているかはコンソーシアムを組んだ場合だと思います。この観点で見ていきますと、ここで議論されているそれぞれ別の話が、そこここの大学にあるわけです。だから、それは一挙に議論しても仕方がない。
 その中で共通の部分だけ申し上げますと、まず、日本の今の電子ジャーナルの状況はアメリカでもよく分かっていて、これは5年前のリーマンショックのときにアメリカの州立大学がほとんど経験した内容であって、そのときにライブラリアンあるいは図書館がどう対応したかはもっと調べた方がいいんではないかと。
 そのときに言われたことは、先ほど我々がもうやっている話なんですけれども、まずデータを取ること。各大学が自分たちがどの雑誌が欲しいかの把握をちゃんとすること。予算の裏付けをきちんとすること。そのときそのときで適当な予算を持ってきて処理するのではなくて、オーバーヘッドならオーバーヘッドで、その範囲内で運営することを図書館がきちんと把握すること。ないからおねだりするのではないということは何度も言われています。さらに、こういう選考のときに、自分の関係の雑誌、共通の雑誌がなくなることに反対する方々はいっぱいいらっしゃいますので、ルールを明確にすること、そして全てをオープンにすることというのはどこの大学でも言われていることです。
 今、安達先生が言われたように、各大学の状況は分かりません。ルールも分かりません。JUSTICEに契約を交渉していただいていますけれども、各大学の価格体系はお互いに秘密になっていますから言えないという状況はありますけれども、そういうものがお互いに疑心暗鬼になった状態では何もできない。
 ですから、今、ここで私が申し上げたかったのは、各状況に応じた大学の運営をどうやってきたかというたくさんの例をもう少し情報を共有化してやらなければ、トライ・アンド・エラーにおいてまた同じことを繰り返すことになる。アメリカが5年前にやったことをもう一回、我々がやって、また同じようになりましたというのでは意味がないと思いますということです。よろしくお願いします。

【浅島主査】  どうもありがとうございました。
 今のこともやはり重要でありまして、我々はエビデンスに基づいた、つまりデータをきちんと持って、それをどのようにして今後、持っていくか、それからルールの明確化や情報の共有化はどうしてもしておかなきゃならないことだと思います。ですので、その辺については今の引原先生の御意見はもっともで、非常に有り難いことでありまして、我々が今後、やったときに、今、これをJUSTICEではできますかね。今のような、例えば各大学がどのような状況であってというデータを持つことは、調べることはできますか。

【熊渕JUSTICE事務局長】  各大学の契約状況は調べることができますが、そこから先の話をJUSTICEという大きな単位でできるかとなると、難しいところがあります。契約状況については調査をしていますが、引原先生のお話の中で各大学の状況がよく分からないというところについては、今、こういう場で幾つかの大学から自大学の例としてお話しいただいていますが、自分のところがどういう戦略を立てて、どういうジャーナルを取って、どれだけお金を出しているかということは大学の経営情報の一部であり、それをオープンにはできないということで、契約状況の調査に回答することも難しいという大学もあります。そういう中で網羅的に調べられるかというと、難しいところです。

【浅島主査】  難しいんだけれども、調べられる範囲というのは、次回までにその辺のことをどこまでできるかも考えるのか。あるいは、NIIはどれぐらいできますか。

【安達委員】  私どものところは、それに関しては何もできません。

【浅島主査】  そうすると、こういうことについて、例えば一つの話としては、国大協を含めて大学協会辺りがある面でいうと検討はしているので、その辺からデータをもらうことは、今、言ったような共通のことで考え得る可能性はあります。
 引原先生、お願いします。

【引原委員】  RU11に関しては、今、任意で調査ということでやっていますので、そこからデータをうんぬんというのはほとんど不可能だと思います。メンバーで来られる方も結局は図書館関係者ですので、結局、同じメンバーになってしまう。
 ついでに申し上げれば、そのときに、大学の経営関係の方々が図書館のことは図書館の関係者に任せてしまわれています。ですから、予算に関しては出さないとおっしゃりながら、情報を自分たちで把握されていないのも現実だと御理解いただきたいと思います。

【浅島主査】  では、竹内先生。

【竹内委員】  先ほどから何度か言及されたかと思いますけれども、契約情報に関しては各大学で守秘義務が生じている可能性があります。うちの大学はこうですと、今日も私は余り具体的な数字は申し上げませんでしたが、そういう状況にあるので、これはちょっと工夫をしないと情報の共有ができないと思います。ただ、完全に匿名化された状況で構わないので、この大学はこういう買い方で、こういう形でこういう判断をしたというケーススタディみたいなものは、やはりここできちんとやっておくべきであって、その情報共有が議論していく上での基本になるのではないかと思います。ですから、この点については、もしも可能でしたら、完全に匿名化する形で、つまりこの大学がどこか想像もつかないような形で情報を共有するしかないんじゃないかと思います。

【浅島主査】  では、室長。

【長澤学術基盤整備室長】  先生方の御意見は大変有意義だったと思っております。
 私どもは、今日、それぞれの大学の事情を御説明いただいたことだけでも十分意義があったと思っておりまして、それさえも全く分からなくて、各大学がどういう状況で、どういうジャーナルの購読状況にあるのか分からない中で、Big Dealについては維持しないといけない。だから、その経費についてどうするんですかと。そうすると、結局のところ、実際に読んでいるかどうか分からないんですけれども、そういったニーズに対してはアクセス環境を用意することは当然、非常に重要なことで、それも理念として大事なのは分かっているんですけれども、どれぐらい必要なのか、それをやめた場合にどうなるのかが分からない状況の中で、予算は確保しないといけないから、国で契約をしてくださいということにすれば自分たちは楽になるというのでナショナル・サイト・ライセンスにしてほしいという話が出てくるわけです。しかしながら、それだとこれまでの価格上昇を抑える要因にはならなくて、国が予算を確保したら、それで問題が解決するかというと、そうではないと思いますので、そういう各大学の状況、例えば今日、出席していただいた大学の例を公開の中でお話ししていただいたことをまとめて、こういうことになっていますよと明らかにするだけでも、今、どうしたらいいか困っている大学図書館関係者や大学関係者の方々には参考になります。また、状況が大学によっていろいろ異なりますから、一律にこれをやめるべきだ、継続すべきだという議論は適切ではないことはよく分かりましたので、こういったものを事例として公開できる範囲のアイデアをいろいろ提供していって、この場合は実際どうだったのか、全然問題はなかったのか、こういったことが問題だったので、更に改善していくという取り組みをまとめて発信していって、今後できることにつきましては、当然、JUSTICEの方やNIIとも相談しながら、今後はどういう情報提供が望ましいかという方向性だけでも示して、役所としてできることをやって、更に付加的な情報としてそれを蓄積して公開していくことまではできると思います。
 ですので、こういった一概にBig Dealを維持するかどうか、そのコストをどこが担うのかという短絡的な議論ではなくて、様々な現状があって、大学として適切に公開する中で、そのセーフティネットとしてオープンアクセスを捉えて、それはNIIや国としてどう取り組むべきか、また、別途、混乱したというお話がございましたけれども、それとは別に日本のジャーナルをどうするかについては、そういったオープンアクセスを支援するとか、国が日本のジャーナルを戦略的にどうするかに対しては国として支援するところもあるかもしれません。科研費などでもありますし、そういった予算を拡充していくという仕組みもできますので、そういったことは別途、考えていくという形で総合的にこの委員会でまとめていただければ、非常に意義がある取りまとめができるんではないかと感じております。

【浅島主査】  どうもありがとうございました。
 今、長澤室長からありましたように、文部科学省としてもこの問題を非常に真剣に大きく捉えている。重要な課題と考えていただいて、今後、我々はどうするかの提言も含め、各大学が考えている、いろいろな意味で抱えている問題を、これだけ情報が出て、ある面ではこれだけ違いがあることも分かったし、その先はどうするかについても話を進めていきたいと思っています。
 まだ本当はもっと議論すべきこともあるかもしれませんけれども、様々な御意見を本当にどうもありがとうございました。本日、各委員から頂いた御意見等は、事務局で整理いたしまして今後の審議に生かしたいと思っています。
 関川委員長、熊渕事務局長におかれましては、本日は御多忙のところ御出席いただきまして、ありがとうございました。
 また、次回はオープンアクセスについての検討を中心に審議したいと思っております。よろしくお願いします。
 事務局より連絡事項があれば、お願いいたします。

【長澤学術基盤整備室長】  本日の議論はこれで終わりではなく、取りまとめに至る過程で、各大学の取り組みにつきましては、また事務局でお伺いさせていただいて、適宜、補強できるようにはさせていただきたいと思っております。その上で、次回はオープンアクセスにどのように取り組むかについての御議論をお願いできればと思っております。
 本日の議事録につきましては、委員の方に御確認いただいた上で公開させていただきたいと思っております。
 次回は4月21日月曜日、4時からでございますけれども、場所はまた後日、御連絡させていただきますので、できる限り御出席を賜れば幸いでございます。また、今後の日程につきましては資料4のとおりでございますので、その日程の確保につきましても御配慮いただければ幸いでございます。
 本日はどうもありがとうございました。

【浅島主査】  今、長澤室長から言われました資料4に基づきまして、一応、今後の日程については、第1回から第4回まで、今日が3月26日で、次回は4月21日、第3回は5月30日、第4回は6月23日になっていますので、時間等を含めまして皆さんのノートに記入しておいてください。先ほど小松局長からも言いましたように、夏前までにはこれをきちっとまとめたいと思っていますので、先生方には、いろいろ御多忙ではありますけれども、御議論をよろしくお願いしたいと思っています。
 本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――




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