スーパーコンピュータ「京」事後評価委員会(第3回) 議事録

1.日時

平成25年3月1日(金曜日)16時~18時

2.場所

文部科学省 3階 3F2特別会議室

3.出席者

委員

有川主査,浅田委員,宇川委員,大峯委員,笠原委員,熊谷委員,辻委員,土井委員,西島委員,平木委員,南委員

文部科学省

下間情報課長,林計算科学技術推進室長,村松計算科学技術推進室長補佐

4.議事録

(1)開発主体(理化学研究所)からのヒアリング

理科学研究所より,資料1に基づき説明。質疑応答は以下のとおり。
【熊谷委員】  スカラ部で性能が非常に高くなって,10ペタが実現したというのは大変すばらしいと思う。その目標性能が達成されたというのは,それはそれとして,これを読むと何か釈然としない部分が一つだけある。ベクトル部というのは,プロジェクトの最初になぜベクトル部を開発しようと思ったのかという,その理念。例えばスカラ部をチューニングして,ベクトルアプリケーションに対して「京」をチューニングして,10%から20%程度の効率を達成したと。だが,最初のこのプロジェクトを立ち上げたときに,ベクトル部に持たせた理念というのはあったはずである。こういうことはスカラ部では対応できないけど,こういうことはベクトル部でないと駄目だと。それで複合型として開発しましょうと,そういうことがあったのだと思う。そのことについていかがか。
【渡辺統括役】  ベクトル型の大きな特徴は,大量の演算を一度に実行すること。そのためにメモリから大量のデータを持ってきて実行するということが非常に大きな特徴であり,アプリケーションによって演算に対してメモリの出し入れが非常に大きいプログラムについてはベクトル計算,ベクトル部が非常に有効である。それが,ここに書いてあるNICAM,Seism3D。こういったアプリケーションは,ベクトル部のそういう特長を生かしたアプリケーションである。
 一方,スカラ部はベクトル部に比べるとそういうメモリの出し入れのスピードが落ちる。そのかわりにキャッシュという非常に高速のメモリがCPUの中にあり,そこを有効に利用すると性能が上がるという特徴がある。今回,そういう特徴と,それから,ベクトルアーキテクチャーである地球シミュレータで動いていたものをそのままの形で「京」に持ってくれば効率よく動くということが,我々としてベクトル部を選択した一つの大きな理由である。
【熊谷委員】  ベクトル部がなくなったために,不利となった研究分野はあるのか。
【渡辺統括役】 (戦略プログラム分野3の)地球科学である。
【平木委員】  今の御説明は,要するに著しくベクトルが多い応用分野があるということのためにベクトル部を残したという御説明だが,今,私の机の上には,2012年6月に公開された概念設計評価作業部会のベンチマークテストによる性能予測という表が置いてあり,それを見ると,全てのアプリケーションでほんの数割しか性能が違わないというグラフがある。どうしてこのグラフからそういう結論に至るのか。
【渡辺統括役】  そのときの評価に対して,我々はベクトルの特徴をより発揮できるようにメモリのバンド幅を倍にするように要求し,その倍になった性能でそれ以降の詳細設計をしている。そして,絶対性能でいくと……。
【平木委員】  この概念設計のときには,既に理化学研究所はベクトルとスカラを作るということを決心されて,その案を提示された。そのときのそれを正当化するものを見ると,決してベクトル部は,著しく有利な点があるとは見えないグラフがここにある。だから,今の話というのは,これでいけなかったから改善するというのは後付けの理由だと思うが,いかがか。ここにあるのは,概念設計についてという理化学研究所の提出した資料がいかに裏付けられるかという資料である。それに基づくと,今言った話は全然裏付けられていない。それで,後で2倍にしたというのは概念設計が終わって詳細設計に入るときの変更ということか。このとき,委員の方が約束されたのか。
【渡辺統括役】  そうである。複合システムとして決めたときに,そういう構成にしている。
【平木委員】  こういう構成。このグラフが出たわけか。
【渡辺統括役】  いえ,違う。それは,概念設計のそのとき想定していたバンド幅での評価結果であり,最終的に複合システムとして決めたときには,バンド幅を倍にしたもので,そこに提示している。
【平木委員】  それは,じゃあ,評価を受けていないということか。概念設計の評価委員会では,その複合システムにGOが出たわけで。
【渡辺統括役】  そうである。
【平木委員】  そのときにはバンド幅が2倍にされていなかったのにGOが出たのか。
【渡辺統括役】  倍で評価を受けている。
【平木委員】  じゃあ,なぜそのときの資料に,この倍じゃない評価グラフが出ているのか。
【渡辺統括役】  それは,倍にする前であり,時間的な経過を申すと……。
【平木委員】  すみません。概念設計がいいか悪いかは別として,議事録は公開されていると思うので,そこで倍のシステムにするか複合システムが正しいという御発言が理化学研究所からあるかどうか,チェックをお願いします。
もう一つ関連して,今回の「京」は非常に成功したが,非常に残念だったのは,もともと,最初の段階では三つの部分に分かれていたものが二つの部分になったので,現在,諸外国のスーパーコンピュータでは主流となっているアクセラレータ技術の開発が全く本プロジェクトでできなかったというのは非常に残念なこと。それで,なぜそう決めたかということは,もちろん理化学研究所の選択ということで,私は言うべきことはないわけだが,その概念設計の資料の中で,どれだけ電力を食うかという資料が公開されている。それで,その公開の中のただし書で,例えば,天文台が作ったのは10ペタFLOPSを10メガワットで作ると書いてあるが,その後の公開時のただし書で,「実際は1.7メガワットのものを理研が10メガワットと書いた」。これは明らかに評価委員会を間違った方向に誘導するための資料としか思えない。なぜこのように非常に10倍近く間違った数字を挙げたのか。その結果,せっかく盛り上がっていたアクセラレータ技術というものを消し去ってしまったかということを分かるように御説明いただきたい。
【横川運用技術部門長】  盛り上がっていたかどうかは,瞬間的な話なので分からないが,その資料はまず10メガワット以下,10から20,そういう枠で出しているわけである。それで,我々は別に与えられた資料の中で汎用的なもの,最適なものを作るという方向で設計したわけであり,30メガワット以下のもので汎用的なものができた方がいいという判断である。
【平木委員】  その判断は正しいと思うが,この資料に対して明らかにミスリーディングな,実際には1.7メガワットのものを,10メガワット以下としか書いていない資料によってその結論を正当付けたと。私は,もともとこの話が理化学研究所から出てきたときには三つの部分があって,将来につながる大胆な構想だという印象を持っていたのが大きく変わって驚いたわけだが,するとなぜここに1.7メガワットのものをわざと10メガワット以下と書いたのか,御説明いただきたい。
【渡辺統括役】  まず,そもそもから話をしないとそれはちゃんと御説明したことにはならないと思うが,我々としては,これはもともとプロジェクトの……。
【有川主査】  まず今日の資料1に関する質疑を行い,その後で今のような議論が必要であれば行いたいと思う。
【渡辺統括役】  まず,このシステムの基本構想からお話ししないと,これは説明ができない。まずは,スパコンを開発し,最終的には基盤整備で共用法に基づいて広く科学技術計算のユーザーに使ってもらうシステムというのが大前提にあるわけである。そうしたことから理化学研究所としては科学技術計算で広く使ってもらう,使えるものを作ろうということで,まずはアクセラレータ等のそういうものではなくて,汎用の,いろいろなアプリケーションで効率よく実行できる,そういうシステムを作ろうということを決めた。そして,概念設計をスタートしたときに,これは概念設計の評価でも評価されたのだが,我々としては汎用システムで10ペタのシステムを達成しようと。それで,アクセラレータはある特別なアプリケーション,あるいはそのためのチューニングがどうしても必要で,あるいは言語の互換性もないということもあり,それは汎用ではなくて特別なアプリケーションで,非常に効率よく実行できるものである。それはまずさて置いて,まずできるだけ汎用性あるものを開発すること。次いでアクセラレータの検討も引き続き行うこととした。これは,汎用でそういうものができないときにはアクセラレータでもやろうかということでスタートしたわけである。そして,概念設計の結果は,汎用で10ペタというのは達成できるということで我々はアクセラレータを外した。必ずしも電力が小さいからアクセラレータを,性能当たりというのが小さいから採用しようということではない。なので,おおよそで電力については,システム全体で全部ひっくるめて30メガワット以下で収めようという目標を立てていた。これに入っていれば,まずは性能,それからアプリケーション,あるいはいろいろなほかの要素がプライオリティーとしてある。必ずしも電力はプライオリティーが高いものではなくて,その枠の中に収まればこのシステムでやろうということで,今回の概念設計のシステムを決めたものである。
【浅田委員】  平木先生の御意見は分かるが,少し違和感があるので各先生にこの事後評価の目的を確認したい。この事後評価はいわゆる概念設計とか中間評価の評価そのものを批判するための会合なのか。
【平木委員】  それは違うと思う。
【浅田委員】  すると,概念設計,あるいは中間評価でやったものをきちんとオーソライズしたその学術会議,総合技術会議を批判する会議なのか。
【平木委員】  違うと思う。
【浅田委員】  そうすると,一体何を意図されているのか。
【平木委員】  この開発主体である理化学研究所が一貫して正しい方向の開発をしたかということは,この最終評価で評価するということで,委員会については開発主体ではないので問題ないと思う。
【浅田委員】  そうすると,私の手元に先ほど説明された事後評価票というのがあるが,この評価項目の中のどれに相当することを先生は証明しようとしているのか。
【平木委員】  事後評価票の課題の達成状況等の2番,研究開発体制についてである。
【浅田委員】  それで,課題はクリアに提示されていた。
【平木委員】  そうである。
【浅田委員】  そして,それが達成されたということも,皆さんは前回の委員会でおおよそ同意されていると思うが,その過程を先生は問題にされるのか。
【平木委員】  はい。
【浅田委員】  ここは,過程を問題とするところではなく,もちろん将来のためにその過程を批判するなど,それを吟味することは重要であるが,それは今後の展望において議論すべきだと私は思う。そうしないと,議事進行上,幾らたっても,この会議を何回しても全然進まないと思う。
【平木委員】  それはそうである。
【浅田委員】  であるから,先生の御発言は,今後の展望のときにおっしゃればいいのではないかと思う。私も,そのときに申し上げることがあると思って,前回黙っていた。ところが,そこまで行かなかった。今回は是非そこまで行かせてほしい。
【平木委員】  分かりました。
【有川主査】  いろいろ御意見等もあろうかと思うが,進行上,先ほど申し上げたように,前回の宿題に対することをまず議論して,そしてその先に進みたいと思う。
 今回のプロジェクトについては,開発途中で様々な問題が発生し,社会的な注目も浴びているので,そういう意味では様々な意見があると思う。しかし,ある程度その成果を出したものであるので,その辺をポジティブに見ていって,そして最後に今後の課題,あるいは展望というようなことに持っていっていただければと思っている。
【熊谷委員】  今,浅田委員からも御発言があったが,要は,今後を考えたときにスカラ部では駄目だった部分というのは当然あるわけで,ベクトル部でないと最適な改正ができなかったと。それで,その部分は今後どういうふうに手当てしていくつもりなのか。それから,この事後評価というよりは,計算機科学の将来像としてはどう考えているのかというのを教えていただきたかった。
【渡辺統括役】  それは捉え方が非常に難しい御質問だが,何か一般的に決まったものがあるわけではない。将来のコンピュータで,今一番大きな問題になっているのは,将来,2018年とか2020年にエクサ級という「京」の100倍ぐらいのものを作ろうということで文科省も既に検討を始めているが,そこで一番大きな問題になっているのは,性能は上がっていっても,それに比例していく形で電力が上がっていくので,消費電力を上げずに性能を上げる,そういうアーキテクチャーというか,そういうコンピュータシステムが技術的には一番問題で,それがどういうものであるかということを今いろいろ議論しているところである。それがどういうものかお答えするのは非常に難しい。
【熊谷委員】  そうだと思う。私自身も,いろいろな情報を見ても,そういうところできちんと何か答えがあるわけでもないし,多分,こういう新しい先端的なプロジェクトというのは,将来像というのは誰も描けないのだと思う。それで,今最先端を走っている人が一番それに近いのではないかと思っているので,その見識をお聞きしたかった。
【平尾機構長】  個人的な感想だが,これはベクトル対スカラという,どちらがいいか悪いかとか,そういう議論はある種無用な対立軸であって,ほとんど意味がないかと思う。かつては,たしかにベクトル機というのはCIMDなどの加速器があったり,それからBF値といわれた,さっき説明あったメモリとの間のBF値が非常に高いということがあって,そこが売り物だったが,その後,スカラ機もCIMDのような機能というのは山ほど入ってきているし,それから,BF値についてもほとんど同じような,特にパラレル,並列度が非常に高くなってくると同じようになってきている。もちろん,かつてのベクトル機で非常にBF値が高くて,そういう分野がある地球科学などの分野だと,その方が非常にプログラムが走りやすいということがあったが,そういう人たちの要望を酌みとれるのかということをこれからも考えなければいけないと思う。しかし,ベクトルとスカラの両者が全く違うもので,対立するものだという概念で捉えるのは間違っており,なるべく多くの分野の方々に使っていただくようなシステムとしてはどういうものがいいのかという形で議論をすべきで,両者は非常に似通ってきているということも事実である。
【熊谷委員】  分かりました。
【有川主査】  質問の趣旨としては,複合機からスカラだけになったということがあり,なぜ最初にそうしたのかと。これは結果論になるが,そのことに対する一つの評価なり反省なりがあってもいいのではないかということだと思う。
【西島委員】  私も平尾先生と同じように,今の時点になってみると,スカラが,結果として使えればいいということを考えれば,スカラかベクトルのどちらかということについては,この時点では余り議論する必要はないと思うが,最初に浅田先生がおっしゃったように,例えばグランドチャレンジアプリケーションがこの「京」によってどのぐらい加速されてどういう効果が出たという,その部分は実はこの事後評価には含まれていない。だから,先ほど言った戦略プログラムの分野3の部分について,地球科学が,恐らくベクトルを外したことによってうんぬんだということは可能性としてはあるかもしれないが,そこはここで評価すべきことではないから,除外項目だと思う。すると,今,平尾先生がおっしゃった最初にベクトルを入れて,スカラといったことに議論が集中するというのは,全体から見ればそうかもしれないが,我々から評価するとなるとそこが評価のポイントとなってくる。つまり,アプリケーションのことで,これが役立ったなどではなくて,建物に対しての運用体制という部分についてですから,はっきり言えば,本来の部分はアプリケーションの部分だけど,そこの部分の前に完成したものについての事後評価だから,そうすると,やっぱり普通に考えるとベクトルとスカラというものが単なる相加だったのか,相乗効果を狙ったのかという部分で,相加であるならば,やがてベクトルについては,戦略プログラムの分野には確かに影響はあるけれども,現在のスカラをもってすれば,そこはかなりソフト等をスカラ用にして補うと。ただ,最初の大きな目的だった,全体として10ペタFLOPS,この部分は世界一をとってクリアしたと。国民も理解されているという形であれば,総論としては間違っていないと思うが,最初にこれを読んでいて少し気になるのは,ベクトルとスカラ,何としてもこの二つをやることが重要なのだと私も聞いたが,完成してしまうと,結果オーライで,そもそもベクトルはなくてもよかったのかなというのが出てきてしまうと,余りそこを強調されても,逆に少し違和感があるなという感じである。企業が抜けたことはけしからんことだが,ベクトルを切ったことは大変残念だったし,確かに戦略プログラムの分野3にも不利となる部分があったと思われるが,その部分については今後解決するというので,非を認めるということも分かったが,何らかのマイナス部分はあったのだろうなというのが冷静な判断ではないかと思う。ただし,その傷口を浅くするし,その部分を今問いただしても仕方ないという平尾先生の御意見は,基本的に正しいとは思う。
【平尾機構長】  私は最初からこのプロジェクトに関わっている訳ではないが,近くからずっと見ていた。最初に複合機を作ったときには,もちろん目標を掲げて,それで行きましょうということだったと思うが,ベクトル部も入れようということは,ベクトル機というのは日本が世界の中でも技術的にもいろいろな形で引っ張ってきた技術というか,そういうマシンだったこともあって,その後の展開がどうなるかということをまだよく読めていなかったときに,ベクトル機もある一部分を残そうという形で開発を進めたのだと思う。恐らく,当時はベクトルからスカラの方への流れというのは,既に必然的な流れがあったのだろうと思うが,そこが十分読めなかったということは,あるかもしれない。それから経済的な理由でベクトル部を担当していたところが撤退してしまったということは非常に残念であるし,それはある意味で国家プロジェクトとしては残念なことだったと思う。
 ただ,私どもは最初に掲げた目標というのは決しておろすことなく,目標を,例えば10ペタFLOPSという一つの目標を達成しようという形で,そのベクトル部が抜けたところも補う形で,メーカーも含めた関係者が頑張り,目標を達成し,そして本当に広い分野の方々に使っていただくようになっているわけである。確かに分野3のように地球科学の方々にとっては,期待していたベクトル部がなくなったということで,そのプログラムの書換えが必要になるなど,そういうところはあっただろうと思う。それは私どもも随分お手伝いをさせていただいて,現在では実行効率が20%を超えるような形で,スカラのマシンでもきちんと動くような形になっているので,もちろんいろいろな意味でマイナス点はあったと思われるが,それをできるだけ最小限にしてここまで来たということが現実である。
【南委員】  前回,前々回と欠席をし,また専門外であるので,ピント外れかもしれないが,私自身,実は事業仕分けで,例の第3ワーキンググループの中でこのスーパーコンピュータを担当した者なので,その時点で引っかかったことと,今回の評価の問題で一つだけ質問させていただきたいと思う。
 資料1の3ページのところに,NECが経済状況の悪化によって製造に関する投資が業績に大きな影響を与えるからということで不参加を表明した。これは事業仕分けのときにもそういった御説明が文科省からあり,実はそのときの議論で,NECに対して損害賠償をするのかといったときに,するつもりだというふうに文科省の方はお答えになった。その時点ではその時点でいいのかもしれない,その後どうなったのかはよく分からないが,今日お話を聞いていて,そのベクトル型とスカラ型の複合型,それがNECの離脱によってスカラ型となったというふうに当時説明されていたような気がする。もう1度議事録を見なければならないが,とすると,今の御説明の中で結果的にNECが離脱したけれども,スカラ型となって結果オーライだったと,ずっと評価委員の方がおっしゃっているが,私も結果はよかった,目標達成できたということと思うが,そのベクトル型,スカラ型の融合ができなかった最初の要因はNECの離脱だったのかどうか。あるいは,このNECの離脱そのものが資金的な面なのか技術的な面なのか,そのあたりをもう少し明確にしていただきたい。つまり,これからの,何らかの形での開発体制のときにどういう組み方をするのか。あるいは企業との関わり方がどうなのかというところをもう少しきちんと評価しておいた方がいいのではないかと思い,あえて申し上げた。
【渡辺統括役】  まず,損害賠償については,我々も損害賠償請求をし,最終的には調停で解決している。それから,NECの離脱でスカラ型になったのかという御質問。
【南委員】  それが契機になってという意味である。
【渡辺統括役】  資料1の3ページ目に書いてあるように,中間評価の4月22日にシステムを見直せという話があり,これは前回もお答えしたが,そのときに我々としてもいろいろな選択,スカラをなくしたらどうなのか,あるいはベクトル部を減らしたらどうなのか,あるいは完成時期を遅らせたらどうなのかと,いろいろな検討をしていた。そのときに,最終的にNECが5月に撤退という話があり,その時点でスカラ単独に決めたということ。
【南委員】  私の質問の趣旨は,それが技術的な要素が大きいのか,企業の財政というか,資金的な面が大きいのか。
【渡辺統括役】  企業の資金的な面である。ここに書いてあるとおりで,それ以降の製造に対する投資に耐えられないと。製造設備その他投資が必要でございますけれども,そういうものについて耐えられないということで。
【南委員】  そうすると,逆にNECが企業として,更に大きな会社で,体力があって,ずっと将来を見越した上での投資が継続できるということになっていたら,この中間報告も含めてベクトルがスカラ型に一本化されたことがあったのか,ないのか,そのあたりはいかがか。
【渡辺統括役】  それは,最終的には「たられば」の話になり,どうなるかということについては分からない。
【南委員】  そこは大変大事なことだと思っていて,NECの財政的な,要するに会社経営的な問題で複合型が単一型になったとすると,これは技術的な評価が一体どこで行われたのかという問題が出てくる。そこをはっきりさせたいので聞いている。
【横川運用技術部門長】  理研としては,その時点ではあくまでも複合型でやっていこうと思っていたわけで,そういう意味では,その後の評価でどういう評価を受けたかは分かりませんけれども,その時点においても何らかの形で複合型を追究しようと思っていた。
【南委員】  では,そういう意味では,もしNECが離脱しなければ,ずっとその複合型で行ったよということか。
【横川運用技術部門長】  それは理研としてはそう提案をするつもりでいたわけなので,その後の評価でどう変わるかは,それは我々は分からない。
【林計算科学技術推進室長】  中間評価では,アメリカの計画が加速してきており,中間評価の中で説明した理研のそのままの計画では目標達成は困難ではないかという話と,そのときに理研の説明にあった複合システムというものがまだ性能が十分ではないので一定の見直しが必要ということで,要は中間評価の最初の段階で,複合システムの在り方も含めてプロジェクトの目標達成を念頭に置いた最適なシステム構成を再検討せよと理研が言われているところであった。それを受け,理研が検討している中でNECが撤退をしたということで,もし仮にNECが撤退しないで,理研がそのときにどういうものを中間評価委員会に出されたかと,これはもう仮定の話になるわけで,どういうふうになったかはよく分からない,ということだと思う。
【南委員】  もし,仮に時間軸,つまりアメリカの開発がずっと進んでいたので,理研の当初の概念ではちょっと時間的に間に合わないぞと。しかも,NECもそういった意味で資金的にもつらいというようなことが本当にあったのかどうか,そこのあたりをもう少しはっきりとしていただけると,次の開発や今回の評価についても,どういう資金投入でどういう効果が生まれたのかということについて,もう少し明確な評価ができるのではないかと思う。
【有川主査】  資金的に問題がなくてNECがずっとこれに関わってくれていたらどうだったのかということは,ある意味では大事なことだと思うが,実際にはおりてしまったので,そこにこだわることはできない。それから,開発の時期,時間的なこともある。そういった中で一つの判断がされて,刻々と変わらざるを得ない状況にあって,そして,それぞれの時点で最適な判断をしながらやってきたということだろうと思う。そういう意味では,確かにこの結果が出た後で振り返ってみると,いろいろなところに議論すべきことがあったようにも思う。それは先ほどから言っているように,今後これを教訓として生かすことがあるとするならば,そこでどう残していくかということだと思う。
【南委員】  私は別に批判しているわけでも何でもなくて,この問題というのは私にとって非常に大きかったのは,そもそも最初の概念設計そのものというのがどうだったのかという議論と,それから,そうは言っても様々な要因,アメリカの要因,企業の要因,資金的な要因,いろいろありながらも,当初の概念に対して非常に柔軟に対応しながら一番効率よく目標を達成することがある程度できたのか。そうすると,目標設定の問題とプロセスのマネジメントの問題というのが両方あって,もしそのマネジメントの問題を非常に評価できるとしたら,今後,これは相当大きな教訓として,今後柔軟に様々なことを捉えていくということに結び付くし,もし最初の概念設計がそこに行き着くとしたら,概念設計のところでもう少し慎重な議論が必要だったのではないかということにもなるだろうと。その辺,どちらかは今後もう少し検証してもいいかなと思ったので,あえて申し上げたところである。
【笠原委員】  今の御質問の中で,概念設計委員会のときに,この議論を非常に多くやった。複合型にするか,一本にそろえてもっと高い性能を出すか。私自身は片方にそろえて,もっと高く,16でも17でも出そうという意見を言った。そうしたら,最終的には,概念評価委員会としては複合型でやるという結論になった。いろいろな意見の人がいたが,みんなでディスカッションをして,一応委員会としては最終的にそういう結論になったので,それはそれでやむを得ない。全く議論しなかったわけではなく,議論を尽くしてそうなったということ。
 先ほどの,結局作り始めてみたらやっぱり勝てそうもないとか,技術的にも,この前のときに我々は遅れているイメージを持ったという話をしたが,それが人によって違うのかもしれないということもあるので,いずれにしてもあの時点では,NECがおりる前に委員会では見直しをするということを決めていたと。委員会としてはベクトルはもう諦めようという気持ちになっていたわけである。なので,もしNECが続けていても,多分委員会の意見を聞いて理研が回答したとすればやめたことになると思う。
【浅田委員】  私も概念設計と中間評価にいた人間で,今思うと,スカラ,ベクトルの複合の前に,アクセラレータのあった姿も覚えている。ただ,それがなくなったとき,多くの委員,少なくとも複数の委員から,いわゆる世界のHPCのトップに関して,そういうアクセラレータで,それだけのために1位をとるのが認められなくなる可能性が高いという議論は出た。ということから,要するに理研の考えを支持するのが当然であって,ある程度の汎用性を持っているものでなければ,これから評価されなくなる可能性が高いと。これは日本がとってしまえば今後もそういう可能性もあり,そういう意見が出た。
 それから,私の記憶している限りにおいては,概念設計でもトップをとるというその一つの目的は,あくまでもスカラ型に集中。だから10ペタとか十数ペタに置いたと思う。あとの総合的な使い勝手における有効利用率,それからバックワード・コンパティビリティと,さっきNICAMとおっしゃいました。ああいう種類のものを考えるとその方がより良いだろうという意見があった。
 その中でも,今,笠原先生がおっしゃったように,一つにまとめれば,より高いものがどの程度できるかということに対して,若干不透明な議論というか,私どもにもはっきり分からない議論があった。これは,その後の今後の展望で申し上げるつもりでいたが,前回の議論の中で日本とアメリカとの投資構造の違いを大分言っておられた。つまり,日本は,この「京」のために1,100億を投入した。その中に,開発費用もあり,それから,これの製造コストもあり,ソフトウェアコストもある。それに対して,アメリカは,いわゆる開発コストは別の予算で充当されているというところがある。
 更に,NECにしても,富士通にしても,自分の持ち出し分が必ずなければ,これはできないということも,当時からわかっていた。それは現在でも,アメリカと日本でどれだけ投資して,これだけの差のものができたということがわかれば,おのずとわかる話だが,それは数字として我々は知っていなかったわけだが,相当の持ち出し分がなくては,これはできない。持ち出し分は,たとえその予算を一つの方向に固めたとしても,会社の体力上,これ以上出せないという部分がある。そういう環境のもとで,最も有効に将来使われる,そして,評価もされるものは,この概念評価であり中間評価。そして,中間評価の中でも,もしNECが抜ければ,時間的な遅れはあったとしても,この複合型ができたと,当時私は思っていた。
 というのは,中間評価で議論したのは,複合型かどうかではなくて,いかに一番を取るかということであって,一番を取るには,初めからスカラで集中しなければならないので,スカラをどうやって速くするか。それで,100億円ほどのプラスをお願いしたいという結論になったのであって,そこでは,複合型を切る,切らないという議論は中間評価そのものではなかったし,いかに効率よくするかというところに,私はあったように思っている。
【有川主査】  ありがとうございました。資料1については以上で,参考資料1の「4 研究開発の成果等」から最後までいって,そして御意見等があれば承るということにしたいと思う。それでは,参考資料1の「4 研究開発の成果等」について,御質問があれば,お願いしたいと思うが,前回御欠席の委員もいらっしゃるので,繰り返しになるが,理研から少し御説明をお願いしたい。

理科学研究所より,参考資料1に基づき説明。質疑応答は以下のとおり。

【平木委員】  前回も,若干触れたが,今回成功したのは,本当によかったと思うが,今後のプロジェクトの下方展開をプロジェクトの目的と考えると,やはり価格の問題というものは忘れてはいけない。
 それで,前回も今回も,米国はDOE,DOD等からの資金援助があるから製品の価格が低廉にできて,日本にはそれが少ないからという御説明があったわけだが,全てのメーカーについて知っているわけではないが,例えばクレイはそうだと思うが,少なくとも「Blue Gene」シリーズに関しては,独立採算で開発を行って,「京」の半額以下の値段で売れるということが厳然たる事実なわけである。もちろん今ここに証拠を持っていないが,もしその言明が欲しければ,IBMから,その書類をとることはできる。
 そうやって考えたときに,やっぱりコストが高かったことをどう反省するかということは,今後の展開を考えるときにすごく重要な問題で,これを破らないと,国内の計算センサーですら,近年の調達でクレイが入ってくるなどの状況なので,その辺を今後どういうふうに展開するか,又は,そのことを,どう捉えていたかということをお伺いしたい。
【渡辺統括役】  話を混同しないよう,プロジェクトのコストと,メーカーが製品展開したコストと別に考える必要があると思う。前回は,プロジェクトのコストとおっしゃったので,私は研究開発と製造コストというものがあると。それを全体見たときは……。
【平木委員】  いえ,私もそれを問題にしているので,例えば正確な値段はちょっと覚えていないが,10ペタFLOPSと少しを出すのに,500億から600億のお金を出しているわけで,同様のものを米国から調達すれば,半額以下の価格で調達できるということをどうお考えかということをお伺いしている。
【渡辺統括役】  これは国家基幹技術ということでやっており,国の技術でやろうということが,まず大前提にある。ということから開発費も全て含んでいるわけである。
 もしそういうことを評価するのであれば,これはプロジェクトのスタート時点で,1,154億,システムの開発費がこれだけ,アプリケーション開発はこれでと,もう最初に決まっているわけなので,その時点で評価すべきものであって,なぜこの時点で評価するのか疑問に思う。
【平木委員】  本プロジェクトでは,いわゆるナショナルシステムをつくることは重要であるが,その技術の発展によって下方展開し,日本の計算資源全体がかさ上げされるという説明を,繰り返し,繰り返しされてきたと思う。それは正しい考え方だと思うが,今のコストの問題というのは,まさにそこにかかわってきているので,今の説明は,その辺をちょっと違う方角から見ているのではないかと思う。我々は,できたものに対して,それが広まってほしいと本当に思っているときに,このコストの問題を忘れてはいけないし,それは次の開発をするときも,非常に重要なポイントであると学ぶべき点ではないかと思っている。そのあたりはいかがか。
【渡辺統括役】  まず,下方展開は,この「京」で開発された技術をベースに,今,富士通が行っているわけで,その値づけというのは,我々理研がコントロールできるものではない。
 よって,富士通がそこに,例えば開発費をどれだけ上乗せしている,あるいは,固定費の回収をどうしているか,そういうことについては,我々は全く関知できるものではなく,富士通のポリシーがありますので,そちらに大きく依存することになると思っている。
 ただ,我々としては,その技術を富士通が技術展開できるように,そういう形で開発をしてきたつもりである。
【平尾機構長】  もう一つの観点は,私はやっぱり国として,国家として,日本がこれから先も科学技術立国として立っていくときに,スパコンというのは,本当に現代の科学技術,あるいは産業の国際的競争力をつけるという意味では,非常に重要な基盤になっている。国として,その技術をいかに維持するか,継承していくかということも,非常に大きな観点だろうと思う。もちろん,日本でつくったものが,アメリカのものに比べて若干高いということは,それはそのとおりだと,客観的に見てもそうだと思うが,それでは,安いからアメリカから買ってきたらいいのではないかという議論には,すぐにはならないと思う。
 「京」を見ていただいたらわかると思うが,非常に安定したシステムである。信頼性もあって,例えばチップ等をインテルから買ってきたら,人のことを悪く言うのははばかられるが,正直なところ,あんなふうには動かないと思う。
 だから,これから先,できるだけ経済的につくる,効率よくつくるということはもちろん重要で,その観点を忘れてはいけないと思うが,国として保持すべき技術は一体どこなのかということは,やっぱりきちっと押さえておかなければならないと思う。その議論も同時にお願いしたいと思う。
【笠原委員】  私も,ずっと評価委員会を通して感じていたのはその点であって,ユーザーに対して,安く買ってきて提供するというものと,日本の将来の競争力を高めるために,日本で技術をつくるというのは,また別の観点があり,我々は,日本の将来を支えていくために,こういう技術をつくろうということで,このプロジェクトにかかわってきたわけである。
 そのときに,コストというのは,十分高くても,ゼロから始める国と,前からあって製品化している国があったら,ゼロから始めるのは明らかにお金がかかる。我々はゼロからではないが,そういう製品がないところで開発をして,世界最先端のものをやろうとしたら,お金がかかるのは,ある面やむを得なくて,それが将来にわたって回収できればいいというふうに考えれば,日本としては,この技術を開発する必要があったと思う。
【浅田委員】  そのことについて,私も高いと思っているが,ただ,我が国の半導体全般に言えることと関係がある。現在のこういうマイクロプロセッサーのコストというのは,その前の世代,前の前の世代がどれだけの市場をとったかということでコストが決まるところもあるので,一概に,日本が高いと言って,それを手放しにして,そのままにしておけば先に続かないというのは,笠原先生おっしゃったとおりだと思っている。
 それが典型的にあらわれているのは,ここに使われているテクノロジーが65ナノと45ナノということ。これは地球シミュレータのときも,たまたま中間評価で携わったのだが,いかにもコンサバティブな技術を使っている。あのときは今回以上。それで今回は,それよりはチャレンジングだが,アメリカに比べたら,大変コンサバティブである。
 それは二つの理由があって,今,平尾先生がおっしゃったように,安定,信頼性を重要とする,これはとても重要な観点だと思う。もう一つは,今までの市場をどれだけとってきたかということで,次の世代に対して投資ができているかどうかというところで,大きく差がある。
 最終的に平木先生がおっしゃったような売り物としての価格面では,なかなか手ごわいというか,勝ち目が少ないと思っているのは,平木先生と同意見。これは世代の違うテクノロジーでつくっているわけで,これはそのままでは勝てないというのが,半導体の常識である。
 なので,価格の議論をするのは,これは日本の将来展望ということで申し上げているのだが,継続的な投資をどのようにやっていくかということに関係するのであって,スナップショットでとらえても議論はできないと思っている。
【西島委員】  せっかくここまで来たので,買ってくるというのは論外である。これは高いというよりも,それだけの投資をして,使う側は共用促進法でリーズナブルな価格で使ってもらうと言うのが分かりやすい。例えば放射光では,スイスやヨーロッパにタンパク質サンプルを送ってその構造解析が実施可能としても,全てを海外で実測すると日本では全然人材が育たないし,伸びていかない。
 そこで,人材育成という観点で質問したいのだが,所期の目標に対して,例えばソフトのアプリケーションなら,そういうものについて,どのぐらい人材育成というのがなされたのか。
【渡辺統括役】  私が理解しているこのプロジェクトの中の人材育成というのは,計算科学研究機構を中心にして人材育成を図るということであって,このシステム開発それ自身の中で人材育成というのは,そういう理解はしていない。
 ただし,技術を発展させるという一環として,技術者が,そういうプロジェクトの開発を通して,設計技術なり何なりを身につけて育成されたと思っている。
【西島委員】  メーカーの人材も育成されているということか。
【渡辺統括役】  そうである。
【有川主査】  参考資料3,事後評価シートの評価の視点の成果のところに人材育成という項目がある。これは,この種の施策に対して評価するときに必ずあるわけだが,これは事務局から人材育成について少し説明しておいていただいた方がいいかと思うが,いかがか。
【林計算科学技術推進室長】  参考資料3の事後評価シートはこれ自体が情報科学技術委員会で決められている様式で,その中に,成果の一部として人材育成が入っている。
 プロジェクトによっては,目標に立ててやっているものもあるかもしれないが,この中では,成果の中で人材育成として入っており,この「京」のプロジェクトとしては,目標の中には具体的には入っておらず,目標は10ペタFLOPSの達成ということと,COEをつくっていくという2点である。
 したがって,そういうことをやっていく上で,成果の中で人材育成というのがあるのは,最後の4ページの「事後評価の論点」の5番目の項目に「人材育成」と書いてあり,国費をかけて研究開発をやって,ある意味で単発で終わっているのでは意味がないということがあるので,本施策を通じて育成した人材が,今後の研究開発や国際競争力の強化に貢献できるようなものになっているのかということを評価すると。また,それを育成するための方策が適切だったのか,そういった観点から,ここに成果の一部として,人材育成というものが入っているということだと思う。
【西島委員】  例えば参考資料2の29ページに「人材育成について」という項目で,理化学研究所,アプリケーション開発者の育成,メーカーの人材育成という記載があるが,この辺を踏まえて,事後評価シートを書けということか。
【林計算科学技術推進室長】  そういうことになる。
【西島委員】  私が言ったのは,この部分について,さっき言った理研,アプリケーション開発者の育成,メーカーの人材育成に対して,コメントがあるかというのが趣旨であった。
【平尾機構長】  「京」のプロジェクトは,今までのスパコン開発とは随分違っていると思う。これまでは,どちらかというと,システムを開発するというところにドンとお金をかけていたわけである。
 この「京」のプロジェクトになって,実は初めてアプリケーション,使えるソフトウエアもつくりましょうと。そのために,戦略分野という五つの重点分野を決め,そこで人も育て,研究も,ブレークスルーをそれぞれの分野でなしましょうと。あるいは,そのための拠点となるような研究所を「京」のそばにつくりましょうという形で,これまでシステム,ハード面に非常に偏っていたものを,今回のプロジェクトでようやく,少しずつバランスをとって,ソフトウエアやアプリケーションにも目を向けて,計算科学と両方をきちっと進展していきましょうという形になったと思う。
 特に,戦略分野という五つの分野が決められており,これは,それぞれの分野,大学,研究所にいる全国の方々がかかわり,その中で,それぞれの分野で人材育成をどうするのか,あるいは,ソフトウエアの開発をどうするのかと,一生懸命やっている。これから先,そこから非常に多くの人が育っていくのだろうと思っており,実際に,その中で,すぐれた方々が出てきている。だから,決して人材育成がないわけではなくて,活発になされていると思っている。
【有川主査】  結果的には,大変優れた人材が育成されているということで,先ほど渡辺さんから御発言あったのは,人材育成を第一の目的にしてやっているわけではないということだったと思う。
【平木委員】  私の記憶がもし正しければ,最初から,計算科学の人材及びメーカー等における技術人材の育成というのは,プロジェクトの目標に入っていたはずだが,その理解でよろしいか。それが達成されたからよいと思うが,御説明が違っていると思う。
 随分前に見た資料に,そういうふうに書いてあったと記憶している。
【林計算科学技術推進室長】  それは目標として書いてあったのか,こういう効果があるといって書いてあったのかによって,少し違うと思うが,最初は概念設計して,このプロジェクトを立ち上げて,いろいろなところに説明する中で,恐らくそういうものもあったのだろうと思う。
 ただ,それを最終的に,このプロジェクトの目標として定めて,もう一回,概念設計等に出したときの目標については,以前も御説明したように,明確には書いておらず,LINPACK10ペタFLOPSというものとCOEをつくると,その2点が大きな目標になっている。当然プロジェクトを立ち上げるときには,それだけを説明するのではなくて,これをやると,いろいろな波及効果があるということで,人材育成など,そういったことも当然説明するわけであり,ゆえに評価シートにも入ってきており,理研も,そういうふうに説明しているということだと思う。
【平木委員】  逆に,概念設計のときに定めた目標の中には含まれていないけれども,当初から,やっぱりそういうことはスコープに入れつつ,プロジェクトを進めてきたという理解で,我々は考えてよいと。
【林計算科学技術推進室長】  よろしいかと思う。
【有川主査】   それでは「5 今後の展望について」改めて追加で御意見等があればお願いしたい。
 【浅田委員】  それでは追加で,先ほど将来のこういう技術について,どうすべきだという基本的なことは申し上げたが,今回,二つの会社を選んで,複合システムをつくらせたわけだが,結果的に片方が落ちたということ。これは現在,あるいは,このシステムが,計画がスタートしたとき,日本の半導体業界は大変に苦しい状況に置かれていた。にもかかわらず,従来どおり――従来というのは,例えば地球シミュレータのときと同じように,ある程度の開発は,その会社が責任をとって,過去も現在も将来もやるという前提のもとで予算を組み,やってきて,安心してそこにお願いしていたところ,それがうまくいかなくなったということの一例だと思う。
 これが,商売の状況によっては,富士通が抜けたっておかしくなかったと思っている。そうしたときには,NECが一生懸命頑張って,それが5ペタぐらいやったかどうか知らないが,ある程度,全く成功しなかったという形にはしなかったと思う。
 なので,私が今後のことについて申し上げたいのは,これから今までのような,いわゆる投資の枠組みを前提とした,こういう大型の国家プロジェクトをやると大変危険であると。つまり,会社の体力というのは,従来どおりでは違うのだと。やり方としては,もちろん金額を積むということもあるかもしれない。あるいは,先ほどあったDODその他のように,もっとナショナルセキュリティーに関係するような予算を積んで,そういう基礎技術をエンハンスするということもあるかもしれない。
 私が申し上げたかったのはそこで,結局,そういうことをやらないと,今後はうまくいかないというターニングポイントとして,一つの会社が抜けたということが起きたのだと解釈している。
【笠原委員】  私も,今の御意見と関連して,そういうことを前申し上げたことがあるが,地球シミュレータがあって,「京」があって,次があって,その時々に調達というか,研究開発を委託してつくるという方式では,今の日本の産業界を見てみると,非常に弱体化しつつ,苦しい状態になっているので,本当に国家基幹技術として,この技術を残さなければいけないのであれば,ふだんからそういうメーカーを育てて,ちゃんと残していくようにしなければ,浅田先生が言われたように,次はもうない可能性もあると思う。本当に必要であれば,いつでも競争力を持つように育成して,その製品も競争力が保たれるような施策を講じてやっていかない限りは,もうスパコンはつくれなくなるというふうに私も思う。
【有川主査】  競争力という面と,先ほども話題になったが,やはり人材は,しっかりといろいろな機会に育成しておかなければ何もできないわけであるが,問題はどこが仕切るかということになると思う。文科省プロジェクトだと,必ず人材育成が伴うので,そういう意味では,ある種の次世代に対する布石を打つことができると思うが,一方で,担当する企業をどう育成,確保していくかという問題は,これは少し文科省から離れるかもしれないが,国としては,当然考えていかなければいけないのだろうと思う。その点についてはこれまでも,様々な形で検討されてきたわけだが,ここへ来て,今度は新たな観点から考える必要性が生じたのではないか。要するに,従来立ち上げの段階について検討されてきたが,これからは,そういった体制を維持するために投資しなければいけないということではないかと思う。
【土井委員】  私も概念設計から参加させていただいており,今,昔の議事録を見返していたが,浅田先生が,笠原先生が言われたことはそのとおりで,最初の概念設計のときには,一つ,スカラならスカラにして,予算を投じてやれば,10ペタよりも,もっとできるのではないかという議論があった。
 そのときに,ただ,企業側も負担をしなければいけなくて,それはとてもできない話だという,そういう御説明であり,それに納得し,スカラ一本でやるというのは無理ということで,スカラ,プラス,ベクトルというところに納得した。中間評価のときには,そういう意味では,ここら辺は少し認識が違うかもしれないが,4月末の中間評価のときには,多くの先生が構成を見直すべきだというお話をしたが,それは,スカラの性能が随分よくなって,これだったらば一本でできるのではないかというふうに判断された方が多かったので,そういう御意見が出たのだと思っている。
 ゆえに,最初からそれがなぜできなかったかということを振り返ってみると,やはり御指摘の,企業がお金を負担しなければいけないこと,政府が立てたグランドチャレンジに対して,企業がお金を負担しないとできなかったが故に,そこで本当に正しい開発ができたのか,そういう意味では,少し疑問はあると思う。国家戦略としてやる以上は,きちんと正しく予算をつける枠組みが必要ではないかと思っている。
【熊谷委員】  一つだけ,人材育成のところでお聞きしたいのだが,今までの議論を聞いていて,このスパコンをつくるに当たって,いろいろな設計や製造に関しては,メーカー側に技術が残っているというのは承知した。では,理研には一体何が残ったのか。どういう人材育成が具体的に理研の中で図られたのか。
【渡辺統括役】  ここに少し書いてあるが,理研が実際,細かいデザインをしたわけではなくて,一言でいえば,全体としてのプロジェクトマネジメントを行った。
これは大規模なシステム構築であるので,一つの例でいくと,効率よく動かすためにはどういうシステム構成であるべきかと。そのためにはどういうデータを集めてくればいいか,どこをポイントに評価すればいいか,コンピュータではアーキテクチャーと言うが,どういうところがポイントであるか,それから設計の過程がどういうものであるか,ハードでいけば,どういう過程をとって設計していくのか,あるいは技術のポイントがどこにあるか,どこを押さえればできるかできないか,それからスケジュールの立て方はどうしたらいいか,一言でいうとそういう全体のプロジェクトのマネジメントであり,それはやはり経験した者でないとわからないと思う。
【熊谷委員】  年代としてはどのぐらいの年代の方に蓄積されてきているのか。いわゆる,こういう大きなプロジェクトというのは,10年や5年で次のステップにいくわけではないはず。
【渡辺統括役】 概ね35から45歳ぐらいの年代と思う。
【熊谷委員】  そういうノウハウが残されたと。だから,次のステップに行くときに,その人たちが20年後だと55歳ぐらいになっていて,ちょうど新しいプロジェクトのときには中心人物になり得るような人材が育てられたということか。
【渡辺統括役】  その人の資質にもよるが,全体をどういうステップでどういうことを考えればいいかということについては,かなりノウハウを持ったと思う。
 実際,物をつくる工程,例えば工場で,どういう生産設備でどういう過程でつくるとか,あるいは半導体はどういう過程でつくるかということについても全くの無知だったけれども,そういう蓄積もあったと思う。
【熊谷委員】  多分,新しいプロジェクトを進めるときには,ものをつくる現場の水準,レベルがどの程度になっていて,将来,例えば10年先にはどのぐらいのレベルになっているのかということも頭の中に入れておかないと,マネジメントはできないと思う。そこが,今回きちんと訓練されたという理解でよろしいか。
【渡辺統括役】  はい。
【大峯委員】  今の人材育成のところだが,どこまで含めるべきかが必ずしも明快ではないのでお願いしたいのだが,人材育成,例えばHPCIの基礎をつくっている部分というのがあって,根幹にかかわるものをつくっていて,学問的に伸ばしていこうというラインが,この中に入ってはいるのか。入っているが,今回の評価の中にそれを入れるかどうか。それをまずお聞かせ願いたい。
【有川主査】  実際には,相当なことをやって,それを通じて新たな領域に入っていったなど,学問的には当初考えた以上の人材も生まれてはいると思う。
【大峯委員】  だとすると,気になっているのは,学問というのは国際性が大変重要で,今の流れは国内ということが言われているが,やっぱり学問のトップをつくっていくのは,国際性を求められる時期が来る。そうすると,理研としては,そこら辺はどう考えていくかということも将来に残していきたいところがあり,将来的なリコメンデーションとして,そのあたりをお聞かせ願いたい。
【有川主査】  この参考資料2などの成果発表などから,そういったことがある程度は見られると思うが,平尾先生。
【平尾機構長】  今,神戸のスパコン「京」のそばに,計算科学研究機構という「京」を運用する機能と,それから同時に研究をする機能,計算科学の日本の学問を振興させるという機能を持った研究所ができている。今,国際的にはいろいろな意味でコンペティションをやらなければならないのだが,同時に,コーポレーションというか,連携もやらなければならないということで,国際的な研究協力を非常に大きな目標に掲げてやっている。人材に関しても外からできるだけ人を招いて,一緒にやって,国際性を高めようとしている。人だけの比率でいくと,もう20%ぐらいが海外からの方である。チームリーダーはまだ一人しか海外の方はいないが,これからおいおいと増えていくと思う。
 たまたま,今日も3回目の国際シンポジウムを開催しているなど,国際的なシンポジウムというのはたくさん開催されており,それから海外との主要な機関とのMOUや協定なども,もう既にアメリカは,イリノイ,アルゴンヌ,それからヨーロッパはプレイス,それからオーストラリア,それ以外のいろいろなところと協定を結び,これから連携を深めていこうとしている。そういう意味では,日本としてのフラッグシップのインスティチュートという位置づけとともに,世界の中のこういう計算科学のCOEとして私どもは新しい拠点を形成していきたいと思っており,外にひらかれた拠点としてつくっていきたいと考えている。
【南委員】  COEの概念は非常によくわかるが,ただ,やっぱりこの計算機の技術そのものが,先ほどからの議論でナショナルセキュリティーの問題もあり,そこでの兼ね合いをどうつくるのか。例えば,宇宙開発や素粒子などは,国際協力で,資金的にも人材的にもそれが人類の共通の課題として,小さな競争というのか中の競争の中にもかかわらず,目標としては一つかなり大きなものだと。そうすると計算機の未来は一体どこにあるのか,そのあたりはいかがか。
【平尾機構長】  もともと計算機,スパコンというのは,光と陰の部分があり,陰の部分,軍事用にスパコンを開発しようというのがスタートであったので,これはもうずっとアメリカ,中国をはじめとして引きずっている。唯一日本だけがそういう面ではなくて平和目的のためにスパコンを利用しようということをやっている。もちろん「京」は国際的にひらかれたものであり,研究者が「京」を使いたいというということであれば,プロポーザルを書いていただき,それをピアレビューして,審査に通れば使えるという形になっている。
 もちろん,その条件の中には,サイエンティフィックなエクセレンスが重要,社会的なインパクトが非常に重要であるとか,そういうことはもちろんあるが,その中の一つはもちろん,平和利用が入っている。私どもはこの「京」を,スパコンというのはこう使うんだよという形で世界に示したいと思っている。
 先ほど,スパコンというのは科学技術の最先端を更に伸ばすもの,ブレークスルーするもの,あるいは産業の競争力をつけるものと言ったが,同時に私たち地球人というか,人類が抱えている様々な課題がある。温暖化の問題,環境問題,あるいはエネルギー問題,いろいろな国での高齢化による医療の問題など,様々な問題があるが,こういう人類が抱えている課題の解決にも,スパコンというのは非常に大きく役立つと思うので,そういうところでは,私は国に閉じることなく,もっと世界と一緒になってやっていけるのではないかと思っている。そういう意味では,国際的な連携も深めてやっていきたいと思っている。
 ハードの開発に関しては,確かに競争というところがある。一方で,できたものをいかに活用するかというところでは,大いに国際協力をやりたいと考えている。
【南委員】  利用に関する国際協力というのは,それはよくわかる。ただ,技術開発ということになると,それは地球シミュレータの歴史をたどってみると,次々と大型化してくるし,専門的になってくるし,その中間の評価そのものが非常に難しくなってくるという段階だと思う。そうすると,この「京」では,今回はいろいろな中間評価その他で,いろいろ紆余曲折がありつつも何とか形になったと。でも,次のステップを当然にらまなきゃいけないというときに,日本単独でいくのか,そうはいってもアメリカ,中国は見向きもしてくれないから,さあどうするのか,その展望は今回の事後評価の今後の展望の中に含まれるのか,そうでないのかというところ。
【平尾機構長】  LINPACKという値がいいのかどうかわからないが,LINPACK指標によるトップ500で,「京」が2期続けて1位になった。1位になったことで世界も日本に対して一緒に共同研究しましょう,あるいは連携しましょうという形になったわけである。世界最先端のものを持っていなかったら,正直,声もかからない。ゆえに,これは次につなげる意味でも非常に重要である。それはハードの開発も連携をすることもあるかもしれないが,システムソフトウエア,あるいはアプリケーションのソフトウエアのところで一緒にやりましょうという声がたくさん来ている。
 これは,もちろん「京」がトップをとり,そして世界最先端の科学的成果を出せるようなマシンであることが前提になっている。これがなければ,なかなか国際的な影響力を及ぼすことはなかなかできないだろうと思うが,そういう意味では幸い,世界は見直してくれたので,それを基盤として国際連携を進めていきたいと思っている。
【南委員】  そういう意味では,今回の「京」は非常にうまくいったと思う。冒頭申し上げたように,事業仕分けの中で1位をとるかどうかの議論はそんなに大きな議論ではなかった気がして,むしろ開発の中で,中間評価その他の中で,ほんとにできるのかという議論は,随分繰り広げたような気がしている。
 マスコミの中で,1位か2位かという,蓮舫議員が度々登場しているが,議事録を見れば,あれはマスコミが編集しているだけの話で,あんなに「なぜ2位なんでしょう」「なぜ1位じゃなきゃ駄目ですか」と,くっつけてしゃべっていることは全然ないわけで,それが世間的には,1位か2位かの議論となって,1位を否定したと見られている。そんなことは事業仕分けの中の議論では重要なことではなくて,これだけの国費をつぎ込みながら,ほんとにこれだと1位がとれるんですかねというところで,ここに書いてある中間評価の段階がまだあの当時では非常に曖昧だったこともあったので,そういった議論になったかと思う。
 結果論としては,いい意味で進んだので,これは喜ばしいことと思っている。ただ,あのときに言われたことというのは,一体どれだけの経費を,税金をつぎ込んで,どこまでを達成するのかというときに,こうした科学技術というのは,天井知らずとなりがちで,どこまでも膨れ上がっていく。そこはいい悪いという議論ではなくて,それは膨れ上がれば上がるほど,各分野としては,やっぱり絞り込まざるを得ないし,その絞り込みの一つとしてスーパーコンピュータがあるのだったら,そこに当然投資をすべきだろうと。それが波及効果があるというのは,平尾先生がおっしゃるとおりで,それは私も非常によくわかったことである。
 とすると,ほかのいろいろな分野で宇宙開発がいいのだとか,いろいろなところで議論があるときに,じゃあ,この「京」が今回こういったことでここまで来ましたと。これに対して,次世代までも含めた上で,使い方としては,まず日本の特徴として,利用ということに拡大を図った中で,次のステップとしてはどういうステップになるのか,あるいは技術開発という面にとって,もしこれ以上の研究開発費が技術的なところでは組み込めないとすれば,それはどうするのかというところは,議論をそろそろ始めないといけないのではないかと思った。
 そういった意味では,人材育成のところも含めて,議論がちょっとずれるけれども,評価に対する人材をどうするか。要するに開発やいろいろな技術的な人材育成は,成果報告票の29ページに書いてあるように,非常によくできたと思うが,中間評価その他で,評価ということも一つの技術でもあると思うので,その評価に対する人材育成は一体どこでやるのか。これは理研内部でやることもできないし,かといって外に行ってこういう委員会を毎回毎回開いて,それが人材育成になるのか。その辺のことも含めた上での人材育成が,結果的には,最後はこういった開発というのをどこまで,どの方向で進めていくかという鍵を握ることになると思うので,その辺を二つ合わせて,何かお考えがあればとお聞かせ願いたい。
【林計算科学技術推進室長】  1点目の次を考えるという話については,我々も「京」が,システムが完成して運用も始まろうという段階で,昨年の2月にワーキンググループを設置して,4月から将来のあり方について本格的に議論を始めている。直近では2月18日にそのワーキンググループをやって,大まかな論点整理を行っており,中間報告として4月下旬から,若しくは5月初めを目指して,今,議論を進めているところ。
 そうした中で,国際協力という話もあったけれども,今のスーパーコンピュータの状況を見ると,やはりITERや加速器などとは少し違っていて,スーパーコンピュータ自体はつくるものがいくら大きいといっても,商品化されて,大学等にも入っていくような状況である。ハード面に関しては,国際協力というよりは,産業界が請け負って競争といったことと思っているが,システムソフトウエアと言われている部分については,今までこういうところで協力というのはなかったが,米国との協力を今,検討を始めているところ。そういうところについては,少しずつ協力というものも視野に入れながらやっていくと。
 更に,いつになるのかわからないが,世界で1個のものすごく大きいコンピュータをつくろうとする,もしそういうプロジェクトがあるとすれば,そういうものは国際協力ということもあるのかもしれないが,今までのところ,そういうことをやりましょうという構想はない。どちらかいえば各国でつくって,それをメーカーが商品化して売っていくという中で進んでいる状況である。評価人材の育成ということについては,非常に難しい問題だと認識はしている。
【南委員】  承知した。
【林計算科学技術推進室長】  政策の中で本格的に評価というものが始まってから,15年,20年近くだと思うが,我々も評価をすること自体が,ある種手さぐりのところもあり,先生方に頼ってやっているというのが現実である。しかし,こうやって評価をいろいろな形ですることによって,その中から自然といい評価ができる形になってくるのかなと思っており,具体的にどこで育成してというところは,なかなかまだ手が回っていない状況である。
【有川主査】  今,御指摘のことは,常に意識しながらやっていくことだろうと思う。それでは,前回と今回,2回にわたって理研からお話を頂き,議論ができたと思っている。
 先ほども少し触れたが,参考資料3,4について,今後,事後評価のシートに御記入を頂く必要がある。そのことについて,スケジュールも含めて事務局から説明を頂きたいと思う。
【林計算科学技術推進室長】  事後評価シートは参考資料3であるが,その前に1点だけ。
土井美和子先生がおっしゃった費用分担の話について,今後,こういうプロジェクトをやるときは,国が基本的に資金を持ってとおっしゃったと思うが,確かに「京」プロジェクトの場合は,「京」の開発にこれくらいかかりそうだという金額について,国はこれだけ負担をする,あとは企業が負担すると,こういうのをあらかじめ決めてやったわけである。
 ただ,問題があったと思われるのは,それが当初の予想よりも膨らんできたときに,どういう分担をするのかということは明確ではないというか,なかなか国の方は費用が増やせない,1,100億と決まっているのでこれでやってくださいという中で,企業の負担が少し多いとか少ない等があったと思っている。一方で,こういうプロジェクトに参加して,その技術を得ることによって,企業は当然,自社の利益になるもの,技術が得られるわけで,全く企業が負担をしないでそのプロジェクトをやるということも,考え方としては本当に適切かどうかと思っているので,そこはしかるべき分担をしつつ,その後の計画の進捗に応じて,いかに柔軟に対応できるかがやはり重要になってくるのではないかと思っている。
 したがって,先ほどの我々の次のプロジェクトについても,検討を始めているということを申し上げたが,次の計画が仮に具体的になるのであれば,やはりそういうところもよく考えないといけないと思ってはいるものの,企業が全く負担しないで国だけでやることもないのではと思っているので,そこだけ1点,考え方を申し上げたいと思う。
【土井委員】  全く負担しないということで申し上げたわけではない。概念設計のときに出た話では,プロジェクトマネジメントからいえば,参加するところを絞って集中的にやる方がうまくいくわけで,その方がきちんと成果が出せる。だから,やろうとしたらという議論も出たわけで,計画を変えようとしたときに,もう予算は決まっているからという,予算が変えられない,概念設計の段階でも見直しができないという話だと,今回はたまたまできたからよかったが,次がほんとにそれでうまくいくかという保証はないわけである。やはりそこは技術がものすごく進歩しているし,それに対して追いつこうと思ったら,やはり予算の方も柔軟にやっていかないと,そういう意味では,宇宙開発やITERと違うというのは事実で,日本の中のメーカーに技術をきちんとケアしつつやっていくという話であれば,メーカーももちろんお金は出すが,柔軟にもっと予算も考えていかなければ,勝てる見込みがどんどんなくなってくると思う。ゆえに,予算がつかないから駄目だというので,それ以上何も技術的に,どう努力しようと駄目なんだと押さえつけられてしまうと,概念設計の段階から,もうそれ以上先に進まないことになってしまうと,すごく問題だなと思う。
【林計算科学技術推進室長】  承知した。
【西島委員】  今,林室長が言ったように,確かに参加した企業はそれなりの特典があったのだろうと思うし,業界は違うけれども,国家プロジェクトだから,やっぱりある程度,企業も覚悟して参加すべきと,個人的には思う。
 1点,確認だが,特許申請が富士通から出ているが,この特許申請は,富士通の単独出願なのか,それとも全部,国と共願なのか。あるいは,多少,企業によって戦略的に使いたいので単独出願にしているなど,その辺のことはいかがか。臨機応変に対応できたのか。
【渡辺統括役】  企業が戦略的に使いたいということもある,理研は使う権利を所持している。そういう関係となっている。
【西島委員】  そうすると,基本的に共願となっているのか。
【渡辺統括役】  いや,単独である。
【西島委員】  単独であれば,やはり参加した意義はあったのだと思う。
【土井委員】  意義はないとね。だから,もっと柔軟に予算を考えていただきたいということ。
【有川主査】  実際に,プロジェクトによって一様にはいかないところはあると思う。それでは,事務局より参考資料3の説明をお願いしたい。

林計算科学技術推進室長より,参考資料3に基づき事後評価シートの記入等について説明。

(2)その他

事務局より,次回の日程(3月22日金曜日,16時から18時)を報告。
有川主査より閉会宣言 

お問合せ先

研究振興局情報課計算科学技術推進室

電話番号:03-6734-4275
メールアドレス:jyohoka@mext.go.jp

(研究振興局情報課計算科学技術推進室)

-- 登録:平成25年05月 --